JPH08241689A - 荷電粒子線装置のビームブランキング装置 - Google Patents

荷電粒子線装置のビームブランキング装置

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JPH08241689A
JPH08241689A JP7044572A JP4457295A JPH08241689A JP H08241689 A JPH08241689 A JP H08241689A JP 7044572 A JP7044572 A JP 7044572A JP 4457295 A JP4457295 A JP 4457295A JP H08241689 A JPH08241689 A JP H08241689A
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deflector
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deflection
particle beam
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ブランキング信号のノイズによるプローブへ
の影響を極めて少なくすることができる荷電粒子線装置
におけるブランキング装置を実現する。 【構成】 電子銃エミッタ21からの電子ビームを対物
レンズ25で集束して試料26に照射すると共に、偏向
コイル27,28によって試料上で2次元的に走査す
る。対物レンズ絞り31とその下方に形成された電子ビ
ームのクロスオーバー点との間にブランキング偏向器3
0を配置し、対物レンズ絞り31と偏向コイル27,2
8との間にブランキング絞り32を設ける。ブランキン
グ偏向器の偏向電極の間の間隔2gは、電子ビームの加
速電圧に応じて変化させられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、走査電子顕微鏡や電子
ビーム描画装置などの電子ビーム装置、集束イオンビー
ム装置などのイオンビーム装置に用いられるビームブラ
ンキング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】荷電粒子線装置として現在用いられてい
る装置としては、走査電子顕微鏡,透過型電子顕微鏡,
電子プローブマイクロアナライザー,電子ビームテスタ
ー,電子ビーム描画装置,集束イオンビーム装置などが
あげられる。これらの装置では、ビームを特定期間試料
に照射しないために、ビームブランキング装置が必要と
されるが、各装置では、ビームブランキング装置の性
能,機能はそれぞれ異なる。例えば、電子ビームテスタ
ーにおいては、サブピコセコンド〜数ナノセコンドのパ
ルスビームを得ることができる機能が必要となる。
【0003】また、測長を目的とする走査電子顕微鏡で
は、電子ビームの走査の帰線期間にビームをカットし、
極力試料へのチャージアップや試料汚染などの試料ダメ
ージを軽減する目的でビームブランキングが用いられて
いる。さらに、透過型電子顕微鏡では、単にビームシャ
ッターとして用いる用途もある。
【0004】一般に使用されているビームブランキング
装置の基本構成を図1に示す。図中1はビーム径制限絞
り、2は静電型の偏向器、3はブランキング絞りであ
る。この構成で、ビーム径制限絞り1の開口径を2
、ブランキング絞り3の開口径を2R、ビーム源あ
るいはビームのクロスオーバー点をCとし、Cと偏向器
2の中心までの距離をS、偏向器2の中心からブランキ
ング絞り3までの距離をLとすると、ビームがブランキ
ングされる条件は、偏向器2によるビームの偏向角をθ
とすると、次の通りとなる。
【0005】θ>θ 上記でθは最小必要偏向角であり、αがビーム径制
限絞り1が規定するビーム開き角、Bがブランキング絞
り3上のビームの半径とすると、次式が導かれる。
【0006】θ=(B+R)/L B=(S+L)α このような式から、ビームブランキング装置を組み込む
場所が自ずと決まってくる。例えば、焦点距離の可変範
囲が大きいレンズの下方にビームブランキング装置を組
み込むと、上式のBが大きく変わることになり、ブラン
キング条件を常に満足することが困難となる。従って、
熱電子銃を用いた走査電子顕微鏡を例にとると、電子銃
と第1コンデンサレンズとの間にビームブランキング装
置を組み込む構成が普通となる。
【0007】図2は熱電子銃を用いた走査電子顕微鏡の
要部を示しており、4は熱電子放射フィラメント5、ウ
ェーネルト電極6、接地電位の陽極7より構成される熱
電子銃であり、8は第1コンデンサレンズである。図1
に示したビーム径制限絞り1、偏向器2、ブランキング
電極3より成るビームブランキング装置は電子銃4と第
1コンデンサレンズ8との間に配置される。
【0008】図3は電界放射型電子銃を用いた走査電子
顕微鏡を示しており、9は電界放射エミッタ10、引出
電極11、フォーカス電極12、加速電極13より成る
電界放射型電子銃であり、14は対物レンズ、15は試
料である。対物レンズ14の前面にはブランキング絞り
を兼用した対物レンズ絞り16が設けられている。この
ような構成では、エミッタ10の直下に配置される引出
電極11、フォーカス電極12、加速電極13より成る
ガンレンズを、上記した式におけるBが大幅に変わらな
いような焦点距離の範囲内で用いる必要がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】図2で示した熱電子銃
を用いた走査電子顕微鏡では、長い高圧碍子を介してフ
ィラメント5とウェーネルト電極6などのユニットと、
陽極7が組み立てられており、機械的な同軸度が悪い。
しかも、射出されるビーム開き角が10−2rad程度
である。この横を向いた細いビームを後段のレンズの光
軸に向けるために電子銃の軸合わせ装置がブランキング
装置と同じ場所に組み込まれている。しかしながら、ビ
ーム径制限絞り1を通過できたビームは、軸合わせ可能
であるが、通過できないビームは軸合わせ装置をいかに
調節しても絞りを通過させることはできない。従って、
実際の装置にあっては、ビーム径制限絞り1の直径を1
mm以下にすることは困難である。この結果、θが大き
くならざるを得ないので、ブランキング条件を満足する
には、偏向器の偏向感度を大きくするか、偏向信号強度
を大きくしなければならない。
【0010】図3に示した電界放射型電子銃を用いた走
査電子顕微鏡では、ガンレンズの焦点距離可変範囲に制
限ができる結果、対物レンズ14を通過する荷電粒子線
電流(プローブ電流)の可変範囲が著しく狭くなる欠点
が生ずる。電子ビームテスターのようにプローブ電流を
変える必要のない装置では、この点は問題とならない
が、一般の走査電子顕微鏡では、プローブ電流可変範囲
のような装置の基本性能をブランキング装置の組み込み
のために犠牲にすることはできない。このため、プロー
ブ電流可変用のレンズを追加することになり、全体のコ
ストアップを招く欠点があった。
【0011】更に、走査電子顕微鏡においては、加速電
圧の可変範囲が大きいことに伴うブランキング動作上の
問題点がある。すなわち、汎用走査電子顕微鏡では、加
速電圧は0.5kV〜30kVの範囲で変えられ、ま
た、測長走査電子顕微鏡でも0.5kV〜3kVの範囲
で変えられる。ここで、偏向器に信号を供給したときの
偏向角について考察する。静電型偏向ではVdの偏向信
号が供給され、磁界型偏向器ではIdの偏向信号が供給
されると、θは簡単な電子光学理論により、次の式の通
りとなる。
【0012】
【数1】
【0013】上式で(1)式は静電偏向の場合、(2)
式は磁界偏向の場合で、E(z)は電場の強さ、B
(z)は磁場の強さ、e(z)は偏向器に±1V加えた
ときにできる軸上偏向電界、b(z)は偏向器に±1A
加えたときにできる軸上偏向磁束密度である。また、偏
向感度Fは次の(3)式、(4)式で表される。なお、
(3)式は静電偏向の場合、(4)式は磁界偏向の場合
である。
【0014】
【数2】
【0015】上記(3),(4)式から、偏向感度Fは
偏向板あるいは偏向コイルの形状のみの関数であること
が分かる。従来のブランキング装置は、加速電圧に拘ら
ず同一の偏向器で用を足していた。換言すれば、加速電
圧が大幅に変化するにも拘らず、同一の偏向感度Fを有
した偏向器でブランキングを行っていた。また、偏向信
号(VdまたはId)を加速電圧(Va)に連動して、 Vd=kVa …(5) Id=k´√(Va) …(6) とすることにより、加速電圧に拘らず、一定のθが得ら
れるようにしたブランキング装置も一般的であった。こ
れは、このような連動をしないと、低加速電圧のとき、
θが大きくなりすぎ、偏向されたビームが通路壁に衝突
して散乱され、通路壁の汚染やチャージアップ、それに
よるビーム位置の変動を起こしたり、散乱ビームがブラ
ンキング絞りを通り抜けて完全なブランキングができな
くなることを防ぐためである。
【0016】前記した偏向信号と加速電圧とを連動させ
ることおよび偏向感度を一定としたブランキングシステ
ムの問題点を以下に述べる。一般にブランキング用パル
ス電源は必ずノイズ成分を有している。このノイズは図
4に示すように出力電圧または電流がハイレベルの時も
ローレベルの時も同一の大きさである。従って、ハイレ
ベルからローレベルに遷移したときのビームを利用する
電子ビームテスターであれ、ローレベルのときのビーム
を利用する測長走査電子顕微鏡であれ、このノイズによ
り試料上の電子ビームプローブの照射位置は変動する。
この変動をΔとすると、図5から明らかなように、静電
偏向器の場合には次の式が導かれる。
【0017】Δ=M(sθ)δVd/Vd …(7) また、磁界型偏向器の場合には、次の式が導かれる。 Δ=M(sθ)δId/Id …(8) ここで、Mはブランキング装置より下方のレンズ16の
総合倍率、sは光源から偏向器2までの距離である。
【0018】(5)式を(7)式に代入し、(6)式を
(8)式に代入すると、次の式が得られ、Δの加速電圧
依存性が分かる。 Δ=M(sθ)δVd/kVa …(9) Δ=M(sθ)δId/k´√(Va) …(10) ここで、θ,δVd,δIdは、加速電圧Vaに拘らず
一定としたから、Δは結局、Vaまたは√(Va)の逆
数に比例することになる。Δは低周波から高周波まで含
み、後者はスポットサイズを事実上増大させる。最近で
は、半導体試料のように表面が絶縁体で覆われた試料を
観察するために低加速電圧での使用が盛んな走査電子顕
微鏡においては、Δによる分解能の低下は深刻な問題と
なっていた。又、電界放射型電子銃走査電子顕微鏡にお
いては、Mが1に近く、ほとんど縮小効果がないので、
Δが大きくなりやすい。換言すれば、最低加速電圧(〜
0.5kV)においても、Δを装置分解能(測長走査電
子顕微鏡では〜5nm)の数分の一以下に抑えられるビ
ームブランキング装置は存在しなかった。
【0019】本発明は、このような点に鑑みてなされた
もので、その目的は、ブランキング信号のノイズによる
影響を少なくすることができる荷電粒子線のブランキン
グ装置を実現するにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1の荷電
粒子線装置におけるブランキング装置は、荷電粒子線源
からの荷電粒子線を集束レンズで集束して試料に照射す
ると共に、偏向手段によって荷電粒子線の走査を行うよ
うにした荷電粒子線装置において、集束レンズ絞りとそ
の上方に形成された荷電粒子線のクロスオーバー点との
間にブランキング偏向器を配置し、集束レンズ絞りと偏
向手段との間にブランキング絞りを設けるように構成し
たことを特徴としている。
【0021】本発明の請求項2の荷電粒子線装置におけ
るブランキング装置は、ブランキング偏向器として静電
型の偏向器を用い、偏向器を構成する一対の偏向電極の
間の距離は荷電粒子線の加速電圧とプローブ電流に応じ
て変化させられることを特徴としている。
【0022】本発明の請求項3の荷電粒子線装置におけ
るブランキング装置は、ブランキング偏向器として磁界
型の偏向器を用い、偏向器を構成する一対の偏向コイル
の間の距離は荷電粒子線の加速電圧とプローブ電流に応
じて変化させられることを特徴としている。
【0023】本発明の請求項4の荷電粒子線装置におけ
るブランキング装置は、ブランキング偏向器として偏向
感度の異なる複数の偏向電極を用い、複数の偏向電極は
加速電圧に応じて使用される組み合わせが切り換えられ
ることを特徴としている。
【0024】本発明の請求項5の荷電粒子線装置におけ
るブランキング装置に用いられるブランキング偏向器
は、平行平板対向偏向電極と偏向電極の上下に同じ対向
距離を有する平行平板型シールド電極とより構成され、
偏向電極とシールド電極を微小ギャップを介して一体化
したことを特徴としている。
【0025】
【作用】請求項1の発明は、集束レンズ絞りとその上方
に形成された荷電粒子線のクロスオーバー点との間にブ
ランキング偏向器を配置し、集束レンズ絞りと偏向手段
との間にブランキング絞りを設ける。
【0026】請求項2の発明は、偏向器を構成する一対
の偏向電極の間の距離を荷電粒子線の加速電圧とプロー
ブ電流に応じて変化させる。請求項3の発明は、偏向器
を構成する一対の偏向コイルの間の距離を荷電粒子線の
加速電圧とプローブ電流に応じて変化させる。
【0027】請求項4の発明は、ブランキング偏向器と
して偏向感度の異なる複数の偏向電極を用い、複数の偏
向電極の使用の組合わせを加速電圧に応じて切り換え
る。請求項5の発明は、ブランキング偏向器を平行平板
対向偏向電極と偏向電極の上下に同じ対向距離を有する
平行平板型シールド電極とより構成し、偏向電極とシー
ルド電極を微小ギャップを介して一体化した。
【0028】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細
に説明する。図6は本発明の一実施例である走査電子顕
微鏡を示しており、21は電子銃エミッタである。電子
銃エミッタ21から発生した電子ビームは、第1コンデ
ンサレンズ22,第2コンデンサレンズ23,開き角制
御レンズ24,対物レンズ25によって試料26上に細
く集束される。また、電子ビームは、偏向コイル27,
28によって偏向され、試料26上の電子ビームの照射
位置は走査される。試料26への電子ビームの照射によ
って発生した2次電子は、図示していない2次電子検出
器によって検出される。検出器の検出信号は、適宜増幅
された後、陰極線管(図示せず)に供給される。このよ
うな構成の動作は次の通りである。
【0029】さて、エミッタ21から放射された電子ビ
ームは第1コンデンサレンズ22で集束され第1クロス
オーバーを作る。この第1クロスオーバーから拡がった
電子ビームは、散乱防止絞り29で不要な部分を切り取
られ、第2コンデンサレンズ23に入射する。第2コン
デンサレンズ23によって第2クロスオーバーCが偏向
器30の前段に形成される。偏向器30に偏向信号が供
給されていないとき、電子ビームは偏向器内を直進し、
対物レンズ絞り31を照射する。対物レンズ絞り31上
の電子ビームの径を2Bとする。直径が2Dの対物
レンズ絞り31を通過した電子ビームの電流が試料を照
射する電流、すなわちプローブ電流Ipとなる。上記2
段のコンデンサレンズの焦点距離を変えることにより、
プローブ電流Ipの大きさを制御することができる。
【0030】この際、C点は光軸に沿って移動するが、
第2コンデンサレンズ23とブランキング偏向器30の
間の空間にこのクロスオーバー点Cが形成されるよう
に、第1コンデンサレンズ22の焦点距離f1,第2コ
ンデンサレンズ23の焦点距離f2の大きさを適宜調整
する。大きな電流Ipを得るときには、C点は下方に移
動するのが普通である。この時、対物レンズ絞り31上
の電子ビームの径Bは最小となる。
【0031】対物レンズ絞り31より上方の光学系に軸
不正があると、絞り31上の電子ビームの中心は横にず
れる。多少のずれを許容できるように(B)min>
としてある。クロスオーバー点Cの像が開き角制御
レンズ24と対物レンズ25によって試料26上に形成
される。開き角制御レンズ24の倍率をm、対物レン
ズ25の倍率をmolとし、molをmの従属変数と
する。なお、この従属変数とは、mを勝手に変えたと
き、試料上にフォーカスするという条件からm olが定
まるという意味である。簡単な計算から、次の式が導か
れる。
【0032】mol=b/(l+m・a) 上式でlはレンズ間距離、bは対物レンズ25と試料2
6との間の距離、aはクロスオーバーCと開き角制御レ
ンズとの間の距離である。対物レンズ絞り31がC点に
対して張る角の半分をαとする。また、試料26に照
射される電子ビームの開き角をαとすると、次の関係
がある。
【0033】m・mol=α/α 前記した(7),(8)式から、次の式が得られる。
【0034】
【数3】
【0035】上式から導かれるように、mを変えるこ
とによってαを変えることができる。周知のごとく、
プローブ径を最小にするαi(opt)が存在する。α
i( opt)は装置の操作条件である加速電圧,プロー
ブ電流、装置定数であるレンズ系の収差係数,電子ビー
ムのエネルギ幅などの関数である。
【0036】ところで、操作条件を変えてもα=α
i(opt)の関係を常に満たすようにmを制御する
ことができる。開き角制御レンズ24を出た電子ビーム
は、距離Lに配置されたブランキング絞り32を通過す
る。ブランキング絞り32の半径Rはこの位置における
最大ビーム半径Bより大きく設定されている。電子ビー
ムは2段の偏向コイル27,28によって対物レンズ2
5の中心を偏向支点とする走査がなされる。図7(a)
には、偏向コイル27,28に印加される走査信号の波
形が示されている。なお、図7(b)はブランキング信
号である。
【0037】この走査信号波形は、水平走査と垂直走査
では形が同じで時間スケールが異なっている。この走査
信号は単純な鋸歯状波ではなく、一周期の間に走査期間
Tsと走査の帰線期間Trとが設けられている。この帰
線期間Trの間、試料照射ビームは一か所に止まってい
るため、試料の走査領域の左端および左上隅のドーズ量
(Ip×Tr)が他の走査領域内の点に比べて極めて大
きくなる。この様子を図8に示す。図8(a)は走査領
域を示し、図8(b)はX方向のドーズ量分布、図8
(c)はY方向ドーズ量分布を示す。
【0038】絶縁体試料の場合、ドーズ量に応じて帯電
が生じるため、表面上に電荷の不均一による電界が生
じ、一次ビームを不正の偏向する。この帯電と放電は、
試料の表面状態や時間によって変化するため、測長走査
電子顕微鏡においては、測長値の再現性を損なうことに
なる。また、電子ビームの照射に伴って発生するコンタ
ミネーション(汚染)がドース量の多い点で増える。コ
ンタミネーションが厚く滞積すると、像観察後の半導体
製造フロセスにおいても完全除去が困難であり、結果と
して、デバイス製造の歩留まりを悪化させる。
【0039】そこで、帰線期間中照射電流をブランキン
グするようにブランキング偏向器30に図7(b)にブ
ランキング信号を印加する。この時、ドーズ量分布は図
9に示すように均一になる。図9で図9(a)は走査領
域を示し、図9(b)はX方向のドーズ量分布、図9
(c)はY方向ドーズ量分布を示す。このため、不均一
電場は生じなくなり、測長SEMにおける測長再現性が
向上することになる。
【0040】次に、図6におけるブランキング条件を求
める。まず、maは開き角制御レンズ24によるC点
の像位置、(α/m)は開き角制御レンズ24から
出るビームの開き角である。これを用いると次の式が導
かれる。
【0041】B=(L+ma)(α/m) なお、α=D(a−t)である。従って次の式が導
かれる。 B=K・D ただし、Kは次の式で表される。
【0042】
【数4】
【0043】次に偏向角をθとすると、対物レンズ絞り
31の中心を通る軌道の光軸となす角度γおよびこの
軌道が開き角制御レンズに入射する高さhは、次の通
りである。
【0044】γ=sθ/(a−t) h=tγ=(st/(a−t))θ この軌道が開き角制御レンズ24を出た後、光軸となす
角度をγ、また、ブランキング絞り32上での高さを
とすると、次の式が導かれる。
【0045】
【数5】
【0046】従って、ブランキング条件h>B+Rを
θに関する条件に書き直すと、以下の関係となる。 θ≧θ ただし、θ=(a/s){(KD+R)/(Kt+
l)}である。一方、図6の場合には、M=m・m
olであり、(11)式により、M=α/αであ
る。ここでθ/θ=γ(ブランキング安全率>1)と
おく。この時、Δは、(7),(8)式から次のように
書き表すことができる。
【0047】
【数6】
【0048】上記(14)式は静電偏向の場合、(1
5)式は磁界偏向の場合である。本発明の第1の要件で
ある「偏向器30を点Cと対物レンズ絞り31の間に配
置する」を満たせば、(14),(15)式より「Δは
偏向位置を変えても変わらない」という重要な特性が得
られることが分かる。なお、偏向器30がビーム径制限
絞り29の下にある図1のシステムでは、Δはsに比例
する。
【0049】本発明の第2の要件は、(3),(4)式
の偏向感度Fを加速電圧に比例して切り替える」ことで
ある。この時、θは静電偏向の場合次の式となる。
【0050】
【数7】
【0051】また、磁界偏向の場合には次の式となる。
【0052】
【数8】
【0053】上の2式から明らかなように、偏向角は一
定の偏向信号Vd(Id)の下で加速電圧に拘らず一定
となる。この時、(14),(15)式中のγおよ
び[]内は加速電圧の直接の関数ではなくなり、従って
「Δは加速電圧を切り替えても一定となる。」という本
発明の目的が達せられる。
【0054】図10〜図12は、偏向感度Fに関し、F
=kVa、あるいは、F=k√(Va)を実現する静電
型偏向器の構造が示されており、図10は正面図、図1
1は電極構造の平面図と操作回路とを含めた図、図12
は側面図である。これらの図において、同形の一対の静
電電極40および2対のシールド電極41,42を端面
を整列させて対向させる。偏向電極40と上下のシール
ド電極41,42間は薄い絶縁体43で絶縁されてい
る。これらの電極は適宜の方法で固定一体化されてい
る。
【0055】一対の下部シールド電極42には、ピッチ
が同じの右ネジ44と左ネジ45が切ってある。この一
体化された左右の偏向電極ユニットに送りネジ46を嵌
め込む。送りネジ46はジョイント47を介してモータ
軸48に結合されている。また、シールド電極42のY
方向両端には、三角突起49が設けられている。三角突
起49を外部に設けた一対のガイドレール50に嵌合
し、X方向に移動可能に構成する。
【0056】モータ軸48は電子光学カラム壁51を貫
通してパルスモータ52に接続されている。パルスモー
タ52はパルスジェネレータ53から駆動パルスが送ら
れるモータドライブ電源54によって駆動される。パル
スジェネレータ53から発生するパルス値(N値)は、
コンピュータ55によって制御されるが、コンピュータ
55には操作パネル56から加速電圧Vaと、プローブ
電流Ipについての各値が供給される。
【0057】このような構成で、設定された加速電圧V
a、プローブ電流Ipに応じてパルスモータ52を駆動
し、モータ軸48を回転させる。このモータ軸48の回
転によって、シールド電極42は光軸に軸対称に移動
し、その結果、静電偏向電極40の間隔2gは適宜変化
させられる。ここで、間隔2gに対する偏向感度値F
は、電界計算ないしは実験的に求めることができる。図
13はこの実験によって求められた偏向感度値Fであ
る。
【0058】偏向電極40がY方向に無限に長く、シー
ルド電極41,42もY,Z方向に無限に長く、絶縁ギ
ャップが無限小の場合には、軸上偏向電界E(x)zは
解析的に求めることができ、hを偏向電極40のZ軸に
沿った長さとすると、次の式が導かれる。
【0059】
【数9】
【0060】上式の関係から(3),(4)式を用いて
偏向感度Fを計算で求めると、F=h/2gとなる。実
際の電極では、2gが大きくなると、図13に示すよう
に偏向感度Fは理想カーブよりも大きくなる。このこと
は、一定の範囲のFの可変幅を得るのに必要な2gの変
化幅が大きくなることを意味するので、できるだけ理想
形に近付けることが必要である。
【0061】次に、2gの制御の方法について述べる。
θ≧θの関係と、(16),(17)式から、下記の
式が導かれる。
【0062】
【数10】
【0063】(19)式の()内はプローブ電流を切り
替えるとき、C点の位置が変化するので大きさが異なる
が、加速電圧を変えてもほとんど変化しない。すなわ
ち、偏向感度は2g,hと他の構造因子の関数となる。
従って、2g制御の手順は次のステップで行うことにな
る。
【0064】[第1ステップ]ビーム条件(VaとI
p)を操作パネルから与える。 [第2ステップ](18)式に従って必要な偏向感度F
を計算する。
【0065】[第3ステップ]偏向感度Fを与える2g
をhやその他の構造因子から求める。 [第4ステップ]モータにパルスを送り、上の2g値を
実現する。
【0066】上記第2ステップは、VaとIpの可能な
全ての組み合わせについて必要なF値を予め計算したテ
ーブルを作成しておくことができる。第3ステップも図
13よりFと2gのテーブル化が可能である。第4ステ
ップでは、2g値は1パルス当たりの2gの変化幅Δ
(2g)が分かっているので、N=2g/Δ(2g)よ
り、パルス数Nに換算することができる。従って、第
2,3,4ステップのテーブルを一本化し、(Ip,V
a)に対するパルス数Nのテーブルとしておけば、制御
が容易となる。
【0067】図11のコンピュータ55は、操作パネル
56から(Ip,Va)のコードを受け取り、上記テー
ブルを索引して対応するN値を求め出力する。パルスジ
ェネレータ53は指定されたN値に基づき、N個のパル
スを発生する。モータドライブ電源54はパルス信号を
受け取り、モータ52ヘを駆動するパルス電流に変換す
る。こうして設定された2gを持つ偏向器40によれ
ば、(19)式より必要な偏向角θのγ(>1)倍の
偏向がなされ、ビームは確実にブランキングされる。更
に、そのときのΔは、(18)式で与えられ、加速電圧
を切り替えてもΔの変動はほとんど無くなる。ただし、
Ip切り替えに伴うΔの変動は残存する。この原因は、
(14)式の[]の項による。この変動幅は実用上差支
えない程度(1mm以下)に抑えることが可能である。
【0068】次に磁界型偏向器の場合について述べる。
磁界型の場合は、図14(a)に示したようなセラミッ
ク性の2g可変機構の対向平面にブランキング用のコイ
ル60を貼り付ける。コイル60およびセラミック体6
1は薄い金属で覆い、帯電防止を施す。セラミック体6
1にはナット62が埋め込まれ、このナット62には図
10に示したような送りネジ46が貫通させられてい
る。なお、図14(b)にコイル60の断面形状を示
す。磁界偏向の場合には、(19)式のVa/Vdの項
が√(Va)/Idに変わるので、Fの可変幅(従って
2gの可変幅)を小さくできる利点がある。
【0069】上記した実施例では、静電偏向の場合には
F=kVaとし、磁界偏向の場合には、F=k´√(V
a)とすることにより、ΔをVaによらず一定とした。
このために2g可変機構を設け、Vaに応じてほぼ連続
的に2gを変化させる必要がある。この代わりに、偏向
感度の異なる偏向器を数個Z軸に沿って並べておき、加
速電圧を例えば2倍変えるごとに偏向器の方も切り替え
るようにしても良い。この場合のΔの加速電圧に対する
変化をグラフにすると、図15のようになる。すなわ
ち、Δは加速電圧に対し一定とならず、鋸歯状に変化す
る。
【0070】しかしΔのピーク値がプローブ径の数分の
一以下になるようにできれば問題はない。図15は加速
電圧が0.5kVから8kVまで変化する走査電子顕微
鏡の場合、Δの2倍の変化を許すとしたとき、Fが2倍
ずつ異なる4段の偏向器が必要であることを示す。図の
Δの最小値は、第1の実施例におけるΔと同程度の大き
さである。従って、Δの最大値は2×Δminとなる。
この値が許されないときには、(14),(15)式の
δVdまたはδIdを半分にするか分母のVdあるいは
Idを半減することを考える。増幅器のノイズは一般に
次の式で表される。
【0071】
【数11】
【0072】上式でe(f)は使用するICの種類で
決まるノイズ電圧の周波数分布である。従って、δVd
を小さくするには、帯域fを落とすしかない。f
小さくすると早いブランキングができなくなる。そこで
水平走査に対する帰線期間のブランキングをあきらめ、
垂直走査のブランキングのみを行うようにすれば、δV
dを数分の一以下に減らすことができる。TV周波数で
の走査の場合、垂直ブランキングに必要な帯域は〜10
kHz程度以下にすることができる。
【0073】図16に多段式偏向器を示す。4枚の偏向
電極D〜Dは、シールド電極65によってシールド
される。66は対物レンズ絞りである。各偏向電極D
〜D の厚みの比は、2:1:1:4としてあり、先に
述べたように十分なシールド板長があればそのまま偏向
感度比となる。図17に示した表のように、加速電圧を
2倍ずつに区切り、各区分に対応して用いる偏向器を組
み合わせる。例えば、加速電圧が2.0〜4.0kVの
時には偏向器DとDとDを用いる、あるいは、D
だけを用いても良い。この時、合成された偏向感度は
1+1+2=4となる。かくすれば、次の比率の4つの
偏向器を用いることにより、全体の厚みを薄くできる
上、各段偏向器のs値の違いによる必要偏向角θ0のバ
ラつきを小さくできる。
【0074】h:h:h:h=1:2:3:4 次に偏向器の選択方法について述べる。図18に示すよ
うに、各段偏向器の電極D〜DはリレーRA,B
〜RA,Bに接続されている。リレーがOFFの時
は、電極はパルス電源67のアースに接続され、リレー
がONになるとリレーRA(i=1〜n)は+Vd
に、リレーRBは−Vdの出力回路に接続される。リ
レーの選択は図19に示したリレー選択回路で行う。加
速電圧をオペレータが指定すると、そのレンジに応じて
図20の真理値表に示した2ビットの(C1,C2)信
号を作成する。この場合、コンピュータを用いても良い
し、ハードロジックで行っても良い。マルチプレクサー
68は、この2ビット信号(C1,C2)に応じて図2
0に示した真理値表に従った出力を行う。スイッチング
トランジスター69はこの出力が1の時導通し、リレー
駆動コイル70に電流が流れリレーをONにする。出力
が0の場合、トランジルターはカッチオフになり、リレ
ー電流が0になってリレーはOFFになる。
【0075】以上本発明の一実施例を詳述したが、本発
明はこの実施例に限定されない。例えば、電子ビームの
場合を主として説明したが、イオンビームにも本発明を
同様に適用することができる。
【0076】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1
の発明は、集束レンズ絞りとその上方に形成された荷電
粒子線のクロスオーバー点との間にブランキング偏向器
を配置し、集束レンズ絞りと偏向手段との間にブランキ
ング絞りを設けるように構成したので、ブランキング電
源のノイズに基づく試料上のプローブ位置変動量Δが偏
向器位置に依存しなくなった。また、ブランキング偏向
器による荷電粒子線の偏向量が僅かですむために、偏向
器を小型に構成でき、既存の荷電粒子線の光学系をほと
んど変更することなしにビームブランキング装置を組み
込むことができる。
【0077】本発明の請求項2と3の発明では、偏向電
極や偏向コイルの間隔を荷電粒子線の加速電圧やプロー
ブ電流に応じて変化させるように構成したので、ビーム
の最小必要偏向量をB+Rとし、安全率をrとした場
合、ブランキング絞り上でのビーム移動量を常時r(B
+R)に保つことができる。また、試料上のプローブ位
置変動量Δを加速電圧によらずに一定とすることが可能
となり、ノイズによるプローブの太りやゆれをプローブ
径の数分の一以下にすることができる。
【0078】本発明の請求項4の発明では、ブランキン
グ偏向器として偏向感度の異なる複数の偏向電極を用
い、複数の偏向電極の使用の組合わせを加速電圧に応じ
て切り換えるように構成したので、請求項2や3と同様
な効果を得ることができる。
【0079】本発明の請求項5の発明は、ブランキング
偏向器を平行平板対向偏向電極と偏向電極の上下に同じ
対向距離を有する平行平板型シールド電極とより構成
し、偏向電極とシールド電極を微小ギャップを介して一
体化したので、コンパクトなブランキング偏向器を提供
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のビームブランキング装置の基本構成を示
す図である。
【図2】従来の熱電子銃を用いた走査電子顕微鏡の要部
を示す図である。
【図3】従来の電界放射型電子銃を用いた走査電子顕微
鏡の要部を示す図である。
【図4】ブランキング用パルス電源のノイズを示す図で
ある。
【図5】プローブ位置変動量Δを求めるための光学図で
ある。
【図6】本発明に基づくブランキング装置を備えた走査
電子顕微鏡の一実施例を示す図である。
【図7】偏向コイルに供給される走査信号とブランキン
グ信号を示す図である。
【図8】試料の走査領域におけるビームのドーズ量を示
す図である。
【図9】試料の走査領域におけるビームのドーズ量を示
す図である。
【図10】本発明に用いられる静電型のブランキング偏
向電極の構造を示す図である。
【図11】図10の周辺構成と操作回路を含めた図であ
る。
【図12】図10の側面図である。
【図13】電極間隔に対する偏向感度値の関係を示す図
である。
【図14】本発明に用いられる静電型のブランキング偏
向電極の構造を示す図である。
【図15】プローブ位置変動量Δの加速電圧に対する変
化を示す図である。
【図16】本発明に用いられる多段式静電偏向器を示す
図である。
【図17】加速電圧に応じた複数の偏向電極の組み合わ
せを示す表である。
【図18】多段式偏向器の電極の選択回路を示す図であ
る。
【図19】リレー選択回路を示す図である。
【図20】真理値表を示す図である。
【符号の説明】
21 電子銃エミッタ 22 第1コンデンサレンズ 23 第2コンデンサレンズ 24 開き角制御レンズ 25 対物レンズ 26 試料 27,28 偏向コイル 29 散乱防止絞り 30 ブランキング用偏向器 31 対物レンズ絞り 32 ブランキング絞り
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01L 21/027 H01L 21/30 541B

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 荷電粒子線源からの荷電粒子線を集束レ
    ンズで集束して試料に照射すると共に、偏向手段によっ
    て荷電粒子線の走査を行うようにした荷電粒子線装置に
    おいて、集束レンズ絞りとその上方に形成された荷電粒
    子線のクロスオーバー点との間にブランキング偏向器を
    配置し、集束レンズ絞りと偏向手段との間にブランキン
    グ絞りを設けるように構成した荷電粒子線装置における
    ブランキング装置。
  2. 【請求項2】 前記ブランキング偏向器は、静電型の偏
    向器であり、偏向器を構成する一対の偏向電極の間の距
    離は荷電粒子線の加速電圧とプローブ電流に応じて変化
    させられる請求項1記載の荷電粒子線装置におけるブラ
    ンキング装置。
  3. 【請求項3】 前記ブランキング偏向器は、磁界型の偏
    向器であり、偏向器を構成する一対の偏向コイルの間の
    距離は荷電粒子線の加速電圧とプローブ電流に応じて変
    化させられる請求項1記載の荷電粒子線装置におけるブ
    ランキング装置。
  4. 【請求項4】 前記ブランキング偏向器は、静電型の偏
    向器であり、この偏向器は偏向感度の異なる複数の偏向
    電極から成り、複数の偏向電極は加速電圧に応じて使用
    される組み合わせが切り換えられる請求項1記載の荷電
    粒子線装置におけるブランキング装置。
  5. 【請求項5】 前記ブランキング偏向器は、静電型の偏
    向器であり、偏向器は平行平板対向偏向電極と、その偏
    向電極の上下に同じ対向距離を有する平行平板型シール
    ド電極とより構成され、偏向電極とシールド電極を微小
    ギャップを介して一体化した請求項1記載の荷電粒子線
    装置におけるブランキング装置。
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