JPH08227789A - 樹脂電極 - Google Patents

樹脂電極

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JPH08227789A
JPH08227789A JP3374995A JP3374995A JPH08227789A JP H08227789 A JPH08227789 A JP H08227789A JP 3374995 A JP3374995 A JP 3374995A JP 3374995 A JP3374995 A JP 3374995A JP H08227789 A JPH08227789 A JP H08227789A
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Naoki Sugita
直記 杉田
Osamu Kuniyasu
修 国安
Shigeo Kurose
茂雄 黒瀬
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高圧側電極の対向電極として必要とされる導
電性を示し、電極として実用上必要とされる耐衝撃性や
難燃性などの樹脂特性を満足する、集塵性能に優れた樹
脂電極を提供することを目的とする。 【構成】 本発明は、吸湿性を有する樹脂と導電材とを
配合した樹脂であって、体積固有抵抗値が107 Ωcm
のオーダー以下である樹脂を用いて形成した樹脂電極か
らなる。さらに、前記吸湿性を有する樹脂と導電材とを
配合した樹脂は、放電電流に対する印加電圧との関係を
示す放電特性において、該樹脂からなる電極が示す放電
特性の標準動作点における放電電流値に対する印加電圧
の値から、導体の電極が示す基準放電特性の標準動作点
における放電電流値に対する印加電圧の値を差し引いた
値が0〜0.15kVの範囲の値を示す樹脂であること
を特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コロナ放電電極の対向
電極のような高圧側電極の対向電極に関するものであ
り、例えば静電集塵装置ではアイオナイザー部の対向電
極やコレクタ部の集塵電極に用いることができる樹脂電
極に関する。
【0002】
【従来の技術】静電集塵装置は、気流中の微粒子に対し
てコロナ放電などにより電荷を与え、この荷電粒子が電
界中を通過する間に静電力により荷電粒子を捕集し、除
去するもので、産業用の大型装置から家庭用の小型の装
置まで種々のタイプが用いられている。
【0003】このような静電集塵装置では、微粒子に電
荷を与えるアイオナイザー部のコロナ放電電極の対向電
極、荷電粒子を捕集するコレクタ部の高圧側電極や高圧
側電極の対向電極である集塵電極には、通常アルミやス
テンレスなどの金属材料が用いられている。電極の構成
は、一般に、図3および図4に示すようにアイオナイザ
ー部1ではコロナ放電電極3に対向する対向電極4をス
ペーサー7を介して配列している。またコレクタ部2に
おいても同様に、プラスまたはマイナスの電位を印加す
る高圧側電極6と、それに対向する対向電極5とを交互
に、スペーサー7を介し平行に配列した構造となってい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような金
属板を電極として用いた場合には、次に示すような問題
点がある。
【0005】1)電極を厚さ1.5mmの樹脂板と比較
すると、厚さ1.0mmのアルミ板の場合は1.4倍、
厚さ0.7mmのステンレス板の場合には2.8倍の重
さとなり、電極自体の重量が重くなる。
【0006】2)アイオナイザー部やコレクタ部の電極
を形成するには、スペーサーを使用して金属電極を複数
枚積み重ねるようにして電極部分を組み立てる必要があ
るため、工数が多くかかり製造工程上問題がある。
【0007】3)一方、工数を減らすために、電極を複
数枚積み重ねる代わりに図5に示すように板金プレス抜
きによって一体成形した場合には、極板間ピッチA以上
に極板の奥行きdを長くすることができず、大きな面積
を有する電極を作製することができない。また、折曲げ
などの必要性のため例えば参照符号Bで示すように粒子
が荷電されないで通過してしまう部分が生じ集塵性能を
大きくすることができない。
【0008】4)さらに、金属電極では、複雑な形状の
電極を作製することは困難であり、価格も高価となって
しまうという問題があった。
【0009】これらの諸問題は、金属製の電極に代えて
樹脂を用いて電極を一体成形することにより解決すると
考えられるが、単にカーボンブラックなどの導電材を混
合した樹脂を用いて一体成形したような電極では十分な
集塵性能を得ることができず、また実際に電極として使
用する時に必要とされる耐衝撃性や難燃性などの特性も
十分ではなかった。
【0010】従って、本発明は以上の問題点を解決し、
高圧側電極の対向電極として必要とされる導電性を示
し、電極として実用上必要とされる耐衝撃性や難燃性な
どの樹脂特性を満足する、集塵性能に優れた樹脂電極を
提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、吸湿性を有す
る樹脂と導電材とを配合した樹脂であって、体積固有抵
抗値が107 Ωcmのオーダー以下である樹脂を用いて
形成した樹脂電極からなる。
【0012】さらに、前記吸湿性を有する樹脂と導電材
とを配合した樹脂は、放電電流に対する印加電圧との関
係を示す放電特性において、該樹脂からなる電極が示す
放電特性の標準動作点における放電電流値に対する印加
電圧の値から、導体の電極が示す基準放電特性の標準動
作点における放電電流値に対する印加電圧の値を差し引
いた値が0〜0.15kVの範囲の値を示す樹脂である
ことを特徴とする。
【0013】また、吸湿性を有する樹脂はABS樹脂に
吸水性樹脂が配合された樹脂であって、導電材を配合し
ない場合の吸湿性を有する樹脂の体積固有抵抗値は10
10〜1013Ωcmのオーダーの範囲にあり、吸湿量は
0.5〜1.5重量%の範囲にあることを特徴とする。
【0014】さらに、配合する導電材はカーボンファイ
バー、カーボンブラック、ステンレス繊維、導電ウィス
カーから選択され、導電材の配合比率は10重量%以下
であることを特徴とする。
【0015】なお、本発明はこのようにして作製した樹
脂電極をコロナ放電電極の対向電極、静電集塵装置の高
圧側電極の対向電極およびアイオナイザー−コレクタ一
体型静電集塵装置の高圧側電極の対向電極のいずれかと
して用いることも特徴とする。
【0016】電極を構成するコロナ放電電極の対向電極
および高圧側電極の対向電極を導電性の樹脂を用いて成
形する場合において、樹脂に導電性を付与するために
は、基材となる樹脂に、(1)カーボンブラック、
(2)カーボンファイバー、(3)導電性ウィスカー、
(4)ステンレス繊維などの導電材を適量配合すること
によって達成できると考えられる。しかし、実際に行っ
てみると、(1)のカーボンブラックでは大量に配合し
ないと電極として必要な低い抵抗値を得ることができ
ず、また、大量に配合する結果、耐衝撃性が悪くなって
しまう。(2)のカーボンファイバーでは繊維状である
ためカーボンブラックに比べて少ない量でも必要な抵抗
値が得られるが、価格は高いものとなる。(3)の導電
性ウィスカーでは必要とされる配合量はカーボンブラッ
クとカーボンファイバーの中間の量であるが、耐衝撃性
は低下してしまう。また、(4)のステンレス繊維にあ
っては配合により樹脂の重さが重いものとなり、さらに
価格も高いものとなってしまう。さらに、樹脂電極の難
燃性を考慮し難燃剤を添加することによって、耐衝撃性
はさらに低下してしまう結果となった。
【0017】一方、樹脂の抵抗値を下げるために導電材
を添加した場合、成形樹脂板を用いて抵抗値を測定する
と必ずしも抵抗値は下がっておらず、成形樹脂板の形状
や大きさ、また、同一の成形樹脂板でも抵抗値を測定す
る部分の相違によって測定値が大きくバラツキ、測定値
の幅が大きかった。また、成形樹脂板の表面を削りと
り、再度抵抗値を測定すると、抵抗値は低下することが
わかった。以上のことから、樹脂電極の表面近くに導電
材がほとんど含まれていない高い抵抗値を示す樹脂層
(以下、スキン層という)が電極を成形した時に形成さ
れ、このスキン層の厚さは成形条件によって大きく変化
することがわかった。すなわち、電極を成形するときに
生じるこのスキン層のよって電極の表面近くが特に高い
抵抗値を示すようになる。
【0018】また、このような成形樹脂電極をコロナ放
電電極の対向電極をして用いたとき、次の(1)〜
(3)のような現象が観察された。すなわち、 (1)金属板と比べ放電特性にズレが生じること。
【0019】(2)放電電流を増加していくとイオン化
線の振動が発生すること。
【0020】(3)放電特性にズレが生じている状態で
荷電性能を調べると、ほとんど荷電されないこと。
【0021】以上の事実から、これらは電極表面の高い
抵抗値を有するスキン層にコロナ放電電流が流れ込んで
くるとき、電極表面で逆電離の現象が起こったものと考
えることができる。すなわち、コロナ放電電流密度をj
[A/m2 ]、スキン層の抵抗率をρ[Ωm]、スキン
層の電界をE[V/m]とすると、 E=jρ [V/m] の電界が生じ、これが空気の絶縁破壊強度を超えると対
向電極板から逆極性のコロナ放電が発生し、逆極性イオ
ンが放電空間に供給される。こうなるとイオン化線の振
動が起こり、火花放電が頻発し、荷電効率は低下し集塵
は著しく阻害され捕集性能は大幅に低下する。これを避
けるため電流を減らせば粒子の荷電量が減少し実用に供
しないものとなる。
【0022】さらに、樹脂電極表面のスキン層を削り取
り導電材が含まれている部分を露出させた樹脂でも、見
かけ上平均的な値として抵抗値を下げることはできる
が、ミクロ的に見ると高抵抗の部分が遍在している結
果、高抵抗の樹脂の部分で逆電離現象が起こるため捕集
性能の低下は避けることができない。
【0023】そこで、絶縁性が高い樹脂に導電性の大き
い物質を多量に配合して低抵抗の樹脂を得るのではな
く、樹脂に吸着された水分が電気伝導性に寄与すること
に着目し、樹脂の吸湿性を制御することによって樹脂に
導電性をもたせ、少ない導電材の配合量でも低い抵抗値
の達成できることを見いだし、この知見に基づいて本発
明をなすに至った。すなわち、本発明は高圧側電極の対
向電極の樹脂として、吸湿性を有する樹脂と導電材とを
配合した樹脂を用いることを特徴とし、これにより導電
性を有し、逆電離現象が起きない捕集効率の優れた樹脂
電極を作製することができる。
【0024】以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】本発明で用いることができる吸湿性を有す
る樹脂としては、吸湿性を有し、使用環境の温湿度にお
いて高電圧に対して108 〜1013Ωcm、好ましくは
1010〜1013Ωcmのオーダーの範囲にある体積固有
抵抗値を有する樹脂を使用することができる。このよう
な吸湿性を有する樹脂は、例えば熱可塑性樹脂のような
樹脂基材に吸水性樹脂を添加し、ブレンドすることによ
り吸湿性を付与した樹脂を用いることができる。このよ
うな樹脂は、樹脂中に配合された吸水性樹脂により吸収
された水分によって半導電性を示すものであり、吸水性
樹脂の配合量を調製することによって、樹脂の体積固有
抵抗値を108 〜1013Ωcmのオーダーの範囲となる
ように自由に調製できる。一般に、吸水性樹脂の配合量
は樹脂の種類により異なるが、5〜50重量%である。
樹脂基材としては、例えば、アクリル樹脂、ABS樹
脂、ポリエステル樹脂のような熱可塑性樹脂があり、特
に、ABS樹脂を基材として用いると成形性、難燃性、
耐熱性、耐衝撃性の優れたものが得られ、また、製造コ
ストの面でも安価となる。また、混合する吸水性樹脂と
しては、アクリル酸塩系、ポバール系、ポリアミド系な
どがあり、吸水能、抵抗値の持続性および基材樹脂との
相溶性などを考慮して選択される。なお、このような吸
湿性を有する樹脂としては、例えば、マクスロイ(商品
名、JSR社製)などの市販品を使用することができ
る。
【0026】このような吸湿性を有する樹脂は、例え
ば、ABS樹脂に吸水性樹脂を添加した樹脂の場合で
は、十分乾燥した樹脂プレート(厚さ2mm)を、温度
70℃、湿度65%の恒温恒湿槽内に48時間静置した
後の吸湿量は乾燥樹脂に対して0.5〜1.5重量%で
あり、通常の雰囲気で用いる集塵装置の場合には1.0
〜1.3重量%、特に湿度の高い雰囲気下で用いる場合
で0.5〜1.0重量%くらいの吸湿量を有する樹脂を
用いることが好ましい。また、吸湿性を有する樹脂を通
常雰囲気下で一定時間(48時間以上)放置した時の体
積固有抵抗値は1010〜1013Ωcmのオーダーを示し
た。
【0027】また、本発明で用いる吸湿性を有する樹脂
に配合する導電材としては、例えば、カーボンファイバ
ーやカーボンブラックなどのカーボン系物質、半導電性
または導電性ウィスカー(例えば、チタン酸カリウムな
ど)、ステンレス繊維、銅粉、銀粉などの金属系物質の
ような体積固有抵抗が10-1Ωcmのオーダー以下の導
電性物質があげられ、これらを単独にまたは二種以上を
混合して用いることができる。これらの物質のうちカー
ボン系物質や金属系物質が好ましく、特に、繊維状の形
態を有しているカーボンファイバー、ステンレス繊維な
どがより少ない量で所望の抵抗値を達成することができ
好ましい結果が得られる。
【0028】吸湿性を有する樹脂と導電材とを配合した
樹脂を得るためには、例えば、ミキシングロール、バン
バリーミキサー、連続ミキサーなどを用い通常の方法に
より上述の吸湿性を有する樹脂と導電材とを溶融した状
態で混合することにより、また、基材となる樹脂、吸水
性樹脂および導電材とを一緒に溶融混合することによっ
て調製することができる。この場合、導電材の配合量は
得られる樹脂に対して10重量%以下であることが好ま
しく、配合量が多くなると耐衝撃性が低下する傾向がみ
られる。
【0029】配合により得られた樹脂の吸湿量は、前述
の測定法で測定した場合、一般に、0.4重量%〜1.
5重量%であり、また、体積固有抵抗値は107 Ωcm
のオーダー以下の値を示す。
【0030】次に、得られた樹脂電極の放電特性につい
て、図1を用いて説明する。図1は、樹脂電極の放電電
流に対する印加電圧の関係を示す放電特性のグラフであ
り、本発明で得られる樹脂電極および従来の樹脂電極の
放電特性、ならびにこれらの樹脂電極表面に導電性塗料
を塗布し表面の抵抗を下げた時の放電特性を基準放電特
性として示したものである。電極の樹脂自体の抵抗値が
高い場合や、また電極表面に形成されるスキン層などに
よって電極表面部の抵抗値が上昇すると、前述の式で示
すように樹脂表面内部にE=jρ[V/m]の電界を発
生し、導電性の電極である基準電極に比べて電位の降下
が起こる。従って、この電位の降下に見合うだけ印加電
圧を高めないと放電は起こらなくなり、図1の実施例で
示されるように基準放電特性に比べて印加電圧は上昇す
る。しかし、電極の抵抗値がある閾値を超えるとある放
電電流で突然に逆電離現象が発生してしまい、逆極性イ
オンが放電空間に供給される結果、基準電極に比べ印加
電圧の低下が観察される。すなわち、比較例1の抵抗値
を有する樹脂電極では当初より逆電離現象がみられ、印
加電圧は基準値を下回っている。一方、比較例2の抵抗
値を有する樹脂電極の場合には当初は基準放電特性とほ
ぼ同様な挙動を示しているが約2μA/8cmの時点で
突然逆電離現象が起こりそれ以降の印加電圧が低下して
いることがわかる。このように本発明で用いることがで
きる樹脂は逆電離現象の発生の有無など樹脂の放電特性
を調べることによって選択することができる。
【0031】この目的のため、図1に示すように樹脂電
極が示す放電特性の標準動作点における放電電流値に対
する印加電圧の値から、導体の電極が示す基準放電特性
の標準動作点における放電電流値に対する印加電圧の値
を差し引いた値、すなわち表2に示す「電位上昇」の値
との関係を調べた結果、この値が0〜0.15kVの範
囲の値を示す樹脂であれば逆電離現象も起こらず、確実
に使用することができることがわかった。なお、0.1
5kVを超える場合であっても電極として使用すること
は可能であるが、条件によっては逆電離現象が起きるお
それがあり、一方、この値が0未満ということは、標準
動作点において既に逆電離現象が起こっていることを意
味し、使用は制限される。
【0032】静電集塵装置への適用する際には、本発明
の樹脂電極はアイオナイザー部のコロナ放電の対向電極
として、また、コレクタ部の高圧電極の対向電極である
集塵側電極として、さらに、例えば図2に示すようなア
イオナイザー部1の対向電極4とコレクタ部2の対向電
極5とを共通の電位を与えるアイオナイザー−コレクタ
一体型の共通の対向電極として用いることができる。
【0033】また、以上のような高圧側電極の対向電極
は、通常は接地され接地側電極として用いられることが
多いが、これらの対向電極にプラスまたはマイナスの高
圧電圧を印加するような場合であっても同様に使用する
ことができる。
【0034】コレクタ部を樹脂電極により構成する場
合、高圧側電極には体積固有抵抗が108 以上1013Ω
cmのオーダー以下の樹脂であれば使用することができ
るが、集塵側電極では電気抵抗が高いと捕集した荷電粒
子からの電荷が集塵側電極上に蓄積してしまうため、こ
の蓄積電荷が高圧側と集塵側との電極間の電界を打ち消
すように作用する結果、集塵側電極での捕集効率が低下
する傾向があるため、体積固有抵抗値が107 Ωcmの
オーダー以下の樹脂を用いるとよい結果が得られる。ま
た、アイオナイザー部の対向電極も同様に電極上への電
荷の蓄積を防止し、また逆電離現象を防止し良好な放電
特性を得るため、体積固有抵抗値が107Ωcmのオー
ダー以下の樹脂を用いとよい結果が得られる。
【0035】また、静電集塵装置によっては樹脂電極の
耐熱性が必要になる場合があるが、この時は、シランカ
ップリング剤などで処理したグラスファイバーなどをさ
らに樹脂に配合することにより熱変形温度を向上させる
ことができる。また、必要により難燃剤などを樹脂に添
加し難燃性の向上を図ることができる。
【0036】本発明の樹脂電極は射出成形などによる一
体成形や、押出成形によってシート状に成形し、これを
切断し電極の形状に加工することによって作製すること
ができる。押出成形したシート状の樹脂を用いて電極を
作製した場合には、射出成形が比較的むずかしい薄くて
広い面積を有するシート状の電極を得ることができる。
電極の形状としては、平板状、ラダー型など種々の形状
とすることができるが、特に本発明においては、例えば
図2に示すようなアイオナイザー−コレクタ一体型の共
通の対向電極のように複雑な形状を有する電極であって
も、樹脂の一体成形によって容易に電極を作製すること
ができる。
【0037】なお、アイオナイザー部やコレクタ部の配
置や構成をどのようにするか、また各々の電極の形状、
大きさ、厚みおよび配置、電極への給電方法などは、静
電集塵装置の用途や種類により適時定められる。
【0038】さらに、本発明の説明では静電集塵装置を
例として説明したが、本発明の樹脂電極は集塵装置ばか
りでなく、コロナ放電などを利用する、例えば、複写機
などの対向電極として広く利用することができる。
【0039】
【作用】本発明の構成によると、電極を構成する樹脂の
導電性は樹脂中に配合された導電材ばかりでなく、樹脂
中に配合された吸水性樹脂が吸収した水分によっても樹
脂の導電性が高められる。さらに、樹脂の表面付近に吸
着した水分は樹脂表面層の導電性を高め樹脂表面付近に
存在する高抵抗値を示すスキン層の体積固有抵抗値を低
下させる。従って、樹脂表面に存在した高抵抗値を有す
るスキン層に起因する逆電離現象は起こらず、高い電極
間の電界を確保することができる。また、少ない量の導
電材で低い体積固有抵抗値が確保されるため、導電材な
ど大量の充填物を樹脂に配合することによって発生する
耐衝撃性の低下なども防止することができる。
【0040】以下、実施例および比較例によって本発明
をさらに詳しく説明する。
【0041】
【実施例】
実施例1〜3および比較例1〜2 電極材料としてABS樹脂に吸水性樹脂を配合した吸湿
性を有する樹脂(商品名:マクスロイ、JSR社製)を
用いて、表1に示す配合比で樹脂を調製し、電極を射出
成形によって作製した。また、比較のため吸水性樹脂を
含まないABS樹脂(例えば、商品名:ABS15、J
SR社製)を用いて同様に電極を作製した。なお、表1
中、吸湿量は基材となる樹脂について前述の方法で測定
した値であり、また体積固有抵抗値は基材となる樹脂に
ついて温度25℃湿度60%印加電圧500Vにおける
体積固有抵抗の値を示す。
【0042】
【表1】 得られた樹脂電極を用い次に示す方法に従い評価した。
結果を表2に示す。
【0043】体積固有抵抗率はASTM−D257に従
い、温度20℃、相対湿度50%RHの雰囲気下で測定
した。
【0044】放電特性は、2枚の樹脂製電極板(長さ8
0mm、奥行き20mm、厚さ3mm)を12.5mm
の間隔で平行に保持し、中央部にイオン化線(線径90
μm)を配してコロナ放電電極を構成して、樹脂製電極
とイオン化線との間に高電圧を印加し電圧電流特性を測
定した。結果を図1に示す。次に2枚の樹脂製電極板の
表面に導電性塗料を塗布し、表面の抵抗を低下(102
〜103 Ωのオーダー以下)させたときの電圧電流特性
を測定する。このときの電圧電流特性を基準として、両
者を比較し、図1に示す標準動作点における放電電流値
に対する印加電圧の差を算出する。算出された値は樹脂
表面、すなわちスキン層での電位降下に対応した値であ
り、この値が小さいほどアイオナイザー印加電圧の上昇
が小さく好ましいものとなる。結果を表2に「電位上
昇」として示した。
【0045】コロナ放電電極の荷電性能および対向電極
の集塵性能を評価するため、対向電極へのダストの付着
についてつぎのようにして検討した。樹脂製電極を送風
ダクト内に設置し、JIS11種ダストを濃度20mg
/m3 、風速1m/sで流しながら対向電極側を接地
し、コロナ放電電極側に4.0〜4.5kVを印加し、
放電電流30μA/8cmにて接地した対向電極へダス
トを約7分間付着させ、その状態を目視によって観察し
た。
【0046】また、耐衝撃性については、アイゾット衝
撃強度をASTM D256に従い、熱変形温度、難燃
性についてそれぞれASTM D648、UL−94に
従い測定した。
【0047】耐薬品性については、樹脂サンプル板をベ
ルゲン治具にセットし、サラダ油をかけた場合には室温
下、24時間後の樹脂サンプル表面のクラックの状態
を、また、アルカリ系洗剤をかけた場合には60℃に加
温し、24時間後の樹脂サンプル表面のクラックの状態
を観察し臨界歪率を求めた。
【0048】
【表2】 図1からわかるように、放電特性は比較例1および2で
は、基準とのズレが大きく放電電圧が大幅に低いが、実
施例1〜3のものでは逆電離が起こらず放電電圧は基準
に比べほぼ同等であり、良好な性能を示した得られてい
る。また、図1に示す標準動作点における放電電流に対
する電位に関して、比較例1および2では、0.3〜
0.7kVと大幅に電位が低下しているのに対し、実施
例1〜3の電極では基準電位から低下することなく、む
しろ0.05〜0.15kVと上昇している。
【0049】このアイオナイザー印加電圧の上昇はスキ
ン層での電位降下に対応した位であり、樹脂電極の抵抗
率ρv が大きくなるほど、またスキン層による抵抗が大
きくなるほどスキン層での電位降下が大きくなる。従っ
て、スキン層での電位降下に相当する値だけアイオナイ
ザー印加電圧は大きくなる。しかし、スキン層の抵抗が
ある値より大きくなると、逆電離現象が起こり両極性イ
オンが放電空間に供給される結果アイオナイザー電圧は
基準値よりも下回ることになる。
【0050】一方、実際の集塵装置では印加電圧は通常
4〜6kVであることから、その1/40程度の0.1
5kVくらいのスキン層での電位の降下以内であれば実
用上問題は生じず、逆電離現象も発生しないと考えられ
る。すなわち表2中の「電位上昇」が0kV以上+0.
15kV以下を示す樹脂を用いることによって集塵効率
のすぐれた電極を作製することができることがわかる。
【0051】比較例1および2の電極放電電圧が大幅に
下回る理由としては、逆電離によって逆極性イオンがコ
ロナ放電空間に流れ、コロナ放電電極からの正極性イオ
ンと合流し、空間インピーダンスを下げ端子電圧の極端
な低下を引き起こしたものと考えられる。また、逆電離
が起こった時の特徴であるイオン化線の振動が現実に観
測されることからも、逆電離現象の発生が裏付けられ
る。
【0052】表2の結果から、接地した対向電極へのダ
ストの付着は、逆電離が発生した比較例1および2で
は、逆電離現象により電荷の中和が起こり接地した対向
電極に僅かしか付着せずほとんど集塵されなかったのに
対し、実施例1〜3では広く帯状により濃く付着し良好
な集塵が得られることがわかる。
【0053】また、実施例1〜3においては、耐衝撃性
を示すアイゾット衝撃強度も、すべて6kg・cm/c
m以上であり、熱変形温度は低荷重で110℃以上を示
し、さらに難燃性についてもV−1相当以上の評価であ
り優れた機械的熱的特性を示していることがわかる。樹
脂の比重については、比重が大きくなるステンレス繊維
を使用しなくても、また使用したとしてもその量は少な
い量で目的とする樹脂を得ることができ、軽量の樹脂電
極を得ることができる。耐薬品性については、実施例お
よび比較例ともすべて臨界歪率1%以上であり良好な結
果であった。
【0054】
【発明の効果】本発明によると、優れた導電性を有し、
逆電離現象が発生しない樹脂電極が得られる。従って、
この電極を、コロナ放電電極の対向電極として用いた場
合には優れた放電特性を、また、静電集塵装置の高圧側
電極の対向電極として用いた場合には優れた集塵、捕集
性能を発揮することができる樹脂電極が得られる。ま
た、得られた樹脂電極は耐衝撃性、難燃性、耐熱性、耐
薬品性に優れた電極である。さらに、複雑な形状の電極
でも射出成形などにより一体成形することにより容易に
作製することができ、製造コストの低減を図ることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】放電電流に対する印加電圧の関係を示す放電特
性のグラフ。
【図2】アイオナイザーおよびコレクタの対向電極を一
体として構成した静電集塵装置における電極の構成を分
解して示す分解斜視図。
【図3】一般的な静電集塵装置におけるアイオナイザー
部、コレクタ部の電極構成を示す斜視図。
【図4】一般的な静電集塵装置におけるアイオナイザー
部、コレクタ部の電極構成を示す側面図。
【図5】静電集塵装置における電極を板金プレス抜き加
工によって一体成形した場合の電極の形状を示す斜視
図。
【符号の説明】
1 アイオナイザー部 2 コレクタ部 3 コロナ放電電極 4、5 対向電極 6 高圧側電極 7 スペーサ A 極板間ピッチ B 荷電されないで粒子が通過する部分 d 極板の奥行き

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 吸湿性を有する樹脂と導電材とを配合し
    た樹脂であって、体積固有抵抗値が107 Ωcmのオー
    ダー以下である樹脂を用いて形成した樹脂電極。
  2. 【請求項2】 さらに、前記吸湿性を有する樹脂と導電
    材とを配合した樹脂は、放電電流に対する印加電圧との
    関係を示す放電特性において、該樹脂からなる電極が示
    す放電特性の標準動作点における放電電流値に対する印
    加電圧の値から、導体の電極が示す基準放電特性の標準
    動作点における放電電流値に対する印加電圧の値を差し
    引いた値が0〜0.15kVの範囲の値を示す樹脂であ
    る請求項1に記載の樹脂電極。
  3. 【請求項3】 コロナ放電電極の対向電極、静電集塵装
    置の高圧側電極の対向電極およびアイオナイザー−コレ
    クタ一体型静電集塵装置の高圧側電極の対向電極のいず
    れかとして用いられる請求項1または2に記載の樹脂電
    極。
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