JPH076596B2 - 軸受給油装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は横軸の回転機械に係り、特に潤滑油を軸受箱に
自蔵し、主軸の回転によつて軸受に自給油する軸受装置
に関する。

〔従来の技術〕

従来、横軸の電動機等のすべり軸受の給油装置は機器の
メインテナンスフリー化並びに経済性の観点から、オイ
ルリング給油または粘性ポンプ等を利用した給油方法で
自然放熱の自己冷却給油構造が適用されている。しか
し、機器の高速化に伴ない軸受部の必要最少油量も、当
然大幅な増加が必須の条件となるため揚油量の少ないオ
イルリング方式は適用できないという問題があつた。

そこで、給油量の大幅な増加を期待できる粘性ポンプ給
油構造としては実開昭61−198798号，特開昭62−151658
号公報等が提案されている。

そして、実開昭61−198798号公報は主軸に形成される軸
カラーの外周にオイルガイドリングを備え、かつオイル
ガイドリングを軸受ハウジング内に固定して構成される
粘性ポンプ構造において、断面凹形の円環板からなり凹
脚部で軸受カラーの外周に近い軸方向の両側面を挟みか
つ凹形の底部と対向する軸カラーの外周との間に空間を
保つような形状のオイルガイドリングを設けた構造とな
つている。この方式は、オイルガイドリングと軸カラー
とで囲まれた流路面積を拡大したことでポンプの給油量
の増加を目的としている。しかし、運転中主軸は軸受損
失等の影響で加熱されるため約数mmの熱伸びが生じる。
したがつて、回転軸カラーの両側面をハウジングに固定
されたオイルガイドリングで囲んでしまうポンプ形状で
は熱伸びを吸収できないため、ポンプ機能を阻害する恐
れがある。

また、一般的に攪拌損失を考慮して油面をできるだけ下
部に設定するため、ガイドリング及び軸カラーの側端面
の過半部は大気中に接して設置されるため、軸カラーの
回転によつてその周囲の空気を巻き込み、ポンプ内に気
泡を発生し粘性ポンプの性能が低下する問題があつた。
また、特開昭62−151658号公報では、主軸に形成される
デイスクの外周及び側端面にポンプケースを遊嵌装着
し、かつポンプケースは回転回り止めが施されるだけで
可動自在のフローテイング支持構造となつている。この
方式は、ポンプケースが主軸の動きに追従でき上記の熱
伸びを吸収できる構造であり、またポンプケースの内径
面に形成されるポンプ室の両側部に開口される油溝がシ
ール効果を有し、かつ凹脚部は攪拌防止効果を発揮す
る。しかし、給油量の増加を図る場合幅方向に拡大すれ
ば、ポンプ損失の増大化も免れないので得策ではなく、
またデイスク側面に対向する凹脚部に単に円周溝を開口
しただけではシール効果は得られない。

上記の様に、各公報に記載されたものはそれぞれ問題点
を有しており、自冷自給油構造の使用範囲の拡大化を図
るためには、タンク表面からの自対流による放熱のみに
冷却を依存しているため、給油量の増加を図ると共に各
摩擦部の損失低減化を配慮した軸受給油装置が要求され
ている。

〔発明が解決しようとする問題点〕

上記従来技術は、粘性ポンプの性能向上の決め手となる
シール機構及び油吸込部の形状効果についての配慮が成
されておらず、ポンプ動作中気泡の混入を防止すること
ができないため効率的なポンプ性能を得られなかつた。
また、ポンプケースを固定しないフローテイング構造で
はポンプケースの一方的な傾き等によつて異常な空気の
混入を招きポンプ性能を大幅に低下させるだけでなく、
ポンプ機能を停止させてしまう致命的な欠陥を生ずるこ
ともありうる。

本発明は上記の状況に鑑みなされたものであり、粘性ポ
ンプの機能を損うことなく低速域から高速域まで効率的
なポンプ効果によつて適正な潤滑油を軸受部に給油でき
信頼性の向上を図れる横軸回転機の軸受装置を提供する
ことを目的としたものである。

〔問題点を解決するための手段〕

上記目的は、主軸に固定されるオイルデイスの外周及び
側端面を覆つてかつ所定の間隙を有して遊嵌装着され、
その内周面にポンプ室を下端から上端まで周方向にほぼ
半周に亘り左右対称形に開口し、上端に吐出口を有し下
端には油面以下に開口する吸込口を設けてなる粘性ポン
プにおいて、上記吸込口の上端部に吸込口径より大とな
る円弧溝を軸方向に亘つて形成し、さらにポンプケース
の両側端部に配設するサイドカバーの内側に円周状のシ
ール溝を形成し、かつその下部に油導入口を開口し、上
部にはシール溝をふさぐストツパーを設けた、シール機
能付粘性ポンプにすることによつて達成される。

〔作用〕

回転主軸が回転すると、オイルデイスの下部は常時油面
下に設定されているため、ポンプケースの下部の吸込口
も潤滑油で満たされており、オイルデイスクが回転する
と、その表面に付着した油は粘性摩擦作用により、ポン
プ室内を回転方向に流動し、上部終端段付部で昇圧し、
吐出口より吐出配管及び上部タンク等の循環経路を経て
軸受部に給油される。一方、サイドカバーの下部の導入
口から流入した潤滑油は上記同様オイルデイスクの側端
面の粘性摩擦作用によつて円周溝内を流動する。この溝
内の油は上部のストツパーによつてせき止められるため
昇圧するが、この部の圧力はポンプ室内の圧力とほぼ同
等となるため、側端面の細隙部から外部へ排出される。
このようにポンプ側面部に油膜圧によりカーテンを形成
することによつて、外部からの空気の混入を防止するこ
とができる。また、上記オイルケースはオイルデイスク
に懸架されるため、停止中は上部においてポンプケース
内周面とデイスク外周部とは接触し、反面下部は非接触
の状態となるが、回転と共に油膜が形成されポンプケー
スは油膜によつて可動自在に保持される。このため、デ
イスクの表面とポンプケースの内周面はわずかの間隙を
もつて対向配置されるので、吸込部の位置とデイスクと
が最大限接近しても円弧溝を有するため吸込流路をしや
断することなく、また流路端部を拡大をしたことによつ
て吸込抵抗を抑制することができる。

したがつて、ポンプケース側面からの空気の混入を防止
し、かつ吸込部の流通を容易な形状効果にすることによ
つて効率的なポンプ効果を発揮できる。

〔実施例〕

以下、本発明の一実施例を第１図及び第２図により説明
する。図において、横軸回転機の回転主軸１は上下２分
割のすべり軸受２によつて支承されており、該すべり軸
受２は軸受フレーム３を介して軸受箱４内に設置され、
該軸受２の下部が浸る程度の潤滑油５が収蔵されてい
る。また、該軸受箱４の左右側壁部にはラビリンス型シ
ール６が設けられ潤滑油の逃散を防止している。

さらに、該軸受２の側端近傍にジヤーナル部より大径に
なるオイルデイスク７が該回転主軸１に固定され共に回
転する。該オイルデイスク７の外周部には粘性ポンプを
構成するポンプケース８、側端面にはサイドカバー９が
それぞれ所定の間隙をもつて対向配置されており、油面
（Ａ）は静止時該軸受２のジヤーナル部より必ず下部
に、かつ該オイルデイスク７の下底部を浸漬して設定さ
れる。

また、該ポンプケース８の内周ランド10面には図３に示
すようにポンプ室11を下端から上端まで周方向にほぼ半
周に亘り左右対称形に開口し、該ポンプ室11の下端部に
は潤滑油中に連通する油吸込口12が設けられ、上端部に
は上部タンク19内に吐出管18を介して潤滑油を送りこむ
油吐出口13が設けられているが、該吸込口12の端部には
吸込口径より大となる円弧溝14の軸方向に亘つて形成さ
れている。

また、該サイドカバー９においては該ポンプケース８の
両側端面にネジ等で一体に固定されるが、その内側の該
オイルデイスク７の側端面に対向する接面部に円周状の
シール溝15を設け、かつ該シール溝15の下部に油導入口
16を、上部には該ポンプケース８の終端段付部に対応す
る位置にストツパー17が設けられている。

一方、該軸受箱４の下半部は潤滑油を収蔵する油槽4aで
あり、該ポンプケース８の下部にはオイルガイド20が配
置固定され、かつ該油吸込口12に接続される吸込管21に
対応する位置には軸方向に楕円形状の貫通口22が該吸込
管21の外径より大に開口されて遊嵌挿入されるため、回
転防止と共にスラスト力による軸方向の移動を拘束しな
い構造となつている。

上記の構造において、回転主軸１が回転することによつ
て該オイルデイスク７の外周面と該ポンプケース８の内
周面との間で相対すべり運動を生じ、粘度の高い潤滑油
はその粘性摩擦によつて該ポンプ室11内に、該吸込管2
1、吸込口12を経て吸い込まれ、吐出口13、吐出管18を
介して該上部タンク内に吐出するポンプ作用が行われ
る。即ち、該デイスク７が第３図に示す如く矢印の方向
に回転することにより該ポンプ室11内で潤滑油は矢印ａ
の如く上方に誘導されポンプ室11の終端部と該内径ラン
ド10との段付部によるせき止め効果によつて昇圧し、こ
の昇圧された流体は矢印ｂの如く該吐出口13、吐出管1
8、上部タンク19、潤滑導入口23を経て該軸受２に給油
される。

ところで、該ポンプケース８は該デイスク７に懸架され
るため、静止時は上部で接触、下部は隙間が大の状態で
あるが、回転と共に上部ランド10a部に油膜が形成され
該ポンプケース８は浮遊状態を呈する。したがつて、第
４に示す如く、運転中は該デイスク７と該ポンプケース
８内のポンプ室13は一点鎖線で示す如く下部ランド10b
と接するような状態となつても該吸込口12の上端部には
円弧溝14が設けられ、この溝内も油が充満しており、最
大限接近しても、吸込流路をしや断することなく円滑な
通通を保持することができる。

一方、第2,第３図に示す如く該サイドカバー９下部の導
入口16からも矢印（Ｃ）の如くポンプ作用によつて潤滑
油を吸込み円周状のシール溝15内を流動し、上方へ誘導
されるが上部のストツパー17でせき止められ昇圧する。
この昇圧された潤滑油は圧力差によりポンプ室13内に混
入するか、矢印（ｄ）の如く大気中に排出される。この
ように、該シール溝15内は常に昇圧された油膜が形成さ
れ、該デイスクの端面からの空気の混入とポンプ室13か
らの横漏れを防止することができる。第５図は円弧溝14
とポンプケース８の両端にシール溝15を形成した場合と
従来方式とのポンプ性能を比較した図で約30％の性能向
上を図れることが実験的に判明している。

しかも、該ポンプケース８は可動自在に保持されるため
運転中のモーメント荷重あるいはポンプ室内に発生する
昇圧力等の作用をうけるほか気泡の混入によつては振動
が大となり、局部的な接触あるいは軸方向に一方的に傾
く状態が続くとポンプ機能を損う場合もあるが、上記の
様に該オイルデイスク７の両側端部にシール機能を付与
したことによつて、双方は、気泡の混入が皆無となり流
体潤滑膜で負荷される。

したがつて、該ポンプケース８は該デイスク７の動作に
追随し、正常なポンプ作用を維持することができるた
め、機器の信頼性の向上を図れる。

〔発明の効果〕

以上記述したように、本発明の横軸回転機の軸受給油装
置は、吸込口端部の形状効果とデイスク側端面に圧力膜
を形成しシール効果の向上を図ることができるので、粘
性ポンプの機能を損なうことなく、低速域から高速域ま
で効率的なポンプ効果によつて適正な潤滑油を軸受部に
給油でき信頼性を向上できる効果を有するものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示す断面図、第２図は本発
明による粘性ポンプの断面図、第３図は第２図に示す粘
性ポンプケースの斜視図、第４図は本発明の粘性ポンプ
の部分動作図、第５図はポンプ性能比較図。 １……回転主軸、２……軸受、４……軸受箱、７……オ
イルデイスク、８……ポンプケース、９……サイドカバ
ー、10……内径ランド、11……ポンプ室、12……吸込
口、13……吐出口、14……円弧溝、15……シール溝、16
……導入口、17……ストツパー、22……貫通口。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川池 和彦 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社日 立製作所機械研究所内 (72)発明者 山本 祐司 茨城県日立市幸町３丁目１番１号 株式会 社日立製作所日立工場内 (72)発明者 今井 宏人 茨城県日立市会瀬町２丁目９番１号 日立 サービスエンジニアリング株式会社内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】横軸回転機の回転主軸を支承する軸受を内
   蔵し、該軸受下部が浸漬されるように潤滑油が収蔵され
   上、下半部に分割されている軸受箱と、該主軸に固定さ
   れたオイルデイスク外周を所定の間隙を介在し内周面に
   遊嵌し、該遊嵌面にポンプ室を下端から上端まで周方向
   にほぼ半周に亘り形成し、その上端に吐出口を有し下端
   に吸込口を開口すると共に、該吸込口を常時油面下にな
   るように構成されたポンプケースを具備した粘性ポンプ
   によつて潤滑油の循環を行う給油手段を有する軸受装置
   において、該吸込口の上端部に吸込口径より大なる円弧
   溝を軸方向に亘つて形成し、かつ該ポンプケースの両端
   面に接する側の外周部付近に円周状のシール溝を形成
   し、該シール溝の下部の油面下に油導入口を開口すると
   共に上部に該シール溝をせき止める油断壁を設けたこと
   を特徴とする横軸回転機の軸受装置。