JPH08143012A - 放電電界による殺菌方法 - Google Patents

放電電界による殺菌方法

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JPH08143012A
JPH08143012A JP28206294A JP28206294A JPH08143012A JP H08143012 A JPH08143012 A JP H08143012A JP 28206294 A JP28206294 A JP 28206294A JP 28206294 A JP28206294 A JP 28206294A JP H08143012 A JPH08143012 A JP H08143012A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 包装材料等の物品を安全で、容易に殺菌で
き、かつ殺菌した物品を変質させることが少ない方法で
あって、小型の装置で、効率良くかつ強力に殺菌を行え
る方法の提供。 【構成】 電界中に気体と液体の混合物を導入して前記
混合物の少なくとも一部を電離させ、前記電界中で、前
記少なくとも一部が電離した混合物と被殺菌物とを接触
させる殺菌方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、放電電界による殺菌方
法に関する。さらに詳しくは、本発明は、包装材料、医
療材料、容器等を安全に、かつ簡便にしかも効率よく殺
菌できる殺菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】物品の殺菌方法としては、酸化エチレン
ガス等の殺菌剤を用いる方法、ガンマ線や電子線等の放
射線を照射する方法、さらに低圧下におけるグロー放電
を用いる方法等が知られている。
【0003】酸化エチレンガス等の殺菌剤を用いる殺菌
方法は、使用する酸化エチレンガス等の殺菌剤が毒性を
有することが多い。そのため、密閉系で処理しなければ
ならず、処理装置自体が大型となる。さらに、被殺菌物
に殺菌剤が残存する恐れもある。
【0004】ガンマ線や電子線等の放射線を照射する方
法は、殺菌剤が残存する恐れはない。しかし、殺菌した
物品の機械的強度を低下させたり、物品が樹脂である場
合には、樹脂が分解等して悪臭が付着したり、変色する
等の問題点がある(特公平3−73309号公報参
照)。
【0005】グロー放電による殺菌方法は、グロー放電
を起こすために真空下で行うことが必要である。そのた
め、設備、コスト、作業性、生産性等に問題があった。
【0006】これら従来技術が有する課題を解決できる
殺菌方法としてプラズマを用いる方法が知られている
〔特開平5−229530号〕。この方法は、例えば複
合酸化物からなるエネルギー変換体に電磁波を照射し、
励起したエネルギー変換体と希ガス等を接触させてプラ
ズマ状態とし、プラズマ状になった希ガス等を被殺菌体
と接触させるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記プラズマを用いる
方法は、包装材料等の物品を安全で、容易に殺菌でき、
かつ殺菌した物品を変質させることが少ない方法であ
り、優れた方法である。本発明者は、この方法を実用化
するためにさらに検討を進めた。その結果、多量の物品
を一度に処理するためには、プラズマ状態のガスを多量
に得る必要があり、そのためには、プラズマ状態とする
ためのエネルギー変換体を大型化し、さらに大出力の電
磁波が必要であった。しかし、実用的には、大型の装置
では従来法と対抗することが難しい。さらに、被殺菌体
が厚みのある構造を有する物の場合、内部まで十分に殺
菌できないか、殺菌力を高めるためにエネルギー変換体
に近付けると、被殺菌体の温度が上がり変質する場合が
あることもわかった。
【0008】そこで本発明の目的は、包装材料等の物品
を安全で、容易に殺菌でき、かつ殺菌した物品を変質さ
せることが少ない殺菌方法であって、より小型の装置で
も、即ち、より効率よくかつ強力に殺菌を行える方法を
提供することにある。さらに本発明の目的は、被殺菌体
を容易に、変質させることなく、連続的に殺菌できる方
法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、電界中に気体
と液体の混合物を導入して前記混合物の少なくとも一部
を電離させ、前記電界中で、前記少なくとも一部が電離
した混合物と被殺菌物とを接触させることを特徴とする
殺菌方法に関する。以下本発明について詳細に説明す
る。
【0010】本発明の方法においては、まず、電界中に
気体と液体の混合物を導入して前記混合物の少なくとも
一部を電離させる。電界は、例えば、少なくとも1対の
高圧電極と接地電極とを用い、この電極間に一定以上の
電圧を与えることで発生させることができる。このよう
な電界の発生装置は、例えばコロナ放電等に用いられる
高圧電極と接地電極とをそのまま用いることができ、高
圧電極及び接地電極の少なくともいずれか一方の表面が
固体誘電体で被覆されているもである。尚、固体誘電体
には特に制限はないが、例えば石英等のセラミックスや
ハイパロンラバー、ポリエチレンテレフタレート等のポ
リエステルの積層体等を用いることができる。
【0011】高圧電極と接地電極の数及び形状等には特
に制限はなく、発生させた電界内に導入される気体と液
体の混合物をどの程度電離させる必要があるか否かによ
り適宜決定できる。例えば、気体と液体の混合物の導入
量が多い場合は、一定以上の割合で電離させる目的で、
電界中の滞在時間が長くなるように調整することがで
き、そのような場合、高圧電極と接地電極を並列に複数
設けたり、或いは高圧電極と接地電極の少なくとも一方
を帯状の形状にすることもできる。
【0012】高圧電極と接地電極との間に供給する電圧
は、例えば、周波数が50Hz〜1,000kHzの範
囲の交流電圧とすることが適当である。交流電圧の周波
数は、電極間距離や誘電体材質等を考慮して決定するこ
とができる。好ましい周波数は1〜100kHzの範囲
である。さらに、高圧電極と接地電極との間の電圧は、
使用する気体と液体との混合物の種類や流量、電極間距
離等を考慮して適宜決定でき、例えば2000〜20,
000Vの範囲とすることが適当である。好ましい電圧
は4000〜8000Vの範囲である。
【0013】本発明において電界に導入する「気体と液
体の混合物」の気体は、電界中で電離可能な気体であ
る。そのような気体として、例えば、酸素、窒素、希ガ
ス(アルゴン、ヘリウム及びネオン)、水素、空気等を
挙げることができる。希ガス中でも、アルゴンは電離し
易すく、コスト的に優れているので好ましい。また、ヘ
リウムは電離が連続的になりやすいという観点から好ま
しい。特に、アルゴンは、ヘリウムよりも比重が空気に
より近く、大気圧下での取扱が容易であるため、より好
適に使用することができる。また、上記気体の2種以上
を混合して併用することもできる。
【0014】また、液体は、例えば、水、過酸化水素又
は過酸化水素水、エタノール、エタノールと水との混合
物等であることができる。過酸化水素水を用いる場合、
過酸化水素の濃度は、市販され、入手が容易であるとい
う観点からは、例えば過酸化水素濃度50%以下、好ま
しくは35%以下のものであることが適当である。それ
以下の濃度においては、殺菌条件等を考慮して、市販の
過酸化水素水を水で希釈して適宜濃度を調整することが
できる。但し、殺菌効果を考慮すると1%以上の過酸化
水素水を用いることが好ましい。
【0015】上記液体は、霧状であることが好ましく、
霧状の液体は、液体の供給源と接続しているネブライザ
ーに上記気体をキャリアーガスとして通すことにより発
生させることができる。また、霧状の気体は、これらに
キャリアーガスをバブリングさせることによっても発生
させることができる。また、「気体と液体の混合物」
は、気体の一部をキャリアーガスとし、気体とキャリア
ーガスとで得られた霧状物を残りの気体と混合すること
によっても調製することができる。気体(キャリアーガ
スも含む全ての気体)と液体との割合は、特に制限はな
いが、気体1リットル当たり1mg〜100mgの範囲
とすることが、放電持続と被殺菌物への圧力と言う観点
から適当である。さらに、霧状物の粒子径は、例えば約
5〜3000μmの範囲とすることが局所放電防止と言
う観点から好ましい。
【0016】電界中に導入された気体と液体の混合物
は、少なくとも一部が電離することが必要である。そこ
で、気体と液体の混合物の流量、電界発生のため投入す
る電圧及び電流(電力)量、電極の数及び形状、等は、
気体と液体の混合物の少なくとも一部が電離できるよう
に適宜決定する。又、ガス圧は、通常は大気圧付近であ
ることが、操作が容易であることから好ましい。但し、
後述のように、殺菌容器内が大気圧よりやや加圧状態
(大気圧より最大1気圧までの陽圧)になるようにして
操作することが、殺菌効果を高めることができ、特に、
厚みのある被殺菌体の内部まで殺菌することができると
いう観点から好ましい。
【0017】電界中で少なくとも一部が電離した気体と
液体の混合物は、電界中で被殺菌物と接触させる。接触
方法に特に制限はない。例えば、電界中に固定した被殺
菌物に上記混合物を接触させるか、又は電界中を被殺菌
物を移動させ、少なくとも一部が電離した気体と液体の
混合物と接触させる。特に、被殺菌物を設置し、または
被殺菌物を移動させる殺菌チャンバー内は、前記のよう
に大気圧よりやや加圧状態(大気圧より最大1気圧)に
なるようにして操作することが、殺菌効果を高めること
ができ、特に、厚みのある被殺菌体の内部まで殺菌する
ことができるという観点から好ましい。また、チャンバ
ー内を陽圧にすることにより、チャンバー内の無菌状態
を維持することもできる。
【0018】本発明の殺菌方法は、例えば、図1に示す
装置により行うことができる。図中、1は金属電極であ
り、2は誘電体(石英)板であり、1及び2で接地電極
3を構成する。4は金属電極であり、高圧電極を構成す
る。5はハウジング、6はガスの導入管、7は高圧ブッ
シング(高圧絶縁物質からなる差し込み)、8は高圧電
源、9は被殺菌体、10は排気管、11はネブライザ
ー、12は気体の供給源、13は電離状態の気体と液体
との混合物である。気体と液体の混合物は、ネブライザ
ー11に気体を通して得られる霧状のガスを導入管6か
ら、電界が発生している高圧電極(金属電極)4と接地
電極3との間に供給する。高圧電極4と接地電極3との
間に導入された混合物は、少なくとも一部が電離し、こ
の混合物は電界中の被殺菌体を殺菌した後、排気管10
から排気される。
【0019】図2には、被殺菌体が連続的に電界中に移
動して殺菌を行う方法を実施するための装置を示す。図
2中、4は金属電極であり、高圧電極を構成する。5は
ハウジング、6は気体と液体の混合物の導入管、8は高
圧電源、12は気体の供給源、13は電離状態の気体と
液体との混合物である。さらに、14は表面が誘電体か
らなるロールであり、接地電極を構成する。15は被殺
菌体のフィルム17の巻き出しロールであり、16は液
体を満たしたバブリング容器である。気体と液体の混合
物は、バブリング容器16に気体を通して得られる霧状
のガスを導入管6から、電界が発生している高圧電極
(金属電極)4と接地電極(ロール電極)14との間に
供給する。一方、巻き出しロール15から供給された被
殺菌体のフィルム17は接地電極(ロール電極)14上
を移動する。そして、高圧電極4と接地電極14との間
に導入され、少なくとも一部が電離した混合物が電界中
を移動する被殺菌体を殺菌する。
【0020】図3には、被殺菌体が連続的に電界中に移
動して殺菌を行う方法を実施するための装置の別の態様
を示す。図3は、電極近傍の拡大図であり、ハウジン
グ、高圧電源、気体及び液体の供給源は、図示していな
いが図2の装置と同様である。図3中、14は表面が誘
電体からなるロールである接地電極であり、17はロー
ルの表面を移動する被殺菌体のフィルムである。18は
高圧電極である金属電極である。19は気体と液体の混
合物の導入管であり、金属電極18を貫通している。
尚、導入管19は1又は2以上であることができる。導
入管19から気体と液体の混合物が電極間の電界内に供
給され、少なくとも一部が電離した混合物13が電界中
を移動する被殺菌体を殺菌する。金属電極18を貫通す
るように気体と液体の混合物の導入管19を設けること
で、気体と液体の混合物の電界内への供給を容易かつ確
実に行うことができる。
【0021】被殺菌体のフィルム17の移動速度は、殺
菌の程度、電界内の温度等を考慮して、適宜決定でき
る。但し、被殺菌物の電界中の滞留時間が、例えば0.
1〜5分間の範囲となるように調整することが適当であ
る。
【0022】被殺菌物には特に限定はないが、例えば、
各種のプラスチック単体、またはこれらのプラスチック
を複数積層、あるいはこれらのプラスチックと金属箔と
を積層した積層材料からなる物品を挙げることができ
る。また、これら物品の形態は、食品用又は薬品用包装
のシートまたはロール、若しくは容器トレイ、ボトル等
であることができる。さらに、被殺菌物としては、天然
繊維または合成樹脂繊維からなる織布または不織布、及
び紙または上記繊維よりなる衣服類等を例示することが
できる。特に本発明の方法は、ガーゼ、マスク、綿等の
厚みのある物品の殺菌に有効である。被殺菌物として
は、その他に、金属や金属を含む加工品(例えば注射
針)、セラミックス、ガラス及びそれらの加工品等を挙
げることもできる。
【0023】被殺菌物が包装材料である場合には、その
形態は、例えば、袋、自立袋、成形容器、成形シート、
ボトル等であることができる。本発明の方法は、食品、
薬品等の無菌を要求する、例えばアセブチック用分野、
及び衛生的に無菌を要求する分野へと応用範囲は広い。
【0024】殺菌できる細菌にも特に限定はない。本発
明の方法によれば、例えば、大腸菌(E.coli)、
サルモネラ・ティフィ(Sal.typhi)、枯草菌
(B.subtilis)、黄色ブドウ球菌(Stap
hylococcus.aureus)、アスペルギル
ス・ニガー(Asp.niger)等の菌を殺菌するこ
とができる。
【0025】
【実施例】以下本発明を実施例によりさらに説明する。 実施例1〜4 図1に示す装置を用いて、大気圧下で、本発明の殺菌方
法を実施した。実験条件である電圧、電力、周波数、気
体(キャリアガス)の種類と流量、液体の種類、処理時
間、霧状物の生成方法(ネブライザー又はバブリン
グ)、被殺菌物の種類を表1に示す。
【0026】被殺菌物であるテストピースとして2種類
用いた。テストピースAは、無菌ポリエステルテープに
バシルス・スブチリス(Bacillus subti
lis)の胞子(spore)を1ピース当たり106
個になるように付着させた(スポアー径5mmφ)もの
である。テストピースBは、栄研器材株式会社製、商品
名テスパーG(EOG・乾熱滅菌の滅菌効果判定用)を
用いた。
【0027】評価方法(残存胞子数検査) 殺菌試験に供したテストピースAを、滅菌した0.2%
トゥイーン(Tween)80生理食塩水10mlに1
時間浸積後攪拌して、残存胞子を抽出した。また、テス
トピースBを、生理食塩水量を50mlとして、残存胞
子を抽出した。得られた残存胞子抽出液を、標準寒天培
地を用いて、35℃で48時間培養した。培養後、出現
したコロニー数から1ピース当たりの残存胞子数を算出
した。結果を表1に示す。尚、表1中、コントーロルの
残存胞子数は4.2×106 (胞子数/ピース)であ
る。
【0028】実施例5 図2に示す装置を用いて、大気圧下で、連続的に本発明
の殺菌方法を実施した。実験条件である電圧、電力、周
波数、気体(キャリアガス)の種類と流量、液体の種
類、処理時間(被殺菌物の移動速度と滞留時間)、被殺
菌物の種類を表1に示す。尚、霧状物の生成にはネブラ
イザーを用いた。
【0029】
【表1】
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、特開平5−22953
0号に記載のプラズマを用いた殺菌方法と同様に、包装
材料等の物品を安全で、容易に殺菌でき、かつ殺菌した
物品を変質させることが少なく、さらに上記殺菌方法よ
り、より小型装置で、即ち、より効率よくかつ強力に殺
菌を行える方法を提供することができる。さらに本発明
の方法では、連続的に殺菌を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1〜4で用いた殺菌装置の説
明図である。
【図2】 本発明の実施例5で用いた殺菌装置の説明図
である。
【図3】 本発明の方法を実施するための装置の部分拡
大図である。
【符号の説明】
1・・・金属電極 2・・・誘電体(石英)板 3・・・接地電極 4・・・金属電極 5・・・ハウジング 6・・・ガスの導入管 7・・・高圧ブッシング 8・・・高圧電源 9・・・被殺菌体 10・・・排気管 11・・ネブライザー 12・・気体の供給源 13・・電離状態の気体又は気体と液体との混合物 14・・表面が誘電体からなるロール 15・・巻き出しロール 16・・バブリング容器 17・・被殺菌体のフィルム 18・・金属電極 19・・気体と液体の混合物の導入管

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電界中に気体と液体の混合物を導入して
    前記混合物の少なくとも一部を電離させ、前記電界中
    で、前記少なくとも一部が電離した混合物と被殺菌物と
    を接触させることを特徴とする殺菌方法。
  2. 【請求項2】 混合物を構成する気体が酸素、窒素、ア
    ルゴン、ヘリウム及びネオンからなる群から選ばれる少
    なくとも1種であり、液体が水、過酸化水素又は過酸化
    水素水である請求項1記載の殺菌方法。
  3. 【請求項3】 液体が霧状である請求項1又は2記載の
    殺菌方法。
  4. 【請求項4】 被殺菌物を、電界中を移動させながら、
    少なくとも一部が電離した混合物と接触させる請求項1
    〜3のいずれか1項に記載の殺菌方法。
  5. 【請求項5】 電界を少なくとも1対の高圧電極と接地
    電極との間で発生させ、前記高圧電極及び接地電極の少
    なくともいずれか一方の表面が固体誘電体で被覆されて
    いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の殺菌方法。
  6. 【請求項6】 高圧電極と接地電極との間に、50Hz
    〜1,000kHzの範囲の交流電流を供給する請求項
    5記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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