JPH08269765A - 摺動面構成体 - Google Patents

摺動面構成体

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JPH08269765A
JPH08269765A JP7099593A JP9959395A JPH08269765A JP H08269765 A JPH08269765 A JP H08269765A JP 7099593 A JP7099593 A JP 7099593A JP 9959395 A JP9959395 A JP 9959395A JP H08269765 A JPH08269765 A JP H08269765A
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crystals
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健児 堂坂
Yusuke Toyoda
裕介 豊田
Katsumune Tabata
勝宗 田畑
Hiroshi Hinuma
博 肥沼
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 潤滑剤の粘度が高い場合にもフリクションロ
スを低減し得る摺動面構成体を提供する。 【構成】 摺動面構成体は金属結晶の集合体より構成さ
れる。丸みを帯びた丸み付角錐状金属結晶6の、摺動面
における面積率Aは40%≦A≦100%である。丸み
付角錐状金属結晶6における各稜線7は凸弧状をなし、
また相隣る両稜線7間の各斜面対応領域8は、各稜線7
を形成する一方の斜面である2つの帯状領域9と、両帯
状領域9に連なり、且つ裾部10側より頂部11側に向
って開口幅が漸次狭くなるV溝形領域8とよりなる。こ
のような丸み付角錐状金属結晶6を摺動面に存在させる
と、その摺動面においては高粘度の潤滑油の流動抵抗が
低減されるので、その潤滑油を円滑に流すことが可能で
ある。これにより、摺動面に形成される潤滑油膜の剪断
抵抗を低めてフリクションロスを低減することができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は摺動面構成体、特に、金
属結晶の集合体より構成される摺動面構成体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種摺動面構成体としては、例
えば内燃機関のAl合金製ピストンと鋳鉄製シリンダス
リーブとの組合せにおいて、そのシリンダスリーブ内周
面に、摺動特性の向上を狙って設けられるメッキ層が知
られている。
【0003】しかしながら、内燃機関が高速、且つ高出
力化の傾向にある現在の状況下では、従来の摺動面構成
体はその摺動面が比較的平滑であることに起因して潤滑
油保持性、つまり保油性が十分でなく、耐焼付き性が乏
しいという問題があった。
【0004】そこで、本出願人は先に、摺動面構成体と
してその摺動面に多数の角錐状金属結晶を有するものを
開発した(例えば、特開平6−174089号公報参
照)。
【0005】このように構成すると、相隣る両角錐状金
属結晶は相互に食込んだ状態を呈し、したがって摺動面
は、多数の微細な山部と、それら山部の間に形成された
多数の微細な谷部と、山部相互の食込みに因る多数の微
細な沢部とからなる入組んだ様相を呈するので、摺動面
構成体の保油性が良好となる。これにより摺動面構成体
の耐焼付き性の向上が図られる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記摺動面
構成体について種々検討を加えたところ、例えば低温時
等において潤滑油の粘度が高い場合にはその潤滑油の流
れに円滑さを欠き、その結果、動摩擦係数μが比較的高
くなるためフリクションロスが増加傾向となる、という
ことが判明した。
【0007】本発明は前記に鑑み、潤滑油の粘度が高い
場合にもフリクションロスを低減することが可能な前記
摺動面構成体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、金属結晶の集
合体より構成される摺動面構成体において、丸みを帯び
た丸み付角錐状金属結晶の摺動面における面積率Aが4
0%≦A≦100%であり、前記丸み付角錐状金属結晶
における各稜線は凸弧状をなし、また相隣る両稜線間の
各斜面対応領域は、各稜線を形成する一方の斜面である
2つの帯状領域と、両帯状領域に連なり、且つ裾部側よ
り頂部側に向って開口幅が漸次狭くなるV溝形領域とよ
りなることを特徴とする。
【0009】
【作用】丸み付角錐状金属結晶の面積率Aを前記のよう
に設定すると、相隣る両丸み付角錐状金属結晶は相互に
食込んだ状態を呈し、したがって摺動面は、多数の微細
な山部と、それら山部の間に形成された多数の微細な谷
部と、山部相互の食込みに因る多数の微細な沢部とから
なる入組んだ様相を呈する。
【0010】この場合、角錐状金属結晶の各稜線が直線
状であって頂部が尖っており、また相隣る両稜線間の斜
面対応領域が、裾部側より頂部側に向って開口幅が漸次
狭くなるように比較的深いV溝形に形成されている、つ
まり、角錐状金属結晶が角(かど)張り型であると、低
温時等において潤滑油の粘度が高いときに、角張り型角
錐状金属結晶が塞止め作用をなすため潤滑油の流れに円
滑さを欠く、という問題が起る。
【0011】これに対し前記のような丸み付角錐状金属
結晶を摺動面に存在させると、その摺動面においては高
粘度の潤滑油の流動抵抗が低減されるので、その潤滑油
を円滑に流すことが可能である。これにより、摺動面に
形成される潤滑油膜の剪断抵抗を低めてフリクションロ
スを低減することができる。
【0012】また摺動面が前記のように入組んだ様相を
呈することから、摺動面構成体は潤滑油の粘度に殆ど関
係なく、良好な保油性を有する。これにより摺動面構成
体は、それが苛酷な摺動環境に置かれても優れた耐焼付
き性を発揮する。一方、無潤滑下においても、多数の微
細な丸み付角錐状金属結晶により摺動荷重の分散が図ら
れるので、摺動面構成体の耐焼付き性は比較的良好であ
る。
【0013】なお、丸み付角錐状金属結晶の面積率Aが
A<40%では摺動面が単純化傾向となるので望ましく
ない。
【0014】
【実施例】図1において、内燃機関用シリンダブロック
1はAl合金製シリンダブロック本体1aと鋳鉄製シリ
ンダスリーブ2とを備え、そのシリンダスリーブ2の内
周周面3にメッキ処理により層状摺動面構成体4が形成
される。シリンダスリーブ2内には、Al合金製ピスト
ンPが摺動自在に設けられる。
【0015】摺動面構成体4は、実施例では図2に示す
ように体心立方構造(bcc構造)を持つ金属結晶の集
合体より構成される。その集合体は、図3に示すよう
に、シリンダスリーブ2の内周面3より柱状に成長し、
且つミラー指数で(hhh)面を、摺動面4a側に向け
た多数の(hhh)配向性金属結晶5、またはシリンダ
スリーブ2の内周面3より柱状に成長し、且つミラー指
数で(2hhh)面を摺動面4a側に向けた多数の(2
hhh)配向性金属結晶の少なくとも一方を有する。
【0016】前記のようにbcc構造を持つ金属結晶の
集合体がミラー指数で(hhh)面を摺動面4a側に向
けた多数の(hhh)配向性金属結晶5を有する場合、
それら(hhh)配向性金属結晶5の先端部を、図4,
5に示すように摺動面4aにおいて丸みを帯びた丸み付
六角錐状金属結晶(丸み付角錐状金属結晶)6にするこ
とができる。丸み付六角錐状金属結晶6は、同様に(h
hh)配向性金属結晶である丸み付三角錐状金属結晶に
比べて平均粒径が小さく、且つ粒径も略均一である。丸
み付六角錐状金属結晶6において、粒径と高さとの間に
は相関関係があり、したがって粒径が略均一である、と
いうことは高さも略等しいということである。
【0017】丸み付六角錐状金属結晶6における各稜線
7は凸弧状をなし、また相隣る両稜線7間の各斜面対応
領域8は、各稜線7を形成する一方の斜面である2つの
帯状領域9と、両帯状領域9に連なり、且つ裾部10側
より頂部11側に向って開口幅が漸次狭くなるV溝形領
域12とよりなる。
【0018】丸み付六角錐状金属結晶6の、摺動面4a
における面積率Aは40%≦A≦100%に設定され
る。
【0019】このように面積率Aを設定すると、図4に
示すように丸み付六角錐状金属結晶6において、相隣る
ものは相互に食込んだ状態となる。これにより摺動面4
aは、多数の極微細な山部13と、それら山部13の間
に形成された多数の極微細な谷部14と、山部13相互
の食込みに因る多数の極微細な沢部15とからなる非常
に入組んだ様相を呈する。
【0020】この場合、図6に示すように六角錐状金属
結晶61 の各稜線7が直線状であって頂部11が尖って
おり、また相隣る両稜線7間の斜面対応領域8が、裾部
10側より頂部11側に向って開口幅が漸次狭くなるよ
うに比較的深いV溝形に形成されている、つまり、六角
錐状金属結晶61 が角(かど)張り型であると、低温時
等において潤滑油の粘度が高いときに、角張り型角錐状
金属結晶61 が塞止め作用をなすため潤滑油の流れに円
滑さを欠くことになる。
【0021】これに対し前記のような丸み付角錐状金属
結晶6を摺動面4aに存在させると、その摺動面4aに
おいては高粘度の潤滑油の流動抵抗が低減されるので、
その潤滑油を円滑に流すことが可能である。これによ
り、摺動面4aに形成される潤滑油膜の剪断抵抗を低く
めてフリクションロスを低減することができる。
【0022】また摺動面4aが前記のように入組んだ様
相を呈することから、摺動面構成体4は潤滑油の粘度に
殆ど関係なく、良好な保油性を有する。これにより摺動
面構成体4は、それが苛酷な摺動環境に置かれても優れ
た耐焼付き性を発揮する。一方、無潤滑下においても、
多数の微細な丸み付六角錐状金属結晶6により摺動荷重
の分散が図られるので、摺動面構成体4の耐焼付き性は
比較的良好である。
【0023】さらに丸み付六角錐状金属結晶6の均一微
細化に伴い、局部的な高面圧化を回避すると共に摺動荷
重の微細分化を達成することができ、これにより摺動面
構成体4は、潤滑下では勿論のこと、無潤滑下において
も優れた耐摩耗性を発揮する。
【0024】前記丸み付六角錐状金属結晶6において、
そのV溝形領域12の谷底部分16を稜線7に倣うよう
に凸弧状をなすように形成することも可能である。この
ように構成すると、V溝形領域12が浅くなるので、高
粘度の潤滑油の流動性を一層向上させることができる。
【0025】bcc構造を持つ金属結晶の集合体がミラ
ー指数で(2hhh)面を摺動面4a側に向けた多数の
(2hhh)配向性金属結晶を有する場合、それら(2
hhh)配向性金属結晶の先端部を丸み付小角錐状金属
結晶にすることができる。摺動面4aにおいて、丸み付
六、三角錐状金属結晶および丸み付小角錐状金属結晶と
いった丸み付角錐状金属結晶が混在する場合にも、それ
らの、摺動面4aにおける面積率Aは40%≦A≦10
0%に設定される。
【0026】図7に示すように、摺動面4aに沿う仮想
面17に対する(hhh)面の傾きは丸み付六角錐状金
属結晶6等の傾きとなって現われるので、摺動面構成体
4の保油性および耐摩耗性に影響を与える。そこで、
(hhh)面が仮想面17に対してなす傾き角θは0°
≦θ≦15°に設定される。この場合、(hhh)面の
傾き方向については限定されない。傾き角θがθ>15
°になると、摺動面構成体4の保油性および耐摩耗性が
低下する。この傾き角θは(2hhh)面についても同
じである。
【0027】bcc構造を持つ金属結晶としては、F
e、Cr、Mo、W、Ta、Zr、Nb、V等の単体ま
たは合金の結晶を挙げることができる。
【0028】摺動面構成体4を形成するためのメッキ処
理において、電気Feメッキ処理を行う場合のメッキ浴
条件は、表1の通りである。
【0029】
【表1】
【0030】表1において、pHの調整はアンモニア水
にて行なわれる。
【0031】通電法としては、主としてパルス電流法が
適用される。パルス電流法においては、図8に示すよう
に、メッキ用電源の電流Iは、その電流Iが最小電流I
minから立上って最大電流Imax に至り、次いで最小電
流Imin へ下降するごとく、時間Tの経過に伴いパルス
波形を描くように制御される。
【0032】そして、電流Iの立上り開始時から下降開
始時までの通電時間をTONとし、また先の立上り開始時
から次の立上り開始時までを1サイクルとして、そのサ
イクル時間をTC としたとき、通電時間TONとサイクル
時間TC との比、即ち、時間比TON/TC はTON/TC
≦0.45に設定される。また最大陰極電流密度CDm
axはCDmax≧0.22A/dm2 に、また平均陰極
電流密度CDmは0.1A/dm2 ≦CDm≦10A/dm
2 にそれぞれ設定される。
【0033】このようなパルス電流法を適用すると、メ
ッキ浴内において電流が流れたり、流れなかったりする
ことに起因して陰極近傍のイオン濃度が均一化され、こ
れにより摺動面構成体4の組成を安定化させることがで
きる。
【0034】前記電気Feメッキ処理において、メッキ
浴条件および通電条件を変えることによって(hhh)
配向性Fe結晶または(2hhh)配向性Fe結晶の析
出、その存在量等を制御する。この制御は、パルス電流
法の適用下では容易であり、したがって摺動面4aを狙
い通りの形態に形成し易くなる。
【0035】メッキ処理としては、電気メッキ処理の外
に、例えば気相メッキ法であるPVD法、CVD法、ス
パッタ法、イオンプレーティング等を挙げることができ
る。スパッタ法によりW、Moメッキを行う場合の条件
は、例えばAr圧力 0.2〜1Pa、平均Ar加速電
力 直流1〜2.5kW、母材温度 150〜450℃
である。CVD法によりWメッキを行う場合の条件は、
例えば原材料 WF6、ガス流量 2〜15cc/min 、
チャンバ内圧力 50〜300Pa、母材温度400〜
650℃、ArFエキシマレーザの平均出力 5〜60
Wである。
【0036】以下、具体例について説明する。
【0037】図9に示すようにシリンダスリーブ2を想
定して、鋳鉄(JIS FC250)よりなる直径6.
5mmの丸棒18に電気Feメッキ処理を施すことによ
り、Fe結晶の集合体より構成された厚さ15μmの摺
動面構成体4を形成した。
【0038】表2は摺動面構成体の例1〜8に関する電
気Feメッキ処理条件をそれぞれ示す。なお、メッキ処
理時間は、例1〜8の厚さを前記のように15μmに設
定すべく、5〜60分間の範囲内で種々変化させた。
【0039】
【表2】
【0040】表3は例1〜8に関する摺動面の結晶形
態、摺動面における丸み付、角張り型六角錐状Fe結晶
の面積率Aおよび粒径、各配向性Fe結晶の存在率Sな
らびに摺動面構成体断面における硬さをそれぞれ示す。
【0041】
【表3】
【0042】丸み付、角張り型六角錐状Fe結晶の面積
率Aは、摺動面の面積をb、その摺動面において全部の
丸み付、角張り型六角錐状Fe結晶が占める面積をcと
したとき、A=(c/b)×100(%)として求めら
れた。また丸み付、角張り型六角錐状Fe結晶の粒径
は、頂点を挟んで相対向する両角部間の距離、即ち、三
本の対角線の長さの平均値である。
【0043】各配向性Fe結晶の存在率Sは、例1〜8
のX線回折図(X線照射方向は摺動面に対して直角方
向)に基づいて次式から求められたものである。図10
は例1の、また図11は例4の、さらに図12は例8の
X線回折図である。なお、例えば{110}配向性Fe
結晶とは、{110}面を摺動面側に向けた配向性Fe
結晶を意味する。 {110}配向性Fe結晶:S110 ={(I110 /IA110 )/T}×100、 {200}配向性Fe結晶:S200 ={(I200 /IA200 )/T}×100、 {211}配向性Fe結晶:S211 ={(I211 /IA211 )/T}×100、 {310}配向性Fe結晶:S310 ={(I310 /IA310 )/T}×100、 {222}配向性Fe結晶:S222 ={(I222 /IA222 )/T}×100 ここで、I110 、I200 、I211 、I310 、I222 は各
結晶面のX線反射強度の測定値(cps)であり、また
IA110 、IA200 、IA211 、IA310 、IA222
ASTMカードにおける各結晶面のX線反射強度比で、
IA110 =100、IA200 =20、IA211 =30、
IA310 =12、IA222 =6である。さらにTは、T
=(I110 /IA110 )+(I200 /IA200 )+(I
211 /IA211 )+(I310 /IA310 )+(I222
IA222 )である。
【0044】図13は例1における摺動面の結晶構造を
示す顕微鏡写真であり、多数の丸み付六角錐状Fe結晶
が観察される。この場合、表3に示すように、丸み付六
角錐状Fe結晶の面積率AはA=100%である。この
丸み付六角錐状Fe結晶は(hhh)面、したがって
{222}面を摺動面側に向けた{222}配向性Fe
結晶であり、その{222}配向性Fe結晶の存在率S
は、表3、図10に示すように、S=98.1%であ
る。なお、前記面積率Aの算出に当っては、図13
(b)に明示するように、稜線が5本のもの、といった
ように成長が不完全ではあるが、完全に成長したとすれ
ば丸み付六角錐状Fe結晶となるものも含めた。
【0045】図14は例3における摺動面の結晶構造を
示す顕微鏡写真であり、複数の丸み付六角錐状Fe結晶
が観察される。この場合、表3に示すように、丸み付六
角錐状Fe結晶の面積率AはA=40%であり、この面
積率Aの算出法は例1の場合と同じである。
【0046】図15は例4における摺動面の結晶構造を
示す顕微鏡写真であり、多数の角(かど)張り型六角錐
状Fe結晶が観察される。この場合、表3に示すよう
に、角張り型六角錐状Fe結晶の面積率AはA=100
%である。この角張り型六角錐状Fe結晶は(hhh)
面、したがって{222}面を摺動面側に向けた{22
2}配向性Fe結晶であり、その{222}配向性Fe
結晶の存在率Sは、表3、図11に示すように、S=9
6.5%である。
【0047】表2,3において、例1と4、例2と5、
および例3と6とをそれぞれ比較すると、例1〜3の方
が例4〜6に比べてメッキ浴のpHおよび温度が高く、
また硫酸第1鉄の濃度も高くなる傾向にある。これに起
因して、例1〜3においては丸み付六角錐状Fe結晶が
析出するものと考えられる。
【0048】また図13(c)に示す例1と図14に示
す例3とを比較すると、例1におけるV溝形領域の谷底
部は弧状をなしているが、例3のそれは直線に近い。そ
の結果、例1のV溝形領域の深さは例3のそれに比べて
浅くなっている。これは例1の方が例3に比べて、最大
陰極電流密度CDmaxおよび平均陰極電流密度CDm
が高く、またpHも高いことに起因する。
【0049】図16は例8における摺動面の結晶構造を
示す顕微鏡写真であり、多数の粒状Fe結晶が観察され
る。
【0050】次に、例1〜8に関し、ファビリー摩耗試
験機を用いて以下に述べる方法で動摩擦係数μの測定を
行った。
【0051】先ず、低温時における高粘度の潤滑油を常
温(20℃)下にて再現すべく、10W−30(SAE
粘度分類)相当の潤滑油とPAMA(ポリアルキルメタ
クリレート)とを、体積%にて71対29(JIS K
2283に則って計算した)の割合で混合して動粘度が
364cStの混合潤滑油を調製した。因みに、常温下
における10W−30相当潤滑油の動粘度は90cSt
であり、またPAMAのそれは128500cStであ
る。
【0052】図17に示すように、鋼(JIS SCM
420、浸炭材)よりなる一対のVブロック19によ
り、丸棒18の摺動面構成体4形成部分を挟着して前記
混合潤滑油中に浸漬し、次いで、潤滑油中にて丸棒18
を300rpm にて回転させると共に両Vブロック19に
より丸棒18に3.6Nの試験荷重を付与し、丸棒18
に対する荷重が前記試験荷重に達してから2分経過後に
動摩擦係数μを測定した。表4は測定結果を示す。
【0053】
【表4】
【0054】図18は、丸み付、角張り型六角錐状Fe
結晶の面積率Aと動摩擦係数μとの関係を示す。図中、
点(1)〜(8)は例1〜8にそれぞれ対応する。図1
8から明らかなように、例1〜3、例4〜6の如く、丸
み付、角張り型六角錐状Fe結晶の面積率AをA≧40
%に設定すると、動摩擦係数μが大幅に低くなることが
判る。これは丸み付、角張り型六角錐状Fe結晶による
保油性向上作用により固体接触が回避されるからであ
る。
【0055】また面積率AがA≧40%において、丸み
付、角張り型六角錐状Fe結晶の面積率Aが同一であ
る、例1と4、例2と5および例3と6をそれぞれ比較
すると、摺動面に丸み付六角錐状Fe結晶を有する例1
〜3の方が角張り型六角錐状Fe結晶を有する例4〜6
に比べて動摩擦係数μが約15〜約30%低くなること
が判る。これは、例1〜3における高粘度の混合潤滑剤
の流れが例4〜6に比べて円滑であることに起因する。
【0056】したがって、例1〜3、特に、例1,2を
シリンダスリーブ内周面に設けることによって、低温時
等において潤滑油の粘度が高い場合にもフリクションロ
スを低減することができる。
【0057】次に、鋳鉄(JIS FC250)よりな
るディスク一面外周部に摺動面構成体の例1〜8を前記
と同様の方法で形成し、それらについて、潤滑下でチッ
プオンディスク方式による焼付きテストを行って、焼付
き発生荷重を測定したところ、表5の結果を得た。テス
ト条件は次の通りである。チップの材質:Al合金(J
IS AC8A、T7処理材);ディスクの周速度:1
5m/sec ;潤滑油:室温の10W−30相当潤滑油;
給油量:40cc/min ;チップの摺動面の面積:1c
m2 ;チップに対する荷重付与方式:最初に20Nの荷
重を付与して2分間その状態に保持し、その後は荷重を
20N宛増加させると共にその増加毎に、その状態にて
2分間保持.
【0058】
【表5】
【0059】図19は表5をグラフ化したものである。
図19から明らかなように、前記面積率A≧40%にお
いては、例1〜3の焼付き発生荷重は例4〜6のそれと
略等しい。このことから、摺動面に丸み付六角錐状Fe
結晶を存在させても、摺動面に角張り型六角錐状Fe結
晶を存在させた場合と同等の耐焼付き性を得ることがで
きる、ということが判明した。
【0060】なお、本発明はシリンダスリーブに限ら
ず、ピストン、カムシャフト、ピストンリング、シリン
ダスリーブ等の各種摺動部材に適用される。
【0061】
【発明の効果】本発明によれば、前記のように特定され
た構造を具備することによって、潤滑剤の粘度が高い場
合にも動摩擦係数μを低めてフリクションロスを低減し
得る摺動面構成体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ピストンを備えたシリンダブロックの要部を示
す一部拡大縦断面図である。
【図2】体心立方構造およびその(hhh)面、(2h
hh)面を示す斜視図である。
【図3】図1の3矢示部の拡大図である。
【図4】図3の4矢視図である。
【図5】(a)は丸み付六角錐状金属結晶の斜視図、
(b)は丸み付六角錐状金属結晶の平面図である。
【図6】角張り型六角錐状金属結晶の斜視図である。
【図7】体心立方構造における(hhh)面の傾きを示
す説明図である。
【図8】電気メッキ用電源の出力波形図である。
【図9】摺動面構成体を有する丸棒の斜視図である。
【図10】摺動面構成体の例1のX線回折図である。
【図11】摺動面構成体の例4のX線回折図である。
【図12】摺動面構成体の例8のX線回折図である。
【図13】例1の摺動面の結晶構造を示す顕微鏡写真で
ある。
【図14】例3の摺動面の結晶構造を示す顕微鏡写真で
ある。
【図15】例4の摺動面の結晶構造を示す顕微鏡写真で
ある。
【図16】例8の摺動面の結晶構造を示す顕微鏡写真で
ある。
【図17】動摩擦係数μの測定方法を示す説明図であ
る。
【図18】丸み付、角張り型六角錐状Fe結晶の面積率
Aと動摩擦係数μの関係を示すグラフである。
【図19】例1〜8の焼付き発生荷重を示すグラフであ
る。
【符号の説明】
4 摺動面構成体 4a 摺動面 6 丸み付六角錐状金属結晶(丸み付角錐状金属
結晶) 7 稜線 8 斜面対応領域 9 帯状領域 10 裾部 11 頂部 12 V溝形領域 16 谷底部分
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年5月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正内容】
【0055】また面積率AがA≧40%において、丸み
付、角張り型六角錐状Fe結晶の面積率Aが同一であ
る、例1と4、例2と5および例3と6をそれぞれ比較
すると、摺動面に丸み付六角錐状Fe結晶を有する例1
〜3の方が角張り型六角錐状Fe結晶を有する例4〜6
に比べて動摩擦係数μが約15〜約30%低くなること
が判る。これは、例1〜3における高粘度の混合潤滑
の流れが例4〜6に比べて円滑であることに起因する。
フロントページの続き (72)発明者 肥沼 博 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属結晶の集合体より構成される摺動面
    構成体(4)において、丸みを帯びた丸み付角錐状金属
    結晶(6)の、摺動面(4a)における面積率Aが40
    %≦A≦100%であり、前記丸み付角錐状金属結晶
    (6)における各稜線(7)は凸弧状をなし、また相隣
    る両稜線(7)間の各斜面対応領域(8)は、各稜線
    (7)を形成する一方の斜面である2つの帯状領域
    (9)と、両帯状領域(9)に連なり、且つ裾部(1
    0)側より頂部(11)側に向って開口幅が漸次狭くな
    るV溝形領域(12)とよりなることを特徴とする摺動
    面構成体。
  2. 【請求項2】 前記V溝形領域(12)の谷底部分(1
    6)は前記稜線(7)に倣うように凸弧状をなす、請求
    項1記載の摺動面構成体。
  3. 【請求項3】 前記金属結晶は体心立方構造を有し、前
    記丸み付角錐状金属結晶(6)は、ミラー指数で(hh
    h)面を摺動面側に向けた(hhh)配向性金属結晶、
    またはミラー指数で(2hhh)面を摺動面側に向けた
    (2hhh)配向性金属結晶の少なくとも一方である、
    請求項1または2記載の摺動面構成体。
  4. 【請求項4】 前記金属結晶はFe結晶であり、前記丸
    み付角錐状金属結晶(6)は、ミラー指数で(hhh)
    面を摺動面側に向け、且つ六角錐状をなす(hhh)配
    向性Fe結晶である、請求項1,2または3記載の摺動
    面構成体。
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