JPH0794430A - 量子井戸構造を有する化合物半導体層の成長方法及び化合物半導体薄膜積層構造の形成方法 - Google Patents

量子井戸構造を有する化合物半導体層の成長方法及び化合物半導体薄膜積層構造の形成方法

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JPH0794430A
JPH0794430A JP2370194A JP2370194A JPH0794430A JP H0794430 A JPH0794430 A JP H0794430A JP 2370194 A JP2370194 A JP 2370194A JP 2370194 A JP2370194 A JP 2370194A JP H0794430 A JPH0794430 A JP H0794430A
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Hideto Ishikawa
秀人 石川
Ruberego Yan
ヤン・ルベレゴ
Akihiko Okuhora
明彦 奥洞
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Abstract

(57)【要約】 【目的】量子井戸構造を有する化合物半導体層の結晶成
長において限りなく急峻で平坦な界面を得ることができ
る化合物半導体成長方法を提供する。 【構成】本発明の化合物半導体層の成長方法は、井戸層
と障壁層から成る量子井戸構造を有する化合物半導体層
を、有機金属気相成長法(MOCVD法)による化合物
半導体のエピタキシャル成長によって基板上に成長させ
る方法であって、井戸層をエピタキシャル成長させた
後、障壁層を形成するための原料の一部の供給を中断し
て、一定期間の間、障壁層のエピタキシャル成長を停止
させることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、化合物半導体のエピタ
キシャル成長方法、特に、発光素子あるいは受光素子等
に適用し得る、単一量子井戸(SQW,Single Quantum
Well)構造あるいは多重量子井戸(MQW,Multiple
Quantum Well)構造のような規則的多層結晶層構造を有
する化合物半導体層のエピタキシャル成長方法に関す
る。本発明は又、化合物半導体薄膜積層構造の形成方
法、特に、HEMT等の高周波超低雑音増幅素子などの
作製に適用し得る、例えば選択ドーピングヘテロ構造等
を有する化合物半導体薄膜積層構造のエピタキシャル成
長方法に関する。
【0002】
【従来の技術】規則的多層結晶層構造を有する化合物半
導体層、特に、量子効果を生ずるような層厚の量子井戸
構造を有する化合物半導体層を備えた半導体素子とし
て、半導体レーザやフォトディテクターが挙げられる。
量子井戸構造は、井戸層と障壁層とが積層された構造を
有し、単一量子井戸(SQW)構造と多重量子井戸(M
QW)構造に分類される。
【0003】多重量子井戸構造を有する半導体レーザ
は、数層の井戸層と障壁層が積層されて成る。また、フ
ォトディテクターは、数十nmの井戸層/障壁層が50
〜100層積層されて成る。量子井戸構造を有する半導
体レーザは、活性層の厚さを電子の波動関数の広がり程
度まで薄くして、利得及び光損失特性に量子サイズ効果
を持たせた半導体レーザである。この半導体レーザは、
例えば、低い閾値電流密度、高い微分量子効率、低い温
度依存性といった特徴を有し、狭いスペクトル線幅を得
ることができる。
【0004】一方、半導体素子としての高周波増幅素
子、特に、高周波超低雑音増幅素子として、HEMT
(High Electron Mobility Transistor)の開発が進め
られている。HEMTを作製するためには、選択ドーピ
ングヘテロ構造を有する化合物半導体薄膜積層構造を形
成することが必要とされる。HEMTを構成する化合物
半導体薄膜積層構造は、エピタキシャル成長層に対する
基板の影響を極力抑制するためのバッファ層(緩衝層と
も呼ばれる)、2次元電子の走行するチャネル層(能動
層とも呼ばれ、バッファ層の材料と同一の場合もあ
る)、及び不純物が選択的にドーピングされた電子供給
層から成る。場合によっては、チャネル層と電子供給層
との間の不純物の移動を抑制するためのスペーサ層が、
チャネル層と電子供給層との間に形成されており、更に
は、電子供給層と電極との間のコンタクトを取るための
キャップ層が形成されている。
【0005】現在、既に衛星放送用に利用されているH
EMTはAlGaAs/GaAs系のものであるが、こ
の場合、バッファ層とチャネル層はGaAsから構成さ
れ、スペーサ層と電子供給層はAlGaAsから構成さ
れている。
【0006】かかる量子効果を生ずるような層厚を有す
る量子井戸構造のような規則的多層結晶層をエピタキシ
ャル成長させるための方法、あるいは又、選択ドーピン
グヘテロ構造を有する化合物半導体薄膜積層構造を形成
するための方法としては、有機金属気相成長法(MOC
VD法)や分子線エピタキシー法(MBE法)がある。
これらの方法は、どちらも非平衡状態に非常に近い結晶
成長方法であり、結晶成長に用いる材料系の化学的特性
の制約を受け難いため、薄層でしかも急峻な界面を得る
のに適した方法である。
【0007】従来の技術として、MOCVD法によっ
て、例えばIII−V族化合物半導体の規則的多層結晶
層をエピタキシャル成長させる場合を例にとり、以下、
説明する。
【0008】MOCVD法においては、液状の有機金属
原料中に高純度の水素等のキャリアガスを通してバブリ
ングさせることにより、バブリング時の温度における飽
和蒸気圧分の有機金属原料を得ることができる。III
−V族化合物半導体の成長においては、III族元素原
料として有機金属が使用される場合が多い。また、V族
元素原料として水素希釈されたアルシン(AsH3)に
代表されるような水素化物が一般に使用される。
【0009】これらの原料は高圧のガス状物質であり、
レギュレータを用いることにより圧力を下げ、キャリア
ガスと共にガスの状態で輸送され、結晶成長に供され
る。以下、かかる原料とキャリアガス(例えば、有機金
属原料+キャリアガス、水素化物+キャリアガス)とが
混合された状態を、原料ガスと呼ぶ。エピタキシャル成
長に必要とされる原料の切り替えは、これらの原料ガス
の切り替えによって行うことができる。
【0010】ところで、急峻な界面(この概念について
は後述する)を形成するためには、原料ガスの高速切り
替えが必要とされる。例えば、今、仮に結晶層の成長速
度を0.1nm/秒、原料ガス流速を1m/秒とすれ
ば、例えば原料ガスが10cmの加熱領域を進むため
に、0.1秒を要する。また、この場合、GaAsが1
原子層成長するのには約2.83秒必要なので、GaA
sを1原子層成長させるために要する時間の約1/30
の時間で原料ガスを切り替えることができる。このこと
から、充分速やかな原料ガス切り替えが行われているこ
とが判る。
【0011】このような条件で、反応器内の加熱された
サセプタ上に保持された化合物半導体基板上に原料ガス
を供給することにより、化合物半導体層のエピタキシャ
ル成長が可能となる。MOCVD法においては、V族元
素原料であるアルシンは、通常、常に基板上に供給され
ており、III族原料を基板上に供給することにより化
合物半導体層の成長を開始させ継続することができる。
例えばトリメチルガリウム(TMG)を供給することに
よりGaAs結晶層がエピタキシャル成長し、トリメチ
ルインジウム(TMI)を更に供給すればGa1-xInx
As結晶層がエピタキシャル成長する。混晶比xはTM
GとTMIのモル比で決定される。原料のモル分率は単
純に原料ガスの供給流量比に比例するので、換言すれば
原料ガスの供給流量比を変化させることにより混晶比x
を制御することができる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の化合物
半導体層のエピタキシャル成長方法において、量子井戸
構造のような規則的多層結晶層構造を形成する場合、あ
るいは又、選択ドーピングヘテロ構造を有する化合物半
導体薄膜積層構造を形成する場合、結晶層厚の均一性は
勿論のこと、界面の急峻性は半導体素子の特性を決定す
る重要なパラメータである。ここで層厚の均一性に関連
する結晶層表面の平坦性(ラフネス,roughness)と、
界面の急峻性(アブラプトネス,abruptness)について
詳細に説明する。
【0013】先ず、始めに急峻性について説明する。化
合物半導体の半導体素子への応用を考える上で、異種半
導体接合(ヘテロ接合)は重要な概念である。異種半導
体には、GaAsとInP等の組み合わせの他に、Ga
AsとAlyGa1-yAs若しくはGa1-xInxAs等の
組成の一部が異なる組み合わせも含まれる。このような
異種半導体接合(ヘテロ接合)には必ずヘテロ界面が存
在する。
【0014】異種半導体接合をエピタキシャル成長法で
連続的に形成したとき、そのヘテロ界面が充分設計通り
に形成されているかを評価する指針の1つに、急峻性と
言う概念がある。つまり、異種半導体接合が原子レベル
でどの程度実現されているかという概念である。ヘテロ
界面において単原子層オーダーで異種の半導体層に変わ
っていれば、充分に急峻な界面が形成されている。即
ち、急峻性が優れていると言える。ヘテロ界面において
徐々に組成が移り変わるように異種半導体接合が形成さ
れている場合には、急峻性が悪いと言える。
【0015】結晶成長の場合には、原料が充分に短時間
で切り替わったとしても、例えば管壁に付着していた原
料が再度成長しつつある結晶層に取り込まれてしまった
り、反応律速な成長モードがあるなどの理由から、界面
に中間層のようなものが存在する可能性がある。
【0016】急峻性とは異なるもう1つの概念として平
坦性がある。この平坦性は、単純にミクロな結晶層厚の
均一性と考えてよい。平坦性が劣化する原因としては、
結晶欠陥や異物付着による異常成長、成長しつつある結
晶表面上で原料が充分にマイグレーションできず液滴
(ドロップレット)状に近い状態になっているため成長
しつつある結晶表面が凹凸になってしまう等の種々の原
因が挙げられる。尚、後者の場合には、急峻性も悪いと
いえる。急峻性は優れるが平坦性が悪いという状態は、
当然起こり得る。
【0017】以上の説明を基に、もう少し具体的な例で
本発明が解決しようとする問題を説明する。通常のMO
CVD法を用いたAlGaAs系若しくは若干Inを含
んだシュードモレフィック(pseudomorphic)系の結晶
成長においては連続的に結晶成長を行う。そして、ヘテ
ロ界面を評価する手段として、例えば量子井戸構造を用
いてスペクトルを評価することが一般に行われている。
成長条件によっては、フォトルミネッセンス特性におけ
るスペクトルの半値幅の広がりが観測される。
【0018】このスペクトルの半値幅の広がりの観測結
果から、期待される充分に急峻性を有するヘテロ界面が
得られておらず、あるいは又、所望の井戸幅(井戸層を
構成する結晶層の厚さ)が安定に得られていないことが
推測される。言い替えれば、井戸層の組成と障壁層の組
成の中間の組成を有する層が界面に存在し、あるいは
又、基板面内における井戸層を構成する結晶層の厚さに
ばらつきが生じていると考えられる。
【0019】また、このようなスペクトルの半値幅の広
がりが観察されるということは、言い換えれば、安定な
吸収特性を得ることが難しく、半導体素子を作製した際
の特性の安定性において重大な欠点を生じるという問題
がある。
【0020】例えば、量子効果を有する規則的多層結晶
層構造においては、特に実効的な井戸幅、障壁層の幅、
井戸層のバンドギャップ、障壁層のバンドギャップが異
なっていると、期待される量子効果に多大の影響を及ぼ
す。
【0021】また、選択ドーピングヘテロ構造を有する
化合物半導体薄膜積層構造から成るHEMTにおいて
は、特に、チャネル層の高純度化(チャネル層内の残留
不純物原子数)、チャネル層の平坦性、チャネル層の組
成均一性あるいはヘテロ界面の急峻性が良好でないと、
これらの全ては2次元電子の走行に対する散乱要因とな
り、期待される低雑音増幅効果に多大の影響を及ぼす。
ここで、散乱要因は、2次元電子に対する例えばチャネ
ル層内の残留不純物原子による直接的な走行妨害要因の
みならず、電子の走行する方向に対する電子の感ずるポ
テンシャルの揺らぎの原因となり得る全ての要因を指
す。尚、Ga1-xInxAsが混晶であるために起因する
合金散乱効果等も散乱要因として考えられるが、材料が
本来有しているこのような散乱要因に関しては、本発明
によって改善されるものではない。
【0022】以上のように、安定なヘテロ界面を得るこ
とは半導体素子への応用において重要な意味を持つ。
【0023】従来のMOCVD法における原料ガスの供
給の様子を示す結晶層成長シーケンスを図12に、ま
た、或る時間における結晶層の状態を模式的に図13に
示す。この結晶層成長シーケンスは、多重量子井戸構造
を有する従来のフォトディテクタの製造工程に相当す
る。従来のMOCVD法においては、図12に示すよう
に、GaAs層(バッファ層あるいは障壁層)の成長段
階([工程−1A])においては、TMG(トリメチル
ガリウム)は供給されるが、TMI(トリメチルインジ
ウム)の供給が中断される。Ga1-xInxAs層(井戸
層)の成長段階([工程−1B])においては、TMG
及びTMIの両方が供給される。全ての段階においてア
ルシンは供給され続ける。
【0024】結晶層成長シーケンスに於いて、「ON」
は反応器内に原料ガスが供給されている状態であり、
「OFF」は反応器内への原料ガスの供給が中断されて
いる状態である。結晶層を連続成長させてヘテロ界面を
形成した場合、井戸層の表面付近に存在すると考えられ
る不安定要因(例えば、急峻性及び平坦性の悪さ)が、
次の障壁層成長に直接影響を与える。この状態を、図1
3の(A)〜(E)に示す。尚、結晶層の状態を模式的
に示す図13において、黒点は急峻性及び平坦性が不良
な状態を表わす。
【0025】従来のMOCVD法における原料ガスの供
給の様子を示す別の結晶層成長シーケンスを図14に、
また、或る時間における結晶層の状態を模式的に図15
に示す。この結晶層成長シーケンスは、従来のHEMT
の製造工程に相当する。従来のMOCVD法において
は、図14に示すように、GaAs層(バッファ層)の
成長段階([工程−2A])においては、TMGは供給
されるが、TMIの供給が中断される。Ga1-xInx
s層(チャネル層)の成長段階([工程−2B])にお
いては、TMG及びTMIの両方が供給される。ノンド
ープAlyGa1-yAs層(スペーサ層)の成長段階
([工程−2C])においては、TMG及びTMA(ト
リメチルアルミニウム)の両方が供給され、TMIの供
給は中断される。不純物がドーピングされたn+−Aly
Ga1-yAs層(電子供給層)の成長段階([工程−2
D])においては、TMG及びTMA(トリメチルアル
ミニウム)の供給に加え、ジシラン(Si26)が供給
される。最後に、n+−GaAs層(キャップ層)の成
長段階([工程−2E])においては、TMGとジシラ
ンが供給される。全ての段階においてアルシンは供給さ
れ続ける。
【0026】図13に示したと同様に、結晶層を連続成
長させてヘテロ界面を形成した場合、或る結晶層(例え
ば、チャネル層)の表面付近に存在すると考えられる不
安定要因(例えば、急峻性及び平坦性の悪さ)が、その
上に形成される結晶層(例えば、スペーサ層や電子供給
層)の成長に直接影響を与える。この状態を、図15の
(A)〜(E)に示す。尚、結晶層の状態を模式的に示
す図15においても、黒点は急峻性及び平坦性が不良な
状態を表わす。
【0027】従って、現実には、完全なヘテロ界面は勿
論存在し得ないが、結晶成長において限りなく急峻で平
坦なヘテロ界面を得ることが半導体素子への応用を考え
た上で強く要求されている。
【0028】MOCVD法にて化合物半導体混晶多層膜
を成長させる方法が、例えば、特開平4−164893
号公報から公知である。この公報に記載された成長方法
は、アルシン、ホスフィン、TMG及びTMIを原料ガ
スとして用い、基板上に第1層目のGaxIn1-xAsz
1-zの成長後、一定時間の間、TMG及びTMIの供
給を中断しつつ基板の温度を変える。次いで、TMG及
びTMIの流量を変えて再びTMG及びTMIを基板に
供給して、第2層目のGa1-xInxAsz1-zを第1層
目のGa1-xInxAsz1-z上に成長させる。この公報
に開示された化合物半導体多層膜の成長方法は量子井戸
構造を有する化合物半導体層に形成方法に関するもので
はなく、しかも、第1層目と第2層目の混晶を構成する
元素は同一である。そのため、基板の温度を変えること
によって、第1層目と第2層目の混晶層の境界の平坦性
を向上させている。
【0029】従って、本発明の第1の目的は、量子井戸
構造を有する化合物半導体層の結晶成長において、限り
なく急峻で平坦な界面を得ることができる化合物半導体
成長方法を提供することにある。
【0030】更に、本発明の第2の目的は、例えば選択
ドーピングヘテロ構造を有する化合物半導体薄膜積層構
造の結晶成長において、限りなく急峻で平坦な界面を得
ることができる化合物半導体成長方法を提供することに
ある。
【0031】
【課題を解決するための手段】上記の第1の目的を達成
するための本発明の化合物半導体層の成長方法は、井戸
層と障壁層から成る量子井戸構造を有する化合物半導体
層を、有機金属気相成長法(MOCVD法)による化合
物半導体のエピタキシャル成長によって基板上に成長さ
せる方法であって、井戸層をエピタキシャル成長させた
後、障壁層を形成するための原料の一部の供給を中断し
て、一定期間の間、障壁層のエピタキシャル成長を停止
させることを特徴とする。
【0032】本発明の化合物半導体層の成長方法におい
ては、井戸層のバンドギャップは、障壁層のバンドギャ
ップよりも狭いことが望ましい。あるいは又、井戸層を
形成するための原料は、障壁層を形成するための原料
に、バンドギャップが狭くなるような材料を加えて成る
ことが望ましい。更には、障壁層はGaAsから成り、
井戸層はGa1-xInxAsから成ることが望ましい。
【0033】上記の第2の目的を達成するための本発明
の第1の態様に係る化合物半導体薄膜積層構造の形成方
法は、第1の化合物半導体層及び第1の化合物半導体層
のバンドギャップよりも広いバンドギャップを有する第
2の化合物半導体層から成りそして選択ドーピングヘテ
ロ構造を有する化合物半導体薄膜積層構造を、有機金属
気相成長法(MOCVD法)による化合物半導体のエピ
タキシャル成長によって基板上に成長させる方法であっ
て、第1の化合物半導体層をエピタキシャル成長させた
後、第2の化合物半導体層を形成するための原料の一部
の供給を中断して、一定期間の間、第2の化合物半導体
層のエピタキシャル成長を停止させることを特徴とす
る。
【0034】本発明の第1の態様に係る化合物半導体薄
膜積層構造の形成方法においては、前記第1の化合物半
導体層でチャネル層を構成し、前記第2の化合物半導体
層で電子供給層を構成することが望ましい。この場合、
チャネル層はGa1-xInxAsから成り、電子供給層は
+−AlyGa1-yAsから成ることが好ましい。ある
いは又、前記第1の化合物半導体層でチャネル層を構成
し、前記第2の化合物半導体層で下からスペーサ層及び
電子供給層を構成することが望ましい。この場合、チャ
ネル層はGa1-xInxAsから成り、スペーサ層はAl
yGa1-yAsから成り、電子供給層はn+−AlyGa
1-yAsから成ることが好ましい。
【0035】上記の第2の目的を達成するための本発明
の第2の態様に係る化合物半導体薄膜積層構造の形成方
法は、Ga1-xInxAs層(但し、0<x<1)及びA
yGa1-yAs層(但し、0≦y≦1)から成る化合物
半導体積層構造を、有機金属気相成長法(MOCVD
法)による化合物半導体のエピタキシャル成長によって
基板上に成長させる方法であって、Ga1-xInxAs層
をエピタキシャル成長させた後、AlyGa1-yAs層を
形成するための原料の一部の供給を中断して、一定期間
の間、AlyGa1-yAs層のエピタキシャル成長を停止
させることを特徴とする。
【0036】
【作用】本発明の化合物半導体層の成長方法において
は、井戸層をエピタキシャル成長させた後、障壁層を形
成するための原料の一部の供給を中断して、一定期間の
間、障壁層のエピタキシャル成長を停止させる。これに
よって、井戸層の表面の平坦化が改善され、安定した光
学特性を有する化合物半導体層を得ることができる。
尚、本発明の化合物半導体層の成長方法においては、井
戸層と障壁層の組成が相違するので、基板の温度を変化
させなくとも井戸層の表面の平滑性が改善される。
【0037】また、本発明の第1の態様に係る化合物半
導体薄膜積層構造の形成方法においては、第1の化合物
半導体層をエピタキシャル成長させた後、一定期間の
間、第2の化合物半導体層のエピタキシャル成長を停止
させる。これによって、第1の化合物半導体層の表面の
平坦化が改善され、安定したヘテロ界面を有する化合物
半導体薄膜積層構造を得ることができる。尚、本発明の
第1の態様に係る化合物半導体薄膜積層構造の形成方法
においては、第1及び第2の化合物半導体層の組成が相
違するので、基板の温度を変化させなくとも第1の化合
物半導体層の表面の平滑性が改善される。
【0038】更には、本発明の第2の態様に係る化合物
半導体薄膜積層構造の形成方法においては、Ga1-x
xAs層をエピタキシャル成長させた後、一定期間の
間、AlyGa1-yAs層のエピタキシャル成長を停止さ
せる。これによって、Ga1-xInxAs層の表面の平坦
化が改善され、安定したヘテロ界面を有する化合物半導
体薄膜積層構造を得ることができる。尚、本発明の第2
の態様に係る化合物半導体薄膜積層構造の形成方法にお
いても、各層の組成が相違するので、基板の温度を変化
させなくともGa1-xInxAs層の表面の平滑性が改善
される。
【0039】
【実施例】以下、図面を参照して、実施例に基づき本発
明を説明する。
【0040】(実施例1)実施例1は、本発明の化合物
半導体層の成長方法、及び本発明の第2の態様に係る化
合物半導体薄膜積層構造の形成方法に関する。図3に、
実施例1を実施するのに必要な化合物半導体成長装置で
あるMOCVD装置を示す。有機金属原料10と水素化
物ガス原料12はキャリアガス精製装置14から供給さ
れるキャリアガスにより反応器16に導入される。これ
によって、化合物半導体層が、加熱されたサセプタ18
上に保持された半導体基板20上で成長する。尚、参照
番号22はマスフローコントローラであり、黒丸は閉状
態のバルブを示し、白丸は開状態のバルブを示す。
【0041】このようなMOCVD装置を用いて、本発
明の化合物半導体層の成長方法あるいは本発明の第2の
態様に係る化合物半導体薄膜積層構造の形成方法を実施
することにより、例えば、Ga1-xInxAs/GaAs
から成る量子井戸構造を有する規則的多層結晶層をエピ
タキシャル成長させることができる。以下、図1及び図
2を参照して、実施例1の化合物半導体層の成長方法を
説明する。尚、図1に、原料ガスの供給の様子を示す結
晶層成長シーケンスを示す。また、図2に、或る時間に
おける結晶層の状態を模式的に示す。結晶層成長シーケ
ンスに於いて、「ON」は反応器内に原料ガスが供給さ
れている状態であり、「OFF」は反応器内への原料ガ
スの供給が中断されている状態である。
【0042】[工程−100]先ず、反応器16内に保
持された例えばGaAsから成る化合物半導体基板20
を結晶成長開始直前まで加熱した状態で保持しておく。
V族原料、例えばAsH3を反応器16内に供給し続け
ておく。その理由は、V族原料は飽和蒸気圧が高く、V
族原料を反応器16内に供給し続けておかないと、形成
された結晶層の表面からV族元素が蒸発してしまうから
である。
【0043】[工程−110]次いで、結晶成長を開始
させる。即ち、反応器16内に、ガリウム原料として例
えばトリメチルガリウム(TMG)を供給する。これに
よって、化合物半導体基板20上にGaAs層30の成
長が開始する。このGaAs層30は、化合物半導体基
板20が素子の能動層となる結晶層(井戸層)へ与える
悪影響を極力緩和する目的で形成されるバッファ層の役
割を有し、且つ、実施例1においては、井戸層に対する
障壁層としての役割も兼ねている。この工程の最終段階
における結晶層の状態を図2の(A)に模式的に示す。
【0044】[工程−120]その後、トリメチルガリ
ウム(TMG)を供給し続けると共に、更にインジウム
の原料として例えばトリメチルインジウム(TMI)を
供給する。即ち、井戸層を形成するための原料は、障壁
層を形成するための原料(この場合、Ga及びAs)
に、バンドギャップが狭くなるような材料(この場合I
n)を加えて成る。これによって、反応器16内にはガ
リウムとインジウム原料が供給され、Ga1-xInxAs
層32がGaAs層30上に連続して成長する。このG
1-xInxAs層32が井戸層となる。この工程の最終
段階における結晶層の状態を図2の(B)に模式的に示
す。この時点においては、Ga1-xInxAs層32の表
面の平坦性は余り良くない。
【0045】[工程−130]次に、意図的にトリメチ
ルガリウム(TMG)とトリメチルインジウム(TM
I)の反応器16への供給を中断することによって、一
定期間(成長中断時間tinterruption)の間、結晶成長
を中断する。この際のTMGとTMIの成長中断時間t
interruptionは、tmin以上tmax以下とする。この工程
の最終段階における結晶層の状態を図2の(C)に模式
的に示す。
【0046】成長中断時間tinterruptionの経過後、再
度トリメチルガリウム(TMG)の反応器16への供給
を再開することによりGaAs層の結晶成長を再開し、
障壁層30Aを形成する。即ち、Ga1-xInxAs層3
2を[工程−120]においてエピタキシャル成長させ
た後、AlyGa1-yAs層(実施例1においてはy=
0、即ちGaAs層)30Aを形成するための原料の一
部の供給を[工程−130]において中断して、一定期
間(成長中断時間tinterruption)の間、AlyGa1-y
As層32(但し、y=0)のエピタキシャル成長を停
止させる。
【0047】このように、[工程−110]〜[工程−
130]を所望の回数だけ繰り返し、Ga1-xInxAs
層(井戸層)/GaAs(障壁層)の規則的多層結晶層
構造を形成する。第2回目の[工程−110]及び[工
程−120]の最終段階における結晶層の状態を図2の
(D)及び(E)に模式的に示す。
【0048】[工程−130]において原料ガスの一部
の化合物半導体基板への供給を中断することによって、
井戸層最表面付近に存在する不安定要因(急峻性及び平
坦性の不良)が取り除かれる。その結果、良好なヘテロ
界面が形成される。尚、結晶層の状態を模式的に示す図
2において、黒点は急峻性及び平坦性の不良状態を表わ
す。
【0049】ここで、成長中断時間tinterruptionのt
min及びtmaxをどの様に決定するかについて説明する。
図4は、井戸幅を変化させて形成した単一量子井戸を複
数層(図4に示す試料では3層)有する試料の構造を模
式的に示したものである。また、図5は、低温における
フォトルミネッセンス測定の結果得られたスペクトルで
ある。GaAsから成る障壁層30A,30B,30C
の層厚を全て50nmとした。またGa1-xInxAsか
ら成る井戸層32A,32B,32Cの幅を、それぞれ
3nm,7nm,13nmとした。この構造は、井戸層
の成長時間を変えることによって形成した。また、成長
中断時間tinterruptionを変化させて、同様の単一量子
井戸を複数層有する各種試料を得た。
【0050】図5に示すように、フォトルミネッセンス
のスペクトルには、Ga1-xInxAs(x=0.2)と
GaAsとのヘテロ界面における成長中断時間t
interrupti onの影響が現れている。図5において、
(A)のピークは成長中断時間tinterr uption=5秒、
ピーク(B)は成長中断時間tinterruption=15秒、
ピーク(C)は成長中断時間tinterruption=60秒の
それぞれにおける、厚さ13nmの井戸層から得られた
ピークである。尚、GaAsとGa1-xInxAsとのヘ
テロ界面を形成する際に、GaAs層を形成した後にG
1-xInxAs層の成長を中断しても、フォトルミネッ
センスのスペクトルに変化が観測されなかった。即ち、
GaAs層の表面は、GaAs層の成長中に容易に平坦
になると考えられる。
【0051】成長中断時間tinterruptionを変えること
によって、井戸層からの発光のスペクトルの半値幅や発
光波長(ピークエネルギー)、発光強度が異なる。これ
らの観測結果から、既に述べたように、成長中断時間t
interruptionが短い場合、Ga1-xInxAsとGaAs
とのヘテロ界面において、期待される程充分に急峻なヘ
テロ界面が得られていない、若しくは井戸幅が安定に得
られていないと考えられる。言い替えれば、成長中断時
間tinterruptionが短い場合、井戸層の組成と障壁層の
組成の中間の組成を有する層がヘテロ界面に存在する、
若しくは基板面内において結晶層の厚さにばらつきが生
じていると考えられる。
【0052】図6に、かかる試料の発光波長のシフト量
と成長中断時間tinterruptionの関係を示す。Ga1-x
InxAsから成る井戸層の物理的な幅と、井戸層を形
成しているGa1-xInxAsの混晶比xの影響を考える
と、井戸層の幅が広いほど発光波長は長波長になり、井
戸層の幅が狭いほど発光波長は短波長になる。また混晶
比xが高い程バンドギャップは狭くなるため、発光波長
は長波長になり、混晶比xが低い程、発光波長は短波長
になる。
【0053】図6から明らかなように、3種類の井戸層
(厚さがそれぞれ3nm,7nm,13nm)からの発
光は同様の傾向を示す。つまり、一旦発光波長の値が増
加した後に減少し、その後ほぼ一定の値に収斂する。発
光波長の値が一旦増加する原因は、井戸層の組成にゆら
ぎ(斑)が発生し、成長中断時間tinterruptionが長く
なるに従い、この組成のゆらぎが少なくなるためである
と考えられる。また、発光波長の値が増加した後に減少
しその後ほぼ一定の値を示す原因は、成長中断時間t
interruptionが長くなるに従い、平坦性が向上し、井戸
層の幅が均一化するためであると考えられる。尚、成長
中断時間tinterruption=0秒の場合と成長中断時間t
interruption=120秒との間で、発光波長の値が相違
している。このことからも、成長中断時間t
interruption=0秒、即ち井戸層を形成した後連続して
障壁層を形成した場合、光学的安定性が得られないこと
が判る。
【0054】従って、図6に示すような、発光波長が充
分に安定になる成長中断時間tinte rruption(例えば3
0秒程度)をtminとすればよい。また、加熱状態の水
素雰囲気中ではGaAs層がエッチングされることが判
っており(A. Okubora, J. Kasahara, M. Arai, and N.
Watanabe, Journal of Applied Physics Vol. 60, No.
4, 1501-1504, 1986 参照)、混晶比xが低いGa1-x
xAsでも同様なエッチングが起こり得ると考えられ
るので、成長中断時間tmaxは、特に井戸層幅が狭い場
合にはエッチングが起こらないあるいは起きても影響が
充分無視できる時間であって、しかも成長中断によって
結晶成長面に汚染が発生しない程度の時間とする必要が
ある。
【0055】(実施例2)実施例2は本発明の第1及び
第2の態様の化合物半導体薄膜積層構造の形成方法に関
し、より具体的にはHEMTの作製に関する。実施例2
においても、実施例1と同様に図3に示した化合物半導
体成長装置であるMOCVD装置を用いる。このような
MOCVD装置を用いて本発明の化合物半導体薄膜積層
構造の形成方法を実施することにより、化合物半導体薄
膜積層構造をエピタキシャル成長させることができる。
以下、図7、図8及び図9を参照して、実施例2の化合
物半導体薄膜積層構造の形成方法を説明する。尚、図7
に、原料ガスの供給の様子を示す結晶層成長シーケンス
を示す。また、図8及び図9に、或る時間における結晶
層の状態を模式的に示す。
【0056】[工程−200]実施例1の[工程−10
0]と同様に、先ず、反応器16内に保持された例えば
GaAsから成る化合物半導体基板20を結晶成長開始
直前まで加熱した状態で保持しておく。V族原料、例え
ばAsH3を反応器16内に供給し続けておく。
【0057】[工程−210]次いで、結晶成長を開始
させる。即ち、反応器16内に、ガリウム原料として例
えばトリメチルガリウム(TMG)を供給する。これに
よって、化合物半導体基板20上にGaAsから成るバ
ッファ層(緩衝層)40の成長が開始する。このバッフ
ァ層40は、化合物半導体基板20が素子の能動層とな
る結晶層(チャネル層)へ与える悪影響を極力緩和する
目的で形成される。この工程の最終段階における結晶層
の状態を図8の(A)に模式的に示す。
【0058】[工程−220]その後、トリメチルガリ
ウム(TMG)を供給し続けると共に、更にインジウム
の原料として例えばトリメチルインジウム(TMI)を
供給する。即ち、第1の化合物半導体層であるチャネル
層42を形成するための原料は、バッファ層40を形成
するための原料(この場合、Ga及びAs)に、バンド
ギャップが狭くなるような材料(この場合In)を加え
て成る。これによって、反応器16内にはガリウムとイ
ンジウム原料が供給され、Ga1-xInxAsから成るチ
ャネル層(第1の化合物半導体層)42がGaAsから
成るバッファ層40上に連続して成長する。この工程の
最終段階における各結晶層の状態を図8の(B)に模式
的に示す。この時点においては、Ga1-xInxAsから
成るチャネル層(第1の化合物半導体層)42の表面の
平坦性は余り良くない。
【0059】[工程−230]こうして、チャネル層4
2をエピタキシャル成長させた後、第2の化合物半導体
層の一部を構成するスペーサ層を形成するための原料の
一部の供給を中断して、一定期間(成長中断時間t
interruption)の間、第2の化合物半導体層の一部を構
成するスペーサ層のエピタキシャル成長を停止させる。
即ち、意図的にトリメチルガリウム(TMG)とトリメ
チルインジウム(TMI)の反応器16への供給を中断
することによって、結晶成長を中断する。この際のTM
GとTMIの成長中断時間tinterruptionは、tmin
上tmax以下とする。この工程の最終段階における各結
晶層の状態を図8の(C)に模式的に示す。
【0060】[工程−240]成長中断時間t
interruptionの経過後、再度トリメチルガリウム(TM
G)の反応器16への供給を再開することに加え、トリ
メチルアルミニウム(TMA)を反応器16へ供給す
る。これによって、AlyGa1-yAs(例えば、y=
0.3)から成りそして第2の化合物半導体層の一部を
構成するスペーサ層44の結晶成長を行う。即ち、言い
換えれば、Ga1-xInxAs層42をエピタキシャル成
長させた後、AlyGa1-yAs層44を形成するための
原料の一部の供給を中断して、一定期間(成長中断時間
interruption)の間、AlyGa1-yAs層44のエピ
タキシャル成長を停止させる。この工程の最終段階にお
ける各結晶層の状態を図9の(A)に模式的に示す。
【0061】[工程−250]次に、トリメチルガリウ
ム(TMG)及びトリメチルアルミニウム(TMA)の
反応器16への供給を続けながら、ジシラン(Si
26)を反応器16へ供給する。これによって、n+
AlyGa1-yAsから成りそして第2の化合物半導体層
を構成する電子供給層46が形成される。この工程の最
終段階における各結晶層の状態を図9の(B)に模式的
に示す。
【0062】[工程−260]その後、トリメチルガリ
ウム(TMG)及びジシラン(Si26)の反応器16
への供給を続け、トリメチルアルミニウム(TMA)の
反応器16への供給を中止する。これによって、n+
GaAsから成るキャップ層48が形成される。この工
程の最終段階における各結晶層の状態を図9の(C)に
模式的に示す。こうして、チャネル層(第1の化合物半
導体層)42、並びにスペーサ層44及び電子供給層4
6(第2の化合物半導体層)から成る選択ドーピングヘ
テロ構造を有する化合物半導体薄膜積層構造を、有機金
属気相成長法(MOCVD法)による化合物半導体のエ
ピタキシャル成長によって基板上に成長させることがで
きる。最後に、ソース電極、ゲート電極及びドレイン電
極を従来の方法で形成することによって、HEMTが完
成する。
【0063】[工程−230]において原料ガスの化合
物半導体基板への供給を中断することによって、第1の
化合物半導体層(チャネル層、あるいはGa1-xInx
s層)42の表面付近に存在する不安定要因(急峻性及
び平坦性の不良)が取り除かれる。その結果、良好なヘ
テロ界面が形成される。尚、結晶層の状態を模式的に示
す図8において、黒点は急峻性及び平坦性の不良状態を
表わす。
【0064】(実施例3)実施例3は実施例2の変形で
ある。実施例3が実施例2と相違する点は、スペーサ層
を形成しない点にある。即ち、第2の化合物半導体層は
電子供給層のみから構成される。また、実施例3におい
ては、キャップ層も形成しない。以下、図10及び図1
1を参照して、実施例3の化合物半導体薄膜積層構造の
形成方法を説明する。尚、図10に、原料ガスの供給の
様子を示す結晶層成長シーケンスを示す。また、図11
に、或る時間における結晶層の状態を模式的に示す。
【0065】[工程−300]実施例2の[工程−20
0]と同様に、先ず、反応器16内に保持された例えば
GaAsから成る化合物半導体基板20を結晶成長開始
直前まで加熱した状態で保持しておく。V族原料、例え
ばAsH3を反応器16内に供給し続けておく。
【0066】[工程−310]次いで、実施例2の[工
程−210]と同様に、結晶成長を開始させて、化合物
半導体基板20上にGaAsから成るバッファ層(緩衝
層)40を成長させる。この工程の最終段階における結
晶層の状態を図11の(A)に模式的に示す。
【0067】[工程−320]その後、実施例2の[工
程−220]と同様に、トリメチルガリウム(TMG)
を供給し続けると共に、更にインジウムの原料として例
えばトリメチルインジウム(TMI)を供給し、Ga
1-xInxAsから成るチャネル層(第1の化合物半導体
層)42をGaAsから成るバッファ層40上に連続し
て成長させる。この工程の最終段階における各結晶層の
状態を図11の(B)に模式的に示す。この時点におい
ては、Ga1-xInxAsから成るチャネル層(第1の化
合物半導体層)42の表面の平坦性は余り良くない。
【0068】[工程−330]こうして、チャネル層4
2をエピタキシャル成長させた後、実施例2の[工程−
230]と実質的には同様に、第2の化合物半導体層を
構成する電子供給層を形成するための原料の一部の供給
を中断して、一定期間(成長中断時間tinterr uption
の間、第2の化合物半導体層を構成する電子供給層のエ
ピタキシャル成長を停止させる。即ち、意図的にトリメ
チルガリウム(TMG)とトリメチルインジウム(TM
I)の反応器16への供給を中断することによって、結
晶成長を中断する。この工程の最終段階における各結晶
層の状態を図11の(C)に模式的に示す。
【0069】[工程−340]成長中断時間t
interruptionの経過後、再度トリメチルガリウム(TM
G)の反応器16への供給を再開することに加え、トリ
メチルアルミニウム(TMA)及びジシラン(Si
26)を反応器16へ供給する。これによって、n+
AlyGa1-yAs(例えば、y=0.3)から成りそし
て第2の化合物半導体層を構成する電子供給層46が形
成される。この工程の最終段階における各結晶層の状態
を図11の(D)に模式的に示す。
【0070】こうして、チャネル層(第1の化合物半導
体層)42、並びに電子供給層46(第2の化合物半導
体層)から成る選択ドーピングヘテロ構造を有する化合
物半導体薄膜積層構造を、有機金属気相成長法(MOC
VD法)による化合物半導体のエピタキシャル成長によ
って基板上に成長させることができる。最後に、ソース
電極、ゲート電極及びドレイン電極を従来の方法で形成
することによって、HEMTが完成する。[工程−33
0]において原料ガスの化合物半導体基板への供給を中
断することによって、第1の化合物半導体層(チャネル
層、あるいはGa1-xInxAs層)42の表面付近に存
在する不安定要因(急峻性及び平坦性の不良)が取り除
かれる。その結果、良好なヘテロ界面が形成される。
【0071】実施例2あるいは実施例3において、成長
中断時間tinterruptionのtmin及びtmaxを決定する方
法は、実施例1にて説明した方法と実質的に同様とする
ことができる。即ち、第1の化合物半導体層(Ga1-x
InxAs層)を井戸層とし、第2の化合物半導体層
(AlyGa1-yAs層)を障壁層とし、井戸幅を変化さ
せて形成した単一量子井戸を複数層、試験的に形成す
る。この場合、井戸層の成長時間を変えることによって
井戸幅を変化させればよい。また、成長中断時間tin
terruptionを変化させて、同様の単一量子井戸を複数層
有する各種試料を作製する。そして、各試料の低温にお
けるフォトルミネッセンス測定を行い、発光波長が充分
に安定になる成長中断時間tinterruptionをtminとす
ればよい。また、成長中断時間tmaxは、特に井戸層幅
が狭い場合にはエッチングが起こらないあるいは起きて
も影響が充分無視できる時間であって、しかも成長中断
によって結晶成長面に汚染が発生しない程度の時間とす
ればよい。
【0072】以上、本発明を好ましい実施例に基づき説
明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。井戸層のバンドギャップを、障壁層のバンドギ
ャップよりも狭くするために、障壁層をAlyGa1-y
sから構成し、井戸層をGa1-xInxAsから構成する
こともできる。あるいは又、障壁層をGaPから構成
し、井戸層をGa1-xInxPから構成することもでき
る。この場合、水素化物としてホスフィンを用いる。ま
た、井戸層は1層であっても複数層でもよい。GaIn
P等から成るショットキ層を形成することもできる。第
1の化合物半導体層として、その他、AlGaInAs
を例示することができる。また、第2の化合物半導体層
として、その他、AlInAsを例示することができ
る。本発明の化合物半導体薄膜積層構造の形成方法は、
HEMTの作製だけでなく、例えばHET(Hot Electr
on Transistor)の作製に適用することもできる。
【0073】
【発明の効果】本発明の化合物半導体層の成長方法は、
MOCVD法を用いた化合物半導体のエピタキシャル成
長により規則的多層結晶層構造、例えばGa1-xInx
s層を井戸層としGaAs層を障壁層とした量子井戸構
造を有する規則的多層結晶層を成長させる場合、井戸層
を成長させた後にのみ意図的に原料の一部の供給を中断
することにより、或る一定の時間範囲の障壁層成長中断
時間を設ける。これによって、井戸層の表面の急峻性及
び平坦性が向上し、急峻且つ平坦なヘテロ界面を安定に
得ることができ、化合物半導体装置の特性を向上させる
ことができる。
【0074】また、本発明の化合物半導体薄膜積層構造
の形成方法においては、第1の化合物半導体層(あるい
は、Ga1-xInxAs層)をエピタキシャル成長させた
後、一定期間の間、第2の化合物半導体層(あるいはA
yGa1-yAs層)のエピタキシャル成長を停止させ
る。これによって、第1の化合物半導体層(あるいは、
Ga1-xInxAs層)の表面の平坦化が改善され、安定
したヘテロ界面を有する化合物半導体薄膜積層構造を得
ることができる。尚、本発明の化合物半導体薄膜積層構
造の形成方法においては、各化合物半導体層の組成が相
違するので、基板の温度を変化させなくとも第1の化合
物半導体層(あるいは、Ga1-xInxAs層)の表面の
平滑性が改善され、安定したヘテロ界面を有する化合物
半導体薄膜積層構造を得ることができる。これによっ
て、急峻且つ平坦なヘテロ界面を安定に得ることがで
き、化合物半導体装置の特性を向上させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における原料ガスの供給の様子を示す
結晶層成長シーケンスを表わす図である。
【図2】実施例1において、或る時間における結晶層の
状態を模式的に示す図である。
【図3】MOCVD装置の概要図である。
【図4】井戸幅を変化させて形成させた単一量子井戸を
複数層有する試料の構造を模式的に示す図である。
【図5】実施例1により得られた試料のフォトルミネッ
センス測定の結果得られたスペクトルを示す図である。
【図6】実施例1における発光波長のシフト量と成長中
断時間tinterruptionの関係を示す図である。
【図7】実施例2における原料ガスの供給の様子を示す
結晶層成長シーケンスを表わす図である。
【図8】実施例2において、或る時間における結晶層の
状態を模式的に示す図である。
【図9】図8に引き続き、実施例2において、或る時間
における結晶層の状態を模式的に示す図である。
【図10】実施例3における原料ガスの供給の様子を示
す結晶層成長シーケンスを表わす図である。
【図11】実施例3において、或る時間における結晶層
の状態を模式的に示す図である。
【図12】従来のMOCVD法における原料ガスの供給
の様子を示す結晶層成長シーケンスを表わした図であ
る。
【図13】図12に示した従来のMOCVD法におい
て、或る時間における結晶層の状態を模式的に示す図で
ある。
【図14】図12に示したとは別の従来のMOCVD法
における原料ガスの供給の様子を示す結晶層成長シーケ
ンスを表わした図である。
【図15】図14に示した従来のMOCVD法におい
て、或る時間における結晶層の状態を模式的に示す図で
ある。
【符号の説明】
10 有機金属原料 12 水素化物ガス原料 14 キャリアガス精製装置 16 反応器 18 サセプタ 20 半導体基板 22 マスフローコントローラ 30,30A,30B,30C GaAs層(障壁層) 32,32A,32B,32C Ga1-xInxAs層
(井戸層) 40 バッファ層(緩衝層) 42 第1の化合物半導体層(チャネル層) 44 第2の化合物半導体層(スペーサ層) 46 第2の化合物半導体層(電子供給層) 48 キャップ層

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】井戸層と障壁層から成る量子井戸構造を有
    する化合物半導体層を有機金属気相成長法(MOCVD
    法)による化合物半導体のエピタキシャル成長によって
    基板上に成長させる方法であって、 井戸層をエピタキシャル成長させた後、障壁層を形成す
    るための原料の一部の供給を中断して、一定期間の間、
    障壁層のエピタキシャル成長を停止させることを特徴と
    する化合物半導体層の成長方法。
  2. 【請求項2】井戸層のバンドギャップは、障壁層のバン
    ドギャップよりも狭いことを特徴とする請求項1に記載
    の化合物半導体層の成長方法。
  3. 【請求項3】井戸層を形成するための原料は、障壁層を
    形成するための原料に、バンドギャップが狭くなるよう
    な材料を加えて成ることを特徴とする請求項1に記載の
    化合物半導体層の成長方法。
  4. 【請求項4】障壁層はGaAsから成り、井戸層はGa
    1-xInxAsから成ることを特徴とする請求項3に記載
    の化合物半導体層の成長方法。
  5. 【請求項5】第1の化合物半導体層及び該第1の化合物
    半導体層のバンドギャップよりも広いバンドギャップを
    有する第2の化合物半導体層から成りそして選択ドーピ
    ングヘテロ構造を有する化合物半導体薄膜積層構造を、
    有機金属気相成長法(MOCVD法)による化合物半導
    体のエピタキシャル成長によって基板上に成長させる方
    法であって、 第1の化合物半導体層をエピタキシャル成長させた後、
    第2の化合物半導体層を形成するための原料の一部の供
    給を中断して、一定期間の間、第2の化合物半導体層の
    エピタキシャル成長を停止させることを特徴とする化合
    物半導体薄膜積層構造の形成方法。
  6. 【請求項6】前記第1の化合物半導体層はチャネル層を
    構成し、前記第2の化合物半導体層は電子供給層を構成
    することを特徴とする請求項5に記載の化合物半導体薄
    膜積層構造の形成方法。
  7. 【請求項7】チャネル層はGa1-xInxAsから成り、
    電子供給層はn+−AlyGa1-yAsから成ることを特
    徴とする請求項6に記載の化合物半導体薄膜積層構造の
    形成方法。
  8. 【請求項8】前記第1の化合物半導体層はチャネル層を
    構成し、前記第2の化合物半導体層は下からスペーサ層
    及び電子供給層を構成することを特徴とする請求項5に
    記載の化合物半導体薄膜積層構造の形成方法。
  9. 【請求項9】チャネル層はGa1-xInxAsから成り、
    スペーサ層はAlyGa1-yAsから成り、電子供給層は
    +−AlyGa1-yAsから成ることを特徴とする請求
    項8に記載の化合物半導体薄膜積層構造の形成方法。
  10. 【請求項10】Ga1-xInxAs層(但し、0<x<
    1)及びAlyGa1-yAs層(但し、0≦y≦1)から
    成る化合物半導体積層構造を、有機金属気相成長法(M
    OCVD法)による化合物半導体のエピタキシャル成長
    によって基板上に成長させる方法であって、Ga1-x
    xAs層をエピタキシャル成長させた後、AlyGa
    1-yAs層を形成するための原料の一部の供給を中断し
    て、一定期間の間、AlyGa1-yAs層のエピタキシャ
    ル成長を停止させることを特徴とする化合物半導体薄膜
    積層構造の形成方法。
JP2370194A 1993-05-18 1994-01-26 量子井戸構造を有する化合物半導体層の成長方法及び化合物半導体薄膜積層構造の形成方法 Pending JPH0794430A (ja)

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JP2370194A JPH0794430A (ja) 1993-05-18 1994-01-26 量子井戸構造を有する化合物半導体層の成長方法及び化合物半導体薄膜積層構造の形成方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US6909120B2 (en) 2000-11-10 2005-06-21 Sharp Kabushiki Kaisha Nitride semiconductor luminous element and optical device including it

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