JPH0826325B2 - コークス炉装入原料炭の抽気孔開孔法及びその開孔装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、室炉式コークス炉に水分を含む原料炭を装
入して乾留する際に、装入原料炭の炭中部に炉上部空間
に通じる水蒸気の抽気孔を設けるコークス炉装入原料炭
の抽気孔開孔方法及びその開孔装置に関する。

〔従来の技術及び発明が解決しようとする課題〕

室炉式コークス製造法は、炭化室に装入した原料炭を
両側の燃焼室から煉瓦壁を介して加熱してコークスを製
造する方法である。近時、コークス炉の乾留効率化と炉
体延命化とを図りながらコークス品質の安定向上を達成
することが要求されており、そのための技術開発が進め
られている。例えば乾留効率化を図るために、乾留を行
う事前において、通常８〜11％含まれる原料炭中の水分
を５〜６％に低減する調湿炭法及び原料炭温度を170〜2
00℃まで予熱する予熱炭法が実用化されている。

これらの技術は、コークス炉内で脱水に要する時間が
短縮され、大幅な生産性の向上が図れる一方、原料炭の
乾燥及び予熱に莫大な設備投資を必要とする問題があ
る。このために、これらの方法は一般に普及するには至
らず、一部のコースス工場に採用されるにとどまってい
るのが実情である。更に、調湿炭法及び予熱炭法では装
入原料炭の嵩密度が増大するために、乾留の際に炉壁へ
大きな石炭膨張圧がかかり炉壁を損傷する虞がある。

また、乾流効率化のために炉幅及び炉高を拡大するこ
ともなされているが、これは、コークス炉の新設には有
効なものであっても既設コークスの乾留効率化にはつな
がらないものであった。

また、炉壁煉瓦を薄くして伝熱性を改善する方法も一
部実用化されているが、これは炉体の堅牢性を損なう虞
があって必ずしも採用できるとは限らなかった。

更に、炉体延命を図るために、近年補修技術が進歩し
て大きな効果を挙げているが、これは損傷した炉体の補
償であるかぎり事後処理の技術である。また、炉体延命
のためには炉温を下げて操業することが考えられるが、
これは生産性を下げてしまうために、乾留効率化とは相
矛盾した方法であった。

従って、乾留効率化と炉体延命とを両立しながら、コ
ークス品質の安定向上を達成することは極めて難しい課
題であった。

本願発明者らは、通常の場合、コークス炉に装入され
る原料炭に８〜11％含まれる水分の乾留過程における脱
水挙動に着目し、既に出願した発明（特願昭63−299173
号）を成し遂げた。すなわち本願発明者らは室炉式コー
クス炉において、水分を含む原料炭を乾留する際、乾留
効率を低下させている原因が石炭層で発生する水蒸気の
壁側への流れにあることに着目し、その流れを、高温の
炉壁（少なくとも1000℃以上）方向から低温の炉上部空
間（750〜850℃）方向に変えれば、炉壁から炭中部への
伝熱効率の改善と、炉壁への膨張圧を抑えられることを
確認し、その方法として、室炉式コークス炉に水分を含
む原料炭を装入して乾留する方法において、前記コーク
ス炉に装入された前記原料炭の上面をレベリングした後
に、前記コークス炉に設けられた開口部からコークス炉
内の原料炭内に向かって金棒を差し込み、その後にこの
金棒を引き抜いて、原料炭にコークス炉の上部空間と通
じる開孔部（抽気孔）を設けるようにした。

そして、次に上記のようにして、コークス炉内の原料
炭にコークス炉の上部空間と通じる開孔部を設ける方法
とその手段（装置）とをどうするかが課題となった。

本発明は、上記課題に基づいてなされたものであっ
て、乾留途中で装入原料炭から発生する水蒸気を抽気す
る抽気孔を、コークス炉の原料炭装入作業に支障を与え
ることなく設けることができるコークス炉装入原料炭の
抽気孔開孔法及びその開孔装置を提供することを目的と
している。

〔課題を解決するための手段〕

本発明は、上記目的を達成するために、側部に原料炭
供給部を備えた原料炭供給ホッパを支持した装炭車が上
部に配された室炉式コークス炉に水分を含む原料炭を装
入して乾留する際に、コークス炉内に装入された原料炭
の上面をレベリングした後に、原料炭中に炉上部空間と
通じる水蒸気の抽気孔を設ける開孔法であって、前記装
炭車に、その原料炭供給部を貫通するように開孔用の金
棒を付設し、この開孔用の金棒を、コークス炉に設けら
れた上部開口部からコークス炉内の原料炭中に差込んだ
後に、直ちに引抜く操作を、前記供給部に付設された駆
動手段によって上下移動させて行うようにした。

また、側部に原料炭を供給する補助ホッパと給炭内筒
と移動スリーブとを備えた原料炭供給ホッパを支持した
装炭車が上部に配された室炉式コークス炉に水分を含む
原料炭を装入して乾留する際に、コークス炉内に装入さ
れた原料炭の上面をレベリングした後に、原料炭中に炉
上部空間と通じる水蒸気の抽気孔を設ける開孔装置であ
って、前記装炭車にその補助ホッパと給炭内筒と移動ス
リーブとを貫通するように付設された開孔用の金棒と前
記開孔用の金棒をコークス炉に設けられた上部開口部か
らコークス炉内の原料炭内に差込んだ後に、直ちに引抜
く上下移動する操作を行なわしめる駆動手段とを備えて
いる。

〔作用〕

しかして、駆動手段によって、金棒が上下移動操作さ
れ、この金棒の上下移動操作によって、コークス炉内の
原料炭に、原料炭内の水蒸気を抽気するための抽気孔が
設けられる。

〔抽気孔開孔のための諸条件〕

以下、抽気孔開孔のための諸条件について述べる。

コークス炉内の原料炭に、原料炭内に含まれる水蒸気
を抽気するための抽気孔を設ける方法としては、種々の
方法が考えられるが、コークス炉の装入原料炭中へ炉上
部空間と通じる抽気孔を設けるには、コークス炉の上部
に設けられた装入口から金棒を挿入するのが最も実用的
である。しかしながら、装入口を活用して金棒の装入を
実施する場合、コークス炉の操業に支障を来すことな
く、かつ装入口からの発塵を伴うことなく短時間に行う
ことが要求される。

また、金棒の挿入を通常操業で常時人力で行うことは
困難であるため、機械的に行うことが要求される。この
問題を解決するには、次の４点を満足する機構を有する
設備を設ける必要がある。

（１） 金棒を所定炉に移動するための搬送機構を有す
ること。

（２） 金棒を挿入原料炭の炉幅方向中央上面に挿入で
きる位置決め機構を有すること。

（３） 金棒による抽気孔開孔作業に伴う装入口からの
発塵を抑える機構を有すること。

（４） 抽気孔開孔作業を短時間に行える機構であるこ
と。

ここで上記（１）の搬送機構については、新たに炉上
部に搬送設備を設けることなく、装炭車を活用し金棒を
付設することで搬送ができること、（２）については、
補助ホッパ、給炭内筒、移動スリーブを貫通するように
金棒を設置すれば正確に位置決定ができること、（３）
については、装炭車の集塵ダクトが活用できること、
（４）については、装炭車を活用すれば、原料装入終了
後直ちに金棒による抽気孔の開孔作業ができることに着
目し、この発明に着手した。

〔実施例〕

次に、上述の諸条件に基づいてなされた本発明の実施
例について図面に基づいて説明する。

第１図に示すように、コークス炉１の天井壁1Aの所定
位置にレール11,11が平行に敷設されていて、このレー
ル11,11上に装炭車４が移動可能に配されている。この
装炭車４によって、コークス炉１内に原料炭２を供給す
る複数の１原料炭供給ホッパ9,9‥が装炭車４の移動方
向と直交する向きに並設されて支持されている。この原
料炭供給ホッパ９における装炭車４の移動方向の側部に
は、第２図，第３図に示すように、この原料供給ホッパ
９に連通する補助ホッパ５が取設され、この補助ホッパ
５の下方に給炭内筒６が連通状態に配されていて、この
給炭内筒６の外周囲に上下移動可能な移動スリーブ７が
配設されている。この移動スリーブ７の外周を取り囲む
ように集塵ダクト10が、その上壁部を前記給炭内筒６の
上部側に取着されて支持されている。

そして、前記補助ホッパ５と給炭内筒６と移動スリー
ブ７とを貫通するように開孔用の金棒３が設けられてい
て、この金棒３が補助ホッパ５の上部に設置した駆動手
段８によって上下移動するようにしている。この金棒３
は、補助ホッパ５の上面中央に設けられた軸受部5aと駆
動手段８及び供給ホッパ９に取り付けたガイドパイプ12
の３点支持によって位置決めされている。

この金棒３はガイドパイプ12の上端側に設けられたリ
ミットスイッチ（図示せず）によって、所定深度の抽気
孔2aを形成すべくその上下ストロークが調整されるよう
になっている。また前記駆動手段８は、第４図に示すよ
うに金棒３の側部長手方向に設けられたラック3a,3bに
噛み合うように設けられた駆動用歯車8a,8bから構成さ
れていて、その駆動速度は1m/秒としてある。なお、第
１図において13は上昇管である。

そして上記構成によって、装炭車４がコークス炉１の
天井癖1Aのレール11,11上を移動すると共に、原料炭供
給ホッパ9,9‥内の原料炭２が補助ホッパ5,給炭内筒6,
移動スリーブ７を介してコークス炉１内に装入される。
そして、原料炭装入後に、レベラー14でレベルリングさ
れる。その後に、前記駆動手段８が駆動されて金棒３が
下方に移動されてコークス炉１内の原料炭２中にこの金
棒３が差し込まれ、その後直ちに金棒３が引抜かれて原
料炭２中に炉上部空間と通じる水蒸気の抽気孔2a,2a‥
が形成される。そして、装炭車４は、コークス炉１の天
井壁1Aのレール11,11上を移動されて、上述の過程によ
ってコークス炉１内の原料炭２の適宜複数箇所に順次抽
気孔2a,2a‥が形成される。

次に、本発明の具体的に実施した例について述べる。

炉高7.125m,炉長16.5m、炉幅460 mmの工業規模のコー
クス炉１において、平均フリュー温度1210℃、平均乾留
時間22時間の操業上限で、第１表に示す水分9.2％を有
する原料炭２を装入し、この原料炭２の上面をレベラー
14でレベリングした後４つの装入口からなる開口部1a,1
a‥から装入原料炭２の炉幅方向中央上面より炭中部に
向かって直径50mmの金棒３を差込み、直ちに引抜き炭中
部に炉上部空間と通じる開孔深度2mの抽気孔2a,2a‥を
設けた。

このようにして金棒３を付設した装炭車４を用いて装
入原料炭２中にコークス炉の上部空間と通じる抽気孔2
a,2a‥を設けた場合の操業結果を、従来の操業と比較し
て第２表に示す。

この第２表より、装入作業の総計時間は開孔作業に要
した８秒だけ延びるだけで、殆ど装入作業に影響を与え
るものではなかった、また原料炭２装入中の発塵状況
は、従来の操業と同じ集塵方法であるため、従来の操業
と何ら変わらなかった。

このように本発明方法は、開孔作業に伴う装入作業に
支障を与える問題は何ら発生せず、有効な開孔法であ
る。

なお、本発明で抽気孔2a,2a‥を設けた場合のコーク
ス炉操業への影響を第２表に付記した。これには900℃
到達時間の他に、上昇管13温度および従来の操業管理で
得られる抽出電流値とコークスのドラム強度値も併せて
示してある。これらの結果から、明らかなように本発明
方法によって抽気孔2a,2a‥を形成してから乾留を行う
と900℃到達時間で1,2時間短縮されており、乾留促進効
果の大きいことが認められる。この結果コークスの乾留
温度も上がるためドラム強度は向上し、その強度ばらつ
きも低減して品質の向上安定に有効であることがわか
る。さらに押出電流値も若干低下していることから、乾
留中の石炭膨張圧が低下しコークスケーキの炉壁からの
肌離れが十分に行われたことが伺われ、炉壁保全の面で
も有効と言える。

〔発明の効果〕

本発明によれば、以上述べたように、水分を含む装入
原料炭を室炉式コークス炉で乾留する際に乾留促進とコ
ークス品質の向上安定、炉体保全に効果的であり、乾留
途中で発生する水蒸気を抽気する抽気孔を、コークス炉
の原料炭装入作業に支障を与えることなく設けることが
容易にできる他、装炭車に設けた金棒にて開孔を行うこ
ととしているから、特別な設備が不要であり、また原料
炭供給部を貫通するよう金棒を付設することで、特別な
開口部を形成する必要もなく、水蒸気を抽気するための
抽気孔をコークス炉の原料炭装入作業に支障を与えるこ
となく設けることが出来る等本発明は優れた効果を奏す
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明装置を備えたコークス炉の一部を示す概
略縦断面図、第２図は本発明装置の一実施例の抽気孔開
孔時の状態を示す縦断面図、第３図はその抽気孔開孔後
の状態を示す縦断面図、第４図はその金棒を上下移動操
作する駆動手段を示す拡大正面図である。 １……コークス炉、1a……開口部、２……原料炭、2a…
…抽気孔、３……金棒、４……装炭車、５……補助ホッ
パ、６……給炭内筒、７……移動スリーブ、８……駆動
手段、９……供給ホッパ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−165986（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−199285（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−145687（ＪＰ，Ａ) 実開 昭59−76542（ＪＰ，Ｕ) 実公 昭41−6924（ＪＰ，Ｙ１)

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】側部に原料炭供給部を備えた原料炭供給ホ
   ッパを支持した装炭車が上部に配された室炉式コークス
   炉に水分を含む原料炭を装入して乾留する際に、コーク
   ス炉内に装入された原料炭の上面をレベリングした後
   に、原料炭中に炉上部空間と通じる水蒸気の抽気孔を設
   ける開孔法であって、 前記装炭車にその原料炭供給部を貫通するように開孔用
   の金棒を付設し、この開孔用の金棒を、コークス炉に設
   けられた上部開口部からコークス炉内の原料炭中に差込
   んだ後に、直ちに引抜く操作を、前記供給部に付設され
   た駆動手段によって上下移動させて行うことを特徴とす
   るコークス炉装入原料炭の抽気孔開孔法。
2. 【請求項２】側部に原料炭を供給する補助ホッパと給炭
   内筒と移動スリーブとを備えた原料炭供給ホッパを支持
   した装炭車が上部に配された室炉式コークス炉に水分を
   含む原料炭を装入して乾留する際に、コークス炉内に装
   入された原料炭の上面をレベリングした後に、原料炭中
   に炉上部空間と通じる水蒸気の抽気孔を設ける開孔装置
   であって、 前記装炭車にその補助ホッパと給炭内筒と移動スリーブ
   とを貫通するように付設された開孔用の金棒と、前記開
   孔用の金棒をコークス炉に設けられた上部開口部からコ
   ークス炉内の原料炭内に差込んだ後に、直ちに引抜く上
   下移動する操作を行なわしめる駆動手段とを備えている
   ことを特徴とするコークス炉装入原料炭の抽気孔開孔装
   置。