JPH0772725B2 - コンクリ−トの温度ひび割れ評価方法および装置 - Google Patents

コンクリ−トの温度ひび割れ評価方法および装置

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JPH0772725B2
JPH0772725B2 JP26227186A JP26227186A JPH0772725B2 JP H0772725 B2 JPH0772725 B2 JP H0772725B2 JP 26227186 A JP26227186 A JP 26227186A JP 26227186 A JP26227186 A JP 26227186A JP H0772725 B2 JPH0772725 B2 JP H0772725B2
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concrete
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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、コンクリートの温度応力によるひび割れの発
生の有無を評価する方法と装置に関するものである。
「従来の技術」 設計・施工の対象となるコンクリートの打設後の部材の
温度経過や強度発現等を適切に予測し、コンクリートの
ひび割れ発生の有無を評価することは、コンクリート部
材の信頼性の確保と向上を図る上において重要な点であ
る。特に、コンクリート部材の中でも、構造体断面の大
きなマスコンクリートにあっては、構造体断面が大きい
ために水和熱が部材内に蓄積され、部材が高温状態にな
るとともに温度応力が発生するために、設計時および施
工時に温度ひび割れに対する配慮が要求され、従って、
コンクリート強度の状態を施工者が適切に予測し管理す
る必要が生じていた。
ところが、このようなマスコンクリートでは、コンクリ
ートの打込み直後から非定常な高温状態を履歴するため
に、温度ひび割れ発生の危険性を適切に予測することは
極めて難しいこととなっている。従ってマスコンクリー
トのコンクリート打込み後の温度ひび割れ発生の有無を
簡便かつ適切に予測するための手段の開発が望まれてい
る。
ところで従来行なわれているコンクリートの温度ひび割
れ発生の評価方法は、例えば第6図のフローに示すよう
に、以下に説明する〜の作業が必要であった。
すなわち、 熱伝導率、熱拡散率、比熱、熱伝達率などの熱的諸特
性の実験と調査によって、コンクリートの温度経過を予
測する。
線膨張係数と弾性係数、更にはポアソン比等の物性値
を実験し、調査する。
コンクリート構造物の外部拘束条件を評価する。
温度応力を解析する。
コンクリート強度の実験と調査を行う。
温度応力とコンクリート強度の関係を比較検討する。
ひび割れ発生の危険性を評価する。
「発明が解決しようとする問題点」 しかしながら、前記〜の作業を必要とする従来の温
度ひび割れの評価方法にあっては、以下に示すような解
決すべき問題点があった。
(1)ひび割れ発生の危険性を評価するまでに種々の実
験と調査を必要とするために作業が極めて繁雑である。
(2)前記の作業で求められる物性値は不明な点も多
く、適切な値を得る事は困難である。
(3)適切な物性値が求められないために、適切な温度
応力を求めることが困難であり、このためひび割れ発生
の危険性を的確に評価できない。
そこで本願発明者はコンクリートのひび割れ発生の危険
性を評価する新たな手段を追及し、種々の実験を行っ
た。その結果、実験から得られた定数である温度分布係
数を導入することによってひび割れの発生を評価できる
ことを知見し本願発明に至った。
本発明方法は、前記背景に鑑みてなされたものであり、
コンクリートの温度経過の値から温度分布係数を求め、
これを基に温度応力によるひび割れ発生の有無を評価す
ることができ、種々の物性値の実験調査や温度応力解析
を行うことなく簡便かつ確実にコンクリートのひび割れ
評価を行うことができる方法を提供することを目的とす
る。
本発明の装置は、前記背景に鑑みてなされたもので、コ
ンクリートの温度経過の値からデータ処理装置によって
温度分布係数を算出し、この温度分布係数からデータ処
理装置がひび割れ評価を行い、その結果を表示装置によ
り作業者に知らせることができ、種々の物性値の実験調
査や温度応力解析を行うことなくひび割れ評価結果を確
実かつ容易に知ることができる評価装置を提供すること
を目的とする。
「問題点を解決するための手段」 前記問題点を解決するために本発明は、本発明方法は、
コンクリートの温度応力によるひび割れ発生を評価する
方法において、打設後のシュミレーション用のマスコン
クリートの中心からの位置rにおける温度T(r)をシ
ュミレーション用のマスコンクリートの温度実測結果に
応じた温度経過予測値として計測しておき、この温度経
過予測値を元に、コンクリートが円盤の場合に、以下の
式で定義される温度分布係数F0を求め、 (ただし、前記の式においてrmは最大引張温度応力また
は歪を生じる位置の円盤中心からの距離、r0は円盤の半
径、T(r)は円盤内のrの位置の温度とする。) 前記温度経過予測値を元に、コンクリートが矩形板の場
合に、以下の式で定義される温度分布係数F0を求め、 (ただし、前記の式においてhは矩形断面中心軸からの
距離、h0は矩形断面中心軸から表面までの距離、hmは最
大引張応力または歪を生じる位置の矩形断面中心軸から
の距離とする。) 前記の式で求めた温度分布係数F0の値を以下の式に代入
してマスコンクリートの温度分布係数F00を求めるとと
もに、 F00=F0/{1+R(t,t0)} (ただし、前記式において、R(t,t0)=1.63・logt+
0.696(logt)、tは打設後の経過時間を示す。) 実施工のコンクリートの温度実測結果に応じた温度経過
予測値を前述のマスコンクリートの場合と同様に計測
し、その温度経過予測値を元に、前記各式を用いて実施
工コンクリートの温度分布係数F00の値を算出し、先の
マスコンクリートの温度経過予測値から算出した温度分
布係数F00の値と比較することによりひび割れ発生の有
無を評価するものである。
また、本発明の装置は、コンクリートの温度応力による
ひび割れ発生を評価する装置において、シュミレーショ
ン用のマスコンクリートの中心からの位置rにおける温
度T(r)が、シュミレーション用のマスコンクリート
の温度実測結果に応じた温度経過予測値として入力され
るとともに、実施工のコンクリートの中心からの位置r
における温度T(r)が、実施工のコンクリートの温度
実測結果に応じた温度経過予測値として入力される一
方、前記の各温度経過予測値を元に、コンクリートが円
盤の場合に、以下の式で定義される温度分布係数F0を求
め、 (ただし、前記の式においてrmは最大引張温度応力また
は歪を生じる位置の円盤中心からの距離、r0は円盤の半
径、T(r)は円盤内のrの位置の温度とする。) 前記温度経過予測値を元に、コンクリートが矩形板の場
合に、以下の式で定義される温度分布係数F0を求め、 (ただし、前記の式においてhは矩形断面中心軸からの
距離、h0は矩形断面中心軸から表面までの距離、hmは最
大引張応力または歪を生じる位置の矩形断面中心軸から
の距離とする。) 前記の式で求めた温度分布係数F0の値を以下の式に代入
してマスコンクリートの温度分布係数F00と実施工のコ
ンクリートの温度分布係数F00を求め、 F00=F0/{1+R(t,t0)} (ただし、前記式において、R(t,t0)=1.63・logt+
0.696(logt)、tは打設後の経過時間を示す。) 前記シュミレーション用マスコンクリートの温度分布係
数F00の値と実施工のコンクリートの温度分布係数F00
比較するデータ処理装置と、前記データ処理装置が算出
したマスコンクリートの温度分布係数F00と実施工のコ
ンクリートの温度分布係数F00の差異に応じてひび割れ
発生の有無を表示する表示装置とを具備してなるもので
ある。
「作用」 コンクリートの温度経過により算定される温度分布係数
を指標として、定量的にコンクリートの温度ひび割れ発
生の危険性を把握することが可能になる。また、算定さ
れた温度分布係数の値によって、温度ひび割れ発生の危
険性が高い場合にはデータ処理装置が表示装置を作動さ
せるために、作業者が温度ひび割れ発生の危険性を容易
に知ることができる。
「実施例」 以下、この発明の実施例について図面を参照して説明す
る。
第1図は本発明の一実施例を示すもので、本実施例の装
置は、温度予測装置1および熱伝導解析装置1aと、温度
予測装置1および熱電導解析装置に接続されたパーソナ
ルコンピュータ等のデータ処理装置2と、このデータ処
理装置2に接続されたプリンタ3およびプロッタ4と、
プリンタ3に接続された表示装置5を主体として構成さ
れている。
前記温度予測装置1は、マスコンクリートのシュミレー
ション装置を用いてなされる打設コンクリートの温度経
過を計測する装置である。前記シュミレーション装置
は、断熱材により囲まれた空間にマスコンクリートを打
設してコンクリート部材を構成し、このコンクリート部
材内の各所に温度測定センサを埋設して構成され、コン
クリート部材内の各所における温度経過を実測する装置
である。前記マスコンクリートのシュミレーション装置
により得られたマスコンクリートの温度測定値は温度経
過予測値としてデータ処理装置2に入力される。また、
前記熱伝導解析装置1aは、熱伝導率や熱拡散率、比熱、
熱伝達率等からマスコンクリートの温度経過の計算値を
算出するマイクロコンピユータ等から構成され、その算
出結果を前記データ処理装置2に、前記温度予測装置1
とは別個にデータを入力できるようになっている。
前記データ処理装置2は、後述する式により与えられる
温度分布係数F00を前記温度経過予測値、あるいは、温
度経過の計算値から自動的に算出し、このF00値を基に
後述の第4図に示すデータと比較検討してひび割れ発生
の危険性の有無を判定し、その結果を出力するものであ
る。
前記プリンタ3とプロッタ4はデータ処理装置2が算出
した結果を作図し、図示するためのものであり、表示装
置5はデータ処理装置2が出力した結果においてひび割
れ発生に危険性が高い場合にランプやブザーで警告する
自動表示盤から構成されている。
また、前記データ処理装置2には、実施工コンクリート
部材6における温度経過の実測値を計測する計測装置7
が接続され、この計測装置7が測定した温度経過の値が
データ処理装置2に入力されるようになっている。な
お、前記実施工のコンクリート部材6は実際に打設され
たコンクリート構造体である。
前記構成の装置によりひび割れ発生の危険性を評価する
場合は、第2図に示すフローに従って評価がなされる。
まず、温度予測装置1によりマスコンクリートの温度経
過予測を行い、この予測の後に外部拘束条件の評価を行
い、更に、データ処理装置2によって温度分布係数F00
の算定を行い、温度分布係数F00をパラメータとしてひ
び割れ発生の危険性をデータ処理装置2が評価する。こ
の温度分布係数F00をプリンタ3とプロッタ4が記録す
るとともに、温度分布係数F00の値の大小によりデータ
処理装置2がひび割れ発生の危険性が高いことを評価す
ると表示装置5がランプの点灯やブザー音で作業者に警
告を発する。これにより作業者はひび割れ発生の危険性
が高いことを知ることができる。また、前記装置を用い
て行うひび割れ評価方法に際し、実測する必要があるデ
ータはマスコンクリートの温度経過予測値であり、第6
図に示す従来方法において必要であった物性値の実験や
測定と温度応力の解析、更には、強度の実験と調査が不
要になるために、従来方法に比較して簡単にひび割れ評
価ができるようになる。
また実施工時には、実施工のコンクリート部材の温度経
過を測定し、その値に基きデータ処理装置2により温度
分布係数F00を算出する。そしてこの温度分布係数F00
値に基づき、事前に行った予測値との食い違いを確認
し、実施工のコンクリート部材のひび割れ発生の危険性
の管理がなされる。
ところで以下に、本願発明者が実験から規定した温度分
布係数F0とF00について説明する。
まず、温度分布係数にはマスコンクリートの温度変化速
度が大きい場合に算出されるF0と、マスコンクリートの
温度変化が小さい場合に算出されるF00の2種がある。
まず、F0について説明する。
弾性温度応力の算定式は、一般に線膨張係数α
(℃-1)、ポアソン比νと弾性係数E(kg/cm2)の物性
値を変数とする関数部分と、温度T(℃)と中心からの
位置r(cm)を変数とする関数部分の2つに区分するこ
とができる。
そして、Tとrを変数とする関数部分をF(T,r)とし
て平面歪状態を考えると、弾性温度応力σθは一般に、
以下の(1)式で与えられる。
ここで、マスコンクリートが中実円盤からなる場合、そ
の円盤の円周方向に対するF(T,r)は以下の(2)式
で与えられる。
ただし、r0は半径(cm)、T(r)はrの位置の温度を
示す。
ここで、最大引張応力σθmaxがコンクリートの引張強
度ftと一致した時にひび割れが発生すると考え、σθma
xが生じる位置をrmとすると、前記(1)式からひび割
れ発生時には後記の(4)式が成立する。
また、弾性歪εが近似的にε=σ/Eによって表され、最
大引張歪が一定の歪能力εと一致した時にひび割れが
発生すると考えると、ひび割れ発生時には以下の(5)
式が成立する。
ただし、rmは最大引張温度応力(または歪)を生じる位
置の中心からの距離(cm) ここで、前記(4),(5)式に対してα/(1−ν)
=(一定)、が近似的に成立すると仮定すると、(5)
式からひび割れ発生条件はF(T,rm)×E/ft=a(一
定)となり、Eとftとの間に一定の関係が存在するな
ら、F(T,rm)とひび割れ発生条件との間に一定の成立
する可能性がある。また、(5)式に基づくとF(T,r
m)=b(一定)がひび割れ発生条件となり、F(T,r
m)の大きさによってひび割れ発生の危険性を評価でき
る。
このため、最大引張温度応力または最大引張歪を示す位
置にr=rmにおける温度と距離の関数部の値F(T,rm)
を温度分布係数F0と定義してF0の大きさと温度ひび割れ
の関係を検討できる。
ここで、中実円盤円周方向の温度分布係数F0は以下の
(6)式で与えられる。
また、矩形断面のマスコンクリートの場合、位置rが断
面中心軸からの距離hとなり、F(T,h)が以下の
(7)式で与えられるので、この場合の温度分布係数F0
は以下の(8)式で与えられる。
ただし、hは矩形断面中心からの距離(cm)、h0は中心
軸から表面までの距離(cm)、hmは最大引張温度応力
(または歪)を生じる位置の中心軸からの距離(cm)を
示す。
更にここで、σθmaxまたはεθmaxは円盤外周面部に生
じるから、rm=r0の条件を前記(6)式に代入すること
によって円盤状のマスコンクリートの温度分布係数F0
以下に示す(9)式によって与えられる。
(9)式において、マスコンクリートの半径方向の温度
分布状態T(r)を温度実測結果を基に近似し、これを
(9)式に代入することによってF0の値を算出すること
ができる。
第3図は本願発明者らが作成した複数のマスコンクリー
ト試験体(厚さが各々100mm、直径が200mmと350mmと700
mmの3種類の試験体)を用いて行ったひび割れ発生試験
の結果とF0値と引張強度低下率の関係を示した線図であ
る。
マスコンクリート試験体は、その上下両面中央に加熱用
ヒータが設置され、試験体の上下両面を断熱材で覆って
設置されるとともに、マスコンクリート試験体の内部に
は複数の温度センサを埋設して試験体各部の温度を実測
できるようにした。そして各マスコンクリート試験体を
ヒータで加熱し、試験体の中心部と表面部との間に強制
的に温度差を生じさせた。試験体に与える中心部と表面
部の温度差は10〜50℃の範囲に設定したものと、特に設
定せずにひび割れ発生に至るまで増加させたものの2種
類とした。なお、温度差の増加速度は30℃/時間を目安
としている。
前述のひび割れ発生試験において、ひび割れ発生に至ら
なかった試験体は、発生している温度応力の大きさを間
接的に評価することを目的として、試験体中心部と外周
表面部の温度差を一定に保ちながらJIS1113に準じて引
張り強度f′tkg/cm2を求めた。また、これと並行とし
て加熱していない同一形状寸法の試験体の引張り強度ft
(kg/cm2)を求め、f′tとftとから以下の(10)式に
基いて引張強度低下率(%)を求めた。
第3図に前記(10)式に基いて算出された各試験体の引
張強度低下率と温度分布係数F0の関係を示した。
第3図から、温度分布係数F0を指標として、マスコンク
リートの温度変化速度が大きい場合のひび割れ発生状況
を把握できることが明らかである。そして、第3図に示
す結果から、F0の値によりマスコンクリート状態を次の
4つに区分できることが明らかとなった。
1) 安全域 (0℃≦F0≦6℃) 2) 危険域 (6℃<F0≦9℃) 3) ひび割れ発生限界 (9゜<F0≦12゜) 4) ひび割れ領域 (F0>12℃) 次に、マスコンクリートにおける温度変化速度が小さい
場合の温度分布係数F00について説明する。
温度変化速度が小さく、応力や歪が緩やかに進行する場
合、マスコンクリートの温度応力は経時的に進行する流
動によって顕著な影響を受ける。
従って流動の影響を受ける場合、ひび割れ発生を評価す
るためのの指標となるF00を求めるには流動影響による
補正係数Rを利用して前記F0を補正する必要を生じる。
ところで、前記F0と最大引張温度応力σθmaxの関係
は、流動を無視した場合、形状や方向にかかわらず一般
に以下の(11)式で示される。
また、弾性歪εが近似的にε=σ/Eによって表されると
すると、F0と最大引張歪εθmaxとの間に以下の(12)
が成立する。
ここで、流動による影響を無視できない場合を考え、温
度変化開始材令がt0で温度変化開始後の経過時間がtの
時の真の弾性係数をE′(t,t0)とすると、実際に発生
する温度応力はσ′θmaxは以下の(13)式により与え
られる。
ここで先に説明した温度変化速度が大きな場合のtが約
1〜2時間程度であったことと、通常のコンクリート構
造物において1時間以下でひび割れに至る可能性は事故
等の特殊な場合以外には考えられないことなどから、t
=1時間を基準としてt>1時間における流動による影
響量を評価し把握してみる。
即ち、t=1時間におけるE′(t,t0)を基準とするこ
とにより任意のt(ただしt≧1時間)に対するE′
(t,t0)を以下の(14)式で与え、この(14)式におけ
るR(t,t0)を実験結果から求めることにより、Rを利
用して流動による影響量を評価し把握することにした。
なお、(14)式を前記(13)式に代入することにより以
下の(15)式が得られる。
ここで、流動による影響が無視できない場合のコンクリ
ートの熱挙動においては、流動による影響を補正した最
大引張温度応力σ′θmaxがコンクリートの引張強度ft
と一致したときに温度ひび割れが発生すると考えると、
ひび割れ発生時には前記(15)式から以下の(16)式が
成立する。
ところで、前述したように比較的急激な温度変化の場合
の(11)式と(12)式において、σθmaxがコンクリー
トの引張り強度と一致した時にひび割れが発生すると考
えると(11)式よりひび割れ発生時には以下の(17)式
が成立し、εθmaxがコンクリートの歪能力εと一致
した時にひび割れが発生すると考えると、前記(12)式
よりひび割れ発生時には以下の(18)式が成立する。
また、ひび割れ発生時には近似的にF0≒(一定)が成立
するという条件を前記(17)式と(18)式に代入すると
以下の(19)式と(20)式が誘導される。
前記(19)式は比較的急激な温度変化の場合に導き出さ
れた式であるため、流動による影響を考慮した場合を基
準としたt=1時間におけるE′(t=1時間,t0)に
対して以下の(21)式が成立する。また、(21)式を前
述の(16)式に代入することによって、流動による影響
を補正した最大引張温度応力σ′θmaxと温度分布係数F
0との間に(22)式が成立する。
ここで(22)式に基づくと、流動による影響を補正した
最大引張温度応力の大きさとコンクリートの引張り強度
の関係で温度ひび割れ発生の危険性を評価することと、
流動による影響の補正係数Rを導入してF0/(1+R)
の大きさによって評価を行うことは、近似的に等しい関
係にあるものと判断される。ここに、流動による影響量
を補正係数Rによって補正した温度分布係数をF00とす
るとF00は以下の(23)式によって与えられる。
ただし、温度変化開始後の経過時間t>1時間 「計算例」 次に前記(23)式に基き、実際にF00を算出する例につ
いて説明する。
まず、幅400mm、長さ1200mm、厚さ125mmの矩形板コンク
リートの試験体を用意し、この試験体の表面中央部に加
熱器を設置し、全体を断熱材で覆った試験モデルを作成
した。この矩形板コンクリートを加熱器で強制的に加熱
した場合のF00を算出してみる。
本試験では、矩形板コンクリートの長辺方向に最大引張
り温度応力が発生するので、温度分布係数F0は前出の
(8)式から以下の(24)式で与えられる。
ただし、Cは中心軸から矩形板コンクリート表面までの
距離(=板厚/2)を示す。
ここで矩形板コンクリートの短辺方向の温度分布状態は
矩形板コンクリートの中心軸に対して軸対象であるた
め、前記(24)式の第2項は消去され、この場合のF0
以下の(25)式で与えられる。
即ち、前記(25)式により算定したF0を前出の(23)式
に基づき補正することによって矩形板コンクリートにお
ける流動による影響を補正した温度分布係数F00を算定
できる。
ここで、本考案者は種々の実験からR(t,t0)を求める
複数の算定式を得ている。
これら算定式のうち、コンクリートの打ち込み後12時間
までの極めて流動的と思われる領域におけるR値は1.63
logt+0.696(logt)の式によって計算できることを
確認している。
従って、例えば、前記試験体における材令12時間の場合
のR値、即ち、R(12Hr,0Hr)を算定するには前記式の
tに12を代入することによって2.57を算出することがで
きる。更に、前記試験体におけるF0の値は前記(25)式
から17.55を得ることができる。
従って、前記(23)式のF0に17.55を代入し、R(t,
t0)に2.57を代入してF00=4.92を得ることができる。
ところで、コンクリート打ち込み後のF00の経時的な変
化の場合には、以下の(26)式と(27)式と(28)式に
よりR(t,t0)を算定することができる。
R(t,t0)=alogt+b(logt) ……(26) b=0.1856−0.0834・logt0 ……(28) 一方、第4図に前記各式に基づいて算出された種々の試
験体の引張り強度低下率と温度分布係数F00の関係を示
した。
第4図から、温度分布係数F00を指標として、マスコン
クリートの温度変化速度が遅い場合のひび割れ状況を把
握できることが明らかになった。そして第4図に示す結
果から、F00の値によりマスコンクリートの状態を次の
4つに区分できることが明らかとなった。
1)安全域 (0℃≦F00≦6℃) 2)危険域 (6℃<F00≦9℃) 3)ひび割れ発生限界 (9℃<F00≦12℃) 4)ひび割れ領域 (F00>12℃) 従って前述の各計算式をデータ処理装置2に入力し、温
度予測装置1が計測したデータを処理させてF00を算出
し、その値を前記1)〜4)に当てはめ、その結果によ
りひび割れ発生の危険性が大きい場合にデータ処理装置
2が表示装置5を作動させるようにしておけば良い。
第5図は本願発明者らが行った実験において、種々の条
件下におけるコンクリート部材の温度ひび割れ発生の有
無を示している。
第5図に示す結果によれば、F00が安全域の値の場合、
ひび割れを発生したコンクリート部材は皆無であり、ま
た、ひび割れ領域に至ったコンクリート部材は総てにひ
び割れが発生していることが判明している。各コンクリ
ート部材は、危険域からひび割れ発生限界にかけて次々
にひび割れ発生に至るものと考えられ、F00を指標とす
る温度ひび割れ発生の危険性評価方法が実施工のコンク
リート部材に対して適用できることが判断できる。
「発明の効果」 以上説明したように本発明の方法は、シュミレーション
用のマスコンクリートの温度実測結果を元に温度分布係
数F00を算出しておき、実施工のコンクリートの温度実
測結果を元に算出した温度分布係数F00と比較し、この
比較に基づいてコンクリートのひび割れ発生を評価する
ものであるために、極めて確実、かつ容易にひび割れ発
生の危険性を評価できる。また、ひび割れ発生の評価に
際し、コンクリートの温度経過の予測値を測定すること
により評価できるために、従来行っていた物性値の測定
や応力計算の必要がなくなり、その分評価作業が容易に
なる効果がある。
また、本発明の装置は、シュミレーション用のマスコン
クリートの温度実測結果に応じた温度経過予測値を元に
データ処理装置により温度分布係数F00を算出し、実施
工のコンクリートの温度実測結果に応じた温度経過予測
値を元にデータ処理装置により実施工のコンクリートの
温度分布係数F00を算出し、これらの比較に基づいてコ
ンクリートのひび割れ発生の評価を表示装置が表示する
ので、温度経過の予測値を測定することによって容易に
ひび割れ発生状況を知ることができる。また、従来行っ
ていた物性値の測定や応力計算の必要がなくなるため
に、ひび割れ発生の評価作業を従来より容易にできる効
果がある。
【図面の簡単な説明】 第1図は、本発明の一実施例を示すブロック図、第2図
は本発明方法によるひび割れ評価法の一例のフローチャ
ート、第3図は温度分布係数F0とひび割れ発生状況を示
す線図、第4図は温度分布係数F00とひび割れ発生状況
を示す線図、第5図はひび割れ発生状況を示す説明図、
第6図は従来のひび割れ評価方法のフローチャートであ
る。 1……温度予測装置、2……データ処理装置、 3……プリンタ、4……プロッタ、 5……表示装置。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コンクリートの温度応力によるひび割れ発
    生を評価する方法において、 打設後のシュミレーション用のマスコンクリートの中心
    からの位置rにおける温度T(r)をシュミレーション
    用のマスコンクリートの温度実測結果に応じた温度経過
    予測値として計測しておき、 この温度経過予測値を元に、コンクリートが円盤の場合
    に、以下の式で定義される温度分布係数F0を求め、 (ただし、前記の式においてrmは最大引張温度応力また
    は歪を生じる位置の円盤中心からの距離、r0は円盤の半
    径、T(r)は円盤内のrの位置の温度とする。) 前記温度経過予測値を元に、コンクリートが矩形板の場
    合に、以下の式で定義される温度分布係数F0を求め、 (ただし、前記の式においてhは矩形断面中心軸からの
    距離、h0は矩形断面中心軸から表面までの距離、hmは最
    大引張応力または歪を生じる位置の矩形断面中心軸から
    の距離とする。) 前記の式で求めた温度分布係数F0の値を以下の式に代入
    してシュミレーション用のマスコンクリートのF00を求
    めるとともに、 F00=F0/{1+R(t,t0)} (ただし、前記式において、R(t,t0)=1.63・logt+
    0.696(logt)、tは打設後の経過時間を示す。) 打設後の実施工のコンクリートの温度実測結果に応じた
    温度経過予測値を計測し、その温度経過予測値に基づ
    き、前記各式を用いて実施工コンクリートの温度分布係
    数F00の値を算出し、先のシュミレーション用のマスコ
    ンクリートの温度経過予測値から算出した温度分布係数
    F00の値と比較することによりひび割れ発生の有無を評
    価することを特徴とする温度ひび割れ評価方法。
  2. 【請求項2】コンクリートの温度応力によるひび割れ発
    生を評価する装置において、 打設後のシュミレーション用のマスコンクリートの中心
    からの位置rにおける温度T(r)が、シュミレーショ
    ン用のマスコンクリートの温度実測結果に応じた温度経
    過予測値として入力されるとともに、打設後の実施工の
    コンクリートの中心からの位置rにおける温度T(r)
    が、実施工のコンクリートの温度実測結果に応じた温度
    経過予測値として入力される一方、 前記の各温度経過予測値を元に、コンクリートが円盤の
    場合に、以下の式で定義される温度分布係数F0を求め、 (ただし、前記の式においてrmは最大引張温度応力また
    は歪を生じる位置の円盤中心からの距離、r0は円盤の半
    径、T(r)は円盤内のrの位置の温度とする。) 前記温度経過予測値を元に、コンクリートが矩形板の場
    合に、以下の式で定義される温度分布係数F0を求め、 (ただし、前記の式においてhは矩形断面中心軸からの
    距離、h0は矩形断面中心軸から表面までの距離、hmは最
    大引張応力または歪を生じる位置の矩形断面中心軸から
    の距離とする。) 前記の式で求めた温度分布係数F0の値を以下の式に代入
    してシュミレーション用のマスコンクリートのF00と実
    施工のコンクリートのF00を求め、 F00=F0/{1+R(t,t0)} (ただし、前記式において、R(t,t0)=1.63・logt+
    0.696(logt)、tは打設後の経過時間を示す。) 前記シュミレーション用のマスコンクリートの温度分布
    係数F00の値と実施工のコンクリートの温度分布係数F00
    を比較するデータ処理装置と、 前記データ処理装置が算出したマスコンクリートの温度
    分布係数F00と実施工のコンクリートの温度分布係数F00
    の差異に応じてひび割れ発生の有無を表示する表示装置
    とを具備してなることを特徴とする温度ひび割れ評価装
    置。
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