JPH082779B2 - リポソームの精製方法 - Google Patents

リポソームの精製方法

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JPH082779B2
JPH082779B2 JP2125535A JP12553590A JPH082779B2 JP H082779 B2 JPH082779 B2 JP H082779B2 JP 2125535 A JP2125535 A JP 2125535A JP 12553590 A JP12553590 A JP 12553590A JP H082779 B2 JPH082779 B2 JP H082779B2
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【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野] 本発明は、医薬品あるいはその担体等として利用され
るリポソームの精製方法に関する。 さらに詳しくは、本発明は、リポソーム製造過程にお
いて、該リポソームに保持されなかった薬剤を効率よく
分離・除去し、薬剤を内包するリポソームを精製する方
法に関する。 [従来の技術および課題] リポソームを水溶性の薬剤の担体として利用する試み
が広く行われている。(Gregoriadis et al.,Ann.N.Y.A
cad.Sci.,446,319(1985))。 また、リポソームの内水相に酸素運搬体であるヘモグ
ロビンを内包させ、リポソームを人工の赤血球として利
用する試みも行われている(特開昭62−178521号公
報)。これらの試みにおいて、リポソームを薬剤の担体
として使用するにあたり、薬剤の水溶液中において内水
相に薬剤を内包するリポソームを形成させて、これを水
溶液中に懸濁状態におき、その後リポソームに内包され
なかった薬剤を分離・除去する必要がある。従来、リポ
ソームに内包されなかった薬剤を分離するためには、リ
ポソーム懸濁液を遠心処理して薬剤を内包するリポソー
ムを沈降させ、リポソームに取り込まれなかった薬剤を
分離・除去するかあるいは限外濾過により薬剤を内包す
るリポソームを濃縮・精製する等の手法がとられてき
た。しかしながら、遠心処理を用いた方法では、リポソ
ームを完全に沈降させるためには5万〜10万G程度の非
常に強い遠心加速度が必要であり、製造工程上のスケー
ルアップが困難であった。また、限外濾過を用いた方法
では、リポソームに内包させる薬剤の分子量が大きい場
合には精製効率が悪く、また滅菌が困難であること等の
点から工業的生産には適していなかった。 [発明が解決しようとする課題] 従って、本発明は、薬剤を内包するリポソームを精製
する過程において、リポソームに内包されなかった薬剤
を分離・除去するにあたり、スケールアップが容易で、
しかも精製効率の良好なリポソームの精製方法を提供す
ることを目的とする。 [課題を解決するための手段] 上記の課題を解決するため、本発明は、以下の構成を
有する。 (1)薬剤を内包するリポソームと、該リポソームに取
り込まれなかった遊離の薬剤とを含有するリポソーム懸
濁液に、該リポソームを凝集させ得る物質を添加してリ
ポソームを凝集させた後、凝集したリポソームを沈降さ
せ、上清成分を分離・除去し、沈降したリポソームを溶
媒に希釈して分散させることを特徴とするリポソームの
精製方法。 (2)リポソームを凝集させ得る物質が、デキストラン
またはヒドロキシエチルスターチである前記(1)記載
のリポソームの精製方法。 (3)前記物質の平均分子量が1万〜20万である前記
(2)記載のリポソームの精製方法。 (4)リポソームを凝集させ得る物質が、平均分子量3
万〜4万のヒドロキシエチルスターチである前記(1)
記載のリポソームの精製方法。 (5)薬剤がヘモグロビンである前記(1)ないし
(4)のいずれかに記載のリポソームの精製方法。 本発明において、リポソームに内包される薬剤は、水
溶性のものであれば特に制限はないが、in vitroまたは
in vivoで不安定なもの、体内で徐々に放出され、ある
いは特定の臓器に速やかに分布することが所望されてい
るものが好適に使用されうる。具体的な例としては、ヘ
モグロビン、インシュリン、ヘパリン、ウロキナーゼ、
ユビデカノン、メトトレキセートン、ネオマイシン、プ
レオマイシン、テトラサイクリン、チトクロムC、アス
パラギナーゼ、シチシンアラビノシド、β−グルクロン
ダーゼ、ヘキソサミンダーゼ、アミノグルコシダーゼ等
があげられる。 このような薬剤の濃度は、リポソームの用途に応じて
適宜決定すればよい。 本発明におけるリポソーム形成脂質は特に制限はな
く、リポソームを形成するものであれば天然または合成
の脂質が使用可能である。特にリン脂質が好適に使用さ
れ、その例としては、レシチン、ホスファチジルエタノ
ールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリ
ン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトー
ル、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリ
ン、カルジオリピンおよびこれらを常法に従って水素添
加したものがあげられ、これらを組み合わせて用いるこ
ともできる。 さらにリポソーム形成脂質には、所望によりステロー
ル等の膜構造強化剤、電荷付与物質(例えば、ホスファ
チジン酸、ジセチルホスフェートまたはステアリン酸、
オレイン酸、ミリスチン酸、リノール酸、リノレン酸等
の高級脂肪酸等)、さらにはビタミンE等の抗酸化剤を
添加することができる。 薬剤を内包するリポソームの懸濁液を得るには、上述
のリポソーム形成脂質に所望により前述のような膜構造
強化剤等を添加・混合し、混合物をクロロホルム、エー
テル等の適当な有機溶媒に溶解し、得られた溶液からエ
バポレーション等の手法により有機溶媒を除去し、脂質
膜を形成する。得られた脂質膜に薬剤の水溶液を加えて
混合し、混合物にフレンチプレス、超音波照射あるいは
高速攪拌等の公知の処理を施すことにより、薬剤を内包
するリポソームの懸濁液を得ることができる。 得られたリポソーム懸濁液には、リポソームを凝集さ
せ得る物質(リポソーム凝集剤)を添加する。このよう
なリポソーム凝集剤としては、マンナン、マンニトール
等の多糖類、アルブミン、グロブリン等の蛋白質、ある
いはアカシアゴム、修飾ゼラチン、ポリビニルピロリド
ン、デキストラン、ポリエチレングリコール、カルボキ
シメチルセルロース、ヒドロキシエチルスターチ等の水
溶性高分子化合物があげられ、特に、デキストラン、ヒ
ドロキシエチルスターチが好適に使用される。 ここで、リポソーム凝集剤としてデキストランを使用
する場合には、その平均分子量は1万〜20万が好まし
く、より好ましくは3万〜10万である。このような範囲
に設定することにより、懸濁液中のリポソームが十分に
凝集し、よってリポソームの沈降処理が効率良く行え
る。 また、ヒドロキシエチルスターチを使用する場合に
は、その平均分子量は1万〜20万が好ましく、より好ま
しくは3万〜4万である。このような範囲に設定するこ
とにより、懸濁液中のリポソームが十分に凝集し、よっ
てリポソームの沈降処理が効率良く行える。またその置
換度は、0.1〜1、より好ましくは0.5〜0.6である。特
に、平均分子量3万〜4万のヒドロキシエチルスターチ
を使用した場合には、粒径の小さなリポソーム(5nm〜1
5nm)は沈降せず、遊離の薬剤とともに上清成分として
分離・除去される。従って、回収すべきリポソームの粒
径の分布をより狭めることができる。このような粒径の
小さなリポソームは、薬剤のカプセル化効率が低く、し
かも膜構造が不安定なために融合して巨大なリポソーム
を形成しやすい。従って、このような粒径の小さなリポ
ソームを分離・除去することにより、より安全性を高め
ることができる。 リポソーム懸濁液中のリポソーム凝集剤の濃度は、1
%〜20重量%が好ましい。より好ましくは3%〜20%で
ある。このような範囲に設定することにより、懸濁液中
のリポソームが十分に凝集し、よってリポソームの沈降
処理が効率良く行える。 上述のような操作でリポソームを凝集させた後は、リ
ポソーム懸濁液に遠心処理を施すことにより凝集したリ
ポソームを沈降させ、上清をデカンテーション等の方法
にて分離・除去する。この場合の遠心処理においては、
従来のように遠心加速度50,000〜100,000G程度の強力な
遠心処理を施す必要はなく、50,000G未満、好ましくは1
5,000G以下の緩やかな遠心処理を施してやれば十分であ
る。また、遠心処理に比べると、処理時間が延長される
が、自然沈降によっても十分にリポソームを沈降させる
ことができる。なお、この分離・除去処理は2回〜4回
繰り返して行うことが好ましい。その後、沈降したリポ
ソームを生理食塩水等の適当な分散媒に希釈して分散す
ることでリポソーム凝集は消失する。この場合、リポソ
ームの再凝集を防止するために、分散媒中のリポソーム
凝集剤の濃度は0.5%以下に調整することが好ましい。 なお、特に薬剤としてヘモグロビンを用いる場合に
は、赤血球を常法に従い洗浄、溶血し、ストローマを除
去した後、分画分子量5万の膜を使用した限外濾過によ
り濃縮したものが使用され、その濃度は25%〜50%が好
ましい。より好ましくは、40%〜50%である。 次に実施例および比較例を示して本発明をさらに詳細
に説明する。
【実施例】
水素添加大豆レシチン20g、コレステロール10g、ミリ
スチン酸2.5gをジクロロメタン100mlに溶解し、エバポ
レーションによりジクロロメタンを除去した。得られた
脂質混合物に50重量%ヘモグロビン水溶液200mlを加
え、振とう後、高速攪拌機(ワーリングブレンダー:ワ
ーリング社製)にて14,000rpmで3分間の攪拌処理を10
回繰り返した。得られた処理液に、1,000mlの6%重量
ヒドロキシエチルスターチ加生理食塩水(平均分子量4
0,000、置換度0.50〜0.55)を加え、12,000Gの遠心加速
度で30分間遠心した。遠心後デカンテーションにより上
清成分を分離・除去し、これに先ほどと同量のヒドロキ
シエチルスターチ加生理食塩水を加えてリポソームを再
浮遊させた後、同様の条件で遠心した。この処理を3回
繰り返した後、得られたリポソーム沈澱物に生理食塩水
を1,000ml加え希釈し分散させた。このリポソーム懸濁
液を0.45μmのフィルター(ミリポア社製)により濾過
し、濾液を限外濾過により濃縮し、ヘモグロビン濃度5
重量%のヘモグロビン内包リポソーム400mlを得た。こ
の濃縮液中のヒドロキシエチルスターチ濃度は0.2重量
%であった。また、濃縮液中に存在するヘモグロビン内
包リポソームの平均粒径を動的光散乱粒径測定装置(大
塚電子製)により求めたところ210nmであり、リポソー
ムに内包されていない遊離のヘモグロビンは1重量%以
下であった。また電子顕微鏡写真により測定したヘモグ
ロビン内包リポソームの粒径分布を第1図に示す。
【比較例】
実施例と同様の方法により得られた処理液に、1,000m
lの生理食塩水を加え、分画分子量10万の限外濾過膜を
用いて限外濾過を行った。処理液が約300mlとなったと
ころで、さらに1,000mlの生理食塩水を加えるという方
法を10回繰り返し、遊離のヘモグロビンを分離・除去し
た。このリポソーム懸濁液を実施例と同様の方法で濾過
・濃縮し、ヘモグロビン濃度5重量%のヘモグロビン内
包リポソーム450mlを得た。この濃縮液中のヘモグロビ
ン内包リポソームの平均粒径は190nm、遊離のヘモグロ
ビンは5重量%であった。また実施例と同様に電子顕微
鏡により測定した粒径分布を第1図に示す。 第1図にて明らかなように、実施例において調整した
ヘモグロビン内包リポソームは、比較例において調整し
たリポソームより粒径の小さなリポソーム(5〜15nm)
の含有量が少なく、より狭い粒径分布を示した。 また、実施例および比較例において調整したヘモグロ
ビン内包リポソームを4℃にて1ケ月間保存した後、光
学顕微鏡により観察したところ、実施例において調整し
たヘモグロビン内包リポソームでは、調整直後とほとん
ど変化が観察されなかったのに対し、比較例において調
整したヘモグロビン内包リポソームでは、粒径の小さい
不安定なリポソームが融合して生成したと考えられる1
μ以上の巨大なリポソームが多数観察された。これらの
巨大なリポソームは、生体に投与した際に、抹消の毛細
血管で栓塞することが考えられ、安全性において問題が
ある。また、実施例において遠心分離を使用せず、ヘモ
グロビン内包リポソームを自然沈降させた場合、沈降に
は6〜8時間の時間がかかり、さらに沈降・再浮遊処理
を5〜6回程度繰り返す必要があったが、得られたヘモ
グロビン内包リポソームは遠心分離を使用した場合と何
等変化がなかった。また、実施例においてヒドロキシエ
チルスターチをデキストラン(平均分子量70,000)に代
える以外は同様にしてリポソームの精製を行ったところ
実施例よりやや広い粒径分布を示したが、巨大なリポソ
ームは観察されなかった。さらに、実施例においてヒド
ロキシエチルスターチをマンナン、アルブミンに代える
以外は同様にしてリポソームの精製を行ったところ、い
ずれの場合もデキストランを用いた場合とほぼ同様の結
果を示した。 [発明の効果] 以上、詳述したように、本発明に係るリポソームの精
製方法によれば、リポソーム懸濁液に、該リポソームを
凝集させ得る物質を添加してリポソームを凝集させた後
に、凝集したリポソームを沈降させるために、この沈降
処理に際して、従来のような強力な遠心処理を必要とせ
ず、自然沈降させるか、あるいは緩やかな遠心処理を施
すことによって、リポソームを沈降させることができ
る。このため、製造工程上のスケールアップが容易であ
る。 また、本発明のリポソームの精製方法によれば、リポ
ソームを凝集させ得る物質が、平均分子量3〜4万のヒ
ドロキシエチルスターチであるので、遊離の薬剤ととも
に、構造的に不安定であって融合しやすい粒径の小さな
リポソームを分離・除去することができるため、安全性
において優れている。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例および比較例において精製したヘモグロ
ビン内包リポソームの粒径分布を示す図である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】薬剤を内包するリポソームと、該リポソー
    ムに取り込まれなかった遊離の薬剤とを含有するリポソ
    ーム懸濁液に、該リポソームを凝集させ得る物質を添加
    してリポソームを凝集させた後、凝集したリポソームを
    沈降させ、上清成分を分離・除去し、沈降したリポソー
    ムを溶媒に希釈して分散させることを特徴とするリポソ
    ームの精製方法。
  2. 【請求項2】リポソームを凝集させ得る物質が、デキス
    トランまたはヒドロキシエチルスターチである請求項1
    記載のリポソームの精製方法。
  3. 【請求項3】前記物質の平均分子量が1万〜20万である
    請求項2記載のリポソームの精製方法。
  4. 【請求項4】リポソームを凝集させ得る物質が、平均分
    子量3万〜4万のヒドロキシエチルスターチである請求
    項1記載のリポソームの精製方法。
  5. 【請求項5】薬剤がヘモグロビンである請求項1ないし
    4のいずれかに記載のリポソームの精製方法。
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