JP6043510B2 - 温度応力解析に基づいたコンクリート養生管理方法 - Google Patents
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Description
特に、マスコンクリートを打設した場合には、一般にコンクリートの内部温度が上昇して表面温度との間に温度差が発生するとひび割れる、所謂内部拘束によるひび割れが生じる。このため常温になるまで温度差を小さくする養生管理が必要である。また、乾燥によるひび割れを防止するためにも十分な湿度に養生管理する必要がある。
上記問題に鑑みて、例えば下記の特許文献1、2には、前記初期ひび割れを低減するコンクリートの養生管理を効率的にシステム化して実施する技術が開示されている。
具体的には、管理基準値をコンクリート温度が2℃以上で、且つ周囲の温度とコンクリート内温度との差を25℃以内となる設定とし、同管理基準値を保持するように、ジェットヒータ(温湿度制御装置)のオンオフ制御を行っている。因みに、前記温度センサは、養生囲いの内部と外部に1個ずつ、コンクリート内部に5個配置して、養生囲いの外部温度、内部温度及びコンクリート内温度を測定している。
しかし、コンクリートの養生管理は、コンクリート構造物の種類や、形状、設置場所の気象条件、その日の外気温などによって大きく異なり、外的要素を十分に考慮した上で行う必要がある。しかし、特許文献1の養生システムでは、予め設定された一つの管理基準値により養生管理が行われるため、様々な形状で異なる気象条件下で打設されるコンクリートの最適な養生管理を行うことができない。
内部拘束ひび割れとは、上記した通り、コンクリートが硬化の過程で発生する水和熱によりその中心部の温度が上昇し、その表面部との温度差による温度応力が硬化中のコンクリートの引張り強度を上回ることによるひび割れである。
外部拘束によるひび割れとは、先に打設したコンクリートの上に後打ちのコンクリートを打設した際に、下側(先打ち)のコンクリートが既に硬化しており、上側の後打ちコンクリートの下面の収縮が拘束されて引張り応力が生じてひび割れることを意味する。通例、内部拘束によるひび割れに対する養生管理と、外部拘束によるひび割れに対する養生管理は異なるのであり、個別に各条件を考慮した上で養生管理をする必要がある。
しかし、特許文献1のコンクリート養生管理システムでは、上記したように一つの管理基準値による養生管理であるため、内部拘束によるひび割れと外部拘束によるひび割れに対してそれぞれに最適な養生管理を行うことは皆無である。特に、外部拘束によるひび割れには対応できないシステムである。
したがって、養生囲い内の温度を正確に測定するには、同囲い内の温度を均一にした上で測定しなければ正確な測定値とはいえない。しかし、特許文献1には上下の温度差を均一にする事を考慮したシステムは無く示唆もない。のみならず、上記のように温度差が生じる養生囲い内に温度センサが1個のみであるため、その養生囲い内の温度の測定値は実測値とかなりの差が生じることになる。すると、特許文献1記載の養生システムを実施した場合、正確な温度値ではないため、養生囲い内の上下の温度差が影響を及ぼし、内部拘束による温度ひび割れが発生する虞が非常に高くなる、という問題点がある。
先ず、実測値として測定している値は、外気温のみである。しかし、上述してきたように特にコンクリートの内部拘束によるひび割れは、コンクリートの内部温度と、コンクリート表面部の温度である養生囲い内の温度との差により生じる。したがって、外気温のみを測定して、それ以降の養生温度パターンを決定してしまうことは正確さに欠けた養生管理を実施する虞が大いにある。
因みに、複数の養生温度パターンは、例えば養生区域の密閉度とヒータの最大能力、ひび割れ指数を考慮して設定している点も記載されている。
しかし、決定された養生温度パターンは、実測値からリアルタイムに修正できる管理方法ではないため、様々に変化する気象条件をリアルタイムに監視して常に適切な養生管理を行うことは困難である。また、コンクリートのひび割れの要因には、上述したように内部拘束ひび割れ型と外部拘束ひび割れ型があり、両者の養生管理方法は一般的に異なるものである。したがって、両者の型に適切に対応する養生管理方法が求められるが、特許文献2にはそうした点を考慮した養生管理方法は記載されておらず、示唆もない。
コンクリート構造物の構築に際し、コンクリート打設箇所の周囲を閉鎖構造に取り囲む養生囲いを設けて、同養生囲い内を温度応力解析による管理基準値に基づいて最適な養生環境に管理する方法であって、
施工前の準備工程として、解析手段による事前解析に基づく予測値として温度、応力、気流の仮の管理基準値を仮決定する段階と(図2のST3)、
前記養生囲い内に配置された囲い内用の温湿度センサと、養生囲い外に配置された囲い外用の温湿度センサと、コンクリート内部に複数個埋設されたコンクリート用の温度センサと、前記養生囲い内及び養生囲い外の温湿度センサと温度センサからの信号を集積する温湿度計測盤とを有する温湿度測定装置と、
養生囲い内に配置された加湿器と温度調節器、及び養生囲い内の温度を均一に熱循環させる熱循環器、並びに前記加湿器や温度調節器、熱循環器の動作を制御する電源制御盤とを有する温湿度制御装置と、
温度解析、応力解析を行なって実測値に基づく管理基準値を算出し(図2のST9)、同管理基準値に基づいた制御信号を前記温湿度制御装置へ送信して養生囲い内の温湿度及びコンクリート温度を制御して養生管理を行う養生管理装置とから成り、
前記養生管理装置は通信手段を有しており、インターネット回線により事務所の端末や他の端末と情報の授受を行う構成とされており、
前記養生管理装置は、温度応力解析によりコンクリートの温度、養生囲い内の雰囲気温度、及び外気温それぞれの管理基準値を算出する解析手段を備えており、コンクリート打設前に予めコンクリート構造物の種類と形状を入力させ、且つ外気温とコンクリート初期温度を過去の気象データから予想させ、
前記の両予想値に基づいて少なくとも温度解析と応力解析とを行なって仮の管理基準値を算出しておき、
前記温湿度測定装置から送信される実測値に基づいて再度温度解析と応力解析を行わせて最適な管理基準値を決定し(図2のST9)、
決定した管理基準値に基づいて、温湿度制御装置を制御してコンクリートの養生管理を行う(図2のST10)ことを特徴とする。
養生管理装置の解析手段は、仮の管理基準値の算出時に養生囲い内の気流解析を行い、加湿器と温度調節器の数量、及び熱循環器の台数、位置、方向を算出することを特徴とする。
養生管理装置の解析手段は、仮の管理基準値を算出した後、打設されるコンクリートが内部拘束ひび割れ型か外部拘束ひび割れ型かを判別させ、
外部拘束ひび割れ型である場合には、コンクリート打設前の前養生管理として、温湿度測定装置からの実測値に基づいて温度解析と応力解析を行わせて管理基準値を決定し、同管理基準値に基づいて養生囲い内の温度、湿度、気流を、温湿度制御装置を制御して前養生管理を行い、コンクリート打設後に打設コンクリートの後養生管理の有無を判断すること、
内部拘束ひび割れ型である場合、又は打設後コンクリートの後養生管理が必要と判別された場合には、コンクリート打設後の後養生管理として、コンクリート打設後に前記温湿度測定装置から送信される少なくとも外気温とコンクリート初期温度に基づいて、温度解析と応力解析を行い、実測値に基づいた管理基準値を決定し、前記管理基準値に基づいて、養生囲い内の温度、湿度、気流を温湿度制御装置を制御して後養生管理を行うことを特徴とする。
養生管理装置は、インターネット回線により、事務所の端末や他の端末が行った温度応力解析による管理基準値を取得し、同管理基準値に基づいてコンクリートの養生管理を温湿度制御装置の制御により行うことを特徴とする。
本発明のコンクリート養生管理方法は、温湿度センサと温度センサ及び温湿度計測盤を有する温湿度測定装置と、加湿器、温度調節器、熱循環器、及び同前の加湿器と温度調節器及び熱循環器の動作を制御する電源制御盤を有する温湿度制御装置とで、温度解析及び応力解析を行なって、打設コンクリートの温度、養生囲い内の雰囲気温度、及び外気温それぞれの管理基準値値を算出し、同管理基準値に基づいて養生囲い内打設コンクリートの養生管理を行う養生管理装置とで実施する。
特に、前記養生管理装置は、温度・応力解析により管理基準値を算出する解析手段を有し、コンクリート打設前に予めコンクリート構造物の種類と形状を入力させ、且つ外気温とコンクリート初期温度を過去の気象データから予想し、両予想値に基づいて少なくとも温度解析と応力解析を行なって仮の管理基準値を算出し(図2のST3)、前記温湿度測定装置から送信される実測値に基づいて再度温度解析と応力解析を行って最適な管理基準値を決定し、コンクリートの養生管理を実測値に合わせて実施する方法である。
したがって、養生管理装置は、予めコンクリート構造物の種類と形状と予想値に基づいて算出した仮の管理基準値(図2のST3)を、実測値の入力(図2のST6)で、最適な管理基準値に修正して決定でき(図2のST9)、作業性と精度を向上できる。
また、管理基準値の決定(図2のST9)後、温湿度測定装置からのリアルタイムの温湿度、及びコンクリート内温度の実測値(図2のST12)を基に、温度応力解析により導かれた最適な管理基準値(図2のST15)に基づいて養生囲い内の温度、湿度を温湿度制御装置により制御する(図2のST16)ので、コンクリート内部と外部との温度差を小さくして初期ひび割れを防止すると共に、実測値に沿って温湿度制御装置が制御される。
よって、様々な形状で異なる気象条件下で打設されるコンクリートであっても、常にその現状に即した最適な管理基準値になるように養生管理を行うことができる。
例え上下方向に高さが大きい養生囲いであっても、熱循環器の効果的な設置により、上下の温度差が無いように空間内の温度を均一にして、上下の温度差に起因するひび割れを防止できる。
のみならず、局部的な熱不足によるコンクリートの強度不足の解消や過熱による温度応力の発生も低減して初期ひび割れを抑制できる。
特に、外部拘束ひび割れ型である場合には、コンクリート打設前の既設コンクリートの前養生として、温湿度測定装置からの実測値を基に温度応力解析を行って管理基準値を決定し、コンクリートの打設前の前養生管理を前記管理基準値に基づいて、養生囲い内の温度、湿度、気流を温湿度制御装置により制御して行う。つまり、コンクリート打設前に既設コンクリートの温度を養生囲い内で適切に前養生管理することで、外部拘束による温度応力のひび割れを低減できる。
更に、コンクリート打設後に、打設後コンクリートの後養生管理の有無を判断し、打設後コンクリートの後養生管理が必要と判別された場合には、後養生管理として内部拘束ひび割れ型も、同様に前記温湿度測定装置から送信される実測値から温度解析と応力解析を行なって管理基準値を決定し、前記管理基準値に基づいて、養生囲い内の温度、湿度、気流を温湿度制御装置により制御して後養生管理を行う。
したがって、本発明の養生管理方法は、外部拘束によるひび割れ型であれ、内部拘束ひび割れ型であっても、それぞれの養生条件やコンクリート形状などを考慮して、前養生管理から後養生管理まで最適な養生管理を一括した方法で行うことができる。
例えば、作業面の向上では、毎回測定データを現場へ確認に行かなくても良い点など、安全面の向上は、養生空間内の酸素濃度が低下しているような場合でも、養生空間内に入ることなく、システム機器を制御することができるのである。
施工前の準備工程として、解析手段による事前解析に基づく予測値として温度、応力、気流の仮の基準値を仮決定する段階と、
前記養生囲い2内に配置された囲い内用の温湿度センサ31aと、養生囲い外に配置された囲い外用の温湿度センサ31bと、コンクリート内部に複数個埋設されたコンクリート用の温度センサ32と、並びに前記養生囲い内及び囲い外用の温湿度センサ31(31a、31b)と、温度センサ32からの信号を集積する温湿度計測盤30とを有する温湿度測定装置3と、
養生囲い2内に配置された加湿器41と温度調節器42、及び養生囲い2内の温度を均一に熱循環させる熱循環器43、及び前記加湿器41と温度調節器42及び熱循環器43、並びに同加湿器41と温度調節器42、及び養生囲い2内の温度を均一に熱循環させる熱循環器43の動作を制御する電源制御盤40とで成る温湿度制御装置4と、
温度解析、応力解析を行なって実測値に基づく管理基準値を算出し、同管理基準値に基づいた制御信号を温湿度制御装置4の電源制御盤40へ送信して養生囲い2内の温湿度及びコンクリート温度を制御して養生管理を実行する養生管理装置5とを設備して実施する。
前記養生管理装置5は、温度応力解析により管理基準値を算出する解析手段50を有しており、これにはコンクリート打設前に予めコンクリート構造物の種類と形状を入力し、且つ外気温とコンクリート初期温度を過去の気象データから予想させ、双方の予想値に基づいて少なくとも温度解析と応力解析とを行なわせて最適な管理基準値を決定し、前記のように決定した管理基準値に基づいて、温湿度測定装置を制御してコンクリート1の養生管理を行なうことに特徴を有する。
本発明のコンクリート養生管理方法は、コンクリート1の打設箇所に予め同所を取り囲む養生囲い2を設置し、同養生囲い2内を温度応力解析による管理基準値に基づいて最適な養生環境に管理することを特徴としている。
ここで言う温度応力解析とは、温度解析と応力解析を指すが、本発明においては気流解析も行って正確な実測値を得ることを特徴としている。
また、本発明は、内部拘束ひび割れ型と外部拘束ひび割れ型の双方のひび割れ要因に対して、それぞれ温度応力解析を行って、前養生管理から後養生管理まで、適切な養生管理を一括した方法により可能にすることも特長としている。
ここでいう、内部拘束ひび割れ型とは、上記したとおり、新設のコンクリートを打設した際に、同コンクリートの内部とコンクリート表面部との温度差によって生じるひび割れを指す。外部拘束ひび割れ型とは、先に打設したコンクリートの上に、次の(後打ちの)コンクリートを打設した際に、先打ち(下側)のコンクリートが既に硬化しており、上側の後打ちコンクリートの下面の収縮が拘束されて、そこに引張応力が生じてひび割れを生ずる場合を指す。
前記温湿度測定装置3は、温湿度センサ31と温度センサ32及び同温湿度センサ31、並びに温度センサ32からの信号を集積する温湿度計測盤30とで構成されている。
前記温湿度センサ31には、養生囲い2内に配置された室内用の温湿度センサ31aと、前記養生囲い2の外に配置された室外用の温湿度センサ31bとがあり、それぞれの温度と湿度情報は前記温湿度計測盤30へ継続的に送信される。
前記室内用の温湿度センサ31aは、例えば囲い内の中心位置に配置されることが好ましいが、養生囲い2内の大きさによっては複数箇所に設置される。
前記温度センサ32は、コンクリート1内部に複数個埋設されるコンクリート用の温度センサ32であり、それぞれの温度情報は温湿度計測盤30へ継続的に送信され集積される。この温度センサ32は、コンクリートが打設される前に予め鉄筋の所定箇所に取り付けてコンクリート内に埋設する構成とされる。前記所定箇所とは、コンクリート構造物の形状や構造によって異なるが、少なくとも縦断面に見て上下左右に満遍なく複数設置される。つまり、打設したコンクリート内部の温度を正確に計測できる数と配置で設置される。
因みに、既設のコンクリートを前養生する場合に、同既設のコンクリートの温度を測定するには、温度センサ32をコンクリート表面に複数個貼り付けて実施する。とは言え、新設(後打ち)のコンクリート構造物を、このコンクリート養生管理方法を用いて構築している場合には、既設のコンクリートには、既にコンクリート内部に温度センサ32が埋設されているので、再利用することによって効果的に実施できる。
前記加湿器41は、通常建設現場で用いられているもので良く、例えばミスト発生器である。温度調節器42は、加熱器と冷却器とから成り、加熱器は例えばジェットヒータである。また、冷却器とは図示することは省略したが、コンクリートの内部にパイプを仕込んでおいて冷水を流し、コンクリート内部の温度を下げるパイプクーリングなどである。熱循環器4は、例えば送風器である。勿論、性能は養生囲い2内の容量の大きさに合わせて適宜決定される。
前記電源制御盤40は、後述する養生管理装置5、(又は事務所の端末S2や他の端末S4も含む。)から送信される制御信号に基づいて、加湿器41、温度調節器42と熱循環器43の動作を制御して、養生囲い2内の養生環境を最適に制御する。
この養生管理装置5は、前記解析手段50により温度解析、応力解析を行ない、各解析に基づいて管理基準値を算出して決定し、同管理基準値に基づいた制御信号を温湿度制御装置4の電源制御盤40へ送信して養生囲い2内の温湿度及びコンクリート温度を制御して養生管理をする働きを担っている。のみならず、解析手段50は、養生囲い2内の前記気流解析も行い、加湿器41と温度調節器42の数量、及び熱循環器43の台数、位置、方向をも正確に算出することができる。したがって、養生囲い2内の温度を確実に均一にできるので、正確な温湿度を計測することに寄与する。
また、上記養生管理装置5は、管理者に、打設されるコンクリートが内部拘束ひび割れ型か、外部拘束ひび割れ型かを判別させる。外部拘束ひび割れ型である場合には、コンクリート打設前の既設コンクリートの前養生管理として、温湿度測定装置3からの実測値を基に温度応力解析を行って正確な管理基準値へ修正して決定し、上記温湿度制御装置4によりコンクリートの打設の前養生を実測値に合わせて行わせる。更に、コンクリート打設後に打設後コンクリートの後養生管理の有無を判断する。
また、養生管理装置5は、インターネット回線6により事務所の端末S2や他の端末S4が行った温度応力解析による管理基準値を取得して、同管理基準値に基づいてコンクリートの養生管理を実測値に合わせて行うことも可能である。
これは建築現場S1に配置される小型の上記養生管理装置5が、高性能のコンピュータに比して処理速度が遅く、記憶手段の容量が少ないことが多いことから、事務所の端末S2において温度応力解析を行って管理基準値を算出しておき、同管理基準値を上記養生管理装置5へインターネット回線6を介して送信し、養生管理装置5が適切な養生管理を行えるシステムに構築されている。特に、後述するがコンクリートを打設する前に行われる温度応力解析と管理基準値の仮決定は解析量の多さの点からも事務所の端末S2においてなされることが好ましい。
先ず、ステップ(以下、単にSTと略す。)ST1〜ST3において、コンクリート構造物を構築するにあたり、養生管理装置5の解析手段50で実際にコンクリート打設する数週間前に、コンクリート養生計画を事前に立てる準備工程Aが行われる。本実施例では、建設現場S1に配置される養生管理装置5のコンピュータの解析手段50を使用した場合を説明するが、上記したように、準備工程Aの各ステップは、他の端末、特に事務所の端末S2の高性能コンピュータにおいても同様に行える。当然、この準備工程Aは、建設現場S1で行う必要はない。
本実施例では、例えば仕上がり内径8m×8m、底版厚さ0.7m、側壁厚さ0.7m、頂版厚さ0.7mで、施工時期を2月下旬とするボックスカルバートの側壁部の施工へ本発明の方法を適用した場合を例に、時に具体的数値を交えて説明する。
過去の気象データや同気象データに対応するコンクリート初期温度は、予めコンピュータ5内に予めデータとして蓄積されているものである。また、構築されるコンクリート構造物の種類や形状、その他の構造物条件、コンクリートの養生管理に関係する各種条件も予め入力されている。
ステップST2において、上記入力された予想値を基に、事前解析を行う。事前解析とは、具体的には温度解析、応力解析、気流解析である。この事前解析において、ステップST1で入力されたコンクリート構造物の種類や形状など、コンクリートの養生管理に関係する各種条件に沿った温度解析、応力解析、気流解析が行われる。したがって、この準備工程Aにより、養生管理の大枠を決定することができる。したがって、後に外気温や養生囲い2内の温湿度、コンクリート内温度などの実測値を入力すれば、スムーズな作業で最適な管理基準値に修正でき、正確な養生管理が行えるのである。
前記温度解析とは、端的に云うと、コンクリートの内部温度の初期温度からの時系列変化を解析するものである。
前記応力解析とは、コンクリート表面とコンクリート内部との温度差によって生じる応力を解析するものであり、養生温度や養生期間を変化させたケース毎に同解析を行い、最適な養生条件を算出するものである。
前記気流解析とは、解析手段50が有する解析ソフトを用いて、養生囲い2内の気流の変化などを可視化状態で表示し、前記応力解析による最適な養生条件を実現するために必要な加湿器41、温度調節器42の数を算出するものである。更に、養生囲い2内に温度差が発生した場合に、温度差を無くして均一に熱循環させるための、熱循環器43の台数、位置、方向をも算出する。
実施例では、上記事前解析によりコンクリート構造物がボックスカルバートのコンクリート養生として、温度調節器42が4台、加湿器41が2台、熱循環器43が4台必要であると算出された。
また、上記3つの事前解析により、ステップST3において、温度制御、湿度制御、気流制御の各管理基準値の仮決定がなされる。尚、管理基準値は一定の値に限らず、時系列に応じて変動させることもできる。
本実施例では、コンクリート打設前の養生期間は、打設前1.0〜0.5日で、温度制御は、養生囲い2内温度を20℃、湿度制御は60%以上〜80%以下、気流制御は養生囲い2内の温度差5℃に仮決定される。コンクリート打設後の養生期間は打設後1.5〜4.0日で、温度制御は、養生囲い2内温度を10℃、湿度制御は60%以上〜80%以下、気流制御は養生囲い2内の温度差5℃に仮決定される。
この判別ステップを端的に云うと、先打ちした既設コンクリートの上部に新設(後打ち)のコンクリートを打設する場合は、外部拘束によるひび割れ型を考慮する必要がある点を判別基準としている。
前記準備工程Aでは数週間前に予測値による管理基準値が仮決定されたが、ステップST6では、養生囲い2を設置してから、実際の外気温や、養生囲い2内温度、既設コンクリートの温度を温湿度計測装置3により測定して実測値が入力される。
すると、ステップST7において直前解析が行われる。この直前解析ステップは、図3に示すフローチャートにより具体的に説明する。端的には、仮の管理基準値を、実測値に基づいた温度解析と応力解析を行って修正する工程である。
両者の温度差が許容値内(実施例では±2℃以内)であれば(OK)で、ST72へ進み、上記した手法で応力解析を行う。この際、底版コンクリートの最大温度差が5℃であり、許容値外(NG)であれば、解析条件を修正することになる。例えば、底版コンクリート温度の解析値が実測値に比べて高い場合は、解析条件として物性値、熱伝導率などの修正を行う。そして、再度ST70で温度解析を行い、既設コンクリートの解析値と実測値とを比較し、許容値内に収まるまで解析条件を修正する。
前記最小ひび割れ指数が目標以上(OK)であれば、改善効果が確認できたとして応力解析を終了する。
目標以下(NG)であれば、ステップST75で、解析条件である養生期間や養生温度を修正して再度ST72の応力解析を行うことが繰り返される。とは言え、繰り返し修正と応力解析を行っても改善効果が低い場合には、応力解析が終了される。なぜなら、改善効果の目標値が高すぎる可能性があり、目標値を修正する必要があるからである。
上記ステップの説明は養生管理装置5の解析手段50が行う前提で進めてきたが、上述したように、ST7の直前解析〜ステップST9の管理基準値の決定までは他の端末にさせておき、決定された管理基準値をインターネット回線6を介して養生管理装置5が取得して、以下の前養生管理を行うことも適宜行われる。この点は、後述する後養生の工程Cの各ステップにおいても同様であるため重複説明は省略する。
前記単独制御方法とは、1つの計測値を元に制御する方法である。前記2点間温度差制御方法とは、2つの測定値の差を基に制御する方法である。また、前記複合制御方法とは、単独制御方法と2点間温度差制御方法とを組み合わせた内容である。これらは、現場の環境及び設備条件を考慮して最適な温度制御方法を適宜選択できる。
そして、ステップST10で、前記管理基準値に基づいて、温度制御、湿度制御、気流制御が行われ、既設のコンクリート温度を適切に前養生することができる。
前記温度制御、湿度制御、気流制御は、温湿度測定装置3から送られるそれぞれの実測値データを基に決定された管理基準値に達するように、温度調節器42、加湿器41、熱循環器43のそれぞれを制御するものである。
本実施例での温度制御のヒステリシス値αは、1.5℃とされている。養生囲い2内温度の管理基準値が25.0℃であると、養生囲い2内温度は、管理基準値からヒステリシス値α=1.5℃を引いた値の23.5℃で温度調節器42が起動し、逆に1.5℃足した26.5℃で温度調節器42が停止する制御が行われる。
また、湿度制御でのヒステリシス値αは、10%としている。したがって、湿度制御の管理基準値の最小湿度値が60%であると、ヒステリシス値α=10%を引いた、湿度50%になった際に、加湿器41が起動する。管理基準値の最大湿度値は80%であるので、同管理基準値に10%を足した湿度90%になった際に、加湿器41が停止する制御が行われる。
更に、気流制御のヒステリシス値は、4℃としている。気流制御の管理基準値は、養生囲い2内温度の温度差が5℃以内であるので、当然、温度差が5℃以上になれば熱循環器43が起動する。前記管理基準値の温度差5℃からヒステリシス値α=4℃を引いた値の温度差1℃になった場合には、熱循環器43が停止する制御である。
因みに、内部拘束ひび割れ型であると判別された場合、及びST8で前養生の工程Bが必要ないと判断された場合も、同じくST11でコンクリート打設が行われる。以下に、コンクリート打設を行った後の後養生の工程Cの各ステップを説明する。
先ず、数週間前に準備工程Aで予測値による管理基準値が仮決定されたとして、ステップST12で、養生囲い2を設置した後の、実際の外気温、養生囲い2内温度、新設のコンクリートの初期温度が温湿度計測装置3により測定されて、実測値が入力される。
すると、ステップST13において直前解析が行われる。この直前解析のステップは、上記前養生の工程BのST7、及び図3に示すフローチャートで説明したST70〜ST75の通り行われるので、重複する説明は省略する。
相違点としては、ST71のコンクリート温度の解析値と実測値との比較ステップは、既設のコンクリートではなく、当然新設のコンクリート温度の比較がなされる。内部拘束ひび割れ型の場合、比較対象はコンクリートピーク温度の発生時間であり、例えばピーク温度の発生時間差が6時間(許容値3時間)であると、解析条件を修正するST73へ進む。ここで、コンクリートピーク温度の発生時間は、前記解析値が実測値に比べて遅かった場合、断熱温度上昇速度係数を上げて、再度ST70、ST71で許容値内(3時間以内)になるように応力解析を行う。
ST72の応力解析によりST74で最小ひび割れ指数が目標値以上であるか、の判定がなされる。しかし、繰り返し解析条件を修正(ST75)しても、後養生の効果が得られないか、又は目標値に達しない場合には、強制的に応力解析のステップを終了する点も同じである。
すると、図1のST14で後養生の改善効果判定が行われ、前記後養生の効果が得られないか、又は目標値に達しない場合(NG)は、後養生を行わず本養生管理方法が終了される。
後養生の効果がある(OK)の場合には、ステップST15において、温度制御、湿度制御、気流制御のそれぞれの管理基準値の決定がなされる。この点は前養生工程BのST9で説明したとおりであり、温度制御が単独制御管理方法、2点間温度差制御、複合制御方法のいずれかが宜選択される点も同様である。本実施例では、温度制御は、養生囲い2内温度を11.5℃、湿度制御は60%以上〜80%以下、気流制御は養生囲い2内温度差5℃に決定されている。養生期間は打設後1.5〜4.0日である。
上記の各管理基準値にしたがって、ステップST16で、養生管理装置5は、温湿度測定装置3により養生期間の間、養生囲い2内の養生管理をリアルタイムで監視しつつ、温湿度制御装置4により温度制御、湿度制御、気流制御を正確な実測値から導かれた最適な管理基準値に基づいて制御し、後養生管理を行うのである。
斯くすると、外部拘束によるひび割れ型であっても、内部拘束ひび割れ型であっても、それぞれの設置場所やコンクリート形状、養生条件などを考慮し、前養生から後養生までの最適な養生管理を一括したシステムで行うことができるのである。
2 養生囲い
3 温湿度測定装置
30 温湿度計測盤
31 温湿度センサ
32 温度センサ
4 温湿度制御装置
40 電源制御盤
41 加湿器
42 温度調節器
43 熱循環器
5 養生管理装置
50 解析手段
6 インターネット回線
S1 建設現場
S2 事務所の端末
S3 データベースサーバー
S4 他の端末
Claims (4)
- コンクリート構造物の構築に際し、コンクリート打設箇所の周囲を閉鎖構造の取り囲む養生囲いを設けて、同養生囲い内を温度応力解析による管理基準値に基づいて最適な養生環境に管理する方法であって、
施工前の準備工程として、解析手段による事前解析に基づく予測値として温度、応力、気流の仮の管理基準値を決定する段階と、
前記養生囲い内に配置された囲い内用の温湿度センサと、養生囲い外に配置された囲い外用の温湿度センサと、コンクリート内部に複数個埋設されたコンクリート用の温度センサと、前記養生囲い内及び養生囲い外の温湿度センサと温度センサからの信号を集積する温湿度計測盤とを有する温湿度測定装置と、
養生囲い内に配置された加湿器と温度調節器、及び養生囲い内の温度を均一に熱循環させる熱循環器、並びに前記加湿器や温度調節器、熱循環器の動作を制御する電源制御盤を有する温湿度制御装置と、
温度解析、応力解析を行なって実測値に基づく管理基準値を算出し、同管理基準値に基づいた制御信号を前記温湿度制御装置へ送信して養生囲い内の温湿度及びコンクリート温度を制御して養生管理を行う養生管理装置とから成り、
前記養生管理装置は通信手段を有し、インターネット回線により事務所の端末や他の端末と情報の授受を行う構成とされており、
前記養生管理装置は、温度応力解析によりコンクリートの温度、養生囲い内の雰囲気温度、及び外気温それぞれの管理基準値を算出する解析手段を備えており、コンクリート打設前に予めコンクリート構造物の種類と形状を入力させ、且つ外気温とコンクリート初期温度を過去の気象データから予想させ、
前記の両予想値に基づいて少なくとも温度解析と応力解析とを行なって仮の管理基準値を算出しておき、
前記温湿度測定装置から送信される実測値に基づいて再度温度解析と応力解析を行わせて最適な管理基準値を決定し、
決定した管理基準値に基づいて、温湿度制御装置を制御してコンクリートの養生管理を行うことを特徴とする、温度応力解析に基づいたコンクリート養生管理方法。
- 請求項1に記載した温度応力解析に基づくコンクリート養生管理方法において、
養生管理装置の解析手段は、仮の管理基準値の算出時に養生囲い内の気流解析を行い、加湿器と温度調節器の数量、及び熱循環器の台数、位置、方向を算出することを特徴とする、温度応力解析に基づいたコンクリート養生管理方法。 - 請求項1又は2に記載した温度応力解析に基づくコンクリート養生管理方法において、
養生管理装置の解析手段は、仮の管理基準値を算出した後、打設されるコンクリートが内部拘束ひび割れ型か外部拘束ひび割れ型かを判別させ、
外部拘束ひび割れ型である場合には、コンクリート打設前の前養生管理として、温湿度測定装置からの実測値に基づいて温度解析と応力解析を行わせて管理基準値を決定し、同管理基準値に基づいて養生囲い内の温度、湿度、気流を、温湿度制御装置を制御して前養生管理を行い、コンクリート打設後に打設コンクリートの後養生管理の有無を判断すること、
内部拘束ひび割れ型である場合、又は打設後コンクリートの後養生管理が必要と判別された場合には、コンクリート打設後の後養生管理として、コンクリート打設後に前記温湿度測定装置から送信される少なくとも外気温とコンクリート初期温度に基づいて、温度解析と応力解析を行い、実測値に基づいた管理基準値を決定し、前記管理基準値に基づいて、養生囲い内の温度、湿度、気流を、温湿度制御装置を制御して後養生管理を行うことを特徴とする、温度応力解析に基づいたコンクリート養生管理方法。 - 請求項1〜3のいずれか一に記載した温度応力解析に基づいたコンクリート養生管理方法において、
養生管理装置は、インターネット回線により、事務所の端末や他の端末が行った温度応力解析による管理基準値を取得し、同管理基準値に基づいて、コンクリートの養生管理を温湿度制御装置の制御により行うことを特徴とする、温度応力解析に基づいたコンクリート養生管理方法。
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