JPH08291007A - 木材保存剤組成物及び木材保存剤処理時の木材変色防止方法 - Google Patents

木材保存剤組成物及び木材保存剤処理時の木材変色防止方法

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JPH08291007A
JPH08291007A JP11800195A JP11800195A JPH08291007A JP H08291007 A JPH08291007 A JP H08291007A JP 11800195 A JP11800195 A JP 11800195A JP 11800195 A JP11800195 A JP 11800195A JP H08291007 A JPH08291007 A JP H08291007A
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wood
wood preservative
preservative composition
agent
discoloration
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JP11800195A
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Inventor
Kenji Mikami
憲治 三上
Kazuhiro Yamashita
和博 山下
Yasuhiro Maeda
恭宏 前田
Kiyoshi Sakuma
清 佐久間
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SDS Biotech Corp
Original Assignee
SDS Biotech Corp
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 殺菌成分および金属イオン脂溶化剤を必須
成分として含み、必要に応じて、殺虫成分、有機酸、界
面活性剤、及び/又は溶剤を含む木材保存剤組成物、及
び木材保存剤組成物に金属脂溶化剤を添加・併用する木
材保存剤処理時の木材変色防止方法。 【効果】 浴槽や耐圧タンクから溶出した木材保存剤組
成物中の金属イオンと木材中の天然成分との反応に起因
する木材の変色の問題が、金属イオン脂溶化剤を木材保
存剤組成物中に配合することにより解消される。金属イ
オン脂溶化剤は木材保存剤組成物中に配合されるため、
作業液に変色防止剤を添加するなど現場負担の大きい操
作が必要ない。したがって、木材の腐朽処理が容易かつ
確実に行なうことができ、かつ安定性も高い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は木材保存剤、すなわち、
木材の腐朽を防止ないし抑制する薬剤に関する。より詳
しく言えば、本発明は、使用時に木材を変色することな
く腐敗、黴の繁殖及び虫害から保護する木材保存剤組成
物、及び木材保存剤処理時の木材変色防止方法に関す
る。
【0002】
【従来技術】木材の保存剤としては、クレオソート油に
代表される油性(油状)の防腐剤に木材を浸漬するか防
腐剤を木材表面に塗布する方法が古くから知られてい
る。また、近年では、銅−クロム−ヒ素の水溶性塩(C
CA剤)やフッ素−クロム−ヒ素の水溶性塩(FCAP
剤)および第4級アンモニウム塩剤(例えば、DACC
剤)などの水溶性の木材保存剤、あるいは有機系薬剤を
有効成分とした乳剤・可溶化剤が種々開発されている。
保存処理方法も、木材を薬液プールに浸漬する浸漬法の
他に、耐圧タンクに入れてそのままあるいは加圧ないし
減圧した後に圧力を加えつつ薬剤を内部に浸透させる方
法(加圧処理法)が用いられるようになってきている。
【0003】木材保存剤の効果を長期に亘って持続させ
るためには、薬剤の木材への浸潤度を高める必要があ
り、保存剤には上記の殺菌成分に加えて界面活性剤を多
量に含有させる。界面活性剤は、木材保存剤を水などで
希釈して調製した作業液の安定性保持にも寄与してい
る。ところが、木材の保存処理、特に加圧処理法では、
ステンレスなどの金属材料が浸漬槽あるいは耐圧タンク
に用いられるため、界面活性剤の作用により金属イオン
の作業液への溶出が避けられない。一般に作業液はつぎ
足しながら使用されるため、金属イオンはかなり高濃度
に達することがあり、かかる作業液でスギ心材などを処
理した場合には、木材中の天然成分と金属イオンとが反
応して木材が変色するという問題がある。
【0004】変色防止方法としてEDTAを用いること
が提案されている(例えば、特開昭59-207203 号)。し
かし、EDTAは有機溶媒に溶けにくいため、乳剤や可
溶化剤などに配合することが困難である。また、水系薬
剤では反応性が高く製剤に配合しにくい。このように、
EDTAは木材保存剤に配合して用いることが難しく、
現実には、木材保存処理を行なうに際して木材保存材と
EDTA(あるいはこれを含有する変色防止剤)とを作
業液に別々に添加する方法を採る必要がある。しかしな
がら、かかる方法は、作業液をつぎ足しながら使用する
作業現場では負担が大きく、安定確実な変色防止を容易
に行なう方法とは言えない。
【0005】
【解決課題】本発明は、薬剤、特に乳剤や可溶化剤とし
て提供される木材保存剤組成物に変色防止剤を配合して
提供し、よって、保存剤組成物の通常の使用態様で、心
材の黒変などの好ましくない変色を引き起こすことなく
所定の木材保存効果を発揮する改良された木材保存剤、
及び木材保存剤処理時の木材変色防止方法を提供するこ
とを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来の木
材保存剤における上記問題点について検討した結果、金
属イオン脂溶化剤を添加することにより、心材等の変色
の問題が解消されることを見出だし、本発明を完成する
に至った。すなわち、本発明は、 1)殺菌成分と金属イオン脂溶化剤を必須成分として含
み、必要に応じて、殺虫成分、脂肪族の有機酸、界面活
性剤、及び/又は溶剤を含む木材保存剤組成物、 2)金属イオン脂溶化剤を0.2 〜30重量%含有する前
記1に記載の木材保存剤組成物、 3)金属イオン脂溶化剤がアセチルアセトン、フルオロ
トリフルオロアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセト
ン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ヘプタフルオロ
ブタノイルピバロイルメタン、ジピバロイルメタン、マ
ロン酸アミド、ビウレット及びオキサミドから選択され
る前記1に記載の木材保存剤組成物、 4)金属イオン脂溶化剤がアセチルアセトンである前記
3に記載の木材保存剤組成物、
【0007】5)殺菌成分が、トリアゾール誘導体、ス
ルホンアミド類、ベンズイミダゾール類、チオシアネー
ト類、第4級アンモニウム塩、モルホリン誘導体、フェ
ノール類、有機ヨード化合物、有機ブロモ誘導体、イソ
チアゾリン類、ベンズイソチアゾリン類、ピリジン類、
金属石鹸、有機スズ誘導体、ジアルキルジチオカルバメ
ート類、ニトリル類、活性ハロゲン原子を含有する微生
物剤、2−メルカプトベンゾチアゾール類、ベンズチア
ゾール類、キノリン類及びホルムアルデヒドを脱離する
化合物の少なくとも1種から選択される前記1に記載の
木材保存剤組成物、 6)殺虫成分が、ホウ素化合物、りん酸のエステル、カ
ルバメート類、ピレスロイド類、ニトロイミン類及びニ
トロメチレン類から選択される前記1に記載の木材保存
剤組成物、 7)脂肪族の有機酸が、低級脂肪族モノカルボン酸、低
級脂肪族ジカルボン酸、不飽和カルボン酸及びヒドロキ
シ酸から選択される前記1に記載の木材保存剤組成物、
【0008】8)木材保存剤組成物に金属脂溶化剤を添
加・併用することを特徴とする木材保存剤処理時の木材
変色防止方法、及び 9)金属脂溶化剤が、アセチルアセトン、フルオロトリ
フルオロアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセトン、
ヘキサフルオロアセチルアセトン、ヘプタフルオロブタ
ノイルピバロイルメタン、ジピバロイルメタン、マロン
酸アミド、ビウレット及びオキサミドから選択される前
記8に記載の木材変色防止方法を提供するものである。
【0009】以下に本発明について更に詳細に説明す
る。本発明の木材保存剤組成物は、殺菌剤と金属イオン
脂溶化剤とを必須成分として含む。
【殺菌剤】本発明で用いる殺菌剤の種類は特に制限はな
いが、各種の有機系薬剤に特に効果的に適用できる。具
体的には、トリアゾール誘導体、スルホンアミド類、ベ
ンズイミダゾール類、チオシアネート類、第4級アンモ
ニウム塩、モルホリン誘導体、フェノール類、有機ヨー
ド化合物、有機ブロモ誘導体、イソチアゾリン類、ベン
ズイソチアゾリン類、ピリジン類、金属石鹸、有機スズ
誘導体、ジアルキルジチオカルバメート類、ニトリル
類、活性ハロゲン原子を含有する微生物剤、2−メルカ
プトベンゾチアゾール類、ベンズチアゾール類、キノリ
ン類及びホルムアルデヒドを脱離する化合物等が挙げら
れる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて
用いてもよい。
【0010】トリアゾール誘導体の具体例としては、例
えば、以下の化合物が挙げられる。次式(I)
【0011】
【化1】 (式中、pは1〜3の整数であり、Arは塩素原子で置
換されていてもよいアリール基を表わし、Rは低級アル
キル基を表わす。)で示される化合物、及び
【0012】アザコナゾール(azaconazole )、エタコ
ナゾール(etaconazole )、プロピコナゾール(propic
onazole )、ブロモコナゾール(bromoconazole )、ジ
フェノコナゾール(difenoconazole)、イトラコナゾー
ル(itraconazole)、フルトリアホール(flutriafo
l)、ミクロブタニル(myclobutanil)、フェネタニル
(fenethanil)、ペンコナゾール(penconazole )、テ
トラコナゾール(tetraconazole )、ヘキサコナゾール
(hexaconazole)、テブコナゾール(tebuconazole)、
イミベンコナゾール(imibenconazole)、フルシラゾー
ル(flusilazole )、リバビリン(ribavirin )、トリ
アミホス(triamiphos)、イサゾホス(isazophos )、
トリアゾネス(triazophos)、イジンホス(idinfos
)、フルオトリマゾール(fluortimazole )、トリア
ジメホン(triadimefon )、トリアジメノール(triadi
menol )、ジクロブトラゾール(diclobutrazol )、ジ
ニコナゾール(diniconazole)、ジニコナゾールM(di
niconazole M)、ビテルタノール(bitertanol)、エポ
キシコナゾール(epoxiconazole )、トリチコナゾール
(triticonazole )、メトコナゾール(metconazole
)、イプコナゾール(ipconazole)、フルコナゾール
(furconazole )、フルコナゾール・シス(furconazol
e・cis )。
【0013】上記の一般式(I)中、pは1〜3の整
数、好ましく1であり、Arで示されるアリール基は、
好ましくは塩素原子で置換されている。オルト及び/又
はパラ位が置換されていることが好ましい。Rで表わさ
れる低級アルキル基としては、メチル、エチル、プロピ
ル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、sec-ブチ
ル、t-ブチルなどが挙げられる。特に好ましい一般式
(I) のトリアゾール化合物はシプロコナゾール((2−
4−クロロフェニル)−3−シクロプロピル−1−(1
H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2
−オール):
【化2】 である。これらの化合物は、遊離塩基形、酸付加塩又は
第4級アンモニウム塩として用いられる。
【0014】上記の殺菌剤に代えて、より好ましくは上
記の殺菌剤とともに用いることのできる殺菌成分(防腐
・防黴剤)の例としては、ジクロロフルアニド(エウパ
レン)、トリフルアニド(メチルレウパレン)、シクロ
フルアニド、フォルペット、フルオロフォルペットなど
のスルホンアミド類;カルベンダジム(MBC)、ベノ
ミル、フベリタゾール、チアベンダゾール又はこれらの
塩類のようなべンズイミダゾール類;チオシアナトメチ
ルチオベンゾチアゾール(TCMTB) 、メチレッビスチオシ
アネート(MBT)などのチオシアネート類;ベンジル
メチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ベンジル
−ジメチル−ドデシル−アンモニウムクロライド、ジデ
シル−ジメチルーアンモニウムクロライド、N−アルキ
ルベンジルメチルアンモニムクロライドなどの第4級ア
ンモニウム塩;C11〜C14−4−アルキル−2,6−ジ
メチルモルホリン同族体(トリデモルフ)、(±)−シ
ス−4−[3−(t−ブチルフェニル)−2−メチルプ
ロピル]−2,6−ジメチルモルホリン(フェンプロピ
モルフ,ファリモルフ)などのモルホリン誘導体;o−
フェニルフェノール、トリブロモフェノール、テトラク
ロロフェノール、ペンタクロロフェノール、3−メチル
−4−クロロフェノール、ジクロロフェノール、クロロ
フェンおよびこれらの塩類などのフェノール類;3−ヨ
ード−2−プロピニル−n−ブチルカルバメート(IP
BC)、3−ヨード−2−プロピニル−n−ヘキシルカ
ルバメート、3−ヨード−2−プロピニルシクロヘキシ
ルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニルフェニル
カルバメート、3−ヨード−2−プロピニル−n−ブチ
ルカルバメート、p−クロロフェニル−3−ヨードプロ
パギルホルマール(IF-1000) 、3−ブロモ−2,3−ジ
ヨード−2−プロペニルエチルカルボナート(サンプラ
ス)、1−[(ジヨードメチル)スルホニル]−4−メ
チルベンゼン(アミカル)などの有機ヨード化合物;ブ
ロノポルなどの有機ブロモ誘導体;N−メチルイソチア
ゾリン−3−オン、5−クロロ−N−メチルイソチアゾ
リン−3−オン、4,5−ジクロロ−N−オクチルイソ
チアゾリン−3−オン、N−オクチルイソチアゾリン−
3−オン(オクチリノン)などのイソチアゾリン類;シ
クロペンタイソチアゾリンなどのベンズイソチアゾリン
類;1−ヒドロキシ−2−ピリジンチオン(又はそのナ
トリウム塩、鉄塩、マンガン塩、亜鉛化合物等)、テト
ラクロロ−4−メチルスルホニルピリジンなどのピリジ
ン類;金属石鹸、例えば、スズ、銅、亜鉛のナフテー
ト、オクトエート、2−エチルヘキサノエート、オレエ
ート、ホスフェート、ベンゾエート、オキシド、例え
ば、Cu2 O、CuO,ZnOなど;トリブチルスズナ
フテネート、t−ブチルスズオキシドなどの有機スズ誘
導体;ジアルキルジチオカルバメート類、例えば、ジア
ルキルジチオカルバメートのNa又はZn塩、テトラメ
チルジウラムジサルファイド(TMTD);2,4,
5,6−テトラクロロイソフタロニトリル(クロロタロ
ニル)などのニトリル類;Cl−Ac、MCA、テクタ
マー、ブロノポル、ブルミドックスなどの活性ハロゲン
原子を有する微生物剤;2−メルカプトベンゾチゾール
類、ダゾメットなどのベンズチアゾール類;キノリン
類、例えば8−ヒドロキシキノリン;ホルムアルデヒド
を切り離す化合物、例えば、ベンジルアルコールモノ
(ポリ)ヘミフォルマール、オキサゾリジン、ヘキサヒ
ドローs−トリアジン、N−メチロールクロロアセトア
ミド;トリス−N−(シクロヘキシルジアゼニウムジオ
キシン)−トリブチルスズ又はK塩類、ビス−(N−シ
クロヘキシル)ジアゾニウム−ジオキシン銅又はアルミ
ニウムなどが挙げられる。これらは単独で用いても組み
合わせて用いてもよい。殺菌剤は、組成物全体のうち好
ましくは1〜50重量%(特に断らない限り、重量%は
w/w%の意。)を占める。
【0015】
【金属イオン脂溶化剤】金属イオン脂溶化剤とは、金属
イオンと結合してこれを脂溶性にする化合物をいう。具
体的には、金属マスキング剤であって脂溶性の化合物が
挙げられる。例えば、アセチルアセトン、フルオロトリ
フルオロアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセトン、
ヘキサフルオロアセチルアセトン、ヘプタフルオロブタ
ノイルピバロイルメタン、ジピバロイルメタン、マロン
酸アミド、ビウレット、オキサミド等が挙げられる。こ
の中では、価格や溶媒との相溶性、粘度などの点からア
セチルアセトンが最も好ましい。アセチルアセトン(水
への溶解度:17%)など多少の水溶性を有するものは
水系にも配合可能である。なお、本発明で用いる金属イ
オン脂溶化剤の代表例であるアセチルアセトンは、変色
防止の目的での使用が提案されているEDTA(特開昭
59-207203 号)と比べて、キレート安定度定数(生成定
数)に大きな違いがあり、フェノール性水酸基との反応
防止効果に優れている。本発明の変色防止効果を得るた
めの具体的な配合量は、その種類にもよるが、概ね、組
成物全体の0.2 〜30重量%程度である。
【0016】本発明で用いる金属イオン脂溶化剤は油溶
性であるため、乳剤または可溶化剤に配合するのに適し
ている。また、金属イオン脂溶化剤を併用することによ
り、従来の木材保存剤組成物を用いた場合に起こる、心
材の黒変という問題点が解消された。その理由は厳密に
は明らかではないが、作業液中に含まれる金属イオン
が、金属イオン脂溶化剤と弱く結合して脂溶性の錯体を
生じる結果、例えば、金属イオン(主として鉄)と心材
中に存在するシキミ酸由来の化合物、例えばタンニン等
のフェノ−ル性水酸基と反応が防止され、タンニン鉄な
どの錯塩に起因する着色が回避されるのではないかと推
定される。なお、上記のような金属イオン脂溶化剤は、
木材保存剤組成物の殺菌効果などには悪影響を及ぼさ
ず、一方、対人毒性は比較的低く、価格も安いという利
点を有している。また、金属イオンと結合して有機相に
安定して存在させるため、金属イオンが組成物の他の成
分と反応して沈殿を形成するなどの作業液の安定性劣化
を防止する効果もある。
【0017】本発明の木材保存剤組成物においては、上
記の成分とともに既知の殺虫成分を組み合わせて、薬剤
の効果を増強したり作用スペクトルを拡大することがで
きる。また、特に、有機系殺菌剤を用いる場合には、本
発明者らが先に提案したように、脂肪族の有機酸あるい
は無機酸を添加して木材への浸透性を改善してもよい
(特願平7-27292 号及び特願平7-30146 号参照)。
【0018】
【殺虫成分】また、本発明で用いることのできる殺虫成
分(防虫成分)は、ホウ素化合物、りん酸のエステル、
カルバメート類、ピレスロイド類、ニトロイミン類及び
ニトロメチレン類から選択される。具体例としては、ホ
ウ素化合物、例えば、八ホウ酸ナトリウム四水和物、ホ
ウ酸、ホウ砂;フッ素化合物、例えば、フッ化ナトリウ
ム、ケイフッ化ナトリウム;りん酸のエステル、例え
ば、アジノフォス−エチル、アジノフォス−メチル、1
−(4−クロロフェニル)−4-(O−エチル、S−プロ
ピル)ホスホリルオキシピラゾル(TIA−230)、
クロロピリフォス、テトラクロロビンホス、クマフォ
ス、デトメン−S−メチル、ジアジノン、ジクロルボ
ス、ジメトエート、エトプロフォス、エトリムフォス、
フェニトロチオン、ピリダフェンチオン、ヘプテノフォ
ス、パラチオン、パラチオン−メチル、プロペタンホ
ス、フォサロン、フォキシム、ピリムフォス−エチル、
ピリミフォス−メチル、プロフェノフォス、プロチオフ
ォース、スルプロフォス、トリアゾフォス及びトルクロ
ルフォンなど;カルバメート類、例えば、アルジカー
ブ、ベニオカーブ、BPMC(2−(1−メチルプロピ
ル)フェニルメチルカルバメート、ブトカルボキシム、
ブトキシカルボキシム、カルバリル、カルボフラン、カ
ルボスルファン、クロエトカルブ、イソプロカルブ、メ
トミル、オキサミル、ピリミカルブ、プロメカルブ、プ
ロポクスル及びチジカルブなど;ピレスロイド類、例え
ば、アレトリン、アルファメトリン、ビオレスメトリ
ン、シクロプロトリン、シフルトリン、デカメトリン、
シハロトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、α−
シアノ−3−フェニル−2−メチルベンジル−2,2−
ジメチル−2−(2−クロロ−2−トリフルオロメチル
ビニル)シクロプロパン1プロパンカルボキシレート、
フェンプロパトリン、フェンフルトリン、フェンバレレ
ート、フルシトリネート、フルムトリン、フルバリネー
ト、ペルメトリン、エトフェンプロックス及びレスメト
リン;ニトロイミノ及びニトロメチレン類、例えば、1
−(6−クロロ−3−ピリジニル−メチル)−4,5−
ジヒドロ−N−ニトロ−1H−イミダゾール−2−アミ
ン (イミダクロプリド)などが挙げられる。これらは
単独でも組み合わせて使用してもよい。
【0019】これらの中では、ピレスロイド系化合物、
有機リン系化合物が好ましい。前者ではアレトリン、ペ
ルメトリン、フェンバレレート、シペルメトリン、エト
フェンプロックスなどが好ましく、後者では、クロロピ
リフォス、フォキシム、ピリダフェンチオン、テトラク
ロロビンホス、フェニトロチオン、プロペタンホスが好
ましい。カルバメート系化合物は一般に効果が弱いが、
プロポクスル、BPMC、カルバリルなどは本発明で好
適に使用できる。中でも10年以上の長期残効性のある
ものが好ましい。これらの殺虫成分の配合量は、組成物
全体の0.5 〜30重量%とすることが好ましい。
【0020】
【浸透性改善剤】本発明者らは、木材保存剤の浸透性を
改善すべく、各種の酸類及びその誘導体等の併用につい
て検討した結果、有機酸及び無機酸、特に脂肪族の有機
酸が木材保存剤の浸透性改善に有効であることを確認し
た(特願平7-27292 号及び特願平7-30146 号参照)。し
たがって、本発明の木材保存剤組成物において浸透性の
低い有機系殺菌剤を用いる場合には、上記の各成分に加
えて少量の脂肪族の有機酸を添加併用することが好まし
い。少量の脂肪族の有機酸を添加併用することにより、
木材保存有効成分の木材に対する浸透性が著しく向上す
る。
【0021】ここで、脂肪族の有機酸としては、蟻酸、
酢酸、吉草酸、酪酸等の低級脂肪族モノカルボン酸、シ
ュウ酸、コハク酸等の低級脂肪族ジカルボン酸、ソルビ
ン酸等の不飽和カルボン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸等
のヒドロキシ酸等の種々のものが挙げられる。中でも酢
酸は極めて特異的な優れた効果を発揮する。
【0022】これらの脂肪族有機酸の添加量は、種類に
依るので一概には規定し得ないが、例えば酢酸の場合で
言えば、組成物全体に対し3〜10重量%程度が好まし
い。加圧注入の薬液中の濃度として5ppm、好ましく
は10ppmで効果を発揮する。上限は特に制限はない
が1,000 ppm程度で充分である。余り濃度が高いと作
業性の悪化を招くので好ましくない。
【0023】
【界面活性剤】界面活性剤としては、アニオン系、ノニ
オン系、カチオン系、両性イオン系界面活性剤のいずれ
も使用することができ、特にポリオキシキエチレンアル
キルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエ
ーテルが好適に使用できる。これらの界面活性剤は、組
成物全体の30重量%以下とすることが好ましい。
【0024】
【その他の成分】本発明においては、木材との結合性を
高めるために、既知の結合剤を含有させてもよい。具体
的には水又は使用する有機溶媒に溶解又は分散もしくは
乳化可能な合成樹脂及び/又は結合性乾性油が含まれ
る。例えば、アクリレート樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ
エステル樹脂、ポリ縮合又はポリ付加樹脂、ポリウレタ
ン樹脂、アルキド樹脂、もしくは変性アルキド樹脂、フ
ェニル樹脂、炭化水素樹脂、例えばインデンクマロン樹
脂、シリコン樹脂、乾性植物油などが挙げられる。上記
の結合剤に加えて、又は結合剤に代えて、固定剤や可塑
剤を用いていてもよい。固定剤の例としては、ポリビニ
ルメチルエーテルなどのポリビニルアルコール、ベンゾ
フェノン又はエチルベンゾフェノンなどのケトン類が挙
げられる。可塑剤の例としては、フタル酸ジブチル、フ
タル酸ジオクチル又はフタル酸ベンジルブチルなどのフ
タル酸エステル、リン酸トリブチルなどのリン酸エステ
ル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸アミルなどのス
テアリン酸エステル、オレイン酸ブチルなどのオレイン
酸エステル、グリセロールエーテル又は高分子量のグリ
コールエーテル、グリセロールエステル及びp−トルエ
ンスルホン酸エステルの誘導体などが挙げられる。さら
に、染料、顔料、紫外線安定剤、消泡剤、増粘剤、凍結
防止剤などを含有させてもよい。
【0025】
【木材保存剤の剤型及び溶剤】本発明の薬剤の剤形は特
に限定されないが、通常は、乳剤、可溶化剤として用い
られる。乳剤及び可溶化剤は、本発明の活性成分及び所
望により浸潤性向上剤等を界面活性剤などの可溶化又は
乳化助剤とともに、あるいは、かかる助剤を含有する溶
剤に添加混合することにより得られる。乳剤及び可溶化
剤は、使用時に水あるいは浸潤性向上剤を含有する水溶
液で希釈して水性系処理液とすることができ、木材中に
加圧浸透させるのに適している。
【0026】乳剤および可溶化剤の調整に使用可能な溶
剤の例としては、トルエン、キシレン、メチルナフタレ
ン系溶剤などの芳香族有機溶媒、ジクロロメタン、トリ
クロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、イソプロピル
アルコール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノー
ル、デカノールなどのアルコール類、ポリエチレングリ
コール、ポリプロピレングリコールなどのエチレングリ
コール系溶剤、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、
ケロシン、N−メチルピロリドン、リン酸エステル、安
息香酸エステルなどが挙げられる。有機溶媒の代わり
に、多価アルコールの脂肪酸エステル誘導体、ポリオキ
シエチレンアルキルアリールエーテルなどの界面活性剤
を使用することもできる。
【0027】木材への加圧浸透処理を行なうにあたって
は、20〜500倍程度に希釈して使用することが好ま
しい。すなわち、主要成分としては、殺菌成分:100
〜10000 ppm、防虫成分:50〜5000ppm、金属イ
オン脂溶化剤:20〜3000ppm(好ましくは60〜15
00ppm)を含有させることが好ましい。希釈は水また
は上に挙げた各種の溶媒を用いて行なうことができる。
【0028】
【防腐効果】本発明の木材保存剤組成物の防腐効果は使
用する殺菌剤の種類や量に依存するが、例えば、トリア
ゾール誘導体が有効に作用する木材腐朽菌には以下の菌
種が含まれる:コニオフォーラ・プテアーナ(Coniophor
a puteana)、コリオルス・ベルシコロール(Coriolus ve
rsicolor) 、ポリア・プラセンタ(Poria placennta)、
ポリア・バポラリア(Poria vaporaria) 、ポリア・バイ
ランチイ(poria vaillantii)、グロエオフィルム・セピ
アリウム(Gloeophylium sepiarium)、グロエオフィルム
・アドラツム(Gloeophylium adoratum) 、グロエオフィ
ルム・アビエチヌム(Gloeophylium abietinum)、グロエ
オフィルム・トラベウム(Gloeophyliumtrabeum)、グロ
エオフィルム・プロタクツム(Gloeophylium protactu
m)、レンチヌス・レピデウル(Lentinus lepideus) 、レ
ンチヌス・エドーデス(Lentinus edodes) 、レンチヌス
・シアチフオルメス(Lentinus cyathiformes) 、レンチ
ヌス・スクアロロスス(Lentinus squarrolosus) 、パシ
ルス・パヌオイデス(Paxillus panuoides)、チロミセス
・パルストリス(Tyromyces palustris) 、プレウロツス
・オストレアツス(Pleurotus ostreatus) 、ドンキオポ
リア・エクスパンサ(Donkioporia expansa) 、セルプラ
・ラクリマンス(Serpula lacrymans) 、セルプラ・ヒマ
ントイドス(Serpula himantoides) 、グレノスポーラ・
グラフィーイ(Glenospora graphii)を含む担子菌類;ク
ラドスポリウム・ヘルバルム(Cladosporium herbarum)
を含む不完全菌類;カエトミウム・グロボスム(Chaetom
ium globosum) 、カエトミウム・アルバ−アレヌルム(C
haetomium alba-arenulum)、ペトリエラ・セチフェラ(P
etriella setifera)、トリクルス・スピラリス(Trichur
usspiralis)、フミコーラ・グリセア(Humicola grisea)
を含む子嚢菌類。
【0029】また、トリアゾール化合物が有効に作用す
る木材変色菌には以下が菌種が含まれる:アウレオバシ
ジウム・プルランス(Aureobasidium pullans) 、スクレ
オフォーマ・ピチオフィーラ(Scleroph pithyophila)、
スコプラリア・フイコミセス(Scopular phycomyces) 、
アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger) 、ペニシ
リウム・バリアビレ(Penicillium variabile) 、トリコ
デルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・
リグノルム(Tricoderma rignorum) 、ダクレチウム・フ
サリオイデス(Dactyleum fusarioides) を含む不完全菌
類;カラトシスチス・ミノル(Caratocystis minor)を含
む子嚢菌類;ムコル・スピノスス(Mucorspinosus)を含
む接合菌類。
【0030】
【防虫効果】また、前記の防虫成分の使用により本発明
に係る木材保存剤が有効に作用する木材破壊昆虫には以
下の種類が含まれる:ヒロトルペス・バユルス(Hylotru
pesbajulus)、クロロフォルス・ピロスス(Chlorophorus
pilosus)、アニビウム・プンクタツム(Anobium puncta
tum) 、クセストビウム・ルフオビロスム(Xestobiumruf
ovillosum)、プチリヌス・ピクチコルニス(Ptilinus pe
ctiocornis) 、デンドロビウム・ペルチネクス(Dendoro
bium pertinex)、エルノビウス・モリス(Ernobius moll
is) 、プリオビウム・カルピニ(Puriobium carpini) 、
リクツス・ブルネウス(Lyctus brunneus) 、リクツス・
アフリカヌス(Lyctus africanus)、リクツス・プラニコ
リス(Lyctus planicollis)、リクツス・リネアリス(Lyc
tus linearis) 、リクツス・プベセンス(Lyctus pubesc
ens)、トロゴキシロン・エクアレ(Trogoxylon aequal
e)、ミンテア・ルギコリス(Minthea rugicollis)、キシ
レボルス(Xyleborus sp.) 、トリプトデンドロン(Trypt
odendron sp.) 、アパテ・モナクス(Apate monachus)、
ボストリクス・カプシンス(Bostrychus capucins)、ヘ
テロボストリクス・ブルンネウス(Heterobostrychus br
unneus) 、シノキシロン(Sinoxylon sp.) 、ジノデルス
・ミヌツス(Dinoderus minutus) を含む鞘翅類;シレク
ス・ユベンクス(Sirex juvencus)、ウロセルス・ギガス
(Urocerus gigas)、ウロセルス・ギガス・タイグヌス(U
rocerus gigas taignus)、ウロセルス・アウグル(Uroce
rus augur)を含む膜翅類;カロテルメス・フラビコリス
(Kalotermes flavicollis)、クリプトテルメス・ブレビ
ス(Cryptotermes brevis) 、ヘトロテルメス・インジコ
ーラ(Heterotermes indicola) 、レチクリテルメス・フ
ラビペス(Reticulitermes flavipes) 、レチクリテルメ
ス・サントネンシス(Reticulitermes santonensis)、レ
チクリテルメス・ルシフグス(Reticulitermes lucifugu
s)、マストテルメス・ダルウイニエンシス(Mastotermes
darwiniensis)、ゾートテルモプシス・ネバデンシス(Z
ootermopsis nevadensis) 、コプトテルメス・フォルモ
サンヌス(Coptotermes formosanus)を含むシロアリ類。
【0031】
【木材保存剤の適用】本発明に係る木材保存剤は、製
材、木材、木材加工品及び建造物(木造建造物及び非木
造建造物に部分的に用いられている木製建材)の処理に
使用できる。例えば、土台、大引、根太、床板、胴縁、
間柱、壁下地板、筋かい、垂木、屋根下地板、浴室軸組
及び床組材、地下室用材などの屋内建築用木材、外構部
材、ロッグハウス、バルコニー、テラス、物干台、門
扉、ロッグキャビン、あずま屋、ぬれ縁、デッキ材など
の屋外建築用木材、枕木、防雪柵、電柱、基礎杭、杭
木、道路用防音壁、踏切板、橋梁、港湾用材、防風壁な
どの土木用、支柱、フラワーポット、垣柵、遊具、木レ
ンガ、ベンチなどの公園用木材、ビニルハウス、花壇
枠、案内板、造園用材などの園芸用材、牧柵、家畜舎な
どの農業用材、その他、梱包用材、コンテナ用材、造船
用材、集成材、冷却塔用材、甲板などに用いられる。木
材の形状は、丸太、板材、角材、棒材、プライウッド
(合板)、チップボードなどのいずれにも適用できる。
【0032】本発明に係る薬剤を用いた処理は、通常、
腐朽対策として施されているのと同様の方法で施すこと
ができる。具体的には、木材それ自体の処理と合板の処
理とがある。木材処理としては、塗布・吹き付け・浸漬
処理、加圧処理、穿孔処理などが通常行なわれる。合板
処理としては、生板処理(吹き付け・浸漬処理など)、
接着剤処理、成板処理(塗布・吹き付けないし加圧処
理)などが通常行なわれる。もっとも、本発明の効果が
最も特徴的に発揮されるのは、上記のうち、浸漬処理や
加圧浸透処理である。
【0033】加圧浸透処理は常法にしたがって行なうこ
とができる。すなわち、加圧タンクに処理しようとする
木材を搬入し、そのまままたは減圧もしくは加圧した後
に木材保存剤組成物をタンクに導入し、加圧して所定時
間処理し木材中に薬剤を浸潤させる。
【0034】
【実施例】以下、実施例及び試験例を挙げて本発明をよ
り具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるもの
ではない。なお、以下の記載において「%」及び「部」
は重量を基準としている。
【0035】製造例 表1に記載の化合物を表示の割合で配合することによ
り、2種類の乳剤を調製した。このうち、単に「供試
剤」としたものが本発明品である。「比較剤」は金属イ
オン脂溶化剤を含まない従来品相当の薬剤組成物であ
る。
【0036】
【表1】 配合成分 供試剤 比較剤 シプロコナゾール 6% 6% プロペンタホス 4% 4% アルキルベンゼン誘導体 20% 22% ノニオン/アニオン混合系界面活性剤 30% 36% シクロヘキサノン 20% 22% 酢酸 10% 10% アセチルアセトン 10% −
【0037】試験例 表1に示した処方の薬剤組成物を使用して下記の処理法
にて木材を処理し、薬剤の木材に対する変色作用の有無
と薬剤の安定性を評価した。 [木材処理法]各薬剤を水で400倍に希釈して、処理
用薬液を調製した。一方、200mmφ×100mmの
スギ丸太を0.3 mφ×3mの大きさのステンレス製処理
容器に入れた。ついで、容器内を600mmHg以上の
減圧状態にして薬剤約400kg/m3 を注入して24
時間放置した。
【0038】[変色試験]前記処理材の両端の木口面に
ついてその変色状態を目視観察した。結果を表2に示
す。なお、表中、アセチルアセトンの欄は、供試薬剤が
この成分を含むか否か示す。なお、「変色なし」では木
口面が処理前と比べほぼ同等の色合いであった。これに
対し「変色あり」では、処理材の木口面の一部または全
部に黒変などの変色が認められた。
【0039】
【表2】供試剤 アセチルアセトン 処理後の変色 供試剤 ○ 変色なし比較剤 × 変色あり
【0040】供試剤と比較剤との対照から理解されるよ
うに、アセチルアセトンの配合は、木材保存剤組成物の
適用による木材の望ましくない変色の防止に有効である
ことがわかる。
【0041】[製剤の安定性の評価方法]調製した各薬
剤を5℃及び40℃で3か月間放置し、各薬剤の初期状
態からの変化を観察して以下の基準で評価した。 ○…初期状態の透明液体から変化なく、かつシプロコナ
ゾール及びプロペンタホスが経時的に分解しない。 ×…分離又は沈殿が生じるか、シプロコナゾール及び/
又はプロペンタホスが経時的に分解する。 安定性はいずれも良好(○)であった。
【0042】試験例1 供試剤および比較剤について、JIS A 9201の方法にした
がい防腐効力を確認した。具体的には、試験体として正
常健全なスギ辺材(木口面:20×20mm、厚さ:1
0mmの木片)40個を4群に分け、まず、供試剤およ
び比較剤を用いて表3に示す処理を行なった。処理され
た試験体は、20日間以上室温に放置した後、各処理群
の試験体をそれぞれさらに2群に分け、一方には耐候処
理を施した後で、他方はそのままで、温度60±2℃で
48時間循環式乾燥機で乾燥した後、約30分間デシケ
ータ中に放置して重量を0.01g まで量り、しかる後に後
述の抗菌性試験を行なった。
【0043】
【表3】処 理 供試薬剤 処 理 濃 度 希釈液 処理方法 1 供試剤 0.02% 水 加圧処理2 比較剤 0.02% 水 加圧処理 *処理濃度は希釈液中のシプロコナゾール濃度を示す。
【0044】[耐候処理]耐候処理は、溶脱と揮散の操
作を交互に10回繰り返して行なった。溶脱操作は、処
理1及び2のそれぞれについて同一処理のものをまとめ
て容量約500mlのビーカーに入れ、試験体の容量の
10倍量の脱イオン水を加えて試験体を水面下に沈め、
マグネティックスターラを用い、25±3℃で回転子を
毎分400〜450回転させ、8時間撹拌して溶脱させ
た。揮散操作は、溶脱操作後直ちに試験体を温度60±
2℃の循環式乾燥器中に入れ、16時間静置して揮発分
を揮散させた。
【0045】[抗菌性試験]供試菌としては以下の2種
類を用い、試験体を供試菌に晒して放置し、重量減少率
を測定した。 1)カワラタケ(Coriolus versicolor) 2)オオウズラタケ(Tyromyces palustris) 具体的には、カワラタケでは直接に、オオウズラタケで
は殺菌した約1mm厚さの耐熱性プラスティックの網を
敷いた上で、試験体を繊維方向を垂直として載せ、26
±2℃、相対湿度70%以上の環境に12週間以上放置
した。その後、試験体を取り出し、表面の菌糸その他の
付着物を十分に取り除き、約24時間風乾した後、温度
60±2℃で48時間乾燥し、約30分間デシケータ中
に放置した後、その重量を0.01g まで量った。重量減少
率は、以下の式によって求めた:
【0046】
【数1】重量現象率=[(試験体の抗菌性試験前重量−
試験体の試験後重量)÷(試験体の抗菌性試験前重
量)]×100 得られた結果を表4に示す。
【0047】
【表4】 耐候処理 重量減少率(%) の有無 オオウズラタケ カワラタケ 処理1 無 0.84 0.93 有 1.67 1.58 処理2 無 1.06 1.12 有 1.81 1.89 *オオウズラタケ、カワラタケは供試菌の種類。
【0048】本発明の薬剤による処理を施さない試験体
(スギ)についても同様の試験を行なったところ、重量
減少率はカワラタケで25.6%、オオウズラタケで47.8%
であった。なお、一般に、実用では重量減少率が3%以
下とされている。
【0049】試験例2 供試剤および比較剤について、日本木材保存協会規格第
1号(1989)に準じてナミダタケに関する防腐効力を確認
した。具体的には、試験体として正常健全なアカマツ辺
材(柾目面:40×20mm、厚さ:5mmの木片。な
お、木口面はエポキシ樹脂でシール。)を4群に分け、
まず、各実施例の製剤を用いて表5に示す4種類の処理
を行なった。処理された試験体は、20日間以上室温に
放置した後、各処理群の試験体をそれぞれさらに2群に
分け、一方には耐候処理を施した後で、他方はそのまま
で、温度60±2℃で48時間循環式乾燥機で乾燥した
後、約30分間デシケータ中に放置して重量を0.01g ま
で量り、しかる後に後述の抗菌性試験を行なった。
【0050】[耐候処理]試験例1に示した耐候処理と
同じ処理を行なった。 [抗菌性試験]供試菌としてナミダタケ(Serpula lacry
mas(Wulf. ex Fr.)Schroeter) を用い、試験体を供試菌
に晒して放置し、重量減少率を測定した。具体的には試
験体は別々に1培養瓶ごとに3個ずつ所定のテフロン板
枠にはめ、殺菌した後、40×5mmの面が下になるよ
うに供試菌の菌叢に載せ、温度20±2℃、相対湿度7
0%以上のところに8週間放置した。その後、試験体を
取り出し、表面の菌糸その他の付着物を十分に取り除
き、約24時間風乾した後、温度60±2℃で48時間
風乾し、約30分間デシケータ中に放置した後、その重
量を0.01gまで量った。得られた結果を表5に示す。
【0051】
【表5】 *ナミダタケは供試菌。
【0052】本発明の薬剤による処理を施さない試験体
(アカマツ)についても同様の試験を行なったところ、
重量減少率は29.71 %であった。なお、一般に、実用で
は重量減少率が3%以下とされている。上記の結果か
ら、本発明の処理剤は、耐候処理の有無に関わらず、無
処理材に比べて著しく優れているだけでなく、実用基準
を大きく上回る極めて優れた防腐効力を有することが確
認された。
【0053】試験例3 木材の防蟻効力試験 供試剤および比較剤について、日本木材保存協会規格第
11号(1992)木材用防蟻剤の防蟻効力試験(2)野外試
験方法にしたがって防蟻効果を調べた。野外防蟻試験
は、イエシロアリ生息地に処理木材を埋め込み、食害の
有無を調査するものである。試験に供する木材は、クロ
マツの辺材で、年輪数が10mmにつき3〜5個、二方
マサで各面を平滑かつ正確にカンナ仕上げをした350
±0.5 (L)mm×30±0.5 (R)mm×30±0.5
(T)mmの直方体とし、一端50mmを削ってくい状
とした。試験体は処理試験体と無処理試験体とし、数は
各々5本、25本とした。処理試験体には、使用薬剤ご
とに表6のように調製した試料液を、表面にむらなく塗
布した。
【0054】
【表6】処 理 供試薬剤 処 理 濃 度 希釈液 3 供試剤 0.02% 水4 比較剤 0.02% 水 *処理濃度は希釈液中のシプロコナゾール濃度を示す。
【0055】塗布量は200g/mとし、塗布した後
10日間以上室温で放置した。試験地は、イエシロアリ
(Coptotermes formosanus SHIRAI) 生息地で営巣が確認
された野外とし、処理試験体は巣の周辺に70cm間隔
に5本配置した。無処理試験体は処理試験体を中心とし
て半径10cmの円周上に5本配置した。各試験体は所
定の位置において試験体を垂直にして地表面下30cm
の深さまで埋め込んだ。試験期間は2年とし、1年経過
したのち処理試験体を引き抜いて食害の有無を観察し
た。食害を受けた試験体は試験を中止し、食害を受けて
いない試験体について引き続いて1年試験を継続した。
無処理試験体の食害の有無はイエシロアリの活動期を3
カ月経過した後に確認する。無処理試験体に食害が認め
られないときには、試験場所を変更した。
【0056】試験結果は、処理試験体の食害の有無によ
って以下のように判定し、食害度A〜Cをもって示す。 食害度 A:2年間食害なし。 B:1〜2年間に食害あり。 C:1年以内に食害あり。 試験結果を表7に示す。
【0057】
【表7】処 理 処理3 処理4 無処理 食害度 A A C 上記のとおり、本発明の薬剤により処理した木材ではい
ずれもイエシロアリによる食害は全く認められず、本発
明の薬剤が優れた効果を有することが確認された。
【0058】
【発明の効果】本発明の木材保存剤組成物及び木材保存
剤処理時の木材変色防止方法によれば、種々の殺菌剤等
を浸漬処理や加圧処理により木材に注入するに際して従
来問題となっていた、木材中の天然成分と浴槽や耐圧タ
ンクから溶出した金属イオンとの反応に起因すると推定
される木材の変色の問題が解消される。かかる効果を奏
する金属イオン脂溶化剤は木材保存剤組成物中に配合さ
れるため、作業液に変色防止剤を添加するなど現場負担
の大きい操作手順が必要ない。したがって、木材の腐朽
処理が容易かつ確実に行なうことができ、木材保存剤と
して極めて有用である。また、2種類以上の殺菌剤を組
合わせたり、殺虫成分、浸透性向上剤、界面活性剤及び
/又は溶剤を併用することが可能であるため、木材への
浸潤度を向上させることはもとより、幅広い菌に対して
の防腐・防黴性に優れており、木材の腐食、黴の繁殖に
よる木材表面及び内部の着色、シロアリの被害のすべて
を同時に防止することが可能である。さらに、水系薬剤
として調製することも可能で、安定性も高い。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 //(A01N 43/653 57:14) (72)発明者 前田 恭宏 茨城県つくば市緑ケ原2丁目1番 株式会 社エス・ディー・エスバイオテックつくば 研究所内 (72)発明者 佐久間 清 東京都港区東新橋2丁目12番7号 株式会 社エス・ディー・エスバイオテック内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 殺菌成分と金属イオン脂溶化剤を必須成
    分として含み、必要に応じて、殺虫成分、脂肪族の有機
    酸、界面活性剤、及び/又は溶剤を含む木材保存剤組成
    物。
  2. 【請求項2】 金属イオン脂溶化剤を0.2 〜30重量%
    含有する請求項1に記載の木材保存剤組成物。
  3. 【請求項3】 金属イオン脂溶化剤がアセチルアセト
    ン、フルオロトリフルオロアセトン、ベンゾイルトリフ
    ルオロアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ヘ
    プタフルオロブタノイルピバロイルメタン、ジピバロイ
    ルメタン、マロン酸アミド、ビウレット及びオキサミド
    から選択される請求項1に記載の木材保存剤組成物。
  4. 【請求項4】 金属イオン脂溶化剤がアセチルアセトン
    である請求項3に記載の木材保存剤組成物。
  5. 【請求項5】 殺菌成分が、トリアゾール誘導体、スル
    ホンアミド類、ベンズイミダゾール類、チオシアネート
    類、第4級アンモニウム塩、モルホリン誘導体、フェノ
    ール類、有機ヨード化合物、有機ブロモ誘導体、イソチ
    アゾリン類、ベンズイソチアゾリン類、ピリジン類、金
    属石鹸、有機スズ誘導体、ジアルキルジチオカルバメー
    ト類、ニトリル類、活性ハロゲン原子を含有する微生物
    剤、2−メルカプトベンゾチアゾール類、ベンズチアゾ
    ール類、キノリン類及びホルムアルデヒドを脱離する化
    合物の少なくとも1種から選択される請求項1に記載の
    木材保存剤組成物。
  6. 【請求項6】 殺虫成分が、ホウ素化合物、りん酸のエ
    ステル、カルバメート類、ピレスロイド類、ニトロイミ
    ン類及びニトロメチレン類から選択される請求項1に記
    載の木材保存剤組成物。
  7. 【請求項7】 脂肪族の有機酸が、低級脂肪族モノカル
    ボン酸、低級脂肪族ジカルボン酸、不飽和カルボン酸及
    びヒドロキシ酸から選択される請求項1に記載の木材保
    存剤組成物。
  8. 【請求項8】 木材保存剤組成物に金属脂溶化剤を添加
    ・併用することを特徴とする木材保存剤処理時の木材変
    色防止方法。
  9. 【請求項9】 金属脂溶化剤が、アセチルアセトン、フ
    ルオロトリフルオロアセトン、ベンゾイルトリフルオロ
    アセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ヘプタフ
    ルオロブタノイルピバロイルメタン、ジピバロイルメタ
    ン、マロン酸アミド、ビウレット及びオキサミドから選
    択される請求項8に記載の木材変色防止方法。
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