JPH08188007A - 車輪のスリップ防止方法及びその装置並びにその制御方法 - Google Patents

車輪のスリップ防止方法及びその装置並びにその制御方法

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JPH08188007A
JPH08188007A JP95195A JP95195A JPH08188007A JP H08188007 A JPH08188007 A JP H08188007A JP 95195 A JP95195 A JP 95195A JP 95195 A JP95195 A JP 95195A JP H08188007 A JPH08188007 A JP H08188007A
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wheel
wheels
moving body
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wheel slip
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JP95195A
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Kaoru Ono
薫 大野
Tamotsu Hibino
有 日比野
Kiyoshi Kawaguchi
清 川口
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Railway Technical Research Institute
Original Assignee
Railway Technical Research Institute
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明の目的は摩擦係数の小さい路面上でも
加速力や減速力の減少を伴わない車輪のスリップ防止方
法を提供することにある。 【構成】 本発明の車輪のスリップ防止方法は車輪で走
行する移動体の車輪のスリップ現象を防止する方法であ
って、移動体に駆動力及び制動力を与える、車輪と走行
路との間の摩擦力を増加させる働きのある粉末、粒体、
液体、粘着性流体、あるいはこれらの物質の任意の混合
物を、移動体に取り付けられたカートリッジ式ボンベか
ら、車輪と走行路との接地面に噴射或いは車輪に直接噴
射することにより、接地面の摩擦力を増加させることに
より車輪のスリップ現象を防止することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車輪で走行する移動体
において、車輪と走行路との接地面に、或いは車輪踏面
に、接地面の摩擦力を増加させる働きのある物質を噴射
することにより、車輪のスリップを防止する方法及びそ
の装置並びにその制御方法に関するものである。なお、
ここで摩擦力とは移動体の車輪と走行路との間に働き、
移動体に加速力、減速力、(及び場合によっては案内
力)を与える力のことである。鉄道においては粘着力、
自動車においてはグリップ力などという言葉が使われる
が、ここではそれらを総称して、摩擦力ということにす
る。また、ここでスリップとは車輪の回転速度と移動体
の移動速度とが異なっている状態のことである。一般に
加速時のこの現象をスリップ又は空転といい、減速時の
この現象をスキッド又は(車輪の回転速度がゼロになっ
た場合)ロックというが、ここではそれらを総称して、
スリップということにする。
【0002】
【従来の技術】例えば、自動車では雪面上でのスリップ
を防止する方法としてタイヤチェーンが用いられてい
る。これはタイヤ踏面に金属製或いはプラスチック製の
チェーンまたはそれに類したものを巻くことにより車輪
と走行路との間の摩擦力を増加させ、スリップを防止す
るものである。また、最近ではタイヤの材質を柔らかい
ものに変えさらにタイヤ踏面の凹凸の刻みを大きくし車
輪と走行路との間の摩擦力を増加させるようにしたスタ
ッドレスタイヤもスリップを防止する方法として用いら
れている。また、制御面からスリップを防止する方法と
して、例えば、自動車をはじめ鉄道や航空機において、
減速時のスリップを防止する方法として、アンチロック
ブレーキシステム(以下、ABSと略記する)が用いら
れている。図6に、ABSの動作を概略的に示す。図6
において、急激なブレーキ操作等により車輪27がスリ
ップを起こしはじめていることが検知されると、ABS
16によりブレーキ力が弱められる。ブレーキ力が弱め
られることによって、それ以上のスリップが防止される
のである。また、自動車では加速時のスリップを防止す
る方法として、トラクションコントロールシステム(以
下、TCSと略記する)が用いられている。これは、ス
リップを検知すると、エンジンの出力を低下させたり駆
動輪にブレーキをかけたりして、それ以上のスリップを
防止しようとするものである。
【0003】しかしながら、タイヤチェーンは脱着に手
間と時間がかかり、また脱着のための広い場所も必要で
ある。また、そういった脱着の不便さを解消したスタッ
ドレスタイヤも、アイスバーンや固く平に踏み固められ
た雪面では、車輪と走行路との間の摩擦力をほとんど得
ることができず、スリップを起こすことがある。また、
ABSやTCSについては、スリップを防止するために
減速力や駆動力が弱められるため、十分な減速或いは加
速を得られないことがある。特に減速力が弱められるこ
とにより制動距離が延びる危険性は重大な問題である。
また実際のところ、現在ABSやTCSを装備している
自動車は割合的にまだまだ少なく、また、これらの装置
は、車両製造工場の生産ラインで取り付けられるもので
あって、所有者個人が購入後に取り付けることはできな
い。これに対して、(前記制動距離延伸の問題を解決す
るために)鉄道では、車輪とレールとの間の摩擦力を増
加させ、スリップを防止する働きのある物質(以下、ス
リップ防止材と呼ぶ)を車輪とレールとの間に噴射する
ことによって、スリップを防止することも行われてい
る。図7に、特開平4−310464号公報に提案され
ている鉄道車両用スリップ防止材噴射装置の概略図を示
す。図7において、コンプレッサ30で圧縮された空気
は元空気溜31に溜められており、バルブ32が開かれ
ると圧縮空気によりタンク33内のスリップ防止材がノ
ズル34から噴出される。スリップ防止材としては、ア
ルミナ等の硬質粒子が用いられている。この方法によれ
ば、車輪とレールとの間の摩擦力が増加することによっ
て車輪のスリップが防止され、かつ減速力の減少も避け
ることができるので、制動距離も短縮されるのである。
しかしながら、図7における方法によると、スリップ防
止材を噴射する装置がかなり大がかりになるため、設置
スペースやコスト面での制約が大きく、自動車等への適
用が困難である。一方、航空機においては、FAA(米
国連邦航空局)の勧告により、例えば民間ジェット機の
着陸必要滑走路長は、着陸距離(通常の着陸で実際にか
かる距離)の1.92倍(滑走路面湿潤時の場合)と定
められているため、積雪などにより滑走路が滑りやすい
状態になると、着陸を見送らざるを得ない場合がしばし
ば見られる。航空機において着陸後停止までの車輪走行
時の車輪のスリップ防止装置として従来からABSが用
いられているが、車輪と走行路との間の摩擦力を増加さ
せるものではないので、大きなスリップは防止できても
所定の制動距離内で停止することができないのである。
今のところ、制動距離を短縮するための方策はほとんど
行われていないのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術によれば、
車輪のスリップ防止装置の使用に際して手間や時間等が
かかり、或いは車輪のスリップ防止装置の使用により加
速力や減速力の減少を伴うという問題点があった。また
従来の技術によれば、車輪のスリップ防止装置の構成が
大がかりになるため、設置スペースやコストでの制約が
大きく、取り付けや交換も容易ではないという問題点が
あった。本発明の目的は、使用に際して手間や時間等が
かからず、しかも雪道のみならずアイスバーンや湿潤路
面等一般に摩擦係数の小さい路面上でも効力を発揮し、
さらに加速力や減速力の減少を伴わない車輪のスリップ
防止方法を提供することにある。本発明の他の目的は、
簡単な構成からなり、設置のためのスペースやコストの
負担が少なく、取り付けや交換が容易にできる車輪のス
リップ防止装置を提供することにある。本発明のまた他
の目的は、加速時、減速時、及び操舵時のいずれにおい
ても、必要時には増粘着材噴射装置を動作させることの
できる車輪のスリップ防止装置の制御方法を提供するこ
とにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、車輪で
走行する移動体(以下、移動体と略記する)の車輪のス
リップ現象を防止する方法であって、移動体に駆動力及
び制動力を与える、車輪と走行路との間の摩擦力を増加
させる働きのある粉末、粒体、液体、粘着性流体、ある
いはこれらの物質の任意の混合物(以下、これらの物質
全てを総称して増粘着材と呼ぶ)を、移動体に取り付け
られたカートリッジ式ボンベから、車輪と走行路との接
地面に噴射或いは車輪に直接噴射することにより、接地
面の摩擦力を増加させることにより車輪のスリップ現象
を防止することを特徴とする車輪のスリップ防止方法に
より達成される。本発明の他の目的は、移動体の車輪の
スリップを防止するための装置であって、増粘着材を噴
射する装置と、噴射装置を動作させる制御装置とを備
え、前記噴射装置が、増粘着材を封入したカートリッジ
式ボンベと、それを支持するホルダーと、増粘着材の噴
射のためのバルブ及びノズルとから構成されていること
を特徴とする車輪のスリップ防止装置により達成され
る。本発明の好ましい実施様態においては、増粘着材を
封入したカートリッジ式ボンベ内が、増粘着材の封入領
域と、増粘着材を噴射するための加圧ガスの封入領域と
に分割されている。本発明のまた他の目的は、前記車輪
のスリップ防止装置の制御方法であって、移動体から与
えられる制御情報が、運転者自らが出した指令であるこ
とを特徴とする前記車輪のスリップ防止装置の制御方法
により達成される。本発明の好ましい実施様態において
は、移動体から与えられる制御情報が、移動体に搭載さ
れているABS及びTCSから得られる情報、移動体の
前後方向及び左右方向の加速度を測定する縦Gセンサー
及び横Gセンサーからの情報、移動体の進行方向を変え
る操舵装置の操舵量を測定するヨー角センサーからの情
報、及び移動体の速度センサーからの情報であり、これ
らの情報を受信した制御装置が増粘着材噴射装置の動作
を決定する。即ち、増粘着材噴射装置は加速時、減速
時、操舵時のいずれにおいても自動制御により動作させ
ることができる。本発明のさらに好ましい実施様態にお
いては、移動体から与えられる制御情報が、運転者自ら
が出した指令に加えて、移動体に搭載されているABS
及びTCSから得られる情報、移動体の前後方向及び左
右方向の加速度を測定する縦Gセンサー及び横Gセンサ
ーからの情報、移動体の進行方向を変える操舵装置の操
舵量を測定するヨー角センサーからの情報、及び移動体
の速度センサーからの情報であり、これらの情報を受信
した制御装置が、増粘着材噴射装置の動作を決定する。
即ち、増粘着材噴射装置は加速時、減速時、操舵時、或
いはそれら以外の時でも自動制御或いは手動制御により
動作させることができる。
【0006】
【作 用】本発明によれば、車輪と走行路との接地面
に、或いは車輪踏面に増粘着材を噴射することにより、
接地面の摩擦力を増加させることができるため、手間や
時間等をかけずに、車輪で走行する移動体の車輪のスリ
ップ現象を防止することが可能となる。特にアイスバー
ンや湿潤路面等一般に摩擦係数の小さい路面上でも増粘
着材を噴射することによる摩擦力の増加が期待できるた
め、加速力や減速力の減少を伴わずに車輪のスリップを
防止することが可能となる。また、本発明によれば、増
粘着材を噴射する噴射装置が、増粘着材を封入したカー
トリッジ式ボンベと、それを支持するホルダーと、増粘
着材を噴射するためのバルブ及びノズルとから比較的簡
単に構成されているため、設置スペースやコストの面で
の負担を少なくすることが可能となる。また、本発明に
よれば、増粘着材はカートリッジ式ボンベ内に封入され
ているので、後からの取り付けや交換が容易に可能にな
る。本発明の好ましい実施様態によれば、前記カートリ
ッジ式ボンベ内が、増粘着材の封入領域と、増粘着材を
噴射するための加圧ガスの封入領域とに分割されている
ため、増粘着材として、粒子の大きい粒体を用いること
が可能となる。さらに、本発明によれば、移動体から与
えられる制御情報が、運転者自らが出した指令であるた
め、いかなる場合でも、運転者の判断により車輪のスリ
ップ防止装置を動作させることが可能となる。本発明の
好ましい実施様態によれば、移動体から与えられる制御
情報が、移動体に搭載されているABS及びTCSから
得られる情報、移動体の前後方向及び左右方向の加速度
を測定する縦Gセンサー及び横Gセンサーからの情報、
移動体の進行方向を変える操舵装置の操舵量を測定する
ヨー角センサーからの情報、及び移動体の速度センサー
からの情報であり、これらの情報を受信した制御装置が
増粘着材噴射装置の動作を決定するため、加速時、減速
時、操舵時のいずれにおいても増粘着材噴射装置を自動
制御により動作させることが可能となる。本発明のさら
に好ましい実施様態によれば、移動体から与えられる制
御情報が、運転者自らが出した指令に加えて、移動体に
搭載されているABS及びTCSから得られる情報、移
動体の前後方向及び左右方向の加速度を測定する縦Gセ
ンサー及び横Gセンサーからの情報、移動体の進行方向
を変える操舵装置の操舵量を測定するヨー角センサーか
らの情報、及び移動体の速度センサーからの情報であ
り、これらの情報を受信した制御装置が増粘着材噴射装
置の動作を決定するため、加速時、減速時、操舵時、或
いはそれら以外の時でも、移動体の車輪のスリップ防止
に幅広く対応することが可能となる。
【0007】
【実施例】以下、添付図面に基づいて、本発明の実施例
につき詳細に説明を加える。図1、図2、図3は本発明
の実施例にかかる増粘着剤噴射装置の構成を表す概略図
である。図4(A)、(B)、(C)は、本発明の実施
例にかかる車輪のスリップ防止装置の使用例を概略的に
示す移動体底面図である。ただし、図4(A)は自動車
において使用した場合の底面図、図4(B)は鉄道車両
において使用した場合の底面(部分)図、図4(C)は
航空機において使用した場合の底面図である。図5は、
本発明の実施例にかかる車輪のスリップ防止装置の制御
方法の概略を示すフローチャートである。図1に示すよ
うに、移動体に設置される増粘着材噴射装置11は、増
粘着材を封入したカートリッジ式ボンベ1と、増粘着材
を噴射させるためのバルブ3とノズル4とから構成され
る。カートリッジ式ボンベ1は、ホルダー2によって移
動体に取り付けられる。制御装置12の指令により、バ
ルブ3が開かれると、カートリッジ式ボンベ1内の増粘
着材がノズル4より車輪と走行路との接地面に噴射或い
は車輪に直接噴射される。 ここで、増粘着材とは、車
輪と走行路との間の摩擦力を増加させる働きのある粉
末、粒体、液体、粘着性流体、或いはこれらの物質の任
意の混合物等のことである。図2は、図1における増粘
着材噴射装置11において、カートリッジ式ボンベ1の
設置箇所に融通をきかせるために、バルブ3とノズル4
との間に増粘着材を送るためのチューブ5を設けた増粘
着材噴射装置11を示している。この方法は、特に車輪
27踏面上に直接増粘着材を噴射する場合に有効であ
る。図3は、図1におけるカートリッジ式ボンベ1内
を、増粘着材の封入領域6と増粘着材を噴射するための
加圧ガス封入領域7とに分割したものである。制御装置
12によりバルブ8が開かれると、加圧ガス封入領域7
内の加圧ガスがバルブ8を通して増粘着材封入領域6に
送り込まれ、増粘着材が増粘着材噴射用管9から噴射さ
れる。この装置によって、増粘着材のうち粒子の大きな
粒体も噴射することが可能となる。図4(A)に示すよ
うに、自動車10に設置された車輪のスリップ防止装置
は、増粘着剤噴射装置11とその噴射を制御する制御装
置12とから構成される。増粘着剤噴射装置11は自動
車10の前輪13及び後輪14の前部又は上部に設置さ
れ、制御装置12は、運転者操作スイッチ15、ABS
16、TCS17、縦Gセンサー18、横Gセンサー1
9、ヨー角センサー20、及び速度センサー21からの
情報を受け、必要に応じて増粘着剤噴射装置11を動作
させる。図4(B)に示すように、鉄道車両22に設置
された車輪のスリップ防止装置は、増粘着剤噴射装置1
1とその噴射を制御する制御装置12とから構成され
る。増粘着剤噴射装置11は鉄道車両22の各車輪24
の台車23前後方向外側部分に設置され、制御装置12
は、運転者操作スイッチ15及びABS16からの情報
を受け、必要に応じて鉄道車両の進行方向前側の増粘着
剤噴射装置11を動作させる。図4(C)に示すよう
に、航空機25に設置された車輪のスリップ防止装置
は、増粘着剤噴射装置11とその噴射を制御する制御装
置12とから構成される。増粘着剤噴射装置11は航空
機25の車輪26の前部又は上部に設置され、制御装置
12は、運転者操作スイッチ15及びABS16からの
情報を受け、必要に応じて増粘着剤噴射装置11を動作
させる。図5に示すように、増粘着材噴射装置11は、
移動体運転者自らのマニュアル操作により随時動作させ
ることができる。また、ABS、TCS、縦Gセンサ
ー、横Gセンサー、ヨー角センサー、及び速度センサー
から与えられる情報により、制御装置12の判断により
増粘着材噴射装置11を動作させることもできる。さら
には、両者の制御方法を兼ね備えることにより、使用条
件の幅を大きく広げることができる。
【0008】このように構成された車輪のスリップ防止
装置の動作及び制御方法をを以下に説明する。まず、図
4(A)の自動車10の場合、減速時、加速時、操舵時
全てにおいて、増粘着材噴射装置が動作される可能性が
ある。図5を参考に説明していく。減速時においては、
ブレーキ力が強く車輪がスリップをしはじめるとABS
が動作してブレーキ力が弱められる。この時、車輪と走
行路との間の摩擦力が非常に小さいとブレーキ力は常に
弱められたままであるので、自動車10は十分に減速す
ることができない。このことは、縦Gが小さいというか
たちで縦Gセンサーで検知される。すると、制御装置1
2は増粘着材噴射装置11を動作させ増粘着材が噴射さ
れるのである。加速時においては、アクセル開度が大き
く車輪がスリップをしはじめるとTCSが動作して駆動
力が弱められる。この時、車輪と走行路との間の摩擦力
が非常に小さいと駆動力は常に弱められたままであるの
で、自動車10は十分に加速することができない。この
ことは縦Gが小さいというかたちで縦Gセンサーで検知
される。すると、制御装置12は増粘着材噴射装置11
を動作させ増粘着材が噴射されるのである。操舵時に、
車輪と走行路との間の摩擦力が小さいと、自動車10は
スピンをしはじめることがある。スピンをしはじめると
自動車10は案内力を失い、ハンドルを切っても曲がれ
ずに滑っていく。この状態を、ヨー角センサー、横Gセ
ンサー、速度センサーによって検知し、これらの情報を
もとに、制御装置12は増粘着財噴射装置11の動作を
決定するのである。さらに、以上の時以外にも運転者操
作スイッチのマニュアル操作により、必要時にはいつで
も、増粘着材噴射装置11を動作させ増粘着材を噴射さ
せることができる。さて、制御装置12が増粘着材噴射
装置11を動作させると、増粘着材噴射装置11のバル
ブ3が開かれる。すると、カートリッジ式ボンベ1内の
増粘着材がノズル4から車輪と走行路との間に、或いは
車輪踏面に噴射される。増粘着材は車輪と走行路との間
の摩擦力を増加させるため、車輪のスリップを防止する
ことができるのである。また、自動車10の場合は、増
粘着材として、粒子の大きい粒体を用いたほうが望まし
い場合がある。この時は、図3に記載の増粘着材噴射装
置を用いるが、制御方法及び動作については、前記の制
御方法及び動作と同様である。
【0009】次に、図4(B)の鉄道車両22の場合、
減速時、加速時において、増粘着材噴射装置が動作され
る可能性がある。鉄道車両22の場合は、減速時及び加
速時にスリップが生じても、車両の減速度及び加速度に
自動車ほどの顕著な変化は見られない。そこで、鉄道車
両22に搭載されている一般的なABSや車輪の空転を
検知する空転検知装置などからの車輪の回転速度の情報
をもとに、増粘着材噴射装置11の動作が決定されるの
である。即ち、一部の車輪の回転速度が他の車輪の回転
速度よりも大きかったり小さかったりした場合に、制御
装置12は増粘着材噴射装置11を動作させ増粘着材が
噴射されるのである。また、必要な時にはいつでも、運
転者操作スイッチのマニュアル操作により増粘着材噴射
装置11を動作させ増粘着材を噴射させることができ
る。例えば、湿潤路面上での曲線通過時の案内力の確保
や向上を目的に、増粘着材を噴射することが考えられ
る。
【0010】最後に図4(C)の航空機25の場合、航
空機25の着陸後停止までの車輪走行中に、増粘着材噴
射装置が動作される可能性がある。航空機25の場合に
は、自動車10の場合と同様、ABSと縦Gセンサーと
の併用により増粘着材噴射装置11の動作が決定され
る。即ち、ブレーキ力が強く車輪がスリップをしはじめ
るとABSが動作してブレーキ力が弱められる。この
時、車輪と走行路との間の摩擦力が非常に小さいとブレ
ーキ力は常に弱められたままであるので、航空機25は
減速することができない。このことは、縦Gが小さいと
いうかたちで縦Gセンサーで検知される。すると、制御
装置12は増粘着材噴射装置11を動作させ増粘着材が
噴射されるのである。また、必要な時にはいつでも、運
転者操作スイッチのマニュアル操作により増粘着材噴射
装置11を動作させ増粘着材を噴射させることができ
る。
【0011】本実施例によれば、車輪で走行する移動体
の車輪と走行路との間に、或いは車輪踏面に増粘着材を
噴射することによって、車輪と走行路との間の摩擦力を
増加させることができるので、手間や時間をかけずに車
輪のスリップを防止することができる。特に、従来の技
術では対応しきれなかったアイスバーン上や湿潤路面上
等摩擦係数の小さい路面上でもその効果を発揮すること
ができる。さらに、ABSやTCSでの問題点であった
減速力や加速力の減少の問題も同時に解決することがで
きる。また、本実施例によれば、増粘着材噴射装置11
はカートリッジ式ボンベ1を用いて比較的簡単に構成す
ることができるので、設置スペースやコストの面での負
担が少なく、また、取り付けや交換が容易に可能にな
る。また、本実施例によれば、特に自動車の場合には、
所有者が自動車購入後に任意に増粘着材噴射装置11を
取り付け又は交換することが可能となる。また特に鉄道
車両の場合には、増粘着材噴射装置11がカートリッジ
式ボンベ方式になることにより、設置スペースやコスト
の面での負担が少なくなるので、加速時や減速時の車輪
のスリップ防止のためのみならず、湿潤路面上での曲線
通過時の案内力の確保や向上のために使用することも可
能となる。また特に航空機の場合には、増粘着材の使用
によって車輪と走行路との間の摩擦力を増加させること
ができるため、滑走路面状態に関する制限を小さくする
事が可能となる。本発明は、以上の実施例に限定される
ことなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内
で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内
に包含されるものであることはいうまでもない。例え
ば、移動体は、自動車、鉄道車両、航空機に限定される
ものではなく、車輪と走行路との間の摩擦力により、加
速力及び減速力を得るもの全てを含む。また、増粘着材
の材料は、車輪と走行路との間の摩擦力を増加させる働
きのある物質全てを含む。
【0012】
【発明の効果】本発明によれば、使用に際して手間や時
間等がかからず、しかも雪道のみならずアイスバーンや
湿潤路面等一般に摩擦係数の小さい路面上でも効力を発
揮し、さらに加速力や減速力の減少を伴わない車輪のス
リップ防止方法を提供する事が可能になる。さらに、本
発明によれば、簡単な構成からなるため、設置スペース
やコストの負担が少なく、取り付けや交換が容易にでき
る車輪のスリップ防止装置を提供する事が可能になる。
さらに、本発明によれば、加速時、減速時、及び操舵時
のいずれにおいても、必要時には増粘着材噴射装置を動
作させることのできる車輪のスリップ防止装置の制御方
法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例にかかわる増粘着材噴
射装置の構成を表す概略図である。
【図2】図2は、本発明の実施例にかかわる増粘着材噴
射装置の構成を表す概略図である。
【図3】図3は、本発明の実施例にかかわる増粘着材噴
射装置の構成を表す概略図である。
【図4】図4(A)は、本発明の実施例にかかわる車輪
のスリップ防止装置を自動車に適用した例を概略的に示
す自動車底面図である。図4(B)は、本発明の実施例
にかかわる車輪のスリップ防止装置を鉄道車両に適用し
た例を概略的に示す鉄道車両底面(部分)図である。図
4(C)は、本発明の実施例にかかわる車輪のスリップ
防止装置を航空機に適用した例を概略的に示す航空機底
面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例にかかわる車輪のスリ
ップ防止装置の制御方法の概略を示すフローチャートで
ある。
【図6】図6は、従来のスリップ防止装置の一例を示す
ABSの構成を表す概略図である。
【図7】図7は、従来のスリップ防止装置の一例を示す
鉄道車両用スリップ防止材噴射装置の構成を表す概略図
である。
【符号の説明】
1 カートリッジ式ボンベ 2 ホルダー 3 バルブ 4 ノズル 5 チューブ 6 増粘着材封入領域 7 加圧ガス封入領域 8 バルブ 9 増粘着材噴射用管 10 自動車 11 増粘着材噴射装置 12 制御装置 13 前輪 14 後輪 15 運転者操作スイッチ 16 ABS 17 TCS 18 縦Gセンサー 19 横Gセンサー 20 ヨー角センサー 21 速度センサー 22 鉄道車両 23 台車 24 車輪 25 航空機 26 車輪 27 車輪 28 ブレーキディスク 29 ブレーキパッド 30 コンプレッサ 31 元空気溜 32 バルブ 33 タンク 34 ノズル

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車輪で走行する移動体の車輪のスリップ
    現象を防止する方法であって、 車輪で走行する移動体に駆動力及び制動力を与える、車
    輪と走行路との間の摩擦力を増加させる働きのある物質
    を、車輪で走行する移動体に取り付けられたカートリッ
    ジ式ボンベから、車輪と走行路との接地面に噴射或いは
    車輪に直接噴射することにより、 接地面の摩擦力を増加させ、車輪のスリップ現象を防止
    することを特徴とする車輪のスリップ防止方法。
  2. 【請求項2】 車輪で走行する移動体の車輪のスリップ
    現象を防止する装置であって、 前記摩擦力を増加させる働きのある物質を噴射する噴射
    装置と、該噴射装置を動作させる制御装置とを備え、 該噴射装置が、前記摩擦力を増加させる働きのある物質
    を封入したカートリッジ式ボンベと、該カートリッジ式
    ボンベを支持するホルダーと、前記摩擦力を増加させる
    働きのある物質を噴射するためのバルブ及びノズルとか
    ら構成されていることを特徴とする車輪のスリップ防止
    装置。
  3. 【請求項3】 請求項2において、前記摩擦力を増加さ
    せる働きのある物質を封入したカートリッジ式ボンベ内
    が、前記摩擦力を増加させる働きのある物質の封入領域
    と、前記摩擦力を増加させる働きのある物質を噴射する
    ための加圧ガスの封入領域とに分割されていることを特
    徴とする請求項2記載の車輪のスリップ防止装置。
  4. 【請求項4】 前記車輪のスリップ防止装置の制御方法
    において、 車輪で走行する移動体から与えられる制御情報が、運転
    者自らが出した指令であることを特徴とする車輪のスリ
    ップ防止装置の制御方法。
  5. 【請求項5】 前記車輪のスリップ防止装置の制御方法
    において、 車輪で走行する移動体から与えられる制御情報が、車輪
    で走行する移動体に搭載されているアンチロックブレー
    キシステム及びトラクションコントロールシステムから
    の情報、車輪で走行する移動体の前後方向及び左右方向
    の加速度を測定する縦Gセンサー及び横Gセンサーから
    の情報、車輪で走行する移動体の進行方向を変える操舵
    装置の操舵量を測定するヨー角センサーからの情報、及
    び車輪で走行する移動体の速度センサーからの情報であ
    り、 前記全情報を受信した前記制御装置が前記噴射装置の動
    作を決定することを特徴とする車輪のスリップ防止装置
    の制御方法。
  6. 【請求項6】 前記車輪のスリップ防止装置の制御方法
    において、 車輪で走行する移動体から与えられる制御情報が、運転
    者自らが出した指令であることに加えて、車輪で走行す
    る移動体に搭載されているアンチロックブレーキシステ
    ム及びトラクションコントロールシステムからの情報、
    車輪で走行する移動体の前後方向及び左右方向の加速度
    を測定する縦Gセンサー及び横Gセンサーからの情報、
    車輪で走行する移動体の操舵装置の舵角を測定するヨー
    角センサーからの情報、及び車輪で走行する移動体の速
    度センサーからの情報であり、 前記全情報を受信した前記制御装置が前記噴射装置の動
    作を決定することを特徴とする車輪のスリップ防止装置
    の制御方法。
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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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