JPH0757720B2 - 活性腐植系農業用素材の製造方法 - Google Patents

活性腐植系農業用素材の製造方法

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JPH0757720B2
JPH0757720B2 JP41567990A JP41567990A JPH0757720B2 JP H0757720 B2 JPH0757720 B2 JP H0757720B2 JP 41567990 A JP41567990 A JP 41567990A JP 41567990 A JP41567990 A JP 41567990A JP H0757720 B2 JPH0757720 B2 JP H0757720B2
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    • Y02W30/40Bio-organic fraction processing; Production of fertilisers from the organic fraction of waste or refuse

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、植物の育成,土壌改
良,抗菌作用,抗虫作用等を備えた活性腐植系農業用の
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から一般に用いられている農業用の
素材としては、例えば、化学肥料,農薬,除草剤等があ
るが、近年においては、これらの多用が自然破壊を惹起
せしめ、土壌における地力を低下,減退させると共に、
土壌中に棲息する微生物群のバランスが崩れて、病害虫
の発生を惹起する等、植物の生育にとって極めて環境が
劣悪化してきている。このような状況下で作物の収穫を
確保するには、さらに多量の化学肥料,農薬等を用いる
必要があり、土壌の疲弊がさらに著しくなってきてい
る。また、ゴルフ場における芝地の管理等、耕作農地以
外でも、極めて多量の化学肥料,農薬,除草剤等が投下
されて、環境破壊が著しく進行してきている。
【0003】かかる弊害のない農業用素材として、極め
て古くから用いられている肥料コンポストが見直されつ
つある。この肥料コンポストは、いうまでもなく、稲藁
その他の植物遺体や畜産廃棄物としての糞尿等からなる
有機質原料を熟成することにより得られる堆肥,厩肥等
である。これらは、その性質上、前述したような弊害は
なく、良質のコンポストは有機質物を多量に含んでいる
ことから、植物の育成に有益である。即ち、コンポスト
がある種の熟成状態に整えられたときに、植物の育成が
極めて良好となり、しかも農薬等を一切使わなくとも、
病気や害虫等が発生しないということは、古くから知ら
れている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来から広
く行われているコンポストの製造は、一般に自然熟成さ
せるものであることから、少なくとも半年から1年の熟
成を必要とし、原料によっては必要とする熟成度とする
のに2年乃至3年もの長い期間を必要とするものもあ
る。しかも、この熟成期間中に複数回の切り返しを必要
とし、製品としての水分調整を行わなければならない
等、手間がかかり、また管理も面倒である等数々の問題
点がある。また、たとえ十分な手間と管理を行い、かつ
相当の期間熟成したとしても、製品としてのコンポスト
は必ずしも品質の安定したものが生産されるわけではな
く、それれが原因で、コンポスト類の厳格な基準が設け
られるに至ってはいない。ここで、有機質原料の腐植化
を促進するために、特定の微生物を培養した種菌や微生
物の活性化を図るための触媒等も用いられるようになっ
てきてはいるが、これらによってもコンポストの品質の
向上はあまり期待できなかったのが現状である。即ち、
手間等のわりには高品質のコンポストが得られず、この
ことから、耕作農業等の分野においては、ますます化学
肥料や農薬等に頼る傾向にあり、昨今においては、全生
態系そのものが破壊されつつあるといっても過言ではな
い。
【0005】一方、畜産業界にあっては、その大規模化
に伴って、糞尿等の廃棄物が大量に排出されるようにな
ってきている。例えば養豚について見ると、近年におい
ては、1万頭以上を飼育する大規模養豚場も少なくはな
い。豚は極めて廃棄物,糞尿を大量に出すもので、1頭
の豚はほぼ10人の人間に相当する廃棄物を排出するもの
であることから、1万頭の養豚場においては、およそ10
万人の生活雑廃水処理場に匹敵する能力を持った処理施
設を必要とすることになり、この糞尿等の廃棄物処理問
題が社会的にも重大問題となってきている。また、養
鶏,肉牛生産等にも同様の問題があり、さらに生活雑廃
水の処理その他の廃棄物処理においても同様のことが言
える。
【0006】これら家畜の糞尿その他の畜産廃棄物や、
都市における生活廃棄物,排水処理汚泥等は有機質物で
あり、コンポストの有機質原料として有用に活用するこ
とが可能である。従って、この大量に排出されて、やり
場がなく、持て余されている畜産廃棄物,生活廃棄物等
を原料としてコンポストを製造し、これを農業用素材と
して耕作農業等に供給することができれば、化学肥料,
農薬等の使用を必要としないか、またはその使用を著し
く減らすことができ、前述した諸問題を一挙に解消する
ことができる。
【0007】而して、本発明の目的とするところは、農
業廃棄物,畜産廃棄物,生活廃棄物,排水処理汚泥等の
有機質物を原料として、高品質で、安定した農業用素材
を大量に、しかも効率的に生産することができるように
することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前述した目的を達成する
ために、本発明は、農業廃棄物,畜産廃棄物,生活廃棄
物,排水処理汚泥等からなる有機質原料に、活性化腐植
物と、この活性化腐植物に含まれる土壌微生物群を活性
化する触媒として、混合諸造岩鉱物,硅藻土等の硅酸塩
粉とを混合して、この原料混合物の水分含有量を約60〜
70%に調整し、この原料混合物を均一に撹拌,粉砕,曝
気して、条件嫌気性微生物群が発熱好気代謝を開始する
条件を整える仕込工程と、この原料混合物の硅酸塩粉量
による昇温系コントローラと、切り返しまたはエアレー
ションによる降温系コントローラとに基づいて50〜55℃
の温度範囲の熟成温度に保持した状態で熟成する定温熟
成工程とからなることをその特徴とするものである。
【0009】
【作用】従来技術で説明したように、有機質原料から農
業用素材としてのコンポストを生産することは古くから
行われている。しかしながら、このような古来からの製
法に基づいてコンポストを生産するのは、極めて効率が
悪く、品質も安定しないことから、工業的な規模で、高
品質のコンポストを安定的に生産することはできない。
そこで、本発明者は大量に排出される農業廃棄物,畜産
廃棄物,生活廃棄物,排水処理汚泥等の有機質物を原料
として、高品質の農業用素材の大規模生産を可能とする
技術について長年にわたって鋭意研究を行った。ここ
で、本発明者が目標とするところのものは、従来から用
いられているコンポストのように、肥料としての側面だ
けでなく、雑菌や病害虫の防除,有害金属の無害化,さ
らには残留農薬や化学肥料等の非金属系の有害物質の変
性・解毒等の作用をもった土壌改善,浄化を図ることが
できる総合的な農業用素材である。
【0010】ここで、前述したような農業用素材を開発
するには、まず土壌そのものについて研究しなければな
らない。土壌はあらゆる動植物を育み、かつすべての動
植物は死して土に帰る。動植物の遺骸その他の有機物
は、土壌中において無機物と土壌腐植とに変性される。
この腐植物質が多量に含まれている土壌が肥沃な土壌で
あり、作物等の生育が促進される。このような有機物を
腐植化に導く上で最も重要な役割を果すのは、土壌微生
物及びミネラルである。土壌微生物の有機物に対する働
きは、大きく分けると、分解と縮合である。
【0011】そこで、土壌微生物による有機物の変性の
過程を図1に示す。この図から明らかなように、有機物
のうち、セルロース,リグニン等の炭水化物は、フェノ
ール系諸化合物を経て、また蛋白質はアミノ酸,ペプチ
ド等を経て、尿素,アンモニア,空気,水等に変わる。
これと併行して生成され中間生成物が再度縮合して、最
終的に腐植物が形成される。ここで、有機物としては、
前述した動植物の遺骸等のほか、畜産廃棄物としての家
畜の糞尿や、生活雑廃水等もこの有機物である。従っ
て、これら有機物を処理して腐植質の土に変えるために
は、土壌微生物の働き、特に縮合反応による腐植生成反
応を活性化する環境を造り出せば良い。
【0012】自然の浄化作用がそうであるように、腐植
への誘導は、動植物の遺骸等を速やかに土壌有機物と良
質な水とに変え、その結果として雑菌の繁殖を抑制し、
腐敗への回路を絶つことができる。また、本来の土壌に
おいては、腐植物のキレート効果によって作物にとって
有害なイオンが除去され、有害金属や非金属有害物質等
が無害化され、さらに土壌は保水・保肥力を発揮する。
しかも、土における腐植化反応を促進させることは、過
剰な農薬等の投与によって破壊された土壌の団粒構造を
回復させるばかりでなく、土壌構成物質そのものをソフ
ト化し、土の肥沃化が達成されるのである。
【0013】本発明は、まさにこの腐植質が極度に富ん
だ農業用素材、活性腐植系農業素材の製造方法を提供し
ようとするものである。
【0014】前述したことから明らかなように、農業廃
棄物,畜産廃棄物,生活廃棄物,排水処理汚泥等を有機
質原料として、これをコンポスト化して、活性腐植系農
業用素材を大量に、しかも効率的に工業的規模で製造す
るには、土壌微生物群の活動を極限まで高めなければな
らない。
【0015】そこで、まず土壌微生物自体に着目した。
土壌中には何億種類もの土壌微生物が棲息していると推
測され、このうちのどの菌が腐植化反応に関与するのか
は明確ではない。微生物群の代謝活動を考えても、条件
によっては好気的にもなるし、嫌気的にもなる等という
ように、微生物の働きは条件等により多様に変化する。
以上のことから、本発明においては、微生物を種の群に
よる総合的な作用として捕らえ、この土壌微生物群のう
ちの特定の菌種のものを用いるようにはしない。要は、
腐植化が促進されているもの、即ち活性化腐植物から種
菌を取得する。従って、従来方法によって生産されるコ
ンポストであっても、高品位のものは種菌として使用す
ることができる。ここで、高品位コンポストは、pHが中
性乃至微弱酸性であること、大量のフェノール性物質が
含まれていること等によって判定することができる。本
発明に従って製造されたもの、特に、後述する如く、定
温熟成された高熟成度コンポストを活性化腐植物として
有機質原料に加える。とりわけ、実際の大規模生産段階
においては、本発明により製造された高熟成度コンポス
ト(即ち、末期熟成に入る前の段階のもの)を一部循環
させて活性化腐植物とするのが最も好ましく、これによ
って、農業用素材の製造と、活性化腐植物の培養とを同
時に平行して行うことができることになる。
【0016】次に、前述した活性化腐植物(及び有機質
原料)に含まれる群としての土壌微生物を活性化するた
めの触媒を用いる。ここで、このアクティベータとして
諸造岩鉱物または硅藻土等の硅酸塩粒に着目した。そも
そも、土壌はシリケートと腐植物質との混合物であり、
シリケートは造岩鉱物が分解されたものである。微生物
は各種の造岩鉱物を溶解して、これを可溶態に変える。
この造岩鉱物には、様々なミネラル成分を含み、これら
ミネラル成分が微生物に作用して、その活性化が図られ
る。従って、諸造岩鉱物または硅藻土等の硅酸塩粒を微
生物の活性化触媒、即ちアクティベータとして、また温
度調整用のコントローラとして利用することによって、
迅速な腐植化反応が実現され、この活性腐植系農業用素
材の大規模で効率的な生産を可能ならしめる。造岩鉱物
としては、風化が進んでいない新鮮で、活性なものを用
いる。
【0017】従って、本発明による農業用素材の製造方
法における出発物質としては、農業廃棄物,畜産廃棄
物,生活廃棄物,排水処理汚泥等の有機質原料と、この
有機質原料を腐植に誘導するための土壌微生物が豊富に
棲息する活性化腐植物と、微生物の活性化を図るための
アクティベータ及び熟成温度を調整するコントローラ
してのミネラル成分を含むシリケート類との混合体であ
【0018】次に、この活性腐植系農業用素材を製造す
る方法としては、仕込み工程と定温熟成工程とからな
る。仕込み工程は、有機質原料と、この有機質原料を腐
植に誘導するための土壌微生物が豊富に棲息する活性化
腐植物と、ミネラル有効成分及びシリケートを十分に混
合して、水分調整を行い、これらを撹拌、曝気、粉砕す
る工程である。仕込み工程においては、撹拌,曝気及び
粉砕を徹底して行うことが重要である。この撹拌,曝
気,粉砕は大型のマニアスプレッダを用いて少なくとも
2回以上のミキシング及びブレンディングを行う。そも
そも、微生物は酸素が大量に存在し、エネルギ源となる
生の有機物が大量に存在すれば、その代謝活動が好気的
になり、比較的低分子の炭酸ガスとアンモニア等を発生
させる。ところが、有機物の量がある程度消費され、か
つ周囲の環境が酸欠状態になると、微生物の代謝活動は
嫌気的に変化して、炭酸ガスを消費すると共に、アンモ
ニアを結合させて、炭酸水素アンモニウムを形成するこ
とになり、またセルロースやリグニン系有機物から誘導
された中間生成物であるフェノール系の化合物から縮合
反応によって腐植酸等の高分子化合物が生産される。以
上の過程は仕込み時における徹底したミキシングとブレ
ンディング及び適度のシリケート系ミネラルの添加を行
うことによって、初めて達成されるものである。この結
果、後述する熟成工程において、従来技術によるコンポ
ストの製造に欠くことのできない切り返しは全く必要と
しないか、また切り返しを行うにしても、たかだか1回
で良く、しかも大規模な切り返しを行う必要がなくなる
ので、工業的に生産する上で作業の簡素化等の見地から
好ましい。
【0019】また、定温熟成工程は、前述した混合物を
所定の堆積高さで一定の時間熟成するものである。本発
明の方法に従えば、堆積高さを約2mにして、ほぼ30日
熟成すれば、所定の品質のコンポストを生産することが
できる。ここで、最も重要なことは、熟成温度の管理で
ある。一般に、生物の生理機能として、15℃,30℃,45
℃,60℃といった温度は都合の悪い温度であり、生物学
的な生産を行うに当っては、これら都合の悪い温度の中
間温度を選択する必要があることは、知られている。従
って、選択可能な温度範囲としては、35℃〜40℃,50℃
〜55℃,65℃〜70℃である。これらのうち、35℃〜40℃
の温度範囲は人体の体温に近いものであるから必ずしも
好適であるとはいえはない。即ち、この温度範囲で熟成
すると、人体に悪い影響を与える病原菌、例えば発癌性
ウイルス等に良好な生育条件を与えるおそれがある。ま
た、65℃〜70℃では、高温醗酵,有機物の分解,好気的
代謝が進み過ぎ、歩留まりが低下すると共に、大量のア
ンモニアが発生し、pHが高くなり、製品としての品位が
低下する。従って、50℃〜55℃の温度範囲が最も好まし
い。この温度範囲では、発癌性ウイルス等の病原菌はほ
ぼ完全に死滅することになり、醗酵条件等も適切とな
る。
【0020】ここで、熟成温度は、シリケートの添加
と切り返し、及び/またはエアレーションとによってコ
ントロールすることができる。本発明者の実験によれ
ば、シリケートをある程度多くすれば熟成温度が上昇す
ることを知見した。従って、この配合比率を適宜設定す
ることによって、前述した最適の温度、即ち50℃〜55℃
に維持して熟成することができる。従って、シリケート
は温度制御用の昇温系のコントローラとして機能するこ
とにもなる。また、温度が上昇しすぎるときには、適宜
の規模での切り返しを行えばよく、またエアレーション
を行うことによっても温度が低下する。従って、この切
り返しとエアレーションとは降温系のコントローラとし
て機能する。
【0021】従来においては、切り返しは温度を上げる
目的で行っていたが、逆に温度が低下してしまうのが実
情であり、コンポスト生産における各段階の動作,作業
がどのような理論的に位置づけされるかは明確ではなか
った。本発明者はこの点を明確化し、この切り返しを降
温系のコントローラとして位置づけを行った。また、こ
の降温系コントローラとしては、エアレーションを行う
ことも有効である。一方、昇温系のコントローラとして
は、前述した如く、シリケートが用いられる。ここで、
シリケート類の添加量は全重量の0.03%〜0.05%の範囲
が最も活性を呈すること本発明者の研究の結果確かめら
れた。従って、これら昇温系,降温系のコントローラを
適宜用いることによって、前述した50℃〜55℃での定温
熟成が可能となる。ただし、これらコントローラをどの
ように用いるかは、具体的には有機質原料との関係で決
定されるもので、例えばトライアル生産を行うことによ
りその決定を行えばよい。
【0022】本発明で得られる活性腐植系農業用素材
は、肥料としての機能を果たすことは当然として、土壌
の物理的条件を改善する土壌改善機能を有し、抗菌性,
抗虫性をも合わせ有する。
【0023】肥料としての側面を見ると、原料としての
有機物中における窒素分を主体とした各種の必要養分が
非可給態の形態で存在し、このようにして存在する非可
給態の諸養分は、微生物及びその代謝産物の作用によっ
て、植物が必要とするときに、必要量だけ植物が吸収可
能な可給態に変化させる。そもそも、植物生育に必要な
あらゆる成分は、空気中、または土中に無限に蓄えられ
ていると考えられる。即ち、窒素以外のP,K等あらゆ
る要素は土壌基岩中において、おそらく何万年分も蓄え
られており、本発明の農業用素材を施用して、良好に整
えられた圃場では、土壌微生物群及びその代謝産物の働
きにより必要に応じて可給態とされて植物に吸収され
る。また、窒素分は無限に空気中に存在するわけである
から、土壌微生物群中の空中窒素固定菌が取り込んで、
植物に受け渡す役割を果す。従って、この発明による農
業用素材を有効に用いれば、永遠に肥料を与える必要が
ないといえる。さらに、この農業用素材は、構成要素と
してN,P,K等の諸要素が充分に含まれているので、
最も安全かつ有効な肥料であるとも言える。この場合に
おいても、土壌微生物群及びその代謝産物が素材中に構
成要素として含まれる諸養分を植物の必要に応じて可給
態とする働きを有する。
【0024】また、本発明の農業用素材は土壌改良,抗
菌作用,抗虫作用等機能をも有する。ここで、これら各
機能を最大限に発揮するための条件として、pHが極めて
大きな意味を持つ。pHがアルカリ性の場合には、フェノ
ールはフェノール塩として存在し、抗菌作用等は発揮し
ない。一般に、フェノー類は強い抗菌性を有するが、溶
解度は100g中に約8g(20℃)が最大であり、言うまでも
なく、この溶解度では強い殺菌性を有する。そして、こ
れに徐々に水を加えて希釈すると、通常では5%、下限
では1%まで殺菌性を有するが、それ以下になると、抗
菌性が失われる。然るに、本発明における製品において
は、前述した一般的なフェノール類が抗菌性を有する最
大希釈率よりはるかに低いフェノール類の含有量である
ので、このような低濃度では抗菌性は存在しないのが普
通である。しかしながら、フェノール類は約百億分の1
程度電離することが知られている。そこで、本発明者の
長年にわたる研究の結果得られた知見によれば、そのよ
うな状態下では、フェノール類は前述した意味とは異な
る抗菌性を呈することが認められた。いわば、これが土
壌のもつ抗菌力の本性であり、微生物群が自種を保存す
るための自己防御機能を果たす結果であると思慮され
る。別の言い方をすれば、炭酸よりも弱い酸であるフェ
ノール類が百億分の1程度電離している状態では、通常
のpH計では完全に中性の範囲内であり、総括的に言え
ば、土壌が理想的な状態にあり、抗菌力等万般の能力を
充分呈する状態は電離フェノールの存在をインジケータ
として確認し得るし、またその電離フェノールの存在領
域を確認する2次インジケータとして完全中性を確認す
ることにより認識することができる。大量のフェノール
系物質をそもそもアプリオリに含んでいる土壌及び土壌
誘導物を対象にする場合、土壌の形成過程で生成される
アンモニアさえ無くしておけば、絶対的な品質基準が中
性であることになる。このような条件が外れると、多か
れ少なかれ、キレート、微生物及びその代謝産物による
腐植化の進行、有機物の変性等の機能は損なわれる。従
って、製品としての農業用素材のpHは、その品質を決定
する上で極めて重要であり、中性乃至微弱酸性となって
いなければならない。
【0025】このpH調整を極めて厳格に行うには、定温
熟成が終了した後に、貯留を兼ねる末期熟成を行う。こ
の末期熟成は、貯留兼末期熟成場に移動させる際に、例
えばキルンコンベア等を用いて、このコンベア中で、酸
欠排気を注入曝気し、さらにこの貯留場の下面からパイ
ピングしたエアレーション装置により曝気する。これに
よって、条件的嫌気性土壌微生物による分解の結果とし
て発生する炭酸ガスとアンモニアとが結合して炭酸水素
アンモニウムとなり、この反応自体による脱水と、反応
熱とによって、自動的に乾燥が行われ、またこれと共に
pHが中性または微弱酸性に整えられる。ここで、乾燥を
行うために、みだりに熱を加えると、急速に縮合が起こ
り、逆に水分子が排出されて、水分含有率が高まり、pH
も上昇して品位が低下する。従って、この末期熟成にお
いては、50℃以下の温度で酸欠エアレーションを行い、
水分含有率が40%程度になるようにする。これによっ
て、極めてpHが中性または微弱酸性となるように厳格に
調整された、極めて高品位の農業用素材が得られる。
【0026】而して、工業的な規模での生産において
は、図2に示したような工程により実施する。即ち、同
図から明らかなように、有機質原料を仕込んで、定温熟
成工程を経て末期熟成工程に至る全体の系における定温
熟成が終了したものの一部分を種活性化腐植物として仕
込み工程に還流させる。勿論、活性化腐植物は同図に仮
想線で示したように、別途調整して添加することもでき
る。
【0027】従って、仕込み工程においては、この活性
化腐植物とアクティベータとしての諸造岩鉱物粉または
硅藻土等の硅酸塩粒を、原料に添加する。そして、この
硅酸塩の添加量によって、また必要に応じて切り返し,
エアレーションを行うことにより温度コントロールを行
う。そして、前述の活性化腐植物に加えて、またはこれ
に代えて、適宜、微生物培養液を加えたり、総合ミネラ
ル水溶液や、この微生物培養液と総合ミネラル水溶液と
の混合液を添加することもできる。なお、ここで、通常
のコンポストを製造するのと同様に、この混合原料にお
ける水分含有率を調整する必要があるが、この水分含有
率は65%程度とするのが好ましい。そして、この混合原
料を少なくとも2回以上ミキシング,ブレンディングす
る。次いで、この原料を所定の高さに堆積して定温熟成
を行う。然る後に、熟成物の一部を仕込み工程に還流さ
せた残りのものを酸欠暖排気状態にして末期熟成を行う
ことによって、最終製品とする。
【0028】本発明によって得られる農業用素材は、既
に説明したように、肥料としての機能のみならず、土壌
改善剤としての機能及び抗菌機能,抗虫機能を備えた総
合的な活性腐植系の農業用素材であり、従来から生産さ
れている肥料コンポストと比較しても極めて高い品位を
有する。そして、これを実際の圃場やゴルフ場の芝地等
に施用するに当っては、この農業用素材を単独で用いて
もよいが、前述した諸効果を最大限に発揮させるには、
この農業用素材を水に溶かして、諸造岩鉱物,硅藻土か
らなる硅酸塩粒に触れさせて、バイオリアクティングさ
せて抽出した微生物培養液を、本発明で得た農業用素材
を施用した圃場等に適宜散布すれば、この農業用素材と
しての効果が著しく発揮される。
【0029】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。ま
ず、原料として、肉牛多頭飼育における畜産廃棄物とし
ての牛糞と繊維質系牛舎敷料の混合物を用いる。この牛
糞に種活性化腐植物を10%程度添加して、原料中に含ま
れている岩石粉等も合算したシリケートの量が0.04%程
度(重量比)となるように調整して硅藻土を添加する。
そして、この原料混合物全体の水分が65%となるように
水分調整を行う。ここで、シリケートをこの比率にする
理由は、分解酵素のアクティベータとして、そのシリケ
ート量が極限値であるからである。ここで、このシリケ
ート硅藻土の添加は、動力噴霧器等を用いて行うことが
できる。この原料混合物を撹拌,曝気,粉砕処理を行
う。この処理は大型のマニアスプレッダ等を用いて、少
なくとも2回徹底したミキシング,ブレンディングを行
う。
【0030】このようにして仕込みが行われた原料混合
物は、2m以内の厚みに堆積して、定温熟成を行う。こ
の場合において、熟成温度は50℃〜55℃の範囲に保持す
る必要がある。とりわけ、内部温度が58℃以上に上昇す
ると、縮合が過剰に進行するので、製品の品質,歩留ま
り等の点で好ましくない。この温度管理は一義的には原
料に添加されるシリケートとしての硅藻土の混合比率に
より行う。ここで、シリケートは昇温系の温度コントロ
ーラとして機能するが、このシリケート分を無闇に多く
すると、分解醗酵が抑制されて温度がかえって低下する
ことになる。また、降温度系のコントローラとしては、
エアレーション及び切り返しが有効である。従って、定
温熟成場の下面にパイピングしておき、これから室温エ
アレーションを行えば温度を低下させることができる。
また、それでも温度が上昇するようであれば、切り返し
を行う。このような定温熟成を行えば、極めて早期に腐
植が進行して、約30日程度でコンポスト化されることに
なる。ただし、この状態ではなお土壌微生物は活性状態
となっている。そして、この定温熟成が終了すると、末
期熟成貯留場に移して末期調整を行うが、このときに、
土壌微生物は活性状態となっているままのものの一部を
仕込み段階に逆送使用することによって、培養サイクル
を併存させる。
【0031】末期熟成貯留場への移動は、キルンコンベ
ア等を使用し、このコンベア中に、前述した定温熟成の
初期における好気的分解により発生する炭酸ガスからな
る酸欠排気を利用して、酸欠曝気を行い、またこの排気
をエアレーション装置によって、この末期熟成貯留場の
下面に配設したパイピングに供給して酸欠エアレーショ
ンを行う。これによって、条件的嫌気性菌群の活動が嫌
気的となり、土壌微生物の働きによる炭酸水素アンモニ
ウム合成反応により、最終製品のpHは完全中性になり、
かつ水分含有率も約40%程度に低下させ、完全な高品位
の農業用素材となる。
【0032】以上のようにして農業用素材が製造される
が、従来のコンポスト製造技術によって堆肥や厩肥等か
らなる有機質肥料を製造するのに約1年以上の時間を要
していたのに対して、その1/5 〜1/10程度の極く短期間
の熟成を行うだけで、また従来方法では必須となってい
る多数回の切り返しを殆ど若しくは全く行うことなく製
造することができ、しかも高品位で、安定した品質の活
性腐植系農業用素材が得られる。従って、工業的に大規
模な生産を行うのに極めて好都合である。また、従来技
術により完全熟成に至るまで誘導したコンポストは原料
の約1/5 程度となってしまうのに比較して、歩留まりを
50%以上に留めることができる。
【0033】このようにして製造された農業用素材を用
いて、圃場試験を行った結果を図3及び図4に示す。図
3は小松菜栽培時の生育状態、図4は高麗芝栽培時の生
育状態である。これら両図において、は肥料等を施用
しない無処理状態での生育状態、は価額肥料をそれぞ
れ標準施用量用いた場合の生育状態、は本発明によっ
て製造した農業用素材を単独で用い、10a当たり1トン
施用した場合の生育状態、は本発明によって製造した
農業用素材を単独で用い、10a当たり2トン施用した場
合の生育状態、は本発明の農業用素材を10a当たり2
トン施用すると共に、総合ミネラル水溶液と微生物濃縮
液との混合溶液の希釈液を葉面に散布した場合の生育状
態である。これらの図から明らかなように、本発明によ
り製造された農業用素材を用いれば、化学肥料を施用す
る場合より生育が良好であり、またこの農業用素材と共
に総合ミネラル水溶液と微生物濃縮液との混合溶液の希
釈液を供給すれば、最も生育が良くなる。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による活性
腐植系農業用素材の製造方法は、大量に排出され、やり
場がなく、持て余されている畜産廃棄物,生活廃棄物等
を原料を有効に活用して、高品位で、しかも品質の安定
した農業用素材を工業的規模で大量生産することができ
るようになり、化学肥料や農薬等を用いることなく、ま
たはそれらの使用量を極端に少なくして、耕作農業や、
芝地等の管理が可能となり、環境浄化に資するところ極
めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】土壌微生物の関与による有機物の変性過程を示
す説明図である。
【図2】本発明による農業用素材を製造する工程の一実
施例を示すフローチャート図である。
【図3】本発明により製造された農業用素材を用いて小
松菜の生育試験を行った結果を化学肥料を用いた場合等
と比較して示す線図である。
【図4】本発明により製造された農業用素材を用いて高
麗芝の生育試験を行った結果を化学肥料を用いた場合等
と比較して示す線図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C05F 7:00 9:00)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 農業廃棄物,畜産廃棄物,生活廃棄物,
    排水処理汚泥等からなる有機質原料に、活性化腐植物
    と、この活性化腐植物に含まれる土壌微生物群を活性化
    する触媒として、混合諸造岩鉱物,硅藻土等の硅酸塩粉
    とを混合して、この原料混合物の水分含有量を約60〜70
    %に調整し、この原料混合物を均一に撹拌,粉砕,曝気
    して、条件嫌気性微生物群が発熱好気代謝を開始する
    件を整える仕込工程と、この原料混合物の硅酸塩粉量に
    よる昇温系コントローラと、切り返しまたはエアレーシ
    ョンによる降温系コントローラとに基づいて50〜55℃の
    温度範囲の熟成温度に保持した状態で熟成する定温熟成
    工程とからなる活性腐植系農業用素材の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記定温熟成工程の末期段階において、
    酸欠強制曝気することにより、前記菌群の代謝活動を強
    制的に嫌気状態にして、炭酸水素アンモニウムを形成
    し、有害アンモニアを栄養物化すると共に、弱酸性乃至
    微弱酸性に誘導する末期熟成工程としたことを特徴とす
    る請求項記載の活性腐植系農業用素材の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記定温熟成工程終了後において、なお
    土壌微生物が活性を保持している状態の活性化腐植物
    原料に還元することによって、培養サイクルを形成する
    ようにしたことを特徴とする請求項記載の活性腐植系
    農業用素材の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記末期熟成工程を経た農業用素材にミ
    ネラル成分を添加することを特徴とする請求項記載の
    活性腐植系農業用素材の製造方法。
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