JPH0774230B2 - 蛋白質の濃縮精製方法 - Google Patents

蛋白質の濃縮精製方法

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JPH0774230B2
JPH0774230B2 JP62239289A JP23928987A JPH0774230B2 JP H0774230 B2 JPH0774230 B2 JP H0774230B2 JP 62239289 A JP62239289 A JP 62239289A JP 23928987 A JP23928987 A JP 23928987A JP H0774230 B2 JPH0774230 B2 JP H0774230B2
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愛爾 渡辺
徹 西山
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、相分離法による蛋白質の新規濃縮精製方法に
関するものである。
〔従来の技術〕
蛋白質の抽出技術として、水性二層分配法(P.Å.Alber
tsson,Partition of Cell Particles and Macromolecul
es,2nd edition,John Wiley&Sons Ltd.,New York,197
1)や、抽出当初より二相系になっている溶媒抽出など
がよく知られている。ところが、抽出開始時は均一相系
でありながら温度変化により多相系にする技法(以下、
「相分離法」という)を蛋白質の抽出・濃縮に応用した
例は知られていなかった。過去には、パラフィン系潤滑
油やナフテン系油を相分離法により選択的に抽出する試
みがなされた程度であった。(Francis A.W.,Critical
Solution Temperatures,American Chemical Society(1
961)) 通常、蛋白質の濃縮操作は、沈殿法,分散吸着法,凍結
乾燥法,限外過法等がよく知られている。また、有機
溶媒の除去には、上記濃縮操作で達成されるものもある
が、ゲル過クロマトグラフィー等のクロマト分離を適
用することもある。しかしながら、これらの方法は、目
的とする蛋白質の回収を低下させたり、操作そのものの
負荷が大きかったり、煩雑な場合もあり、注意を要する
ものであった。
〔発明が解決しようとする問題点〕
蛋白質を簡便かつ効率的に濃縮精製する方法の開発が望
まれている。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは上記問題点を解決すべく鋭意検討した結
果、蛋白質を相分離法により濃縮精製する方法を見出
し、この発見に基き本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は、温度変化により相分離し、少なくとも
水を1成分とする混合溶媒の蛋白質含有溶液を温度変化
により相分離せしめた後、相分離した溶液を相互分離す
ることを特徴とする蛋白質の濃縮精製方法に関するもの
である。
目的とする蛋白質、たとえばインターロイキン2を任意
の濃度含有する0.1%トリフルオロ酢酸の添加された45
〜80v/v%アセトニトリル均一水溶液を上部臨界完溶温
度(上部臨界共溶温度などともいう)以下で、二相分離
状態を維持する温度範囲内、たとえば−5℃の雰囲気下
で3時間以上攪拌又は静置させる。これにより静置した
サンプルは、二相分離状態に変化する。攪拌したサンプ
ルは、静置させることにより懸濁状から二相に分離す
る。この二相分離の上層は、アセトニトリルリッチな溶
液であり、下層は水がリッチな液相もしくは固相とな
る。上層及び下層のアセトニトリル濃度(モル分率)
は、相分離前のサンプルの液組成と冷却温度によって定
まる。こうして、目的蛋白質は、下層に選択的かつ定量
的に抽出、回収される。また、下層の液量については、
相分離前のサンプルの液組成と冷却温度によって定まる
もので、任意に減少せしめることができる。ここで、冷
却温度は、サンプルの上部臨界完溶温度以下であり、ま
た、サンプルの完全凝固点以上の温度であれば任意に設
定できるものである。このようにして、本発明は、目的
蛋白質を任意に濃縮することが可能であるばかりか、有
機溶媒の除去も合わせて行うことができるという特徴を
有する。
また、目的蛋白質を含有する培養液にアセトニトリル等
の有機溶媒や酸・塩基・塩等を添加した系のように目的
蛋白質以外の沈殿が生じた場合は、遠心分離により沈殿
を除去し、上清を回収する。これを、至適の上部臨界完
溶温度以下の温度に冷却させることにより二相分離させ
る。この時、油脂成分等の不純物と目的蛋白質を分離抽
出させることができる。すなわち、目的蛋白質の精製に
相分離法を適用させることもできる。
さらに、相分離法を繰り返すことにより、目的蛋白質を
徐々に濃縮させることも可能である。たとえば、前述の
ような一回相分離操作をした水のリッチな下層に、アセ
トニトリル等の有機溶媒を更に添加する。その際、アセ
トニトリル添加量は、設定した冷却温度でのアセトニト
リルのリッチな層のアセトニトリル濃度未満の近傍とす
る。そして、相分離を行わしめ、目的蛋白質を濃縮させ
る。以上の条件で相分離法を繰り返すことにより、目的
蛋白質は、飽和濃度に近づく。この方法を応用して、温
和な条件で晶析を行うこともできる。その際、蛋白質の
溶解度の下がる操作をすればよく、二相分離状態から均
一相へ変化させてもよいし、酸・塩基・塩類等を加えて
もよい。
以上、目的蛋白質が下層に選択的に濃縮・抽出・精製さ
れる例をもって記述したが、上層に目的蛋白質が濃縮さ
れる場合についても、相分離の原理を適用することによ
って同様な操作をすることができる。
本発明で使用する有機溶媒溶液は、上記のアセトニトリ
ル−水以外にニトリル化合物−水,酪酸−水,メチルプ
ロピオン酸−水等で、温度変化により相分離を生ずる溶
液系であれば制限されない。また、以上の溶液の混合系
であってもよい。
さらに、上記溶液に酸,塩基,塩−たとえば、トリフル
オロ酢酸,ヘプタフルオロ酪酸,リン酸,トリエチルア
ミン,Na2SO4,NaCl,NaNO3など−を含有する溶液系であ
ってもよい。
本発明で使用する蛋白質は、用いる有機溶媒溶液系に安
定な物質であれば制限されない。
たとえば、マクロファージ遊走化因子(MIF),マクロ
ファージ活性化因子(MAF),マクロファージ走化性因
子(MCF),コロニー形成因子(CSF),インターロイキ
ン2(IL−2),インターロイキン3(IL−3),B細胞
増殖因子(BCGF),B細胞分化因子(BCDF),B細胞刺激因
子(BSF−2,IL−6)等の各種リンホカイン,インター
ロイキン1(IL−1)等の各種モノカイン、更には、各
種インターフェロン(IFN−α,B,γ),赤芽球分化因子
(BUF−3)等の生体内微量活性物質は当然のこと、そ
れらを化学修飾した誘導体、動植物及び微生物が産生す
る各種酵素類にも適用できる。
即ち、本発明は、蛋白質の種類及び由来等にあまり制限
されない極めて汎用性の高い濃縮精製法である。このよ
うに本発明は極めて汎用性が高いわけであるが、その中
でも特にリンホカイン等の生体内微量活性物質には有効
である。又、本発明は操作、装置とも、非常に簡便であ
り、スケールアップも極めて容易な方法である。
〔実施例〕
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
実施例1 BUF−3粗製溶液の濃縮精製 BUF−3 256U/ml(0.128μg/ml)を含むヒト骨髄性白血
病細胞THP−1由来の培養液5l(BUF−3 128万U,比活性1
780U/mg)を65%飽和硫安で5℃,12時間塩析した。これ
を遠心分離して得られた塩析沈殿物を50mMトリス−塩酸
緩衝液(pH7.8)4mlに溶解し、5℃で充分透析した。こ
の透析内液8mlにはBUF−3が96万U(比活性8890U/mg)
存在した。この透析内液にアセトニトリルを71%かつpH
が2になるようにトリフルオロ酢酸を添加し、23℃ 30
分間攪拌させた。
次にこの懸濁液を遠心分離し、その遠心上清27mlを23℃
から−5℃に冷却し、3時間静置させた。これにより、
本液は二相分離をおこした。その際、BUF−3は選択的
に下層部(アセトニトリル45%)に86万U回収され、約
4倍濃縮された(比活性53300U/mg)。この下層部を逆
相HPLCで2回精製することによりBUF−3精製品70万U
(比活性2×106U/mg)を取得した。
実施例2 BSF−2含有溶液の濃縮抽出 組み換え大腸菌由来の活性型BSF−2 1.61mg/mlの溶液
(49%アセトニトリル−0.1%トリフルオロ酢酸)65ml
をメディアボトルに入れ、100%アセトニトリル−0.1%
トリフルオロ酢酸67.6mlを添加・混合後、23℃から−5
℃に温度変化させて12時間静置させた。均一相から二相
に変化し、表−1に示す結果が得られた。
すなわち、BSF−2は、下層部に95%回収され、約3倍
濃縮された。下層部及び上層部に存在するBSF−2の液
体クロマトグラムを第1図に示した。液量も7割減少、
アセトニトリルは91%除去された。また、本操作によ
り、BSF−2類縁体等の副生物が新たに生じることはな
かった。
実施例3 γ−IL−2含有溶液の濃縮抽出 組み換え大腸菌由来の活性型γ−IL−2 0.55mg/mlの溶
液(69%アセトニトリル−0.1%トリフルオロ酢酸pH1.
6)5mlを採血管瓶に入れた後、温度を23℃から−5℃に
変化させて12時間静置させた。γ−IL−2含有溶液は均
一相から二相に分離した。この分析結果を表−2に示し
た。これより、γ−IL−2は、下層部に93%回収され、
約4倍濃縮した。液量は、1/4に減少し、アセトニトリ
ルは85%除去された。本操作により、液体クロマトグラ
フィー、電気泳動からIL−2類縁体等副生物は新たに生
じなかったし、バイオアッセイから失活もなかった。
この下層部は、液量、アセトニトリル量の減少により、
次工程(たとえばゲル過クロマト)の負荷を著しく軽
減せしめた。
実施例4 γ−IL−2含有溶液の濃縮抽出 実施例3で用いたγ−IL−2含有溶液5mlを採血管瓶に
入れた後、温度を23℃から−20℃に変化させて12時間静
置させた。γ−IL−2含有溶液は、均一相が、液相(上
層部)と固相(下層部)に分離した。上層部や下層部の
溶解液の分析結果を表−3に示した。これより、γ−IL
−2は、下層部に100%回収され、約2倍濃縮された。
アセトニトリルは49%除去された。本操作により、IL−
2類縁体等輻生物は新たに生じなかった。
実施例5 γ−IL−2含有溶液の濃縮抽出 実施例3で用いたγ−IL−2含有溶液5mlに100%アセト
ニトリル−0.1%トリフルオロ酢酸2.75mlを添加・混合
し、80%アセトニトリル−0.1%トリフルオロ酢酸の液
組成とした。これを、23℃から−5℃に冷却すると、相
分離を生じ、表−4に示す結果が得られた。すなわち、
本下層部は、実施例3と比較して、液量、アセトニトリ
ル量が著しく減少し、γ−IL−2は、約35倍も濃縮され
た。本操作によりIL−2類縁体等が新たに生じることは
なった。
〔発明の効果〕 本発明によれば、目的蛋白質を簡単に濃縮精製すること
ができる。これにより、粗製あるいは精製工程での負荷
が軽減されるばかりか、スケールアップも極めて容易で
あることから、工業化の利点を有するものである。
【図面の簡単な説明】
第1図 実施例2に示されたBSF−2サンプルの二相分
離後の逆相HPLC分析チャート (a) 下層部 (b) 上層部

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】温度変化により相分離し、少なくとも水を
    1成分とする混合溶媒の蛋白質含有溶液を温度変化によ
    り相分離せしめた後、相分離した溶液を相互分離するこ
    とを特徴とする蛋白質の濃縮精製方法。
  2. 【請求項2】混合溶媒が酸、塩基又は塩類を含む特許請
    求の範囲第(1)項記載の方法。
  3. 【請求項3】相分離の温度が上部臨界温度完溶温度以下
    で、完全凝固点以上であることを特徴とする特許請求の
    範囲第(1)項記載の方法。
  4. 【請求項4】蛋白質が、動物細胞もしくは遺伝子組み替
    え微生物が産生する各種リンホカイン、モノカイン、生
    体内微量活性物質又は、それらを化学修飾した誘導体あ
    るいは、動植物及び微生物が産生する各種酵素類のいず
    れかであることを特徴とする特許請求の範囲第(1)項
    記載の方法。
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