JP3198681B2 - ステンレス鋼のクラッド法 - Google Patents

ステンレス鋼のクラッド法

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忠宏 梅本
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石川島播磨重工業株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ステンレス鋼のクラッ
ド法に係り、特に、高品質のクラッド層を形成する技術
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼の耐食性を向上させる技術
として、特開平03−064404号公報(ステンレス
鋼のクラッド用材料)、特開平03−064486号公
報(ステンレス鋼の耐食性改善方法)、特開平03−0
63128号公報(耐食性ステンレス鋼)が提案されて
いる。これらの先行技術では、ステンレス鋼の母材表面
にクロム系複合材からなるクラッド層をレーザ焼成する
ことによって、ステンレス鋼が本来有している耐食性を
飛躍的に向上させるようにしている。
【0003】また、ステンレス鋼の表面をCO2 レーザ
ー等で溶融させて、表面に微細なミクロ組織を形成する
ことによって、耐食性を向上させる技術も提案されてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前者のクラッ
ド層を形成する技術では、工程の多くの時間が被焼成塗
膜の厚さに依存することが多く、クラッド層の形成作業
性が低下するとともに欠陥等が発生し易くなり、後者の
表面を溶融させる技術では、母材の化学成分(CやNi
の多い場合)によっては、処理部に微細割れを発生させ
てしまう恐れがあるという解決すべき課題が残される。
【0005】本発明は、かかる事情に鑑みてなされたも
ので、耐食性の改善と微細割れ防止とを同時に達成する
とともに、耐応力腐食割れ特性を向上させることを目的
としているものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】ステンレス鋼の母材表面
にMo,Crからなる金属粉末を主成分とする厚さ10
μmないし200μmの塗膜を形成する工程と、塗膜を
母材表面とともに溶融させた後に十分なフェライトが生
成されるように冷却して、フェライトを含む厚さ0.1
mmないし1mmのクラッド層を形成する工程とを有す
るステンレス鋼のクラッド法としている。
【0007】
【作用】塗膜を母材表面とともに溶融させてクラッド層
を形成すると、クラッド層のデルタフェライトが3%な
いし6%となって割れ防止効果が高くなる。そして、同
時に、クラッド層に1%ないし5%のMoを含有するも
のとなり、耐食性が改善される。
【0008】
【実施例】以下、本発明に係るステンレス鋼のクラッド
法の実施例について図1ないし図5に基づいて説明す
る。各図において、符号1は母材、2は塗膜、3はクラ
ッド層である。
【0009】この場合にあって、母材1は、例えば18
Cr−8Niステンレス鋼とされる。その化学成分例
(重量%)を示すと、Cr:18.2,Ni:10.
3,Mn:1.75,C:0.06,残部:Feであ
る。
【0010】塗膜2は、Moが100%ないし50%、
Crが0%ないし50%で、かつ粒径が0.5μm〜2
μm程度の粉末の単独、混合化または合金化したものを
主成分とし、これをアクリル樹脂系塗料等に混合するな
どして、ペースト状とした混合塗料を塗装することによ
り、図1に示すように、塗膜化してなるものである。こ
の場合の塗膜2の厚さは、例えば厚さ10μmないし2
00μmとする。
【0011】クラッド層3は、YAGレーザ等を使用し
て、塗膜2の全部を母材1の表面の一部とともに溶融さ
せることによって、厚さ0.1mmないし1mmのクラ
ッド層3を、図2に示すように形成する。クラッド層3
形成する場合には、後述するように、母材1を劣化さ
せることなくかつ十分なフェライトが生成されるような
冷却速度(5×103〜5×102K/秒)となるよう
に、照射速度及び入熱を選ぶ必要がある。YAGレーザ
による塗膜2の照射の場合であると、300W〜100
0Wの出力、10cm/分〜40cm/分の速度環境と
する。
【0012】このような条件下でクラッド層3を形成
た場合の組織状態や耐食性等の評価は、図3の通りであ
った。つまり、図3に適正範囲として示している範囲で
は、組織状態や耐食性の点で満足な結果が得られるが、
他の範囲では図3に示しているように、デルタフェライ
ト量の不足、ポロシティ(多孔組織)の発生、鋭敏化、
高温乾燥による作業低下等の点で実用性が懸念される結
果となった。
【0013】また、図4は、別に施工したクラッド層に
ついて、615℃の温度で9時間ないし36時間の熱処
理を行なった試料のSCC(応力腐食割れ)試験を行な
い、図4に示す結果を得た。図4にあって、○印は合格
(耐SCC性が良好であるもの)、●印は不合格(耐S
CC性が不十分であるもの)を表わしている。炭素量が
0.022ないし0.063重量%の範囲にあって、デ
ルタフェライト量(図4にあってはδフェライト量)が
2ないし4%以上の場合には、耐SCC性が優れている
と推定される。
【0014】一方、図5は、ステンレンス鋼のシェフラ
の組織図を示している。前述したように、18−8ステ
ンレス鋼にMo,Crの粉末を適量塗布して母材ととも
溶融してなるクラッド層を形成した場合、前述のよう
な適正条件で処理すれば、オーステナイト相にデルタフ
ェライト相が図4の如く適量含まれることにより、クロ
ム当量とニッケル当量とが図5の安全域の範囲となっ
て、耐微少割れ性が著しく向上するものとなる。
【0015】なお、図4に示すように、炭素量が増加し
た場合でも、耐食性を改善することができるものの、図
5に示すように、Cがニッケル当量に大きな影響を及ぼ
すため、図5の安全域の範囲となるように塗膜厚さと出
力を図3のごとく設定する。
【0016】
【発明の効果】本発明に係るステンレス鋼のクラッド法
によれば、以下の効果を奏する。 (1) ステンレス鋼の母材表面にMo,Crの塗
形成して母材表面とともに溶融させてクラッド層を形成
するものであるから、Moの付加によって耐食性の改善
と微細割れの防止とを同時に達成することができる。 (2) 適量のデルタフェライト相を含ませることによ
って、対応力腐食割れ特性を向上させ、高信頼性が要求
される化学プラント、エネルギプラント等で耐食に関わ
る箇所への適用性を高めることができる。 (3) Moの付加によって、ステンレス鋼における隙
間腐食の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るステンレス鋼のクラッド法の実施
例における塗膜形成時の実施状況を示す正断面図であ
る。
【図2】本発明に係るステンレス鋼のクラッド法の実施
例におけるクラッド層形成時の実施状況を示す正断面図
である。
【図3】図2のクラッド層形成時のレーザー出力と塗膜
厚さとの関係線図である。
【図4】図2のクラッド層の熱処理後におけるクラッド
層の評価と炭素量とデルタフェライト量との関係曲線図
である。
【図5】ステンレス鋼のシェフラの組織図である。
【符号の説明】
1 母材 2 塗膜 3 クラッド層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 27/06 C22C 27/06 38/00 302 38/00 302Z (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 26/00 B22F 7/04 B32B 15/01 C22C 19/05 C22C 27/04 - 27/06 C22C 38/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ステンレス鋼の母材表面にMo,Crか
    らなる金属粉末を主成分とする厚さ10μmないし20
    0μmの塗膜を形成する工程と、塗膜を母材表面ととも
    に溶融させた後に十分なフェライトが生成されるように
    冷却して、フェライトを含む厚さ0.1mmないし1m
    mのクラッド層を形成する工程とを有することを特徴と
    するステンレス鋼のクラッド法。
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