JPH0826407B2 - 伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法

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JPH0826407B2
JPH0826407B2 JP5839291A JP5839291A JPH0826407B2 JP H0826407 B2 JPH0826407 B2 JP H0826407B2 JP 5839291 A JP5839291 A JP 5839291A JP 5839291 A JP5839291 A JP 5839291A JP H0826407 B2 JPH0826407 B2 JP H0826407B2
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雅弘 米沢
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ロアアームなどの自動
車足廻り部品等に好適に使用される、成形性(とくに伸
びフランジ性)・溶接性・疲労特性に優れる高強度熱延
鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、地球環境保護の運動が高まる中で
自動車は排ガス対策や省エネルギーのための燃費低減が
これまで以上に強く求められている。そのための有力な
対策の一つとして車体の軽量化があり、又、車体の安全
性向上を図ることともあわせて、使用する鋼板を高強度
化・薄肉化する努力が続けられている。その中でも、ロ
アアームなどの自動車足廻り部品に使用される熱延鋼板
は、伸びフランジ成形を主体とする過酷な成形を受け、
且つ製品としては重要保安部品としての高い部品強度が
必要とされる。従って、優れたプレス成形性、とくに良
好な伸びフランジ性を有する高強度鋼板の要求が高まっ
ている。
【0003】これらの要求に対応するかのように従来も
自動車の安全性向上やオイルショックを契機とした省エ
ネルギーのための車体軽量化ニーズに応えるため、析出
強化・固溶強化・変態組織強化などさまざまの強化手段
を駆使して各種の自動車用高強度熱延鋼板が提案されて
いる。
【0004】 そのうちプレス成形性、とりわけ伸び
フランジ性の優れた高強度熱延鋼板の製造法に関するも
のとしては、例えば、固溶強化を主体としてフェライト
・パーライト組織を基本とする技術(特公昭64−10
563)がある。
【0005】 又、パーライトよりも強化能が大きい
変態組織強化を利用する例として、ベイナイト単相組織
を基本とする技術(特公昭63−37166)がある。
【0006】 更に、フェライトとベイナイトからな
る複合組織鋼(特公昭62−37089、同じく特公平
1−46583、同じく特公平2−48608、以上3
件の製造法に係る特許、及び特公昭61−96057の
鋼板に関する特許)がある。
【0007】 一方、類似の特許として、フェライト
・ベイナイト・マルテンサイトの三相組織を基本とする
技術(特公平1−43005、特開昭60−18123
2、以上2件の製造法に関する特許、及び特公平1−3
3543の鋼板に関する特許)もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】自動車足廻りの部品な
どの用途に適用される高強度熱延鋼板としては、前述し
たように優れたプレス成形性、とくに優れた伸びフラン
ジ性を有することが必須で、且つ良好な強度・延性バラ
ンスを有することも必要である。又、同時に、強度レベ
ルについては降伏点設計された所定の部品機能を確実且
つ安定して確保するために、単なるTSの高強度のみでな
く降伏比についても適正な範囲に管理することが求めら
れている。即ち、降伏比が低すぎると必要な部品強度が
実質的に確保できなくなり、逆に降伏比が高すぎると成
形時のスプリングバックが大きく所定の形状寸法が得に
くい問題が生ずる。
【0009】以上の要求特性の観点から上記〜の技
術を再検討してみると、これらの高強度熱延鋼板製造技
術では、プレス成形性(伸びフランジ性、延性)及び降
伏比といった最も重要且つ基本的な特性に関して、最近
の非常に厳しい、且つ今後ますます高度になると予測さ
れる自動車業界をはじめとするユーザーの要求に応えら
れない問題があった。
【0010】即ち、の技術では、パーライトの強化能
が小さいため強度レベルの割に比較的多量のC量が必要
であり、得られる伸びフランジ性のレベルには限界があ
る(TS×λ<4000kgf/mm2・%)。
【0011】又、の技術では、軟質・高延性なフェラ
イトを含まないため得られる延性レベルには限界があっ
た(TS×El<1600kgf/mm2・%)。
【0012】更に、の技術では、降伏強度(又は降伏
比)の下限を管理して適用部品の強度機能(静的に耐変
形強度や疲労強度特性)を確実に確保するという思想は
全く見られない。従ってこれらの従来技術では通常の場
合、降伏比は0.5〜0.6程度であり、補助的強化手段とし
てNb,Ti,V,Zrなどの析出強化元素を添加した場合に
は、降伏比を0.8程度まで高められるが、この場合は強
度・延性バランスの劣化が避けられない。又、ベイナイ
トの体積率が高い場合にも高い降伏比が得られる場合が
あるが、この場合には良好な成形性を安定して維持する
ことが難しいという問題があった。
【0013】一方、の技術は、微量のマルテンサイト
導入による低降伏比化を主たる目標の一つとして開発さ
れたもので、基本的な技術思想や手段が全く異なり、こ
の場合の対象材の降伏比はほとんどが0.65未満である。
一部の比較的に降伏比の高いケースでも降伏比は0.75未
満である。
【0014】 本発明は、以上ような観点から、従来
技術で達成されなかった総合特性バランスの優れた高強
度熱延鋼板を、低コストで、且つ安定して製造できるよ
うにするもので、そのような高強度熱延鋼板としては、
上述のような目的・用途に対して最も好適な総合特性を
具備するものであって、具体的にはTS 50〜60kgf/mm2
降伏比0.75〜0.85であって、且つ極めて優れた強度・伸
びフランジ性バランス、及び良好な強度・延性バランス
を有するほか、溶製性や疲労特性にも優れていなければ
ならない。ここで、伸びフランジ性のレベルについては
穴拡げ率(λ:%)で評価した場合、TS×λの値で9000
kgf/mm2・%以上極めて良好なレベルとするものであ
り、又、延性のレベルについてはTS×Elの値で1600kgf/
mm2・%以上のレベルを指す。
【0015】
【問題点を解決するための手段】本発明者等は、上述の
ような観点から、従来材・従来法にみられる問題点を解
決し、特に伸びフランジ性の見地から、従来材・従来法
を凌駕する性能を具備した熱延鋼板を低コストで、安定
して製造する方法を検討した結果、まず比較的低炭素を
ベースとするC−Si−Mn鋼において平均粒径5μm以下
の如く極めて微細なフェライトとベイナイトの混合組織
とし、且つ適度なスキンパス圧延を付加することによ
り、従来にない優れたプレス成形性、とりわけ伸びフラ
ンジ性と強度とのバランスが達成できることがわかっ
た。
【0016】本発明は、上記知見に基づいてなされたも
のであり、その骨子は次の通りである。
【0017】即ち、重量%でC:0.04〜0.08%、Si:0.
10〜0.50%、Mn:1.00〜1.80%、S:0.0002〜0.0010
%、Al:0.005〜0.050%、N:0.0010〜0.0030%を含
み、残部Fe及び他の不可避的不純物より成る成分組成の
鋼を熱延により製造する。この熱延はAr3〜(Ar3+40
℃)を仕上温度とし、且つ仕上温度〜(仕上温度+50
℃)の間で70〜90%の圧下率により熱間圧延を行う。続
いて冷却処理を行うが、熱間圧延終了後直ちに120〜200
℃/Sの冷却速度で620〜680℃の温度域に冷却すると共
に、その後3〜7秒保持し又は空冷し、次いで50〜150
℃/Sの冷却速度で400〜450℃の温度に冷却して巻取る。
更に伸長率1.5〜3.0%の範囲でスキンパスを行う。これ
らの工程を経て、極めて微細なフェライト相とベイナイ
ト相の複合組織からなる伸びフランジ性に優れた高強度
熱延鋼板が得られることになる。ここで得られる熱延鋼
板は、平均粒径が5μm以下のような微細なフェライト
と、ベイナイトからなる混合組織を呈し、強度が50〜60
kgf/mm2級であり、強度−伸びフランジ性バランス(TS
×λ)が9000kgf/mm2・%以上で、且つ強度−伸びバラン
ス(TS×El)が1600kgf/mm2・%以上を具備する伸びフラ
ンジ性の優れたものである。ここではTSは引張強度、λ
は穴拡げ率、Elは伸びを示す。
【0018】又、第2発明では上記構成に加えて、その
鋼組成中にREM,Ca,Mg等の選択的添加元素を含むもの
で、上記第1発明の鋼成分組成を有する他、REM:0.005
〜0.1%、Ca:0.0005〜0.01%、Mg:0.0005〜0.01%の
うち1種乃至2種以上を含むものである。
【0019】これらの発明は、鋼成分・熱間圧延条件・
スキンパス伸長率の各製造因子を総て適正に制御しては
じめて達成されるものであり、以下、本発明について詳
細に説明する。
【0020】(A) 本発明の成分系 Cは、ベイナイトを生成させ目標とする強度を確保する
ために必須な元素である。本発明で対象とする50〜60kg
f/mm2の強度を得るには、0.04%が必要であり、これを
下限とする。一方、Cをいたずらに増加させるとベイナ
イトを硬化させることにより、伸びフランジ性が劣化す
るため0.08%を上限とする。
【0021】Siは、フェライトの生成を促進し、本鋼板
のフェライトとベイナイトの複合組織化に不可欠で、且
つ強度上昇や延性を与えるのに好適な元素であり、0.10
%以上の添加が必要である。しかし、その含有量が高く
なると鋼板表面に赤スケールが生成し、表面性状が劣化
するため、0.50%をSi量の上限と定めた。
【0022】Mnは、ベイナイト組織形成に不可欠の元素
であり、本発明の強度レベルを確保するためには、1.00
%以上の添加が必要であり、これを下限とした。一方、
Mn量が多すぎると溶接性と加工性が悪化するので、上限
を1.80%とした。
【0023】Sは、鋼中のMnと結合しA系介在物(MnS
系介在物)を生じ、伸びフランジ性を低下させる不純物
元素であるので、極力低減することが望ましい。本発明
者等は、引張強さ50kgf/mm2級の熱延鋼板を用いてS量
と穴拡げ率の関係を調べ、図1に示す結果を得た。S量
が0.0010%以下になると穴拡げ率が急激に上昇するた
め、これを上限とした。又、製鋼での経済性を考慮して
下限は0.0002%とした。
【0024】Alは、脱酸元素として不可欠であり、その
効果が期待でき、且つ連続鋳造が実施できる添加量とし
ては0.005%が限度であるので、0.005%をその下限とし
た。一方0.050%を超える範囲では脱酸効果が飽和する
ことになるので、0.050%をその上限とした。
【0025】Nは、伸びフランジ性を劣化させる不純物
であり減ずる必要があるので、悪影響が顕著となる0.00
30%を上限とした。一方、極低N化するためには製鋼で
の余分のコストアップとなるため製鋼での経済性から下
限を0.0010%とした。
【0026】REM,Ca及びMgの各元素は、A系介在物(A
l2O3系介在物)の形態制御(球状化)により、伸びフラ
ンジ性を改善できる元素である。このため第2発明では
その1種又は2種以上を添加することとしているが、添
加量が多すぎると介在物量が増加し、却って、伸びフラ
ンジ性が劣化するため、これらの上限をREM,Ca,Mgに
つき夫々0.1%、0.01%、0.01%とした。一方、下限は
介在物形態制御効果が期待できる添加量として夫々0.00
5%、0.0005%、0.0005%とした。
【0027】(B) 熱延条件 イ. 熱間仕上圧延条件 まず微細なフェライト相とベイナイト相からなる複合相
を得るため、オーステナイトの微細化とオーステナイト
の加工によるフェライト変態の促進を図る必要がある。
そのためAr3〜(Ar3+40℃)の温度範囲で圧延を仕上
げ、且つ仕上温度〜(仕上温度+50℃)の温度範囲で合
計70〜90%の圧下率を採る必要がある。
【0028】以上の圧延条件のうち圧延仕上温度が(Ar
3+40℃)より高温の場合、オーステナイトの微細化が
十分でないため微細なフェライトとベイナイトの複合組
織が得られなくなり、伸びフランジ性が低下する。
【0029】一方、Ar3点以下の仕上温度では、生成し
たフェライトが加工され、却って延性、伸びフランジ性
が劣化することになる。
【0030】更に、図2に、下記表1に示すA鋼を用い
て実験を行った時に得られた仕上温度〜(仕上温度+50
℃)の間の圧下率と穴拡げ率(λ値)及びフェライト粒
径の関係を示す。尚、その他の熱延・冷却・スキンパス
条件は、本発明の規定条件内のものとした。
【0031】
【表1】
【0032】同図からも明らかなように、70%以上の圧
下率で、非常に優れたλ値が得られており、その際の組
織は極めて微細になっている。従って、圧下率の下限を
70%とした。これに対し、90%を超える圧下はミル能力
からみて困難であり、実用的ではないのでこれを上限と
した。
【0033】ロ. 仕上圧延終了直後の急冷条件 次に変態点(Ar3点)直上での大圧下による微細なオー
ステナイトから微細なフェライトを析出させ、且つ約80
%以上のフェライトを熱延ランナウト・テーブル上で短
時間に変態させるためには、仕上圧延後620〜680℃の範
囲の温度まで、120〜200℃/Sの平均冷却速度で冷却する
必要がある。このような構成は本発明者等の次のような
実験結果から得られたものである。
【0034】図3は、前記表1中のB鋼を用いて、熱延
仕上後の冷却速度を種々変えることにより(他の条件は
本発明条件として)、板厚2.6mmの熱延鋼板のλ値とフ
ェライト粒径との関係を求めたものである。
【0035】 同図から、伸びフランジ性の優れるフェ
ライト平均粒径5μm以下のような微細組織とするに
は、仕上圧延後の冷却速度は120℃/S以上とする必要が
あることがわかる。即ち、120℃/S未満の冷却では、微
細なフェライトとベイナイトからなる組織は得られず、
優れたλ値は得られないことになる。一方、冷却速度の
上限は実設備での制御性から200℃/Sとした。
【0036】ハ. 中間温度域での保持又は空冷 本発明で620〜680℃までの急冷に続き、3〜7秒の保持
又は空冷を行うこととしているが、その理由としては、
フェライト変態を短時間に起こさせ、約80%以上の適正
なフェライトを変態させるためである。そのうち保持又
は空冷の時間が3秒未満ではフェライトの生成量が不十
分であるため、3秒をその下限とする。一方、上限はパ
ーライトが生成しない条件で制限されるべきであるが、
実際には実機での操業面、生産性の点などから7秒とし
た。これはフェライトの生成量からみても十分な時間で
ある。
【0037】ニ. 保持又は空冷から巻取り温度までの冷
却速度 この工程の急冷により最終的な微細フェライトとベイナ
イトの複合組織が得られるが、この際の冷却速度の下限
はパーライトの生成を避けることから規定される。つま
り50℃/S未満ではパーライトノーズにかかり、適正な複
合組織とならないため、優れた伸びフランジ性が達成で
きないことになる。一方、150℃/Sを超えると、次の巻
取り温度の制御性が低下し材質の安定性を低下させるた
め、これを上限とした。
【0038】 ホ. 巻取り温度 本来、硬質のベイナイト自体に適度の延性を付与させる
ため400〜450℃で巻取る必要がある。図4に巻取り温度
による穴拡げ率(λ)及びTSの変化を示した。この時使
用した供試材は:0.05%、Si:0.50%、Mn:1.45%
の鋼を1200℃に加熱し、830℃で仕上圧延を終了して二
段冷却後巻取り温度を変化させて得た種々の鋼板であ
る。尚、他の熱延条件、冷却条件及びスキンパス条件は
本発明で規定された条件内である。同図から400〜450℃
の温度域で伸びフランジ性の最良域が存在することがわ
かる。一方、これより低温の巻取りの場合は硬質のベイ
ナイトやマルテンサイトが生成するため、高強度にはな
るが伸びフランジ性を低下させることになる。これによ
り高温の巻取りでは、パーライトが生成し伸びフランジ
性が低下することになる。
【0039】ヘ. スキンパス伸長率 図5に、前記表1に示された本発明のB鋼を用いて、本
発明の熱延条件及び冷却条件で製造した板厚2.9mmの熱
延鋼板を供試材とし、これにスキンパスを行った時の穴
拡げ率、伸びに及ぼすスキンパス伸長率の影響を示して
いる。この図からスキンパス伸長率を1.5〜3.0%の範囲
でとることにより、穴拡げ率が最高の領域に入ることが
明らかである。適正なスキンパスの付与は本発明の重要
な要素の一つであり、これまでに示された成分と熱延条
件の適正化で得られる伸びフランジ性を更に向上させる
ために必要な製造因子である。しかし、伸長率が1.5%
未満ではスキンパスによる伸びフランジ性改善効果は小
さく、そのため1.5%を下限とした。一方、3.0%を超え
ると伸びフランジ性は劣化するので3.0%を上限とし
た。このスキンパスによる伸びフランジ性改善効果の本
質的な原因は必ずしも明確ではないが、適正なスキンパ
スによりサブ組織の均一化が働いているように思われ
る。
【0040】
【実施例】〈実施例1〉 本発明者等は、まず前記表1に示す成分組成を有する12
の鋼を溶製した。このうち鋼A〜が本発明規定成分
を満足する鋼であり、又、鋼H〜Lは比較鋼である。こ
のうち表1の鋼A〜を用い、熱延・冷却・スキンパス
を下記表2に示す各条件(本発明で規定された範囲内)
で行い、板厚2.6mmの熱延鋼板を製造した。こうして得
られた鋼板の機械的性質を調べるために、引張試験と伸
びフランジ性の指標となる「穴拡げ試験」による穴拡げ
率を測定し、同表に併せて示した。尚、「穴拡げ率」は
前記熱延鋼板に直径10mmの円形打ち抜き穴を形成した
後、該穴に60°円錐ポンチを押し当て穴拡げ加工を行
い、穴縁に亀裂を生じた時点の穴の拡大率で示した。
【0041】
【表2】
【0042】 同表から本発明で規定された成分組
成を有するA〜の鋼では、強度−延性バランスを示す
「TS×El」の値が1600以上で且つ降伏比YRが0.75以上を
満たすと共に、強度-伸びフランジ性バランスを示す「T
S×λ」の値が9000以上の高い値を 有する50〜60kgf/mm
2級の強度レベルの伸びフランジ性に極めて優れた熱延
鋼板 が安定して得られることがわかる。特に鋼EのCa
添加鋼を用いた本発明鋼5によって得られた熱延鋼板
は、より優れた伸びフランジ性を示すことが明らかとな
った。
【0043】 これに対して、鋼の組成が本発明か
ら外れている鋼H〜Lの比較鋼8〜12の熱延鋼板は、
「TS×λ」が高々6000程度であって伸びフランジ性が良
くない。これは微細なフェライトとベイナイトからなる
最適な組織が得られていないためである。
【0044】 〈実施例2〉 前記した表1のA〜D鋼を用いて、下記表3に示すよう
に熱延・冷却・スキンパスの各条件を種々変化させて、
板厚2.6mmの熱延鋼板を製造した。得られた機械試験値
をこの表3に併せて示した。尚、同表では、穴拡げ試験
伸びフランジ性を評価している。
【0045】
【表3】
【0046】 本発明法の熱延・冷却・スキンパスの
各条件のいずれかを満足していない比較材13〜23のTS×
λは高々5200程度で、いずれも本発明でいう組織の適正
化が達成されないことから本発明の9000以上の優れた強
度−伸びフランジ性バランス(TS×λ)は得られていな
い。
【0047】 即ち、比較材13では、熱延仕上温度FT
が上限(Ar3+40℃)を超えており、又 、比較材14
は、仕上温度から「仕上温度+50℃」での圧下率が70%
未満のため、オーステナイトの微細化が不十分になるこ
とから、適正フェライト量の確保とフェライトの微細化
が不十分となり、優れた伸びフランジ性は得られない。
【0048】 比較材15は、熱延仕上後の急冷の冷
却速度(1次冷却速度)が小さいため細粒フェライトが
得られず、目標特性に到達しなかったものである。
【0049】 比較材16は、中間保持温度が高すぎ
る場合であり、反対に比較材17は、中間保持温度が低す
ぎる場合であって、いずれもフェライト量が不十分なた
め、伸びフランジ性は良好ではない。
【0050】 比較材18は、圧延直後の冷却に続く
空冷(中間保持)時間が0.5秒と短いため、フェライト
量が少なく伸びフランジ性が悪い。
【0051】 比較材19は、中間保持後の急冷の冷
却速度(2次冷却速度)が遅い場合であり、又、比較材
20は、巻取り温度が600℃と高いため、いずれも鋼板冷
却中にパーライトが生成し低 い伸びフランジ性しか示
さない。
【0052】 比較材21は、巻取り温度が180℃と
低いため、第2相がマルテンサイトとなり、強度は高い
ものの、伸びフランジ性は低く、TS×λの値も4703と低
い。
【0053】 比較材22は、スキンパス伸長率が0.
5%の場合、一方、比較材23は、スキンパ ス伸長率が4.
0%と本発明の規定の範囲外であり、優れた伸びフラン
ジ性は得ら れていない。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように、この本発明によれ
ば、現行の熱間圧延工程に格別な変更を加えることな
く、しかも格別に高価な素材を使用せずに伸びフランジ
性に優れた熱延高強度鋼板を低コストで、且つ安定して
製造することができるなど、工業的に非常に有用な効果
が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼中のS量と伸びフランジ性(穴拡げ率)の関
係を示すグラフである。
【図2】仕上温度〜(仕上温度+50℃)の間の圧下率と
フェライトの平均粒径及び伸びフランジ性(穴拡げ率)
の関係を示すグラフである。
【図3】仕上圧延後の冷却速度とフェライトの平均粒径
及び伸びフランジ性(穴拡げ率)との関係を示すグラフ
である。
【図4】巻取り温度と強度及び伸びフランジ性(穴拡げ
率)との関係を示すグラフである。
【図5】スキンパス伸長率と伸びフランジ性(穴拡げ
率)及び延性(伸び)との関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大北 智良 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 米沢 雅弘 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 大和田 浩 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%でC:0.04〜0.08%、Si:0.10〜
    0.50%、Mn:1.00〜1.80%、S:0.0002〜0.0010%、A
    l:0.005〜0.050%、N:0.0010〜0.0030%を含有し、
    残部Fe及び他の不可避的不純物からなる鋼に対し、Ar3
    〜(Ar3+40℃)を仕上温度とし、且つ仕上温度〜(仕
    上温度+50℃)の間で70〜90%の圧下率により熱間圧延
    を行い、続いて直ちに120〜200℃/Sの冷却速度で620〜6
    80℃の温度域に冷却すると共に、その後3〜7秒保持し
    又は空冷し、次いで50〜150℃/Sの冷却速度で400〜450
    ℃の温度に冷却して巻取り、更に伸長率1.5〜3.0%の範
    囲でスキンパスを行うことを特徴とする極めて微細なフ
    ェライト相とベイナイト相の複合組織からなる伸びフラ
    ンジ性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 重量%でC:0.04〜0.08%、Si:0.10〜
    0.50%、Mn:1.00〜1.80%、S:0.0002〜0.0010%、A
    l:0.005〜0.050%、N:0.0010〜0.0030%を含み、更
    にREM:0.005〜0.1%、Ca:0.0005〜0.01%及びMg:0.0
    005〜0.01%のうち1種乃至2種以上の元素を含有し、
    残部Fe及び他の不可避的不純物からなる鋼に対し、Ar3
    〜(Ar3+40℃)を仕上温度とし、且つ仕上温度〜(仕上
    温度+50℃)の間で70〜90%の圧下率により熱間圧延を
    行い、続いて直ちに120〜200℃/Sの冷却速度で620〜680
    ℃の温度域に冷却すると共に、その後3〜7秒保持し又
    は空冷し、次いで50〜150℃/Sの冷却速度で400〜450℃
    の温度に冷却して巻取り、更に伸長率1.5〜3.0%の範囲
    でスキンパスを行うことを特徴とする極めて微細なフェ
    ライト相とベイナイト相の複合組織からなる伸びフラン
    ジ性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
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