JPH0763742A - 燐酸イオン含有溶液中の陰イオンを分析する方法およびその装置 - Google Patents

燐酸イオン含有溶液中の陰イオンを分析する方法およびその装置

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JPH0763742A
JPH0763742A JP5215627A JP21562793A JPH0763742A JP H0763742 A JPH0763742 A JP H0763742A JP 5215627 A JP5215627 A JP 5215627A JP 21562793 A JP21562793 A JP 21562793A JP H0763742 A JPH0763742 A JP H0763742A
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Yoshiyuki Nakamoto
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Abstract

(57)【要約】 【目的】燐酸イオン含有溶液中の、陰イオン不純物分
析、特に半導体製造等に使用される高純度燐酸溶液中の
微量陰イオン不純物をイオンクロマトグラフィ−法によ
って選択的かつ高感度に分析するための方法及び装置を
提供する。 【構成】燐酸イオン含有溶液を、2価以上の陽イオンを
含有する陽イオン交換樹脂を充填した前処理カラムに通
液し、該溶液中の燐酸イオン成分を該樹脂に吸着させた
後、溶出液を搬送液にて該前処理カラム下流側に設けた
均一試料導入バルブの試料計量ル−プに導き、次いで該
試料計量ル−プ内の溶出液をイオンクロマトグラフ装置
に導入することを特徴とする、燐酸イオン含有溶液中の
陰イオンを分析する方法等により、前記目的を実現す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特定された陽イオン交
換樹脂を充填した前処理カラムを使用して、燐酸イオン
含有溶液中の陰イオン分析を、イオンクロマトグラフ装
置によって分析する方法、及びその装置に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】ICやLSIなどの高性能半導体製造技
術の向上にともない、使用する薬品は高純度品が要求さ
れている。燐酸溶液もICやLSIの表面処理剤として
使用されているが、燐酸溶液中の微量陰イオン不純物
は、半導体製造装置の汚染及び装置の劣化の原因とな
り、IC電気特性を悪化させる。
【0003】そのために、燐酸溶液中の陰イオン不純物
を高感度で測定することが必要で、この燐酸溶液中の陰
イオンを分析する従来方法としては、ハロゲンイオンを
対象としたチオシアン酸第二水銀試薬を用いる比色法
や、硫酸イオンを対象とした塩化バリウム試薬を用いる
硫酸バリウム沈澱重量法等の化学分析法、また、機器分
析法であるイオンクロマトグラフィー分析法がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】化学分析法は、主成分
である燐酸成分が陰イオン測定の際の化学分析に対して
妨害を与え、検出感度も低いなどの課題がある。一方、
イオンクロマトグラフィー分析法は、多くの陰イオンに
対して非選択的に高感度であるために、分析用カラムに
よって主成分である燐酸イオンと隣接して分離溶出され
る微量陰イオンの検出は、不可能である。
【0005】このような方法の課題を解決する手段とし
て、試料を純水によって希釈し、燐酸濃度を低くする事
によって燐酸成分の妨害の影響を小さくする方法も用い
られているが、希釈によって、微量な陰イオン不純物の
濃度も低下し、検出感度が低くなってしまう。このよう
に、従来法では、高純度燐酸溶液中の微量陰イオンを分
析する事は困難である。
【0006】従って本発明は、溶剤抽出法による燐酸精
製工場からの廃液、スケール形成防止や防食目的で添加
された燐酸ナトリウムなどを含むボイラー用水等の燐酸
イオン含有溶液中の、陰イオン不純物分析にも適用可能
で、特に従来法では困難であった半導体製造等に使用さ
れる高純度燐酸溶液中の微量陰イオン不純物、等をイオ
ンクロマトグラフィー法によって選択的にかつ高感度に
分析できる、方法及びその装置の提供を目的としてなさ
れたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、2価以上の
陽イオンを有する陽イオン交換樹脂が燐酸イオンと接触
して、難溶性燐酸塩を選択的に吸着することを見い出
し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち本発明は、燐酸イオン含有溶液
を、2価以上の陽イオンを有する陽イオン交換樹脂を充
填した前処理カラムに通液し、該燐酸イオン含有溶液中
の燐酸イオン成分を該樹脂に吸着させた後、溶出液を搬
送液にて該前処理カラムの下流側に設けた均一試料導入
バルブの試料計量ループに導き、次いで該試料計量ルー
プ内の溶出液をイオンクロマトグラフ装置に導入するこ
とを特徴とする、燐酸イオン含有溶液中の陰イオンを分
析する方法である。また本発明は、搬送液供給機構と2
価以上の陽イオンを有する陽イオン交換樹脂を充填した
前処理カラムを具備する前処理部及び、該前処理部の下
流側に試料計量ループを有する均一試料導入バルブと、
イオンクロマトグラフ装置を設置してなる燐酸イオン含
有溶液中の陰イオンを分析する装置である。以下本発明
を詳細に説明する。
【0009】燐酸イオン含有溶液としては、たとえば硝
酸、硫酸、ハロゲンなどの他の陰イオンが混在するもの
を挙げることができる。本発明によれば、燐酸イオン濃
度に格別の制限はなく、ごく低濃度から高濃度まで、た
とえば燐酸濃度0. 01g/lから100g/lまでの
広範囲のものを対象試料とする事が出来るが、あまりに
高濃度燐酸溶液になると、2価陽イオンが陽イオン交換
樹脂より脱離して、溶液中に燐酸塩の沈澱が発生し前処
理カラム内の圧力上昇が生じるために、燐酸濃度は15
0g/l以下が望ましい。
【0010】本発明において、前処理カラムに充填する
陽イオン交換樹脂としては2価以上の陽イオンを有する
陽イオン交換樹脂が必須である。2価以上の陽イオン
(以下Feイオン等といい、Feイオン等を有する陽イ
オン交換樹脂をFe等型陽イオン交換樹脂という)とし
ては、格別の制限はなく、例えば、Fe、Cr、Bi、
Al、Ba、Ca、Ti、Y、Zr、Cu、Zn、N
i、Mg、Pb等のイオンを挙げることができるが、吸
着容量、環境問題などの点からFe3+、ついでAlが好
ましい。
【0011】Fe等型陽イオン交換樹脂は、例えば、市
販のH型、Na型などの陽イオン交換樹脂を、陽イオン
交換樹脂の総交換容量の数倍のFeイオン等が存在す
る、例えば塩化鉄、塩化カルシウム、硫酸アルミニウム
等の水溶液、硫酸ジルコニウムの硫酸酸性水溶液、硝酸
イットリウムの硝酸酸性水溶液などと数分間接触させ、
純水で洗浄する事によって調製することができる。
【0012】Fe等型陽イオン交換樹脂としては、ゲル
型及び多孔性型のいずれを使用しても良い。ゲル型陽イ
オン交換樹脂の場合は、架橋剤のジビニルベンゼン(以
下DVBというが、本明細書において、DVBの含有量
は、陽イオン交換樹脂の骨格の共重合体に対する割合を
いう。例えば、DVBとスチレンとの共重合体にスルホ
ン酸基が結合したものにおいては、(DVB/(DVB
+スチレン))×100である)2〜9重量%、とくに
4〜8重量%のものが良く、一方、多孔性型陽イオン交
換樹脂の場合は、最高細孔容積における細孔の細孔半径
80nm以下のものが良い。ゲル型陽イオン交換樹脂に
おいては、DVBの含有量が少なすぎると、機械的強度
に劣るだけでなく、一般にイオン交換容量が低下しそれ
にともなって燐酸イオン吸着容量も低下する。反対にD
VBの含有量が多すぎるとイオン交換容量が高くても燐
酸吸着容量が低下し、とくに10重量%以上でその低下
が著しいからである。また、多孔性陽イオン交換樹脂に
おいては、最高細孔容積の細孔の細孔半径が80nmを
こえると、燐酸イオンとその他の陰イオン成分との選択
分離率が低下するからである。それらの理由はさだかで
はないが、ゲル型陽イオン交換樹脂ではDVB含有量
が、また、多孔性型陽イオン交換樹脂では最高細孔容積
の細孔の細孔半径が燐酸と他の陰イオンとを通すための
なんらかの意味でのフルイの役目を果たすことによるも
のと考えられる。
【0013】Fe等型陽イオン交換樹脂におけるイオン
交換基としては、スルホン酸基が好ましい。スルホン酸
基は、カルボン酸基などに比べ、低pHでFeイオン等
を陽イオン交換樹脂から脱離させにくく、また、硫酸エ
ステル基などにくらべてイオン交換容量が高いからであ
る。
【0014】陽イオン交換樹脂は、塩酸、硝酸又は硫酸
等の酸性水溶液と接触させることで吸着した燐酸イオン
を溶出させ、再生、再利用する事も出来る。酸性水溶液
は燐酸イオンだけでなくFeイオン等も溶離するので、
陽イオン交換樹脂を燐酸イオンの吸着に再使用するに
は、その前にFeイオン等含有水溶液によってイオン交
換処理をする必要がある。
【0015】燐酸イオンの吸着機構を求めるため、本発
明者が十分な量の各種濃度の燐酸をFe3+型陽イオン交
換樹脂と接触させたところ、燐酸濃度がある値以下では
Fe3+は樹脂から脱離せず、その濃度を越えるとそれは
脱離するが、Fe3+が樹脂から脱離しない範囲で燐酸濃
度のもっとも高い場合に樹脂に吸着されたPO4 とFe
とのモル比は2であることが知見された。この事実か
ら、例えば、Fe型等陽イオン交換樹脂としてFe型ス
ルホン酸型陽イオン交換樹脂を使用して燐酸を処理する
場合の燐酸イオンの吸着の機構は、燐酸濃度が低いとき
は、−(SO3 - 3 Fe3++H3 PO4 →−(SO3
- 2 Fe3+[H2 PO4 - +−SO3 - + 、又
は、−SO3 - Fe3+[H2 PO4 2-+2−(SO3
- + )であり、燐酸濃度が高いときは、−(S
3 - 3 Fe3++2H3 PO4 →−(SO3 - 2
3+・2[H2 PO4 - +2(−SO3 - + )の式
で表されるものと推定できる。
【0016】このように、2価以上の陽イオンが燐酸イ
オンの吸着に関与し、しかも燐酸イオンの吸着によっ
て、フリ−のイオン交換基(−SO3 - + )が新たに
出来ることから、Na3 PO4 溶液のように1価の陽イ
オンNa+ を多量に含有した溶液の場合、Na+ とPO
4 3-が同時吸着でき、処理液がより純水に近づくため、
イオンクロマトグラム装置の前処理方法として有効であ
る。
【0017】また、燐酸含有溶液に2価以上の陽イオン
を溶存させたものを供試液として使用すると、燐酸吸着
容量が1.5〜3倍になり多量の燐酸供試液の処理が可
能となる。ただ塩化第二鉄(FeCl3 )を添加した場
合、供試液がCl- イオンによって汚染され、添加し過
ぎるとイオンクロマトグラフィ−分析が困難になり、燐
酸イオンの吸着除去速度もFe型陽イオン交換樹脂に通
液するのに比較し遅くなる。
【0018】このCl- イオンの汚染と吸着処理速度の
低下を防いで、より多くの燐酸供試液を処理する場合
は、鉄型陽イオン交換樹脂で燐酸溶液を処理後、分析を
行い、次に、フリ−となったイオン交換樹脂を鉄溶液で
再び鉄型陽イオン交換樹脂としカラムをよく洗浄後、燐
酸溶液を再び処理し分析を行うと、Cl- イオン等の影
響もなく、良好に陰イオン分析が実施できる。
【0019】以下、本発明の装置の一例について、図1
に基づき説明する。図中符号1は前処理部、図中符号1
8はイオンクロマトグラフ装置部で、この二つを、均一
試料導入バルブ10で結合している。
【0020】前処理部1は、特定された陽イオン交換樹
脂を充填した前処理カラム8の一端に、試料注入バルブ
7を介して試料とカラム溶出液を搬送することによっ
て、一定で均一組成となった溶出液部分のみを試料計量
ループ11に満たす役目を行う搬送液槽2、Fe等型陽
イオン交換樹脂への調整用のFeイオン等含有溶液槽
3、及びH型陽イオン交換樹脂への再生に使用する再生
用の酸性液槽4に切り替え可能な前処理カラム制御液槽
の流路切り換えバルブ5と前処理用のポンプ6を接続し
て構成され、また前処理カラム8からの溶出液は均一試
料導入バルブ10に接続されている。均一試料導入バル
ブ10は第1流路と第2流路の切り替えを可能とする6
方切り替えバルブで前処理部1からドレイン9、及び分
析用の溶離液槽12、試料計量ループ11、イオンを分
離するイオン分析用カラム16、電気伝導度検出器17
に流入させる第1の流路(図中細線)と、前処理部1か
らの検体を試料計量ループ11を介してドレイン9、及
び分析用の溶離液槽12からイオン分析用カラム16に
接続する第2の流路(図中太線)を構成するように配管
されている。
【0021】また微粒子の陽イオン交換樹脂懸濁液槽1
3は、分析用溶離液中の陽イオンをイオン交換除去し分
析用の溶離液中の電気伝導度を下げ電気伝導度検出器1
7の高感度化を行う溶液で、微粒子の陽イオン交換樹脂
を界面活性剤で液中に懸濁させたものである。その他は
分析溶離液用のポンプ14、微粒子の陽イオン交換樹脂
懸濁液用のポンプ15で構成されている。
【0022】この一連の動作は、均一試料導入バルブ1
0により図中太線の状態に流路を形成して前処理部1の
前処理カラム8を、前処理カラム制御液槽の流路切り換
えバルブ5でカラム溶出液の搬送に使用する搬送液槽2
に切り替え、前処理用のポンプ6で搬送液を送液し系内
を搬送液で置換した後、前処理用のポンプ6を止めて、
試料注入バルブ7から供試液を注入する。注入が終了
後、搬送液槽2より搬送液を前処理用のポンプ6で一定
流量にて送液を開始し前処理カラム8で検体中のリン酸
分の吸着除去を継続させながら溶出液を下流側に搬送
し、該前処理カラム8の下流側に設けられた試料計量ル
ープ11内の溶出液組成が一定の均一組成の溶出液で満
たされたときに、均一試料導入バルブ10を細線状態に
バルブの切り換えを行い、試料計量ループ11内の溶出
液をイオン分析用カラム16に分析溶離液用のポンプ1
4で導入し、陰イオン成分を分離し、分離された陰イオ
ン成分を電気伝導度検出器17で検出する。
【0023】これと併行して前処理カラム8に燐酸塩化
合物として吸着されているリン酸分は、再生用の酸性液
槽4を前処理用のポンプ6で送液しリン酸塩を陽イオン
交換樹脂より溶解脱離させドレイン9より排出し、H型
陽イオン交換樹脂とした後に、前処理カラム制御液槽の
流路切り換えバルブ5でFeイオン等含有溶液槽3に切
り換え前処理用のポンプ6で送液し前処理カラム8を鉄
等型陽イオン交換樹脂としてから、前処理カラム制御液
槽の流路切り換えバルブ5で搬送液槽2に切り換え、搬
送液で前処理カラム8を洗浄して次の分析に備える。
【0024】本法では、前処理カラム調整に使用する溶
液に含有される陰イオン成分を、分析対象陰イオン成分
とは違った種類の溶液を使用すると、カラムの洗浄を完
全に行わなくても分析対象陰イオンの汚染という影響が
出にくくなるので、前処理カラム8の洗浄がより容易と
なる。
【0025】もちろん使用し得るイオンクロマトグラフ
ィー分析法はサプレッサー方式又はノンサプレッサー方
式等、特に限定するものではない。また検出器として
は、微量なClイオン等を検出できるものであれば特に
限定するものではないが、電気伝導度検出器や紫外線検
出器が好ましく、またそれらを直列に設置することも可
能である。
【0026】本法で使用する搬送液供給機構は、図1の
ように、搬送液を前処理用のポンプ6で送液する事に限
定されない。1例として、試料注入バルブ7から供試液
を大量に注入して、この供試液でカラム溶出液を試料計
量ループ11まで搬送する事もでき、また、この搬送液
の送液速度を遅くして、前処理カラム8での燐酸分の吸
着除去効果を上げたり、系内での搬送による拡散を小さ
くして、試料計量ループ11への均一組成の溶出液の搬
送を容易にする事等も、任意に出来る。
【0027】本搬送液供給機構で肝心なことは、いかに
してカラム溶出液の一定で均一組成となった部分を、試
料計量ループ11に満たすかであり、前処理部1は、試
料注入バルブ7と前処理カラム8のみでも構成でき、た
とえば、注射器に試料を取り試料注入バルブ7よりゆっ
くり前処理カラム8へ試料を注入し、カラム溶出液を試
料計量ループ11に手動で圧送することも出来る。
【0028】搬送液としては、通常のイオンクロマトグ
ラフィ−分析に使用されている溶離液、例えば1〜10
mM NaHCO3 、1〜10mM Na2 CO3 、1
〜10mM KOH、1〜50mMホウ酸、1〜10m
M有機酸、1〜5mM HNO3 、1〜5mMアミン等
の溶液は希薄で、溶出力は弱いが、それに比べ陽イオン
交換樹脂と燐酸イオンの吸着力は強いため、これらの溶
離液を搬送液として使用しても何の化学反応も起こら
ず、いずれも本発明に使用できる。
【0029】また有機溶剤を含有するものも使用できる
が、系内の汚染等を考えると、搬送液としては純粋が好
ましい。
【0030】本発明によれば、燐酸イオン含有溶液は、
水溶液に限定されずに、たとえば陰イオンクロマトグラ
フ装置の溶離液として使用されることもあるアセトニト
リル等の有機溶剤を含有した燐酸溶液も、本法の試料と
して直接適用でき、搬送液槽2は、試料がアセトニトリ
ル含有水溶液であれば、搬送液もアセトニトリル水溶液
を使用するというように、任意に選択が出来る。
【0031】本法は適用し得る試料が、水溶液だけでな
く有機溶媒含有溶液まで適用できるというように適用試
料が幅広く、しかも、高純度燐酸溶液中の陰イオン不純
物をも、高感度に容易に分析できるという特徴を有す
る。
【0032】
【発明の効果】本発明によれば、陽イオン交換樹脂を用
いて、広い濃度範囲の燐酸含有溶液中の陰イオンを分析
する事が出来る。
【0033】したがって、本発明は、燐酸精製工場から
の廃液中の陰イオン分析装置や、IC関連の高純度燐酸
イオン含有溶液中の微量陰イオンの分析装置として、適
用する事が出来る。
【0034】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明
するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるもの
ではない。
【0035】 実施例1 高純度燐酸試薬中のCl- とSO4 2-の分析 市販のカラム(TSK guard column IC-C 、東ソー(株)
製、多孔性型陽イオン交換樹脂カラム、4. 6mmID
×50mm、スルホン酸基含有、最高細孔容積における
細孔半径10nm、イオン交換容量4. 2μeq/m
l)を前処理カラム8とし、図1に示した装置で市販の
MERCK社製、99%高純度燐酸試薬(MERCK
製)中のCl- とSO4 2-の分析を実施した。
【0036】燐酸試薬を純水に溶解し100g/lH3
PO4 水溶液をつくり、これとイオンクロマトグラフィ
ー用標準液のNaCl水溶液及びNa2 SO4 水溶液を
用いて、(a)Cl- とSO4 2-の無添加溶液、(b)
Cl- とSO4 2-をそれぞれ1mg/l添加した溶液、
(c)Cl- とSO4 2-をそれぞれ2mg/l添加した
溶液の3種類を調製し、分析に供した。
【0037】一連の動作は、均一試料導入バルブ10に
より図中太線の状態に流路を形成して前処理部1のFe
型陽イオン交換樹脂とした前処理カラム8を、前処理カ
ラム制御液槽の流路切り換えバルブ5で純水を使用した
搬送液槽2に切り替え、前処理用のポンプ6で純水を2
ml/minで送液し系内を水置換した後、前処理用の
ポンプ6を止めて、試料注入バルブ7から試料1mlを
注入した。注入の終了後、搬送液槽2より純水を搬送液
として前処理用のポンプ6で一定流量0. 3ml/mi
nにて送液を開始し前処理カラム8で試料中のリン酸分
の吸着徐去を継続させながら溶出液を下流側に搬送し、
該前処理カラム8の下流側に設けられた試料計量ループ
11内の溶出液が均一組成で満たされたとき(搬送液の
送液を開始して3分後)に、均一試料導入バルブ10を
細線状態にバルブの切り換えを行い、試料計量ループ1
1内の溶出液100μlをイオン分析用カラム16に分
析溶離液用のポンプ14で導入し、陰イオン成分を分離
し、分離された陰イオン成分を電気伝導度検出器17で
検出した。
【0038】これと併行して前処理カラム8に燐酸鉄化
合物として吸着されているリン酸分は、再生用の2M−
HNO3 液槽4から2ml/min、10分間にて前処
理用のポンプ6で送液しリン酸鉄を溶解脱離させドレイ
ン9より排出し、H型陽イオン交換樹脂とした後に、前
処理カラム制御液槽の流路切り換えバルブ5で50g/
l硝酸第二鉄溶液槽3に切り換え前処理用のポンプ6で
2ml/min、10分間で前処理カラム8をFe型陽
イオン交換樹脂としてから、前処理カラム制御液槽の流
路切り換えバルブ5で搬送液槽2に切り換え、搬送液で
ある純水で前処理カラム8を2ml/min,15分間
水洗して次の分析に備えた。
【0039】なお分析用の溶離液槽12は1.5mM
NaHCO3 /1.5mM Na2 C3 を分析溶離液用
のポンプ14で、また電気伝導度検出器17の高感度化
を行う微粒子の陽イオン交換樹脂懸濁液槽13は陽イオ
ン交換樹脂懸濁液用のポンプ15で、ともに1.0ml
/minの流量にて送液し、またイオン分析用カラム1
6は市販のカラム(TSK IC-Anion-PW 、東ソー(株)
製、新水性ポリマーゲル、交換容量30μeq/ml、
4. 6mmID×50mm、粒径10μm)を用いた。
【0040】結果を図2に、(a)Cl- とSO4 2-
添加、(b)Cl- とSO4 2-1mg/l添加、(c)
Cl- とSO4 2-2mg/l添加の3種のクロマトグラ
ムとして示す。また分析値を表1に示す。
【0041】これらから、高純度燐酸溶液中のCl-
オン、SO4 2-イオンが燐酸成分の妨害を受けることな
く、良好に分離定量されており、市販の99%高純度燐
酸中のCl- は0. 1mg/Kg未満、SO4 2-は1.
4mg/Kgが、含有されている事がわかる。なお、図
2の(a)(b)(c)のクロマトグラムで、Cl-
SO4 2-と共にNO3 - イオンが検出されているが、こ
れは前処理カラム調製液に2M硝酸溶液や50g/l硝
酸第二鉄溶液を使用したために、僅かにNO3 - イオン
が系内に残存しており、それが出現したものであるが、
分析対象陰イオンとは違った陰イオン種であるために、
Cl- とSO4 2-の分析には何ら支障は発生しなかっ
た。
【0042】
【表1】
【0043】 実施例2 供試液が10g/lH3 PO4 水溶液の場合 実施例1の高純度燐酸試薬並びイオンクロマトグラフィ
ー用標準液のNaCl水溶液及びNa2 SO4 水溶液を
用いて、0.01mg/l未満のCl- と0.05mg
/l未満のSO4 2-を含む10g/lH3 PO4 の燐酸
含有水溶液、1.0mg/lのCl- と1.0mg/l
のSO4 2-を含む10g/lH3 PO4の燐酸含有水溶
液、及び、2.0mg/lのCl- と2.0mg/lの
SO4 2-を含む10g/lH3 PO4 の燐酸含有水溶液
を調製し、実施例1と同一条件下で水溶液中のCl-
SO4 2-の分析を行った。結果を表2に示す。
【0044】表2から、供試液が10g/l H3 PO
4 水溶液の場合も、燐酸イオンのみが選択的に吸着除去
され、Cl- とSO4 2-はほとんど吸着ロスがないこと
がわかる。なお、2mg/mlのCl- とSO4 2-を添
加した供試液の5回の繰り返し再現性は、標準偏差5%
であった。
【0045】
【表2】
【0046】 実施例3 供試液が1g/l H3 PO4 水溶液の場合 実施例1の高純度燐酸試薬並びイオンクロマトグラフィ
ー用標準液のNaCl水溶液及びNa2 SO4 水溶液を
用いて、0.01mg/l未満のCl- と0.05mg
/l未満のSO4 2-を含む1g/lH3 PO4 の燐酸含
有水溶液、1.0mg/lのCl- と1.0mg/lの
SO4 2-を含む1g/lH3 PO4 の燐酸含有水溶液、
及び、2.0mg/lのCl- と2.0mg/lのSO
4 2-を含む1g/lH3 PO4 の燐酸含有水溶液を調製
し、実施例1と同一条件下で水溶液中のCl- とSO4
2-の分析を行った。結果を表3に示す。
【0047】表3から、低濃度燐酸水溶液の例で供試液
が1g/l H3 PO4 水溶液の場合も、実施例1、2
の高濃度燐酸水溶液の場合と同様に、燐酸イオンの選択
的吸着とCl- とSO4 2-分析の繰り返し再現性は良好
であった。
【0048】
【表3】
【0049】実施例4 供試液がNa+ と有機溶剤含有
燐酸水溶液の場合 実施例1の高純度燐酸試薬、試薬特級の水酸化ナトリウ
ム並びイオンクロマトグラフィー用標準液のNaCl水
溶液及びNa2 SO4 水溶液を用いて、500mg/l
NaOH、1000mg/lH3 PO4 、1. 0mg/
lCl- 、1. 0mg/lSO4 2-の燐酸ナトリウム水
溶液を調製した。また、実施例1の高純度燐酸試薬、試
薬特級のブタノール並びイオンクロマトグラフィー用標
準液のNaCl水溶液及びNa2 SO4 水溶液を用い
て、500mg/lブタノール、1g/lH3 PO4
1. 0mg/lCl- 、1. 0mg/lSO4 2-の有機
溶剤含有燐酸溶液を調製した。以上の燐酸溶液を、前記
実施例1同一条件で、燐酸溶液中のCl- 、SO4 2-
分析を行った。結果を表4に示す。
【0050】表4から、多くのNa+ イオンやブタノ−
ルが供試液中に含有されていても、Na+ イオンと燐酸
イオンが吸着除去され、Na+ イオンやブタノ−ルの妨
害もなく実施例3の1g/l H3 PO4 水溶液と同様
に、良好であった。
【0051】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の構成を説明するための図。
【図2】実施例1で得られたクロマトグラムを示す図。
図中(a)はCl- とSO4 2-を無添加の場合、(b)
はCl- とSO4 2-をそれぞれ1.0mg/l添加した
場合、(c)はCl- とSO4 2-をそれぞれ2.0mg
/l添加した場合について示す。
【符号の説明】
1.前処理部 2.搬送液槽 3.Feイオン等含有溶液槽 4.再生用の酸性液槽 5.前処理カラム制御液槽の流路切り換えバルブ 6.前処理用のポンプ 7.試料注入バルブ 8.前処理カラム 9.ドレイン 10.均一試料導入バルブ 11.試料計量ループ 12.分析用の溶離液槽 13.微粒子の陽イオン交換樹脂懸濁液槽 14.分析溶離液用のポンプ 15.陽イオン交換樹脂懸濁液用のポンプ 16.イオン分析用カラム 17.電気伝導度検出器 18.イオンクロマトグラム装置部

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燐酸イオン含有溶液を、2価以上の陽イ
    オンを有する陽イオン交換樹脂を充填した前処理カラム
    に通液し、該燐酸イオン含有溶液中の燐酸イオン成分を
    該樹脂に吸着させた後、溶出液を搬送液にて該前処理カ
    ラムの下流側に設けた均一試料導入バルブの試料計量ル
    ープに導き、次いで該試料計量ループ内の溶出液をイオ
    ンクロマトグラフ装置に導入することを特徴とする、燐
    酸イオン含有溶液中の陰イオンを分析する方法。
  2. 【請求項2】 2価以上の陽イオンを有する陽イオン交
    換樹脂が、ジビニルベンゼン2重量%から9重量%のゲ
    ル型陽イオン交換樹脂である、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 2価以上の陽イオンを有する陽イオン交
    換樹脂が、最高細孔容積における細孔半径が80nm以
    下の多孔性型陽イオン交換樹脂である、請求項1記載の
    方法。
  4. 【請求項4】 搬送液供給機構と2価以上の陽イオンを
    有する陽イオン交換樹脂を充填した前処理カラムを具備
    する前処理部及び、該前処理部の下流側に試料計量ルー
    プを有する均一試料導入バルブと、イオンクロマトグラ
    フ装置を設置してなる燐酸イオン含有溶液中の陰イオン
    を分析する装置。
  5. 【請求項5】 2価以上の陽イオンを有する陽イオン交
    換樹脂が、ジビニルベンゼン2重量%から9重量%のゲ
    ル型陽イオン交換樹脂である、請求項4記載の装置。
  6. 【請求項6】 2価以上の陽イオンを有する陽イオン交
    換樹脂が、最高細孔容積における細孔半径が80nm以
    下の多孔性型陽イオン交換樹脂である、請求項4記載の
    装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020109382A (ja) * 2019-01-07 2020-07-16 東ソー株式会社 前処理装置
WO2020209615A1 (ko) * 2019-04-08 2020-10-15 솔브레인 주식회사 전해액 분석용 이온 교환 크로마토그래피 시스템, 전해액 내 리튬 염 정량분석방법 및 이를 이용한 전해액의 제조방법

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