JPH08109204A - 塩化ビニル系重合体の製造方法 - Google Patents

塩化ビニル系重合体の製造方法

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JPH08109204A
JPH08109204A JP6274570A JP27457094A JPH08109204A JP H08109204 A JPH08109204 A JP H08109204A JP 6274570 A JP6274570 A JP 6274570A JP 27457094 A JP27457094 A JP 27457094A JP H08109204 A JPH08109204 A JP H08109204A
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紀彦 中野
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 塩化ビニル単量体を水性媒体中で懸濁重合す
るに際し、メタノール/ジメチルホルムアルデヒド溶液
とゼラチンと無機コロイドとを、水/メタノール溶媒に
溶解し、pH11.0に調節したものを重合体スケール
付着防止剤として重合器内に塗布しておき、重合開始剤
として、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパー
オキシネオデカノエートとt−ブチルパーオキシネオデ
カノエートとを組み合わせたものを使用して重合を行
う。 【効果】 重合時間を短縮しても、重合器内に重合体ス
ケールが付着することがなく、高品質の塩化ビニル系重
合体を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、塩化ビニル系重合体の
製造方法に関し、特に、塩化ビニル系重合体を高品質で
かつ重合体スケールの付着を防止しつつ、高い生産性で
製造するのに好適である塩化ビニル系重合体の製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】塩化ビニル系重合体は、一般に、塩化ビ
ニル単量体またはこれを主体とするビニル系単量体の混
合物を水性媒体中で油溶性重合開始剤を用いて懸濁重合
することにより製造される。この時に使用される重合開
始剤は、その種類により重合反応の発熱パターン、重合
時間、生産性、重合時の重合体スケール付着性、更には
重合体の初期着色性、熱安定性、匂い、耐抽出性等の品
質特性に大きな影響を与える。
【0003】近年、塩化ビニル系重合体の生産性向上を
目的として重合時間の短縮化が図られている。重合時間
短縮のための一方法として、重合開始剤の添加量を増加
することが考えられる。しかし、重合開始剤の添加量の
増加に伴い、重合体の品質の低下、特に初期着色性の低
下、熱安定性の低下が起こるという問題がある。そし
て、重合開始剤の残渣や分解生成物が増大することによ
り悪臭が発生し、抽出成分が増加し、さらには重合器内
の重合体スケール付着量が増加する等の問題がある。
【0004】ところで、重合器内の重合体スケール付着
を防止するために、従来より、染料、顔料、水溶性高分
子化合物、亜硝酸塩、含窒素芳香族化合物、複素環式化
合物、ヨード化合物、ピロガロール誘導体、フェノール
性化合物、芳香族アミン化合物等を重合体スケール付着
防止剤として重合器の内面に塗布することが行われてい
る。しかし、これら従来の重合体スケール付着防止剤で
は、塩化ビニル系重合体の製造時における重合器内での
重合体スケールの付着、特に気相部及び気相−液相界面
部分における重合体スケール付着を有効に抑制すること
ができない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記の従来技
術の問題に鑑みなされたもので、その課題は、初期着色
性等の品質が良好である塩化ビニル系重合体を、短い重
合時間でしかも重合器内の重合体スケールの付着を抑制
しつつ製造することができる製造方法を提供することに
ある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、このよ
うな課題を解決するものとして、重合器内壁面に重合体
スケール付着防止性の塗膜を有する重合器内で塩化ビニ
ル単量体またはこれを主体とするビニル系単量体の混合
物を水性媒体中で油溶性重合開始剤を用いて懸濁重合す
ることからなる塩化ビニル系重合体の製造方法におい
て、前記の重合体スケール付着防止性の塗膜が、(a) キ
ノン化合物を縮合することにより得られる分子量 400〜
50000 の縮合生成物、並びに(b) 水溶性高分子化合物、
無機コロイド及びアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から
選ばれる少なくとも1種を含有するアルカリ性液を前記
に内壁面に塗布し、乾燥することにより形成されたもの
であり、かつ前記の油溶性重合開始剤が、(A) 0.1モル
/リットルのベンゼン溶液の10時間半減期温度が30〜50
℃で、その構造中にベンゼン環又はアルコキシ基を有し
ない有機過酸化物と、(B) 3−ヒドロキシ−1,1−ジ
メチルブチルパーオキシネオデカノエートと、からなる
ことを特徴とする塩化ビニル系重合体の製造方法が提供
される。
【0007】即ち、本発明の塩化ビニル系重合体の製造
方法は、特定の重合体スケール付着防止性塗膜を有する
重合器内において、特定の油溶性重合開始剤を用いて懸
濁重合を行う点に新規な特徴がある。以下、詳しく説明
する。
【0008】重合体スケール付着防止性塗膜 本発明の方法に用いられるスケール付着防止性塗膜は、
内壁面に分子量400 〜50000 のキノン化合物縮合生成物
(a) 、及び水溶性高分子化合物等 (b)を含むアルカリ性
液を塗布、乾燥させて形成されたものである。
【0009】縮合生成物(a) の調製に使用されるキノン
化合物は、例えば、下記一般式(3)〜(6) で表される化
合物である。
【化3】
【化4】 (式中、R5 は−H,−NH2 , −Cl, −Br, −OH, −NO
2 , −COCH3 , −OCH 3, −N(CH3 ) 2 又は炭素原子数
1〜3のアルキル基であり、R6 は−H,−NH2, −OH,
−CH3 ,−COOH又は−SO3 H である) 具体的には、o-, m-及びp-ベンゾキノン、オキシ-p- ベ
ンゾキノン、クロル-p- ベンゾキノン、ブロム-p- ベン
ゾキノン、ジュロキノン、クロルアニル等が例示され
る。
【化5】
【化6】 (式中、R5 及びR6 は前記のとおりであり、R7 は−
H,−Cl, −Br, −OH,−COCH3 , −OCH 3 , −CH3
−COOH又は−SO3 H である)
【0010】具体的には、6-メチル-1,4- ナフトキノ
ン、2-メチル-1,4- ナフトキノン、ローソン、ユグロ
ン、プルンバギン、α−ナフトキノン、β−ナフトキノ
ン等が例示される。前記のキノン化合物の中で好ましい
ものは、o-及びp-ベンゾキノン、α−ナフトキノン、β
−ナフトキノン及びローソンである。前記キノン化合物
は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用するこ
とができる。
【0011】キノン化合物の縮合生成物(a) は、分子量
が 400〜50000 の範囲内である必要があり、好ましく
は、600 〜20000 の範囲である。前記縮合生成物の分子
量が400 未満であると重合体スケール付着防止効果が低
く、50000 を超えると該縮合生成物の水及び有機溶媒に
対する溶解性が低下するため均一な塗布液を調製するこ
とができず、得られる塗膜も不均一である結果、重合体
スケール付着防止効果が低くなる。縮合生成物(a) は、
例えば、前記キノン化合物を適当な溶媒中、通常、20〜
150 ℃で2〜200 時間縮合反応させることにより製造さ
れる。
【0012】この際に、縮合反応を促進させるために、
反応をアルカリ性化合物の存在下で行うことが好まし
い。該アルカリ性化合物の存在下で反応を行う場合、前
記キノン化合物を、通常20〜150 ℃で1〜100 時間反応
させることにより所望の分子量の縮合生成物を製造する
ことができる。また、その場合の該アルカリ性化合物の
使用量は、キノン化合物100 重量部当たり0.01〜100 重
量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1 〜10重量部
の範囲である。該アルカリ性化合物としては、例えば、
LiOH、NaOH、KOH 等のアルカリ金属の水酸化物等が例示
される。更に、前記の縮合反応において、必要に応じて
酸化剤を使用することもできる。かかる酸化剤として
は、ヨウ素、臭素、塩素、フッ素等の元素ないし分子状
の単体ハロゲン;例えば、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過ヨ
ウ素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム等のハロゲンの酸
素酸及び酸素酸塩;例えば、過酸化水素、過酸化ナトリ
ウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過
酸化物;例えば、過酢酸、ヘンゾイルパーオキサイド、
キュメンハイドロパーオキサイド、過安息香酸、p−メ
ンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;例え
ば、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸銅、塩化第一銅等の
鉄及び銅から選択される金属の塩化物及び硫酸塩;例え
ば、α,α′−アゾビスイソブチロニトリル、α,α′
−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ
化合物;例えば、ニトロベンゼン、o−,m−及びp−
オキシニトロベンゼン、o−,m−及びp−ニトロアニ
ソール、o−,m−及びp−クロロニトロベンゼン、o
−,m−及びp−ニトロ安息香酸、o−,m−及びp−
ニトロベンゼンスルホン酸等の芳香族ニトロ化合物等が
例示される。
【0013】前記の縮合反応に使用する溶媒としては、
例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類等の有機
溶媒を使用し、その中でも、水と混和性を有する有機溶
媒を使用するのが好ましい。水と混和性を有する有機溶
媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパ
ノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケト
ン等のケトン類;例えば、酢酸メチル、酢酸エチル等の
エステル類等が例示され、その中でも特にアルコール類
が好ましい。また、前記の水と混和性を有する有機溶媒
と水との混合溶媒を使用することもできる。
【0014】(b)水溶性高分子化合物等 塗布液は、縮合生成物(a) の他に、さらに(b) 水溶性高
分子化合物、無機コロイド及びアルカリ金属のケイ酸塩
からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する。そ
の結果、得られる塗膜のスケール付着防止作用はさらに
向上する。
【0015】水溶性高分子化合物:水溶性高分子化合物
としては、例えば、ゼラチン、カゼイン等の両性高分子
化合物;ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、カ
ルボキシメチルセルロース、アルギン酸等のアニオン性
高分子化合物;ポリビニルピロリドン、ポリアクリルア
ミド等のカチオン性含窒素高分子化合物;ポリビニルア
ルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプ
ロピルセルロース、ペクチン等のヒドロキシル基含有高
分子化合物等が挙げられる。水溶性高分子化合物の中で
好ましいものは、ゼラチン、カゼイン、ポリアクリル
酸、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルピロリ
ドン及びペクチンである。
【0016】無機コロイド:無機コロイドは、例えば、
水を分散媒とする分散法や、凝集法により製造される粒
子コロイドであり、コロイド粒子の大きさは1〜500 m
μである。無機コロイドとしては、具体的には、アルミ
ニウム、トリウム、チタン、ジルコニウム、アンチモ
ン、スズ、鉄等から選択される金属の酸化物及び水酸化
物のコロイド、タングステン酸、五酸化バナジウム、金
及び銀のコロイド、ヨウ化銀ゾル、セレン、イオウ、シ
リカ等のコロイド等が例示される。これらの中で好まし
いものは、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ
及び鉄から選択される金属の酸化物又は水酸化物のコロ
イド、並びにコロイドシリカである。
【0017】アルカリ金属ケイ酸塩:アルカリ金属のケ
イ酸塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリ
ウム等のアルカリ金属のメタケイ酸塩( M2 SiO 3 )、
オルトケイ酸塩( M4 SiO 4)、二ケイ酸塩( M2 Si2 O
3 )、三ケイ酸塩( M3 Si3 O 7 )、セスキケイ酸(
M4 Si3 O 10)等(ここでMはリチウム、ナトリウム、
カリウム等のアルカリ金属を示す。)、並びに水ガラス
が挙げられる。
【0018】水溶性高分子化合物、無機コロイド及びア
ルカリ金属ケイ酸塩のいずれもが一種単独でも二種以上
の組合せでも使用することができる。これらの (b)成分
は、前記の縮合生成物(a) 1重量部当たり、通常0.0
1〜10重量部であり、好ましくは0.05〜5重量部
である。好ましくは、水溶性高分子化合物と、無機コロ
イド及びアルカリ金属ケイ酸塩化ビニルの少なくとも一
方とを併用する。即ち、少なくとも、水溶性高分子化合
物と無機コロイドの組合せ、又は水溶性高分子化合物と
アルカリ金属のケイ酸塩の組合せで使用するのが好まし
い。水溶性高分子化合物と無機コロイドの組合せで使用
する場合には、水溶性高分子化合物 100重量部当たり、
無機コロイドを5〜3000重量部使用するのが好ましく、
更に、50〜1000重量部使用するのが好ましい。水溶性高
分子化合物とアルカリ金属のケイ酸塩の組合せで使用す
る場合には、水溶性高分子化合物 100重量部当たり、ア
ルカリ金属のケイ酸塩を5〜3000重量部使用するのが好
ましく、更に、50〜1000重量部使用するのが好ましい。
最も好ましいのは、水溶性高分子化合物、無機コロイド
及びアルカリ金属ケイ酸塩の三種を併用することであ
る。その際の好ましい配合は、前記の配合に準じる。
【0019】塗布液 重合体スケール付着防止性塗膜の形成に用いられる塗布
液は、例えば、前記の縮合反応の結果得られる縮合生成
物含有溶液に必要に応じて下記の溶媒を添加し、pHが
アルカリ性でない場合にはアルカリ性に調節することに
より調製される。また、塗布液は、例えば、前記縮合生
成物含有液を冷水に投入して縮合生成物を沈殿させた
後、その沈殿物を濾別、乾燥したものに下記の溶媒を添
加して、続いてpHをアルカリ性に調節することにより
調製してもよい。塗布液がアルカリ性とされることによ
り、縮合生成物(a) の溶媒に対する溶解性が向上する。
従って、塗布液が均一な溶液となるため、得られる塗膜
も均一化し重合体スケール付着防止効果が向上する。塗
布液は、pH7.5〜13.5の範囲であることが好ま
しく、特に、pH8.0〜13.5の範囲であることが
好ましい。pH調整に使用するアルカリ性化合物として
は、例えば、LiOH、NaOH、KOH、Na2 CO
3 、Na2 HPO4 、NH4 OH等のアルカリ金属化合
物及びアンモニア化合物、例えば、エチレンジアミン、
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタ
ノールアミン等の有機アミン化合物等が例示される。
【0020】本発明の重合体スケール付着防止剤の調製
に使用する溶媒としては、例えば、水;メタノール、エ
タノール、プロパノール、ブタノール、2−ブタノー
ル、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−
プロパノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチ
ル−2−ブタノール、2−ペンタノール等のアルコール
系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブ
チルケトン等のケトン系溶剤;ギ酸メチル、ギ酸エチ
ル、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル等のエ
ステル系溶剤;4−メチルジオキソラン、エチレングリ
コールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;フラン
類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ア
セトニトリル等の非プロトン系溶剤等が挙げられる。こ
れらの溶媒は適宜単独で又は二種以上の混合溶媒として
使用される。前記溶媒の中で好ましいものは、水、及び
水と混和性を有する有機溶媒と水との混合溶媒である。
前記した有機溶媒の中で水と混和性を有する有機溶媒と
しては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノー
ル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケト
ン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル等のエス
テル系溶剤が挙げられる。水と混和性を有する有機溶媒
と水との混合溶媒を使用する場合の有機溶媒の含有量
は、引火、爆発等の危険がなく、毒性等の取扱上の安全
の問題がない量とするのが好ましく、具体的には、有機
溶媒が50重量%以下であることが好ましく、更に、3
0重量%以下であることが好ましい。前記アルカリ性溶
液中の縮合生成物の濃度は、後記の総塗布量が得られる
限り、特に制限されながいが、通常0.001〜5重量
%程度、好ましくは0.01〜1重量%程度である。
【0021】塗膜の形成 前記のようにして得られた塗布液は少なくとも重合器内
壁面に塗布、乾燥され塗膜が形成される。乾燥は、例え
ば室温から100℃までの温度範囲で充分行われ、さら
に必要に応じて水洗する。こうして形成された塗膜によ
り、スケールの付着が効果的に防止される。重合体スケ
ール付着防止性塗膜は、重合器内壁面だけでなく、重合
中に単量体が接触する他の部位にも形成することが好ま
しい。例えば、撹拌翼、撹拌軸、バッフル、コンデン
サ、ヘッダ、サーチコイル、ボルト、ナット等が挙げら
れる。更に好ましくは、前記重合体スケール付着防止剤
は重合中に単量体が接触する部位以外であっても、重合
体スケールが付着する恐れのある部位、例えば未反応単
量体の回収系統の機器及び配管の内面等にも、前記塗膜
を形成した方がよい。具体的には、モノマー蒸留塔、コ
ンデンサ、モノマー貯蔵タンク、バルブ等の内面が挙げ
られる。
【0022】なお、塗布液を重合器内壁面等に塗布する
方法は、特に限定されず、例えばハケ塗り、スプレー塗
布、重合体スケール付着防止剤で重合器を満たした後に
抜き出す方法等を始めとして、そのほか特開昭57−6
1001号公報、同55−36288号公報、特公表昭
56−501116号公報、同56−501117号公
報、特開昭59−11303号公報等に記載の自動塗布
方法を用いることもできる。塗布液を塗布後の濡れた状
態の表面を乾燥する方法も限定されることはなく、例え
ば次のような方法を使用することができる。すなわち、
重合体スケール付着防止剤の塗布後、適当に昇温した温
風を塗布面に当てる方法、あるいは重合体スケール付着
防止剤を塗布すべき重合器内壁面及びその他の表面を予
め、例えば30〜80℃に加熱しておき、その加熱した
表面に重合体スケール付着防止剤を直接塗布する方法等
を使用することができる。そして塗布面の乾燥後は、そ
の塗布面を必要に応じて水洗する。このようにして得ら
れた塗膜は、乾燥後の総塗布量が、通常、0.001〜
5g/m2 、特に、0.05〜2g/m2 であることが
好ましい。以上の塗布作業は、1〜10数バッチの重合ご
とに行えばよい。形成された塗膜は高い耐久性を有し、
重合体スケールの付着防止作用が持続するので、必ずし
も1バッチの重合ごとに行う必要はないため、生産性が
向上する。
【0023】重合開始剤 本発明の方法に使用される油溶性重合開始剤は、(A)
0.1モル/リットルのベンゼン溶液の10時間半減期の温
度が30〜50℃でその構造中にベンゼン環またはアルコキ
シ基を有しない有機過酸化物と、(B) 3−ヒドロキシ−
1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエートと
からなる。(A) 成分が前記10時間半減期温度が30℃未満
の有機過酸化物であると、重合開始剤の活性が持続しに
くくなる。また、50℃を超えるものを使用すると、過度
に多量の重合開始剤を必要とするため、得られる重合体
の初期着色性、耐抽出性等の品質が低下する。また、分
子内にベンゼン環を有すると、得られる重合体の抽出テ
ストの際にUV吸収ピークが検出されるため重合体の医
療、食品等の分野への用途が制限される恐れがある。ま
た、分子内にアルコキシ基を有すると、重合器内で重合
体スケールの付着が起こり易くなる。
【0024】前記有機過酸化物(A) としては、例えば、
下記一般式(1) :
【化7】 (式中、R1 ,R2 は、それぞれ炭素原子数1〜15の置
換又は非置換のn−アルキル基、 sec−アルキル基、te
rt−アルキル基又は環状アルキル基である)で表される
ジアシル化合物、下記一般式(2) :
【化8】 (式中、R3 ,R4 は、それぞれ炭素原子数1〜20の置
換又は非置換のn−アルキル基、 sec−アルキル基、te
rt−アルキル基又は環状アルキル基である)で表される
パーエステル化合物等が挙げられる。前記ジアシル化合
物の具体例としては、例えば、イソブチリルパーオキサ
イド(10時間半減期温度:33℃、以下、同様に括弧内に
示す)等が挙げられる。前記パーエステル化合物の具体
例としては、例えば、t−ヘキシルパーオキシネオデカ
ノエート(45℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエ
ート(46℃)、t−ヘキシルパーオキシネオヘキサノエ
ート(49℃)、2,4,4−トリメチルペンチルパーオ
キシ−2−ネオデカノエート(36℃)、1−シクロヘキ
シル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート
(41℃)等が挙げられる。上述有機過酸化物(A) の中で
も、イソブチリルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオ
キシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカ
ノエート、t−ヘキシルパーオキシネオヘキサノエー
ト、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−
ネオデカノエート及び1−シクロヘキシル−1−メチル
エチルパーオキシネオデカノエートが好ましい。上述し
た有機過酸化物(A) は、1種単独で又は2種以上の組み
合わせで使用してもよい。
【0025】なお、一般に、有機過酸化物からなる開始
剤の10時間半減期温度は、以下のようにして求められる
ことが知られている。有機過酸化物の濃度が 0.1モル/
リットルのベンゼン溶液を密封容器に入れ、所定の温度
に保持し熱分解させ、時間に対する過酸化物の濃度変化
を測定する。この分解反応は近似的に一次反応とみなす
ことができるので、次の関係式が成り立つ。 dx/dt=k(a−x) ln〔a/(a−x)〕=kt (式中、xは分解した有機過酸化物の濃度、aは有機過
酸化物の初期濃度、kは分解速度定数、tは時間を示
す) 半減期t1/2 は、式でx=a/2のときであるから、
次の関係式: kt1/2 =ln2 が成り立つ。前記で測定した有機過酸化物の濃度変化と
式から定数kが求まるので、式から半減期t1/2
求められる。従って、10時間半減期温度とは、ある有機
過酸化物のt1/2 が10時間となる温度として求められ
る。
【0026】本発明の方法は、油溶性重合開始剤とし
て、前記有機過酸化物(A) と、(B) 3−ヒドロキシ−
1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート
〔CH3 -CH(OH)-CH2 -C(CH 3 ) 2 -O-O-CO-t-C 9 H 19
とを組み合わせて使用することによりにより、重合の立
ち上がり及び進行に伴う発熱を適度に制御することがで
きる。これら(A) 成分と(B) 成分との配合割合及び使用
量は、反応条件により多少の相違はあるが、一般には、
(A) 成分/(B) 成分の重量比で1/9〜9/1であるこ
とが好ましく、より好ましくは1/6〜5/1である。
この配合比が小さ過ぎると重合器内での重合体スケール
の付着を抑制することが困難となる場合があり、大き過
ぎると得られる重合体の初期着色性や熱安定性が低下す
る場合がある。(A) 成分と(B) 成分との合計使用量は、
例えば、平均重合1,000 の塩化ビニルホモポリマーの製
造において、ビニル系単量体の0.06〜0.5 重量%が適当
である。また、これらの重合開始剤は、重合開始剤の重
合器内への仕込み方法は特に制限されず、従来公知の方
法のいずれも利用することができ、例えば、溶剤で希釈
して溶液として仕込んでもよいし、水に分散させてエマ
ルジョンまたはサスペンジョンとして仕込んでもよい。
さらに、重合開始剤を水及び/又は懸濁剤と共に、ある
いは水及び/又は懸濁剤を仕込み終った後に仕込んでも
よく、単量体の仕込み後に重合器中にポンプで圧入して
もよい。
【0027】重合 本発明の塩化ビニル系重合体の製造方法のその他の条件
等(例えば、重合器への水性媒体、単量体、分散助剤等
の仕込み方法、仕込み割合等)は通常水性媒体中におけ
る塩化ビニル等の懸濁重合と同様でよい。重合は、重合
温度35〜60℃、重合時間2〜6時間の反応条件で行うの
が好ましい。
【0028】単量体としては、塩化ビニル単独の他、塩
化ビニルを主体とし、これと共重合し得る他の単量体と
の混合物(通常、塩化ビニルを50重量%以上)を用いる
ことができる(以下、塩化ビニル又は塩化ビニルを含む
単量体混合物を塩化ビニル系単量体という)。この塩化
ビニルと共重合し得る単量体としては、エチレン、プロ
ピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1
−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、
1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−
テトラデセン等のα−オレフィン;アクリル酸、アクリ
ル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸または
そのエステル;メタクリル酸、メタクリル酸メチル等の
メタクリル酸またはそのエステル;マレイン酸またはそ
のエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニ
ルエステル;ラウリルビニルエーテル、イソブチルビニ
ルエーテル等のビニルエーテル;無水マレイン酸;アク
リロニトリル;スチレン;塩化ビニリデン;その他塩化
ビニルと共重合可能な単量体が挙げられる。これらは単
独でまたは2種以上の組合せで用いられる。
【0029】分散剤も、塩化ビニル系単量体の水性媒体
中における懸濁重合に通常使用されているものであれば
よい。この分散剤としては、例えば、メチルセルロー
ス、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピル
セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の
水溶性セルロースエーテル;水溶性あるいは油溶性の部
分ケン化ポリビニルアルコール;アクリル酸重合体;ゼ
ラチン等の水溶性高分子;ソルビタンモノラウレート、
ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレー
ト、エチレンオキシドプロピレンオキシドブロックコポ
リマー等の油溶性乳化剤;ポリオキシエチレンソルビタ
ンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレ
ート、ラウリン酸ナトリウム等の水溶性乳化剤等が挙げ
られる。これらは1種単独でまたは2種以上の組合せで
使用される。
【0030】水性媒体は、通常、脱イオン水が使用され
る。更に、この重合系には、必要に応じて、塩化ビニル
系の重合に適宜使用される重合調整剤、連鎖移動剤、pH
調整剤、ゲル化改良剤、帯電防止剤、架橋剤、安定剤、
充填剤、酸化防止剤、緩衝剤、スケール防止剤等を添加
することも任意である。
【0031】
【実施例】以下、実施例と比較例とを示し、本発明を具
体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限される
ものではない。なお、以下の各例において、ジャケット
温度とは、重合器のジャケットに通水する冷却水のジャ
ケット入口での温度を意味し、重合器内の水性懸濁液の
温度を所定の重合温度に保つために適宜に調製される。
【0032】〔実施例1〕まず、本発明の重合体スケー
ル付着防止剤(I)を以下のように製造した。還流冷却
器を備えた内容積2リットルの反応器に、メタノール 4
50g 及び水450gの混合溶媒を添加して、続いてキノン化
合物(a) としてα−ナフトキノン 100g と、水酸化ナト
リウム10g を添加した。次に、前記反応器内を65℃に昇
温して、該反応器内の混合物を65℃で10時間反応させた
後、室温まで冷却した。このようにして縮合生成物(a)
の溶液を得た。
【0033】前記で得られた縮合生成物(a) の分子量を
以下の方法により測定した結果、3000であった。 ・分子量の測定 ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)に
より測定した。分子量は、ポリスチレン換算の数平均分
子量で示す。尚、測定条件は以下に示す。 カラム: ガードカラム 商品名 slim-pack GPC-800DP 、島津製作所社製 分析カラム 商品名 slim-pack GPC-803D,802D 、島津製作所社製 移動相: 10mM LiBr/DMF 流量 : 1.0 mL/min 検出器: RI 温度 60℃
【0034】縮合生成物(a) 、ゼラチン(b) 、コロイダ
ルシリカ(商品名: スノーテックスCXS−9:日産
化学工業(株)製、コロイド粒径:5〜7mμ)(c) と
を水/メタノール=7/3(重量比)を溶媒として、
(a) /(b) /(c) =1/1/1(重量比)、(a) +(b)
+(c) の合計濃度が 0.5%となるように調製しその溶液
をNaOHを用いてpH=11.0となるように調製し、重合体ス
ケール付着防止剤(I)を得た。
【0035】内容積が 2.1m3 のステンレス製重合器に
前記のように調製した重合体スケール付着防止剤(I)
を重合器の内壁及び攪拌軸、攪拌翼その他重合中に単量
体が接触する部分に塗布し、40℃で15分間加熱、乾燥し
て塗膜を形成後、重合器内を水洗した。次に脱イオン水
890kgと部分ケン化ポリビニルアルコール 350gとを水
溶液にして投入した。器内を50mmHgになるまで排気した
後、塩化ビニル単量体 700kgを仕込み、攪拌しながら、
更に表1に示した種類と量の重合開始剤をポンプで圧入
すると同時に昇温を始めて重合を開始した。重合温度を
55℃に保ちながら重合反応を行い、重合器の内圧が 6.0
kg/cm2 Gに低下した時点で重合を停止し、未反応単量
体を回収し、得られた重合体をスラリー状で器外に取り
出した後、器内のスケール付着状況を観察すると共に、
重合体を脱水乾燥して下記の方法による試験に供し、そ
の結果を表1に併記した。
【0036】・重合器内スケールの付着状況:評価は各
製造方法により100バッチの重合を繰り返した後に目
視による観察で行った。 ・嵩比重の測定 得られた重合体について、JIS K-6721 に従って測定し
た。 ・粒度分布の測定 得られた重合体について、JIS Z-8801に準じた #60、#1
00、#200の各篩を用いて篩分けし、通過量を計量して重
量%で表した。 ・フィッシュアイ量の測定 得られた重合体 100重量部、DOP50重量部、ステアリ
ン酸バリウム 0.1重量部、ステアリン酸カドミウム 0.1
重量部、セタノール 0.8重量部、すず系安定剤2.0重量
部、二酸化チタン 0.5重量部及びカーボンブラック 0.1
重量部を、 140℃の6インチロールで5分間混合混練
し、厚さ 0.3mmのシートとして分取し、このシートの 1
00cm2 中の白色透明粒子の数で示した。 ・抽出テスト:得られた重合体15gを蒸留水 300mlで抽
出ビンに希釈する。抽出ビンを滅菌器内に入れ、 125℃
で60分間放置する。冷却後、抽出ビンを取り出し、上澄
み液について、UV吸収および過マンガン酸カリウム消
費量を測定する。この際、重合体を入れる蒸留水のみの
サンプルをスタンダードとする。 (UV吸収)波長 220nmと 241nmとで吸光度を測定し基
準値との差が 220nmで0.08、 241nmで0.05以上であれば
×とする。 (過マンガン酸カリウム消費量)過マンガン酸カリウム
を添加後、チオ硫酸ソーダで滴定する。基準値との差が
1.00cc以上では×とする。 ・初期着色性:得られた重合体 100重量部に、ラウリル
酸すず1重量部、カドミウム系安定剤0.5重量部および
ジオクチルフタレート50重量部を配合し、2本ロールミ
ルを用いて 160℃で5分間混練した後、厚さ 0.8mmのシ
ートに成形した。つぎに、このシートを裁断して重ね、
4cm×4cm× 1.5cm(厚さ)の型枠に入れ、 160℃、65
〜70kgf/cm2 で加熱加圧して試料を作製した。これを目
視で観察して下記の基準で評価した。 ◎……比較例4と同程度。 ○……比較例4と比べて黄味が強い。
【0037】
【表1】 なお、表1中の重合開始剤における略号はそれぞれ下記
を意味する。 BPD :t−ブチルパーオキシネオデカノエート(46℃) CPD :α−クミルパーオキシネオデカノエート(36℃) HDPD:3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオ
キシネオデカノエート(36℃)
【0038】〔比較例1〕比較例の重合体スケール付着
防止剤(II) として、C.I.ダイレクトブルー110g 、C.
I.ベイシックブルー122g をイオン交換水2000mL に溶
解し、さらにフィチン酸17g を加えた水溶液を調製し、
重合体スケール付着防止剤(II) を得た。この重合体ス
ケール付着防止剤(II) を実施例1と同様に重合器内に
塗布し、50℃で10分間加熱、乾燥して塗膜を形成後、重
合器内を水洗いした。次に、重合開始剤を表1に示すよ
うにした以外は、実施例1と同様に塩化ビニル単量体の
重合を行い、重合体を得た。
【0039】〔比較例2〕比較例1において、重合開始
剤を表1に示すようにした以外は比較例1と同様にして
重合を行い、重合体を得た。
【0040】〔比較例3〕実施例1において、重合開始
剤を表1に示すようにした以外は比較例1と同様にして
重合を行い、重合体を得た。なお、重合開始2時間後に
ジャケット温度が冷却水温度25℃に達した。重合温度を
55℃に維持するためには、ジャケット温度を25℃より低
くする必要が生じたが、使用した重合装置の冷却能力で
はジャケット温度をそれより更に下げることができなか
った。このために、水性懸濁液の温度が3℃上昇して58
℃になった。
【0041】〔実施例2〜4、比較例4〜6〕内容積が
2.1m3 のステンレス製重合器に前記の重合体スケール
付着防止剤(I)を重合器の内壁及び攪拌軸、攪拌翼そ
の他重合中に単量体が接触する部分に塗布し、40℃で15
分間加熱、乾燥して塗膜を形成後、重合器内を水洗し
た。次に、脱イオン水 930kgと部分ケン化ポリビニルア
ルコール 760gとを水溶液にして投入した。器内を50mm
Hgになるまで脱気した後、塩化ビニル単量体 630kgを仕
込み、攪拌しながら、さらに表2、3に示した種類と量
の重合開始剤をポンプで圧入すると同時に昇温を始めて
重合を開始した。重合温度を51℃に保ちながら重合反応
を行い、内圧が 6.0kg/cm2 G に達した時点で重合を停
止し、未反応単量体を回収し、得られた重合体をスラリ
ー状で器外に抜き出し、脱水乾燥して以後の試験に供
し、その結果を表2、3に併記した。なお、比較例4で
は、重合開始3時間30分後にジャケット温度が冷却水温
度26℃に達し、重合装置の冷却能力ではジャケット温度
をそれより更に下げることができなかったために、水性
懸濁液の温度が器内の温度が 1.5℃上昇した。
【0042】
【表2】
【表3】 また、表2、3中の重合開始剤における略号はそれぞれ
下記を意味する。 BPD :t−ブチルパーオキシネオデカノエート(46℃) TPPD: 2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−ネ
オデカノエート(36℃) CPD :α−クミルパーオキシネオデカノエート(36℃) HDPD:3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオ
キシネオデカノエート(36℃)
【0043】〔比較例7〜9〕実施例2において、スケ
ール付着防止剤(I) に代え、前記のスケール付着防止
剤(II) を使用したほかは同様にして重合し、表4に示
した通りの開始剤を使用した。得られた重合体を乾燥
し、実施例1と同様の試験に供した。結果を表4に示
す。
【0044】
【表4】
【0045】〔実施例5〜6、比較例10〕内容積が 2.1
3 のステンレス製重合器に前記のように調製した重合
体スケール付着防止剤(I)を重合器の内壁及び攪拌
軸、攪拌翼その他重合中に単量体が接触する部分に塗布
し、40℃で15分間加熱、乾燥して塗膜を形成後、重合器
内を水洗した。次に、脱イオン水1030kgと部分ケン化ポ
リビニルアルコール 700gとを水溶液にして投入した。
器内を50mmHgになるまで脱気した後、塩化ビニル単量体
570kgを仕込み、攪拌しながら、さらに表5に示した種
類と量の重合開始剤をポンプで圧入すると同時に昇温を
始めて重合を開始した。重合温度を39℃に保ちながら重
合反応を行い、内圧が 4.5kg/cm2 G に達した時点で重
合を停止し、未反応単量体を回収し、得られた重合体を
スラリー状で器外に抜き出し、脱水乾燥して以後の試験
に供し、その結果を表5に併記した。
【0046】
【表5】 なお、表5中の重合開始剤における略号はそれぞれ下記
を意味する。 IBP :イソブチリルパーオキサイド(33℃) BPD :t−ブチルパーオキシネオデカノエート(46℃) HDPD:3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオ
キシネオデカノエート(36℃)
【0047】〔比較例11〜12〕実施例5及び実施例6に
おいて、スケール付着防止剤(I) に代え、上記のスケ
ール付着防止剤(II) を使用したほかは同様にして重合
し、得られた重合体を実施例1と同様の試験に供した。
結果を表6に示す。
【0048】
【表6】
【0049】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、初期着色性
等の品質が良好である、低重合度の塩化ビニル系重合体
を、短い重合時間でしかも重合器内の重合体スケールの
付着を抑制しつつ製造することができる。したがって、
生産性が著しく向上する。特に、従来困難であった重合
器内の気相部や界面近傍における重合体スケールの付着
がより確実に抑制され、重合器内の重合体スケール除去
作業の必要頻度も激減し、重合器の長期にわたる連続使
用が可能となる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重合器内壁面に重合体スケール付着防止
    性の塗膜を有する重合器内で塩化ビニル単量体またはこ
    れを主体とするビニル系単量体の混合物を水性媒体中で
    油溶性重合開始剤を用いて懸濁重合することからなる塩
    化ビニル系重合体の製造方法において、 前記の重合体スケール付着防止性の塗膜が、(a) キノン
    化合物を縮合することにより得られる分子量 400〜5000
    0 の縮合生成物、並びに(b) 水溶性高分子化合物、無機
    コロイド及びアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選ば
    れる少なくとも1種を含有するアルカリ性液を前記に内
    壁面に塗布し、乾燥することにより形成されたものであ
    り、かつ前記の油溶性重合開始剤が、(A) 0.1モル/リ
    ットルのベンゼン溶液の10時間半減期温度が30〜50℃
    で、その構造中にベンゼン環又はアルコキシ基を有しな
    い有機過酸化物と、(B) 3−ヒドロキシ−1,1−ジメ
    チルブチルパーオキシネオデカノエートと、からなるこ
    とを特徴とする塩化ビニル系重合体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記油溶性重合開始剤の (A)成分が、下
    記一般式(1) : 【化1】 (式中、R1 ,R2 は、それぞれ炭素原子数1〜15の置
    換又は非置換のn−アルキル基、 sec−アルキル基、te
    rt−アルキル基又は環状アルキル基である)で表される
    ジアシル化合物及び/又は下記一般式(2) : 【化2】 (式中、R3 ,R4 は、それぞれ炭素原子数1〜20の置
    換又は非置換のn−アルキル基、 sec−アルキル基、te
    rt−アルキル基又は環状アルキル基である)で表される
    パーエステル化合物である請求項1に記載の製造方法。
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