JPH0797721A

JPH0797721A - キトサン含有中空繊維及びそのシートの製造法

Info

Publication number: JPH0797721A
Application number: JP27325393A
Authority: JP
Inventors: Takamasa Kubo; 隆昌久保; Kazutoshi Yoshihara; 一年吉原; Jun Hosokawa; 純細川; Masashi Nishiyama; 昌史西山
Original assignee: Agency of Industrial Science and Technology
Current assignee: National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date: 1993-09-24
Filing date: 1993-09-24
Publication date: 1995-04-11

Abstract

(57)【要約】【構成】キトサン含有性接合菌類の培養によって得ら
れる菌体を低濃度の水酸化ナトリウム溶液で熱アルカリ
処理を行い、キトサン含有中空繊維を調製し、この中空
繊維をシート化する。【効果】本発明の新規なキトサン含有中空繊維を本発
明の製造法によって調製することにより、キチン・キト
サンを溶媒に溶かすことなく直接にキトサン含有シート
が製造できる。また、キトサン含有中空繊維中のアミノ
基に用途に応じた化学物質を付加することにより、特殊
な機能を持つシートが調製できる等、全く新しい素材と
しての利用ができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はキトサン含有性の接合菌
類の細胞壁を利用した主成分がキチン質からなる中空繊
維及びそのシートを提供するものである。この中空繊維
は、キチンやキトサンを含むことから、従来の甲殻類か
ら得たキチン・キトサンと同様に抗菌性に優れ、また、
キトサンに由来するアミノ基を持ち、化学反応性に富む
ことから化学修飾によって、特殊な機能を備えることが
可能である。これらのことから、抗菌性を持つフイルタ
ーやシート及び特殊な薬品を付加することによって全く
新しい素材としての利用ができる。また、シート化に際
しては、抄紙法と同様の工程を採用できるため、工業的
に大量生産が可能であり、種々の産業分野で利用でき
る。

【０００２】

【従来の技術】キチン・キトサン源としては甲殻類の蟹
殻や海老殻、接合菌類の細胞壁及びキノコ類等に含まれ
ることは良く知られている。現在、キチンやキトサンは
甲殻類の蟹殼、海老殻から化学処理によって工業的に生
産され、多くの産業分野で利用されている。一方、接合
菌類の発酵生産によるキチン・キトサンの生産は、各種
菌類について研究が行われているが、まだ工業化までに
は至っていない。キチンは、物理的・化学的に安定な性
質を持っており、工業的に使用するためにはジメチルホ
ルムアミド、ジメチルアセトアミド、Ｎ−メチルピロリ
ドン等と塩化リチウムとの組み合わせた溶媒、また、キ
トサンは有機酸・無機酸等の酸性溶媒に溶解させてい
る。このキチンやキトサンを用いたシートやフイルムは
医療用（特開平５−１２４９５６，特開平３−１５１９
７６，特開平３−２６８７６４，特開平５−５２７
４）、衣料用（特開平３−７６８０１）、トイレタリー
用（特開平３−１４３９０１）等多岐にわたっている。
これらの調製法は粉体状キチンやキトサンを粘着物質と
混合するとか、あるいは、キチンやキトサンを上記溶媒
や有機酸・無機酸等に溶解し、天然繊維、セルロース及
びその他の高分子物質等との複合化によって調製されて
いる。他方、微生物の細胞壁のキトサンからフイルムを
製造する方法としては、特開昭５５−９６９１に開示さ
れたものがあるが、これはその特許請求の範囲から明ら
かなように、キチン含有性の真菌類、酵母及びカビ類の
バイオマスを強アルカリ処理（ＮａＯＨ濃度３０〜５０
％，１１８〜１３０℃，４〜６時間）して可溶性物質を
除去するとともにキチンの脱アセチル化を行って得られ
るキトサン−グルカン錯体を５％酢酸中に分散させこれ
をガラスプレート上に噴霧し、乾燥して調製する方法で
あり、キトサンを酢酸に溶解させていることは明らかで
ある。一方、微生物（糸状菌）の菌体を原料として紙状
物を製造する方法は、特開昭５１−１１９０２に開示さ
れている。これは、その請求範囲から明らかなように培
養した糸状菌の菌体を水洗後そのまま原料として、ある
いは天然及び合成パルプと混抄して紙状物を製造する方
法である。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】キチンやキトサンの工
業的利用は、キチンは前述の様な特殊な溶媒にしか溶け
ず、また、キトサンは、有機酸や無機酸等の酸性溶液に
溶かして用いている。これらのシートを調製するために
は予めそれに適した溶媒に溶解するとか、あるいはこれ
らのキチンやキトサンドープから繊維化し、これをシー
ト化している。またキチン、キトサンと天然繊維、再生
繊維、及び半合成繊維との複合化においてもキチン、キ
トサンを溶解するための溶媒が必要である。しかし、用
途によっては使用できない溶媒もあり、また、シート化
後その溶媒を除去するための後処理が必要であるなどの
欠点がある。本発明は、従来の蟹殻や海老殻からではな
く、接合菌体の低濃度熱アルカリ処理によって、キトサ
ン含有量が２０％以上のキトサン含有中空繊維を提供す
るとともに本繊維中のキチン、キトサンを溶媒で溶かす
ことなく、抄紙法によってキトサン含有シートをも提供
する。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するために鋭意研究を重ねた結果、接合菌類の菌
体を低濃度熱アルカリ処理すると形態的には菌体の細胞
質が抜けた中空繊維状の物が得られることを見いだし
た。この中空繊維の構成成分を明らかにし、この中空繊
維に金属イオン、酵素及び各種の薬剤が付加できること
を見いだした。さらに、中空繊維中のキトサンの脱アセ
チル化度は、ｐＨを制御しつつ培養するとかなりの範囲
で制御できる方法も開発した。また、この中空繊維は、
シート化に際してのアスペクト比（中空繊維の径と長さ
の比）が適度であるとともに、天然繊維との混和性にも
優れていることを見いだし、これらの知見に基づいて本
発明を完成するに至った。

【０００５】すなわち、本発明はキトサン含有中空繊維
とともにそのシートをも提供するものである。以下に本
発明を詳細に説明する。本発明においては、接合菌類の
培養菌体を用いた。一例としてＲｈｉｚｏｐｕｓａｃ
ｅｔｏｉｎｕｓＨＵＴ１２１９の培養では培養条件
（ｐＨ等）によって菌糸体が塊状、スラリー状及びペレ
ット状になるのでスラリー状に生育させることが重要で
ある。培養後、本菌体に水酸化ナトリウム溶液を添加
し、オートクレーブ中で熱アルカリ処理を行い、処理後
中性まで水洗をしてキトサン含有中空繊維を得る。熱ア
ルカリ処理は好ましくは１回（１時間）でよいが必要に
応じて２〜３回繰り返してもよい。熱アルカリ処理に用
いる水酸化ナトリウムの濃度は２〜４Ｗｔ／Ｖｏｌ％、
本菌体と水酸化ナトリウム溶液の液比は１：５０〜１０
０、オートクレーブ処理温度は１００〜１３０℃の範囲
で自由に選択できる。

【０００６】本菌体の熱アルカリ処理によって、菌体の
細胞質が抜けたキトサン含有中空繊維が得られる。この
キトサン含有中空繊維は、菌種、培養条件及び熱アルカ
リ処理条件等によって異なるが乾燥菌体に対して２０〜
３５％程度得られる。キトサン含有中空繊維の直径は４
〜１０μｍ、長さ２０００〜５０００μｍであり、この
アスペクト比は、シート化するのに適している。このア
スペクト比は培養条件及び菌体の種類などによって多少
変化するがシート化に影響するものではない。また、熱
アルカリ処理１回のキトサン含有中空繊維の構成成分は
キチン質６６％、グルカン２１％、ウロン酸１．４％、
及び酸不溶物６．６％等から成る。キチン質の１／３〜
１／２がキトサンである。このキトサンの脱アセチル化
度は、培養条件によって制御できるが培養ｐＨ２．６〜
７．５の範囲で６１〜８４％である。

【０００７】キトサン含有中空繊維のシート化は、本素
材に対して水を重量比１：５００〜１０００の割合に混
合調製し、例えば以下の抄紙法によって製造できる。す
なわち、キトサン含有中空繊維の懸濁液を、２００メッ
シュのスクリーン上で脱水してシート化する。このシー
トを濾紙に移し取り、このシートの上に厚み０．５ｍｍ
のステンレス板を置き、さらにこの上に濾紙を重ね３ｋ
ｇ／ｃｍ^２で３分間プレスを行う。プレス後シートはス
テンレス板に移る。このステンレス板を風乾してシート
を得る。また、本キトサン含有中空繊維と天然繊維及び
再生繊維等との混抄するシート化も同様に上記の方法で
調製できる。

【０００８】

【発明の効果】本発明によるキトサン含有中空繊維は、
発酵生産により大量に生産することが可能であり、また
その主成分はキチン質であるために、従来のようにキチ
ンやキトサンを予め特殊な溶媒や酸性溶液に溶かすこと
なく、その形態的特徴を活かし直接キトサン含有シート
を容易に調製することができる。また、本中空繊維は蟹
殻及び海老殻からのキトサンと同様に抗菌性をもつこと
から、抗菌性フイルターやシート素材として利用でき
る。さらに、本素材はキトサンに由来するアミノ基を持
つために種々の薬品を付加させることが可能であり、新
規な素材として開発利用できる可能性があり、広範な産
業分野での利用が期待される。

【０００９】

【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定され
るものではない。

【００１０】実施例１Ｒ．ａｃｅｔｏｉｎｕｓＨＵＴ１２１９菌株を用
い、グルコース３００ｇ、ポリペプトン５０ｇ、燐酸水
素二カリウム１０ｇ、硫酸マグネシウム５ｇ，塩化カリ
ウム５ｇ，硫酸第一鉄０．１ｇ，シリコーンオイル２
ｇ、水道水１０リットルからなる組成の培地を用い、１
０リットルジャーで通気量０．７ｖｖｍ、２９℃で４８
時間、通気培養を行った。本培養ではスラリー状の湿菌
体１６４ｇ（乾燥菌体３１．５ｇ）が得られた。次に、
この菌体に２％水酸化ナトリウム溶液３リットルを加
え、オートクレーブ中で１２０℃、１時間熱アルカリ処
理を行った。処理後、中性になるまでよく洗浄し、凍結
乾燥をして６．６４ｇ（対菌体当り２１％）のキトサン
含有中空繊維を得た。

【００１１】実施例２キトサン含有中空繊維中のキトサンの脱アセチル化度の
制御は培養時のｐＨをコントロールすることによって行
った。すなわち、Ｒ．ａｃｅｔｏｉｎｕｓＨＵＴ１
２１９菌株を用い実施例１の培地組成の中、グルコース
をコーンスターチに置き換え、他は同一組成の培地を２
リットル容ジャーファーメンターに１．５リットル採取
し、培養時のｐＨを所定のｐＨに自動制御しつつ、通気
量０．６８ｖｖｍ、攪拌スピード３００ｒｐｍ、温度２
９℃で７２時間培養した。培養後、菌体に対して２％水
酸化ナトリウムを１：７０の割合で加え、１２０℃で１
時間オートクレーブ処理を行った。処理後、中性になる
まで水洗し、キトサン含有中空繊維を得た。次に、キト
サン含有中空繊維に対して２％酢酸溶液を１：１００の
割合で添加後、３０分間キトサンを抽出した。抽出後、
遠心分離及び濾過法により抽出液を得た。この抽出液を
５Ｎ水酸化ナトリウム溶液でｐＨ８．５に調整して析出
物（キトサン）を得た。各々の抽出キトサンの脱アセチ
ル化度はコロイド滴定法によって求めた。その結果を表
１に示す。

【表１】表１から明らかなように、培養ｐＨの違いによって脱ア
セチル化度の異なるキトサンが得られることが分かっ
た。このことは、培養時のｐＨを制御することにより細
胞壁中のキトサンの脱アセチル化度が制御できることを
示しており、脱アセチル化度の異なるキトサン含有中空
繊維が調製できることが分かった。

【００１２】実施例３キトサン含有中空繊維の抗菌性を調べるために、実施例
１で得た本中空繊維１０ｇをビーカに採取し、蒸留水１
リットルを加えて懸濁液を調製した。この懸濁液を開放
状態、室温下で３カ月間放置して雑菌の増殖状態を観察
した。その結果、外界由来の微生物の生育は全く認めら
れず、キトサン含有中空繊維は抗菌性を有していること
が分かった。

【００１３】実施例４本キトサン含有中空繊維の化学修飾性を調べるために、
実施例１で得られたキトサン含有中空繊維に白金（Ｐ
ｔ）を吸着させ、ＥＰＭＡ（電子線マイクロアナライザ
ー）測定を行った。すなわち、２００ｍｌ容ビーカーに
１０ｍＭ濃度のＰｔ溶液（ｐＨ６．２７）１００ｍｌを
採取し、これにキトサン含有中空繊維９８ｍｇを加え、
室温下で２４時間攪拌して吸着反応を行った。反応終了
後、蒸留水で３０分間ずつ２回洗浄し、２５０ナイロン
メッシュで濾過後、凍結乾燥してＰｔ吸着試料を得た。
ＥＰＭＡ測定は、Ｐｔ吸着試料をＡｕ蒸着して行った。
その結果を図１に示す。

【図１】図１のキトサン含有中空繊維を横切る波線は、
Ｐｔの線分析を示す。写真から明らかなように、波線は
キトサン含有中空繊維の位置で高くなり、本繊維にＰｔ
が吸着されていることが確認できた。

【００１４】また、Ｐｔ以外の金属イオンの吸着性につ
いては銀イオン及び銅イオンについて調べた。すなわ
ち、硝酸銀及び硫酸銅の１ｍＭ濃度の各溶液を調製し、
２００ｍｌ容ビーカに各溶液１００ｍｌを採取後、キト
サン含有中空繊維２２ｍｇを各溶液に添加して攪拌しな
がら室温下で２時間吸着反応を行った。反応後、濾過し
てキトサン含有中空繊維を除去した後、濾液について残
存する各金属イオン濃度を原子吸光法により測定した。
キトサン含有中空繊維への各金属イオンの吸着量は吸着
反応前後の濃度より算出した。その結果を表２に示す。

【表２】表２から明らかなように、キトサン含有中空繊維は非常
によく金属イオンを吸着する事が分かった。

【００１５】実施例５実施例１と同じ方法で得たキトサン含有中空繊維（乾燥
せずに湿潤の状態で用いる）のシート特性を調べるため
に抄紙法によりシートを調製した。すなわち、本素材１
０ｇに水５リットルを加え、良く攪拌して分散させる。
この懸濁液１リットルを２００メッシュスクリーン（径
１６ｃｍ）上で脱水し、シートを形成させる。このシー
トに濾紙を重ね、１．０ｋｇ／ｃｍ^２で加圧脱水し、シ
ートを濾紙に移す。次に濾紙上のシートの上に厚み０．
５ｍｍのステンレス板（表面がよく研磨された）を重
ね、さらにステンレス板の上に濾紙を重ねサンドイッチ
にし、これを３ｋｇ／ｃｍ^２に加圧し３分間保持する。
加圧後シートはステンレス板に移る。これを風乾すると
キトサン含有シートはステンレス板から剥離し得られ
た。このキトサン含有シートの引張り強さは、５４０ｋ
ｇｆ／ｃｍ^２であった。この強度はナイロンシートに匹
敵する。次にこのシートの諸性質について調べた。キト
サン含有シートの色彩は視覚的評価を行った。吸水性に
ついては、重量既知のシート片を蒸留水に室温で５時間
浸漬した後、濾紙でシート表面の付着水を取り除いた直
後に重量測定し、浸漬前後の重量差から算出した。耐酸
性・耐アルカリ性については０．５Ｎ，５Ｎ濃度の塩酸
溶液及び水酸化ナトリウム溶液にシート片を室温で５時
間浸漬した後取り出し、洗浄・乾燥して引張り強度を測
定した。耐熱性については、１００℃処理は定温乾燥器
中で、また２００℃処理は電気炉中でそれぞれ５時間処
理した後のシートの収縮及び変色について評価した。こ
れらの結果について表３に示す。

【表３】表３から明らかなように本キトサン含有シートの色彩は
淡黄褐色を帯びており、半透明である。吸水性について
は、シートｇ当り０．８９ｇである。酸及びアルカリ性
に対する耐性は酸性には弱く、アルカリ性には強い。耐
熱性は、１００℃までは変化しないが、２００℃では４
％程度収縮し、色彩も淡黄褐色から、褐色に変色するこ
とが分かった。

【００１６】前述のシート化と同様にしてキトサン含有
中空繊維とパルプ繊維（広葉樹未叩解晒しクラフトパル
プ）との混抄したシートを調製した。キトサン含有中空
繊維とパルプ繊維とは任意の割合でシート化が可能であ
る。この場合においてもきれいなシートが調製できる。
このシートの物理的強度（引張り強さ）を測定した結果
を表４に示す。

【表４】広葉樹未叩解晒しクルフトパルプは強度的には非常に弱
いが、表４から明らかなようにキトサン含有中空繊維の
混合割合を増すと強度的にも優れたシートが調製でき
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】白金を吸着したキトサン含有中空繊維のＥＰ
ＭＡ写真。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者西山昌史香川県高松市花ノ宮町二丁目３番３号工業技術院四国工業技術試験所内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】キトサン含有性接合菌体の低濃度熱アル
カリ処理によるキトサン含有中空繊維。
【請求項２】請求項１記載のキトサン含有中空繊維を
水に懸濁し、抄紙法によって形成させるキトサン含有シ
ートの製造法。