JPH08250356A - 異方性磁石用合金粉末、これを用いた異方性永久磁石とその製造方法 - Google Patents

異方性磁石用合金粉末、これを用いた異方性永久磁石とその製造方法

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JPH08250356A
JPH08250356A JP7052830A JP5283095A JPH08250356A JP H08250356 A JPH08250356 A JP H08250356A JP 7052830 A JP7052830 A JP 7052830A JP 5283095 A JP5283095 A JP 5283095A JP H08250356 A JPH08250356 A JP H08250356A
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嵩司 古谷
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Daido Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 Nd−Fe−B系永久磁石合金の粉末を熱間
で塑性加工して異方性をもつ磁石材料を製造するに先立
ち、合金粉末の表面にNiなどの金属の厚さ0.1〜1
0μm程度の被覆を与えておく。 【効果】 被覆金属の存在により合金粉末の熱間加工性
が向上し、欠陥のない加工品を高い加工速度の下に製造
することができる。 加工品は機械的強度が高く、磁気
特性においては従来品と変りがない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、Nd−Fe−B系の異
方性永久磁石の改良に関し、塑性加工が容易な磁石合金
粉末を提供し、その粉末を材料とする異方性磁石とその
製造方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】Nd2Fe14B 結晶構造を有する、急冷
凝固法により製造した合金粉末を使用して、種々の磁石
材料が提供されている。 この種の磁石合金粉末を開発
したGM社の名称に従えば、MQ(商品名「マグネクエ
ンチ」、以下同じ)1,MQ2およびMQ3の3種があ
る。 MQ1は粉末を合成樹脂バインダーで結合して、
等方性のいわゆるボンド磁石としたものであり、MQ2
は合金粉末をホットプレス成形して密度を高めた等方性
磁石であり、MQ3はMQ2にさらに熱間の塑性加工を
行なって、磁気異方性を付与した磁石である。 塑性加
工の代表的な方法はアプセット加工と後方押出し加工で
あって、前者は加工の方向に、後者は製品である筒状体
の半径方向に、それぞれ異方性があらわれる。
【0003】これらの磁石は、その特性に応じた用途が
ある。 現状は、MQ1はOA機器の小型モータ、MQ
2および3はFA装置のモータが主な用途である。 M
Q3は磁気特性の高いリング状磁石として得られるの
で、モータの小型化、高性能化に効果がある。 大径の
リング状磁石の製造もまた可能なので、将来は電気自動
車のモータなど、比較的大型の製品への使用が有望視さ
れている。
【0004】しかし、MQ3の製造に当って、上記の塑
性加工は狭い加工条件を選んで行なわなければならず、
それでもワレやカケが生じることが多く、歩留りが低
い。加工の速度も高くできないから、生産性は上がらな
い。 外観上欠陥のない製品でも強度が高くないから、
高速回転するモータのロータに使用した場合、遠心力に
よる破壊の懸念が残る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、MQ
3のような異方性磁石の製造に伴う上記の諸問題を解決
することにある。 具体的には、まず熱間加工性の高い
磁石合金粉末を提供することであり、次に、この粉末を
使用して有利な条件で熱間加工を行なって磁石用素材を
得、加工品のワレやカケを低減するとともに高い加工速
度を可能にした磁石素材の製造方法を提供することであ
り、さらに、このようにして製造した素材から、高い機
械的強度と良好な磁気特性とを兼ねそなえた永久磁石を
提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の永久磁石用合金
粉末は、Nd2Fe14B 結晶構造を有する、急冷凝固法
により製造した合金粉末の表面を、金属で0.1〜10
μmの厚さに被覆してなる。
【0007】上記のNd2Fe14B 結晶構造を有する、
急冷凝固法により製造した合金粉末は、Ndおよび(ま
たは)Pr:10〜16原子%およびB:3〜10原子
%に加えて、下記の金属のグループの少なくとも1種: Co:20原子%以下 Dy,Tbその他のランタニド系希土類元素の1種また
は2種以上:10原子%以下 Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,
Mn,Al,Si,GaおよびGeからえらんだ1種ま
たは2種以上:10原子%以下 を含有し、残部がFeからなる合金の粉末としてもよ
い。
【0008】Nd,Prは10原子%以上、16原子%
以下の量で存在しないと、高い磁気特性が得られない。
Bも、磁気特性からの要求により3〜10原子%の範
囲で添加する。 Coは、磁気特性およびその温度特性
の改善を意図して、20原子%までの範囲で添加する
が、高価な原料であるから過大には加えない方が経済上
有利である。 DyやTbのようなNd,Pr以外の希
土類元素は、知られているように、磁気特性の制御のた
めに10原子%以下の量、NdまたはPrに代えて用い
る。 Ti以下のグループの元素は、磁気特性、温度特
性、さらに耐食性を改善する目的で、10原子%以内の
量、適宜添加することができる。
【0009】急冷凝固法としては、片ロールを用いた超
急冷技術がよく行なわれるが、双ロール法、遠心噴霧法
などによってもよい。 そのほか、メカニカルアロイイ
ング法やメカニカルグラインディング法など、溶湯の超
急冷によらない手法で超急冷製品と同等の組織を実現し
たものも、本発明の合金粉末として使用できる。 「急
冷凝固法による」とは、このような意味をもつ。
【0010】合金粉末を被覆する金属の層としては、N
i,Cu,FeもしくはCo、またはこれらの2種以上
の合金の層、またはこれらの金属もしくは合金の2層以
上を使用することが好ましい。 単独の金属としては、
Niが最適である。 被覆を施す方法は任意であって、
無電解メッキや蒸着が実施しやすいが、蒸着の場合は粉
末を展開しておいてもその一方の面に被覆が偏るので、
何回か撹拌して、まだ蒸着層が形成されていない側の面
を露出させて、繰り返し蒸着を行なう必要がある。 た
だし、合金粉末の全部について全表面を被覆するといっ
た厳密な処理は不要であるし、被覆層の厚さにある程度
ムラがあっても差し支えない。 平均値として、被覆層
は厚さが少なくとも0.1μmないと、本発明で意図し
た加工性向上の効果が得られない。 一方、10μmを
超える厚い層を形成すると、合金中の被覆金属の割合が
無視できない程度に大きくなり、磁気特性の低下を招
く。
【0011】本発明の永久磁石の製造方法は、上述した
永久磁石用合金粉末を、いったん常温でプレス成形して
成形体としたのち熱間で加工するか、または粉末を直接
熱間で加工し、塑性変形を加えて磁気異方性を有する永
久磁石用素材を得ることを特徴とする。
【0012】熱間加工の方法としては、アプセット加工
または後方押出し加工が代表的である。
【0013】
【作用】磁石合金粉末の表面を他の金属で被覆すると、
この金属の被膜は磁石合金そのものよりは塑性変形が容
易であるから、熱間加工に当って優先的に変形し、また
は粉末粒子間で潤滑剤的なはたらきをし、全体の塑性加
工性を高める。 その結果、ワレやカケなどの欠陥のな
い加工品を、従来より加工速度を高くしても得ることが
できる。 加工性の高い粉末を成形し焼結したものは、
焼結性も向上しているため機械的強度が高いから、苛酷
な条件で使用しても十分に信頼できる磁石製品が得られ
る。
【0014】
【実施例】
〔実施例1〕重量%で28Nd−1B−5Co−残部F
e(原子%では12.5%Nd−5.0%B−5.5%C
o−Fe)の組成を有する合金を溶製し、ロール周速度
22m/secで回転する銅製の水冷ロール上に径0.6mm
のノズルから注下して超急冷してリボンとし、このリボ
ンを粉砕して250μm以下の粉末にした。
【0015】得られた合金粉末を不活性ガスで流動状態
に保ち、加熱下にニッケルカルボニルNi(CO)4のガ
スを送入して分解させることにより、合金粉末の表面に
Ni金属の被覆層を形成させた。 このとき、ニッケル
カルボニルガスの濃度を調節して、Ni被覆層の厚さを
0.1〜15μmの範囲で変化させた。 被覆層の厚さ
の測定法は、粉末を樹脂で固めて切断し、切断面を研摩
して顕微鏡観察し、複数の点で厚さを測定して平均をと
るという方法を採用した。
【0016】Ni被覆を有する磁石合金粉末を、まず常
温で3t/cm2の圧力でプレスし、直径18mm×長さ21
mmの円柱状体とし、それをさらに800℃の金型に入れ
て2t/cm2の圧力でホットプレスし、直径18mm×長さ
16mmの円柱状体にした。
【0017】別の金型で、温度800℃において後方押
し出し成形を行ない、外径18mm×内径13mm×長さ約
16mmの円筒状の成形体に加工した。
【0018】成形体のワレの有無など外観を観察したの
ち、長さ約10mmのリングを切り出して、半径方向に荷
重をかけて圧環強度を測定し、さらにこのリングから試
験片を切り出して半径方向の磁気特性を測定した。 結
果を表1に示す。
【0019】 表1 No. Ni被覆層厚さ 成形体高さ 外 観 圧環強度 〔BH〕max (μm) (mm) (kgf/mm2) (MGOe) 比較例1 0 24.8 ワレあり 9.0 35.5 比較例2 0.05 25.6 〃 9.1 35.4 実施例1 0.11 31.5 僅かワレあり 13.5 35.5 実施例2 0.55 31.8 ワレなし 14.3 34.8 実施例3 1.1 32.0 〃 18.5 35.3 実施例4 3.2 32.0 〃 18.7 34.5 実施例5 6.3 32.0 〃 18.7 33.2 実施例6 9.7 32.0 〃 20.3 30.3 比較例3 14.9 32.2 〃 21.1 20.0 表1のデータから、合金粉末へのNi被覆層の存在が加
工性を高めて、より長く、かつく欠陥のない筒状成形体
を与えること、それにより強度の向上が得られること、
また磁気特性に関しては実質上影響がないことがわか
る。
【0020】〔実施例2〕重量%で27Nd−2Dy−
2Pr−1.2B−1Ga−残Fe(原子%では、1
2.2%Nd−0.8%Dy−0.9%Pr−7.2%
B−0.9%Ga−78.0%Fe)の組成の合金を実
施例1と同様に処理して、100メッシュ通過の合金粉
末を得た。
【0021】無電解メッキにより、この粉末の表面に平
均厚さ約1.0μmのNi被覆層を与えた。
【0022】実施例1と同様に、圧粉成形−ホットプレ
スおよび熱間の後方押し出しを行ない、リングを切り出
して試験した。 その結果を、無電解メッキをしなかっ
た場合と比較して表2に記す。
【0023】 表2 区 分 Ni被覆層厚さ 成形体高さ 外 観 圧環強度 〔BH〕max (μm) (mm) (kgf/mm2) (MGOe) 実施例7 1.0 31.5 ワレなし 17.7 33.6 比較例4 0 22.6 ワレ多し 8.0 33.5 表2の結果は、Niメッキが粉末の加工性を高めて欠陥
のない加工品を与えること、加工品の強度は高く、磁気
特性は変わらないことを示している。
【0024】〔実施例3〕重量%で30Nd−0.9B
−2.5Nb−残Fe(原子%では、13.8%Nd−
5.5%B−1.8%Nb−78.9%Fe)の組成を
有する合金を、実施例1と同様にして粉末化した。 こ
の粉末に、Ni,Cu,FeまたはCoを蒸着させて、
厚さ0.4〜0.6μmの被覆層を形成した。 蒸着は
2回に分けて行ない、中間で粉末を撹拌した。 顕微鏡
観察の結果、金属被覆がない部分はほとんど認められな
かった。 これは、蒸着時に金属原子がある程度は被蒸
着体の側方へも回り込むためと考えられる。
【0025】金属被覆した合金粉末を常圧のプレスによ
り直径30mm×高さ10mmの円板状体とし、これを80
0℃のホットプレスで高さ約8mmにした。 得られた成
形体を同じく800℃でアプセット加工し、平均直径3
7mm×高さ5.5mmの加工品とした。
【0026】加工品の外観をしらべたのち、そこから厚
さ3mm×幅5mm×長さ35mmの短册型の試験片を切り出
し、三点曲げ試験を行なって曲げ強度を測定した。 そ
れらの結果を表3に示す。
【0027】 表3 区 分 被覆金属と厚さ 成形体高さ 外 観 曲げ強度 〔BH〕max (μm) (mm) (kgf/mm2) (MGOe) 実施例8 Ni 0.47 5.25 ワレなし 28.0 33.9 実施例9 Cu 0.58 5.30 〃 4.8 33.6 実施例10 Fe 0.52 5.45 〃 6.4 32.8 実施例11 Co 0.53 5.45 〃 26.7 32.7 表3のデータも、表2と同じ効果を示している。
【0028】
【発明の効果】本発明の磁石合金粉末は、すぐれた加工
性のため熱間の塑性加工が容易であって、欠陥のない加
工品を高い加工速度で製造することができる。 加工品
は機械的強度が高く、磁石製品として信頼できる。 磁
気特性に関しては、従来品と変るところがない。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Nd2Fe14B 結晶構造を有する、急冷
    凝固法により製造した合金粉末の表面を、金属の0.1
    〜10μmの厚さの層で被覆してなる永久磁石用合金粉
    末。
  2. 【請求項2】 Nd2Fe14B 結晶構造を有する、急冷
    凝固法により製造した合金粉末が、Ndおよび(また
    は)Pr:10〜16原子%およびB:3〜10原子%に
    加えて、下記の金属のグループの少なくとも1種: Co:20原子%以下 Dy,Tbその他のランタニド系希土類元素の1種また
    は2種以上:10原子%以下 Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,
    Mn,Al,Si,GaおよびGeからえらんだ1種ま
    たは2種以上:10原子%以下 を含有し、残部がFeである合金の粉末である請求項1
    の永久磁石用合金粉末。
  3. 【請求項3】 合金粉末を被覆する金属の層として、N
    i,Cu,FeもしくはCo、またはこれらの2種以上
    の合金の層、またはこれらの金属もしくは合金の2層以
    上を使用した請求項1の永久磁石用合金粉末。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の永久磁
    石用合金粉末を、いったん常温でプレス成形して成形体
    としたのち熱間で加工するか、または粉末を直接熱間で
    加工し、塑性変形を加えて磁気異方性を有する永久磁石
    用素材を得ることを特徴とする永久磁石の製造方法。
  5. 【請求項5】 熱間加工として、アプセット加工または
    後方押出し加工を行なう請求項4の永久磁石の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 請求項4または5のいずれかに記載の方
    法で製造した永久磁石用素材に、必要な仕上加工および
    磁気異方性に従った着磁を行なって得た異方性永久磁
    石。
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