JPH08144066A - 加窒ステンレス鋼層形成方法及び鋼 - Google Patents

加窒ステンレス鋼層形成方法及び鋼

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JPH08144066A
JPH08144066A JP30423594A JP30423594A JPH08144066A JP H08144066 A JPH08144066 A JP H08144066A JP 30423594 A JP30423594 A JP 30423594A JP 30423594 A JP30423594 A JP 30423594A JP H08144066 A JPH08144066 A JP H08144066A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】プロセスの制御が容易で、処理に長い時間がか
かったりエネルギー消費量が多くなったりすることがな
い加窒ステンレス鋼層形成方法を提供する。 【構成】鋼の表面を機械的手段によって清浄にし、前記
鋼の表面に金属粉末混合物を塗布し、レーザービーム3
によって鋼及び金属粉末混合物を走査して鋼の表面に加
窒ステンレス鋼層を形成する。そして、前記金属粉末混
合物は、少なくとも鉄粉末と、クロム粉末と、窒化物粉
末とを含有する混合物とする。この場合、レーザービー
ム3によって鋼及び金属粉末混合物を走査すると、発生
した熱によって前記鉄粉末及びクロム粉末が溶融させら
れるとともに、前記窒化物粉末が分解して窒素及び他の
元素が生成される。そして、分解によって生成された窒
素及び他の元素が、溶融させられた鉄粉末及びクロム粉
末に溶解する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加窒ステンレス鋼層形
成方法及び鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、鋼は耐食性が低く、特に孔食、す
きま腐食等の局部腐食に弱いので、鋼に各種の特殊元素
を加えてステンレス鋼にしている。例えば、含窒素ステ
ンレス鋼は、耐摩耗性が高いだけでなく、耐孔食性が高
いことが知られており、加圧式誘導溶融法、プラズマ溶
融法、熱間等静圧溶融法、加圧式エレクトロスラグ精製
法等の方法によって製造される。
【0003】また、鋼の耐摩耗性及び耐食性を高くする
ために、鋼の表面に窒化物層を形成することも可能であ
り、そのための方法としてイオン窒化法及びプラズマ窒
化法の製造方法が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来の含窒素ステンレス鋼を製造する方法においては、高
温及び高圧のプロセスが含まれるので、該プロセスの制
御が困難になってしまう。また、鋼の表面に窒化物層を
形成する方法においては、真空雰囲気下で窒化物層を形
成する必要があるので、処理に長い時間がかかるだけで
なくエネルギーの消費量が多くなってしまう。
【0005】本発明は、前記従来の含窒素ステンレス鋼
を製造する方法や鋼の表面に窒化物層を形成する方法等
の問題点を解決し、プロセスの制御が容易で、処理に長
い時間がかかったり、エネルギーの消費量が多くなった
りすることがない加窒ステンレス鋼層形成方法及び鋼を
提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】そのために、本発明の加
窒ステンレス鋼層形成方法においては、鋼の表面を機械
的手段によって清浄にし、前記鋼の表面に金属粉末混合
物を塗布し、レーザービームによって鋼及び金属粉末混
合物を走査して鋼の表面に加窒ステンレス鋼層を形成す
る。
【0007】そして、前記金属粉末混合物は、少なくと
も鉄粉末と、クロム粉末と、窒化物粉末とを含有する混
合物とする。本発明の他の加窒ステンレス鋼層形成方法
においては、鋼の表面を機械的手段によって清浄にし、
前記鋼の表面にステンレス粉末混合物を塗布し、レーザ
ービームによって鋼及びステンレス粉末混合物を走査し
て鋼の表面に加窒ステンレス鋼層を形成する。
【0008】そして、前記ステンレス粉末混合物は少な
くともステンレス粉末と、窒化物粉末とを含有する混合
物とする。本発明の更に他の加窒ステンレス鋼層形成方
法においては、前記窒化物粉末の量が金属粉末の1〜3
〔重量%〕である。本発明の更に他の加窒ステンレス鋼
層形成方法においては、前記レーザービームによる走査
は、シールドガスの中で行われる。
【0009】
【作用】本発明によれば、前記のように加窒ステンレス
鋼層形成方法においては、鋼の表面を機械的手段によっ
て清浄にし、前記鋼の表面に金属粉末混合物を塗布し、
レーザービームによって鋼及び金属粉末混合物を走査し
て鋼の表面に加窒ステンレス鋼層を形成する。
【0010】そして、前記金属粉末混合物は、少なくと
も鉄粉末と、クロム粉末と、窒化物粉末とを含有する混
合物とする。この場合、前記レーザービームによって鋼
及び金属粉末混合物を走査すると、発生した熱によって
前記鉄粉末及びクロム粉末が溶融させられるとともに、
前記窒化物粉末が分解して窒素及び他の元素が生成され
る。そして、分解によって生成された窒素及び他の元素
が、溶融させられた鉄粉末及びクロム粉末に溶解する。
【0011】本発明の他の加窒ステンレス鋼層形成方法
においては、鋼の表面を機械的手段によって清浄にし、
前記鋼の表面にステンレス粉末混合物を塗布し、レーザ
ービームによって鋼及びステンレス粉末混合物を走査し
て鋼の表面に加窒ステンレス鋼層を形成する。そして、
前記ステンレス粉末混合物は少なくともステンレス粉末
と、窒化物粉末とを含有する混合物とする。
【0012】この場合、前記レーザービームによって鋼
及びステンレス粉末混合物を走査すると、発生した熱に
よって前記ステンレス粉末が溶融させられるとともに、
前記窒化物粉末が分解して窒素及び他の元素が生成され
る。そして、分解によって生成された窒素及び他の元素
が、溶融させられたステンレス粉末に溶解する。
【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照し
ながら詳細に説明する。本発明においては、鋼として炭
素鋼が使用されるが、該炭素鋼に代えて他の鋼、合金
鋼、特殊合金鋼等を使用することもできる。そして、加
窒ステンレス鋼層を形成するために、窒化けい素、窒化
チタン、窒化アルミニウム、窒化ほう素、窒化クロム、
窒化タングステン等の窒化物粉末と各種の金属粉末とが
混合される。なお、前記窒化物粉末の使用量は金属粉末
の1〜3〔重量%〕とする。
【0014】また、該金属粉末としては、鉄粉末、クロ
ム粉末、モリブデン粉末、ニッケル粉末、ステンレス粉
末等を使用することができるが、これらに限られるもの
ではない。本実施例においては、二つ以上の金属粉末
と、窒化物粉末とを混合した金属粉末混合物、又はステ
ンレス粉末と窒化物粉末とを混合したステンレス粉末混
合物が使用される。そして、二つ以上の金属粉末とし
て、例えば、鉄粉末及びクロム粉末の組合せ、鉄粉末、
クロム粉末及びニッケル粉末の組合せ、又は鉄粉末、ク
ロム粉末及びモリブデン粉末の組合せが使用される。
【0015】本発明においては、レーザービームによる
処理が行われるようになっている。そして、前記レーザ
ービームによる処理の間に金属粉末によってステンレス
鋼層が形成されるように、前記金属粉末は少なくとも鉄
粉末及びクロム粉末を含有しなければならない。また、
前記金属粉末の種類又は量を変更することによって、ス
テンレス鋼層の組織を調節することができる。例えば、
フェライト系の、又はフェライト系とオーステナイト系
との二相の加窒されたステンレス鋼層を鋼の表面に形成
することができる。
【0016】そして、加窒ステンレス鋼層形成方法を実
施するに当たり、金属粉末と窒化物粉末とを混合した金
属粉末混合物、又はステンレス粉末と窒化物粉末とを混
合したステンレス粉末混合物(以下「粉末混合物」とい
う。)が、例えば、塗布によって鋼の表面に均一に分布
させられる。また、鋼の表面に溝を形成し、該溝内に前
記粉末混合物をあらかじめ置くこともできる。
【0017】また、例えば、鋼の表面に粉末混合物を分
布させようとする場合は、粉末混合物の厚さを1〜1.
5〔mm〕の範囲にする。一方、溝内に粉末混合物を置
く場合は、溝の面積と処理の対象となる試料の表面とを
実質的に等しくしなければならず、また、溝の深さを1
〜1.5〔mm〕の範囲にするのが好ましい。前記溝
は、例えば、機械加工によって形成される。
【0018】なお、前記鋼の表面に粉末混合物を分布さ
せる前に鋼の表面を機械的手段によって清浄にし、鋼の
表面上における酸化物及び不純物を完全に除去する。前
記鋼の表面を清浄にするには、例えば、サンドブラスト
法が用いられる。また、前記レーザービームの走査プロ
セスは、例えば、アルゴンガス又は窒素ガスのシールド
ガスを循環させて冷却しながら、コンピューターによっ
て数値制御されるX−Y加工テーブル上で実施される。
前記レーザービームとしては、例えば、4〜4.5〔k
W〕のパワー出力、9〜10〔kW/cm2 〕のパワー
密度を有するCO2 レーザービームが使用され、走査速
度が60〜75〔cm/min〕にされる。
【0019】そして、鋼及び粉末混合物はレーザービー
ムによって1パス式又は複数パス式で走査することがで
きる。また、前記鋼の表面に形成される加窒ステンレス
鋼層の厚さは、パワー出力、パワー密度及び走査速度を
調節することによって変更することができる。このよう
に、前記レーザービームによって鋼及び粉末混合物が走
査されると、発生した熱によって前記金属粉末が溶融さ
せられるとともに、前記窒化物粉末が分解されて窒素と
他の元素が生成される。そして、分解によって生成され
た窒素及び他の元素が、溶融させられた金属粉末に溶解
される。
【0020】図1は本発明の実施例1におけるCO2
ーザービームによる表面合金化を示す概略図、図2は本
発明の実施例1における加窒ステンレス鋼層形成方法に
使用される鋼基質を示す図である。 〔実施例1〕図において、1は処理対象となる鋼基質で
あり、本実施例においては、鋼基質としてAISI 1
020炭素鋼を使用した。そして、前記鋼基質1の表面
に、深さが1.0〔mm〕、幅が40〔mm〕、長さが
100〔mm〕の溝2を形成し、該溝2内に粉末混合物
4を置いた。
【0021】本実施例においては、該粉末混合物4は、
平均粒子径が0.6〔μm〕の窒化けい素粉末を1.5
〔重量%〕、平均粒子径が100〔μm〕の鉄粉末を6
8.5〔重量%〕、及び平均粒子径が10〔μm〕のク
ロム粉末を30〔重量%〕含有する。そして、前記鋼基
質1の表面をCO2 レーザービーム3によって1パス式
で走査した。また、該CO2 レーザービーム3のパワー
出力を4〔kW〕、パワー密度を10〔kW/c
2 〕、走査速度を60〔cm/min〕とし、シール
ドガスとしてのアルゴンの流速を12〔l/min〕と
した。
【0022】前記CO2 レーザービーム3によって前記
粉末混合物4を照射すると、鋼基質1の表面に加窒ステ
ンレス鋼層が形成される。該加窒ステンレス鋼層の組成
を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】〔実施例2〕オーバーラップ比が50
〔%〕のCO2 レーザービーム3によって鋼基質1及び
粉末混合物4を複数パスで走査した。このこと以外は実
施例1と同じ手法及び材料を使用した。実施例2におい
て得られた加窒ステンレス鋼層の組成を表1に示す。 〔実施例3〕本実施例においては、鋼基質1としてAI
SI 1020炭素鋼を使用した。そして、前記鋼基質
1の表面に、深さが1.5〔mm〕の溝2を形成し、該
溝2内に粉末混合物4を置いた。
【0025】また、本実施例においては、該粉末混合物
4は、窒化けい素粉末を2〔重量%〕、鉄粉末を68
〔重量%〕、及びクロム粉末を30〔重量%〕含有す
る。前記鋼基質1及び粉末混合物4の表面をCO2 レー
ザービーム3によって1パス式で走査した。また、該C
2 レーザービーム3のパワー出力を4.5〔kW〕、
パワー密度を9〔kW/cm2 〕、走査速度を75〔c
m/min〕とし、アルゴンの流速を12〔l/mi
n〕とした。実施例3において得られた加窒ステンレス
鋼層の組成を表1に示す。 〔実施例4〕本実施例においては、粉末混合物4は、窒
化けい素を2〔重量%〕、モリブデン粉末を5〔重量
%〕、鉄粉末を63〔重量%〕、及びクロム粉末を30
〔重量%〕含有する。このこと以外は実施例3と同じ手
法及び材料を使用した。実施例4において得られた加窒
ステンレス鋼層の組成を表1に示す。 〔実施例5〕本実施例においては、粉末混合物4は、窒
化けい素を2〔重量%〕、鉄粉末を58〔重量%〕、及
びクロム粉末を40〔重量%〕含有する。このこと以外
は実施例3と同じ手法及び材料を使用した。実施例5に
おいて得られた加窒ステンレス鋼層の組成を表1に示
す。 〔実施例6〕本実施例においては、粉末混合物4は、窒
化けい素を2〔重量%〕、鉄粉末を48〔重量%〕、及
びクロム粉末を50〔重量%〕含有する。このこと以外
は実施例3と同じ手法及び材料を使用した。実施例6に
おいて得られた加窒ステンレス鋼層の組成を表1に示
す。 〔実施例7〕本実施例においては、粉末混合物4は、窒
化けい素を2〔重量%〕、鉄粉末を48〔重量%〕、ク
ロム粉末を25〔重量%〕、及びニッケル粉末を25
〔重量%〕含有する。このこと以外は実施例6と同じ手
法及び材料を使用した。実施例7において得られた加窒
ステンレス鋼層の組成を表1に示す。 〔実施例8〕本実施例においては、粉末混合物4は、窒
化けい素を2〔重量%〕、鉄粉末を58〔重量%〕、ク
ロム粉末を25〔重量%〕、及びニッケル粉末を15
〔重量%〕含有する。このこと以外は実施例6と同じ手
法及び材料を使用した。実施例8において得られた加窒
ステンレス鋼層の組成を表1に示す。 〔実施例9〕本実施例においては、粉末混合物4は、窒
化けい素を2〔重量%〕、鉄粉末を50〔重量%〕、ク
ロム粉末を25〔重量%〕、モリブデン粉末を8〔重量
%〕、及びニッケル粉末を15〔重量%〕含有する。こ
のこと以外は実施例6と同じ手法及び材料を使用した。
実施例9において得られた加窒ステンレス鋼層の組成を
表1に示す。 〔実施例10〕本実施例においては、粉末混合物4は、
窒化けい素を3〔重量%〕、鉄粉末を62〔重量%〕、
及びクロム粉末を35〔重量%〕含有する。このこと以
外は実施例6と同じ手法及び材料を使用した。実施例1
0において得られた加窒ステンレス鋼層の組成を表1に
示す。
【0026】図3は本発明の実施例2における窒素の結
合エネルギーを示す図である。図において、NASLは
実施例2において得られた加窒ステンレス鋼層の窒素の
結合エネルギーを示すN1SXPSスペクトル、P900
N SSは市販品のP900Nステンレス鋼の窒素(窒
素の含有量が高く、0.9〔重量%〕である。)の結合
エネルギーを示すN1SXPSスペクトル、Si3 4
実施例2において使用された窒化けい素の窒素の結合エ
ネルギーを示すN1SXPSスペクトルである。
【0027】この場合、各結合エネルギーは、XPS
(X線光電スペクトル、xps)分析法によって測定し
た。前記窒化けい素の窒素の結合エネルギーを示すN1S
XPSスペクトルは400.3〔eV〕において1個の
ピークを有し、P900Nステンレス鋼の窒素の結合エ
ネルギーを示すN1SXPSスペクトルは397.1〔e
V〕において1個のピークを有する。このことは、窒素
がP900Nステンレス鋼の中で固溶体の溶質になり、
結合エネルギーが397.1〔eV〕まで近づいたこと
を意味する。
【0028】一方、実施例2において得られた加窒ステ
ンレス鋼層の窒素の結合エネルギーを示すN1SXPSス
ペクトルは、397.3〔eV〕に1つのピークを有
し、該ピークの値は、P900Nステンレス鋼の窒素の
結合エネルギーを示すN1SXPSスペクトルのピークの
値とほぼ等しい。したがって、前記加窒ステンレス鋼層
の窒素の含有量とP900Nステンレス鋼の窒素の含有
量とはほぼ同じレベルである。
【0029】図4は本発明の実施例2で得られた加窒ス
テンレス鋼層の金属組織の断面を示す写真、図5は本発
明の実施例2で得られた加窒ステンレス鋼層の金属組織
の平面を示す写真、図6は本発明の実施例7で得られた
加窒ステンレス鋼層の金属組織の断面を示す写真であ
る。図4及び6から、鋼基質の上に加窒ステンレス鋼層
が形成されていることが分かる。また、図5において、
白い部分はオーステナイトであり、黒い部分はフェライ
トである。一般に、窒素を多く含有する鋼においては、
オーステナイトの部分が多くなるが、加窒ステンレス鋼
層においてはオーステナイトの部分が多いことが分か
る。
【0030】次に、本発明の各実施例で得られた加窒ス
テンレス鋼層の耐食性について説明する。図7は本発明
の実施例1、3及び4における加窒ステンレス鋼層と二
相ステンレス鋼との耐食性の比較図、図8は本発明の実
施例2における加窒ステンレス鋼層とフェライト系43
0ステンレス鋼との耐食性の比較図、図9は本発明の実
施例5及び6における加窒ステンレス鋼層とP900N
ステンレス鋼との耐食性の比較図、図10は本発明の実
施例7から9までにおける加窒ステンレス鋼層とオース
テナイト系316Lステンレス鋼との耐食性の比較図で
ある。なお、図において、横軸に電流密度を、縦軸に電
位を採ってある。
【0031】この場合、各実施例で得られた加窒ステン
レス鋼層の耐食性を、電位動力学的分極試験によって評
価した。図7において、1、3、4は、それぞれ実施例
1、3及び4による加窒ステンレス鋼層の電位動力学的
分極曲線、2205 SSはSAF2205フェライト
系とオーステナイト系との二相ステンレス鋼の電位動力
学的分極曲線である。この場合、脱気された中性の3.
5〔重量%〕NaCl溶液に加窒ステンレス鋼層及び二
相ステンレス鋼を浸漬(しんせき)した。
【0032】図8において、2は実施例2による加窒ス
テンレス鋼層の電位動力学的分極曲線、430 SSは
フェライト系430ステンレス鋼の電位動力学的分極曲
線である。この場合、脱気されたpH4の中性の3.5
〔重量%〕NaCl溶液に加窒ステンレス鋼層及びフェ
ライト系430ステンレス鋼を浸漬した。図9におい
て、5、6は、それぞれ実施例5及び6による加窒ステ
ンレス鋼層の電位動力学的分極曲線、P900N SS
は窒素の含有量が高いP900Nステンレス鋼の電位動
力学的分極曲線である。この場合、脱気された中性の
3.5〔重量%〕NaCl溶液に加窒ステンレス鋼層及
びP900Nステンレス鋼を浸漬した。
【0033】図10において、7、8、9は、それぞれ
実施例7、8及び9による加窒ステンレス鋼層の電位動
力学的分極曲線、316L SSはオーステナイト系3
16Lステンレス鋼の電位動力学的分極曲線である。こ
の場合、脱気されたpH4の中性の3.5〔重量%〕N
aCl溶液に加窒ステンレス鋼層及びオーステナイト系
316Lステンレス鋼を浸漬した。
【0034】これらの電位動力学的分極曲線から分かる
ように、各実施例で得られた加窒ステンレス鋼層は、各
ステンレス鋼と同じレベルの電位を有する。したがっ
て、加窒ステンレス鋼層の耐食性は、既知のステンレス
鋼の耐食性より劣っていないことが分かる。また、図5
から、加窒ステンレス鋼層と鋼基質1との密着性が良好
であることも分かる。
【0035】窒素の含有量が高いステンレス鋼の含有窒
素量が0.5〔重量%〕であるのに対して、加窒ステン
レス鋼層の窒素含量は0.6〔重量%〕である。このよ
うに、レーザービームの表面合金化法(LSA)によっ
て鋼の表面に加窒ステンレス鋼層すると、耐食性を高く
することができるだけでなく、鋼の強度及び靱性を高く
することができる。また、エネルギーの消費を少なくす
ることができるとともに、コストを低くすることもでき
る。
【0036】前記電位動力学的分極曲線は、EG&G社
の273型の電位計を使用して作成した。次に、該電位
計について説明する。図11は本発明の実施例における
電位計を示す図である。図に示すように、加窒ステンレ
ス鋼層及び各ステンレス鋼から成る試料10、飽和カロ
メル電極(SCE)13及びPt電極12を、3.5
〔重量%〕NaCl溶液11に浸漬し、前記飽和カロメ
ル電極13及びPt電極12をポテンシオスタット14
に接続するとともに、該ポテンシオスタット14をIE
EE規格488バス16を介して表示装置15と接続す
る。電位走査を行うに先だって、−1200〔mV/S
CE〕に対する相対的電位を前記ポテンシオスタット1
4に5分間印加した後、−1000〔mV/SCE〕か
ら陽極まで1〔mV/s〕の速度で電位走査を行った。
【0037】なお、本発明は前記実施例に限定されるも
のではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させるこ
とが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するも
のではない。
【0038】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
れば、加窒ステンレス鋼層形成方法においては、鋼の表
面を機械的手段によって清浄にし、前記鋼の表面に金属
粉末混合物を塗布し、レーザービームによって鋼及び金
属粉末混合物を走査して鋼の表面に加窒ステンレス鋼層
を形成する。
【0039】そして、前記金属粉末混合物は、少なくと
も鉄粉末と、クロム粉末と、窒化物粉末とを含有する混
合物とする。この場合、レーザービームによって前記鉄
粉末及びクロム粉末が溶融させられるとともに、前記窒
化物粉末が分解して窒素及び他の元素が生成される。そ
して、窒素及び他の元素が、溶融させられた鉄粉末及び
クロム粉末に溶解する。
【0040】したがって、耐食性を高くすることができ
るだけでなく、鋼の強度及び靱性を高くすることができ
る。本発明の他の加窒ステンレス鋼層形成方法において
は、鋼の表面を機械的手段によって清浄にし、前記鋼の
表面にステンレス粉末混合物を塗布し、レーザービーム
によって鋼及びステンレス粉末混合物を走査して鋼の表
面に加窒ステンレス鋼層を形成する。
【0041】そして、前記ステンレス粉末混合物は少な
くともステンレス粉末と、窒化物粉末とを含有する混合
物とする。この場合、レーザービームによって前記ステ
ンレス粉末が溶融させられるとともに、前記窒化物粉末
が分解して窒素及び他の元素が生成される。そして、窒
素及び他の元素が、溶融させられたステンレス粉末に溶
解する。
【0042】したがって、耐食性を高くすることができ
るだけでなく、鋼の強度及び靱性を高くすることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1におけるCO2 レーザービー
ムによる表面合金化を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例1における加窒ステンレス鋼層
形成方法に使用される鋼基質を示す図である。
【図3】本発明の実施例2における窒素の結合エネルギ
ーを示す図である。
【図4】本発明の実施例2で得られた加窒ステンレス鋼
層の金属組織の断面を示す写真である。
【図5】本発明の実施例2で得られた加窒ステンレス鋼
層の金属組織の平面を示す写真である。
【図6】本発明の実施例7で得られた加窒ステンレス鋼
層の金属組織の断面を示す写真である。
【図7】本発明の実施例1、3及び4における加窒ステ
ンレス鋼層と二相ステンレス鋼との耐食性の比較図であ
る。
【図8】本発明の実施例2における加窒ステンレス鋼層
とフェライト系430ステンレス鋼との耐食性の比較図
である。
【図9】本発明の実施例5及び6における加窒ステンレ
ス鋼層とP900Nステンレス鋼との耐食性の比較図で
ある。
【図10】本発明の実施例7から9までにおける加窒ス
テンレス鋼層とオーステナイト系316Lステンレス鋼
との耐食性の比較図である。
【図11】本発明の実施例における電位計を示す図であ
る。
【符号の説明】
1 鋼基質 2 溝 3 CO2 レーザービーム 4 粉末混合物

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)鋼の表面を機械的手段によって清
    浄にし、(b)前記鋼の表面に金属粉末混合物を塗布
    し、(c)レーザービームによって鋼及び金属粉末混合
    物を走査して鋼の表面に加窒ステンレス鋼層を形成する
    とともに、(d)前記金属粉末混合物は、少なくとも鉄
    粉末と、クロム粉末と、窒化物粉末とを含有する混合物
    であることを特徴とする加窒ステンレス鋼層形成方法。
  2. 【請求項2】 (a)鋼の表面を機械的手段によって清
    浄にし、(b)前記鋼の表面にステンレス粉末混合物を
    塗布し、(c)レーザービームによって鋼及びステンレ
    ス粉末混合物を走査して鋼の表面に加窒ステンレス鋼層
    を形成するとともに、(d)前記ステンレス粉末混合物
    は少なくともステンレス粉末と、窒化物粉末とを含有す
    る混合物であることを特徴とする加窒ステンレス鋼層形
    成方法。
  3. 【請求項3】 前記鋼が炭素鋼、合金鋼及び特殊合金鋼
    のグループから選ばれた一つの金属である請求項1又は
    2に記載の加窒ステンレス鋼層形成方法。
  4. 【請求項4】 前記窒化物が窒化けい素、窒化チタン、
    窒化アルミニウム、窒化ほう素、窒化クロム及び窒化タ
    ングステンのグループから選ばれた一つの化合物である
    請求項1又は2に記載の加窒ステンレス鋼層形成方法。
  5. 【請求項5】 前記窒化物粉末の量が金属粉末の1〜3
    〔重量%〕である請求項1又は2に記載の加窒ステンレ
    ス鋼層形成方法。
  6. 【請求項6】 (a)鋼の表面を機械的手段によって清
    浄する前に、鋼の表面と実質的に同じ面積を有する溝を
    鋼の表面に形成し、(b)前記溝に前記金属粉末混合物
    を置く請求項1に記載の加窒ステンレス鋼層形成方法。
  7. 【請求項7】 (a)鋼の表面を機械的手段によって清
    浄する前に、鋼の表面と実質的に同じ面積を有する溝を
    鋼の表面に形成し、(b)前記溝に前記ステンレス粉末
    混合物を置く請求項2に記載の加窒ステンレス鋼層形成
    方法。
  8. 【請求項8】 前記レーザービームによる走査は、シー
    ルドガスの中で行われる請求項1又は2に記載の加窒ス
    テンレス鋼層形成方法。
  9. 【請求項9】 前記シールドガスがアルゴン及び窒素の
    一方である請求項8に記載の加窒ステンレス鋼層形成方
    法。
  10. 【請求項10】 前記機械的手段はサンドブラスト法で
    ある請求項1又は2に記載の加窒ステンレス鋼層形成方
    法。
  11. 【請求項11】 前記レーザービームはCO2 レーザー
    ビームである請求項1又は2に記載の加窒ステンレス鋼
    層形成方法。
  12. 【請求項12】 前記加窒ステンレス鋼層は0.35〜
    0.60〔重量%〕の窒素を含有する請求項1又は2に
    記載の加窒ステンレス鋼層形成方法。
  13. 【請求項13】 前記加窒ステンレス鋼層は、20〜4
    7〔重量%〕のクロム、4〜6〔重量%〕のモリブデン
    及び12〜21〔重量%〕のニッケルを含有する請求項
    1又は2に記載の加窒ステンレス鋼層形成方法。
  14. 【請求項14】 前記加窒ステンレス鋼層の厚さは0.
    3〜1.0〔mm〕である請求項1又は2に記載の加窒
    ステンレス鋼層形成方法。
  15. 【請求項15】 (a)前記レーザービームによって鋼
    及び金属粉末混合物を走査することにより形成された加
    窒ステンレス鋼層を有するとともに、(b)該加窒ステ
    ンレス鋼層は0.35〜0.60〔重量%〕の窒素を含
    有し、(c)前記金属粉末混合物は少なくとも鉄粉末
    と、クロム粉末と、窒化物粉末とを含有する混合物であ
    ることを特徴とする鋼。
  16. 【請求項16】 (a)前記レーザービームによって鋼
    及びステンレス粉末混合物を走査することにより形成さ
    れた加窒ステンレス鋼層を有するとともに、(b)該加
    窒ステンレス鋼層は0.35〜0.60〔重量%〕の窒
    素を含有し、(c)前記ステンレス粉末混合物は少なく
    ともステンレス粉末と、窒化物粉末とを含有する混合物
    であることを特徴とする鋼。
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JPH02224884A (ja) * 1989-02-27 1990-09-06 Toshiba Corp 炭化物のレーザ肉盛り方法

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