JPH08247049A - スクロール圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 固定スクロール１０を軸方向にフレーム４に
押圧するコンプライアント機構を備えたスクロール圧縮
機において、固定スクロール１０とフレーム４は、当接
する夫々のシート面が夫々の外周部近傍でクランク軸６
に直交する面に形成され、シート面の近傍には、固定ス
クロール１０を軸方向にフレーム４に押圧するように一
端が固定スクロール１０に、他端がフレーム４に固定さ
れた板バネ２７を備えた構成にしたものである。 【効果】 コンプライアント機構による固定スクロール
１０に加わる押圧力及び固定スクロールの渦巻１７、台
板１３のたわみを低減すると共に、過剰摺動損失を無く
すことにより、高性能かつ高信頼性のスクロール圧縮機
が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、冷凍・空調機等に用
いられるスクロール圧縮機に係り、コンプライアント機
構の構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】スクロール圧縮機は、揺動スクロールが
揺動運動を行って圧縮動作が行われると、圧縮室内の圧
力によって揺動スクロールと固定スクロールを離そうと
するスラスト力が作用するために渦巻端のシール性が悪
化するという問題点があり、これを解消するために、例
えば、揺動スクロールの背面側の補助室に高圧ガスの一
部を導くことにより固定スクロールから離れる方向に揺
動スクロールに加わるスラスト力を打消して渦巻端のシ
ール性を確保する方式、あるいは渦巻端に格別なシール
材を取付けてシール性を確保する方式、あるいは固定ス
クロールを弾性部材により揺動スクロールに付勢してス
ラスト方向に一定範囲で可動自在にすることによりシー
ル性を確保する方式（特開昭６３−３０９７９０号公
報）あるいは特開平６−５０２７５号公報に示されてい
るように密閉容器内に固定されたフレームに固定スクロ
ールを支持バネを介して取付け、中間圧力により固定ス
クロールを揺動スクロールに押付ける構造のもの、ある
いは特開平４−３６０８３号公報に示されるが如く、固
定スクロールを弾性支持する際の支持点が軸方向に複数
個（２ケ所）存在する構造のものが採用されている。

【０００３】図５は、例えば特開昭６３−３０９７９０
号公報に示された従来のスクロール圧縮機の断面図であ
る。図において、密閉容器１の内部には上側に圧縮要素
２と、下側にこの圧縮要素２を駆動する電動要素３とが
収納されている。４はフレームで、このフレーム４には
クランク軸６を支承する主軸受７及び揺動スクロール９
を支承するスラスト軸受８が設けられている。圧縮要素
２は揺動スクロール９と固定スクロール１０とで構成さ
れている。揺動スクロール９は台板１１とインボリュー
ト曲線からなる渦巻１２から構成され、前記フレーム４
のスラスト軸受８に支承されている。固定スクロール１
０は台板１３とインボリュート曲線からなる渦巻１７及
びこの台板１３の図中上面に突設された円筒上突起１９
から構成されており、更に前記固定スクロール１０は前
記フレーム４に固定されたホルダ２９によって支持され
ている。ホルダ２９は、中央部に前記固定スクロール１
０の円筒状突起１９を摺動自在に嵌合する孔２３を有す
ると共に、下面に前記固定スクロール１０の台板１３の
上面と接触する受け面３０と、台板１３に設けられた孔
に上方から入り込んで固定スクロール１０の旋回を阻止
する凸部３１と、受け面３０の孔２３の周囲に設けられ
た板バネ２７を装着するための凹部３２とが形成されて
いる。また、孔２３の内面にはシールリング２６が装着
されている。従って固定スクロール１０は凸部３１との
嵌合によって旋回が阻止され、しかしながら軸方向への
移動は許容される関係に配設されている。

【０００４】次に動作について説明する。この構造のス
クロール圧縮機では、圧縮動作が行われると揺動スクロ
ール９には下向きのスラスト力が作用し、固定スクロー
ル１０には上向きのスラスト力が作用するため、両スク
ロールには開離する方向に力が作用する。また軸線方向
と直交する方向の力も作用し、それにより固定スクロー
ル１０には転覆モーメントに起因するバタツキが生ず
る。従って固定スクロール１０の安定を計るため前記板
バネ２７による弾性力と固定スクロール台板１３の背面
に作用させた高圧とにより固定スクロール１０を適正な
力で揺動スクロール９に押圧させている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】従来のスクロール圧縮
機は以上のように構成されているので、固定スクロール
１０に作用する転覆モーメントを揺動スクロール９内の
短い支持スパンで受けるため、離間力に対する押圧力の
他に転覆モーメントによるバタツキを抑制するための余
剰な押圧力を固定スクロール１０に加えねばならないと
いう問題点があった。

【０００６】また、押圧力としてのバネ力を固定スクロ
ール１０の渦巻部背面の台板１３に加えるため、固定ス
クロール１０の台板１３及び渦巻１７の変形も大きくな
るという問題点があった。

【０００７】また、固定スクロール１０は揺動スクロー
ル９上で揺動しているため、固定スクロール１０を揺動
スクロール９に押圧している分の力が揺動ロスとして発
生するという問題点があった。

【０００８】さらに、バネ力を発生させるバネ変位量が
多数の部品の単品精度及び組み立て精度の集積で決まる
ためその管理が難しく、また、フレーム４とホルダ２９
が開離している不安定な状態からバネ力に抗して両者を
接するように組み立てねばならないという問題点があっ
た。

【０００９】この発明は上記のような問題点を解消する
ためになされたもので、コンプライアント方式スクロー
ル圧縮機の固定スクロールに加わる押圧力及び渦巻、台
板のたわみを低減すると共に、過剰摺動損失を無くすこ
とにより、高性能から高信頼性のスクロール圧縮機を提
供することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】請求項１のスクロール圧
縮機は、弾性部材によるバネ力と差圧によるガス力とで
固定スクロールを軸方向に押圧するコンプライアント機
構を備えたスクロール圧縮機において、固定スクロール
外周シート面とフレーム外周シート面とが接するように
配設し、固定スクロール外周シート面とフレーム外周シ
ート面との間で軸線方向に弾性力が発生するように弾性
部材の一端を固定スクロールに、他端をフレームに接続
するように構成にしたものである。

【００１１】請求項２のスクロール圧縮機は、請求項１
記載のものにおいて、固定スクロール又はフレームのい
ずれか一方のシート面に弾性部材を格納する凹部をシー
ト面が全周にわたって接触可能なように設けた構成にし
たものである。

【００１２】請求項３のスクロール圧縮機は、請求項１
記載のものにおいて、弾性部材の固定スクロールへの固
定位置及びフレームへの固定位置が軸線に対し点対称と
なる構成にしたものである。

【００１３】請求項４のスクロール圧縮機は、請求項１
記載のものにおいて、弾性部材に板バネを用いる構成に
したものである。

【００１４】請求項５のスクロール圧縮機は、請求項４
記載のものにおいて、弾性部材に板バネを積層して用い
る構成にしたものである。

【００１５】

【作用】請求項１のスクロール圧縮機は、固定スクロー
ルに作用する転覆モーメントをフレーム外周シート面の
長い支持スパンで受けるため固定スクロールの軸方向押
圧力は小さい。また、弾性部材は固定スクロール外周部
に位置するので、その弾性力は固定スクロールの渦巻部
背面の台板に作用しない。また、固定スクロールはフレ
ームに当接するので押圧力による余剰摺動ロスを発生し
ない。

【００１６】請求項２のスクロール圧縮機は、電動要素
で加熱された低圧ガスが固定スクロールとフレームのシ
ート面から直接圧縮室に吸引されることがない。また、
押圧力の精度は弾性部材と格納部の軸方向寸法のみに依
存する。

【００１７】請求項３のスクロール圧縮機は、転覆モー
メントに対して不利な方向性を持つことがない。

【００１８】請求項４のスクロール圧縮機は、格納用凹
部に弾性部材である板バネが容易に格納される。

【００１９】請求項５のスクロール圧縮機は、板バネの
許容応力範囲内で所定の軸線方向押圧力と、軸線方向と
直交する方向の移動を制限する所定の剛性をもたせるこ
とができる。

【００２０】

【実施例】

実施例１．以下、この発明の実施例１を図について説明
する。図１はこの発明の実施例１によるスクロール圧縮
機の部分断面図、図２は同固定スクロールの斜視図、図
３は同固定スクロールとフレームの分解斜視図、図４は
同弾性部材の固定スクロールへの取付位置図である。図
において、密閉容器１の内部には上部に圧縮要素２と、
下部にこの圧縮要素２を駆動する電動要素３とが収納さ
れている。４はフレームで、このフレーム４には外周シ
ート面５（図３参照）及びクランク軸６を支承する主軸
受７及びスラスト軸受８が設けられている。圧縮要素２
は揺動スクロール９と固定スクロール１０とで構成さ
れ、揺動スクロール９は台板１１とインボリュート曲線
から成る渦巻１２から構成され、フレーム４のスラスト
軸受８に支承されている。固定スクロール１０は図１及
び図２に示すように、台板１３と、４分割された外周シ
ート面１５と弾性部材格納部分１６からなる環状壁１４
と、インボリュート曲線から成る渦巻１７とから構成さ
れており、固定スクロール１０の外周シート面１５とフ
レーム４の外周シート面５とが当接するように配設され
ている。また固定スクロール１０の台板１３には中央に
吐出孔１８と円筒状突起１９が設けられている。２０は
密閉容器１内を高圧空間２１と低圧空間２２とに区画す
る仕切り壁で、前記仕切り壁２０の中央には貫通穴２３
と固定スクロール１０側に突出した円筒状突起２４が設
けられている。突起２４は固定スクロール１０の台板の
円筒状突起１９の内側に軸線方向に摺動自在に嵌め合わ
されており、突起２４の外周面に設けた凹部２５内にシ
ール部材２６を収納している。２７は固定スクロール１
０をフレーム４に弾性的に取り付けるために複数枚を積
層させた板バネであり、図３に示すように４分割された
板バネ２７の夫々の一方端が先ず固定スクロール１０に
ボルト２８で固定され、固定スクロール１０をフレーム
４に当接した後、夫々の他端がフレーム４にボルト２８
により固定される。その際、図４に示すように軸線と直
交する面内での取付位置は軸線に対し等ピッチの点対称
となる位置に取り付けられており、さらに板バネ２７と
ボルト２８は固定スクロール１０に設けられた凹部１６
内に収納されている。これにより板バネ２７は固定スク
ロール１０を軸線方向にフレーム４に押圧するととも
に、軸線方向と直交する方向への移動を制限するように
機能している。

【００２１】このように構成することにより、固定スク
ロール１０に作用する軸方向力の支持点がフレーム外周
面５となり、密閉容器１内でとりうる最大のスパンで支
持するとともに、固定スクロール１０は非摺動であるフ
レーム４に支持されることになる。さらに固定スクロー
ル外周シート面１５とフレーム外周シート面５とが全周
にわたって接触し、シート面では圧縮要素部低圧空間と
密閉容器低圧空間２２とが連通しない。

【００２２】この実施例によれば、固定スクロール１０
に作用する転覆モーメントをフレーム外周シート面５で
受けるためその支持スパンが長く、固定スクロール１０
のバタツキを抑えるための軸方向押圧力を小さくするこ
とが可能となる。また、弾性部材である板バネ２７の押
圧力の発生位置とその反力位置が共に固定スクロール外
周シート面１５となるため、押圧力による固定スクロー
ル台板１３及び渦巻１７の変形を抑えることができる。
また、固定スクロール１０に作用する軸方向力の反力位
置が非摺動となり、押圧力による余剰な摺動ロスがな
く、高効率なスクロール圧縮機を得ることができる。ま
た、押圧力の精度が弾性部材である板バネ２７及び格納
部１６の軸方向寸法の２カ所のみに依存するので押圧力
の管理が容易となる。また、フレーム４と固定スクロー
ル１０が接触した安定な状態から板バネ２７のバネ力に
抗して両者を接するように組み立てるので組立が容易で
ある。また、固定スクロール１０に環状壁１４を設け密
閉容器低圧室２２と圧縮要素部低圧空間を仕切ったので
電動要素３で加熱された低圧ガスがフレーム４と固定ス
クロール１０との接合面より直接的に圧縮室内に吸引さ
れることが無く、高い圧縮効率を達成することができ
る。また、環状壁１４内に弾性部材である板バネ２７を
格納したので、弾性部材設置に伴う圧縮機の軸方向寸法
の増大を回避することが可能である。また、板バネ２７
を積層して使用することにより、板バネ２７の許容応力
範囲内で所定の軸線方向押圧力と、軸線方向と直交する
方向の移動を制限する所定の剛性を創出することが可能
となる。また、板バネ２７の固定スクロール１０及びフ
レーム４への接続位置が軸線に対して点対称であるた
め、転覆モーメントに対して不利な方向性を持つことが
ない。

【００２３】実施例２．なお、実施例１では板バネ２７
を４分割したものを示したが、１ピースの環状の板バネ
を使用しても良く実施例１と同様の効果を奏する。この
場合、板バネ格納部１６は固定スクロール１０の外周全
体に連続に設ける。そして、固定スクロール外周シート
面１５はその内側に環状に形成されるので作用効果は実
施例１と変らない。

【００２４】

【発明の効果】請求項１のスクロール圧縮機は、弾性部
材によるバネ力と差圧によるガス力とで固定スクロール
を軸方向に押圧するコンプライアント機構を備えたスク
ロール圧縮機において、固定スクロール外周シート面と
フレーム外周シート面とが接するように配設し、固定ス
クロール外周シート面とフレーム外周シート面との間で
軸線方向に弾性力が発生するように弾性部材の一端を固
定スクロールに、他端をフレームに接続するように構成
にしたので、コンプライアント機構による固定スクロー
ルに加わる押し圧力及び固定スクロールの渦巻、台板の
たわみを低減すると共に、過剰摺動損失を無くすことに
より高性能かつ高信頼性のスクロール圧縮機が得られ
る。

【００２５】請求項２のスクロール圧縮機は、請求項１
記載のものにおいて、固定スクロール又はフレームのい
ずれか一方のシート面に弾性部材を格納する凹部をシー
ト面が全周にわたって接触可能なように設けたので、電
動要素で加熱された低圧ガスが直接圧縮室に吸引されな
いので高い圧縮効率のスクロール圧縮機が得られる。

【００２６】請求項３のスクロール圧縮機は、請求項１
記載のものにおいて、弾性部材の固定スクロールへの固
定位置及びフレームへの固定位置が軸線に対し点対称と
なる構成にしたので、転倒モーメントに対して不利な方
向性を持つことがない。

【００２７】請求項４のスクロール圧縮機は、請求項１
記載のものにいおて、弾性部材に板バネを用いる構成に
したので、格納用凹部に弾性部材である板バネが容易に
格納され組み立て性が良い。

【００２８】請求項５のスクロール圧縮機は、請求項４
記載のものにおいて、弾性部材に板バネを積層して用い
る構成にしたので、板バネの許容応力範囲内で所定の軸
線方向押圧力と、軸線方向と直交する方向の移動を制限
する所定の剛性をもたせることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 この発明の実施例１によるスクロール圧縮機
の部分縦断面図である。

【図２】 この発明の実施例１によるスクロール圧縮機
の固定スクロールの斜視図である。

【図３】 この発明の実施例１によるスクロール圧縮機
の固定スクロールとフレームの分解斜視図である。

【図４】 この発明の実施例１によるスクロール圧縮機
の弾性部材の固定スクロールへの取付位置図である。

【図５】 従来のスクロール圧縮機の縦断面図である。

【符号の説明】 ２ 圧縮要素、４ フレーム、５ フレーム外周シート
面、６ クランク軸、１０ 固定スクロール、１３ 固
定スクロール台板、１５ 固定スクロール外周シート
面、１６ 弾性部材格納部、１７ 固定スクロールイン
ボリュート渦巻、２２ 密閉容器内低圧室、２７ 板バ
ネ。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉田 達也 静岡市小鹿三丁目18番１号 三菱電機株式 会社静岡製作所内 (72)発明者 萩原 正二 静岡市小鹿三丁目18番１号 三菱電機株式 会社静岡製作所内 (72)発明者 伏木 毅 静岡市小鹿三丁目18番１号 三菱電機株式 会社静岡製作所内

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 台板上に巻き方向が互いに逆の渦巻部を
   組み合わせることにより、両渦巻部に圧縮室を形成する
   固定スクロール及び揺動スクロールと、電動機及び電動
   機の駆動力を揺動スクロールに伝達するクランク軸と、
   上記クランク軸を支承するための主軸受と一体形成され
   揺動スクロールが旋回運動を行う圧縮要素部低圧空間を
   もつフレームと、密閉容器内を高圧空間と低圧空間に分
   離する仕切壁とを具備し、弾性部材によるバネ力と差圧
   によるガス力とで固定スクロールを軸方向に押圧するコ
   ンプライアント機構を備えたスクロール圧縮機におい
   て、固定スクロール外周シート面とフレーム外周シート
   面とが接するように配設し、固定スクロール外周シート
   面とフレーム外周シート面との間で軸線方向に弾性力が
   発生するように弾性部材の一端を固定スクロールに、他
   端をフレームに接続したことを特徴とするスクロール圧
   縮機。
2. 【請求項２】 固定スクロール又はフレームのいずれか
   一方のシート面に弾性部材を格納する凹部を該シート面
   が全周にわたって接触可能なように設けたことを特徴と
   する請求項１記載のスクロール圧縮機。
3. 【請求項３】 弾性部材の固定スクロールへの固定位置
   及びフレームへの固定位置が軸線に対し点対称となるこ
   とを特徴とする請求項１記載のスクロール圧縮機。
4. 【請求項４】 弾性部材に板バネを用いることを特徴と
   する請求項１記載のスクロール圧縮機。
5. 【請求項５】 弾性部材に板バネを積層して用いること
   を特徴とする請求項４記載のスクロール圧縮機。