JPH08205768A

JPH08205768A - キノコ鮮度保持剤

Info

Publication number: JPH08205768A
Application number: JP1573395A
Authority: JP
Inventors: Yoshihiko Yamauchi; 吉彦山内; Yutaka Suzuki; 豊鈴木
Original assignee: Snow Brand Milk Products Co Ltd
Current assignee: Snow Brand Milk Products Co Ltd
Priority date: 1995-02-02
Filing date: 1995-02-02
Publication date: 1996-08-13

Abstract

(57)【要約】【構成】タイムから抽出したタイム油またはタイムの
香成分であるチモールを有効成分とする、キノコの鮮度
保持剤。タイム油またはチモールはエタノール等に溶解
したものをキノコに直接スプレーするかまたは、タイム
油またはチモールをしみ込ませた紙や不織布を包装中に
封入する。【効果】キノコの褐変化や、菌糸の伸長による品質の
低下を防止し、キノコの鮮度を保持する機能を有する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はキノコの鮮度保持剤およ
び、この保持剤を用いたキノコの鮮度保持方法に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】近年多種類のキノコが人工的に栽培され
るようになり、市場にも多数出回るようになってきてい
る。人工的な栽培が可能であり、市販されている代表的
なキノコとしては、シイタケ・エノキタケ・ヒラタケ・
ブナシメジ・マッシュルーム・ヤナギマツタケ・シロタ
モギタケ・マイタケ・ナメコなどがあげられる。これら
のキノコは加工される場合と、生鮮食品として市販流通
される場合とがある。生鮮食品として市販流通される場
合、流通段階の鮮度低下によるトラブルが多く発生す
る。流通過程で発生する問題で特に大きなものは、褐変
と菌糸の成長である。褐変化はマッシュルームやシイタ
ケの品質に著しい影響を及ぼすし、さらに菌糸の成長は
殆どの市販品に見受けられ、キノコの品質低下をもたら
すとともに、カビ様の菌糸の成長は外観上好ましくない
とされている。このため、流通過程でのこれらの問題を
解決し、鮮度低下を防止し、品質を維持するための試み
がいくつか検討されている。

【０００３】例えば特開昭６０─１５３７５３号公報に
はハロゲン化炭化水素のガスにより処理する方法が開示
されている。また特開昭６２─９１１５７号公報には、
キノコを低温下に置き、生活代謝を低下させた後、これ
を凍結させて保存する方法が、さらに特開平３─１８３
４３９号公報には炭酸ガスを包装時に封入して保存する
方法が開示されている。しかしこれらの方法はいずれ
も、その操作を行うために専用の装置が必要である。ま
た特開昭６２─１７１６４０号公報には、キノコを酸性
プロテアーゼ阻害剤で処理し、褐変を防止する方法が、
特開昭６２─２３６４４号公報にはヒノキチオールで処
理する方法が、特開平２─２９９５４２号公報には塩素
酸塩や次亜塩素酸塩等を用いて処理する方法が、さらに
特開平６─１３３７４７号公報および特開平５─３０８
９３８号公報にはハトムギ由来の抗菌剤を用いてキノコ
を処理して保存する方法が開示されている。これらの方
法は、必ずしも、キノコの鮮度保持に適していなかった
り、また処理のために特定の操作が必要であったりして
必ずしも満足できる方法ではなかった。特に、キノコの
流通過程では、採取直後の状態と比較すると、褐変化や
菌糸の伸長による外観品質の低下が問題とされ、このよ
うな状態のキノコは鮮度が低下したとみなされ、廃棄処
分されることもあった。

【０００４】

【解決しようとする課題】本発明者らは栽培したキノコ
を新鮮な状態で市場に供給し、流通させる方法に関して
検討を行った結果、従来問題とされてきた褐変化や菌糸
の伸長などを抑制して、採取時のキノコの鮮度を保持す
るために適した鮮度保持剤を見出すにいたった。またこ
の鮮度保持剤を用いた、キノコの流通のための包装方法
を見出した。従って本発明は、キノコの鮮度保持剤およ
び、これを用いたキノコの鮮度保持方法に関する。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、種々の植
物由来の抗菌性精油成分について検討を行ったところ、
特にタイム油に、キノコの褐変を抑制し、菌糸の成長を
止める作用が存在することを見出した。このような効果
はこれまで全く知られていなかった。さらにタイム油中
のこのような作用を示す成分について、検討を行ったと
ころ、この作用はタイム油の主要な芳香成分であるチモ
ール(thymol:2-イソプロピル-5- メチル-6- イソプロピ
ルフェノール) に存在することが確認できた。チモール
は下記化１式であらわされる芳香族モノテルペンであ
る。

【０００６】

【化１】

【０００７】タイム油は、スパイスとして古くから知ら
れている植物で、和名をタチジャコウ草と呼ぶ植物から
抽出された精油成分である。この植物はそれ自身スパイ
スとして用いられ、さらにこのタイムから抽出されたタ
イム油は香料の原料として用いられている。またタイム
油中に約６０％含有されているチモールは防腐剤、駆虫
剤、合成メントールの原料として用いられる。チモール
は、非常に安全性の高い化合物であり、ＬＤ５０は、ラ
ット経口投与で約９８０ｍｇ／ｋｇを示す。しかし、チ
モール自体が、またはタイムから抽出された精油が、本
発明で示すようなキノコの鮮度保持作用を有することは
全く知られていなかった。

【０００８】本発明の目的とするキノコの褐変防止と菌
糸の成長を抑制するためには、チモールまたはチモール
含有精油分をキノコに直接噴霧するかまたは塗布するこ
とによって達成できるし、より簡便には、チモール含有
精油分を吸収させた紙片や、スポンジ等の小片や担体
を、キノコとともに、ポリエチレンや塩ビフィルムなど
で密封包装することで達成できる。本発明に用いるチモ
ールは、タイム油から精製して得ることができるし、化
学的に合成することもできる。またチモールのエステル
化物等も使用可能である。またタイム油は、タイムの
葉から常法により水蒸気蒸留して得ることができるし、
有機溶媒抽出によっても得ることができる。この様にし
て得た、チモールもしくはタイム油は、必要に応じて、
水やエチルアルコールやエチルエーテルなどに溶解させ
て用いることができる。この溶解液をキノコに直接噴霧
したり、塗布する場合、通常はチモールの含量０．００
１〜１０％の濃度、好ましくは０．００１〜１％濃度、
特に好ましくは０．０１〜０．１％濃度に溶解した溶液
を調製し、この溶液中に浸漬または噴霧、またはこの溶
液を塗布する。チモールは非常に芳香性の強い物質であ
るが、本発明の目的であるキノコの褐変防止と菌糸の成
長を抑制するためには、芳香を目的とする場合よりも低
濃度で効果を発揮するため、チモールの溶液を希釈して
その芳香が殆ど感じられなくなったものを、キノコ鮮度
保持剤として用いることができる。またこのようにし
て、キノコに直接塗布する場合には、チモールまたはタ
イム油の溶解液には、食品に塗布した場合でも安全性等
に問題がなく、食品として直接摂取可能なものを選択し
なければならない。

【０００９】一方、チモールまたはチモール含有精油分
を吸着させた紙や不織布またはスポンジ、セルロース粒
子やデンプン粒子・セライト粒子などの担体、シクロデ
キストリンで包接した粉末化物などを鮮度保持剤とし
て、キノコを包装する際に、キノコとともに、ポリエチ
レンや塩ビフィルムなどで密封包装することでキノコの
褐変防止と菌糸の成長を抑制することができる。この場
合には、チモールまたはチモール含有精油は包装中で、
極微量が持続的に気化または蒸発し、包装体中の空気中
に存在することでキノコに接触し、効果を発揮する。こ
の場合には、チモールまたはチモール含有精油を溶解す
る溶媒は、油溶性のある有機性又は無機性の溶媒であれ
ばどのような溶媒であっても使用可能であるが、食品に
使用でき、かつ残留しても毒性のないものが溶媒として
は好ましい。このような観点から溶媒としては、食用
油、エチルアルコールまたはエチルエーテルが好まし
い。

【００１０】あるいはまた、包装にあたっては、チモー
ルまたはチモール含有精油分を、キノコを包装する際に
もちいるトレーなど包装材料に混入して成型しても良
い。このような方法を用いて包装する場合には、１包装
あたりのキノコの種類や、大きさ、量によって使用量は
異なる。標準的には、キノコ１００ｇを包装する際に、
チモールとして１〜１００ｍｇ、特に好ましくは１０〜
５０ｍｇを１包装中に含有させるようにすることで目的
である、キノコの褐変防止と菌糸の成長を抑制し鮮度を
保持することができる。また本発明のキノコの鮮度保持
剤は、栽培したキノコだけでなく、マツタケやホンシメ
ジなどの栽培困難なキノコを、採取地から遠隔地へ輸送
する場合にも適用することが可能であり、キノコの流通
形態を大幅に変えることになると考えられる。

【００１１】本発明の鮮度保持剤の作用はどの様な機作
に由来するのか未だにあきらかにはなっていないが、一
部について本発明者らが本発明において明らかにした。
褐変防止については、以下の実施例に示すように、チモ
ールが、褐変に関与する酵素であるフェノールオキシダ
ーゼの活性を顕著に抑制することから酵素阻害によるも
のであると推測される。

【００１２】以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細
に説明する。

【実施例１】タイムオイルの調製およびチモールの分離分析タイムの乾燥葉１ｋｇに水１ｌを加え、ミキサーでホモ
ジナイズし、この混合溶液を水蒸気蒸留装置にかけた。
常法によって揮発性油画分を取り出し、水相を除去し、
油相のみを取り出し、タイムオイル６ｍｌを得た。タイ
ムオイルの収率は約０．６％であった。このタイムオイ
ルを、シリカＯＤＳ（Ｃ₁₈）を担体としてセットした分
離分析用液体クロマトグラフィーに負荷し、分離を行っ
たところこのタイムオイル中に含まれるチモールの含量
は約４１％であった。

【００１３】

【実施例２】キノコ鮮度保持剤の調製タイムオイルから抽出精製したチモールをエタノールに
溶解し、１００ｍｇ／ｍｌの溶液を調製した。これを原
液として以下の形態の鮮度保持剤を調製した。（１）チモール含有紙上記のチモール原液１００ｍｌを、１００ｍｌのエタノ
ールに溶解し、この溶液に１０×１０ｃｍの大きさのセ
ルロース製の濾紙１００枚を浸漬し、引き上げ、エタノ
ールを気化させた。このセルロース濾紙１枚あたりには
チモールが１００ｍｇ含まれている。この濾紙をキノコ
を包装する際にトレーの中に敷いて、鮮度保持に使用す
ることができる。

【００１４】（２）セライト担体セライト粒子（１０メッシュ）１００ｍｌに上記チモー
ル原液を３０ｍｌ加え、良く撹拌混合し、セライト粒子
に吸着させた。この粒子を１ｍｌずつ、不織布で作成し
た小袋に小分けした。この小袋１個当たりチモールが約
３０ｍｇ含まれている。

【００１５】（３）シクロデキストリンとの包接体チモール原液１００ｍｌとβシクロデキストリン１００
ｇに水２００ｍｌを加え、３時間混合後凍結乾燥を行
い、シクロデキストリン包接体を得た。この包接体１ｇ
にはチモールが９０ｍｇ含有されている。この包接体は
そのまま鮮度保持剤として使用できる。この包接体を１
０ｇを水１００ｍｌに溶解し、不織布にチモールが１〜
５ｇ／ｍ²になるように塗布し、乾燥させた。この不織
布は、トレーの中に敷いて、鮮度保持に使用することが
できる。

【００１６】（４）噴霧溶液の調製チモール原液１０ｍｌをエチルアルコール４０ｍｌに溶
解し、この溶液を蒸留水５０ｍｌに懸濁させた。この懸
濁液１ｍｌにはチモール１０ｍｇが含有されている。こ
の溶液はキノコに直接噴霧した後、包装を行うことがで
きる。

【００１７】

【実施例３】キノコの菌糸の伸長抑制効果直径９ｃｍのシャーレにポテト・デキストロース寒天培
地（ＰＤＡ培地）２０ｍｌをいれて、平板培地を調製し
た。この培地で被検菌（シイタケ・ヒラタケ・ブナシメ
ジ）の菌糸を接種し、２５℃で５〜７日間培養し、生育
した菌糸の先端を滅菌したコルクボーラーでくり抜き、
この寒天片（直径約６ｍｍ）を同じＰＤＡ平板培地の中
央に移植した。このシャーレを逆さまに置き、上蓋の中
に濾紙（直径５５ｍｍのＮｏ．２濾紙：アドバンテック
トーヨー製）を入れ、これにチモールをコーン油に溶解
して、１〜１００ｍｇ／ｍｌの濃度の溶液を調製した溶
液を０．１ｍｌずつ（チモール換算０．１〜１０ｍｇ）
しみ込ませた。その後、シャーレの蓋を締め、蓋の周囲
をポリエチレンフィルム（パラフィルム）で巻き、密閉
し２５℃で７日間培養した。７日後、それぞれの菌糸の
伸長距離を測定し、チモールを添加しないで、コーン油
のみを添加した濾紙を入れて培養した対照菌の伸長距離
に対する相対値（％）を求めた。これを各菌種ともシャ
ーレ６枚について行い、平均値を求めた。図１に測定結
果を示した。この結果によれば、シイタケ・ヒラタケ・
ブナシメジともチモール１〜２ｍｇ／シャーレの添加で
菌糸の伸長が停止し、０．７４〜０．９ｍｇ／シャーレ
の添加で菌糸の伸長が５０％抑制されることが確認でき
た。チモールは油からは非常に微量しか気化されない
が、菌糸の伸長を顕著に抑制することが明らかとなっ
た。

【００１８】

【実施例４】子実体（キノコ）組織片からの菌糸発生抑制シイタケなどのキノコは、子実体の組織片をＰＤＡ培地
上におくと、２５℃付近で顕著な菌糸発生が認められ
る。この菌糸発生の抑制効果を確認した。新鮮な採取直
後のキノコ（シイタケ・ヒラタケ・ブナシメジ）の内部
から殺菌メスを用いて無菌的に組織片を取り出し、この
切片をＰＤＡ培地上に８サンプル／シャーレとなるよう
に移植した。このシャーレを逆さまに置き、実施例３と
同様の濃度となるようにしたチモール溶液を吸収させた
濾紙を入れ、同様に培養を行って、７日後の菌糸の伸長
の有無を観察した。実施例４と同様に、チモール１〜２
ｍｇ／シャーレの添加で、菌糸の伸長がまったく認めら
れなかった。一方対照はいずれのキノコにおいてもワタ
様の菌糸が伸長していた。

【００１９】

【実施例５】子実体（キノコ）上からの菌糸発生抑制（１）ガラス製シャーレ（容積約６００ｃｍ³）に新鮮
な、採取直後のブナシメジ子実体を入れ（約３０ｇ）、
さらにコーン油で溶解したチモール液０．５ｍｌ（５０
ｍｇ）をしみ込ませた濾紙を入れ、ストレッチフィルム
で覆った。このシャーレを２２℃で３〜５日間静置し
て、子実体上の菌糸の伸長を観察した。なお対照とし
て、同様の操作を行いコーン油のみを０．５ｍｌしみ込
ませた濾紙を入れたものについて観察を行った。このよ
うなシャーレ３組を調製して観察を行った。チモールを
添加した濾紙を入れたシャーレのキノコ子実体からは菌
糸の伸長は全く観察されなかったのに対して、チモール
を添加しなかったシャーレ中のキノコ子実体は、３日目
に子実体の石突部分から菌糸が伸長しはじめ、５日目に
は気中菌糸が石突を覆い隠すほど伸長していた。また開
封時には、シャーレからはチモールの芳香は全く感じら
れず、キノコへの香りの移行も認められなかった。

【００２０】（２）市販ブナシメジ用発泡スチロール製
容器（容積約５００ｍｌ）に新鮮な、採取直後のブナシ
メジ子実体を入れ（約２０ｇ）、さらにコーン油で溶解
したチモール液０．３ｍｌ（３０ｍｇ）をしみ込ませた
濾紙を入れ、この包装容器に使用されているフィルムで
覆った。この容器を２２℃で３日間静置して、子実体上
の菌糸の伸長を観察した。なお対照として、同様の操作
を行いコーン油のみを０．３ｍｌしみ込ませた濾紙を入
れたものについて観察を行った。なお、このような容器
３組を調製して観察を行った。チモール添加した濾紙を
入れた容器のキノコ子実体からは、いずれも菌糸の伸長
は全く観察されなかったのに対して、チモールを添加し
なかった容器中のキノコ子実体は、いずれも３日目に子
実体の石突部分から菌糸が伸長していることが観察され
た。また開封時には、容器からはチモールの芳香は全く
感じられず、キノコへの香りの移行も認められなかっ
た。

【００２１】（３）ガラス製シャーレ（容積約１００ｃ
ｍ³）に新鮮な、採取直後のヒラタケ子実体を入れ（約
１０ｇ）、さらにコーン油で溶解したチモール液０．２
５ｍｌ（２５ｍｇ）をしみ込ませた濾紙を入れ、ストレ
ッチフィルムで覆った。このシャーレを２２℃で３日間
静置して、子実体上の菌糸の伸長を観察した。なお対照
として、同様の操作を行いコーン油のみを０．２５ｍｌ
しみ込ませた濾紙を入れたものについて観察を行った。
なお、このようなシャーレ５組を調製して観察を行っ
た。チモールを添加した濾紙を入れたシャーレのヒラタ
ケ子実体からは菌糸の伸長は全く観察されなかったのの
対して、チモールを添加しなかったシャーレ中のキノコ
子実体は、３日目に子実体の石突部分およびカサから菌
糸が伸長し、石突やカサを覆い隠す程伸長しているのが
観察された。また開封時には、シャーレからはチモール
の芳香は全く感じられず、キノコへの香りの移行も認め
られなかった。

【００２２】

【実施例６】フェノールオキシダーゼ活性に対するチモールの阻害シイタケ等のキノコの褐変化は、ポリフェノールオキシ
ダーゼ（チロシナーゼ）の作用によることが確認されて
いる（茶珍和雄他、日本食品工業学会誌、第４１巻９
号、１８─２２頁、１９９４年）。このため、本発明鮮
度保持剤のポリフェノールオキシダーゼの阻害活性を測
定した。阻害活性の測定方法はT.Nakamuraの報告(J.Bio
chem.,Vol.59,481,1966)に準じて行った。１ｍＭのＬ−
チロシンを含む１００ｍＭリン酸バッファー（ｐＨ６．
２）を２５℃で１０分間加温した後、ポリフェノールオ
キシダーゼ溶液を添加し、２８０ｎｍの吸光度変化を測
定した。酵素活性は、２８０ｎｍの吸光度が、１分間に
０．００１増加する場合を１ユニットとした。マッシュ
ルーム由来の市販のポリフェノールオキシダーゼ（チロ
シナーゼ５００、和光純薬製）２０ユニットに対して、
チモールを０．２〜３．３ｍＭ（０．０３〜０．５ｍｇ
／ｍｌ）となるように添加し、酵素阻害を測定した。測
定結果を図２に示した。チモールは１．９ｍＭ（０．２
９ｍｇ／ｍｌ）の濃度でポリフェノールオキシダーゼを
５０％阻害することが明らかとなった。

【００２３】

【実施例７】キノコ子実体の褐変化抑制ガラス製ビーカー（容積約３００ｃｍ³）に新鮮な、採
取直後のシイタケ子実体を入れ（約２０ｇ）、さらにコ
ーン油で溶解したチモール液０．２ｍｌ（２０ｍｇ）を
しみ込ませた濾紙を入れ、ストレッチフィルムで覆っ
た。このビーカーを２２℃で６日間静置して、子実体カ
サのヒダ部分の褐変化を観察した。なお対照として、同
様の操作を行いコーン油のみを０．２ｍｌしみ込ませた
濾紙を入れたものについて観察を行った。このようなビ
ーカー４組を調製して観察を行った。チモール添加した
濾紙を入れたビーカーのシイタケ子実体はまったく変化
しなかった。一方チモールを添加しなかったビーカー中
のシイタケ子実体ヒダ部分には褐色の斑点が生じ、子実
体全体が褐変化していた。また開封時には、ビーカーか
らはチモールの芳香は全く感じられず、キノコへの香り
の移行も認められなかった。

【００２４】

【発明の効果】本発明の実施により、キノコの鮮度保持
剤および鮮度保持方法が提供される。本発明で提供され
る鮮度保持剤は、キノコの褐変化を抑制し、菌糸の伸長
を抑制し、キノコの品質上の低下を抑制し、鮮度を保持
する効果を有している。

【図面の簡単な説明】

【図１】シイタケ・ブナシメジ・ヒラタケの菌糸の伸長
抑制効果を測定した結果を示す。

【図２】チモールによるチロシナーゼの阻害効果を示
す。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】チモールまたはチモール含有精油を有効成
分とするキノコ鮮度保持剤。
【請求項２】チモールまたはチモールを含有精油分吸着
させた吸収体をキノコとともに包装することを特徴とす
る、キノコの鮮度保持方法。
【請求項３】チモールまたはチモールを含有精油分をキ
ノコに噴霧または塗布することを特徴とする、キノコの
鮮度保持方法。
【請求項４】チモールを含有する精油分がタイムオイル
である請求項１、２、３の記載の方法。