JPH08241663A - 熱電子放出陰極およびその製造方法 - Google Patents

熱電子放出陰極およびその製造方法

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JPH08241663A
JPH08241663A JP4431695A JP4431695A JPH08241663A JP H08241663 A JPH08241663 A JP H08241663A JP 4431695 A JP4431695 A JP 4431695A JP 4431695 A JP4431695 A JP 4431695A JP H08241663 A JPH08241663 A JP H08241663A
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JP
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tungsten
porous body
sheet
compound
cathode
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JP4431695A
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English (en)
Inventor
Yoji Fujita
洋司 藤田
Atsushi Arakane
淳 荒金
Masayasu Koitabashi
正康 小板橋
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Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 熱電子放出特性の優れた熱電子放出陰極、お
よびその簡単で効率的な製造方法をを提供することを目
的とする。 【構成】 金属バリウムまたはバリウムの化合物を含む
熱電子放出性化合物とタングステンとを含有する多孔質
体2の陽極側2a表面にタングステンの多孔質体1の層
を設けることにより、陽極側表面に過剰な複合酸化物が
存在して熱電子を発生する表面積が小さくなるのを防止
し、熱電子放出性能を向上させる。また、タングステン
粉末と有機バインダーと溶媒よりなるスラリーからシー
トを形成する工程、上記シートを加圧圧縮する工程、上
記シートを加熱して上記有機バインダーを除去する工
程、および熱電子放出性化合物を含浸する工程を順に施
すことにより、容易な製造方法で、より均一な気孔構造
を得ることができ、従来よりも優れた熱電子放出特性、
および長寿命を実現できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、熱電子放出陰極とそ
の製造方法に関し、特に熱電子放出特性の向上した熱電
子放出陰極、およびその簡単で効率的な製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】図6は従来の熱電子放出陰極の構成を示
す構成図、図7は従来の含浸法による製造方法の一例を
説明する説明図である。なお、この製造方法は例えば刊
行物(中西寿夫;応用物理56(1987)1423)
に記載されている。図6において、2は金属バリウムま
たはバリウムの化合物を含む熱電子放出性化合物とタン
グステンとを含有する多孔質体、3はカップ、4はスリ
ーブ、5は加熱用ヒータである。
【0003】次に図7を用いて製造方法について説明す
る。まず、乾式プレスによりタングステンの多孔質体を
形成する。成形体一個分のタングステン粉末の重量を秤
量し(ST11)、プレスにて圧粉成形した(ST1
2)後、2000℃近辺の温度で水素中で焼成し(ST
13)タングステンの多孔質体を得る。さらに銅を溶融
含浸させて(ST14)強度をもたせ、陰極基体として
所定の形状に機械加工する(ST15)。成形後、真空
中でこの基体を1500℃近辺の温度に加熱し、含浸さ
せたCuを蒸発させ除去する(ST16)。一方、所定
量の炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、炭酸バリウム
を出発原料とし(ST21)、空気中において1000
℃付近で保持し(ST22)、熱電子放出性化合物とな
る複合酸化物を作成する。ついで複合酸化物をタングス
テンの多孔質体上にのせ真空中で1500℃近辺で溶解
含浸処理をおこなう(ST100)。これをカップ3に
挿入し、スリーブ4に固定し、ヒーター5を挿入して陰
極を組み立てる。以上のように組み立てた陰極は、真空
装置内に設置して排気活性化を行う。即ち、真空に排気
しながら約300℃で約1時間ベーキングした後、陰極
ヒータ5に通電して陰極温度を約1000℃まで徐々に
上げ、陰極のガス出しを行う。放出ガスが減少し、真空
度が良くなった後、陰極を1200℃で約30分間加熱
して活性化を行う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の熱電子放出陰極
およびその製造方法は以上のようであるので、以下に述
べるような問題点があった。まず、陽極側に対面する側
に過剰な熱電子放出性化合物となる複合酸化物が残留す
ることによって熱電子を発生する表面積が小さくなり、
熱電子放出特性が大幅に悪化するという欠点があった。
これを解決するために上記従来例で示したような含浸型
の陰極では、陽極側の面を削ったり、水洗したりして過
剰な複合酸化物を除去することもあったが、これにも限
度があり、また工程が複雑になるなどの問題点があっ
た。特に、製造工程を大幅に簡略化できるので、所定量
の原料粉体を強制粉体混合法によりサブミクロンレベル
まで粉砕した粒子を圧縮成形して熱電子放出陰極を製造
することが本発明と同一出願人による先行発明である特
願平5−94348号明細書に記載されているが、この
場合には、上記酸化バリウム以外の酸化物の残留による
悪影響が大きかった。また、上記従来例で示したように
含浸型の陰極に用いられているタングステンの多孔質体
の成形には、一般に乾式プレスが用いられており、通常
のCRT等に用いられる熱電子放出陰極の直径は1〜2
mmと小さく、原材料の秤量(ST11)から粉体のプ
レス金型への注入を行い、さらにプレスする(ST1
2)までの工程は離型が困難である等のために完全に自
動化することが困難であった。さらに、プレス作業を陰
極一個作成する度ごとに一度、および1000℃以上の
高温の処理を4度行わなければならず歩留りが低く、コ
スト低減が困難であるという問題があった。
【0005】この発明は上記のような問題点を解消する
ためになされたもので、熱電子放出特性の優れた熱電子
放出陰極、およびその簡単で効率的な製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明に係
わる熱電子放出陰極は、金属バリウムまたはバリウムの
化合物を含む熱電子放出性化合物とタングステンとを含
有する多孔質体の陽極側表面にタングステンの多孔質体
の層を設けたものである。
【0007】請求項2記載の発明に係わる熱電子放出陰
極の製造方法は、タングステン粉末と有機バインダーと
溶媒よりなるスラリーからタングステンシートを形成す
る工程、金属バリウムまたはバリウムの化合物を含む熱
電子放出性化合物とタングステンとを含有する多孔質体
の表面に上記タングステンシートを配置し、押圧して上
記熱電子放出性化合物とタングステンとを含有する多孔
質体と上記タングステンシートとを圧接する工程、およ
び減圧しながら加熱して上記有機バインダーを除去する
と共に活性化する工程を施すものである。
【0008】請求項3記載のの発明に係わる熱電子放出
陰極の製造方法は、上記請求項1記載の熱電子放出性化
合物とタングステンとを含有する多孔質体は、金属バリ
ウムまたはバリウムの化合物を含む熱電子放出性化合物
とタングステンとを強制粉体混合法によりサブミクロン
レベルまで粉砕した粒子を圧縮成形して製造されるもの
である。
【0009】請求項4の発明に係わる熱電子放出陰極の
製造方法は、上記請求項1記載の熱電子放出性化合物と
タングステンとを含有する多孔質体は、タングステン粉
末と有機バインダーと溶媒よりなるスラリーからシート
を形成する工程、上記シートを加圧圧縮する工程、上記
シートを加熱して上記有機バインダーを除去すると共に
上記タングステン粉末を焼結する工程、および熱電子放
出性化合物を含浸する工程を順に施して製造されるもの
である。
【0010】
【作用】この発明による熱電子放出陰極では、金属バリ
ウムまたはバリウムの化合物を含む熱電子放出性化合物
とタングステンとを含有する多孔質体の陽極側表面にタ
ングステンの多孔質体の層を設けたので、陽極側の表面
に熱電子放出性化合物となる複合酸化物が残留すること
により熱電子を発生する表面積が小さくなるのを防止で
き、熱電子放出特性を向上させることができる。
【0011】また、タングステン粉末と有機バインダー
と溶媒よりなるスラリーからタングステンシートを形成
する工程、金属バリウムまたはバリウムの化合物を含む
熱電子放出性化合物とタングステンとを含有する多孔質
体の表面に上記タングステンシート配置し、押圧して上
記熱電子放出性化合物とタングステンとを含有する多孔
質体と上記タングステンシートとを圧接する工程、およ
び減圧しながら加熱して上記有機バインダーを除去する
と共に活性化する工程を施して熱電子放出陰極を製造す
れば、上記効果に加えて、排気活性化中に有機バインダ
ーを除去するので多孔質体内で生成したバリウムがタン
グステン多孔質体の表面に容易に拡散すると共にタング
ステン多孔質体と熱電子放出性化合物を含有する多孔質
体の接触抵抗を低減でき、熱電子放出特性をより向上さ
せることができる。また、熱処理を簡略にすることがで
きる。
【0012】さらに、熱電子放出性化合物とタングステ
ンとを含有する多孔質体を、金属バリウムまたはバリウ
ムの化合物を含む熱電子放出性化合物とタングステンと
を強制粉体混合法によりサブミクロンレベルまで粉砕し
た粒子を圧縮成形して製造すれば、製造工程を大幅に簡
略化でき、しかも熱電子放出特性の優れた熱電子放出陰
極が得られる。
【0013】また、熱電子放出性化合物とタングステン
とを含有する多孔質体を、タングステン粉末と有機バイ
ンダーと溶媒よりなるスラリーからシートを形成する工
程、上記シートを加圧圧縮する工程、上記シートを加熱
して上記有機バインダーを除去すると共に上記タングス
テン粉末を焼結する工程、および熱電子放出性化合物を
含浸する工程を順に施して製造すれば、従来の乾式によ
る製造方法に比べてより均一な気孔構造を得ることがで
きるために、従来よりも優れた熱電子放出特性、および
長寿命を実現できる。また、粉末の秤量作業を数万個の
単位で行うことができたり、乾式のように高温処理を何
度も行わなくてもよい等、製造が容易になる。
【0014】
【実施例】
実施例1.以下、実施例1を図1について説明する。図
1は本発明の実施例1による熱電子放出陰極の構成を示
す断面図である。図において、1は熱電子放出性化合物
を含まないタングステン多孔質体(以下タングステン多
孔質体と略記する)であり、2は金属バリウムまたはバ
リウムの化合物とタングステンとを含む熱電子放出性化
合物を含有する多孔質体(以下単に熱電子放出性化合物
を含有する多孔質体と略記する)である。
【0015】次に製造方法について説明する。熱電子放
出性化合物を含有する多孔質体2は従来例に示される含
浸型の熱電子放出陰極と同様な方法で製造されたもので
ある。タングステン多孔質体1はタングステン粉末を円
筒状の圧粉型で5トン/cm2の圧力にて圧粉後、純水
素中で20分間2000℃において焼結を行って製造し
たものである。熱電子放出性化合物を含有する多孔質体
2をカップ3に挿入し、さらに熱電子放出性化合物を含
有する多孔質体2の陽極に対面する側2aにタングステ
ン多孔質体1を挿入した後、スリーブ4にレーザー溶接
により固定し、ヒーター5を挿入して陰極を組み立て2
極管陰極とした。1000℃にて得られた2極管陰極の
電圧、電流特性を測定した。この陰極を用いると電流値
は従来の含浸型の陰極の8A/cm2よりも5%多く取
ることができた。これは陽極側2aすなわち電子放出面
の表面に過剰な複合酸化物が存在して熱電子を発生する
表面積が小さくなることがないためであると考えられ
る。
【0016】なお、タングステン多孔質体1の厚さは、
20μm〜200μmの範囲にあるのが適切である。す
なわち、20μm未満の厚さの層を製造するのは非常に
難しく、200μmを越えるとバリウムの化合物のタン
グステン層への拡散が遅くなり熱電子放出特性が劣化す
るおそれがある。
【0017】なお、熱電子放出性化合物を含まないタン
グステンの多孔質体1にオスミウム、ルテニウム、イリ
ジウム等の金属をコーティングすれば表面における双極
子モーメントを増大させることができ、放出電流をさら
に大きくすることができる。
【0018】実施例2.以下、実施例2について図2を
用いて説明する。図2は本発明の実施例2による熱電子
放出陰極の製造方法を説明する説明図である。得られた
陰極は図1に示したものと同様の構成である。図2にお
いて、まず、タングステン多孔質体は、平均粒径2〜1
5μmのタングステン粉を40体積%と、アクリル系の
有機バインダーを6体積%と、エチルアルコール80体
積%およびイソブチルアルコール20体積%の混合有機
溶媒をスラリーの54体積%、それぞれ秤量し(ST
1)、万能攪拌機を用いて混合してスラリーを製造し
(ST2)、このスラリーをドクターブレード法にてシ
ート成形して(ST3)グリーンシートが得られる。得
られたシートの厚みは50μm以下が電子放出にかかわ
るバリウムの蒸気の移動にとって好ましく、特に25〜
40μm以下が望ましい。またグリーンシート内に残存
するバインダーの量は圧接作業が可能な限り熱電子放出
の観点からは少ないことが望ましく、グリーンシートの
3体積%以上20体積%以下であることが必要である。
得られたグリーンシートの有機バインダーを蒸発または
分解させることにより除去した場合のポロシティは約4
0%である。このシートを所定形状に打ち抜き成形し、
これと図7にST1〜16、ST21、22およびST
100で示した従来の含浸型の熱電子放出陰極と同様な
方法で製造された熱電子放出性化合物を含有する多孔質
体とを100℃にて1トン/cm2の圧力で圧接する
(ST200)。この圧接処理によって、タングステン
の有機バインダーを蒸発または分解させることにより除
去したとすればその場合のポロシティは15〜20%と
なった。圧接処理することによって熱電子放出性化合物
を含有する多孔質体とタングステン多孔質体グリーンシ
ートを密着させることができる。
【0019】この圧接体を陽極側にタングステン多孔質
体が来るように図1のカップ3に挿入し、スリーブ4に
固定し、ヒーター5を挿入して陰極を組み立てた。以上
のように組み立てた陰極は、さらに2極管に組み立て、
真空装置内に設置して排気活性化を行った。即ち、真空
に排気しながら約300℃で約1時間ベーキングした
後、陰極ヒータ5に通電して陰極温度を約1000℃ま
で徐々に上げ、陰極のガス出しを行った。放出ガスが減
少し、真空度が良くなった後、陰極を1200℃で約3
0分間加熱して活性化を行った。排気工程中に陰極の有
機バインダーは真空下で高温度に加熱されるので、蒸発
や低分子量のガスに分解され除去される。
【0020】1000℃にて得られた2極管用陰極の電
圧、電流特性を測定した。従来の含浸型の陰極の8A/
cm2よりも10%大きな電流値が得られた。これは実
施例1の場合よりも大きい。これは陽極側すなわち電子
放出面の表面に過剰な複合酸化物が存在して熱電子を発
生する表面積が小さくなることがないという実施例1の
場合の効果に加えて、さらにタングステン多孔質体1と
熱電子放出性化合物を含有する多孔質体2の間の接触が
改善されることによってより優れた熱電子放出特性が得
られたものと考えられる。また、タングステン多孔質体
1を図7のST11〜16で示した従来の乾式方で製造
するのに比べて工程が簡略化できる。
【0021】なお、タングステン多孔質体1の原料とし
てオスミウム、ルテニウム、イリジウム等の金属をタン
グステンにコーティングした粉末を用いても熱電子放出
による電流を大きくすることができる効果がある。
【0022】実施例3.以下、実施例3について図3を
用いて説明する。図3は本発明の実施例3に係わる熱電
子放出陰極の製造方法の要部を説明する説明図である。
得られた陰極は図1に示したものと同様の構成である。
タングステン多孔質体1は、所定量のタングステン粉末
を円筒状の圧粉型で5トン/cm2の圧力にて圧粉後、
純水素中で20分、2000℃において焼結を行って製
造したものである。
【0023】図3を用いて、タングステン粉末と金属バ
リウムまたはバリウムの化合物を含む熱電子放出性化合
物を混合ミルを用いて強制混合させ、サブミクロンレベ
ルまで微細に粉砕された粉末の圧縮成形体の製造法につ
いて述べる。平均粒径2〜15μmのタングステン粉末
を97重量%、金属バリウムを2.9%、金属アルミニ
ウムを0.1重量%、CaO粉末を0.3重量%の比率
で、全体で33gとなるようにアルゴン雰囲気中で秤量
し(ST11、21)、直径15mmのタングステンカ
ーバイド製のボール7個(重量133g)およびアルゴ
ンと共に、容量が45ccであるタングステンカーバイ
ド製ボールミル容器に封入した。遊星形ボールミルの回
転数をボールミルのうける最大加速度が20Gとなるよ
うに調整した後20時間混合・粉砕をおこなった。この
工程によりタングステンに電子放射物質例えばバリウ
ム、カルシウム、アルミニウムの単体、酸化物、炭酸塩
が均一に分散し、サブミクロンレベル(すなわち直径1
μm〜nmレベル)の微細な混合状態、あるいはタング
ステンにバリウム(電子放射物質)が入り込んだような
疑似合金の状態の粉体が得られる。次に、ボールミル容
器より粉体を取り出し、直径1.4mmのプレス型に8
〜10mgの粉体を秤量後注入し、6トン/cm2の圧
力にて圧粉成形をおこない(ST500)、円盤状の成
形体を得た。得られた熱電子放出性化合物を含有する多
孔質体の成形体と上述のタングステン多孔質体1とを例
えば室温で2〜5トン/cm2の加圧により圧接した。
【0024】この圧接体を陽極側にタングステン多孔質
体が来るように図1のカップ3に挿入し、スリーブ4に
固定し、ヒーター5を挿入して2極管陰極を組み立て
た。なお、比較のために、タングステン多孔質体が無い
場合についても2極管陰極を組み立てた。得られた陰極
の熱電子放出特性を測定した。活性化処理、熱電子測定
条件は次のようなものである。 ・活性化処理条件 (1)サンプルがない場合の最高到達真空度:10-11tor
r (2)排気速度:500l/s (3)真空チャンバー体積:30l (4)温度:1050℃br (5)時間:1時間 ・飽和電流密度測定条件 (1)アノードとカソード間の距離:1mm (2)パルス幅:10μs (3)パルスデューティー比:0.1% (4)温度:950℃br
【0025】このような条件で測定した飽和電流密度
は、強制粉体混合法で得られたものでタングステン多孔
質体が無い場合が4〜5A/cm2であるのに対して、
タングステン多孔質体を圧接したこの実施例による場合
が8〜10A/cm2と大幅に向上し、タングステン多
孔質体を備えたことによる効果が特に大きいことが分か
った。このように、陽極側の面を削ったり水洗したりす
ることもなく、しかも強制粉体混合法を用いて製造方法
が大幅に簡略化されているにもかかわらず従来の含浸型
陰極のものと遜色のないものが得られた。
【0026】なお、熱電子放出性化合物原料の好ましい
組成範囲としては、例えば図4に斜線で示す範囲が挙げ
られる。これは本発明と同一出願人による先行発明であ
る特願平5−94348号明細書にも述べられている。
【0027】なお、上記実施例ではタングステンと熱電
子放出性化合物との混合粉体を圧粉成形してからタング
ステン多孔質体1と圧接したが、プレス型内で、上記混
合粉体の圧粉成形と、タングステン多孔質体1との圧接
とを同時に行ってもよく、より確実な圧接が可能とな
る。さらに、カップ3への挿入及び圧接も同時に行うと
より密着性が改善されると共に製造工程も簡略化でき
る。
【0028】実施例4.上記実施例3の金属バリウムま
たはバリウムの化合物を含む熱電子放出性化合物とタン
グステン粉末とに対して0.5から5重量%の酸化スカ
ンジウムを添加してもよく、その製造方法を主に相違点
について説明する。平均粒径2〜15μmのタングステ
ン粉末を96.9重量%、金属バリウムを2.9%、金
属アルミニウムを0.1重量%、CaO粉末を0.3
%、酸化スカンジウム粉末を0.1重量%(熱電子放出
性化合物中では約3重量%)の比率で、全体で33gと
なるようにアルゴン雰囲気中で秤量し、直径15mmの
タングステンカーバイド製のボール7個(重量133
g)およびアルゴンと共に、容量が45ccであるタン
グステンカーバイド製ボールミル容器に封入した。遊星
形ボールミルの回転数をボールミルのうける最大加速度
が20Gとなるように調整した後20時間粉砕をおこな
った。ボールミル容器より粉体をとりだし直径1.4m
mのプレス型に8〜10mgの粉体を秤量後注入し、6
トン/cm2の圧力にて圧粉成形をおこない、円盤状の
成形体を得た。
【0029】得られた成形体の圧接、活性化処理等の陰
極の組立は上記実施例3と同様である。上記実施例3と
同様の測定条件でこの陰極の飽和電流密度を測定したと
ころ、製造方法が大幅に簡略化されているにもかかわら
ず従来の含浸型陰極の8A/cm2よりも20%程度、
熱電子放出特性が優れていることがわかった。
【0030】なお、熱電子放出性化合物中における酸化
スカンジウムの濃度が0.1重量%以下では従来例と差
が見られず、また濃度が10重量%を越えるとタングス
テンの表面を酸化物が覆うようになるとともに電気抵抗
が上昇し、飽和電流密度はかえって低くなった。また、
この実施例ではスカンジウムの添加に酸化スカンジウム
を用いたが金属、水酸化物、炭酸塩等、陰極の排気活性
化中に酸化物に変化するような形態で熱電子放出性物質
に添加しても上記実施例と同様の効果を奏する。
【0031】実施例5.実施例5について図5を用いて
説明する。従来技術の所で述べたように、含浸型の熱電
子放出陰極に用いられているタングステン多孔質体は一
般に乾式プレスで形成されることが多く、通常のCRT
等に用いられる熱電子放出陰極の直径は1〜2mmと小
さく、原材料の秤量から粉体のプレス金型への注入を行
い、さらにプレスするまでの工程は完全に自動化するこ
とが困難であったり、プレス作業を陰極一個作成する度
ごとに一度、および1000℃以上の高温の処理を4度
行わなければならず歩留りが低く、コスト低減が困難で
ある等の問題があった。そこでこの実施例5ではタング
ステン粉末と有機バインダーと溶媒よりなるスラリーか
らシートを成形し、そのグリーンシートをロールプレス
した後、焼成を行い、薄膜状の多孔質タングステンシー
トを製造した。
【0032】以下このタングステン多孔質体の製造方法
について図5をもとに具体的に説明する。平均粒径2〜
5μmのタングステン粉末を40体積%と、アクリル系
の有機バインダーを6体積%と、エチルアルコール80
体積%およびイソブチルアルコール20体積%の混合有
機溶媒をスラリーの54体積%とをそれぞれ秤量し(S
T1)、万能攪拌機を用いて混合してスラリーを製造し
(ST2)、このスラリーをドクターブレード法にてシ
ート成形した(ST3)。この段階では有機バインダー
を蒸発または分解させることにより除去した時のタング
ステン多孔質体のポロシティは約40%、厚みは1mm
である。さらにロールプレス(ST4)により厚みを半
減させ、有機バインダーを蒸発または分解させることに
より除去したとすればその後のポロシティが約20%で
あるタングステンのグリーンシートを得た。このグリー
ンシートを水素中で2000℃において20分間焼成し
て(ST5)、タングステンの焼結体のシートを得るこ
とができた。この段階で、打ち抜き(ST6)によって
タングステンの円筒状の多孔質体を得た。この多孔質体
に、図7の従来例で示したのと同様に、熱電子放出性化
合物を含浸処理(ST100)し、陰極を組み立て、真
空装置内で排気活性化処理を行った。
【0033】この熱電子放出陰極の飽和電流密度は従来
の含浸型陰極の8A/cm2に比べて5〜10%増加し
た優れたものであった。これは従来の乾式成形の場合に
粉体の緻密化が遍在することに比較して、この実施例に
よる多孔質体は空孔が均一に分布するために熱電子の放
出能力のばらつきが小さくなったためであると考えられ
る。なお、上記実施例5ではタングステン焼成後のシー
トの切断を打ち抜きによって行ったが、レーザー切断法
によっても効率よく切断することができることはいうま
でもない。
【0034】なお、上記実施例5でスラリーからシート
を経て得られたタングステン多孔質体に熱電子放出性化
合物を含浸処理した熱電子放出陰極は、上述のように単
独で用いても飽和電流密度の向上した優れたものである
が、さらに、図1にその構成を示したように、陽極側に
熱電子放出性化合物を含まないタングステン多孔質体を
設けてもよく、より特性が向上する。この場合、熱電子
放出性化合物を含まないタングステン多孔質体は上記実
施例5で得られたものや、従来の乾式法によって得られ
たもの等が用いられる。さらに、実施例1や4の乾式に
よって製造されたタングステン多孔質体1の代わりに上
記実施例5でスラリーからシートを経て得られたタング
ステン多孔質体用いてもよい。
【0035】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、金属バ
リウムまたはバリウムの化合物を含む熱電子放出性化合
物とタングステンとを含有する多孔質体の陽極側表面に
タングステンの多孔質体の層を設けたので、陽極側に過
剰な複合酸化物が存在して熱電子を発生する表面積が小
さくなるのを防止でき、熱電子放出特性を向上させるこ
とができる。
【0036】また、タングステン粉末と有機バインダー
と溶媒よりなるスラリーからタングステンシートを形成
する工程、金属バリウムまたはバリウムの化合物を含む
熱電子放出性化合物とタングステンとを含有する多孔質
体の表面に上記タングステンシート配置し、押圧して上
記熱電子放出性化合物とタングステンとを含有する多孔
質体と上記タングステンシートとを圧接する工程、およ
び減圧しながら加熱して上記有機バインダーを除去する
と共に活性化する工程を施して熱電子放出陰極を製造す
れば、上記効果に加えて、排気活性化中に有機バインダ
ーを除去するので多孔質体内で生成したバリウムがタン
グステン多孔質体の表面に容易に拡散すると共にタング
ステン多孔質体と熱電子放出性化合物を含有する多孔質
体の接触抵抗を低減でき、熱電子放出特性をより向上さ
せることができる。また、熱処理を簡略にすることがで
きる。
【0037】また、熱電子放出性化合物とタングステン
とを含有する多孔質体を、金属バリウムまたはバリウム
の化合物を含む熱電子放出性化合物とタングステンとを
強制粉体混合法によりサブミクロンレベルまで粉砕した
粒子を圧縮成形して製造すれば、上記効果が特に大き
く、製造工程を大幅に簡略化できしかも熱電子放出特性
の優れた熱電子放出陰極が得られる。
【0038】また、熱電子放出性化合物とタングステン
とを含有する多孔質体を、タングステン粉末と有機バイ
ンダーと溶媒よりなるスラリーからシートを形成する工
程、上記シートを加圧圧縮する工程、上記シートを加熱
して上記有機バインダーを除去すると共に上記タングス
テン粉末を焼結する工程、および熱電子放出性化合物を
含浸する工程を順に施して製造すれば、従来の乾式によ
る製造方法に比べてより均一な気孔構造を得ることがで
きるために、従来よりも優れた熱電子放出特性、および
長寿命を実現できる。また、粉末の秤量作業を数万個の
単位で行うことができたり、乾式のように高温処理を何
度も行わなくてもよい等、製造が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1による熱電子放出陰極の構
成を示す断面図である。
【図2】 本発明の実施例2による熱電子放出陰極の製
造方法を説明する説明図である。
【図3】 本発明の実施例3に係わる熱電子放出陰極の
製造方法の要部を説明する説明図である。
【図4】 本発明の実施例3に係わる熱電子放出性物質
の組成範囲を示す説明図である。
【図5】 本発明の実施例5によるタングステン多孔質
体および熱電子放出陰極の製造方法を説明する説明図で
ある。
【図6】 従来の熱電子放出陰極の構成を示す断面図で
ある。
【図7】 従来の含浸法による熱電子放出陰極の製造方
法を説明する説明図である。
【符号の説明】
1 タングステン多孔質体、 2 熱電子放出性化合物
を含有する多孔質体、3 カップ、 4 スリーブ、
5 ヒーター。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属バリウムまたはバリウムの化合物を
    含む熱電子放出性化合物とタングステンとを含有する多
    孔質体の陽極側表面にタングステンの多孔質体の層を設
    けた熱電子放出陰極。
  2. 【請求項2】 タングステン粉末と有機バインダーと溶
    媒よりなるスラリーからタングステンシートを形成する
    工程、金属バリウムまたはバリウムの化合物を含む熱電
    子放出性化合物とタングステンとを含有する多孔質体の
    表面に上記タングステンシート配置し、押圧して上記熱
    電子放出性化合物とタングステンとを含有する多孔質体
    と上記タングステンシートとを圧接する工程、および減
    圧しながら加熱して上記有機バインダーを除去すると共
    に活性化する工程を施す熱電子放出陰極の製造方法。
  3. 【請求項3】 上記請求項1記載の熱電子放出性化合物
    とタングステンとを含有する多孔質体は、金属バリウム
    またはバリウムの化合物を含む熱電子放出性化合物とタ
    ングステンとを強制粉体混合法によりサブミクロンレベ
    ルまで粉砕した粒子を圧縮成形して製造されることを特
    徴とする熱電子放出陰極の製造方法。
  4. 【請求項4】 上記請求項1記載の熱電子放出性化合物
    とタングステンとを含有する多孔質体は、タングステン
    粉末と有機バインダーと溶媒よりなるスラリーからシー
    トを形成する工程、上記シートを加圧圧縮する工程、上
    記シートを加熱して上記有機バインダーを除去すると共
    に上記タングステン粉末を焼結する工程、および熱電子
    放出性化合物を含浸する工程を順に施して製造されるこ
    とを特徴とする熱電子放出陰極の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012178329A (ja) * 2011-02-03 2012-09-13 Ushio Inc 放電ランプ用陰極

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012178329A (ja) * 2011-02-03 2012-09-13 Ushio Inc 放電ランプ用陰極

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