JPH08126967A - 圧着治具、圧着方法、及び圧着治具の設計方法 - Google Patents

圧着治具、圧着方法、及び圧着治具の設計方法

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JPH08126967A
JPH08126967A JP26593594A JP26593594A JPH08126967A JP H08126967 A JPH08126967 A JP H08126967A JP 26593594 A JP26593594 A JP 26593594A JP 26593594 A JP26593594 A JP 26593594A JP H08126967 A JPH08126967 A JP H08126967A
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wedge
pressure plate
work
pressure
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JP26593594A
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Hiroki Atobe
弘樹 跡部
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Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ワークに対する加圧力の分布をより均一にで
きるとともに、ワークに対する加圧力の分布のばらつき
の程度を制御できる圧着治具、圧着方法及び圧着治具の
設計方法を提供する。 【構成】 第1の押さえ板、ワーク、第2の押さえ板、
及び加圧板をこの順に重ね合わせて支持部材上に配し、
支持部材と加圧板の間隙に一対の楔を圧入してワークを
圧着する圧着治具において、加圧板を略直方体状に形成
し、楔の加圧板と接する面を、加圧板に対して平行な平
面状に形成し、楔の支持部材と接する面を、加圧板に対
して傾斜角βを有する平面状に形成し、支持部材の楔と
接する面の両端部に、楔の形状に対応するように、傾斜
角βの傾斜面を形成する。そして、tan(ρ1−β)
+tanρ2>0(ただし、βは楔の傾斜角、ρ1は楔と
支持部材との摩擦角、ρ2は楔と加圧板との摩擦角。)
なる条件を満たすようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、楔を用いてワークを圧
着する圧着治具、圧着方法、及び圧着治具の設計方法に
関し、特に磁気ヘッドの製造に好適な圧着治具、圧着方
法、及び圧着治具の設計方法に関する。
【0002】
【従来の技術】圧着治具は、一対の被圧着体から成るワ
ークを圧着して接合するための治具であり、具体的に
は、例えば、磁気ヘッドに用いられる磁気コアの作製に
おいて、一対の磁気コア半体を磁気ギャップを介して圧
着する際に用いられる圧着治具(以下、磁気ヘッド用圧
着治具という。)が挙げられる。
【0003】上記圧着治具としては、板ばねやリングバ
ネのような弾性体を用いたもの、すなわち、弾性体、押
さえ板、ワークをこの順に配して、弾性体により押さえ
板を介してワークに圧力を加えてワークを圧着するもの
が一般に使用されている。
【0004】このような圧着治具は、例えば、図17に
示すように、圧着される一対の被圧着体22a、22b
から成るワーク22を挟み込む第1の押さえ板23及び
第2の押さえ板24と、第2の押さえ板24に対して圧
力を作用させる板ばね25と、平行に対向する第1の支
持面21aと第2の支持面21bを有する略コ字型形状
の支持部材21と、支持部材21の第2の支持面21b
を貫通するネジである押しコマ26とから成る。ここ
で、第2の押さえ板24の板ばね25と接する面は、板
ばね25の両端を支持するとともに、板ばね25にたわ
みを生じさせるために、略コ字状の溝24aが形成され
て成る。
【0005】そして、上記圧着治具でワーク22を圧着
する際は、第1の押さえ板23、ワーク22、第2の押
さえ板24、及び板ばね25をこの順に重ね合わせ、こ
れらを支持部材21の第1の支持面21aと第2の支持
面21bの間に、第1の押さえ板23と支持部材21の
第1の支持面21aとが接するように配して、押しコマ
26によって板ばね25の中央に集中荷重を加える。こ
れにより板ばね25がたわみ、この反力によって第2の
押さえ板24を介してワーク22に圧力が加わりワーク
22が圧着される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述のような圧着治具
について、有限要素解析によってワークに対する加圧力
の分布を求めると、ワークに対する加圧力の分布が不均
一であることが分かる。すなわち、上述のような圧着治
具は、板バネやリングバネを使用して押さえ板に集中荷
重を与える構造を有しているため、ワークに対して加圧
力が不均一に分布してしまう。
【0007】そして、ワークに対する加圧力の分布が均
一でない圧着治具でワークを圧着すると、ワークの圧着
部の状態にばらつきが生じてしまう。具体的には、例え
ば、磁気ヘッド用圧着治具で一対の磁気コア半体を磁気
ギャップを介して圧着して磁気コアを作製する際に、各
磁気コア半体に対する加圧力の分布のばらつきが大きい
と、磁気ギャップ長に許容範囲を超えるばらつきが生じ
てしまう。
【0008】特に近年、磁気ヘッドの性能向上により、
磁気ギャップ長精度の向上が求められているため、磁気
ヘッド用圧着治具において、各磁気コア半体に対する加
圧力の分布を均一にすることが大きな課題となってお
り、従来の磁気ヘッド用圧着治具では、これを満足でき
ない状況にある。したがって、磁気ギャップ長精度を向
上し、磁気ヘッドの不良率を改善するために、ワークに
対する加圧力の分布を安定させた磁気ヘッド用圧着治具
の開発が望まれている。
【0009】また、上述のように弾性体を用いてワーク
を加圧して圧着する圧着治具では、加圧力の最大値が弾
性体の耐荷重量によって規定されてしまう。したがっ
て、より高い加圧力での圧着が望まれる場合、例えば一
対の磁気コア半体を磁気ギャップを介して圧着して磁気
コアを作製する場合には、上記板ばねを用いた圧着治具
では、十分な圧力を加えることができない。
【0010】また、磁気ヘッド用圧着治具で、一対の磁
気コア半体を磁気ギャップを介して圧着して磁気コアを
作製する際には、磁気ギャップにガラス等を用いて高温
下で圧着したり、非常に高い圧力を加えて圧着したりす
るため、磁気ヘッド用圧着治具は、高温、高加圧力に耐
えうることが望まれている。
【0011】そこで本発明は、このような従来の実情に
鑑みて提案されたものであり、ワークに対する加圧力の
分布をより均一にできるとともに、ワークに対する加圧
力の分布のばらつきの程度を制御できる圧着治具、圧着
方法及び圧着治具の設計方法を提供することを目的とす
る。さらに本発明は、高温及び高加圧力に耐え得る圧着
治具、圧着方法、及び圧着治具の設計方法を提供するこ
とも目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
めに、本発明に係る第1の圧着治具は、圧着されるワー
クを挟み込む第1の押さえ板及び第2の押さえ板と、第
2の押さえ板に対して圧力を加える加圧板と、一対の楔
と、平行に対向する第1の支持面と第2の支持面を有す
る支持部材とから成り、第1の押さえ板、ワーク、第2
の押さえ板、及び加圧板をこの順に重ね合わせ、これら
を支持部材の第1の支持面と第2の支持面の間に、第1
の押さえ板が支持部材の第1の支持面に接するように配
し、支持部材の第2の支持面と加圧板の間隙の両端部に
一対の楔を圧入し、ワークを圧着する圧着治具におい
て、加圧板が略直方体状に形成され、楔の加圧板と接す
る面が、加圧板の楔と接する面に対して平行な平面状に
形成され、楔の第2の支持面と接する面が、加圧板の楔
と接する面に対して傾斜角βを有する平面状に形成さ
れ、第2の支持面の両端部に、楔の形状に対応するよう
に、加圧板の楔と接する面に対して傾斜角βの傾斜面が
形成されて成り、次式 tan(ρ1−β)+tanρ2>0 ・・・(1−1) (ただし、βは楔の第2の支持面と接する面と、加圧板
の楔と接する面との成す角度、ρ1は楔と支持部材との
摩擦角、ρ2は楔と加圧板との摩擦角である。)なる条
件を満たすことを特徴とする。
【0013】ここで、略直方体状に形成された加圧板と
しては、楔と加圧板とが接する部分の範囲を規定するた
めに、加圧板の楔と接する面の両端部に切り欠き部が形
成されていたり、加圧板の楔と接する面の両端部に段差
が形成されていたりしてもよい。
【0014】また、本発明に係る第2の圧着治具は、第
1の圧着治具において、楔を圧入する際に楔に作用させ
る力PS が、次式 PS=A・F{tan(ρ1+β)+tanρ2}/2 ・・・(1−2) (ただし、βは楔の第2の支持面と接する面と、加圧板
の楔と接する面との成す角度、ρ1は楔と支持部材との
摩擦角、ρ2は楔と加圧板との摩擦角、Fはワークに対
する加圧力、Aはワークの圧着部分の面積である。)で
表されることを特徴とする。
【0015】また、本発明に係る第3の圧着治具は、第
1又は2の圧着治具において、一方の楔と加圧板とが接
する部分の中心が、加圧板の中心と加圧板の一方に端部
との中央に位置し、且つ他方の楔と加圧板とが接する部
分の中心が、加圧板の中心と加圧板の他方の端部との中
央に位置することを特徴とする。
【0016】また、本発明に係る第4の圧着治具は、第
1、2又は3の圧着治具において、支持部材の第1の支
持面と接する第1の押さえ板の主面が、第1の押さえ板
と支持部材の第1の支持面とが線接触するように、凸曲
面状に形成されて成ることを特徴とする。
【0017】また、本発明に係る第5の圧着治具は、第
1、2、3又は4の圧着治具において、加圧板と接する
第2の押さえ板の主面が、第2の押さえ板と加圧板とが
線接触するように、凸曲面状に形成されて成ることを特
徴とする。
【0018】また、本発明に係る第6の圧着治具は、第
1、2、3、4又は5の圧着治具において、ワークが、
磁気ギャップを介して接合される磁気ヘッド用の一対の
磁気コア半体であることを特徴とする。
【0019】また、本発明に係る第7の圧着治具は、第
1、2、3、4、5又は6の圧着治具において、支持部
材、押さえ板、加圧板及び楔が、セラミックス材料から
成ることを特徴とする。
【0020】一方、本発明に係る第1の圧着方法は、第
1、2、3、4、5、6又は7の圧着治具を用いてワー
クを圧着する圧着方法において、楔を圧入する際に楔に
作用させる力PS を、次式 PS=A・F{tan(ρ1+β)+tanρ2}/2 ・・・(1−3) (ただし、βは楔の第2の支持面と接する面と、加圧板
の楔と接する面との成す角度、ρ1 は楔と支持部材との
摩擦角、ρ2は楔と加圧板との摩擦角、Fはワークに対
する加圧力、Aはワークの圧着部分の面積である。)か
ら算出することを特徴とする。
【0021】そして、本発明に係る第1の圧着治具の設
計方法は、第1、2、3、4、5、6又は7の圧着治具
の仕様を決定する圧着治具の設計方法において、楔と加
圧板が接する面に、等分布荷重が作用する2次元問題を
設定し、上記2次元問題に対する境界条件をフーリエ級
数で表現することにより、応力関数の一般解を求め、こ
の一般解を用いて、圧着治具の仕様を決定することを特
徴とする。
【0022】また、本発明に係る第2の圧着治具の設計
方法は、第1の圧着治具の設計方法において、前記一般
解が、x軸が支持部材と第1の押さえ板の境界線と一致
し、y軸が支持部材の中心軸と一致し、原点がx軸とy
軸の交点である直交座標系(x,y)において、次式、
【0023】
【数2】
【0024】(ただし、数2において、σy はワークの
圧着面に作用する垂直応力であり、aは加圧板の中心か
ら加圧板と楔とが接する部分の始端までの長さであり、
bは加圧板の中心から加圧板と楔とが接する部分の終端
までの長さであり、cは第1の押さえ板、ワーク、第2
の押さえ板及び加圧板の厚みの合計であり、lは支持部
材の中心から端部までの長さであり、qは加圧板と楔と
が接する面に作用する等分布荷重である。)で表される
ことを特徴とする。
【0025】
【作用】本発明の圧着治具では、楔を使用して押さえ板
に荷重を与える構造を有しているため、押さえ板の広い
範囲にわたって荷重が与えられ、ワークに対してより均
一に圧力を加えることができるとともに、耐荷重量の制
約がある板ばね等の弾性体を用いる必要がないため、ワ
ークに対して高い加圧力を作用させることができる。特
に、本発明の圧着治具では、楔の形状に対応した傾斜部
分を支持部材の第2の支持面側に形成し、加圧板の形状
を略直方体としているため、ワークに対する加圧力がよ
り均一なものとなる。
【0026】また、本発明の圧着治具では、式(1−
1)の条件を満たしているため、ワークを圧着する際
に、常温状態であっても、熱応力が発生するような高温
状態であっても、楔が緩むことがない。さらに、楔を圧
入する際に楔に作用させる力を、式(1−2)から算出
できるため、所望するワークに対する加圧力を得るため
に必要な、楔を圧入する際に楔に作用させる力PS を容
易に知ることができる。
【0027】また、本発明の圧着治具では、楔と加圧板
とが接する部分の中心が、加圧板の中心と加圧板の端部
との中央に位置するため、ワークに対する加圧力の分布
がより均一になる。
【0028】また、本発明の圧着治具では、支持部材の
第1の支持面と接する第1の押さえ板の主面を、凸曲面
状に形成することにより、第1の押さえ板と支持部材の
第1の支持面とが線接触する。したがって、第1の押さ
え板と支持部材の第1の支持面との接触部分が少なくな
るため、第1の押さえ板及び支持部材の形状に多少のば
らつきがあっても、このばらつきがワークの圧着状態に
与える影響は小さなものとなる。
【0029】また、本発明の圧着治具では、加圧板と接
する第2の押さえ板の主面を、凸曲面状に形成すること
により、第2の押さえ板と加圧板とが線接触する。した
がって、第2の押さえ板と加圧板との接触部分が少なく
なるため、第2の押さえ板及び加圧板の形状に多少のば
らつきがあっても、このばらつきがワークの圧着状態に
与える影響は小さなものとなる。
【0030】そして、本発明の圧着方法によれば、楔を
使用して押さえ板に荷重を与えるので、押さえ板の広い
範囲にわたって荷重が与えられ、ワークに対してより均
一に圧力を加えることができる。また、本発明の圧着方
法によれば、楔を圧入する際に楔に作用させる力を、式
(1−3)から算出するため、所望する加圧力でワーク
を圧着することができる。
【0031】そして、本発明の圧着治具の設計方法で
は、数2に示すような応力関数の一般解により、ワーク
の圧着面に作用する垂直応力の分布を容易且つ正確に知
ることができるので、ワークに対する加圧力の分布のば
らつきの程度を自由に設定できる。したがって、磁気ヘ
ッド用圧着治具のように、ワークに対する加圧力の分布
をより均一にすることが求められる場合でも、ワークに
対する加圧力の分布のばらつきが許容範囲内となるよう
に圧着治具の仕様を容易に決定することができる。
【0032】
【実施例】以下、本発明を適用した具体的な実施例につ
いて図面を参照しながら説明する。
【0033】(1)圧着治具の構成 本実施例の圧着治具は、一対の被圧着体から成るワーク
を、これら被圧着体の圧着面同士が接するように配し、
前記圧着面に加圧力を発生させて、ワークを圧着するも
のである。ここで、ワークとしては、具体的には、例え
ば、ガラス等から成る磁気ギャップを介して接合される
一対の磁気コア半体が挙げられる。
【0034】上記圧着治具は、図1に示すように、圧着
されるワーク5を挟み込む第1の押さえ板4a及び第2
の押さえ板4bと、第2の押さえ板4bに対して圧力を
加える加圧板3と、一対の楔2と、平行に対向する第1
の支持面1aと第2の支持面1bを有する支持部材1と
から成る。ここで、これら押さえ板4a、4b、加圧板
3、楔2及び支持部材1は、例えば、アルミナ等のセラ
ミック材料を用いて形成される。このようなセラミック
ス材料は、高温、高圧に耐えることができるため、融着
炉内のような高温下や、高い圧力を加えた場合にも、耐
えることができ、圧着治具の材料として非常に好適であ
る。
【0035】そして、上記圧着治具6でワーク5を圧着
する際は、第1の押さえ板4a、ワーク5、第2の押さ
え板4b、及び加圧板3をこの順に重ね合わせ、これら
を支持部材1の第1の支持面1aと第2の支持面1bの
間に、第1の押さえ板4aが支持部材1の第1の支持面
1aに接するように配し、支持部材1の第2の支持面1
bと加圧板3の間隙の両端部に一対の楔2を圧入する。
これにより、ワーク5の圧着面5aに加圧力が発生し、
ワーク5が圧着される。
【0036】ここで、上記加圧板3は、略直方体状に形
成されて成る。そして、上記楔2は、加圧板3と接する
主面が、加圧板3の楔2と接する主面に対して平行な平
面状に形成され、支持部材1の第2の支持面1bと接す
る面が、加圧板3の楔2と接する主面に対して傾斜角を
有する平面状に形成されて成る。また、上記支持部材1
の第2の支持面1bは、楔2の形状に対応するように、
加圧板3の楔2と接する主面に対して傾斜角を有する傾
斜面が、両端部に形成されて成る。
【0037】上記圧着治具6において、ワーク5に対す
る加圧力の分布をより均一にするためには、支持部材1
の第2の支持面1b及び楔2の上記傾斜角をできるだけ
少なくして、加圧板3に対して加圧力が均一に作用する
ようにすることが好ましい。すなわち、楔2の傾斜角を
できるだけ小さくし、支持部材1の第2の支持面と楔2
との接触範囲が可能な限り大きくなるようにすれば、加
圧分布をより均一にすることができる。
【0038】また、上記加圧板3及び押さえ板4a、4
bの幅は、支持部材1の幅を越えないように形成され
る。そして、上記圧着治具では、ワーク5に対する加圧
力の分布を均一にするために、ワーク5が押さえ板4
a、4bからはみ出ないようにすることが好ましい。し
たがって、ワーク5の長さは、押さえ板4a、4bと同
じ長さ、又はそれ以下にすることが好ましい。
【0039】上記圧着治具6でワーク5を圧着する際
は、例えば、図2に示すような、左右に自由にスライド
可能なステージ10と、シリンダー11と、押し込みロ
ッド12と、バルブ13と、ストッパー14と、レギュ
レーター15とから成る加圧装置によって楔を圧入す
る。すなわち、一方の楔2と押し込みロッド12とが当
接し、他方の楔2とストッパー14とが当接するよう
に、ステージ10上に上記圧着治具6を配し、バルブ1
3を操作することによって、シリンダー11と連動する
押し込みロッド12をスライドさせて、楔2を圧入す
る。これにより、ワーク5の圧着面5aに加圧力が発生
し、ワーク5が圧着される。ここで、楔2を押し込む際
の圧力は、レギュレーター15を操作して設定する。
【0040】(2)圧着治具の解析1 つぎに、上記圧着治具6の加圧力等の解析について説明
する。なお、以下の説明では、支持部材1の第2の支持
面1bと接する楔2の主面、すなわち楔2と接する加圧
板3の主面に対して傾斜角を有する面を傾斜面と呼び、
被圧着体が圧着される圧着面5aの断面積をワーク圧着
断面積と呼び、被圧着体が圧着される圧着面5aにかか
る力をワーク圧着力と呼び、被圧着体が圧着される圧着
面5aにかかる単位面積当たりの力をワーク圧着加圧力
と呼ぶ。
【0041】(2−1)加圧力の解析 まず、図3を参照しながら、楔2を圧入する際の加圧力
について解析する。なお、図3は、一方の楔2の近傍を
拡大して示す解析モデル図であり、支持部材1と加圧板
3の間に楔2を圧入した状態を示している。
【0042】楔2を圧入する際、楔2を圧入する方向に
作用させる力を次第に大きくしていくと、はじめのうち
は楔2は動かないが、一定の大きさを越えると楔2は動
きだして、楔2からワーク5に対しての荷重が増加し始
める。このとき、楔2が動き始める寸前の状態におけ
る、楔2を圧入する方向に作用させる力をP、ワーク5
にかかっている荷重をQとすると、傾斜面に平行な力の
成分は、 (P−f2 −f3 )cosβ−Qsinβ−f1 =0 ・・・(2−1) を満足しなければならない。ここで、f1 、f2 、f3
は楔2に作用する最大静止摩擦力であり、f1 は支持部
材1と接する楔2の側面、f2 は加圧板3と接する楔2
の側面、f3 は楔2の下面に作用する最大静止摩擦力で
ある。
【0043】そして、傾斜面に及ぼす垂直力をNとし、
楔2の荷重をWとし、f1 、f2 、f3 に対応する静止
摩擦係数をそれぞれμ1 、μ2 、μ3 とすれば、 f1 =μ1 N ・・・(2−2) f2 =μ2 Q ・・・(2−3) f3 =μ3 W ・・・(2−4) N=(P−f2 −f3 )sinβ+Qcosβ ・・・(2−5) の関係があり、式(2−1)〜式(2−5)より、 P=Q[{(sinβ+μ1cosβ)/(cosβ−μ1sinβ)} +μ2]+μ3W ・・・(2−6) となる。
【0044】ここで、μ1 、μ2 、μ3 の代わりに摩擦
角ρ1 、ρ2 、ρ3 を使用すれば、μ1 =tanρ1
μ2 =tanρ2 、μ3 =tanρ3 であるから、 P=B1 ・Q+W・tanρ3 ・・・(2−7) となる。ここで、 B1 =tan(ρ1 +β)+tanρ2 ・・・(2−8) である。
【0045】ところで、本モデルは楔2の片側だけを考
えているため、ワーク圧着加圧力をF、そのワーク圧着
断面積をAとした場合、 F=2Q/A ・・・(2−9) である。そして、式(2−7)において右辺第2項は第
1項に比較して十分に小さいので第2項を無視した上
で、式(2−7)をFを用いて表すと、 P=A・B1 ・F/2 ・・・(2−10) となる。
【0046】したがって、式(2−10)より、B1
1のとき、楔2への作用力Pがワーク5に対し拡大作用
し、B1 =1のとき、楔2への作用力Pがワーク5に対
しそのまま作用し、B1 >1のとき、楔2への作用力P
がワーク5に対し縮小作用する。すなわち、楔2を用い
た圧着治具6で作用力を拡大させる条件は B1 <1 ・・・(2−11) である。また、一方の楔2に作用する力Pの拡大率をK
とすると、Kは、 K=1/B1 ・・・(2−12) と表される。
【0047】ところで、加圧装置を使用すると、Pを一
方の楔2だけに作用させても、ストッパーによる反作用
力が働くため、実際には、両側にPを作用させた場合と
同様に作用する。したがって、加圧装置のシリンダによ
る作用力PS は、 PS =P ・・・(2−13) となる。そして、ワーク圧着力をPW とすると、PS
W に対する拡大率KSは、 KS =2K ・・・(2−14) となり、 PW =KS ・PS ・・・(2−15) となる。
【0048】なお、ワークの圧着面の半分に作用する力
であるPW /2は、式(2−14)及び式(2−15)
より、 PW /2=KS ・PS /2=K・PS である。
【0049】(2−2)楔が緩まない条件の解析 つぎに、上記圧着治具6について、図4を参照しなが
ら、楔2が緩まない条件について解析する。なお、図4
は、一方の楔2の近傍を拡大して示す解析モデル図であ
り、支持部材1と加圧板3の間に楔2を圧入した状態を
示している。
【0050】楔2を抜き取る際、楔2を抜き取る方向に
作用させる力を次第に大きくしていくと、はじめのうち
は楔2は動かないが、一定の大きさを越えると楔2は動
きだして、楔2からワーク5に対しての荷重が減少し始
める。このとき、楔2が動き始める寸前の状態におけ
る、楔2を抜き取る方向に作用させる力をP’、ワーク
5にかかっている荷重をQとすると、傾斜面に平行な力
の成分は、 (−P’+f2 +f3 )cosβ−Qsinβ+f1 =0・・・(3−1) を満足しなければならない。ここで、f1 、f2 、f3
は楔2に作用する最大静止摩擦力であり、f1 は支持部
材1と接する楔2の側面、f2 は加圧板3と接する楔2
の側面、f3 は楔2の下面に作用する最大静止摩擦力で
ある。
【0051】そして、傾斜面に及ぼす垂直力をNとし、
楔2の荷重をWとし、f1 、f2 、f3 に対応する静止
摩擦係数をそれぞれμ1 、μ2 、μ3 とすれば、 f1 =μ1 N ・・・(3−2) f2 =μ2 Q ・・・(3−3) f3 =μ3 W ・・・(3−4) N=(−P’+f2 +f3 )sinβ+Qcosβ ・・・(3−5) の関係があり、式(3−1)〜式(3−5)より、 P’=Q{(μ1 cosβ−sinβ)/(cosβ+μ1 sinβ) +μ2 }+μ3 W ・・・(3−6) となる。
【0052】ここで、μ1 、μ2 、μ3 の代わりに摩擦
角ρ1 、ρ2 、ρ3 を使用すれば、μ1 =tanρ1
μ2 =tanρ2 、μ3 =tanρ3 であるから、 P’=B2 ・Q+W・tanρ3 ・・・(3−7) となる。ここで、 B2 =tan(ρ1 −β)+tanρ2 ・・・(3−8) である。
【0053】ところで、本モデルは楔2の片側だけを考
えているため、ワーク圧着加圧力をF、ワーク圧着断面
積をAとした場合、 F=2Q/A ・・・(3−9) である。そして、式(3−7)において右辺第2項は第
1項に比較して十分に小さいので第2項を無視した上
で、式(3−7)をFを用いて表すと、 P’=A・B2 ・F/2 ・・・(3−10) となる。
【0054】したがって、式(3−10)より、B2
0のとき、P’は正の値となる。すなわち、B2 >0の
とき、楔2をはずすには力が必要であり、これだけの力
を加えなければ、楔2は緩まないで静止した状態とな
る。また、B2 =0のとき、P’=0となり、楔2は自
然の状態で荷重を支え、その位置にとどまった状態とな
る。そして、B2 <0のとき、P’は負の値となり、自
然に楔2が緩む状態となる。
【0055】したがって、楔2が緩まない条件はB2
0、すなわち、 tan(ρ1 −β)+tanρ2 >0 ・・・(3−11) であり、この条件を満たしていれば摩擦力により楔2は
静止し、自然に楔2が緩むことはない。そして、楔2を
はずすには、 P’>A・B2 ・F/2 の条件を満たすように、楔2を抜き取る方向に作用させ
る力をP’を加えなければならない。
【0056】(2−3)熱応力の解析 一対の磁気コア半体をガラス等の磁気ギャップを介して
圧着して磁気コアを作製する場合などは、常温下で圧着
治具6にワーク5をセットした後、ワーク5及び圧着治
具6を融着炉等に入れて、高温下で圧着する。このよう
に高温下で圧着する場合は、上述した常温下におけるワ
ーク圧着加圧力の他に、熱応力が作用する。そこで、こ
の熱応力について解析する。
【0057】まず、熱応力によって生じるワーク圧着加
圧力FN は、 FN =E・(α1 −α2 )・(t1 −t2 ) ・・・(4−1) である。ここで、E、α1 、α2 、t1 、t2 は以下の
通りである。
【0058】E :ワーク5のヤング率 α1 :ワーク5(例えば接合フェライト)の線膨張係数 α2 :圧着治具6(例えばアルミナ)の線膨張係数 t1 :圧着時の温度 t2 :圧着治具6にワーク5をセットした時の温度 そして、ワーク圧着断面積をAとすると、熱応力による
ワーク圧着力PN は、 PN =A・E・(α1 −α2 )・(t1 −t2 ) ・・・(4−2) となる。
【0059】ところで、圧着治具6にワーク5をセット
したときのワーク圧着加圧力をFとすると、圧着治具6
にワーク5をセットしたときのワーク圧着力PW は、 PW =A・F ・・・(4−3) である。
【0060】したがって、圧着時のワーク圧着力P
U は、 PU =PW +PN ・・・(4−4) となり、圧着時のワーク圧着加圧力FU は、 FU =PU /A ・・・(4−5) となる。
【0061】また、圧着が成される高温下において、楔
2をはずすのに必要な力PU ’は、式(3−1)〜式
(3−10)においてQをPU /2に置き換えることに
より得られ、 PU ’=B2 ・PU /2 ・・・(4−6) となる。
【0062】したがって、式(4−6)から、楔2が緩
まない条件は、高温下においても常温状態の場合と同様
であり、B2で決まることが分かる。また、熱応力が発
生する場合に楔2をはずすには、 PU ’>B2 ・PU /2 ・・・(4−7) の条件を満たすように、楔2を抜き取る方向に作用させ
る力をPU ’を加えなければならないことが分かる。
【0063】(2−4)圧着治具の解析のまとめ 以上の圧着治具6の解析について、以下にまとめて説明
する。
【0064】(2−4−1)圧着治具の楔に作用させる
力について 圧着治具6の楔2に作用させる力PS は、ワーク圧着加
圧力をF、ワーク圧着断面積をA、楔2の傾斜角をβ、
楔2と支持部材1との摩擦角をρ1 、楔2と加圧板3と
の摩擦角をρ2 とすると、 PS =A・F{tan(ρ1 +β)+tanρ2 }/2 ・・・(5−1) で表される。
【0065】したがって、A、F、β、ρ1 、ρ2 を決
定すれば、PS を算出できる。すなわち、式(5−1)
より、所望するワーク圧着加圧力を得るには、どれだけ
楔2に対して力を作用させればよいかが分かる。
【0066】(2−4−2)楔に作用させる力を拡大さ
せる条件式について 楔2への作用力をワーク圧着面に対して拡大作用させる
ための条件は、B1 <1、すなわち、 tan(ρ1 +β)+tanρ2 <1 ・・・(5−2) である。そして、楔2に作用させる力をPS 、その拡大
率をKS 、ワーク圧着力をPW とすると、これらの関係
式は、 PW =KS ・PS ・・・(5−3) KS =2/B1 ・・・(5−4) で表される。
【0067】したがって、楔2に作用させる力PS が決
まっている場合に、ワーク圧着加圧力Fを増大させたい
場合はKS を大きくすればよく、ワーク圧着加圧力Fを
減少させたい場合はKS を小さくすればよい。すなわ
ち、B1 を変えることによってワーク圧着加圧力を制御
できる。
【0068】具体的には、加圧装置で楔2を圧入する際
に圧力を自由に制御できない場合、例えばシリンダーの
圧力が大きすぎて、そのままではワーク5に対して必要
以上に加圧力が作用するような場合や、シリンダーの圧
力が小さすぎて、そのままではワーク5に対して必要な
加圧力が作用しない場合に、楔2の傾斜角βを変えるこ
とにより、容易にワーク5に対して作用する加圧力を制
御できる。
【0069】(2−4−3)楔が緩まない条件について 楔2が緩まない条件は、B2 >0、すなわち、 tan(ρ1 −β)+tanρ2 >0 ・・・(5−5) である。なお、式(5−5)を傾斜角β(0°<β<9
0°)について変形すると、 β<(ρ1 +ρ2 ) ・・・(5−6) となる。
【0070】したがって、式(5−5)又は式(5−
6)の条件を満たせば、常温下であっても、融着炉内の
ような高温下であっても、楔2は緩むことはない。した
がって、楔2が緩むことなく加圧力を保持できるかにつ
いて、上式によって容易に確認することができる。ま
た、式(5−5)又は式(5−6)から、一旦楔2が緩
まない条件が満たされれば、その後、楔2から加圧板3
に対する加圧力が均一に作用するように楔2の傾斜角β
を小さくしても、楔2は緩まないことが確認できる。
【0071】(2−4−4)高温下における熱応力、及
び熱応力による圧着力について 熱応力によって生じるワーク圧着加圧力FN は、 FN =E・(α1 −α2 )・(t1 −t2 ) ・・・(5−7) であり、熱応力によるワーク圧着力PN は、 PN =A・E・(α1 −α2 )・(t1 −t2 ) ・・・(5−8) となる。ここで、E、α1 、α2 、t1 、t2 、Aは以
下の通りである。
【0072】E :ワーク5のヤング率 α1 :ワーク5(例えば接合フェライト)の線膨張係数 α2 :圧着治具6(例えばアルミナ)の線膨張係数 t1 :圧着時の温度(高温) t2 :圧着治具6にワーク5をセットした時の温度(常
温) A :ワーク圧着断面積 また、常温下におけるワーク圧着加圧力をFとすると、
常温下におけるワーク圧着力PW は、 PW =A・F ・・・(5−9) であり、高温下におけるワーク圧着力PU は、 PU =PW +PN ・・・(5−10) であり、高温下におけるワーク圧着加圧力FU は、 FU =PU /A ・・・(5−11) である。したがって、式(5−7)〜式(5−11)よ
り、高温下におけるワーク圧着力およびワーク圧着加圧
力が計算できる。
【0073】(2−4−5)常温下で楔をはずすのに必
要な力について 常温下において、楔2をはずすのに必要な力P’は、 P’>A・F・B2 /2 =A・F{tan(ρ1 −β)+tanρ2 }/2・・・(5−12) である。
【0074】また、式(5−12)を傾斜角β(0°<
β<90°)について変形すると、 β>ρ1 −tan-1{(2P’/AF)−tanρ2 }・・・(5−13) である。したがって、楔をはずす力P’が決定された場
合には、傾斜角βを式(5−13)を満たすように設定
すればよい。
【0075】あるいは、式(5−12)をFについて変
形すると、 F<2P’/[A{tan(ρ1 −β)+tanρ2 )}] ・・・(5−14) である。したがって、楔をはずす力P’が決定された場
合には、Fを式(5−14)を満たすように設定すれば
よい。
【0076】(2−4−6)高温下で楔をはずすのに必
要な力について 融着炉内等のような高温下において楔2をはずすのに必
要な力PU ’は、 PU ’>B2 ・PU /2 ・・・(5−15) である。そして、式(5−12)及び式(5−15)か
ら、楔2が緩まない条件は、高温下においても常温状態
の場合と同様であり、B2で決まることが分かる。
【0077】(2−5)圧着治具の設計 つぎに上記解析に基づいた圧着治具の設計方法の一例に
ついて、図5に示すフローチャートを用いて具体的に説
明する。
【0078】先ず、ステップST1において、ワークの
形状を設定する。なお、本実施例では、ワークの形状
は、58[mm]×6.5[mm]×2.4[mm]とした。
【0079】次に、ステップST2において、ワーク圧
着断面積Aを求める。なお、本実施例では、A=58[m
m]×6.5[mm]=377[mm2] である。
【0080】次に、ステップST3において、楔、加圧
板及び支持部材の材質から、楔と支持部材との摩擦角ρ
1 、及び楔と加圧板との摩擦角ρ2 を設定する。なお、
本実施例では、ρ1 =20[°]、ρ2 =20[°]であ
る。
【0081】次に、ステップST4において、式(5−
6)より、楔が緩まない条件を満たす傾斜角βの範囲を
求める。なお、本実施例では、β<(ρ1+ρ2)=2
0[°]+20[°]=40[°]である。
【0082】次に、ステップST5において、常温下に
おけるワーク圧着加圧力Fを設定する。なお、本実施例
では、F≦1[MPa] とした。
【0083】次に、ステップST6において、常温下に
おける楔をはずすのに必要な力P’を設定する。なお、
本実施例では、P’≦7[kg重]とした。
【0084】次に、ステップST7において、所定の
P’及びFを満たすβを式(5−13)により求め、さ
らに、このときに必要な楔に作用させる力PS を式(5
−1)により求める。なお、本実施例では、P’=7[k
g重]であり、このときのF、β及びPS は表1に示す通
りである。
【0085】
【表1】
【0086】したがって、所望するFを得るためには、
表1に示すようにβ及びPS を設定すればよい。
【0087】このステップST7により、所定のFを得
るのに必要なβ及びPS の値が示される。したがって、
β及びPS を変えることにより所望するFを得ることが
できる。ただし、ここまでのステップでは、所望するF
によってβが異なるため、Fによって楔及び加圧板を交
換する必要がある。そこで、楔及び加圧板を交換する必
要がないようにしたい場合は、さらに設計を続行する。
したがって、ステップST8において、設計を終了する
か、続行するかを選択する。
【0088】そして、ステップST9において、ステッ
プ7の結果に基づいて、βの値を所望するFの範囲の中
で最も大きいFが得られるように設定する。そして、所
定のFのときのPS 及びP’を求める。ここで、PS
式(5−1)により求め、P’は式(5−12)により
求める。なお、本実施例では、F≦1[MPa] であるの
で、βはF=1[MPa]のときの値、すなわちβ=20.
0[°]とする。そして、このときのF、PS 及びP’は
表2に示す通りである。
【0089】
【表2】
【0090】したがって、所望するFを得るためには、
表2に示すようにPS を設定すればよい。また、本ステ
ップST9では、必要なP’の値が分かるので、所望す
るFの範囲(F≦1[MPa] )において、P’が所定の範
囲内(本実施例ではP’≦7[kg重])であるかを確認で
きる。
【0091】このステップST9により、所定のFを得
るのに必要なβ及びPS の値が示される。ここで、βは
固定値であり、PS だけを変えることにより所望するF
を得ることができる。したがって、楔及び加圧板を交換
することなく、PS を変えるだけで所望するFを得るこ
とができる。
【0092】(3)圧着治具の解析2 つぎに、上記圧着治具6について、ワーク5の圧着面5
cに作用する垂直応力の分布について解析する。
【0093】(3−1)垂直応力の解析 図6に示すように、上記圧着治具6に対して直交座標系
(x,y)の解析モデルを形成する。ここで、x軸を支
持部材1と第1の押さえ板の境界線に一致させ、y軸を
支持部材1の中心軸に一致させる。なお、原点はx軸と
y軸の交点とする。
【0094】そして、支持部材1の中心軸(y軸)か
ら、支持部材1の両端までのx軸方向の長さをそれぞれ
lとする。したがって、支持部材1のx軸方向の長さは
2lとなる。また、第1の押さえ板4a、ワーク5、第
2の押さえ板4b及び加圧板3のy軸方向の厚みの合計
をcとする。
【0095】そして、支持部材1の中心軸(y軸)か
ら、それぞれの楔2と加圧板3とが接する部分の始端ま
でのx軸方向の長さをそれぞれaとする。また、支持部
材1の中心軸(y軸)から、それぞれの楔2と加圧板3
とが接する部分の終端までのx軸方向の長さをそれぞれ
bとする。したがって、楔2と加圧板3とが接する部分
のx軸方向の長さはそれぞれ(b−a)となる。
【0096】このような圧着治具6でワーク5を圧着す
る状態、すなわち楔2を加圧装置により押し込んだ状態
は、図7に示すように、楔2と加圧板3とが接する部
分、すなわち長さ(b−a)の部分に等分布荷重qが作
用し、支持部材1と第1の押さえ板4aとが接する面
(y=0)におけるy方向の変位が無いという境界値問
題に置き換えることができる。
【0097】そして、このときの応力関数をφとすると
応力関数の方程式は、
【0098】
【数3】
【0099】となる。
【0100】そして、上式を満足する応力関数φは、
【0101】
【数4】
【0102】で表現される。ここで、α=mπ/l(m
は整数)であり、C1 及びC2 はx軸及びy軸に対する
対称性を考慮した境界条件によって決定される定数であ
る。
【0103】そして、これに対応する応力成分は、σx
をx軸に対する垂直断面に作用する垂直応力、σy をy
軸に対する垂直断面に作用する垂直応力、τxyをせん断
応力とすると、
【0104】
【数5】
【0105】である。
【0106】この問題を解くために、y=±cにおける
境界条件式をフーリエ級数で表現すると、
【0107】
【数6】
【0108】となる。
【0109】そして、数4、数5及び数6から定数C1
及びC2 は、
【0110】
【数7】
【0111】となる。
【0112】そして、数7を数4及び数5に代入する
と、ワーク5の圧着面5cに作用する垂直応力σy は次
式で表される。
【0113】
【数8】
【0114】したがって、数8に、圧着治具6の仕様条
件を入力して数値計算を行えば、ワーク5の圧着面5c
に作用する垂直応力σy が求められる。
【0115】上記垂直応力の分布の解析に具体的な数値
を代入した例として、a=19[mm]、b=29[mm]、l
=29[mm]、c=29.2[mm]、q=2[kg重]、及びm
の範囲を1〜10として、ワークの圧着面(y=10.
4[mm])におけるx=0〜29[mm]の範囲の垂直応力σ
y について数値計算を行った。
【0116】ここで、cの内訳は、ワークの厚さが4.
8[mm]、第1の押さえ板と第2の押さえ板の厚さの合計
が16[mm]、加圧板の厚さが8.4[mm]である。また、
qは、ワーク圧着断面積Aの半分であるA/2に作用す
る力であるPW /2を、(b−a)で割った値、すなわ
ち支持部材の第2の支持面と楔とが接する範囲における
単位長さ当たりの荷重量値であり、次式 q=PW /2(b−a) ・・・(6−1) により求めた値である。
【0117】上記垂直応力σy の数値計算の結果を表3
に示す。なお、表3ではσy のマイナス表示が圧縮荷重
を表している。なお、x=−29〜0[mm]の範囲につい
ては、y軸に対する対称性より同様の結果となるので数
値計算は行わなかった。
【0118】
【表3】
【0119】このように上記垂直応力の分布の解析に基
づいて、ワーク圧着面における加圧の状態を知ることが
できる。すなわち、ワークの圧着面の全体に加圧力が作
用しているか、あるいはワークの圧着面に作用する加圧
力の分布のばらつきが許容範囲内にあるか等を容易に知
ることができる。
【0120】(4)垂直応力の解析に基づいた圧着治具
の設計 つぎに、上記垂直応力の解析に基づいて、圧着治具の仕
様を決定する例について説明する。
【0121】実施例4−1 本実施例では、上記垂直応力の解析に基づいて、ワーク
の圧着面全体に加圧力が作用するように、圧着治具の仕
様を決定する例について説明する。
【0122】数8から、条件式
【0123】
【数9】
【0124】を満たす場合に、ワークに対して加圧力が
作用することが分かる。したがって、圧着治具を設計す
る際は、数9を満たすように値を設定すればよい。
【0125】具体的には、例えば、a=19[mm]、b=
29[mm]、l=29[mm]、q=2[kg重]であり、ワーク
の圧着面がy=10.4[mm]、ワークの圧着範囲がx=
−29〜29[mm]と設定されており、cの値を決定する
場合について考える。
【0126】このとき、cを適当な値、例えばc=1
8、19、20、21又は25[mm]にして、x=0〜2
9[mm]の範囲について、垂直応力ρy を求める。ここ
で、x=−29〜0[mm]の範囲については、y軸に対す
る対称性より同様の結果となるので数値計算を行う必要
はない。そして、ρy の計算結果より、x=−29〜2
9[mm]の全ての範囲について、数9を満たすcを求め
る。
【0127】そして、実際に計算を行うと、cが21[m
m]以上のときに、x=−29〜29[mm]の全ての範囲に
おいて、数9が満たされることが分かる。したがって、
cが21[mm]以上のときには、x=−29〜29[mm]の
全ての範囲でワークに対して加圧力が作用し、cが20
[mm]以下のときには、ワークに対して加圧力が作用しな
い部分が生じてしまうので、cの値は21[mm]以上と設
定すればよい。
【0128】なお、本実施例では、cの値を決定する場
合について説明したが、これに限られるものではなく、
例えば、yの値を予め設定せずにcを予め一定の値に設
定しておき、yの値を適当な値に決定するようにしても
よい。
【0129】実施例4−2 本実施例では、上記垂直応力の解析に基づいて、ワーク
に対する加圧力の分布のばらつきが所定の範囲内となる
ように、圧着治具の仕様を決定する例について説明す
る。
【0130】ワークに対する加圧力の分布のばらつきを
一定の範囲内に設定したい場合は、ワーク5の圧着面5
cに作用する垂直応力σy のばらつきが一定の範囲内と
なるようにcを設定すればよい。すなわち、垂直応力σ
y のばらつきの許容範囲がDのとき、xに対するρy
最大値をρymax、最小値をρyminとすれば、 ρymax−ρymin<D ・・・(7−1) を満たすように、圧着治具を設計する際に値を設定すれ
ばよい。
【0131】具体的には、例えば、a=19[mm]、b=
29[mm]、l=29[mm]、q=2[kg重]であり、ワーク
の圧着面がy=10.4[mm]、ワークの圧着範囲がx=
−29〜29[mm]と設定されているときに、D=0.5
[kg重]を満たすように、cの値を決定する場合について
考える。
【0132】このとき、cを適当な値、例えばc=3
5、36、37、38、39、40又は80[mm]にし
て、x=0〜29[mm]の範囲について、垂直応力ρy
求める。ここで、x=−29〜0[mm]の範囲について
は、y軸に対する対称性より同様の結果となるので数値
計算を行う必要はない。そして、ρy の計算結果より、
x=−29〜29[mm]の全ての範囲について、式(7−
1)を満たすcを求める。
【0133】そして、実際に計算を行うと、cが39[m
m]以上のときに、x=−29〜29[mm]の全ての範囲に
ついて、式(7−1)が満たされることが分かる。した
がって、cの値は39[mm]以上と設定すればよい。
【0134】なお、本実施例では、cの値を決定する場
合について説明したが、これに限られるものではなく、
例えば、yの値を予め設定せずにcを予め一定の値に設
定しておき、yの値を適当な値に決定するようにしても
よい。
【0135】(5)加圧力の分布のばらつきが小さい圧
着治具 つぎに、加圧力の分布のばらつきが小さい圧着治具の具
体例について、上記垂直応力の解析に基づいて説明す
る。
【0136】実施例5−1 本実施例の圧着治具は、図8及び図9に示すように、支
持部材1の第2の支持面1b側の幅を狭くして、且つ楔
2と接する加圧板3の主面の両端部に切り欠き部3a、
3bを形成して成る。すなわち、本実施例の圧着治具
は、楔2を加圧板3の両端から圧入するのではなく、楔
2が圧入される位置が加圧板3のやや内側となるように
したものである。このような圧着治具では、支持部材1
の中心軸(y軸)から、加圧板3とそれぞれの楔2とが
接する部分の始端までのx軸方向の長さであるaの値が
大きく、かつ加圧板3とそれぞれの楔2とが接する部分
の終端までのx軸方向の長さであるbの値が小さくな
る。すなわち、このような圧着治具では、楔2と加圧板
3とが接する部分の長さである(b−a)の値が小さく
なる。
【0137】上記圧着治具では、楔と加圧板との接触部
分が少ないため、楔及び加圧板の形状に多少のばらつき
があっても、加圧力のばらつきが生じにくく、安定した
状態でワークを圧着できる。
【0138】ここで、上記圧着治具における、楔と加圧
板の接する位置と、ワークに対する加圧力の分布のばら
つきの関係について、b−a=1[mm]、l=29[mm]、
c=36.8[mm]、q=2[kg重]、ワークの圧着面がy
=20.4[mm]、ワークの圧着範囲がx=−29〜29
[mm]である圧着治具を例にして説明する。
【0139】上記圧着治具について、aの値を1〜28
[mm]の範囲で変えて、垂直応力ρyを求めると、a=1
4[mm](b=15[mm])のときに、ρymax−ρyminが最
も小さな値(1.33[kg重])となることが分かる。し
たがって、楔と加圧板とが接する部分の中心が、加圧板
の中心と加圧板の端部との中央(x=l/2=14.5
[mm])に位置する場合に、ワークに対する加圧力の分布
のばらつきが最も小さくなる。
【0140】すなわち、ワークに対する加圧力の分布の
ばらつきを小さくするには、一方の楔と加圧板とが接す
る部分の中心が、加圧板の中心と加圧板の一方に端部と
の中央に位置し、且つ他方の楔と加圧板とが接する部分
の中心が、加圧板の中心と加圧板の他方の端部との中央
に位置するようにすればよい。
【0141】以上の説明から明らかなように、楔と加圧
板とが接する部分の長さ(b−a)、及び加圧板の長さ
lが設定されれば、最適なb及びaの長さを決定するこ
とができる。
【0142】実施例5−2 実施例5−1より、楔と加圧板とが接する部分の中心
は、加圧板の中心と加圧板の他方の端部との中央に位置
するようにすればよいことが分かる。すなわち、x=l
/2の位置が最もワークに対して均一に加圧力が得られ
るポイントである。そこで、本実施例では、ワークに対
する加圧力の分布をより均一なものとするために、x=
l/2の位置を中心に楔と加圧板とが接するときに、楔
と加圧板とが接する部分を拡大した場合について説明す
る。
【0143】すなわち、本実施例の圧着治具は、図10
及び図11に示すように、楔2と加圧板3とが接する部
分の中心が、加圧板3の中心と加圧板3の端部との中央
に位置するように形成されるとともに、実施例5−1の
圧着治具に比べて、楔2と加圧板3とが接する部分が大
きく形成されて成る。
【0144】したがって、本実施例の圧着治具は、実施
例5−1の圧着治具に比べて、支持部材1の中心軸(y
軸)から、加圧板3とそれぞれの楔2とが接する部分の
始端までのx軸方向の長さであるaの値が小さく、加圧
板3とそれぞれの楔2とが接する部分の終端までのx軸
方向の長さであるbの値が大きい。
【0145】上記圧着治具では、楔と加圧板との接触部
分が多いため、ワークに対する加圧力の分布がより均一
なものとなる。ただし、楔と加圧板との接触部分が多い
ため、楔及び加圧板の形状のばらつきの影響が加圧力の
ばらつきに大きく影響する。したがって、楔及び加圧板
の加工精度を十分に良くする必要がある。
【0146】上記のような圧着治具について、x=l/
2から±5[mm]の位置で楔と加圧板が接する場合と、x
=l/2から±10[mm]の位置で楔と加圧板が接する場
合とを比較して、楔と加圧板とが接する部分の大きさ
と、ワークに対する加圧力の分布のばらつきの関係につ
いて説明する。
【0147】なお、x=l/2から±5[mm]の位置で楔
と加圧板が接する場合の他の条件は、a=9.5[mm]、
b=19.5[mm]、l=29[mm]、c=36.8[mm]、
ワークの圧着面がy=20.4[mm]、ワークの圧着範囲
がx=−29〜29[mm]であり、qは式(6−1)を考
慮しq=7.4[kg重]である。また、x=l/2から±
10[mm]の位置で楔と加圧板が接する場合の他の条件
は、a=4.5[mm]、b=24.5[mm]、l=29[m
m]、c=36.8[mm]、ワークの圧着面がy=20.4
[mm]、ワークの圧着範囲がx=−29〜29[mm]であ
り、qは式(6−1)を考慮しq=3.7[kg重]であ
る。
【0148】上記のような条件にて垂直応力ρy を求め
ると、x=l/2から±5[mm]の位置で楔と加圧板が接
する場合は、σymax−σymin=1.09[kg重]であり、
x=l/2から±10[mm]の位置で楔と加圧板が接する
場合は、σymax−σymin=0.51[kg重]である。した
がって、ワークに対する加圧力の分布をより均一なもの
とするには、楔と加圧板とが接する部分をより大きくし
てやればよいことが分かる。
【0149】実施例5−1及び実施例5−2より明らか
なように、ワークに対する加圧力の分布をより均一なも
のとするには、楔と加圧板とが接する部分の中心を、加
圧板の中心と加圧板の他方の端部との中央に位置するよ
うにするとともに、楔と加圧板とが接する部分をより大
きくしてやればよい。
【0150】なお、数8は端部効果を考慮していないた
め、実際には圧着治具の外側(x=±l側)で垂直応力
ρy が少々小さくなる傾向がある。例えば、実施例5−
1及び実施例5−2では、楔と加圧板の接する位置の中
心を、l/2(=14.5[mm])より、0.5〜1[mm]
程外側にしたほうが、ワークに対してより均一に加圧力
を作用させることができる。ただし、この端部効果によ
る誤差は非常に小さいので実用上問題はないと言える。
なお、より詳細な検討を行いたい場合は、有限要素解析
などを行えばよい。ここで、有限要素解析はxの範囲全
てについて検討する必要はなく、x=l/2の少し外側
を検討するだけでよい。
【0151】(6)圧着治具の他の実施例 これまで説明してきた圧着治具では、第1の押さえ板と
支持部材の第1の支持面とが面で接し、第2の押さえ板
と支持部材の第2の支持面とが面で接するものとしてき
た。しかし、このように面で接する場合に各面の加工精
度が悪いと、応力の伝わり方が大きく変わってしまい、
ワークに対して均一に加圧力を作用させることができな
くなってしまう。したがって、このように応力を面で伝
える圧着治具では、高い加工精度が求められる。
【0152】そこで、各面の加工精度が悪くても、応力
の伝わり方があまり変わらないようにするために、図1
2に示すように、支持部材1の第1の支持面1aと接す
る第1の押さえ板4aの主面4cを、凸曲面状に形成し
てもよい。また、同様に、図12に示すように、加圧板
3と接する第2の押さえ板4bの主面4dを、凸曲面状
に形成してもよい。
【0153】このように、支持部材の第1の支持面と接
する第1の押さえ板の主面を凸曲面状に形成することに
より、第1の押さえ板と支持部材の第1の支持面とが接
する部分が線状となる。あるいは、加圧板と接する第2
の押さえ板の主面を凸曲面状に形成することにより、第
2の押さえ板と加圧板とが接する部分が線状となる。そ
して、このようにそれぞれが接する部分が線状に接触す
る状態、すなわち線接触の状態では、それぞれが接する
部分が少ないため、これらが接する面に多少のばらつき
があっても応力の伝わり方が大きく変わることはない。
したがって、このような圧着治具では、高い加工精度が
求められず、容易に加工することができる。
【0154】(7)楔の形状の検討 本発明の圧着治具は、一方の楔の近傍を拡大して示した
解析モデル図である図13又は図15に示すように、加
圧板3が略直方体状に形成され、加圧板3と接する楔2
の主面が、楔2と接する加圧板3の主面に対して平行な
平面状に形成され、支持部材1と接する楔2の主面が、
楔2と接する加圧板3の主面に対して傾斜角βを有する
平面状に形成され、楔2と接する支持部材1の第2の支
持面1bの両端部に、楔2の形状に対応するように、楔
2と接する加圧板3の主面に対して傾斜角βの傾斜面が
形成されて成る(以下、このような圧着治具を楔型圧着
治具と呼ぶ。)。
【0155】これに対して、楔を用いた圧着治具として
は、一方の楔の近傍を拡大して示した解析モデル図であ
る図14又は図16に示すように、支持部材1の第2の
支持面1bを平面とし、第2の支持面1bと接する楔2
の主面が、第2の支持面1bに対して平行な平面状に形
成され、加圧板3と接する楔2の主面が、第2の支持面
1bに対して傾斜角βを有する平面状に形成され、楔2
と接する加圧板3の主面の両端部に、楔2の形状に対応
するように、第2の支持面1bに対して傾斜角βの傾斜
面が形成されて成る圧着治具も考えられる(以下、この
ような圧着治具を逆楔型圧着治具と呼ぶ。)。
【0156】そこで、楔型圧着治具と逆楔型圧着治具の
違いについて、図13に示す楔型圧着治具と図14に示
す逆楔型圧着治具とを比較して説明する。ここで、図1
3及び図14において、楔の圧入方向をx軸方向とし、
支持部材1の中心軸の方向、すなわち楔の圧入方向に垂
直な方向をy軸方向とし、支持部材1の中心軸をx軸の
原点とする。また、図13に示す楔型圧着治具と図14
に示す逆楔型圧着治具とは、支持部材1、楔2及び加圧
板3の外形寸法が同じであるとする。
【0157】そして、これらの圧着治具において、楔2
を圧入する方向に力Pが作用したときには、楔2と支持
部材1の第2の支持面1bとが接する面2a、及び楔2
と加圧板3とが接する面2bに荷重Qが作用する。
【0158】このとき、ワークに対する加圧力をより均
一なものとするためには、面2aの範囲が、加圧板3の
中心から端部までの長さの半分の位置(x=l/2の位
置)を中心に、左右対称となっていることが好ましく、
同様に面2bの範囲も、加圧板3の中心から端部までの
長さの半分の位置(x=l/2の位置)を中心に、左右
対称となっていることが好ましい。
【0159】そこで、楔型圧着治具は、面2bの範囲が
x=l/2の位置から左右に対象となるように、加圧板
3の端部に切り欠き部3bが形成される。これにより、
楔2の先端部分2cが面2aの奥にまで飛び出しても、
楔2と加圧板3とが接する部分、すなわち面2bはx=
l/2の位置から左右に対称となる。なお、加圧板3の
端部の形状は、切り欠き部3bに限られるものではな
く、面2bの範囲を規定することができればどのような
形状でもよく、例えば、図13中破線3mで示すように
加圧板3の端部に段差を形成してもよい。
【0160】これに対して、逆楔型圧着治具では、面2
aの範囲がx=l/2の位置を中心に左右対称となるよ
うにするためには、図14中斜線部分1mで示すよう
に、支持部材1の端部の幅を広げて、圧着治具の外形寸
法を大きくしなければならない。したがって、同じ外形
寸法ならば、楔型圧着治具の方が、ワークに対する加圧
力をより均一なものとすることができる。
【0161】すなわち、図13に示すような楔型圧着治
具では、面2aの範囲はx=l/2の位置から左右に±
fの範囲であり、面2bの範囲はx=l/2の位置から
左右に±eの範囲である。そして、図14に示すような
逆楔型圧着治具では、面2aの範囲はx=l/2の位置
から左にf、右にe範囲であり、面2bの範囲はx=l
/2の位置から左右に±fの範囲である。
【0162】このように、楔型圧着治具では、面2bの
範囲、すなわち加圧板3に荷重が作用する範囲が±eの
範囲であるのに対し、逆楔型圧着治具では、この範囲は
±fの範囲であり、e>fである。したがって、実施例
5−2で説明したように、加圧板3に荷重が作用する範
囲が広い方がワークに対する加圧力がより均一になるの
で、楔型圧着治具の方がワークに対して加圧力をより均
一に作用できるといえる。
【0163】また、逆楔型圧着治具では、加工上のばら
つき等が生じると、楔2の傾斜面と加圧板3とが接する
部分の端部d3、d4において片当たり等が生じて、こ
の部分に集中荷重が作用する。そして、これらの端部d
3、d4は、面2b上にあるため、面2bに対して直接
に集中荷重が作用してしまう。これに対して、楔型圧着
治具においては、加工上のばらつき等が生じると、楔2
の傾斜面と支持部材1とが接する部分の端部d1、d2
において片当たり等が生じて、この部分に集中荷重が作
用する。しかしながら、これらの端部d1、d2は、面
2bから離れた所にあるため、面2bでは分布荷重に変
換される。したがって、楔型圧着治具は、逆楔型圧着治
具に比べて、加工上のばらつきの影響が少ないという利
点がある。
【0164】ところで、図15に示す楔型圧着治具のよ
うに、楔2の先端部2cが、支持部材1の第2の支持面
1bに形成された傾斜面のエッジ部d5よりも奥に行か
ないように楔2を圧入した場合は、楔2と支持部材1と
が接する面2aの範囲と、楔2と加圧板3とが接する面
2bの範囲とを一致させることができる。
【0165】あるいは、図16に示す逆楔形圧着治具の
ように、楔2の先端部2cが、加圧板3に形成された傾
斜面のエッジ部d6よりも奥に行かないように楔2を圧
入した場合は、楔2と支持部材1とが接する面2aの範
囲と、楔2と加圧板3とが接する面2bの範囲とを一致
させることができる。
【0166】すなわち、図15に示す楔型圧着治具で
は、面2aの範囲はx=l/2の位置から左右に±e
(=±f)の範囲であり、面2bの範囲もx=l/2の
位置から左右に±e(=±f)の範囲である。そして、
図16に示す逆楔型圧着治具でも同様に、面2aの範囲
はx=l/2の位置から左右に±e(=±f)の範囲で
あり、面2bの範囲はx=l/2の位置から左右に±e
(=±f)の範囲である。
【0167】しかし、このような圧着治具では、楔2が
圧入されたときに、楔2のエッジ部において集中荷重が
発生しやすくなる。すなわち、図15に示す楔型圧着治
具では、支持部材1の第2の支持面1bと接する楔2の
エッジ部d7において、あるいは図16に示す逆楔型圧
着治具では、加圧板3と接する楔2のエッジ部d8にお
いて、集中荷重が発生しやすくなる。
【0168】したがって、このような場合は、実施例5
−2で述べたように楔2と加圧板3とが接する部分を広
くしても、楔2から加圧板3に対する荷重が等分布荷重
とならないため、ワークに対する加圧力の分布を均一に
することは難しい。
【0169】そのため、このような場合は、楔2と加圧
板3とが接する部分を広くするよりも、楔2から加圧板
3に対する荷重の中心が、加圧板3の中心と加圧板3の
他方の端部との中央に確実に位置するように、楔2と加
圧板3とが接する部分を狭くしたほうがよい。
【0170】なお、このように集中荷重が生じる場合
に、逆楔型圧着治具では、集中荷重が生じる楔2のエッ
ジ部d8が、面2b上にあるため、面2bに対して直接
に集中荷重が作用するのに対して、楔型圧着治具では、
集中荷重が生じる楔2のエッジ部d8が、面2bから離
れた所にあるため、面2bでは分布荷重に変換される。
したがって、楔型圧着治具は、逆楔型圧着治具に比べ
て、この集中荷重の影響が少ないという利点がある。
【0171】ところで、上述した垂直応力の解析では、
楔2と加圧板3とが接する面に等分布荷重が作用し、こ
の部分の第1の押さえ板、ワーク、第2の押さえ板及び
加圧板の厚さの合計をcとしている。そして、図13及
び図15に示す楔型圧着治具は、楔2と加圧板3とが接
する面2bがx軸に平行で、この部分の第1の押さえ
板、ワーク、第2の押さえ板及び加圧板の厚さは一定で
あり、等分布荷重が加圧板に対して垂直に作用するた
め、上記垂直応力の解析に適合する。これに対して、図
14及び図16に示す逆楔型圧着治具は、楔2と加圧板
3とが接する面2bがx軸に対して傾斜しており、この
部分の第1の押さえ板、ワーク、第2の押さえ板及び加
圧板の厚さが一定ではなく、等分布荷重が加圧板に対し
て傾斜して作用するため、上記垂直応力の解析を適用し
た場合は誤差が生じてしまう。
【0172】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の圧着治具では、楔を使用して押さえ板に荷重を与える
構造を有しているため、押さえ板の広い範囲にわたって
荷重が与えられ、ワークに対して均一に加圧することが
できる。
【0173】また、本発明によれば、上述したような解
析に基づいて、圧着時の条件を容易且つ正確に自由に設
定できるので、容易に所望の条件にて圧着することがで
きる。すなわち、本発明では、楔の傾斜角に注目して、
一旦圧入された楔がはずれないための条件、ワークに対
する加圧力と楔を圧入するときの力の関係、及び楔を外
すときに必要な力等に関して、関係式が明らかにされて
おり、所望する圧着条件を容易に実現できる。
【0174】また、本発明は、圧着時の条件を容易且つ
正確に設定することができるため、一対の磁気コア半体
を磁気ギャップを介して圧着して磁気コアを作製する磁
気ヘッド用圧着治具として、特に高い工業的価値を有す
る。すなわち、磁気コアの作製に本発明の圧着治具を用
いることにより、磁気ヘッドの磁気ギャップ長の精度を
向上させることができ、磁気ヘッドの性能向上、及び不
良率の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した圧着治具の一構成例を示す斜
視図である。
【図2】加圧装置の一構成例を示す正面図である。
【図3】楔を圧入する方向に力を作用させたときの解析
モデル図である。
【図4】楔をはずす方向に力を作用させたときの解析モ
デル図である。
【図5】本発明を適用した圧着治具の設計方法の一例を
説明するためのフローチャートである。
【図6】図1に示す圧着治具に対して、直交座標系
(x,y)を設定した解析モデル図である。
【図7】図1に示す圧着治具に対して、楔と加圧板が接
する部分に等分布荷重を作用させた状態を示す解析モデ
ル図である。
【図8】本発明を適用した圧着治具の他の構成例を示す
斜視図である。
【図9】図8に示す圧着治具に対して、直交座標系
(x,y)を設定した解析モデル図である。
【図10】本発明を適用した圧着治具の他の構成例を示
す斜視図である。
【図11】図10に示す圧着治具に対して、直交座標系
(x,y)を設定した解析モデル図である。
【図12】本発明を適用した圧着治具の他の構成例を示
す側面図である。
【図13】本発明を適用した圧着治具の一構成例につい
て、楔の近傍を拡大して示す解析モデル図である。
【図14】楔を用いた圧着治具の他の構成例について、
楔の近傍を拡大して示す解析モデル図である。
【図15】本発明を適用した圧着治具の他の構成例につ
いて、楔の近傍を拡大して示す解析モデル図である。
【図16】楔を用いた圧着治具の他の構成例について、
楔の近傍を拡大して示す解析モデル図である。
【図17】従来の圧着治具の構成例を示す斜視図であ
る。
【符号の説明】
1 支持部材 1a 第1の支持面 1b 第2の支持面 2 楔 3 加圧板 4a 第1の押さえ板 4b 第2の押さえ板 5 ワーク 5a 圧着面 6 圧着治具 10 ステージ 11 シリンダー 12 押し込みロッド 13 バルブ 14 ストッパー 15 レギュレーター

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧着されるワークを挟み込む第1の押さ
    え板及び第2の押さえ板と、第2の押さえ板に対して圧
    力を加える加圧板と、一対の楔と、平行に対向する第1
    の支持面と第2の支持面を有する支持部材とから成り、 第1の押さえ板、ワーク、第2の押さえ板、及び加圧板
    をこの順に重ね合わせ、これらを支持部材の第1の支持
    面と第2の支持面の間に、第1の押さえ板が支持部材の
    第1の支持面に接するように配し、支持部材の第2の支
    持面と加圧板の間隙の両端部に一対の楔を圧入し、ワー
    クを圧着する圧着治具において、 加圧板が略直方体状に形成され、楔の加圧板と接する面
    が、加圧板の楔と接する面に対して平行な平面状に形成
    され、楔の第2の支持面と接する面が、加圧板の楔と接
    する面に対して傾斜角βを有する平面状に形成され、第
    2の支持面の両端部に、楔の形状に対応するように、加
    圧板の楔と接する面に対して傾斜角βの傾斜面が形成さ
    れて成り、次式 tan(ρ1−β)+tanρ2>0 (ただし、βは楔の第2の支持面と接する面と、加圧板
    の楔と接する面との成す角度、ρ1は楔と支持部材との
    摩擦角、ρ2は楔と加圧板との摩擦角である。)なる条
    件を満たすことを特徴とする圧着治具。
  2. 【請求項2】 楔を圧入する際に楔に作用させる力PS
    が、次式 PS=A・F{tan(ρ1+β)+tanρ2}/2 (ただし、βは楔の第2の支持面と接する面と、加圧板
    の楔と接する面との成す角度、ρ1は楔と支持部材との
    摩擦角、ρ2は楔と加圧板との摩擦角、Fはワークに対
    する加圧力、Aはワークの圧着部分の面積である。)で
    表されることを特徴とする請求項1記載の圧着治具。
  3. 【請求項3】 一方の楔と加圧板とが接する部分の中心
    が、加圧板の中心と加圧板の一方の端部との中央に位置
    し、且つ他方の楔と加圧板とが接する部分の中心が、加
    圧板の中心と加圧板の他方の端部との中央に位置するこ
    とを特徴とする請求項1又は2記載の圧着治具。
  4. 【請求項4】 支持部材の第1の支持面と接する第1の
    押さえ板の主面が、第1の押さえ板と支持部材の第1の
    支持面とが線接触するように、凸曲面状に形成されて成
    ることを特徴とする請求項1、2又は3記載の圧着治
    具。
  5. 【請求項5】 加圧板と接する第2の押さえ板の主面
    が、第2の押さえ板と加圧板とが線接触するように、凸
    曲面状に形成されて成ることを特徴とする請求項1、
    2、3又は4記載の圧着治具。
  6. 【請求項6】 ワークが、磁気ギャップを介して接合さ
    れる磁気ヘッド用の一対の磁気コア半体であることを特
    徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の圧着治具。
  7. 【請求項7】 支持部材、押さえ板、加圧板及び楔が、
    セラミックス材料から成ることを特徴とする請求項1、
    2、3、4、5又は6記載の圧着治具。
  8. 【請求項8】 請求項1、2、3、4、5、6又は7記
    載の圧着治具を用いてワークを圧着する圧着方法におい
    て、 楔を圧入する際に楔に作用させる力PS を、次式 PS=A・F{tan(ρ1+β)+tanρ2}/2 (ただし、βは楔の第2の支持面と接する面と、加圧板
    の楔と接する面との成す角度、ρ1は楔と支持部材との
    摩擦角、ρ2は楔と加圧板との摩擦角、Fはワークに対
    する加圧力、Aはワークの圧着部分の面積である。)か
    ら算出することを特徴とする圧着方法。
  9. 【請求項9】 請求項1、2、3、4、5、6又は7記
    載の圧着治具の仕様を決定する圧着治具の設計方法にお
    いて、 楔と加圧板が接する面に、等分布荷重が作用する2次元
    問題を設定し、 上記2次元問題に対する境界条件をフーリエ級数で表現
    することにより、応力関数の一般解を求め、 この一般解を用いて、圧着治具の仕様を決定することを
    特徴とする圧着治具の設計方法。
  10. 【請求項10】 前記一般解が、x軸が支持部材と第1
    の押さえ板の境界線と一致し、y軸が支持部材の中心軸
    と一致し、原点がx軸とy軸の交点である直交座標系
    (x,y)において、次式、 【数1】 (ただし、数1において、σy はワークの圧着面に作用
    する垂直応力であり、aは加圧板の中心から加圧板と楔
    とが接する部分の始端までの長さであり、bは加圧板の
    中心から加圧板と楔とが接する部分の終端までの長さで
    あり、cは第1の押さえ板、ワーク、第2の押さえ板及
    び加圧板の厚みの合計であり、lは支持部材の中心から
    端部までの長さであり、qは加圧板と楔とが接する面に
    作用する等分布荷重である。)で表されることを特徴と
    する請求項9記載の圧着治具の設計方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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GB2333530A (en) * 1996-07-08 1999-07-28 Alcan Int Ltd Cast aluminium alloy for can stock
WO2003107717A1 (fr) * 2002-06-13 2003-12-24 Huanzhong Ding Haut-parleur a ruban

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