JPH0795884A - 微生物固定化担体 - Google Patents

微生物固定化担体

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JPH0795884A
JPH0795884A JP5243447A JP24344793A JPH0795884A JP H0795884 A JPH0795884 A JP H0795884A JP 5243447 A JP5243447 A JP 5243447A JP 24344793 A JP24344793 A JP 24344793A JP H0795884 A JPH0795884 A JP H0795884A
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    • Y02W10/10Biological treatment of water, waste water, or sewage

Abstract

(57)【要約】 【構成】 微生物個体が、該微生物の分泌する不溶性高
分子有機物により、微生物担持担体または他の微生物個
体と結合した状態で存在する土壌、活性汚泥、水底泥ま
たはバイオリアクタ等の微生物系に、セルラーゼ、アミ
ラーゼ等の該不溶性高分子有機物の分解酵素を作用さ
せ、結合状態にある微生物個体を分離する。 【効果】 培養工程を経ることなく、結合物質である不
溶性高分子有機物を効率的に分解することができるの
で、懸濁液やバイオリアクタ液等から培養条件の不明な
又は特異的培養条件が必要な微生物をも極めて簡便、短
時間に高収率、高純度で分離回収することが可能とな
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、固定化微生物の生物学
的活性を利用したバイオリアクターシステム、バイオセ
ンサーおよび人工臓器等に用いられる微生物固定化担体
に関し、特に、固定化微生物の生物学的活性発現および
生残性を向上させる微生物固定化担体に関する。
【0002】
【従来の技術】生物学的な活性を利用した有用物質の生
産や廃棄物質の処理は、バイオリアクターとして広く応
用され利用されている。使用される生物は目的に応じ
て、原核生物、真核生物、およびそれらの組替え体等が
用いられているが、生物に対する機械的衝撃を軽減し、
生産物の効率的回収や連続的処理を行うためには微生物
を高密度で固定化することが有効である。このような目
的で使用される微生物固定化担体としては、多糖類、ア
ガロース、アルギン酸ゲル、アクリルアミドゲル、コラ
ーゲンや生体適合性を増すために様々な化学修飾を施し
た合成材料が検討されている。また微生物の固定化手法
としては、これらの高分子材料の固化あるいは重合の際
に包括したり、架橋材を用いた化学架橋等が知られてい
る。
【0003】ところで、一度固定化された微生物へ生育
に必要な栄養分を供給するには、微生物固定化担体を所
望の栄養分を含む培養液に浸す等、固定化担体外部から
拡散現象によって供給する必要がある。
【0004】また、固定化された微生物の活性を長期間
持続させるためには、インデューサーと呼ばれる低分子
化合物やミネラル成分の添加が必要であり、栄養分と同
様にして固定化担体外部からの拡散により供給する必要
がある。これらインデューサーは固定化微生物に作用し
て特定の酵素系を生合成させ、活性を発現させる作用を
行うので持続的に供給されなければならない。しかし持
続的に供給すれば足りるわけではなく、インデューサー
によっては、高濃度では細胞の増殖を阻害し微生物に対
して有害であるばかりか、人体等を含め自然環境に対し
て好ましくない影響を与えるものがあるので、至適濃度
で供給することが要求される。具体的な例として、ある
種のシュードモナス属細菌によるトリクロロエチレンの
生分解活性の発現には、インデューサーとしてトルエン
やフェノール、クレゾールが必要であるが、これらのイ
ンデューサーの作用には至適濃度があり、当然少量では
活性が発現されなが、多量のインデューサーは細菌の生
育を阻害する。したがってインデューサーの添加は至適
濃度で長期間持続させることが必要である。
【0005】しかしながら、固定化担体外部からのフェ
ノールやトルエン等のインデューサーの添加では、担体
外液の汚染の原因となるので添加すること自体制限され
るし、更に、添加による利用効率が低いことから添加量
が多くならざるを得ないので汚染が増幅され、また、至
適濃度範囲で持続的に添加することは極めて困難であ
り、その結果、それらインデュサーが必要な微生物を用
いたバイオリアクターはその利用が大幅に制限されてい
た。かかる問題はインデュサー添加の場合に限らず、各
種栄養成分や生長因子等の添加においても同様に招来す
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の有する問題に鑑み、微生物固定化担体へのインデュ
サー等の供給を担体外部から行うことなく、それら物質
を特定の構成により固定化微生物の近傍に保持すること
で、該物質の利用効率を向上させ、かつ供給を適当な濃
度で長期間持続させ、更には該担体により処理した液へ
の該物質の漏出による汚染を軽減することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成する本
発明は、微生物を担持する親水性高分子からなる微生物
担持体と、該微生物に生物学的作用を及ぼす低分子化合
物を保持する高分子からなる低分子化合物保持体とを隣
接させて結合体としたことを特徴とする微生物固定化担
体である。微生物に生物学的な作用を及ぼす低分子化合
物を高分子中に高濃度で保持し、それを微生物担持体に
隣接させて微生物固定化担体を構成することにより、微
生物の生育等に必要な低分子化合物が結合体内で拡散に
より徐々に微生物へ供給されるので、該化合物の担体外
への流出がなく利用効率を向上させるとともに処理液へ
の汚染を大幅に軽減することができ、また該化合物を適
当な濃度で持続的に供給し、目的とする微生物活性を安
定して発現させることが可能となる。
【0008】また、本発明は、上記の微生物固定化担体
において、低分子化合物が水溶性、それを保持する高分
子が親水性である微生物固定化担体、または、低分子化
合物が油溶性、それを保持する高分子が疎水性である微
生物固定担体である。低分子化合物とそれを担持する高
分子の水に対する親和性を同一傾向とすることにより、
高濃度の低分子化合物を保持することができるので、目
的の微生物活性を長期に亘って維持することができる。
【0009】また、本発明は、上記の低分子化合物とそ
れを保持する高分子が共に親水性傾向である微生物固定
化担体において、低分子化合物保持体と微生物担持体と
の隣接部分に、低分子化合物の拡散を制御する拡散障壁
を介在させる微生物固定化担体である。微生物を担持す
る高分子は親水性であるから、低分子化合物とそれを保
持する高分子が親水性傾向であると、低分子化合物が微
生物担持体内に速やかに拡散し喪失してしまう場合があ
るが、微生物担持体と低分子化合物保持体の間に拡散障
壁を介在させることで、低分子化合物の徐放作用が一層
高まるので、低分子化合物を長期間安定的に微生物に供
給することができる。
【0010】ここで、拡散障壁が脂質膜、特に脂質二分
子膜等の機能性膜である微生物固定化担体では、低分子
化合物の徐放性を温度等により制御することができるの
で、微生物の目的の活性を容易に制御することが可能と
なる。
【0011】また、本発明は、上記いずれかの微生物固
定化担体において、微生物に生物学的作用を有する低分
子化合物が、該微生物の生物学的活性の発現及び/又は
生残性に対して効果を有する成分である微生物固定化担
体である。更には、生物学的活性の発現及び/又は生残
性に対して効果を有する成分が、ホルモン、金属イオ
ン、インデューサー、栄養素から選択された一種類以上
である微生物固定化担体である。低分子化合物としてこ
のような物質を用いることにより、各種バイオリアクタ
ーへの利用が一層好適なものとなる。
【0012】また、本発明は、上記いずれかの微生物固
定化担体において、低分子化合物が複数種であり、それ
ぞれが個別の低分子化合物保持体を構成する微生物固定
化担体である。複数の低分子化合物を用い、それぞれを
別個の保持体とすることにより、微生物の目的とする活
性をより効率的に実現することができる。
【0013】また、本発明は、上記のいずれかの微生物
固定化担体において、低分子化合物保持体を微生物担持
体内に包含させ球状の結合体とした微生物固定化担体で
ある。低分子化合物保持体を微生物担持体内に包含させ
ることで、低分子化合物が担体外液等へ漏出し汚染する
ことを更に低減すると共に接触面積を増大させることが
できるので、微生物の活性化を効率良く行うことがで
き、また全体を球状とすることで処理面積が増大するの
で処理効率を高めることができる。
【0014】このように、本発明は、担持された微生物
の生物学的活性等を維持するための低分子化合物を、微
生物とは立体的に隔絶された部分に、高濃度で保持する
ことにより、該保持部分からの低分子化合物の徐放作用
を実現し、これにより、該微生物の生物学的活性等を長
期に亘って維持し、さらには処理液へのインデューサー
物質の漏出による汚染を軽減するものである。
【0015】以下に本発明を詳細に説明する。
【0016】本発明において微生物とは、細菌、放線
菌、酵母、かび、きのこ、単細胞藻類、原生動物などを
意味し、更に動物または植物の分化していない細胞およ
び組織培養物も包含するものである。
【0017】本発明において、微生物を担持するための
親水性高分子とは、微生物の生物学的活性や生残性を維
持できる環境を与える水分保持能を有し、かつ微生物を
格子型やマイクロカプセル等の包括法、物理的吸着、イ
オン結合または共有結合等の結合法、共有結合法と包括
法の複合法等により固定化できる高分子の構造性を有す
るものであり、一般に親水性ゲルを形成する高分子が好
ましく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、スチレンス
ルホン酸、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−
ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチル
アンモニウムクロライド、アクリルアミド等の単量体を
前駆体としたポリマーや、アルギン酸、アガロース等の
多糖類、フィブリン、コラーゲン等のポリペプチド、さ
らにはこれらの単量体の混合物から形成されるもの等を
挙げることができる。
【0018】これら親水性高分子は、例えば、水相中
で、親水性高分子形成用の単量体を重合させ、更に必要
に応じて架橋する方法や、水溶性の親水性重合体を架橋
する方法等により形成することができるものであり、得
られる高分子は水相を包含したものとなる。単量体の重
合にラジカル重合を利用する場合の重合開始剤は、用い
る単量体の種類に応じて選択されるが、例えば過酸化ベ
ンゾイル、アゾビスブチルニトリル、過酸化ニトリル、
過酸化アセチル、過硫酸塩等を用いることができる。ま
た、例えばリボフラビン等の光増感剤を用いて光ラジカ
ル重合を行うこともできる。更にアルギン酸などの多糖
類をカルシウムイオンやマグネシウムイオンの存在下で
架橋してゲル化して親水性高分子を得ることも可能であ
る。
【0019】親水性高分子においても、そこに包含させ
る水相の割り合いや、重合度あるいは架橋度を調整する
ことで、そこに担持させた微生物の活性を高めることが
でき、より効率良い処理を実現することもできる。親水
性高分子が包含する水相の割り合いは重合の際のモノマ
ー濃度等を選択することにより調節でき、またその厚み
や構成する高分子の重合度等は、高分子化反応の遅延
剤、禁止剤の添加、光重合の際には光照射の停止などに
よって調節することができる。
【0020】これら親水性高分子は用いる微生物の生残
性、生物学的活性を阻害しないものであれば、特に限定
されない。また、微生物担持体の含水率は、微生物固定
化担体の使用条件や用いる微生物の至適条件を考慮して
設定するが、概ね80〜95%程度に調整しておくとよ
く、またpHも同様に4〜9程度に調整しておくとよ
い。微生物の担持量は親水性高分子の種類によって相違
するが、概略、微生物担持体の単位体積当り104〜1
9個/ml程度が目やすとなる。
【0021】次に、本発明において、低分子化合物は微
生物に対して広く生物学的作用を与える物質であり、生
物学的作用には、微生物の増殖等、微生物自体の生長や
生残に係わる作用、および微生物の増殖等には直接関連
せず微生物の有する物質変換能を活性化する作用が含ま
れる。前者を生残性といい、後者を生物学的活性とい
う。生残性に係わる物質としては、微生物の栄養要求性
に関係する物質であり、例えば、エキス類、糖類の他、
ホルモン、金属イオン、pH調整剤等の低分子化合物が
含まれ、一方生物学的活性に係わる物質としては、各種
低分子インデューサーが代表的であり、例えば、ある種
のシュードモナス属菌によるトリクロロエチレン(TC
E)の分解反応を誘導するものとしてフェノールやクレ
ゾール、またある種のロドコッカス属菌によるポリ塩化
ビフェニル(PCB)の分解反応を誘導するものとして
2,3−ジヒドロキシビフェニル等がインデューサーで
ある。
【0022】低分子化合物には水溶性と油溶性の両方が
含まれる。水溶性のものとしては、グルコース、トリプ
トン、アミノ酸、金属イオン、核酸等、油溶性のものと
しては、ステロイドホルモン、疎水性ポリペプチド等を
挙げることができる。どのような低分子化合物を用いる
かは微生物を利用する目的に応じて適宜選択する。用い
る低分子化合物は、これを保持する高分子の重合度、架
橋度等によって、拡散漏出速度を制御することができる
ので、所望の徐放速度が得られる範囲にあれば低分子化
合物の分子量は限定されない。
【0023】本発明において、上記低分子化合物を保持
するための高分子は、低分子化合物が一定の条件下で移
動できるような構造性を有する高分子で、不動状態で固
定するものではない。低分子化合物は水溶性と油溶性の
いずれでもよいが、用いる高分子の水に対する親和性
は、低分子化合物と相等しいことが望ましい。低分子化
合物が水溶性の場合は、それを保持する高分子は親水性
であると低分子化合物の移動を妨げることがなく、拡散
でき、かつ高濃度で低分子化合物を保持できるので、微
生物への長期的供給という観点からすれば好ましい。こ
の場合は、微生物担持体に用いられる上記親水性材料を
用いることができる。一方低分子化合物が油溶性の場合
は、それを保持する高分子は疎水性であると上記と同様
に拡散が速やかに進行し、かつ高濃度で保持できるので
好ましい。疎水性の高分子材としては例えば、ポリスチ
レン、ポリアクリル酸エステル類、メタアクリル酸エス
テル類等を挙げることができる。
【0024】低分子化合物とそれを保持する高分子が共
に水に対し親和性を有する場合は、微生物担持体が親水
性であることから、低分子化合物保持体と微生物担持体
の境界で構造的又は物理化学的な障壁がなく、保持され
ている低分子化合物が必要以上に速やかに微生物担持体
に拡散喪失するような場合があるので、その場合は隣接
する微生物担持体と低分子化合物保持体との間に拡散制
御のための障壁を設ける低分子化合物の拡散速度を減少
させることが好ましい。このような目的のために使用さ
れる拡散障壁としては、疎水性膜である脂質膜や高分子
膜、また化学架橋剤を用いて界面部分の高分子の架橋度
を高め高分子膜層としたものを用いることができる。
【0025】脂質膜の形成に供される脂質としては、ホ
スファチジルコリン、ホスファチジルエタノール、ホス
ファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジル
イノシトール、ホスファチジルグリセロール等のリン脂
質、およびそれらの対応するリゾリン脂質、各種脂肪
酸、重合性脂質、合成界面活性剤等を挙げることができ
る。また低分子化合物の拡散速度を減少させるための化
学架橋剤は修飾される高分子の性質によって選択される
が、ポリリジン、グルタルアルデヒド、ポリエチレング
リコール、プルラン、N−メチロール化合物、ジカルボ
ン酸、ビスエポキシド等を挙げることができる。低分子
化合物保持体や微生物担持体の親水性高分子等と脂質層
との間は所望に応じて架橋されていてもよく、親水性高
分子と脂質膜層との間を架橋することで、膜構造の安定
化を図ることができる。脂質膜と親水性高分子との間に
架橋構造を付与する場合には、例えば蛋白質の化学修飾
の分野で用いられている公知の架橋方法が利用できる。
例えば、カルボキシル基と、アミノ基または水酸基との
間に架橋反応を得るには、カルボジイミド等のこれらの
基の間で脱水縮合反応による架橋構造を形成し得る試薬
が利用できる。このような試薬を用いれば、例えばアク
リル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有する単量
体から得られる部分とホスファチジルエタノールアミン
等のアミノ基を有する両親媒性化合物との間を架橋する
ことができ、同様にアクリルアミドから得られる部分と
脂肪酸との間、アクリルアミドから得られる部分とホス
ファチジルセリンとの間を架橋することができる。アミ
ノ基とチオールとの間での架橋反応は、例えばN−スク
シンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネ
ート等の試薬を用いて行うことができ、このような試薬
によって例えばチオール基を有するペプチド性高分子と
アミノ基を有する両親媒性化合物の間を架橋することが
できる。
【0026】また、化学架橋剤による修飾は、界面から
内部へ向うに従い進行させ、即ち架橋度を低分子化合物
保持体又は微生物担持体内部から界面に向って徐々に又
は段階的に高めていくようにしてもよい。
【0027】更に、低分子化合物の拡散速度を調整する
手段としては、外部から制御可能な因子によって物理・
化学的又は構造的特性が変化する機能的な材料を用いて
上記拡散障壁および/または低分子化合物保持体を構成
し、低分子化合物の除放性を制御することもできる。た
とえば脂質二分子膜はその相転移温度付近で低分子化合
物に対する透過性が増大することが知られており、この
性質を利用すると、保持された低分子化合物の徐放性を
温度で制御することが可能となる。同様に低分子化合物
保持体の高分子の保持能の変化により低分子化合物の除
放性を温度、水素イオン濃度、塩濃度、電磁場の印加な
ど各種の因子によって制御可能なものに設計できる。例
えば、高分子として、N−置換アクリルアミド系ポリマ
ー等を用いることにより、外部制御因子として温度やp
H等の変化で低分子化合物の拡散速度を制御することが
可能となる。このように外部からの制御を可能とするこ
とにより、バイオリアクターのコントロールが容易にな
り、目的の生物学的活性等を得ることができる。
【0028】上記の微生物担持体と低分子化合物保持体
は互いに拡散障壁を介して又は介さずに隣接し結合体を
形成して、低分子化合物が微生物へ効率的に供給される
ようにする必要があるが、結合体の形態は問わない。隣
接する面積が大きい方が、供給は速やかに実施されるの
で好ましいので、表面積の大きい球形とするとよく、低
分子化合物保持体を微生物担持体内に包含させたり、逆
に、微生物担持体を低分子化合物保持体内に包含させた
りできる。前者の場合では、低分子化合物保持体と微生
物とを共通の親水性高分子で包括したような形態であ
る。担持される微生物が好気的生物である場合には、担
体外液の溶存酸素がすみやかに微生物に到達する必要が
あることから、担持する親水性高分子は最外層に形成さ
れることが望ましいので、低分子化合物保持体を微生物
担持体内に包含させるのが好ましい。また、結合体の形
状は球形限定されるわけではなく、微生物担持体と低分
子化合物保持体とを平面上に積層してもよい。球状の低
分子化合物保持体の径としては、概ね0.1〜500μ
m程度、それを微生物担持体が包含する態様では球状の
微生物担持体の径としては、概ね1〜5000μm程
度、膜状の積層構造の場合は低分子化合物保持体の厚み
として概ね1〜5000μm程度、微生物担持体の厚み
として概ね20〜5000μm程度が一般的な範囲であ
るが、固定化担体の使用目的により、適宜選択する。
【0029】複数種類の低分子化合物を高分子に保持さ
せる場合にはこれらの成分を、一種類の高分子に共存さ
せて保持させることも、1種類以上の高分子層に分離し
て1種類毎に保持させることもできる。徐放制御因子を
相異なるものとし外的に独立した制御を実施するには各
種類毎に別個の高分子に分離して保持させることが好ま
しい。この場合、一つの結合体内に複数の低分子化合物
保持体を包含させてもよい。
【0030】微生物担持体と低分子化合物保持体との混
合比率は、微生物の目的とする活性を達成するのに必要
な低分子化合物量を考慮して選択する。低分子化合物の
保持量も用いる低分子化合物と高分子材料の関係で適宜
設定される。
【0031】次に、本発明の微生物固定化担体の製造方
法の一例について説明する。例えば、水溶性低分子化合
物、それを保持する高分子として親水性高分子を用いる
場合は、先ず、親水性高分子形成用の水溶性単量体、水
溶性低分子化合物、脂質膜形成用の両親媒性化合物、水
及び有機溶媒から油中水型のエマルジョンを形成する。
このエマルジョンにおいては、低分子化合物と水溶性単
量体を含む水小粒の表面に両親媒性化合物の単分子膜
が、その親水性部分を小粒内部の水相に、疎水性部分を
小粒外部の有機溶媒相(油相)に向けて配向する。必要
に応じて両親媒性化合物に水溶性単量体を架橋したもの
を用いておけば、両親媒性化合物に架橋された単量体及
び水相に含まれる単量体の重合反応によって、小粒内に
形成される親水性重合体層と両親媒性化合物から形成さ
れる膜層との間に架橋構造を形成することができる。す
なわち、両親媒性化合物の単分子膜は、小粒内部の水溶
性単量体の重合に伴って部分的に親水性高分子層に架橋
により固定される。その際、その架橋度に反比例して流
動性を保った両親媒性化合物単分子膜で親水性高分子層
が覆われた低分子化合物含有球体膜粒子が得られる。な
お、粒子内部における水溶性単量体の重合条件は、用い
た単量体の種類によって選択される。
【0032】なお、油相を形成する有機溶媒としては、
水に難溶性のもので、例えば脂肪族炭化水素系溶剤(ヘ
キサン、シクロヘキサン等)、芳香族系溶剤(ベンゼ
ン、キシレン、トルエン等)、エステル系溶剤等が利用
でき、水との液液界面に脂質膜層形成用の両親媒性化合
物の単分子膜が形成できるものであれば特に限定されな
い。
【0033】この球体膜粒子を低極性溶媒や界面活性剤
を含む水溶液に分散させ、そこに両親媒性化合物を加
え、溶媒の極性を高くするか、または界面活性剤の濃度
を下げていくと、後から加えた両親媒性化合物の分子が
球体膜粒子表面側にその疎水性部分を配向して付着し、
脂質二分子膜からなる脂質膜層がその表層表面に形成さ
れる。この球体膜粒子を分散する水相に後から加える両
親媒性化合物の形態は、低極性溶媒を用いた際には逆ミ
セルとして、また界面活性剤を用いた場合には同じ界面
活性剤のミセルとして加える。溶媒の極性を高くしてい
く手段としては逆相蒸発法等が、また界面活性剤の濃度
を下げていく手段としては、希釈法、透析法、ゲル濾過
法等を用いることができる。後から加える両親媒性化合
物の量は、脂質二分子膜の形成に十分な量とされ、過剰
量の使用は目的としないリポソームの形成や脂質膜の3
分子層以上の多層化を招くので好ましくない。目的とし
ないリポソームが形成された場合の除去は、例えば密度
勾配遠心分画法やゲル濾過法によって行うことができ
る。脂質膜の二分子膜層の形成の際に所望の油溶性の低
分子物質を共存させることで、油溶性低分子化合物を脂
質層に担持させることができる。また、脂質膜層を構成
する二分子膜の内層と外層とで組成を変化させることが
できる。また、後で加える両親媒性化合物にも脂質膜層
の上に積層される親水性高分子層形成用の単量体と架橋
できるものを用いても良い。
【0034】次に、この脂質二分子膜からなる脂質膜層
を表層とする球体膜粒子の表層上に微生物を担持した親
水性高分子層を更に積層する方法について説明する。こ
の第2の親水性高分子層は、低分子化合物保持体を形成
したと同様の原理で製造することができる。すなわち、
上記において、低分子化合物の代わりに、球状の低分子
化合物保持体と微生物の両方を添加すれば、微生物担持
体内に低分子化合物保持体と微生物が包含された球状の
結合体が得られる。また、別の方法として、例えば、重
合開始剤や光重合開始のための増感剤等を球状低分子化
合物保持体(球体膜粒子)内部に封入した後、これを微
生物担持するための親水性高分子層形成用の水溶性単量
体を含む媒体中に分散させ、球体膜粒子内に封入した重
合開始剤や光重合開始のための増感剤等を球体膜粒子外
に漏出させ、必要に応じて光照射して球体膜粒子周壁で
の等方的重合を行う方法が利用できる。
【0035】重合開始剤等の球体膜粒子内への封入や球
体膜粒子内からの漏出には、温度条件による脂質膜層の
相転移を利用することができる。すなわち、低分子物質
の脂質二分子膜での透過性は膜の相転移温度付近で最大
になるので、球体膜粒子を重合反応開始用の試薬を含む
溶液中に分散させた状態で相転移温度に置くことによっ
て、球体膜粒子内に試薬を浸透させることができる。試
薬の浸透が完了したところで、球体膜粒子の置かれてい
る温度条件を膜透過性の低いあるいは失われる状態に変
化させることで、球体膜粒子内に試薬を封入することが
できる。更に、この球体膜粒子の置かれている温度条件
を、再び相転移温度付近にすると、封入した試薬の膜透
過性が得られるので、球体膜粒子内から試薬を漏出させ
ることができる。
【0036】適当な時点で重合反応を止めることで脂質
膜層上の親水性高分子層に所望の層厚を付与することが
できる。重合反応の停止は、光照射の停止、重合禁止剤
の添加などによっておこなうことができる。親水性高分
子層への微生物の担持は、水溶性単量体に微生物を混在
させておくことにより達成できる。また、先に形成され
た脂質膜層の外層の構成に親水性高分子層形成用の水溶
性単量体が架橋されたものを用いた場合には、脂質膜層
と親水性高分子層との間に架橋構造を得ることができ
る。
【0037】次に、低分子化合物保持体と微生物担持体
を膜状に積層する場合について説明する。この場合は、
膜を積層するための基体を用いる。用いられる基体は、
得られる膜構造物の用途に応じて選択される。例えば、
膜構造物に物理的強度を付与する目的であれば、ガラ
ス、雲母、ポリ塩化ホスホニトリル等各種プラスチッ
ク、シリコーン等の無機及び高分子材料からなる基板、
各種繊維、あるいは電気的な機能を利用する場合には、
金属、グラファイト、半導体等の導電体からなる基板、
化学修飾電極、高分子被覆電極などを用いることができ
る。
【0038】基体表面の親水性(疎水性)が積層構成に
影響を与えるので、基体表面の性質を目的に応じて調節
しておくと良い。例えば、基体表面が親水性を有する場
合には、基体表面には親水性高分子層、あるいは親水性
部分が基体表面側に配向した脂質膜層が形成される。ま
た、基体表面が疎水性であると、基体表面には疎水性部
分が基体表面側に配向した脂質膜層が形成される。
【0039】基体上に膜構造物を形成する手順は、先に
述べた球体膜構造物を形成する場合と基本的に同じであ
る。例えば、基体上で水溶性低分子化合物を添加した
後、親水性高分子層形成用の単量体の重合を行って、低
分子化合物保持層を形成し、次に、これを脂質膜層形成
用の両親媒性化合物を含む有機溶媒中に浸漬すると、基
体上の親水性高分子層の上面に両親媒性化合物がその親
水性部分を親水性高分子層表面に配向された単分子膜層
が形成される。その際、両親媒性化合物として、先に形
成された親水性高分子層との架橋が可能な構成を有する
ものを加えておけば、親水性高分子層と脂質膜層との間
に架橋構造を得ることができる。以下、上述した方法と
同様にして、脂質膜層の二分子膜化、微生物担持層及び
脂質膜層の形成を行って所望の総数の膜構造物を得るこ
とができる。
【0040】低分子化合物として、油溶性のものを用い
た場合も極性の異なる材料を用いる等により同様の原理
で保持体を形成することができる。低分子化合物の保持
体として疎水性の高分子を用いる場合は、微生物担持体
との界面に脂質膜等の拡散障壁を設ける必要がないが、
微生物担持体の親水性高分子との結合においては、同様
の原理を利用することができる。
【0041】
【実施例】以下、具体的実施例により本発明の微生物固
定化担体を説明する。
【0042】実施例1 この実施例では、微生物としてTCE分解活性を有する
シュードモナス セパシアーKK01株(FERM B
P−4235)、生物学的活性を付与する水溶性低分子
化合物としてフェノール、それぞれを担持または保持す
る親水性高分子としてアクリルアミドゲルを用い、低分
子化合物保持体には脂質二分子膜を被覆した構成により
製造した球状の微生物固定化担体の実施例を示す。
【0043】(1)フェノールを保持したアクリルアミ
ドゲル層の調製 次の溶液を用意した。 水溶液A:10%アクリルアミド、0.27%N,
N’−メチレンビスアクリルアミド、17mg/ml過
硫酸アンモニウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(p
H8.0)。 脂質溶液B:25mg/mlの割合で溶解させた脂質
のクロロホルム溶液。ただし脂質組成は飽和型ホスファ
チジルコリンを主成分としてホスファチジルエタノール
アミン、コレステロールからなる混合系であり、ゲル/
液晶相転移温度(Tc)はおよそ45℃であった。 容量300mlの四つ口フラスコにN2 供給口、温度
計、滴下用セプタム栓、および羽根式攪拌機を装備し
た。N2 を掃流しながら108mlのトルエン/クロロ
ホルム混合溶媒(体積比7:3)を入れた。水溶液A1
2mlに対しフェノールを1000ppmになるように
加え、フラスコに入れた。セプタムで密栓後氷浴上、1
000rpmで攪拌した。脂質溶液Bを1.5ml注入
管に取りセプタム栓からゆっくり注入した。脂質の注入
により乳化が起こり白濁した。N,N,N’,N’−テ
トラメチルエチレンジアミン300μlをマイクロシリ
ンジに取りセプタム栓からフラスコに注入した。10分
以内に発熱があり、その後1時間攪拌した。トルエンを
100ml加え有機溶媒相の比重を下げた。ガラス製遠
沈管に水を容積の1/2だけ取り、有機溶媒相を重層し
た。3000rpmで15分間遠心分離した。有機溶媒
相は透明になり、フェノールを含有するポリアクリルア
ミドゲル粒子は水相に移行し沈降した。光学顕微鏡によ
る観察の結果、平均40μmの粒径であることがわかっ
た。また脂質定量の結果、ゲル粒子の表面はリン脂質の
二分子膜でコートされていることがわかった。
【0044】(2)フェノールを保持する粒子と微生物
との包括固定化 担持すべき微生物として、シュードモナス セパシアー
KK01(FERMBP−4235)を用いた。この菌
株は50〜500ppmのフェノールの存在によってT
CE分解活性を発現することがわかっている。KK01
株を50mlの培地(M9培地に5ppmTCE、0.
05%酵母エキスおよび濃度100ppmのフェノール
を添加)に接種し、30℃で種培養を2日間行った。こ
の菌体(湿重量100mg)を、水溶液A12mlに懸
濁し、これに1)で調製したフェノール含有ゲル粒子を
湿体積で1/4量加えた。容量300mlの四つ口フラ
スコにN2 供給口、温度計、滴下用セプタム栓、および
羽根式攪拌機を装備した。N2 を掃流しながら108m
lのトルエン/クロロホルム混合溶媒(体積比7:3)
を入れた。先に調製したゲル粒子と菌体の混合溶液12
mlを、フラスコに入れた。セプタムで密栓後氷浴上、
500rpmで攪拌した。脂質溶液Bを1.5ml注入
管に取りセプタム栓からゆっくり注入した。N,N,
N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン300μl
をマイクロシリンジに取りセプタム栓からフラスコに注
入した。10分以内に発熱があり、その後20分間攪拌
した。1)と同様に遠心操作によって菌体固定粒子を水
相に移行させ、回収した。光学顕微鏡観察によって、こ
の菌体固定粒子は平均100μmの粒径であり、内部に
1)で調製したポリアクリルアミドゲル粒子と、シュー
ドモナス セパシアーKK01を担持していることが確
認された。
【0045】(3)TCE分解実験土壌の準備 自然林の約1m深さから採取された関東ローム層土(2
mm以上約10%、75μm〜2mm約40%、5〜7
5μm約30%、5μm以下約20%のほぼ均一粒度分
布を有する、れき、砂、シルト、粘土の混合土)を用い
て、含水比80%、TCE濃度(土重量当り)5ppm
の土として調製し、5cmφ×10cm深さの密閉でき
る容器に充填した。ICE分解実験 上記で得られたKK01固定化担体5gを、上記土壌に
均一になるように導入して、25℃にて土壌中のTCE
濃度の変化をヘキサン抽出ECDガスクロマトフラフィ
ーによって測定した。その結果、実験開始後40日目で
TCE濃度は半分以下となり120日目では0.08p
pmまで低下し、TCE分解菌による分解が効率よく迅
速に促進されたことが確認された。また、固定化担体外
部へのフェノールの溶出は0.1ppm以下でほとんど
検出されなかった。
【0046】実施例2 この実施例では、微生物として大腸菌(HB101株、
宝酒造株式会社)、その生残性を向上させる水溶性低分
子化合物としてグルコースおよびトリプトンの2種類、
それぞれを担持または保持する親水性高分子としてアク
リルアミドゲルを用い、低分子化合物保持体には脂質二
分子膜を被覆した構成により製造した球状の微生物固定
化担体の実施例を示す。
【0047】(1)グルコースを保持したアクリルアミ
ドゲル粒子の調製 次の溶液を用意した。 水溶液A:10%アクリルアミド、0.27%N,
N’−メチレンビスアクリルアミド、17mg/ml過
硫酸アンモニウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(p
H8.0)。 脂質溶液B:25mg/mlの割合で溶解させた脂質
のクロロホルム溶液。ただし脂質組成は飽和型ホスファ
チジルコリンを主成分としてホスファチジルエタノール
アミン、コレステロールからなる混合系であり、ゲル/
液晶相転移温度(Tc)はおよそ45℃であった。 容量300mlの四つ口フラスコにN2 供給口、温度
計、滴下セプタム栓、および羽根式攪拌機を装備した。
2 を掃流しながら108mlのトルエン/クロロホル
ム混合溶媒(体積比7:3)を入れた。水溶液A12m
lに対しグルコースを終濃度2.7Mになるように加
え、フラスコに入れた。セプタムで密栓後氷浴上、10
00rpmで攪拌した。脂質溶液Bを1.5ml注入管
に取りセプタム栓からゆっくり注入した。脂質の注入に
より乳化が起こり白濁した。N,N,N’,N’−テト
ラメチルエチレンジアミン300μlをマイクロシリン
ジに取りセプタム栓からフラスコに注入した。10分以
内に発熱があり、その後1時間攪拌した。トルエンを1
00ml加え有機溶媒相の比重を下げた。ガラス製遠沈
管に水を容積の1/2だけ取り、有機溶媒相を重層し
た。3000rpmで15分間遠心分離した。有機溶媒
相は透明になり、グルコースを含有するポリアクリルア
ミドゲル粒子は水相に移行し沈降した。光学顕微鏡によ
る観察の結果、平均40μmの粒径であることがわかっ
た。また脂質定量の結果、ゲル粒子の表面はリン脂質の
二分子膜でコートされていることがわかった。
【0048】(2)トリプトンを保持したアクリルアミ
ドゲル層の調製 (1)と同様にして、四つ口フラスコにN2 を掃流しな
がら108mlのトルエン/クロロホルム混合溶媒(体
積比7:3)を入れた。水溶液A12mlに対しトリプ
トンを25g/lの濃度になるように加え、フラスコに
入れた。セプタムで密栓後氷浴上、1000rpmで攪
拌した。脂質溶液Bを1.5ml注入管に取りセプタム
栓からゆっくり注入した。脂質の注入により乳化が起こ
り白濁した。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレ
ンジアミン300μlをマイクロシリンジに取りセプタ
ム栓からフラスコに注入した。10分以内に発熱があ
り、その後1時間攪拌した。トルエンを100ml加え
有機溶媒相の比重を下げた。ガラス製遠沈管に水を容積
の1/2だけ取り、有機溶媒相を重層した。3000r
pmで15分間遠心分離した。有機溶媒相は透明にな
り、トリプトンを含有するポリアクリルアミドゲル粒子
は水相に移行し沈降した。光学顕微鏡による観察の結
果、平均40μmの粒径であることがわかった。また脂
質定量の結果、ゲル粒子の表面はリン脂質の二分子膜で
コートされていることがわかった。
【0049】(3)グルコースを保持する粒子、トリプ
トンを保持する粒子および微生物との包括固定化 担持すべき微生物として、大腸菌を用いた。水1Lあた
りトリプトン10g、イーストエキストラクト5g、N
aCl 10gを含む水溶液で培養して得た菌体(湿重
量10mg)を水溶液A12mlに懸濁し、これに1)
および2)で調製したグルコース含有ゲル粒子とトリプ
トン含有ゲル粒子を湿体積で1/8づつ加えた。容量3
00mlの四つ口フラスコにN2 供給口、温度計、滴下
用セプタム栓、および羽根式攪拌機を装備した。N2
掃流しながら108mlのトルエン/クロロホルム混合
溶媒(体積比7:3)を入れた。ここに先に調製したゲ
ル粒子と菌体の混合懸濁液12mlを加えた。セプタム
で密栓後氷浴上、500rpmで攪拌した。脂質溶液B
を1.5ml注入管に取りセプタム栓からゆっくり注入
した。脂質の注入により乳化が起こり白濁した。N,
N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン300
μlをマイクロシリンジに取りセプタム栓からフラスコ
に注入した。10分以内に発熱があり、その後20分間
攪拌した。トルエンを100ml加え有機溶媒相の比重
を下げた。遠沈操作によって菌体固定粒子を水相に移行
させ、回収した。光学顕微鏡観察によって、この菌体固
定粒子は平均150μmの粒径であり、内部にポリアク
リルアミドゲル粒子と大腸菌を担持していることが確認
された。
【0050】(4)生残性試験 上記で得られた大腸菌固定化担体10gを、滅菌蒸留水
1000mlに懸濁し28℃で振盪培養した。一定日数
毎に一定量をサンプリングし、ルシフェリン−ルシフェ
ラーゼ反応によって、発光量から大腸菌の生残数を測定
した。対照として固定化していない大腸菌を用いて菌数
の変化を測定した。その結果、実験開始後60日目で対
照の非固定化大腸菌は培養液単位体積当り2.6×10
2個/mlまで菌数が減少したのに対し、固定化した大
腸菌は担持体の単位体積当り1.3×106個/mlの
菌数が生残していることが確認された。
【0051】実施例3 この実施例では、実施例2と同様にして製造した、グル
コースを保持するアクリルアミドゲル粒子とポリプトン
を保持するアクリルアミドゲル粒子、および実施例2と
同様の大腸菌をアルギン酸カルシウムゲルに包括し球状
の担体を調製しした実施例を示す。グルコースを保持す
るアクリルアミドゲル粒子10gとポリプトンを保持す
るアクリルアミドゲル粒子10gおよび大腸菌10mg
を0.6%アルギン酸ナトリウム水溶液100mlに懸
濁した。菌体懸濁液をガラス製注射管に採り1.5%塩
化カルシウム水溶液に攪拌しながらゆっくりと滴下し
た。得られたアルギン酸カルシウムゲル粒子を0.02
%ポリリジンを含む水溶液に移し、ゲル表面にポリリジ
ンの半透膜を形成させた。その結果内部にグルコースを
保持したアクリルアミドゲル粒子とポリプトンを保持し
たアクリルアミドゲル粒子、それに大腸菌を内包した平
均粒径2.5mmの菌体固定粒子を得ることができた。
このものを用いて実施例2と同様の生残性試験を行った
結果、同様の結果が得られた。
【0052】以上の他、各種の微生物(酵母、ニトロバ
クター)および各種の低分子化合物(クルコース、亜硝
酸塩)を用い、また各種の高分子(アガロース、ポリビ
ニルアルコールゲル)を用いて微生物固定化担体を調製
し、その微生物活性および生残性を測定した結果、いず
れも長期に亘り活性が維持され、かつ生残性も保持され
ていることが確認された。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、微生物に生物学的
な作用を及ぼす低分子化合物を高分子中に高濃度で保持
し、それを微生物担持体に隣接させて微生物固定化担体
を構成することにより、微生物の生育等に必要な低分子
化合物が結合体内で拡散により徐々に微生物へ供給され
るので、該化合物の担体外への流出がなく利用効率を向
上させるとともに処理液への汚染を大幅に軽減すること
ができ、また該化合物を適当な濃度で持続的に供給し、
目的とする微生物活性を安定して発現させることが可能
となる。
【0054】また、低分子化合物とそれを担持する高分
子の水に対する親和性を同一傾向とすることにより、低
分子化合物保持体内の該化合物の温度を高めることがで
き、また拡散が迅速になるので、目的の微生物活性をよ
り高めることができる。
【0055】また、微生物を担持する高分子は親水性で
あるから、低分子化合物とそれを保持する高分子が親水
性傾向であると、低分子化合物が微生物担持体内に速や
かに拡散し喪失してしまう場合があるが、微生物担持体
と低分子化合物保持体の間に拡散障壁を介在させること
で、低分子化合物の徐放作用が一層高まるので、低分子
化合物を長期間安定的に微生物に供給することができ
る。ここで、拡散障壁が脂質膜、特に脂質二分子膜等の
機能性膜である微生物固定化担体では、低分子化合物の
徐放性を温度等により制御することができるので、微生
物の目的の活性を容易に制御することが可能となる。
【0056】また、低分子化合物として、生物学的活性
の発現及び/又は生残性に対して効果を有する成分、特
に、ホルモン、金属イオン、インデューサー、栄養素か
ら選択された一種類以上を用いることにより、各種バイ
オリアクターへの利用が一層好適なものとなる。
【0057】また、複数の低分子化合物を用い、それぞ
れを別個の保持体とすることにより、微生物の目的とす
る活性をより効率的に実現することができる。
【0058】また、球状低分子化合物保持体を球状微生
物担持体内に包含させることで、低分子化合物が担体外
液等へ漏出し汚染することを更に低減すると共に接触面
積を増大させることができるので、微生物の活性化を効
率良く行うことができ、また全体を球状とすることで処
理面積が増大するので処理効率を高めることができる。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微生物を担持する親水性高分子からなる
    微生物担持体と、該微生物に生物学的作用を及ぼす低分
    子化合物を保持する高分子からなる低分子化合物保持体
    とを隣接させて結合体としたことを特徴とする微生物固
    定化担体。
  2. 【請求項2】 請求項1において、低分子化合物が水溶
    性、それを保持する高分子が親水性である微生物固定化
    担体。
  3. 【請求項3】 請求項1において、低分子化合物が油溶
    性、それを保持する高分子が疎水性である微生物固定担
    体。
  4. 【請求項4】 請求項2において、低分子化合物保持体
    と微生物担持体との隣接部分に、低分子化合物の拡散を
    制御する拡散障壁を介在させる微生物固定化担体。
  5. 【請求項5】 請求項4において、拡散障壁が脂質膜で
    ある微生物固定化担体。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれか一項におい
    て、微生物に生物学的作用を有する低分子化合物が、該
    微生物の生物学的活性の発現及び/又は生残性に対して
    効果を有する成分である微生物固定化担体。
  7. 【請求項7】 請求項6において、生物学的活性の発現
    及び/又は生残性に対して効果を有する成分が、ホルモ
    ン、金属イオン、インデューサー、栄養素から選択され
    た一種類以上である微生物固定化担体。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至7のいずれか一項におい
    て、低分子化合物が複数種であり、それぞれが個別の低
    分子化合物保持体を構成する微生物固定化担体。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至8のいずれか一項におい
    て、低分子化合物保持体を微生物担持体内に包含させ、
    球状の結合体とした微生物固定化担体。
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