JPH0812773B2 - 同時検出型質量分析装置 - Google Patents

同時検出型質量分析装置

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JPH0812773B2
JPH0812773B2 JP1091134A JP9113489A JPH0812773B2 JP H0812773 B2 JPH0812773 B2 JP H0812773B2 JP 1091134 A JP1091134 A JP 1091134A JP 9113489 A JP9113489 A JP 9113489A JP H0812773 B2 JPH0812773 B2 JP H0812773B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、Mattauch−Herzog型質量分析装置などの同
時検出型質量分析装置に関し、特にイオン検出器として
チャンネルプレートなどの電気検出型検出器を用いる場
合に好適な同時検出型質量分析装置に関するものであ
る。
[従来技術] 質量分析装置は、磁場掃引などにより質量スペクトル
を得る掃引型と、掃引を行わず質量スペクトルを例えば
写真乾板などに記録する同時検出型とに大別される。検
出器に入射しているイオンと異なる質量のイオンを全て
捨てるためイオン源で生成されたイオンの利用効率が低
い掃引型に比べ、全てのイオンを同時に検出する同時検
出型の方がイオンの利用効率が高く、原理的には高感度
である。しかしながら、従来同時検出型で検出器として
主に使用されている写真乾板は掃引型で使用されている
二次電子増倍管に比べ感度が極端に低く、掃引型よりも
高い感度を実現することが困難であった。
ところで、近時、飛来するイオンの位置と強度を大面
積にわたって検出することのできるチャンネルプレート
を用いた高感度の2次元イオン検出器が開発されてきて
いる。これを同時検出型質量分析装置のスペクトル結像
面に配置して広範囲の質量スペクトルを同時検出すれ
ば、感度を飛躍的に高めることが可能である。
一方、広い質量範囲にわたって高分解能を得るために
は、スペクトル結像面上全ての位置で二重収束が成立し
ていなければならない。掃引型の二重収束質量分析装置
では、方向収束面とエネルギー収束面が完全に一致せ
ず、交差しているので、二重収束は唯一点でのみ成立
し、他の位置では成立しない。
方向収束面とエネルギー収束面が同一直線状に完全に
重なるように工夫された装置として、第4図に示すよう
なMattauch−Herzog型質量分析装置がある。第4図にお
いて、1はイオン源、2は扇形電場、3は一様扇形磁
場、4は写真乾板などの2次元イオン検出器であり、図
に示されていように、扇形電場におけるイオンの回転方
向と、一様扇形磁場におけるイオンの回転方向を互いに
逆となっている。
この質量分析装置においては、方向収束条件として、
扇形電場2の焦点にイオン源1を配置し、電場と磁場の
間のイオンビームを平行とする。すると、エネルギー収
束条件は電場と磁場の偏向角φe,φmの比を調節するこ
とによって得られるため、イオンの磁場軌道半径に無関
係に二重収束が成立するのである。二重収束面(結像
面)は、磁場へのイオン入射面を通る直線上にあり、こ
の面上に写真乾板4を配置すれば、全ての質量(軌道半
径)について鮮明な結像状態の質量スペクトルが得られ
る。
Mattauch氏とHerzog氏が提案した装置は次表の2種類
であった。 表 1 (a) (b) ε 0゜ 19.47゜ φm 90゜ 109.47゜ φe 31.8゜ 63.65゜ L1 0.7078e 0 L3 0 0 表1において、εは磁場へのイオンビームの入射
角、L1はイオン源ソーススリットと電場との間隔、re
電場内におけるイオン中心軌道半径、L3は磁場端面とス
ペクトル結像面との間隔である。
この内(a)の装置が実際に製作され、一般にMattau
ch−Herzog型質量分析装置と言えばこの光学系を指す。
(b)の装置は、イオンビームが乾板に入射する角度
をできるだけ直角に近付けるように(その方がスペクト
ル線が鮮明になると考えられた)、可能な限りφを大
きくしたもので、乾板入射角が(a)の45゜に比べて5
4.73゜まで増大している。
[発明が解決しようとする課題] 上述したMattauch−Herzog型質量分析装置では、L3
0の条件から分かるように、スペクトル結像面が磁場出
射端面にできる。磁場出射端面では磁場強度が極めて大
きく、磁場による影響を受けない写真乾板を検出器とし
て使用する時は問題ないが、磁場による影響を大きく受
けるチャンネルプレートを使用する場合には、ゲインが
大幅に低下してしまい、実用上大きな問題となる。
本発明は上述した点に鑑みてなされたものであり、ス
ペクトル結像面を磁場出射端面から自由空間側へ大きく
離し、2次元イオン検出器を磁場強度の小さな位置に配
置できるようにすることにより、チャンネルプレートな
どを使用し磁場による影響を大きく受ける検出器をゲイ
ンの低下なく採用することのできる同時検出型質量分析
装置を実現することを目的としている。
[課題を解決するための手段] この目的を達成するため、本発明の同時検出型質量分
析装置は、イオン源と、該イオン源から発生した被分析
イオンが入射する扇形電場と、該扇形電場を通過したイ
オンが平行ビームの状態で入射し該イオンを質量電荷比
に応じて展開する一様磁場と、該一様磁場によるイオン
の展開面に沿って配置される2次元イオン検出器とを備
え、前記扇形電場によるイオンの回転方向と前記一様磁
場によるイオンの回転方向が逆である同時検出型質量分
析装置において、前記扇形電場と一様磁場の間のイオン
通路上に静電四極子レンズを配置することにより磁場出
射端面から離間した前記一様磁場外にイオンの展開結像
面が形成配置されるようにしたことを特徴としている。
[作用] 本発明においては、電場と磁場の間に静電4極子レン
ズを配置し、この静電4極子レンズに軌道面に対し発散
作用を持たせ、それと垂直な方向に対し収束作用を持た
せたため、イオンの展開結像面を磁場出射端面から離間
させることができると共に、垂直方向の収束性も改善さ
れる。
[実施例] 以下、図面に基づき本発明を詳説する。
Mattauch氏とHerzog氏が提案した前記(a),(b)
の光学系は、端縁場の影響を無視して計算されたもの
で、この影響を考慮すると、磁場や電場の間隙に応じて
多少の修正をしなければならない。この様に端縁場によ
る影響を考慮した修正を施したイオン光学系パラメータ
の数値及び一次,二次の諸係数を表2A,表2Bに示す。
表2において、rmは磁場に於けるイオンの中心軌道半
径、AXは像倍率、Aγは質量分散係数、Ay,Aβは軌道面
に垂直なy方向のビームの拡がりを示す係数、Aαα,A
αδ,Aδδ,Ayy,Ayβ,Aββは二次収差係数、Gy,Gβ
磁極間隙内の最大係数の数値である。Aγは大きい程よ
いが、他の諸係数は零に近い程よい。Gβが小さいと軌
道面に垂直な方向のビームサイズが小さくなり、磁極間
隙を通過するイオンビームの透過率が向上する。
この明細書における軌道計算はすべて「質量分析」誌
上に発表したパソコンプログラムで行われている。又、
電場電極間隙と磁極間隙は、それぞれ0.08re,0.04re
仮定してある。
表1の(a)の光学系では、結像位置をφ=90゜よ
りも大きい偏向角の位置にスペクトル結像位置を移動さ
せるために磁場にプラスの入射角(19.47゜)を与えた
のである。この場合、入射角はそのままにしてφ=90
゜になるように磁場境界を設定したとすると(第4図参
照)、磁場出口ではイオンビームは未だ収束していない
ので、スペクトル結像面は磁場端面から離れ自由空間に
までのびることになる。
Mattauch氏とHerzog氏の計算では、表1(b)の場
合、ε=19.47゜の時二重収束条件を満たす最大値φ
=63.65゜,φ=109.47゜でL1=0となり、これ以
上εを大きくすることは出来なかった。
しかし、端縁場の影響を考慮すると、ε=19.47
゜,φ=109.47゜に対応するφは、表2Bに示すよう
に56.7゜であり、その時のL1は0.135となる。従って、L
3(磁場出射面からスペクトル結像面までの距離)を出
来るだけ長くするため、εの値をMattauch氏とHerzog
氏の設定した19.47゜よりも大きくすることが可能であ
る。この様な考え方に基づいて計算した結果を表3に示
す。
表3から分かるように、ε=23.73゜、φ=63゜
となっている。第4図の光学系はこの表3のデイメンジ
ョンに基づくものである。
本発明者は、このような考え方を更に発展させ、電場
と磁場の中間にQレンズを挿入すると、εを更に増大
させ、L3を更に長くしてスペクトル結像面を磁場端面か
ら更に離れた位置に配置させることができ、しかも、同
時に垂直方向の収束性も高め所謂立体収束の作用を高め
ることができることを見出した。
第1図は本発明の一実施例を示すイオン光学図であ
る。第4図と異なるのは、扇形電場2と一様磁場3との
間に静電四極子レンズ5が配置されている点である。第
2図はこの静電四極子レンズの断面構造及びこれに電位
を与えるための電気回路の構成例を示す図である。静電
四極子レンズ5は、イオンの進行方向に垂直な断面を取
ると、第2図に示すようにイオン通路の周りに90゜間隔
で配置された4本の円筒電極から構成され、イオンビー
ムの軌道平面に垂直な方向(y方向)の対向する電極に
は正電位が印加され、イオンビームの動径方向(x方
向)の対向する電極には負電位が印加される。ただし、
これは取り扱うイオンが正イオンの場合であって、負イ
オンの場合には極性を反転させて用いる。
このような電位の印加により、四極子レンズ5は、y
方向に収束作用が与えられ、x方向に発散作用が与えら
れる。
また、四極子レンズ5を通過した後磁場に入射するイ
オンビームが平行ビームになるようにすると、二重収束
条件はrmに無関係に、φmeにより定まるので、
二重収束面即ちスペクトル結像面が磁場入射面を通る直
線となる。このように、四極子レンズ通過後のイオンビ
ームを平行にするには、レンズの強さかL1の長さを調節
すれば良い。
以上のような考察に基づき、二次収差係数も小さくな
るように考慮して設計したイオン光学系の一例を表4に
示す。
表4において、L21は電場出射端と四極子レンズ射端
との距離、L22は四極子レンズ出射端と磁場入射端との
距離、QLは四極子レンズの長さ、QKは四極子レンズの強
度を夫々示す。尚、QKはイオン加速電圧でノーマライズ
されている。
この表4を表3の場合と比較すると、L3が大きくなっ
てスペクトル結像面が磁場端面からより離れていること
が分かる。また、AX〜Gβの多くのものがより小さくな
り、全ての点で特性が良くなっていることが分かる。
第3図は本発明の他の実施例を示すイオン光学図であ
る。本実施例においては、イオン源1と電場2との間に
も静電四極子レンズ6が挿入されている。表5はこの様
な配置のイオン光学系の一例を示している。
表5において、L11はソーススリットと四極子レンズ
6入射端との距離、L12は四極子レンズ6出射端と電場
入射端との距離、QK1,QK2は四極子レンズ6,5の強度を夫
々示す。
表5を表4と比較すれば分かるように、y方向の収束
性を表わすAy,Aβ,Ayy,Ayβ,Aββ,Gy,Gβ等の諸係数
の多くが表5において改善されており、特に磁場回転半
径が小さいほど顕著である。以上のことから、電場の入
り口側に四極子レンズを追加することにより、立体収束
性が更に向上していると判断できる。
また、電場の入り口側に四極子レンズを追加すること
によりAXが小さくなるため、同一分解能の場合、ソース
スリットの幅を大きくすることができ、感度の向上を図
ることができる。
更に、本実施例の様に2個の四極子レンズを用いるこ
とにより、四極子レンズ6によりエネルギー収束、四極
子レンズ5により方向収束と、エネルギー収束と方向収
束の両方を電気的に独立に調節することが可能となり、
実用上極めて有利である。
[効果] 以上詳述した如く、本発明によれば、電場と磁場の間
に四極子レンズを配置することにより、スペクトル結像
面を磁場端面から大きく離間させることができるため、
チャンネルプレートなど磁場による影響を受けやすい2
次元イオン検出器を使用してもゲイン低下等の悪影響を
最少限に押さえつつイオンを検出することが可能とな
る。
また、イオン源と電場との間にも四極子レンズを配置
することにより、立体収束性が更に向上し、しかも、エ
ネルギー収束と方向収束を電気的に独立に調節すること
のできる質量分析装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
第1図及び第3図はそれぞれ本発明の一実施例を示すイ
オン光学図、第2図は静電四極子レンズの断面及びそれ
に電位を印加するための電気回路の一例を示す図、第4
図はMattauch−Herzog型質量分析装置を説明するための
図である。 1:イオン源、2:扇形電場 3:一様磁場、4:2次元イオン検出器 5,6:静電四極子レンズ

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】イオン源と、該イオン源から発生した被分
    析イオンが入射する扇形電場と、該扇形電場を通過した
    イオンが平行ビームの状態で入射し該イオンを質量電荷
    比に応じて展開する一様磁場と、該一様磁場によるイオ
    ンの展開面に沿って配置される2次元イオン検出器とを
    備え、前記扇形電場によるイオンの回転方向と前記一様
    磁場によるイオンの回転方向が逆である同時検出型質量
    分析装置において、前記扇形電場と一様磁場の間のイオ
    ン通路上に静電四極子レンズを配置することにより磁場
    出射端面から離間した前記一様磁場外にイオンの展開結
    像面が形成配置されるようにしたことを特徴とする同時
    検出型質量分析装置。
  2. 【請求項2】前記電場とイオン源との間のイオン通路上
    に静電四極子レンズを配置するようにしたことを特徴と
    する請求項1記載の同時検出型質量分析装置。
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