JPH08234026A - 中空導波路及びその製造方法並びにレーザ伝送装置 - Google Patents

中空導波路及びその製造方法並びにレーザ伝送装置

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JPH08234026A
JPH08234026A JP7038129A JP3812995A JPH08234026A JP H08234026 A JPH08234026 A JP H08234026A JP 7038129 A JP7038129 A JP 7038129A JP 3812995 A JP3812995 A JP 3812995A JP H08234026 A JPH08234026 A JP H08234026A
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polyimide resin
resin layer
laser
waveguide
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JP7038129A
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Mitsunobu Miyagi
光信 宮城
Yuji Kato
祐次 加藤
Akishi Hongo
晃史 本郷
Yoshihide Okanoe
吉秀 岡上
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Hitachi Cable Ltd
Miyagi Mitsunobu
J Morita Manufaturing Corp
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Hitachi Cable Ltd
Miyagi Mitsunobu
J Morita Manufaturing Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 広範囲の波長帯におけるレーザ光を低損失に
伝送でき、かつ量産性及び信頼性に優れた中空導波路、
その製造方法及び前記中空導波路を用いたレーザ伝送装
置を提供する。 【構成】 金属パイプ1の内面に対し、中空領域3が形
成されるようにして、伝送する光の波長帯に対して透明
であるポリイミド樹脂層2を設ける。これにより、赤外
波長帯の光伝送を行っても損失が少なく、かつ損傷が生
じ難い、高信頼の中空導波路を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、赤外波長領域、可視領
域及び紫外波長領域の広範囲に及ぶ波長帯の光を伝送す
るために好適な可撓性を有する中空導波路及びその製造
方法並びにその中空導波路を用いたレーザ伝送装置に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】波長2μm以上の赤外光は、医療、工業
加工、計測、化学等の様々な分野で用いられている。特
に、波長2.9μm帯のEr−YAG(エルビウム−イ
ットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ、5μ
m帯のCO(一酸化炭素ガス)レーザ、10.6μm帯
のCO2 (炭酸ガス)レーザは発振効率が高いために高
出力が得られ、又、水に対して大きな吸収を持つため、
医療用の治療機器や工業加工用等の光源として極めて重
要である。
【0003】ところで、従来の通信用に使用されている
石英系の光ファイバは、波長2μm以上では分子振動に
よる赤外吸収が大きく極めて高損失になる。このため、
石英系の光ファイバは、上記のような赤外領域のレーザ
光を伝送する導波路として使用することができない。そ
こで、応用範囲の広い赤外波長帯で用いる新しいタイプ
の光導波路の開発が活発になっている。
【0004】現在、研究開発がなされている波長2μm
以上の赤外光用の導波路は、大別して2種類あり、充実
タイプのいわゆる赤外ファイバと、中空導波路とがあ
る。赤外ファイバの材料は、大別して3つあり、重金属
酸化物ガラス(GeO2 、GeO2 −Sb3 3 等)
と、カルコゲナイドガラス(As−S、As−Se
等)、ハロゲン化物とに分けられる。ハロゲン化物は、
更にハライドガラス(ZnCl2 、CdF3 −BaF2
−ZrF4 等)と、結晶性金属ハロゲン化物(KRS−
5(TlBrとTlIとの混晶)、AgCl、AgB
r、KCl等)とに分けられる。
【0005】一方、中空導波路は、構造、材料、形状等
の観点から種々の導波路が提案並びに試作されている。
その中で、特に金属パイプ内部に高反射コーティングを
施した誘電体内装金属中空導波路は、大電力のレーザ加
工に適用することを目的としたものであり、ゲルマニウ
ムや硫化亜鉛等の誘電体をニッケル等の金属パイプの内
面に設けて導波路を形成している。
【0006】この導波路の製造方法を説明すると、ま
ず、エッチングが可能なアルミニウム等の母材となるパ
イプの外周にゲルマニウムや硫化亜鉛等の赤外領域にお
いて透明な無機材料の薄膜をスパッタリング法で形成
し、更に、その外周に電気メッキ法を用いて厚肉のニッ
ケル層を形成し、最後に母材パイプを化学的にエッチン
グ除去する手順で実施される。なお、ゲルマニウム又は
硫化亜鉛薄膜と機械的強度を保つ厚肉のニッケル層との
間に銀薄膜を介在させると、更なる低損失の特性を備え
た導波路を得ることができる。
【0007】現在までに、伝送損失0.05dB/m、
伝送容量3kWを達成し、金属板の切断及び溶接に用い
るに十分なエネルギーを持つレーザ光を伝送できること
が確認されている。このような中空導波路は、充実タイ
プの赤外ファイバと比較して、入出力端での反射損失が
少なく、また冷却効率が高いので、特に、大電力伝送に
有利である。
【0008】一方、紫外波長帯においても、エキシマレ
ーザ等のレーザ化学分野で重要な光源が存在する。しか
し、充実タイプの光ファイバでは、レイリー散乱により
短波長ほど損失が急増し、伝送路として使用することが
本質的にできない。また、誘電体として、ゲルマニウム
や硫化亜鉛を内装した中空導波路は、ゲルマニウムや硫
化亜鉛が紫外光に対し不透明であるため、使用できな
い。CaF2 やフッ素樹脂等で紫外光に対して透明な誘
電体も幾つか提案されているが、紫外光伝送に要求され
る膜厚の精度、均一性、内壁面の表面粗さ(極めて小さ
くしなければならない)等を達成することが製造上極め
て困難であった。そのため、従来、このような紫外領域
における導波路の研究開発は、ほとんどなされていな
い。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、赤外波長帯
で用いる充実タイプの光ファイバは一般に屈折率が高い
材料により構成されており、光入出射端面での反射損失
が大きいために大電力伝送には不向きである。特に、上
記した従来のガラス質の赤外光ファイバは一般に融点や
軟化点が低いため、僅かな反射損失でも光ファイバ端面
に損傷が生じやすい。更に、殆どのガラス質の赤外光フ
ァイバの透過域は、波長6〜7μm以下であり、波長1
0.6μmのCO2 レーザ光を伝送することは困難であ
る。
【0010】又、結晶性の赤外ファイバは、透過域がC
2 レーザ光の波長帯10.6μmまで達するものがあ
るが、繰り返しの曲げによって塑性変形が生じたり、ま
た潮解性が大きい等、長期間の信頼性に問題がある。一
方、従来の製造方法による無機材料を内装した中空導波
路は、製作工程が複雑で量産化には限界があり、導波路
の細径化や長尺化が困難である。上記した誘電体内装金
属中空導波路では、内装する薄膜はスパッタリング法に
より形成されるので、その導波路の長さは製造装置に依
存し、実際に製作される導波路の長さはせいぜい数メー
トルである。
【0011】又、導波路の内径は、最終工程でエッチン
グされる母材パイプの外径になるが、母材パイプは完全
に除去されなければならず、そのために導波路の内径を
小さくすることができない。現状の導波路内径の最小は
0.8〜1mm程度である。導波路径が大きいほど機械
的に曲げ難くなり、又、曲げ損失が増大する。更に、多
くの高次モードのレーザ光が伝搬するので、集光特性が
劣化するという問題もある。
【0012】又、上記した様に紫外波長領域において
は、短波長ほどレイリー散乱による損失が増加し、通常
の光ファイバは極めて高損失になる。中空導波路では、
紫外光伝送に適用できる誘電体は存在しているものの、
製造上の多くの課題を克服することは困難である。この
ため、紫外光伝送導波路の開発は殆ど行われていないの
が現状である。しかし、レイリー散乱が無視しうる点を
考慮すれば、中空構造の導波路が有望と考えられる。
【0013】本発明は、上記従来技術の実情に鑑みてな
されたものであり、広範囲の波長帯におけるレーザ光を
低損失に伝送でき、かつ量産性及び信頼性に優れた中空
導波路及びその製造方法並びにレーザ伝送装置を提供す
ることを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、この発明は、中空基材の内面に、伝送する光の波
長帯に対して透明であるポリイミド樹脂層が形成された
構造にしている。又、上記の目的は、少なくとも内壁面
が金属である中空基材の内面に伝送する光の波長帯に対
して透明であるポリイミド樹脂層が形成される構造によ
っても達成される。
【0015】前記ポリイミド樹脂層には、20〜35w
t%のフッ素を含有させることが好ましい。前記ポリイ
ミド樹脂層は、単層のほか、このポリイミド樹脂層とは
別の屈折率を有する透明な誘電体層とを交互に設けた多
層構造にすることもできる。又、中空基材は、燐青銅又
はステンレスから成る金属材料を用いた構成にすること
ができる。
【0016】更に、前記金属製の中空基材は、その内面
に前記金属製の中空基材とは異なる金属材料による金属
薄膜を設けることができる。そして、前記中空基材は、
フッ素樹脂、シリコン樹脂、ガラスのいずれかから成る
非金属材料が用いられ、その内面に少なくとも1種類の
金属薄膜が形成された構成にすることができる。
【0017】又、前記中空基材にあっては、その前記金
属薄膜には、金、銀、銅、モリブデン、ニッケルのいず
れかを用いることができる。更に、上記の目的は、金属
製又は内面に少なくとも1種類の金属薄膜が形成された
非金属製の中空基材内にポリイミド前駆体溶液を加圧供
給し、ついで前記ポリイミド前駆体溶液を前記中空基材
内から排出した後、加熱乾燥し、前記基材の内壁にポリ
イミド樹脂層を形成する工程を繰り返し実施し、所定の
膜厚のポリイミド樹脂層を形成することによっても達成
される。
【0018】この製造方法におけるポリイミド前駆体溶
液は、ジメチルアセトアミド又はN−メチル−2−ピロ
リドンの溶媒により粘度が100cp以下に希釈され、
不揮発分である樹脂分含有量が3〜10wt%の溶液を
用いることが好ましい。又、上記製造方法にあっては、
前記加熱乾燥において乾燥ガスを前記ポリイミド前駆体
溶液を塗布した前記中空基材の中空部に供給することが
できる。
【0019】更に、上記の目的は、中空基材の内面に、
伝送する光の波長帯に対して透明であるポリイミド樹脂
層が形成されている中空導波路と、該中空導波路にレー
ザ光を入射するレーザ発振装置とを具えた構成によって
も達成される。このレーザ伝送装置にあっては、前記レ
ーザ発振装置は、夫々異なる波長帯のレーザ光と、発振
する複数のレーザ発振器と、該複数のレーザ発振器から
発振される複数のレーザ光を重畳もしくは切り替える手
段とを具えるようにすることができる。
【0020】又、このレーザ伝送装置においては、必要
に応じて前記中空導波路の中空部へアシストガスを流入
させるガス供給手段を設けることができる。
【0021】
【作用】上記した手段によれば、中空導波路内に入射さ
れた光の殆どが中空領域を伝搬し、中空導波路を構成す
る中空基材の内面に設けられたポリイミド樹脂層は、伝
達する赤外波長域から紫外波長域までの広範囲の波長の
光に対して透明性を示すと共に、誘電体内装中空導波路
における誘電体として理想的な屈折率を有し、このポリ
イミド樹脂層で吸収される光の量は極めて僅かであるた
め、低損失に光伝送を行うことができる。しかも、ポリ
イミド樹脂は高い耐熱性及び耐吸湿性を有しているた
め、大電力のレーザ光の伝達にも十分耐えることがで
き、信頼性に優れている。
【0022】そして、ポリイミド樹脂層に含有させたフ
ッ素は、過度に含有させると、ポリイミド樹脂層の耐熱
性の低下、線膨張係数の増大や付着力の低下を招くが、
フッ素の含有量が20〜35wt%の範囲では実用上支
障をきたすことはなく、ポリイミド樹脂中のCH基によ
る吸収損失を抑制することができると共に理想的な屈折
率となるようにポリイミド樹脂層の屈折率を制御するこ
とができる。
【0023】ポリイミド樹脂層を、ポリイミド樹脂層
と、これとは別の屈折率を有する透明な誘電体層とを交
互に設けて多層化した層構造にすることにより、屈折率
の異なる2種類の透明材料が交互に配設される結果、伝
送損失を更に低減させることができる。中空基材は、そ
の中空領域内でレーザ光を反射させながら伝搬するた
め、少なくともその内壁が金属であることが望ましく、
金属製の中空基材又は非金属性材料の内面に少なくとも
1種類の金属薄膜を形成したものが特に好ましい。
【0024】金属製の中空基材として燐青銅を用いた場
合、曲げによる塑性変形が生じ難いという特長を持ち、
又、中空基材にステンレスを用いた場合、化学的に安定
であるという特長を持ち、且つ内壁表面粗さの小さいも
のを安価に入手できるという利点ある。両金属共に金や
銀の中空基材に比較して安価でありながら、導波路の耐
久性を高めることができる。
【0025】金属製の中空基材にあって、その内面に前
記中空基材とは異なる金属材料による金属薄膜を設ける
ことにより、ポリイミド樹脂層の付着力を高めることが
できる。中空基材が非金属製の場合、この材料にフッ素
樹脂、シリコン樹脂等を用いると、これらは可撓性及び
耐薬品性に優れているため、使用用途が広くなる。又、
ガラスを用いた場合、表面粗さが極めて小さいことから
伝送損失を低減することができる。これらの非金属製の
中空基材の場合、その内面に金属薄膜を形成する必要が
ある。
【0026】上記した金属製或いは非金属製の中空基材
の内面に形成する金属薄膜として金、銀、銅等の貴金属
を用いた場合、その複素屈折率の絶対値が大きいため、
低損失の中空導波路を得ることができる。又、モリブデ
ンを用いた場合は、硬質で傷が付き難く、ニッケル層を
中空基材と貴金属層との間に介在させることにより、貴
金属層を直接中空基材に形成する場合よりも強い付着力
を実現することができる。
【0027】金属製又は、内面に金属薄膜が形成された
非金属製でパイプ状の中空基材に対し、その内部にポリ
イミド前駆体溶液を加圧供給し、ついでポリイミド前駆
体溶液を中空基材内から排出することにより、中空基材
の内面全域にポリイミド前駆体溶液の薄い層が形成され
る。この状態で乾燥を行えば、中空基材の内壁にポリイ
ミド樹脂層が形成される。この結果、簡単な方法によっ
てポリイミド樹脂層を均一に形成することができる。
【0028】更に、ポリイミド樹脂層の膜厚及びその均
一性は、ポリイミド前駆体溶液の粘度及び不揮発分であ
る樹脂分含有量によって大きく左右されるが、ジメチル
アセトアミド又はN−メチル−2−ピロリドンの溶媒に
より粘度が100cp以下になるように希釈し、又、不
揮発分である樹脂分含有量を3〜10wt%にしたポリ
イミド前駆体溶液は、希釈したことにより均一な膜厚を
得るように作用し、又、最適値に選定された樹脂分含有
量は膜厚制御を容易にするように作用する。
【0029】中空基材内に供給された乾燥ガスは、中空
基材内面のポリイミド前駆体溶液の薄い層を急速に乾燥
させ、乾燥時間を短縮するように機能する。又、上記し
たポリイミド樹脂内装中空導波路をレーザ伝送装置に装
着すれば、赤外波長領域から紫外波長領域までの広い範
囲で存在する種々のレーザ光を伝送することが可能であ
る。
【0030】更に、レーザ伝送装置に夫々異なる波長帯
のレーザ光を発振する複数のレーザ発振器と複数の波長
帯のレーザ光を重畳もしくは切り替ることにより、例え
ば、最初にHe−Neレーザ光等の可視光のみを照射し
て目標を定め、次いで赤外レーザ光等の目に見えないレ
ーザ光側に切り替え、或いは可視レーザ光と不可視レー
ザ光とを重畳すれば、不可視レーザ光を安全に目標に対
して照射することができる。
【0031】更に、ガス供給手段によって中空導波路内
部へ流入させたガスは、塵埃、水分等の侵入防止や中空
導波路自体の冷却に利用することができ、更に、医療用
等においては患部へ噴射するためのアシストガスとして
用いることができる。
【0032】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図1は本発明による中空導波路の一実施例を示す
断面図である。中空導波路は、図1に示すように、中空
基材としての金属パイプ1、この金属パイプ1の内面に
設けられたポリイミド樹脂層2、このポリイミド樹脂層
2の内面によって形成される中空領域3の各々から誘電
体内装金属中空導波路4が形成されている。
【0033】誘電体内装金属中空導波路4に入射される
光(レーザ光)は、中空領域3とポリイミド樹脂層2と
の境界及びポリイミド樹脂層2と金属パイプ1との境界
で反射を繰り返しながら伝搬する。一般に、導波路内を
伝搬するレーザ光に対して金属材料は光の吸収が大き
く、レーザエネルギーは金属層内に深く入り込まない。
したがって、光学的には、ポリイミド樹脂層2に接する
金属層の厚さは、スキンデプス以上あれば十分である。
【0034】金属パイプ1は光学的に伝送特性に関与す
るだけでなく、導波路4の機械的強度を保つ働きも担っ
ている。ポリイミド樹脂層2に接する金属は、例えば、
銀や金等のように複素屈折率の絶対値が大きいほど低損
失になる。なお、金属パイプ1に銀や金のパイプを用い
ることは、導波路の低損失化に有効であるが、経済性及
び機械的特性を考慮すると、実用的ではない。
【0035】金属パイプ1の他の例には、安価で機械的
特性に優れた厚肉の金属パイプ(例えば、曲げによる塑
性変形が生じ難い燐青銅パイプ、化学的に安定で内壁表
面粗さの小さいステンレスパイプ等)の内面に、別の金
属材料からなる金属薄膜(例えば、複素屈折率の絶対値
が特に大きい金、銀、銅、或いは無電解メッキによって
強い付着力を有するニッケル等)を形成した構成の金属
パイプがある。この場合のポリイミド樹脂層2に接する
金属薄膜層は、その膜厚がスキンデプス以上あれば十分
である。
【0036】ここで、ポリイミド樹脂層2は、低屈折率
で紫外領域から赤外領域までの広い波長領域で透明であ
る樹脂材を用いるが、この種のポリイミド樹脂は赤外波
長帯で有機物固有の複数の吸収ピークを有し、この吸収
ピークは波長に対して離散的に存在する。この吸収ピー
ク波長は、例えば、Er−YAGレーザ、COレーザ、
CO2 レーザ等の実用上重要なレーザの発振波長とは一
致していない。
【0037】赤外領域において、材料固有の吸収ピーク
を有する波長帯以外でもポリイミド樹脂の吸収係数は、
ゲルマニウムや硫化亜鉛等の無機物に比較すれば大き
い。しかし、充実タイプの光ファイバと異なり、中空導
波路は伝送されるレーザエネルギーの殆どが損失の無い
中空領域3に集中し、僅かなレーザエネルギーのみがポ
リイミド樹脂層2の内部を伝搬するので、伝送損失は極
めて小さくなる。
【0038】又、誘電体内装金属中空導波路では、内装
される誘電体薄膜の屈折率が21/2に近いほど、伝送損
失は小さくなることが知られている(例えば、「A.Hong
o, K.Morosawa, T.Shiota, Y.Matsuura, M.Miyagi, IEE
E J.Quantum Electron.,vol.26,1510,1990」に開示され
ている)。従来用いられていたゲルマニウムの屈折率は
4、硫化亜鉛が2.3であるのに対し、本発明で用いる
ポリイミド樹脂層2の屈折率は1.5〜1.6程度であ
り、より低損失の導波路を得ることができる。また、屈
折率が低いということは、内装する薄膜の膜厚許容範囲
が広くなることを意味し、製作上も有利である。このよ
うに、ポリイミド樹脂は、内装する誘電体としてほぼ理
想的な屈折率を有していることがわかる。
【0039】更に、ポリイミド樹脂を用いることの最大
の利点は、その耐熱性にある。上記のように、ポリイミ
ド樹脂層中を伝搬するレーザエネルギーは僅かである
が、吸収されたレーザエネルギーは全て熱に変換される
ので、特に、本発明のような高エネルギーを持つレーザ
光の伝送路において耐熱性は重要である。ポリイミド樹
脂以外の有機材料でも低屈折率で比較的吸収の小さい材
料は存在するが、熱変形や熱分解による損失の増加、有
害物質の発生等の懸念がある。これに対し、ポリイミド
樹脂は、320℃以上のガラス転移点と500℃以上の
熱分解温度を有しており、耐熱性に優れている。このこ
とから、本発明の目的とするレーザ光伝送には最適であ
る。
【0040】又、ポリイミド樹脂は、その一部をフッ素
に置換することにより、CH基による吸収損失を抑制す
ると共に、屈折率を低下させて理想的な値である21/2
に更に近づけることができる。更に、ポリイミド樹脂の
吸湿性を低減し、長期信頼性を向上させることができ
る。OH基による吸収が赤外領域に存在するので、ポリ
イミド樹脂の吸湿性は、特に、赤外光伝送において重要
である。但し、フッ素化の過剰は、耐熱性の低下、線膨
張係数の増大、及び付着力の低下を招くことになる。
【0041】そこで、本発明では20〜35wt%のフ
ッ素を含有しているポリイミド樹脂を推奨する。例え
ば、ポリイミド樹脂に35wt%のフッ素を含有させた
場合、中赤外領域における屈折率は約1.5となり、3
20℃のガラス転移点と500℃の熱分解温度を維持す
ることができる。又、フッ素を含有していないポリイミ
ド樹脂と比較して、吸湿性は約1/5以下、すなわち
0.2%以下に抑えることができる。
【0042】又、図1の中空導波路において、金属パイ
プ1の代わりに金属薄膜層を内装した非金属パイプを用
いることができる。この一例を示したのが図2である。
フッ素樹脂パイプやシリコン樹脂パイプ、或いはガラス
パイプ等を素材にした非金属パイプ5の内面の全域には
金属薄膜6が形成され、更に、この金属薄膜6の内面の
全域にはポリイミド樹脂層7が形成されている。
【0043】非金属パイプ5としては、フッ素樹脂パイ
プやシリコン樹脂パイプが可撓性及び耐薬品性に優れて
おり、ガラスパイプは内面の表面粗さが極めて小さいの
で、伝送損失低減に有効である。特に、石英ガラスパイ
プは、耐薬品性に優れているだけでなく、長尺化が容易
である。ガラスパイプの機械的強度は、パイプ表面に樹
脂を塗布することにより飛躍的に向上させることがで
き、小さな曲げ半径でも破断を生じることなく曲げるこ
とができる。
【0044】金属薄膜6は、複素屈折率の絶対値が特に
大きい金、銀、銅、或いは硬質で傷の付き難いモリブデ
ンが適している。光学的には、これらの金属膜を1層設
けるのみで十分であるが、金属膜の付着力を高めたい場
合には、非金属パイプと内装する金属薄膜との間に別の
金属膜、例えば、ニッケル層を介在させればよい。非金
属パイプ内に無電解のニッケルめっき液を流入して排出
することにより、付着力に優れたニッケル層を容易に形
成することができる。
【0045】なお、金属パイプ或いは非金属パイプの内
面に内装された金属膜の厚さは50μm以下にすること
が望ましく、それ以上では金属薄膜の内部応力及び線膨
張係数の違いにより付着力の低下を招く恐れがある。図
1及び図2の実施例においては、金属中空導波路の内面
に透明薄膜であるポリイミド層が1層のみ形成された導
波路になっている。このような内装導波路では、屈折率
の異なる2種類の透明材料を交互に多層に内装すること
により、更に伝送損失の低減を図ることができる。この
一例を示したのが図3である。
【0046】金属パイプ1(又は金属薄膜を内装した非
金属パイプでもよい)の内面には、夫々屈折率が等しい
ポリイミド樹脂層2a,2cと、夫々屈折率が等しい他
の誘電体層2b,2d(ここでは4層の例を示したが、
2層以上であれば何層でもよい)を交互に形成して多層
化し、交互多層膜9を設けた構成にしている。この場
合、内装する2種類のポリイミド樹脂層2a,2cと、
他の誘電体層2b,2dとの屈折率の差が多いほど、或
いは交互多層膜の層数が多いほど損失低減の効果は大き
くなる。そして、他の誘電体層2b,2dの誘電体材料
には、有機、無機を問わず、透明で屈折率が異なる材料
であれば、使用可能である。特に、ポリイミド樹脂は、
上記したようにフッ素の含有量によって屈折率を制御す
ることができる。したがって、他の誘電体層2b,2d
としてポリイミド樹脂層2a,2cとは屈折率が異なる
ポリイミド樹脂を用いて、屈折率の異なる2種類のポリ
イミド樹脂の交互多層膜としてもよい。これは同種の材
料の組み合わせであることから、付着力等の信頼性を高
めることができる。
【0047】交互多層膜9の組み合わせとしては、ポリ
イミド樹脂等の有機誘電体ばかりでなく、他の誘電体層
2b,2dとして無機誘電体を用いるなど、無機誘電体
との組み合わせも可能である。無機誘電体はポリイミド
樹脂よりも屈折率の高いものが多く存在し、赤外領域に
おいて透明な無機誘電体にはゲルマニウム、硫化亜鉛、
ヨウ化銀等がある。これらの材料は全てポリイミド樹脂
よりも高い屈折率をもち、特にヨウ化銀は無電解で銀薄
膜を形成した後、これを化学的にヨウ素化することによ
り、容易にヨウ化銀の薄膜をパイプ内に形成することが
できる。本発明は、このようなポリイミド樹脂と有機或
いは無機誘電体からなる交互多層膜を内装した中空導波
路においても有効である。
【0048】なお、図3の例では、最内層には、他の誘
電体層2dが形成されているが、この誘電体層2dの内
面に、更にポリイミド層を形成し、そのポリイミド樹脂
層を最内層としてもよく、どの材料を最内層とするか否
か、或いは2種類の材料の順番は、各層の屈折率の大き
さ、膜厚等により決定される。次に、図4の構成図を参
照して図1に示した中空導波路の製造方法について説明
する。
【0049】ポリイミド前駆体溶液は、ジメチルアセト
アミド又はN−メチル−2−ピロリドンの溶媒によって
希釈することが可能であり、パイプ1内に注入して直接
に成膜することができ、その膜厚は樹脂分含有量、粘度
などの使用条件によって制御することができる。このよ
うにして形成した膜は、ポリイミド樹脂特有の耐熱性、
耐薬品性等を有している。
【0050】図4に示すように、容器10内には、溶媒
によって希釈されたポリイミド前駆体溶液11(例え
ば、東レ株式会社製の「トレニース」、日立化成株式会
社製の「OPI」等)が収容されている。容器10の上
方には電磁石12が設置され、溶液流入管13の一部を
成す可撓性の管13aに接続されており、この管13a
は三方弁14を介して溶液流入管13に連通している。
溶液流入管13の端部には、金属製或いは金属薄膜を内
装した非金属製のパイプ15(このパイプが中空導波路
となる)が着脱可能に接続されており、このパイプ15
の終端には溶液流出管16の端部が着脱可能に接続され
ている。この溶液流出管16の途中には三方弁17が配
設され、ポンプ18側に分岐している。又、三方弁17
には真空ポンプ19が接続されている。
【0051】パイプ15に面して平行に乾燥機20が配
設され、この乾燥機20は温度調節器21によって制御
される。又、温度調節器21はリニアモータ22によっ
て水平方向に駆動され、パイプ15に接近し(乾燥機2
0の溝部にパイプ15に入り込む位置まで)或いは退避
することができる。このような装置において、ポリイミ
ド樹脂層2の形成方法を説明すると、まず、三方弁14
が電磁石12側に切り替えられる。ついで、不図示の電
源装置が操作され、電磁石12に対する通電が行われ
る。この電磁石12は管13aの下端を容器10内のポ
リイミド前駆体溶液11に侵入するまで降下させる。こ
こで、ポンプ18の運転が開始され、ポリイミド前駆体
溶液11が管13aに流入し、このポリイミド前駆体溶
液11は三方弁14を経由してパイプ15内へ流入す
る。ポリイミド前駆体溶液11がパイプ15に流入した
後、電磁石12の通電をオフにすると、電磁石12は上
昇し、管13aの吸入口はポリイミド前駆体溶液11の
液面から退避する。これにより、パイプ15内のポリイ
ミド前駆体溶液11は、溶液流出管16→三方弁17→
ポンプ18の経路で排出される。この排出の完了後、ポ
ンプ18の運転を停止する。
【0052】ポリイミド前駆体溶液11の排出後、リニ
アモータ22を駆動すると、温度調節器21によって温
度が100℃に調節されている乾燥機20はパイプ15
を覆うことのできる位置まで移動し、この状態で約10
分間の乾燥が行われる。これにより、パイプ15の内面
に付着したポリイミド前駆体溶液11の溶媒が蒸発し、
図1に示した様なポリイミド樹脂層2が形成される。こ
のとき、溶液流入側及び流出側の三方弁14,17を切
り替え、真空ポンプ19を作動させて、パイプ15の内
部に乾燥ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガ
ス等)を供給すれば、ポリイミド樹脂層の脱水乾燥が促
進される。又、乾燥終了後は、リニアモータ22が駆動
され、乾燥機20はホームポジションに戻される。
【0053】ポリイミド樹脂層2が所望の厚さになるま
で上記した工程を繰り返し実行し、最後に350℃程度
に温度設定された乾燥機20によって約1時間の乾燥を
実施すれば、パイプ15内にポリイミド樹脂層2の薄膜
を有する中空導波路が形成される。この場合も、パイプ
15内に窒素などの乾燥ガスを供給することにより、ポ
リイミド樹脂層を完全に脱水乾燥させることができる。
なお、以上の製造工程は、プログラマブルコントロール
を用いた制御により、完全自動化にすることが可能であ
る。
【0054】図4においては、パイプ15を直線状態に
保持しているが、パイプ15をコイル状に束ねて加熱乾
燥が可能な密閉容器内に収納し、この密閉容器内部でパ
イプ15を加熱すれば、長尺な導波路の形成も容易であ
る。又、パイプ15がフッ素樹脂パイプやシリコン樹脂
パイプである場合、高温に加熱した乾燥ガスを用いてパ
イプ15の内部のみを加熱すればよい。これにより、ポ
リイミドの乾燥温度よりも耐熱性が低い樹脂パイプであ
っても、中空導波路の製造が可能になる。
【0055】本実施例で説明した製作方法においては、
ポリイミド前駆体溶液11はジメチルアセトアミド又は
N−メチル−2−ピロリドン溶媒によって粘度100c
p以下に希釈することが膜厚の均一性を実現するために
重要である。特に、粘度10〜50cpで作製されたポ
リイミド樹脂層では、導波路内面側の表面粗さを0.0
3μm以下上にすることが可能である。更に、このポリ
イミド前駆体溶液11の粘度100cp以下である範囲
においては、不揮発分である樹脂分含有量は3〜10w
t%であることが望ましい。なお、樹脂分含有量が3w
t%未満である場合、ポリイミド樹脂層形成の工程を繰
り返す回数が増大し、重ね塗りの結果、膜厚が不均一に
なることが懸念される。又、樹脂分含有量が10wt%
以上では、1回の工程でポリイミド樹脂層が厚くなりす
ぎ、ポリイミド樹脂層内でのレーザエネルギーの吸収が
無視できなくなる。更に、樹脂分含有量が3〜10wt
%以外で成膜したポリイミド樹脂層は、伝送損失が高
く、また伝送特性の再現性も悪いものであり、3〜10
wt%以外では膜厚制御が難しく、又、膜の付着力が低
下しているものと予測される。
【0056】このような粘度及び樹脂分含有量を調整し
たポリイミド前駆体溶液を用いることにより、内径が2
00〜500μm程度(或いは、それ以下)の細径中空
基材であっても、内径が1mm以上の太径中空基材であ
っても、その内面に容易に所望の膜厚を有するポリイミ
ド樹脂層を形成することができる。図5は中空導波路の
内装誘電体の膜厚と光の伝送損失との関係を示し、ポリ
イミド樹脂内装銀中空導波路と従来のゲルマニウム内装
銀中空導波路とを比較した結果が示されている。
【0057】横軸は内装するゲルマニウム(破線特性)
及びポリイミド樹脂(実線特性)膜の膜厚を示し、縦軸
はHE11モードの伝送損失を夫々示している。ただし、
ここでは伝送する光は波長10.6μmのCO2 レーザ
光とし、導波路内径は800μmとする。ゲルマニウム
の屈折率が4であるのに対し、上記したようにポリイミ
ド樹脂の屈折率は1.5〜1.6の低い値である。
【0058】本発明のポリイミド樹脂内装銀中空導波路
は、従来のゲルマニウム内装銀中空導波路と比較して、
夫々の最適膜厚における最低損失が約1/3に低減され
ることがわかる。更に、伝送損失は内装する薄膜の膜厚
に対して周期的に変化するが、ポリイミド樹脂を内装し
た場合には膜厚に対する伝送損失の変化が緩やかとな
り、製作上の薄膜の膜厚許容範囲を広くとることができ
る。又、CO2 レーザ光を伝送する場合、ポリイミド樹
脂膜の膜厚が約1.4μmのときに伝送損失が最小値に
なることがわかる。この最適膜厚は、伝送するレーザ光
の波長によって夫々異なるが、図5に示したCO2 レー
ザ光の伝送に限らず、ポリイミド樹脂の吸収波長帯を除
く任意の波長に対しても同様に伝送するレーザ光の波長
に従って最適な膜厚を設定すれば、低損失な導波路を実
現することができる。
【0059】図6はポリイミド樹脂を用いて実際に製造
された中空導波路を伝搬する光の波長と伝送損失との関
係を示している。図中、横軸は波長を示し、縦軸は伝送
損失を示す。なお、比較のため、ポリイミド樹脂層を内
装していない銀中空導波路の損失特性も合わせて示して
いる。特性曲線は、波長6〜9μmの範囲で数個のポリ
イミド固有の吸収ピークが見られるが、その他の波長域
において低損失となり、特に赤外領域において、実用上
重要なEr−YAGレーザ(2.9μm)、COレーザ
(5μm)、CO2 レーザ(10.6μm)の発振波長
では、吸収ピークは見られない。したがって、これらの
レーザ光は低損失で伝送することができる。
【0060】ところで、本実施例で説明した導波路で
は、その内部にHe−Neレーザなどの可視光を重畳又
は切り替えて伝送させることができる。これは、目に見
えないレーザ光を安全に目的物に照射するために極めて
有効である。更に、同時に乾燥させた空気、窒素、炭酸
ガス等の気体を中空導波路内部に流入できるのも、中空
導波路の大きな特長である。これらの乾燥ガスは、導波
路内部への粉塵や水分の侵入を防止するだけでなく、導
波路の冷却にも効果がある。更に、例えば、医療用にお
いては、レーザ光と同時に患部へ空気、窒素、炭酸ガス
等のアシストガスを噴射する必要があるが、導波路が中
空であるために、別経路で導入することなく中空導波路
を利用することができる。このような考えによるレーザ
伝送装置の構成について以下に説明する。
【0061】図7はレーザ伝送装置の一例を示す模式的
構成図である。本体23の内部には、不可視光レーザ発
振器24(CO2 レーザ、Er−YAGレーザ、エキシ
マレーザ等)及び可視レーザ発振器25(He−Neレ
ーザ等)が設置され、両発振器の出力光を導く光路は途
中で1本化されるが、その結合部位にはシャッター26
が設置され、不可視光レーザ又は可視レーザの一方のみ
を選択できるようになっている。また、シャッター26
の後段の光路内には、アシストガス27を導入できるよ
うに構成されている。更に、光路には中空導波路28が
連結され、その先端には集光用のレンズ等を備えた治具
29が装着されている。なお、30は中空導波路28を
つり下げるためのスタンドである。図7のレーザ伝送装
置においては、まず、不可視光レーザ発振器24の出力
が中空導波路28側に出ないようにシャッター26を図
示の状態から起立させて不可視光レーザ発振器24の光
路を閉じ、可視レーザ発振器25の可視レーザ光のみを
通過させる。ついで、治具29を例えば患部等に向け、
可視レーザにより目視により治具29を患部に照準を合
わせる。この後、シャッター26を図示したように略4
5°傾けて不可視光レーザ発振器24側に切り替え、シ
ャッター26で反射させて導いた不可視光レーザ光を患
部に照射する。また、必要に応じて、レーザ光と同時に
患部へ空気、窒素、炭酸ガス等のアシストガス27を導
入する。
【0062】なお、図7において、シャッター26の代
わりに不可視光を反射し、可視光を透過することのでき
るビームコンバイナを図示のように45°傾けて固定し
てもよく、その場合には、各レーザ発振器24,25の
オン・オフを切り替えることで各レーザ光の切り替え、
重畳を制御することができる。本発明者らは、上記の構
成による導波路及び図7によるレーザ伝送装置について
医療分野への適応性を確認する為、CO2 レーザの伝送
及びEr−YAGレーザの伝送を行った。尚、CO2
ーザは止血しながら切開が可能であるため、レーザメス
への利用が可能である。又、Er−YAGレーザは、歯
や骨などの硬組織の切削に適している。実験に用いた中
空導波路は、内径700μm、外径850μm、長さ1
メートルの導波路であり、CO2 レーザによる切開及び
Er−YAGレーザによる歯の切削を実際に試みたとこ
ろ、いずれも良好な結果を得ることができた。特に、E
r−YAGレーザを伝送したところ、透過率80%以
上、入力パワー300mJ(10PPS)を得ることが
できた。Er−YAGレーザは、エアタービンに取り付
けたドリルに取って代わる硬組織の切削治療機器とし
て、歯科治療の分野で特に注目されているが、本発明の
導波路を用いれば容易に目的の装置を構成することがで
きる。
【0063】なお、図6で示した特性は、波長2μm以
上の広い赤外波長帯で低損失になるように膜厚を設定し
た導波路であるが、ポリイミド樹脂層の膜厚を波長に対
して適宜設定することにより、ポリイミド固有の吸収ピ
ークの波長を除けば、紫外から赤外の広範囲な波長域に
わたる低損失導波路の実現が可能である。又、図5及び
図6では、ポリイミド樹脂を1層のみ内装した導波路の
作用を示したが、上記のように、ポリイミド樹脂と、こ
れとは別の屈折率をもつ透明薄膜との交互多層膜を内装
した中空導波路では、伝送損失低減の効果が更に顕著に
現れる。
【0064】以上述べたように、本発明によれば、導波
路内に伝送される光の殆どが中空領域を伝搬し、光が導
波路内を伝搬する際に内装薄膜で吸収される光の量は僅
かであるため、低損失で光伝送を行うことができる。
又、中空の金属導波路の中にポリイミド前駆体溶液を流
入させ、これを排出させた後に乾燥を行うことにより、
金属導波路の内面にポリイミド樹脂層が容易に形成され
る。このポリイミド樹脂層の厚さは、流入、排出及び加
熱乾燥工程の回数、溶液粘度、樹脂分含有量の製造条件
によって任意かつ高精度に制御することができる。更
に、この製造方法は、可撓性の優れた細い径の導波路の
製造にも適用でき、しかも形成される導波路の長さは製
造装置に依存せず、長尺化も容易である。
【0065】
【発明の効果】以上より明らかな如く、本発明による中
空導波路においては、中空基材の内面に、伝送する光の
波長帯に対して透明であるポリイミド樹脂層が形成され
ているので、低損失に光伝送を行うことができる。しか
も、ポリイミド樹脂は高い耐熱性及び耐吸湿性を有して
いるため、大電力のレーザ光の伝達にも十分耐えること
ができ、信頼性にも優れている。
【0066】又、本発明による中空導波路の製造方法に
おいては、金属製又は内面に少なくとも1種類の金属薄
膜が形成された非金属製の中空基材内にポリイミド前駆
体溶液を加圧供給し、ついで前記ポリイミド前駆体溶液
を前記中空基材内から排出した後、加熱乾燥し、前記基
材の内壁にポリイミド樹脂層を形成する工程を繰り返し
実施し、所定の膜厚のポリイミド樹脂層を形成するよう
にしたので、簡単な方法によってポリイミド樹脂層を均
一に形成することができる。
【0067】更に、本発明によるレーザ伝送装置におい
ては、中空基材の内面に、伝送する光の波長帯に対して
透明であるポリイミド樹脂層が形成されている中空導波
路と、該中空導波路にレーザ光を入射するレーザ発振装
置とを設けるようにしたので、赤外波長領域から紫外波
長領域までの広い範囲で存在する種々のレーザ光を伝送
することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による中空導波路の一実施例を示す断面
図である。
【図2】本発明による中空導波路の第2実施例を示す断
面図である。
【図3】本発明による中空導波路の第3実施例を示す断
面図である。
【図4】図1に示した中空導波路の製造装置を示す構成
図である。
【図5】図1に示した中空導波路の内装誘電体の膜厚と
光の伝送損失の関係を示す特性図である。
【図6】図1に示した中空導波路内を伝搬する光の波長
と伝送損失の関係を示す特性図である。
【図7】本発明によるレーザ伝送装置の一例を示す模式
的構成図である。
【符号の説明】
1 金属パイプ(中空基材) 2,2a,2c ポリイミド樹脂層 2b,2d 他の誘電体層 3,8 中空領域 4 誘電体内装金属中空導波路 5 非金属パイプ 6 金属薄膜 7 ポリイミド樹脂層 9 交互多層膜 11 ポリイミド前駆体溶液 12 電磁石 13 溶液流入管 16 溶液流出管 18 ポンプ 19 真空ポンプ 20 乾燥機 21 温度調節器 22 リニアモータ 24 不可視光レーザ発振器 25 可視レーザ発振器 26 シャッター 27 アシストガス 28 中空導波路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮城 光信 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 東北大学 工学部内(無番地) (72)発明者 加藤 祐次 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 東北大学 工学部内(無番地) (72)発明者 本郷 晃史 茨城県土浦市木田余町3550番地 日立電線 株式会社アドバンスリサーチセンタ内 (72)発明者 岡上 吉秀 京都府京都市伏見区東浜南町680番地 株 式会社モリタ製作所内

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中空基材の内面に、伝送する光の波長帯
    に対して透明であるポリイミド樹脂層が形成されている
    ことを特徴とする中空導波路。
  2. 【請求項2】 少なくとも内壁面が金属である中空基材
    の内面に伝送する光の波長帯に対して透明であるポリイ
    ミド樹脂層が形成されていることを特徴とする中空導波
    路。
  3. 【請求項3】 前記ポリイミド樹脂層は、20〜35w
    t%のフッ素を含有することを特徴とする請求項1又は
    2記載の中空導波路。
  4. 【請求項4】 前記ポリイミド樹脂層は、ポリイミド樹
    脂層と、このポリイミド樹脂層とは別の屈折率を有する
    透明な誘電体層とが交互に設けられた多層構造であるこ
    とを特徴とする請求項1又は2記載の中空導波路。
  5. 【請求項5】 前記中空基材は、燐青銅又はステンレス
    からなる金属材料が用いられていることを特徴とする請
    求項1又は2記載の中空導波路。
  6. 【請求項6】 前記金属製の中空基材は、その内面に前
    記金属製の中空基材とは異なる金属材料による金属薄膜
    が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載
    の中空導波路。
  7. 【請求項7】 前記中空基材は、フッ素樹脂、シリコン
    樹脂、ガラスのいずれかから成る非金属材料が用いら
    れ、その内面に少なくとも1種類の金属薄膜が形成され
    ていることを特徴とする請求項1記載の中空導波路。
  8. 【請求項8】 前記金属薄膜は、金、銀、銅、モリブデ
    ン、ニッケルのいずれかであることを特徴とする請求項
    6又は7記載の中空導波路。
  9. 【請求項9】 金属製又は内面に少なくとも1種類の金
    属薄膜が形成された非金属製の中空基材内にポリイミド
    前駆体溶液を加圧供給し、ついで前記ポリイミド前駆体
    溶液を前記中空基材内から排出した後、加熱乾燥し、前
    記基材の内壁にポリイミド樹脂層を形成する工程を繰り
    返し実施し、所定の膜厚のポリイミド樹脂層を形成する
    ことを特徴とする中空導波路の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記ポリイミド前駆体溶液は、ジメチ
    ルアセトアミド又はN−メチル−2−ピロリドンの溶媒
    により粘度が100cp以下に希釈され、不揮発分であ
    る樹脂分含有量が3〜10wt%の溶液であることを特
    徴とする請求項9記載の中空導波路の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記加熱乾燥において乾燥ガスを前記
    ポリイミド前駆体溶液を塗布した前記中空基材の中空部
    に供給することを特徴とする請求項9記載の中空導波路
    の製造方法。
  12. 【請求項12】 中空基材の内面に、伝送する光の波長
    帯に対して透明であるポリイミド樹脂層が形成されてい
    る中空導波路と、該中空導波路にレーザ光を入射するレ
    ーザ発振装置とを具備することを特徴とするレーザ伝送
    装置。
  13. 【請求項13】 前記レーザ発振装置は、夫々異なる波
    長帯のレーザ光を発振する複数のレーザ発振器と、該複
    数のレーザ発振器から発振される複数のレーザ光を重畳
    もしくは切り替える手段とを具備することを特徴とする
    請求項12記載のレーザ伝送装置。
  14. 【請求項14】 必要に応じて前記中空導波路の中空部
    へアシストガスを流入させるガス供給手段が設けられて
    いることを特徴とする請求項12又は13記載のレーザ
    伝送装置。
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