JPH0824969B2 - 成形ロール - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この発明は、斜辺部にエンボス加工を施したデッキプ
レート等のように、エンボス加工を施した斜辺部を持つ
断面形状の成形材を冷間ロール成形により製造するため
の成形ロールに関し、特に、同じ断面形状でエンボス加
工を施していない成形材を成形する場合にも容易に対応
できるようにした成形ロールに関する。

［従来の技術］ 第５図に示すように、複数の山1aを持ち、斜辺部1bに
エンボス模様（浮き出し模様）1cを設けたデッキプレー
ト１を冷間ロール成形により製造する場合、エンボスロ
ールにより帯鋼にエンボス加工を施し、このエンボス加
工を施した部分が斜辺部となるように複数段の成形ロー
ルで順次折り曲げて山を成形するが、この成形ロールに
よる折り曲げ成形の際には、エンボス模様を押し潰さな
いように成形する必要がある。

このエンボス付きのデッキプレート１を成形する従来
の成形ロールは、第６図に示すように、下ロール２は成
形材１（製品としてのデッキプレートと同じ符号を付
す）の折り曲げ形状に合わせたロールプロフィルを持つ
が、上ロール３は、斜辺部折り曲げ用ロールとして、山
1aの部分のロール４と同じ径のフラットロール部分5aと
斜辺部1bの下端につながる成形材端縁部1dを圧下する大
径のフラットロール部分4bとを持つ段付きロール（但し
一体ロールである必要はなく通常は分割している）５を
用いていた。

なお、第６図の成形ロールは、第５図のデッキプレー
ト１の左端の斜辺部1bを折り曲げ成形するプロセスの中
間折り曲げ状態のものである。

［発明が解決しようとする課題］ 斜辺部折り曲げ用ロールとして用いる上記従来の段付
きロール５は、斜辺部1bの近傍に空間Ｓを作るので、エ
ンボス模様1cを潰さない斜辺部1bの折り曲げ成形が可能
であり、エンボス付きのデッキプレート１の形成に適切
である。しかし、同じ断面形状でエンボスのないデッキ
プレートを同じロールを用いて成形しようとすると、前
記空間Ｓがあることで斜辺部1bが上下のロールにより圧
下されないため、この斜辺部1bに第８図のように膨らみ
（矢印（イ））が生じ、所望の平坦な斜辺部を持つ断面
形状が得られない。なお、エンボス付き斜辺部1bの場合
には、エンボスの存在により斜辺部1bの剛性が高くなる
ため、このような膨らみの問題は生じない。

このため、エンボスのないデッキプレートを成形する
場合には、段付きロール５を、第７図のように斜辺部1b
の形状に沿うロールプロフィルのカリバーロール６と交
換していたが、このロール交換は、上ロール全体をロー
ル軸心ごと成形スタンドから外してオフラインで行わな
ければならず、このため、エンボスを持つデッキプレー
トからエンボスのないデッキプレートへの切り替えの作
業はきわめて煩雑であり、かつ時間を要していた。

本発明は、上記従来の欠点を解消するためになされた
もので、斜辺部にエンボス加工を施した成形材を成形す
る場合と、同じ形状でエンボスのない成形材を成形する
場合との切り替えを極めて容易に行うことができる成形
ロールを得ることを目的とする。

［課題を解決するための手段］ 上記課題を解決する本発明は、エンボス加工を施した
斜辺部を持つ断面形状の成形材を冷間ロール成形により
製造するための成形ロールであって、側面にロール軸と
同心の円筒状凹部を持つ外ロールと、この外ロールの前
記円筒状凹部にロール軸長手方向に摺動可能に嵌合する
円筒状嵌合部および成形材の斜辺部の曲げ角度に応じた
角度で円錐状をなすカリバーロール部を持つ内ロール
と、この内ロールを前記外ロールに対してロール軸長手
方向に移動調整する移動調整手段とを備えたことを特徴
とする成形ロールである。

［作用］ 上記構成において、エンボス付き斜辺部を持つ成形材
を成形する場合には、移動調整手段により内ロールを移
動させて内ロールを外ロールの円筒状凹部に収納する
と、成形材の斜辺部の近傍に空間が生じ、エンボス模様
を潰さない折り曲げ成形が可能である。

同じ断面形状でエンボスのない成形材を成形する場合
には、移動調整手段により内ロールを外ロールから出
し、その円錐状のカリバーロール部と対向ロールとで成
形材の斜辺部に対応するロールクリアランスを形成す
る。これにより、斜辺部を圧下する折り曲げ成形が可能
となり、斜辺部に膨らみが生じない形成が行われる。

［実施例］ 以下、本発明の一実施例を第１図〜第４図を参照して
説明する。

第１図は前述第５図のデッキプレート１のエンボス付
きの斜辺部1bを折り曲げるために用いる斜辺部折り曲げ
用ロール10の断面図、第２図は同斜視図である。この斜
辺部折り曲げ用ロール10は、成形材端縁部1dを圧下する
ための大径部11の内側にこの大径部１と同心（すなわち
ロール軸と同心）の円筒状凹部12を持つ外ロール13と、
この外ロール13の前記円筒状凹部12にロール軸長手方向
（第１図で左右方向）に摺動可能に嵌合する円筒状嵌合
部14および成形材１の斜辺部1bの曲げ角度に応じた角度
で円錐状をなすカリバーロール部15を持つ内ロール16と
を備えている。外ロール13は軸嵌合部17でロール軸に摺
動可能に嵌合し、この軸嵌合部17の外周面17aには内ロ
ール16の内周面16aがキー18に沿って摺動可能に嵌合
し、内ロール16の外周面16bは外ロール13の円筒状凹部1
2の内周面12aに摺動可能に嵌合する。また、符号17b、1
6cは前記キー18を収容するキー溝、符号17cはロール軸
上に固定したキーに摺動可能に嵌合するキー溝である。

また、外ロール13には直径方向の２カ所に穴22があけ
られ、この穴22に対応する位置において内ロール16にね
じ穴23が２カ所あけられている。そして、中間につば24
aを持ち、両側にねじ部24b,24cを形成した移動調整用ね
じ（以下ねじと略す）24が外ロール13の前記穴22に内側
から貫通して設けられ、先端部のねじ部24bが内ロール1
6の前記ねじ穴23に螺合し、ねじ24の反対側のねじ部24c
にはダブルナット25,25が螺合している。24dはねじ24を
回すための角部である。また、12bは前記つば24aを収容
する座ぐりである。

上記斜辺部折り曲げ用ロール10は、第３図のように上
ロール26の一部として上ロール軸27に組み込まれる。上
ロール26は、上記斜辺部折り曲げ用ロール10以外は従来
とほぼ同様である。また、下ロール軸28に組み込まれた
下ロール29は第６図、第７図に示した従来の下ロール２
と同じであり、成形材１の折り曲げ形状に合わせたロー
ルプロフィルを持っている。

上記の斜辺部折り曲げ用ロール10を含む成形ロールを
用いて、斜辺部1bにエンボス模様1cを持つデッキプレー
トを成形する場合、ねじ24の操作により第３図のよう
に、内ロール16を外ロール13の円筒状凹部12内に収納し
て、成形材１の斜辺部1bの近傍に空間Ｓを生じさせる。
これにより、エンボス模様1cを潰さない斜辺部1bの折り
曲げ成形が行われる。この場合、大径部11が成形材１の
端縁部11dを下ロール29とともに圧下するので、斜辺部1
bの折り曲げ成形が良好に行われる。

また、同じ断面形状でエンボスのない成形材を成形す
る場合は、ねじ24を操作して第４図のように、内ロール
16を外ロール13の円筒状凹部12から出し、その円錐状の
カリバーロール部15と下ロール29とで成形材の斜辺部1b
に対応するロールクリアランス（ほぼ板厚相当の間隙）
を形成する。これにより、斜辺部1bを圧下する折り曲げ
成形が可能であり、斜辺部1bに膨らみの生じない折り曲
げ成形が行われる。

上記の切り替え作業における内ロール16を外ロール13
に対して移動させる操作要領について説明すると、例え
ば内ロール16を第３図の状態から第４図の状態に移動さ
せる場合、２本のねじ24のダブルナット25をともに十分
緩めた後（必要であればダブルナット25を抜き取った
後）、２本のねじ24を両手で持って押し込むことにより
内ロール16を第４図のように隣接するロールの側面に当
てる。次いで、各ねじ24を個々に回してねじ24を内ロー
ル16のねじ穴23から引き出していき、つば部24aが外ロ
ール13の座ぐり部12bに当たった後、ダブルナット25を
締め付けてねじ24をつば部24aとダブルナット25とで外
ロール13に固定する。以上により、内ロール16の移動調
整の作業が容易に、かつ短時間に行われる。

仮に、移動調整用ねじを外ロール13にロール幅方向に
は移動せず単に回転のみ可能に取り付け、２本の移動調
整用ねじを交互に回して内ロール16をねじの螺合による
推力で微量ずつスライドさせる機構とした場合、内ロー
ル16は外ロール13の円筒状凹部12にガタのない高い精度
で嵌合しているから、２本の移動調整用ねじを交互にバ
ランス良く回して内ロール16をこじることなく摺動させ
ることは容易でなく、時間もかかる。しかし、上記実施
例のように、ナット25を緩めるとねじ24が外ロール13に
対して自由に動く構成としておけば、２本のねじ24を両
手で持って押しあるいは引く操作で内ロール16を大きく
スライドさせることができる。２本のねじ24を同時に操
作するから、バランスのよい押し込みあるいは引き出し
が可能であり、こじることなくスムーズに、かつ時間を
要せずに内ロール16を摺動させることが可能である。

ただし、内ロール16を移動調整する移動調整手段とし
ては、２本のねじ24の上記操作要領に限定されるもので
なく、ねじの螺合による推力を利用するものでもよい
し、その他の方式でもよい。

なお、斜辺部にエンボス模様を持つデッキプレートを
成形する方法としては、エンボスロール等により帯鋼に
エンボス加工を施した後、成形ロールにより複数の山を
順次折り曲げ成形する方法と、帯鋼の中央の山の斜辺部
となるべき位置にエンボス加工を施した後、中央の山の
曲げ成形を行い、次の工程でその左右の山の斜辺部とな
るべき位置にエンボス加工を施した後、その左右の山の
成形を行う方法、すなわちエンボス加工と折り曲げ成形
とを交互に行う方法とがあるが、本発明はいずれの成形
手順にも適用できる。

また、本発明は、デッキプレートに限らず、エンボス
模様を施した斜辺部を持つ断面形状の成形材であれば適
用可能である。

［発明の効果］ 本発明は上記の通り構成されているので、次のような
効果を奏する。

内ロールを外ロールの円筒状凹部から出し入れするだ
けで、エンボス付き斜辺部を持つ成形材を成形する場合
と、同じ断面形状でエンボス模様のない成形材を成形す
る場合とに対応することが可能である。そして、エンボ
ス付き斜辺部を持つ成形材を成形する場合にはエンボス
模様を潰さない折り曲げ成形が可能であり、同じ断面形
状でエンボスのない成形材を成形する場合には斜辺部に
膨らみの生じない折り曲げ成形とを行うことが可能であ
る。

したがって、エンボスがある場合とない場合とでロー
ル交換をする必要がなくなり、その切り替えを極めて容
易に、かつ短時間で行うことが可能となった。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示す成形ロールの斜辺部折
り曲げ用ロールの断面図、第２図は同分解斜視図、第３
図は同斜辺部折り曲げ用ロールを組み込んだ成形ロール
でエンボス付きの成形材を成形する状態の図、第４図は
同成形ロールでエンボスのない成形材を成形する状態の
図、第５図は本発明の対象とする成形材の一例を示すエ
ンボス付きのデッキプレートの斜視図、第６図は従来の
成形ロールによりエンボス付きの成形材を成形する場合
の説明図、第７図は同エンボスのない成形材を成形する
場合の説明図、第８図は従来の問題点を説明する図であ
る。 １…デッキプレート（成形材）、1a…山、1b…斜辺部、
1c…エンボス模様、1d…成形材端縁部、11…大径部、12
…円筒状凹部、13…外ロール、14…円筒状嵌合部、15…
カリバーロール部、16…内ロール、24…移動調整用ねじ
（移動調整手段）。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】エンボス加工を施した斜辺部を持つ断面形
   状の成形材を冷間ロール成形により製造するための成形
   ロールであって、 側面にロール軸と同心の円筒状凹部（12）を持つ外ロー
   ル（13）と、この外ロールの前記円筒状凹部にロール軸
   長手方向に摺動可能に嵌合する円筒状嵌合部（14）およ
   び成形材の斜辺部の曲げ角度に応じた角度で円錐状をな
   すカリバーロール部（15）を持つ内ロール（16）と、こ
   の内ロールを前記外ロールに対してロール軸長手方向に
   移動調整する移動調整手段（24）とを備えたことを特徴
   とする成形ロール。