JPH08313667A - 原子炉燃料集合体及びそのための核燃料棒 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 原子炉燃料集合体において、核燃料棒の照射
成長を吸収して、全寿命にわたり冷却材伴流異物の侵入
を防止する。 【構成】 原子炉燃料集合体は、複数の冷却材流路孔を
備え互いに対向して配置された上部ノズル及び下部ノズ
ル、この両ノズルに両端がそれぞれ連結され互いに平行
して延びた複数の制御棒案内管、同制御棒案内管に長手
方向に間隔を置いて固設された上部グリッド１７、中間
部グリッド１９及び下部グリッド２１、両ノズル１１，
１３間に互いに平行に延びグリッド１７，１９，２１に
支持された複数の核燃料棒２３並びに下部ノズル１３と
下部グリッド２１との間に介装された異物フィルタグリ
ッド２５を有し、異物フィルタグリッド２５内に延出す
る核燃料棒２３の下端部を伸縮可能構造に形成した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、原子炉での燃焼に供さ
れる燃料集合体に関し、特にそのための核燃料棒の構造
に関する。

【０００２】

【従来の技術】原子炉、例えば加圧水型原子炉で使用さ
れる燃料集合体は、一般には、複数の冷却材流路孔を備
え互いに対向して配置された上部及び下部ノズル、その
上下両ノズルに両端がそれぞれ連結され互いに平行して
延びた複数の制御棒案内管、その制御棒案内管に長手方
向に適当な間隔を置いて固設された一般に１０個前後の
数の支持グリッド、上下両ノズル間に互いに平行に延び
前記支持グリッドの小さい支持開口に挿通されて弾性的
に支持された複数の核燃料棒から構成されている。

【０００３】以上の構成の燃料集合体は、原子炉容器内
に並べられ炉心を形成して使用されるのであるが、そこ
を流れる原子炉冷却材に異物が伴流する場合があり、こ
れが燃料集合体中に入り、燃料棒間に引っ掛かって留ま
ると、不具合を生ずることがある。これを防止するた
め、複数の支持グリッドのうち最下方の下部支持グリッ
ドと下部ノズルとの間に異物フィルタグリッドを設ける
ことが提案されている。その概略構造を図７に示す。図
７において、核燃料棒１の被覆管１ａの下部は、下部端
栓１ｂで閉じられ、核燃料棒１の下端部が下部支持グリ
ッド３で弾性支持されている。下部ノズル５の上側に
は、異物フィルタグリッド７があり、その内外にディン
プルと称する突起７ａ，７ｂが形成されている。下部ノ
ズル５の上面と核燃料棒１の下端との間隔の初期寸法
は、核燃料棒１の照射成長量を見込んだものである。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前述の構成では、燃料
寿命の中期及び後期では、核燃料棒１が照射成長して下
部端栓１ｂが異物フィルタグリッド７の中に伸び出て異
物の侵入を防止できるにしても、燃料寿命の初期即ち核
燃料集合体の装荷直後では、図示されるように下部端栓
１ｂと異物フィルタグリッド７との間の隙間の存在は否
定し難い。したがって、炉心寿命初期において、異物の
発生確率が非常に低いとしても、異物が発生して冷却材
に伴流されてくれば、下部端栓１ｂと異物フィルタグリ
ッド７の間の隙間を異物が通過することもあるので、前
述の不具合発生は、完全には防止されていないことにな
る。

【０００５】而して、叙上の問題に対処するため、被覆
管の長さを変えて核燃料棒1’の下部端栓１ｂを図８に
示すように異物フィルタグリッド７の突起７ａ，７ｂに
囲まれる位置に燃料寿命の初期において置くことも考え
られる。このようにすると、燃料寿命の初期において
は、異物の通過を完全に阻止して好都合であるが、燃料
寿命の終期において、照射成長した核燃料棒1'と、下部
ノズル５が干渉することがあり、実際には採用し難い。
いずれにしても、照射成長による核燃料棒1'と下部ノズ
ル５との干渉は避けなければならないから、このために
は、異物フィルタグリッドが大きくなったり、そしてま
た、異物フィルタグリッドは、核燃料棒1'を支持するも
のではないから、核燃料棒1'の下端部の支持が不十分な
ものとなったりする惧れもある。また、核燃料棒の照射成
長量は、その中性子照射量に依存するから、下部ノズルと
の間の前記間隔に余裕が無いと燃料集合体の装荷炉心内
位置や燃料集合体内の位置によっては、なお干渉が生じ
たりする。従って、本発明の目的は、燃料の全寿命に亙
って不具合を生ずることなく、冷却材に伴流した異物の
侵入を防止し得る原子炉燃料集合体及びそのための核燃
料棒を提供するにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の原子炉燃料集合体は、複数の冷却材流路孔
を備え互いに対向して配置された上部及び下部ノズル、
同両ノズルに両端がそれぞれ連結され互いに平行して延
びた複数の制御棒案内管、同制御棒案内管に長手方向に
間隔を置いて固設された上部、中間部及び下部支持グリ
ッド、前記両ノズル間に互いに平行に延び前記支持グリ
ッドに支持された複数の核燃料棒並びに前記下部ノズル
と前記下部支持グリッドとの間に介装された異物フィル
タグリッドを有するものにおいて、前記異物フィルタグ
リッド内に延出する前記核燃料棒の下端部を伸縮可能構
造に形成したことを特徴とする。更に本発明の核燃料棒
は、核燃料ペレットを内蔵する被覆管と、同被覆管の上
端及び下端を閉じる上部端栓及び下部端栓とを有し、小
径先端部を有する本体と、前記小径先端部に遊嵌する大
径キャップと、前記小径先端部に嵌装され前記大径キャ
ップを弾性的に偏倚する圧縮コイルばねとから前記下部
端栓を構成したことを特徴とする。

【０００７】

【作用】以上の構成の原子炉燃料集合体において、下部
ノズルと下部支持グリッドとの間に設けられた異物フィ
ルタグリッドに、核燃料棒の下部端栓が挿入されていて
異物捕獲空間を形成しているので、燃料の全寿命期間に
亙り冷却材に伴流する異物の侵入を防止する。燃料の燃
焼が進み、核燃料棒の照射成長が生ずると、下部端栓の
先端は、下部ノズルに近付き、最後には接触するが、そ
の後は圧縮コイルばねが縮小して下部端栓の本体と大径
キャップとの相対変位を許容する。このようにして中性
子の照射によって生じた核燃料棒の照射成長が吸収され
る。

【０００８】

【実施例】以下添付の図面を参照して、本発明の実施例
を説明する。先ず燃料集合体１０の全体構造を説明する
と、図２においてほぼ矩形平面の上部ノズル１１と下部
ノズル１３は、複数の制御棒案内管１５によって連結さ
れている。図２には示されていないが、上部ノズル１１
と下部ノズル１３には、多数の冷却材流路孔が分布して
穿設されている。制御棒案内管１５には、上部グリッド
１７，７個の中間部グリッド１９及び下部グリッド２１
が間隔を置いて固定されている。各グリッド１７，１
９，２１は、卵枠状であり、中間部グリッド１９の数
は、燃料集合体１０の大きさによって変わるものであ
る。各グリッド１７，１９，２１の多数の小開口のうち
制御棒案内管１５の入っていないものには、核燃料棒２
３が１本ずつ挿入支持されている。更に、下部ノズル１
３と下部グリッド２１の間の制御棒案内管１５には、異
物フィルタグリッド２５が固定されている。

【０００９】図１は、下部ノズル１３、下部グリッド２
１，異物フィルタグリッド２５及び核燃料棒２３の燃料
寿命初期の時点での相互関係を拡大して示している。図
２において、図示しない燃料ペレットの積重体を取り囲
む被覆管２７の下端開口は、下部端栓３０で閉じられて
いる。下部端栓３０は、先端が小径に形成された本体３
１と、先端小径部に遊嵌した大径キャップ３３と、小径
部に嵌装された圧縮コイルばね３５から形成され、本体
３１と大径キャップ３３の間には、距離Ａの軸方向間隔
が形成されている。

【００１０】次に図３及び図４を参照して、異物フィル
タグリッド２５の構造を説明する。特に図４で明らかな
ように、異物フィルタグリッド２５は、薄い帯板を直角
に交差、組み合わせて形成されており、帯板の上側に突
起即ち上側ディンプル２５ａ，下側に下側ディンプル２
５ｂが、それぞれ一体成形により形成されている。そし
て、上側及び下側ディンプル２５ａ，２５ｂは、帯板の
反対面に突出している。図３は、異物フィルタグリッド
２５の上面図であり、ほぼその１象限を示しているが、
核燃料棒２３でなく制御棒案内管の入る部分には、前述
のディンプルは、形成されていない。

【００１１】以上の構成の燃料集合体１０において、原
子炉容器（図示しない）の中の炉心に装荷された直後の
燃料寿命初期には、下部ノズル１３と核燃料棒２３の関
係は、図１に示すようになっていて、下部ノズル１３の
流路孔１３ａを貫流した冷却材は、異物フィルタグリッ
ド２５と大径キャップ３３との間を流れ、更に下部グリ
ッド２１と被覆管２７との間を流れて核反応熱を吸収す
る。従って、冷却材に異物が伴流していれば、大径キャ
ップ３３と異物フィルタグリッド２５の上側及び下側デ
ィンプル２５ａ，２５ｂの間でトラップされてそれ以上
の侵入が防止される。

【００１２】燃焼が進むと、核燃料棒２３の主として被
覆管２７が中性子を浴びて照射成長し、図５に示す状態
となる。即ち、大径キャップ３３は、下部ノズル１３に
接しているが、圧縮コイルばね３５は、初期長のままで
ある。更に燃焼が進んで寿命終期になると図６に示す状
態になる。この状態では、核燃料棒２３の照射成長が更
に進んでいるが、圧縮コイルばね３５が縮んで大径キャ
ップ３３の相対変位を許容し、本体３１の先端と大径キ
ャップ３３の内側端面が接している。しかしながら、核
燃料棒２１には、軸方向荷重はばね荷重以外付加されて
いない。燃料寿命の中期及び終期における核燃料棒２１
の下部端栓３０の挙動は、図５及び図６に示し、説明し
た通りであるが、大径キャップ３３と異物フィルタグリ
ッド２５との水平方向の相対関係は、それほど変わらな
いので、図１について説明したように、冷却材は流れ、
異物が伴流していれば同様に捕獲される。

【００１３】

【発明の効果】以上説明したように、請求項１の発明に
よれば、核燃料棒の下部端栓を伸縮可能構造としたの
で、核燃料棒の照射成長を吸収して、その下部端栓と異
物フィルタグリッドとの関係を燃料の全寿命期間に亙っ
て所定の良好状態に保ち得、冷却材の伴流異物を確実に
捕獲し、燃料集合体への侵入を防止することができる。
更に、請求項２の発明によれば、核燃料棒の被覆管部の
照射成長を下部端栓の本体とこれに遊嵌する大径キャッ
プとの弾性的テレスコーピック構造で吸収するので、過
大な軸方向荷重も発生せず、信頼性を保持することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例の要部を示す拡大部分断面図で
ある。

【図２】前記実施例の前提構造を示す立面図である。

【図３】前記実施例の部分平面図である。

【図４】前記実施例の一部を示す部分拡大斜視図であ
る。

【図５】前記実施例の作用説明図である。

【図６】前記実施例の作用説明図である。

【図７】従来構造の一例を示す部分断面図である。

【図８】従来構造の一例を示す部分断面図である。

【符号の説明】

１０ 燃料集合体 １１ 上部ノズル １３ 下部ノズル １５ 制御棒案内管 １７ 上部グリッド １９ 中間部グリッド ２１ 下部グリッド ２３ 核燃料棒 ２５ 異物フィルタグリッド ３０ 下部端栓 ３１ 本体 ３３ 大径キャップ ３５ 圧縮コイルばね

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数の冷却材流路孔を備え互いに対向し
   て配置された上部及び下部ノズル、同両ノズルに両端が
   それぞれ連結され互いに平行して延びた複数の制御棒案
   内管、同制御棒案内管に長手方向に間隔を置いて固設さ
   れた上部、中間部及び下部支持グリッド、前記両ノズル
   間に互いに平行に延び前記支持グリッドに支持された複
   数の核燃料棒並びに前記下部ノズルと前記下部支持グリ
   ッドとの間に介装された異物フィルタグリッドを有する
   原子炉燃料集合体において、前記異物フィルタグリッド
   内に延出する前記核燃料棒の下端部を伸縮可能構造に形
   成したことを特徴とする原子炉燃料集合体。
2. 【請求項２】 核燃料ペレットを内蔵する被覆管と、同
   被覆管の上端及び下端を閉じる上部端栓及び下部端栓と
   を有し、小径先端部を有する本体と、前記小径先端部に
   遊嵌する大径キャップと、前記小径先端部に嵌装され前
   記大径キャップを弾性的に偏倚する圧縮コイルばねとか
   ら前記下部端栓を構成したことを特徴とする原子炉燃料
   集合体用核燃料棒。