JPH0778581A - 単色化電子線源およびその製造方法 - Google Patents

単色化電子線源およびその製造方法

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JPH0778581A
JPH0778581A JP22167093A JP22167093A JPH0778581A JP H0778581 A JPH0778581 A JP H0778581A JP 22167093 A JP22167093 A JP 22167093A JP 22167093 A JP22167093 A JP 22167093A JP H0778581 A JPH0778581 A JP H0778581A
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electron beam
beam source
conductor
monochromatic
coating film
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JP22167093A
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English (en)
Inventor
Masakuni Okamoto
政邦 岡本
Taku Oshima
卓 大嶋
Kiyokazu Nakagawa
清和 中川
Hidetoshi Nishiyama
英利 西山
Yutaka Okuyama
裕 奥山
Masahiko Kondo
正彦 近藤
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電子線装置に用いられる電子線源において、
構造が単純で製作が容易であり、それでいて、エネルギ
ー幅の極めて狭い電子線を発生する単色化電子線源を実
現する。 【構成】 針状の導電体1の表面に膜厚が電子波の浸透
長程度の被覆膜2を設け、陽極4との間に電源5により
電圧を印加することによって、被覆膜2の障壁井戸層
2′の中に生じる量子準位7を介して、共鳴トンネル現
象により電子3を真空6中に放出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子顕微鏡などの電子
線装置に係り、特に、エネルギー幅の狭い電子線を発生
させる単色化電子線源およびその製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】最近、電子顕微鏡をはじめとする各種電
子線装置において、各装置の高分解能化や分析精度の向
上のために、電子線自身の有するエネルギー幅が問題に
なってきている。例えば、電子線エネルギー分析装置に
おいては、試料の分析精度向上のために、電子線源と試
料との間にエネルギー分析器を設け、電子線のエネルギ
ー幅を制限して試料に入射している。しかし、この方法
では入射電子線の輝度(明るさ)が大きく損なわれ、実
用上、かえって問題になっている。したがって、電子線
の発生時点ですでにエネルギー幅が極めて狭い単色化電
子線源の開発が、大きく期待されていた。
【0003】ところで、従来の狭エネルギー幅電子線源
として一般に広く使用されているものとしては、電界放
出型電子銃があり、この原理について記載されたものと
しては、例えば、日本学術振興会第132委員会編、電
子・イオンビームハンドブック第2版(昭和61年日刊
工業新聞社)145〜151ページがある。この電子線
源においては、タングステン(W)陰極の先端を100
nm径程度に鋭く尖らせることによって先端部分に電界
を集中させ、その結果、先端部分から真空中に電界放出
される電子を用いている。
【0004】また、この電界放出型の電子線源の先端部
分に一層の被覆膜を設け、仕事関数を低くすることによ
って放出電子流密度を増加させる電子線源もあり、例え
ば、特許「電界放出型冷陰極」(特開平2−22033
7号公報)に記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】W内部の電子と真空中
の自由電子との間には仕事関数と呼ばれるポテンシャル
エネルギー差があり、通常は、W内部の電子は外に出る
ことはできない。従来例においては、高電界をかけるこ
とによって真空準位を曲げ、図2(a)の様な薄い三角
形のポテンシャル障壁とする。W中の電子の一部はこの
ポテンシャル障壁をトンネル効果によって透過し、真空
中に放出される。この場合の電子線のエネルギー分布
は、W内部の電子のエネルギー分布とポテンシャル障壁
の透過率との積となり、図2(b)で示される分布とな
る。その結果、放出される電子のエネルギー半値幅は室
温で0.26eV程度となる。温度を下げれば電子のフ
ェルミ分布が急峻となるために高エネルギー側の拡がり
は小さくなるが、0°Kにおいても半値幅は0.2eV
程度である。これは、ピークより低エネルギー側の拡が
りがポテンシャル障壁の透過率で決っており、この透過
率は低温にしても変化しない事に起因している。従っ
て、従来例では、これ以上の単色化は望めないという問
題があった。
【0006】本発明は上記のような課題を解決するため
になされたもので、構造が単純で製作が容易であり、そ
れでいて、エネルギー幅の極めて狭い電子線を発生する
単色化電子線源およびその製造方法を提供することを目
的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明においては、陰極となる導電体の表面に少な
くとも一層の被覆膜を設け、対向する陽極との間に電圧
を印加して上記被覆膜の中に電場勾配によるポテンシャ
ルの三角形状の障壁井戸層を形成し、その障壁井戸層の
中に生じる量子準位を介して電子を放出させる。ここ
で、陰極である導電体を針状にし、電子を放出する陰極
先端部に上記被覆膜を設け、導電体はフェルミ準位付近
の電子状態がゼロでない材料で構成し、また、被覆膜は
陰極と陽極との間に印加される電圧によって電場勾配が
生じるように半導体あるいは絶縁物よりなる材料で構成
し、かつ、その膜厚が伝導電子のド・ブロイ波長程度に
なるようにする。そして、上記の量子準位を介して放出
される単色電子のエネルギーは、陰極と陽極との間に印
加する電圧によって上記の量子準位を移動させて制御す
る。
【0008】ところで、上記の単色化電子線源の構成材
料としては、導電体と被覆膜とはそれぞれ単結晶の半導
体あるいは絶縁体であり、被覆膜は導電体の表面にエピ
タキャル成長したもの、あるいは、導電体は金属あるい
は半金属であり、被覆膜はその上にエピタキシャル成長
したもの、あるいは、導電体と被覆膜とのうち、少なく
とも一つは非晶質体で形成されたもの、などがある。
【0009】そして、これらの単色化電子線源を同一基
板上に複数個設け、電圧は各々独立に印加でき、かつ、
陽極もその同一基板上に形成して、マルチビーム用の電
子線源を構成する。
【0010】さらに、上記の電子線源の製造方法とし
て、導電体の基板上に、まず、被覆膜を分子線エピタキ
シ、気相成長等の手法により形成し、次に、その後、溶
液、ガス、プラズマ等を用いたエッチングによって上記
電子線源の構造に形成する。
【0011】
【作用】エネルギー分布の狭い電子線源を形成するため
には、固体中にある電子のうち、特定のエネルギー準位
の電子のみを選択的に取り出すようにすればよい。その
エネルギー準位の幅が狭ければ狭いほど、エネルギー幅
の小さな電子線を得ることができる。
【0012】本発明に係る単色化電子線源においては、
上記の、固体中にある電子のうち特定のエネルギー準位
の電子のみを選択的に取り出すが、電子線源の構造を簡
単化するために、電子が通る径路中に、一方の障壁が真
空、もう一方の障壁がポテンシャル勾配をもつ被覆膜
(障壁井戸層)という二つの障壁にはさまれた三角井戸
状のエネルギー構造を作り、この中に生じた量子準位を
介した共鳴トンネル現象を利用する。ここでは、量子井
戸が三角形状であることが特徴である。このためのポテ
ンシャル勾配は、電子が通る径路に図3(a)に示すよ
うな(導電体31)−(少なくとも一層の被覆膜32)
−(真空33)の構造を形成し、導電体31に負、真空
33中の陽極に正となる電圧を印加することにより、図
3(b)のようなエネルギー構造を形成する。その結
果、障壁井戸層38′に生じる量子準位に一致したエネ
ルギーの電子がこの構造に入射すると、きわめて高い確
率で透過する。この共鳴条件は量子準位にしたがいとび
とびに存在し、しかも透過確率の高いエネルギー帯幅は
極めて狭く、いわば、電子波干渉フィルターとなる。
【0013】上記の、真空あるいは障壁井戸層に形成さ
れた障壁を電子が量子力学的トンネル過程により透過す
る確率Dは、それぞれのポテンシャル障壁に対してWK
B近似を用いて次のように書ける。
【0014】
【数1】
【0015】ここでxは位置を表わす変数、積分は障壁
層の膜厚全体にわたる定積分、k(x)は次式で表わさ
れる。
【0016】
【数2】
【0017】ここでmは電子の有効質量、V(x)は障
壁高さ、Eは電子のエネルギー、hはプランク定数であ
る。
【0018】このk(x)の逆数は電子波が障壁内に浸
透する長さに対応しており、Dの値は膜厚が薄く、か
つ、その電子波の浸透長が長いほうが大きくなる。そし
て、理想的な共鳴条件を得るには、Dの値が、上記の真
空および障壁井戸層に形成された両障壁で等しく、か
つ、100分の1オーダーより大きくすることが望まし
い。この条件は、ポテンシャル障壁井戸層38′および
ポテンシャル障壁33′を外部からの電界で制御するこ
とによって達成される。また、この障壁層に関しては、
電子の有効質量m、障壁高さV、電子エネルギーE、で
決る浸透長に対して、被覆膜32の膜厚を同程度以下に
することで条件を達成することができる。すなわち、こ
のような構成により、本発明の目的であるエネルギー幅
の極めて狭い単色の電子線源を提供することができる。
【0019】
【実施例】
(実施例1)図1に本発明の実施例の一つを示す。
【0020】図1(a)において、陰極である針状の導
電体1(本実施例ではW)の表面に膜厚が電子波の浸透
長程度の被覆膜2(GaAs)を設け、陽極4との間に
電源5により電圧を印加する。このとき、上記電子線源
に生じるエネルギー構造は図1(b)のようになり、被
覆膜2の中に電場勾配によるポテンシャルの三角形状の
障壁井戸層2′が形成され、その障壁井戸層2′の中に
生じる量子準位7を介して、電子3が真空6中に放出さ
れる。
【0021】次に、上記電子線源の作製方法を、図4を
用いて説明する。
【0022】W針41は、W単結晶線をKOH水溶液中
で電解エッチして得られる。このW針41を走査トンネ
ル顕微鏡の探針とし、Au基板43に対して1nm程度
の距離に近付け、W針41に−7V〜−15Vのパルス
を加える。これにより、図4(a)に示されるように、
W針41先端の極めて狭い領域に1原子層程度のAu吸
着層42が形成される。次に、このW針41を反応容器
中にいれ、400℃〜500℃に加熱し、トリメチルガ
リウム(TMG)、アルシン(AsH3)をそれぞれ流
量10の−6乗モル/秒程度導入すると、Auの吸着層
42がある部分にのみ7nmのGaAs膜44が成長し
図4(b)の構造を得る。
【0023】この構造を真空装置に導入し、540℃5
分間の加熱により表面を清浄化した後、対向する陽極に
対して先端付近の電界が1.6V/nm程度になるまで
負の電圧をかけると、図5に示されるエネルギー構造と
なり、トンネル放出する電子が増加する。しかも、電子
の透過率は図6に示されるようなエネルギー依存性を持
つため、極めてエネルギー幅の狭い電子線が得られる。
室温においては、熱エネルギーの26mV程度の幅とな
る。さらに、この電子線源にクライオスタットを装着す
ることによって、液体窒素温度(77°K)で7mV、
液体ヘリウム温度(4°K)で1mV程度のエネルギー
幅の電子線が得られる。共鳴トンネル効果のために電子
の透過率は、通常のトンネル効果と較べて共鳴点におい
て10の6乗倍以上に大きくなる。このため、単色化の
みならず高輝度化も図る事ができる。
【0024】さらに、印加電圧を変化させた場合、図7
に示したように電子透過率の共鳴点を与えるエネルギー
値が変化する。この効果を用いて、単色電子線のエネル
ギーを制御することができる。
【0025】本実施例においては、外側のGaAs膜4
4には不純物ドーピングを施してはいないが、表面準位
の存在によって動作条件が不安定になる場合は、GaA
s膜44内にn型不純物であるSiを1平方センチメー
トル当たり10の12乗個程度ドーピングすると、表面
の電位が固定し、安定した動作が得られる。
【0026】また、GaAs膜44の外側に1nm程度
以下のCaF2、Al23等の表面準位密度の小さな材
料を蒸着すれば、障壁井戸層のダングリングボンドに由
来する表面準位密度が著しく小さくなり、安定した動作
を得ることができる。
【0027】なお、本実施例においては、電子線源の導
電体と被覆膜とに、それぞれW、7nmのGaAsを用
いているが、この他にも例えば、導電体として単結晶N
iAlを用いると、この上にAlGaAs系が単結晶成
長でき、単結晶CoSi2を用いるとSi、Ge系が単
結晶成長できる。また、本実施例においては、導電体と
して金属を用いたが、半導体としても同様の効果を得る
ことができる。例えば、n+型GaAs、AlGaAs
の組み合せ、あるいは他のIII−V族化合物半導体、あ
るいはII−VI族化合物半導体、例えばn+型ZnSe、
ZnSまたはZnSeの組み合せ、あるいはIV族半導
体、例えばn+型Ge、Si−GeまたはGeの組み合
せを用いても、同様の効果が得られる。なお、Geの様
な電子の有効質量の異方性をもつ半導体の場合、有効質
量の小さい方位を電子の走行方向に選ぶと、電子の障壁
内への侵入長が長くなりトンネル確率が増加するので、
より効果的である。また、電子の走行方向を表面の材料
の仕事関数の小さい結晶方位に選ぶと、拡がり角が小さ
く収束性の良い電子線が得られ、電子顕微鏡等に応用す
る際に有利となる。
【0028】また、障壁井戸層の材料として、化合物半
導体では、III−V族化合物半導体として、BN、B
P、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、G
aN、GaP、GaAs、GaSb、InP、InA
s、InSb、等、およびこれらの混合化合物、また、
II−VI族化合物半導体として、ZnO、ZnS、ZnS
e、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、
HgSe、HgTe、等、およびこれらの混合化合物が
あり、同様の効果がある。
【0029】なお、ここでは結晶成長方法としてMOC
VD(有機金属気相成長)法を用いた場合を述べたが、
本実施例に述べた方法の他に、MBE法、やCVD(気
相成長)法、CBE、ALE等、単結晶薄膜が成長でき
る方法であれば同様の効果が得られる。
【0030】また、本実施例においては、材料として単
結晶を用いたが、厚さ1nm程度以下の非晶質を用いて
も同様の効果があり、この場合、既存の針状W電子線源
上にプラズマCVD法や低温蒸着法等により簡便に形成
できる。非晶質材料として例えば、a−Si、a−Si
−C、a−Si−N、a−Si−Ge等のIV族系あるい
はS−Se−Te系のカルコゲン等が用いられる。
【0031】また、本実施例においては、一層の障壁井
戸層を用いたが、複数組形成しても同様の効果がある。
また、外側の障壁井戸層で形成される電子波干渉フィル
ターに対して、導電体にできる極めてエネルギー幅の狭
い状態密度のピークエネルギーを電圧印加等により一致
させると、いっそうエネルギー幅が狭く、大電流の電子
線が得られる。
【0032】本実施例においては、先端を針状にして電
界集中させ、真空中に薄いポテンシャル障壁を形成して
いるが、刃状にしても同様の効果があり、その場合、線
状の電子線源が得られる。また、先端を尖らせずとも、
引き出し電極を十分に近付け、所望の領域に必要な電界
を与えれば同様の効果がある。
【0033】なお、本実施例においてはエッチングによ
り形成されたW針の上に半導体を形成させているが、一
度高真空中で1000℃程度以上の加熱をする等の工程
によって先端に結晶学的に安定な面を形成してから半導
体を成長させると、トンネル効果の条件をそろえる事に
なり、いっそう効果的である。
【0034】また、本実施例においては、障壁井戸層を
針先端に選択的に成長させるための例として、走査トン
ネル顕微鏡によって先端に付けたAuによるサーファク
タント(界面活性剤)効果を用いたが、同様の効果を示
す他の材料を用いても良く、さらに、走査トンネル顕微
鏡によらずとも、W針に電圧をかけ、先端の高電界で材
料ガスを解離させる等の方法によってW針先端に選択的
に成長させれば、本実施例と同様の効果がある。
【0035】(実施例2)図8に、本発明の実施例の1
つを示す。n+型GaAs(111)面基板81上に、
MBE法によって7nmのGaAs層82を単結晶成長
させる(図8a)。次に、200nmのSiO2層83
をCVD法により堆積する(図8b)。表面の所望の領
域に直径100μm程度のフォトレジスト膜84を形成
する(図8c)。フォトレジスト膜84をマスクとして
HF−NH4OF混合水溶液によりSiO2層83をエッ
チングする(図8d)。成形されたSiO2層83をマ
スクとして、60℃に保ったH2SO4−H22混合水溶
液中でGaAs層82、n+型GaAs(111)基板
81をエッチングする。この液はGaAsを等方的にエ
ッチングするため、基板を下方向にエッチングすると同
時にSiO2層下のGaAsを横方向にもエッチング
し、適当な時間でエッチングを停止すると、先端にGa
As薄膜のついた針状の構造が得られる(図8e)。こ
の後、超音波洗浄などによって、上部に残ったSiO2
層83を除去し、実施例1と同様の構造の電子線源が得
られる。本実施例によれば、一度に多数の電子線源が、
再現性良く得られる。
【0036】この電子線源を単独で用いる場合には、基
板81裏面を薄く削り、Au−Ge−Ni膜等のオーミ
ック接触層と、ハンダ、Au等の接着層を形成した後、
一個ずつ切り離し、金属台に加熱接着する。
【0037】本実施例においては材料の例としてGaA
sを用いたが、同様の工程を行えば、実施例1で示した
ような他の材料系を用いても同様の効果がある。
【0038】(実施例3)図9に、本発明の実施例の1
つを示す。n+型GaAs(111)基板91上に、2
μmのSiO2層92と500nmのW層93をCVD
法で堆積する(図9a)。次に、直径2μm程度の孔を
開けたフォトレジスト膜をマスクとしてNH4OH−H2
2水溶液により、W層93に孔を開け、さらに、HF
−NH4OF混合水溶液によりSiO2層92をエッチン
グする。このとき、エッチング時間を長くとり、W層9
3より大きな孔とする(図9b)。フォトレジスト膜を
除去、洗浄後、超高真空中に導入し、540℃5分程度
の加熱でGaAs基板表面を清浄化し、基板温度を45
0℃程度に保ち、Wを0.1nm/sec程度の速度で
1.5μm程度蒸着する。その結果、W層93上にW膜
95が、GaAs基板91上に円錐状のW針94が形成
される(図9c)。さらに、続けてGaAsを蒸着し、
W針94周辺を単結晶のGaAs膜96で覆う(図9
d)。GaAsは、下地のGaAs基板91の結晶から
エピタクシャル成長するので、蒸着GaAs層は単結晶
となっている。蒸着量は、W針頂上付近に7nmのGa
As膜が被覆するように調節する。厚みを増すには蒸着
を引き続き行えばよい。厚みを減じるにはH2SO4−H
22混合水溶液でGaAs膜をエッチングすればよい。
他の領域は多結晶体のGaAs堆積膜97となる。この
結果、実施例1と同様の構造の電子線源が得られる。本
実施例によれば、一度に多数の電子線源が再現性良く得
られる。また、W層93を電子引き出し電極(陽極)と
して使用すると、陰極と陽極が1μm程度と近いため、
100V程度の小さな引き出し電圧で単色電子線が得ら
れ、しかも小型の単色電子線源装置が得られる。
【0039】本実施例においては、材料の例としてW、
GaAsの組み合わせを用いたが、同様の工程を行え
ば、NiAl、GaAsの組み合わせ等の実施例1で示
した他の材料系を用いても同様の効果がある。
【0040】また、本実施例で用いた形成工程以外の方
法を用いても、同様の構造が得られれば、同様の効果が
ある。
【0041】なお、本実施例の電子線源を図10の様
に、同一基板上に多数形成した電子線源を用いると、単
色電子線をマルチビーム化することができ、電子線描画
装置の高スループット化、CRTディスプレーの高速
化、あるいは高精細化、あるいは小型化等に効果があ
る。上記マルチビーム電子線源では、構成要素である各
電子線源101の、被覆膜厚(蒸着とエッチングで制
御)、印加電圧(可変抵抗G1、G2、G3、G4で制
御)を変化させることにより、放出電子の単色エネルギ
ー値をhv1、hv2、hv3、hv4、のようにそれ
ぞれ異なった値に制御することができ、所望のエネルギ
ースペクトル群を得ることができる。
【0042】上記のスペクトルは多数の単色スペクトル
の和であったが、印加電圧を被覆膜厚と独立に制御する
ことができる特徴を利用することにより、被覆膜厚の違
いによりばらついた単色エネルギー値を、各電子線源素
子の印加電圧を調節することで、全体的にエネルギーの
そろった単色電子線源を得ることもできる。この場合、
電子線源の明るさは、電子線源素子が単一のものと較べ
て、該素子の個数分だけ明るくなる。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る単色
化電子線源およびその製造方法においては、陰極である
導電体の上に被覆膜を設けて障壁井戸層を形成し、その
量子準位を介した共鳴トンネル現象により電子を放出さ
せることにより、簡単な構造で、極めてエネルギー幅の
狭い電子線が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施例1の電子線源構造(a)と
エネルギー構造の説明図(b)である。
【図2】従来の電界放出型電子線源のエネルギー構造
(a)と放出電子のエネルギー分布の説明図(b)であ
る。
【図3】本発明に係る電子線源における(a)印加電圧
ゼロ、(b)電圧印加後、のエネルギー構造の説明図で
ある。
【図4】本発明に係る実施例1の電子線源の形成工程図
である。
【図5】実施例1の電子線源のエネルギー構造図であ
る。
【図6】実施例1の電子線源から放出された電子のエネ
ルギースペクトルの共鳴トンネル効果を示す図である。
【図7】同上、印加電圧を変えたときのエネルギースペ
クトルを示す図である。
【図8】本発明に係る実施例2の電子線源の形成工程図
である。
【図9】本発明に係る実施例3の電子線源の形成工程図
である。
【図10】実施例3のマルチビーム電子線源の素子構造
を示す図である。
【符号の説明】
1:導電体 2:被覆膜 2′:障壁井戸層 3:電子 4:陽極 5:電源 6:真空 7:量子準位 31:導電体 32:被覆膜 33:真空 33′:ポテンシャル
障壁 34:導電体の仕事関数 35:被覆膜の電子親
和力 36:エネルギー障壁 37:フェルミ準位 38:伝導帯端 38′:障壁井戸層 39:価電子帯端 41:W針 42:Au吸着層 43:Au基板 44:GaAs膜 81:n+GaAs
(111)基板 82:GaAs膜 83:SiO2膜 84:フォトレジスト膜 91:n+GaAs
(111)基板 92:SiO2層 93:W層 94:W針 95:W膜 96:GaAs膜 97:GaAs堆積膜 101:電子線源 102:印加電圧 103:可変抵抗 104:放出単色電子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西山 英利 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 奥山 裕 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 近藤 正彦 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】陰極である導電体の表面に少なくとも一層
    の被覆膜があり、対向する電極の陽極に対して負の電圧
    を印加することにより、該被覆膜の少なくとも一層に電
    場勾配によるポテンシャルの三角形状の障壁井戸層が形
    成され、かつ、該障壁井戸層の中に量子準位を生じ、該
    量子準位を介して電子を放出することを特徴とする単色
    化電子線源。
  2. 【請求項2】針状に形成された導電体の陰極と、空間を
    隔てて設けられた陽極よりなる電子線源において、電子
    を放出する上記陰極の先端部分は上記導電体の表面に少
    なくとも一層の被覆膜を有する構造であり、上記導電体
    はフェルミ準位付近の電子状態がゼロでない材料で構成
    され、また、上記被覆膜は、上記陽極と上記陰極との間
    に電圧を印加することにより電場勾配を生じる半導体あ
    るいは絶縁物よりなる材料で、かつ、膜厚が伝導電子の
    ド・ブロイ波長程度であることを特徴とする請求項1に
    記載の単色化電子線源。
  3. 【請求項3】上記陰極より放出される電子の単色エネル
    ギーの値は、上記陰極と上記陽極との間に印加される電
    圧により制御されることを特徴とする請求項1または2
    に記載の単色化電子線源。
  4. 【請求項4】上記電子線源の陰極を構成する材料は、そ
    れぞれ単結晶の半導体あるいは絶縁体であり、上記被覆
    膜は母材である上記導電体に対してエピタキシャル成長
    した結晶であることを特徴とする請求項1、2または3
    に記載の単色化電子線源。
  5. 【請求項5】上記導電体は金属、あるいは半金属であ
    り、上記被覆膜は上記導電体の表面にエピタキシャル成
    長したものであることを特徴とする請求項1、2または
    3に記載の単色化電子線源。
  6. 【請求項6】上記導電体および上記被覆膜のうちの少な
    くとも一つは非晶質体であることを特徴とする請求項
    1、2または3に記載の単色化電子線源。
  7. 【請求項7】請求項1から請求項6までに記載された単
    色化電子線源のうちの少なくとも一種の単色化電子線源
    を複数個有し、該電子線源が同一基板上に形成され、電
    圧は上記各電子線源に対して独立に印加でき、かつ、陽
    極も上記同一基板上に形成された構造であることを特徴
    とする電子線源装置。
  8. 【請求項8】請求項1から請求項7までのいずれかに記
    載の電子線源の製造方法において、上記被覆膜をあらか
    じめ上記導電体の基板上に形成し、その後、溶液、ガ
    ス、プラズマ等を用いたエッチングにより上記電子線源
    の構造に形成することを特徴とする単色化電子線源の製
    造方法。
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