JPH08118317A - 改質木質材の製造方法 - Google Patents

改質木質材の製造方法

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JPH08118317A
JPH08118317A JP28752494A JP28752494A JPH08118317A JP H08118317 A JPH08118317 A JP H08118317A JP 28752494 A JP28752494 A JP 28752494A JP 28752494 A JP28752494 A JP 28752494A JP H08118317 A JPH08118317 A JP H08118317A
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oil
wood material
drying
acid
liquid
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JP28752494A
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Shigeru Morishita
滋 森下
Akihisa Azuma
明久 東
Takayo Ogawa
貴代 小川
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Original Assignee
Daiken Trade and Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 外気に曝される外回り材や浴室等の水回り材
としての使用に適した防黴・防腐性、防蟻性、耐水性、
耐干割れ性を有する改善木材を経済的に且つ能率よく製
造する。 【構成】 亜麻仁油、大豆油等の乾性油に、サルチル
酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸とウンデシレン酸、
カプリン酸等の長鎖脂肪酸族一塩基酸と亜鉛塩とを乾性
油に対する亜鉛塩の臨界溶解温度以上で混合溶解させて
処理液を調合し、この処理液を木質材に注入含浸させ
て、空気の存在下で乾性油を酸化重合させることにより
乾燥させ、乾性油と亜鉛との優れた結合力によって処理
液を木質材内に強固に固定させ、防黴・防腐性、防蟻
性、耐水性、耐干割れ性を長期間に亘って発揮し得る改
質木材を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に防黴・防腐性、防
蟻性等の耐久性に優れた改質木材であって、通常の木質
材が使用される用途は勿論のこと、特に、外気に曝され
る外回り材や浴室、洗面室の床材等の水回り材などのよ
うに厳しい環境下においての使用に適した改質木質材の
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】木材は軽量で取扱性に優れていると共に
加工が容易であるため、床材等の建築用材料や家具その
他の各種製品として汎用されているが、デッキやベラン
ダなどの床材や舗道床、ベンチ等のように外気に曝され
る外回り材、或いは、湿気等の水分の影響を受ける水回
り材に使用すると、短期間で黴が発生したり、腐食した
り、反りや割れ等の寸法変化に伴う欠点が生じ、外観を
損するばかりでなく強度等の耐久性が著しく低下すると
いう問題点があった。
【0003】上記のような防黴・防腐性、防蟻性を改善
するには、従来からCCA(砒酸銅クロム)処理やクレ
オソート処理等が実施されてきたが、廃棄処理による環
境汚染が生じるという将来的な問題点がある。そのた
め、環境汚染等の問題点が生じない木質材の改質方法と
して、木質材にホルマール化やアセチル化等の化学修飾
処理をする方法も行われており、この方法によれば高い
防腐性能や防蟻性能を有する改質木材を得ることができ
るが、未反応物や副反応生成物の除去処理に多くの工数
を必要として製造が複雑になると共に上記のような外回
り材や水回り材として使用するには高価につくので、使
用用途が限定されるものである。そこで、脂肪酸の金属
塩を含む処理液を木質材に含浸させる処理方法が上記方
法の問題点を解消する手段として検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな脂肪酸の金属塩は、少量の添加では、木質材に高い
防黴・防腐性や防蟻性を付与することが困難であり、且
つその効果の長期間に亘る持続性が期待できない。ま
た、外回り等の厳しい使用条件下においても耐えるため
には防黴・防腐性や防蟻性ばかりでなく、耐水性、耐干
割れ性等の性能を付与することが必要である。このた
め、脂肪酸の金属塩の添加量を増加させればよいが、そ
うすると溶媒に対する溶解性が低下したり処理液の粘度
の上昇が生じたりして取扱性や木質材に対する注入性が
低下するという問題点がある。
【0005】また、脂肪酸の金属塩は水分散液として採
用されることも多いが、木質材に適用した場合には耐水
性、耐干割れ性等の向上が期待し難いものである。従っ
て、等量の添加量であっても、防黴・防腐、防蟻の効果
がより高く、その上、耐水性、耐干割れ性等の性能が付
与されて外回りや水回り等の厳しい使用条件下でも耐え
ることができる新規な酸金属塩系薬剤による木質材の処
理が望まれている。本発明はこのような要望を満たすこ
とのできる改質木質材の製造方法の提供を目的とするも
のである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明の改質木質材の製造方法は、乾性油、半乾性油
等の乾性油系液体に、芳香族カルボン酸と長鎖脂肪族一
塩基酸の複合多価金属塩を溶解してなる処理液を木質材
に含浸させたのち、乾性油を酸化重合させて乾燥させ、
木質材内に含浸した複合多価金属塩を木質材内に固定さ
せることを特徴とするものである。
【0007】また、請求項2に記載した発明は、乾性
油、半乾性油等の乾性油系液体と、芳香族カルボン酸と
長鎖脂肪族一塩基酸の複合亜鉛塩との混合液を複合亜鉛
塩の乾性油系液体に対する臨界溶解温度以上の温度に加
熱して処理液を調製し、この処理液を木質材に含浸させ
たのち、処理液中の乾性油を酸化重合させて乾燥させ、
木質材内に含浸した複合亜鉛塩を木質材内に固定させる
ことを特徴とする改質木材の製造方法である。なお、請
求項3に記載したように、これらの改質木材の製造方法
において、処理液を含浸した木質材の表面を、さらに、
乾燥促進剤を添加した加熱乾性油系液体で処理すること
が好ましい。
【0008】
【作用】乾性油、半乾性油等の乾性油系液体に複合多価
金属塩を溶解してなる処理液を木材に含浸させると、乾
性油の酸化重合によって複合多価金属塩は木質材に固定
し、乾燥後は殆ど溶脱しない。そして、長鎖脂肪族一塩
基酸と殺菌作用のある芳香族カルボン酸との複合金属塩
によって木材の防腐性はさらに高まり、長鎖脂肪族一塩
基酸と同一の金属濃度における抵菌性を向上させると共
に乾性油系液体の乾燥によって木質材に撥水性、耐水性
が付与され、複合多価金属塩の殺菌作用と相まって長期
間に亘って優れた防黴・防腐性、防蟻性を発揮し、且つ
表面汚染が少なく、その上、干割れ等の寸法変化の発生
を抑制できる改質木質材を得ることができる。
【0009】また、請求項2に記載した発明において
は、乾性油系液体に芳香族カルボン酸と長鎖脂肪族一塩
基酸の複合亜鉛塩を添加し、この複合亜鉛塩の乾性油系
液体に対する臨界温度以上の温度に調整した処理液を木
質材に含浸させた後、乾燥するものであるから、長鎖脂
肪族一塩基酸の亜鉛塩は、乾性油系液体に対して常温以
上の臨界溶解温度を有しているにも拘わらず、長鎖脂肪
族一塩基酸と芳香族カルボン酸の複合亜鉛塩とすること
によって長鎖脂肪族一塩基酸の亜鉛塩単独の場合に比較
して臨界溶解温度を低減させることができ、従って、処
理液の調整や木質材への含浸処理、保管等の取扱性が容
易となる。そして、これらの複合亜鉛塩と乾性油系液体
からなる処理液を木質材に含浸、乾燥して得られる改質
木質材は、CCA処理された木質材のように銅による不
自然な緑色の色彩を呈することもなく、オイルフィニッ
シュ様の良好な仕上げ外観を付与される。
【0010】さらに、請求項3に記載したように、処理
液を含浸処理してなる木質材の表面を必要に応じて乾燥
促進剤を添加した加熱乾性油系液体で処理すれば、乾性
油性液体の乾燥が一層促進されて表面のベトツキ感や汚
染の殆ど生じない優れた仕上げ外観を呈した改質木質材
を得ることができる。
【0011】
【実施例】次に、本発明の実施例を詳述すると、まず、
乾性油、半乾性油等の乾性油系液体に、芳香族カルボン
酸と長鎖脂肪族一塩基酸の複合多価金属塩を溶解して処
理液を調製する。上記乾性油系液体としては、亜麻仁
油、大豆油、トール油、綿実油、コーン油、サフラワー
油等であって、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、
エレオステアリン酸、リノシール酸等の複数の脂肪酸成
分を含むものや、該脂肪酸を含むエステル類としての長
油アルキッド、ボイル油、ウレタン変性油などが使用さ
れ、これらの乾性油系液体において、特に亜麻仁油や大
豆油は、安価に入手でき且つ木質材内に含浸させた時
に、該木質材に良好な外観と耐水性を付与できるので好
ましい。
【0012】また、このような乾性油系液体に、木質材
に上記処理液を注入含浸させた際に乾性油の酸化重合を
促進して乾燥性を早めるために鉛、カルシウム、セリウ
ム、ジルコニウム、亜鉛、銅、バリウム等の単体もしく
はその化合物からなる補助ドライヤーや、コバルト、マ
ンガン等の単体もしくはその化合物からなるさらに乾燥
促進性の高い活性ドライヤーを添加しておくこともでき
る。さらに、有機溶媒等の適宜な溶媒を添加しておいて
もよい。
【0013】一方、乾性油系液体に混合溶解させる芳香
族カルボン酸としてはサルチル酸、安息香酸、アスピリ
ン、桂皮酸、pーヒドロキシ安息香酸、マンデル酸等で
あり、長鎖脂肪族一塩基酸としては、ウンデシレン酸、
カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルシチン
酸、パルシトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リ
ノール酸、リノレン酸、リノシール酸等や、これらの脂
肪酸の混合物であるアマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪
酸、大豆油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、トール油脂肪
酸、綿実油脂肪酸等がある。また、多価金属としては亜
鉛、銅、マンガン、ニッケル、鉄、錫、アンチモン、マ
グネシウム等が用いられる。そして、これら多価金属は
その酸化物、炭酸化物、水酸化物などの化合物として使
用される。
【0014】芳香族カルボン酸と長鎖脂肪族一塩基酸の
複合多価金属塩とは、例えば、サルチル酸ーオレイン酸
亜鉛のように、上記芳香族カルボン酸と上記長鎖脂肪族
一塩基酸の多価金属の塩であり、芳香族カルボン酸と長
鎖脂肪族一塩基酸および多価金属塩とをそれぞれ一種ま
たは2種以上を選択して組み合わせることによって芳香
族カルボン酸と長鎖脂肪族一塩基酸の複合多価金属塩を
形成することができる。例えば、芳香族カルボン酸と長
鎖脂肪族一塩基酸、および多価金属の酸化物、塩化物
等、具体的には酸化亜鉛、水酸化亜鉛、塩化亜鉛等の多
価金属化合物とを混合し、反応を早める場合は加熱する
等の方法によって調製することができる。
【0015】このように調製した複合多価金属塩を、上
記乾性油系液体に溶解させて木質材の改質処理液を調合
する。この場合、乾性油系液体に対する複合多価金属塩
の添加溶解量は、乾性油系液体100 重量部に対して複合
多価金属塩を0.05〜30重量部程度添加する。乾性油系液
体に対する複合多価金属塩の添加溶解量は0.05重量部未
満になると、木質材に必要な防黴・防腐、防蟻の効力が
不十分となり、30重量部を越えて添加しても効力は大き
く向上せず、不経済となる。従って、乾性油系液体に対
する好ましい添加溶解量は乾性油液体100 重量部に対し
て2〜15重量部である。
【0016】なお、芳香族カルボン酸の金属塩は乾性油
系液体に溶解しないが、脂肪酸との複合金属塩とするこ
とにより乾性油系液体との溶解を可能にし、木質材の改
質処理液成分として使用することができるようにしてい
る。また、長鎖脂肪族一塩基酸の金属塩は、一般に乾性
油系液体に溶解するが、金属塩として木質材に優れた防
黴・防腐等の性能を付与し且つ木質材を着色させない亜
鉛塩を乾性油系液体に添加した場合、亜鉛塩は乾性油系
液体に対して常温より高い臨界溶解温度を有している。
例えば、亜麻仁油に亜麻仁油脂肪酸亜鉛を溶解させる場
合は60℃以上に加温して溶解させる必要がある。しかし
ながら、上記のように複合金属塩とすることによってそ
の臨界溶解温度を大幅に低下させることができ、処理液
の調合や保管、木質材への注入含浸等の取扱い条件を軽
減することができる。
【0017】上記のように調製した処理液により改質さ
れる木質材としては、木材板、木材角材、木材単板、集
成材、合板、LVL、木質繊維板、パーティクルボー
ド、ウェハーボード等のいずれであっても改質処理する
ことができる。また、木質材に処理液を注入含浸させる
手段としては浸漬法、塗布含浸法、減圧注入法、加圧注
入法、減圧加圧注入法等のいずれの手段を採用してもよ
い。一方、木質材に含浸させる上記処理液は、乾性油系
液体に上記複合多価金属塩が溶解する温度以上に加熱し
て注入含浸するのであるが、その温度が200 ℃を越える
と木材成分の変質や分解が生じて木質材が劣化したり変
色を生じる虞れがあるので好ましくない。
【0018】上記処理液を木質材に注入含浸させる場
合、処理液が飽和状態となるまで注入してもよいが、飽
和状態に注入しないで、木質材内に空気を含ませた非飽
和状態に注入することもできる。このように、木質材内
に処理液を非飽和状態に注入含浸させると共にその含浸
中に処理液の温度をさらに上昇させると、温度の上昇に
よって木質材中で空気が膨張して材内の空隙率が増大す
ると共に処理液の粘度が低下して流動性が良好となり、
上記空隙内に拡散して木質材内全体に処理液が略均一に
含浸することになる。さらに、木質材に注入含浸させた
のち、常温下で放置すると、処理液は徐々に冷却して木
質材内の空気や処理液が収縮し、その収縮によって木質
材表面に付着残存する処理液が内部に吸収され、木質材
表面は乾性油系液体によるベトツキ感が殆ど生じなく且
つ容易に乾燥する。上記のような非飽和状態に注入する
と共に処理液の温度を上昇させることによる材内の処理
液拡散作用は、断面の比較的大きい木材板や角材に対し
てきわめて有効である。
【0019】また、処理液が木質材に飽和状態で注入含
浸させた場合や非飽和状態に含浸している状態であって
も、木質材に注入含浸後、上記のような空気や処理液の
収縮力にも拘わらず、該木質材の表面に処理液が残存す
ることがあり、乾燥処理してもベタツキ感を有している
場合が生じる。そこで、木質材に処理液を注入後、加熱
された乾性油系液体を入れている液槽等に、処理液を含
浸している木質材を浸漬して木質材の表面に付着してい
る余分な処理液を洗浄すると共に高温度の乾性油系液体
によって木質材表面を加熱したのち、液槽等から出して
木質材表面を放冷等によって冷却させると、木質材は空
気中の酸素との接触によって酸化重合が促進されると共
に表面に付着している処理液が木質材内に染み込んで乾
燥を早めることができる。
【0020】なお、木質材を浸漬させる高温度の乾性油
系液体としては、木質材に注入含浸する上記処理液の温
度よりも高い温度に加熱されたものを用いるものであ
り、通常50〜200 ℃程度に加熱される。このような乾性
油系液体は、上記処理液として用いた乾性油系液体を使
用することができ、また、処理液そのものであってもよ
い。さらに、この乾性油系液体にも、該乾性油系液体の
酸化重合を促進して乾燥を早めるために、上記した補助
ドライヤーや活性ドライヤーを添加しておいてもよい。
【0021】こうして処理液を注入含浸処理した木質材
は、酸素の存在下において材内の乾性油系液体を酸化重
合させる。即ち、処理液注入含浸処理木質材を常温で空
気に曝したり、或いは、加熱下で空気に曝すと、材内の
乾性油系液体は空気の存在によって酸化重合すると共に
処理液成分の該乾性油系液体及び複合多価金属塩は木質
材内に強固に固定し、外部に溶出する虞れがなくなる。
次に、本発明の具体的な実施例と比較例を示す。
【0022】実施例 サルチル酸とトール油脂肪酸と亜鉛との重量比が1.1 :
6.5 : 1になるように調整したサリチル酸とトール油脂
肪酸の複合亜鉛塩5.1 重量部(亜鉛として約0.6 重量
部)を、25℃の亜麻仁油94.9重量部に溶解させて処理液
を調合した。この処理液を厚さ0.5cm ×幅3.5cm ×長さ
3.5cm のベイツガ気乾材を入れた密閉注入容器内に注入
し、減圧条件6kPa で30分間、加圧条件1MPa で30分間
の減圧加圧処理することによりベイツガ気乾材に処理液
を注入含浸させた。この処理液を注入含浸したベイツガ
気乾材を容器から取り出して100 ℃のドライヤーで60分
間加熱処理した後、常温で2時間放置し、空気に曝すこ
とによって亜麻仁油を酸化重合させると共に乾燥させる
ことによって改質木材を得た。こうして得られた改質木
材は、表面に亜麻仁油によるベトツキ感や含浸ムラがな
く、オイルフィニッシュ様の良好な外観仕上がりとなっ
ていた。また、乾燥後の改質木材の重量増加率は53%で
あった。この改質木材をJIS Z 2911のかび抵抗性試験に
準じて試験を行ったところ、試験片のカビ接種部分を含
む試験体に菌糸の発育はなく、良好な防黴性が認められ
た。
【0023】比較例 上記実施例において、サリチル酸を加えずに、トール油
脂肪酸と亜鉛の重量比が8.6:1になるように調整したト
ール油脂肪酸亜鉛塩6.0 重量部(亜鉛として約0.6 重量
部)を、70℃に加温した亜麻仁油94.0重量部に溶解させ
て処理液を調合した。なお、実施例と同じ25℃に加温し
た亜麻仁油には、低温度のためにトール油脂肪酸亜鉛塩
は溶解しなかった。この処理液を実施例と同じベイツガ
試験片に実施例と同じ条件で注入含浸させたのち、該処
理液注入含浸ベイツガ試験片を実施例と同じ加熱処理及
び放置処理を行って処理木質材を得た。乾燥後の処理木
質材の重量増加率は56%であった。この処理木質材を実
施例と同じかび抵抗性試験に供したところ、菌糸の発育
が試験片の全露出面積の約1/3 を越える部分に認めら
れ、黴抵抗性が不十分であった。
【0024】そして、処理液中の亜鉛含有率が同じ程度
であれば、比較例のトール油脂肪酸亜鉛を亜麻仁油に溶
解させるよりも、実施例で示したようにサルチル酸とト
ール油脂肪酸の複合亜鉛塩の方が著しく高い防黴性能を
有していることが確認できた。
【0025】次に、亜麻仁油に対するサリチル酸とトー
ル油脂肪酸の複合亜鉛塩と、トール油脂肪酸の亜鉛塩と
のそれぞれの溶解性を試験した。その結果を次に示す。 試験例 1 トール油脂肪酸:サリチル酸:亜鉛=6.5 : 1.1 : 1の
重量比の複合亜鉛塩3.5 重量部(亜鉛分約0.4 重量部)
が亜麻仁油96.5重量部に溶解する温度は25℃であっ
た。 試験例 2 トール油脂肪酸:亜鉛=8.6 : 1の重量比のトール油脂
肪酸亜鉛塩3.9 重量部(亜鉛分約0.4 重量部)が、亜麻
仁油96.1重量部に溶解する温度は、60℃であった。 試験例 3 トール油脂肪酸:亜鉛=8.6 : 1の重量比のトール油脂
肪酸亜鉛塩3.0 重量部(亜鉛分約0.4 重量部)が、亜麻
仁油97重量部に溶解する温度は67℃であった。このよう
に、本発明における上記実施例に対応した試験例1に対
して試験例2、3で示したシール油脂肪酸亜鉛塩はいず
れも溶解温度が明らかに高く、処理液の調合や保管、注
入処理等の取扱や製造作業に手間がかかることが確認で
きた。
【0026】また、上記実施例と同一処理を行って得ら
れた厚さ1.5cm ×幅15cm×長さ3.5cm のベイツガ処理試
験片5片と、無処理の同一形状、大きさのベイツガ試験
片5片とを常温水4時間浸漬ー100 ℃ドライヤー乾燥8
時間を1サイクルとして15サイクルの乾湿繰り返しによ
る干割れ試験を行った。試験後に生じた干割れの本数を
数えたところ、上記ベイツガ処理試験片5片に生じた干
割れの総数は13本であったが、上記無処理のベイツガ試
験片5片に生じた干割れの総数は62本であり、処理試験
片が優れた耐干割れ性を有していることが確認できた。
【0027】さらに、実施例のベイツガ処理試験片の干
割れ試験における試験前後の乾燥重量を測定したところ
試験前と試験後の乾燥重量に変化はなく、木質材に含浸
して乾燥させた処理液の溶脱は生じないことが確認され
た。また、上記実施例で得られたベイツガ処理試験片
に、JWPA(日本木材保存協会)規定の第11号に基づ
いて防蟻効力試験を行ったところ、この処理試験片の試
験前に対する試験後の重量減少率は1.6 %であり、この
試験を無処理の同一木材に行ったところその重量減少率
は21.3%であって、上記処理試験片は優れた防蟻性を有
していた。
【0028】
【発明の効果】以上のように本発明の改質木材の製造方
法によれば、乾性油、半乾性油等の乾性油系液体に、芳
香族カルボン酸と長鎖脂肪族一塩基酸の複合多価金属塩
を溶解してなる処理液を木質材に含浸させたのち、乾性
油を酸化重合させて乾燥させ、木質材内に含浸した複合
多価金属塩を木質材内に固定させることを特徴とするも
のであるから、乾性油、半乾性油等の乾性油系液体に複
合多価金属塩を溶解してなる処理液を木材に含浸させる
ので、乾性油の酸化重合によって複合多価金属塩を木質
材に固定させることができ、乾燥後は殆ど溶脱しないも
のである。
【0029】その上、長鎖脂肪族一塩基酸と殺菌作用の
ある芳香族カルボン酸との複合金属塩によって木材の防
腐性をさらに増大させることができて長鎖脂肪族一塩基
酸と同一の金属濃度における抵菌性が向上すると共に乾
性油系液体の乾燥によって木質材に撥水性、耐水性が付
与され、複合多価金属塩の殺菌作用と相まって長期間に
亘って優れた防黴・防腐性、防蟻性を発揮し、且つ表面
汚染が少なく、干割れ等の寸法変化の発生を抑制できる
改質木質材を能率よく製造し得るものである。
【0030】また、請求項2に記載した発明において
は、乾性油系液体に芳香族カルボン酸と長鎖脂肪族一塩
基酸の複合亜鉛塩を添加し、この複合亜鉛塩の乾性油系
液体に対する臨界温度以上の温度に調整した処理液を木
質材に含浸させた後、乾燥するものであるから、長鎖脂
肪族一塩基酸の亜鉛塩は、乾性油系液体に対して常温以
上の臨界溶解温度を有しているにも拘わらず、長鎖脂肪
族一塩基酸と芳香族カルボン酸の複合亜鉛塩とすること
によって長鎖脂肪族一塩基酸の亜鉛塩単独の場合に比較
して臨界溶解温度を低減させることができ、従って、処
理液の調整や木質材への含浸処理、保管等の取扱性が容
易となるものである。そして、これらの複合亜鉛塩と乾
性油系液体からなる処理液を木質材に含浸、乾燥して得
られる改質木質材は、CCA処理された木質材のように
銅による不自然な緑色の色彩を呈することもなく、オイ
ルフィニッシュ様の良好な仕上げ外観となり、外回り材
として最適な改質木質材を提供できるものである。
【0031】さらに、請求項3に記載したように、処理
液を含浸処理してなる木質材の表面を必要に応じて乾燥
促進剤を添加した加熱乾性油系液体で処理すれば、乾性
油性液体の乾燥が一層促進されて表面のベトツキ感や汚
染の殆ど生じない優れた仕上げ外観を呈した改質木質材
を得ることができる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 乾性油、半乾性油等の乾性油系液体に、
    芳香族カルボン酸と長鎖脂肪族一塩基酸の複合多価金属
    塩を溶解してなる処理液を木質材に含浸させたのち、乾
    性油を酸化重合させて乾燥させ、木質材内に含浸した複
    合多価金属塩を木質材内に固定させることを特徴とする
    改質木質材の製造方法。
  2. 【請求項2】 乾性油、半乾性油等の乾性油系液体と、
    芳香族カルボン酸と長鎖脂肪族一塩基酸の複合亜鉛塩と
    の混合液を複合亜鉛塩の乾性油系液体に対する臨界溶解
    温度以上の温度に加熱して処理液を調製し、この処理液
    を木質材に含浸させたのち、処理液中の乾性油を酸化重
    合させて乾燥させ、木質材内に含浸した複合亜鉛塩を木
    質材内に固定させることを特徴とする改質木質材の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 処理液を含浸した木質材の表面を、必要
    に応じて乾燥促進剤を添加した加熱乾性油系液体で処理
    することを特徴とする請求項1または請求項2記載の改
    質木質材の製造方法。
JP28752494A 1994-10-26 1994-10-26 改質木質材の製造方法 Pending JPH08118317A (ja)

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