JPH0754690Y2 - 金属板ガスケット - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案はエンジンのシリンダヘッ
ドガスケット等に用いられる金属板ガスケットに関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】ステンレス鋼板等の弾性金属板にシリン
ダボア、水孔、油孔等のシール部を囲繞しシールするビ
ードを設けた金属板ガスケットにおいては、弾性金属板
に形成されているビードの全てが金属板の同一面側にす
なわち同一方向に突出しているとは限らないが、少なく
ともビードの大部分が金属板の同一面側すなわち同一方
向に突出するようにビードを形成するのが通常である。
このためビードを形成した弾性金属板は大部分のビード
が突出する方向と逆向きに反る傾向がある。またこのビ
ードを設けた弾性金属板をプリセット（仮圧縮）すれ
ば、逆にビードの突出方向と同方向に反る傾向を生じ
る。

【０００３】ビードを設けた弾性金属板を単板で金属ガ
スケットとして用いるにしても、或いは副板等の他の金
属板と積層した積層金属板ガスケットとして用いるにし
ても、ビードを形成した弾性金属板が上記のように一方
の面側に反り返る傾向をもつことは、例えば位置決めノ
ックピンによる位置決めに支障を来す等、金属板ガスケ
ットの組立、取扱或いはシリンダブロック等の接合面へ
の装着における不利、不便をもたらす。

【０００４】本願の出願人は、上記の難点を解消するた
めに、シール部のシールに影響がない箇所、例えば、金
属板ガスケットに設けている水孔もしくは油孔等の透孔
の大きさがシリンダブロックおよびシリンダヘッドの冷
却水もしくは潤滑油の通路の開口部よりも小さく設けら
れているときに、これらの透孔の周りであってしかもガ
スケットがシリンダボアとシリンダヘッドとの間に装着
されたとき上記の開口部内に位置する箇所、或いはシリ
ンダブロックおよびシリンダヘッドの一方側だけに開口
部が存在する盲開口部に対応する箇所、或いは弾性金属
板に設けた面圧調整用の透孔の周囲、また積層金属板ガ
スケットの場合は中間板等に設けた面圧調整用の透孔に
対応する箇所もしくはその周囲等に、シール部をシール
するビードの大部分が突出する方向と逆向きに突出する
ダミービードを設け、シール部を囲繞しシールするビー
ドによる反り傾向をダミービードによる反り傾向によっ
て打ち消し、ビードを設けた弾性金属板の反りを解消も
しくは軽減することを平成３年１月１６日付実用新案登
録願により提案した。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】上記の提案はシール部
を囲繞しシールするビードを形成した弾性金属板の反り
を解消もしくは軽減するのに甚だ効果的であるが、金属
板ガスケットが著しくコンパクトに構成されているとき
には、弾性金属板上にダミービードを形成するに適した
場所を充分に見出せない場合がある。この場合にはダミ
ービードを形成するという手段によってシール部をシー
ルするビードによる反り傾向を解消もしくは軽減するこ
とはできない。本考案は上記の点に鑑み、シール部を囲
繞しシールするビードを形成した弾性金属板において場
所的制限を殆ど受けることなく設けることができる反り
解消手段を提案し、極めてコンパクトな設計の金属板ガ
スケットにおいてもシール部をシールするビードによる
反り傾向を解消もしくは軽減することを可能とするもの
である。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本考案のシリンダヘッド
ガスケットは、シリンダボア、水孔、油孔等のシール部
を囲繞しシールするビードを設けた弾性金属板を備えた
金属板ガスケットにおいて、上記のシール部をシールす
るビードを設けた弾性金属板に該ビードの突出方向と逆
方向に突出する小突起を該弾性金属板のほぼ全面にわた
り設けたことを特徴とするものである。

【０００７】上記において、シール部をシールするビー
ドの全てが同一方向に突出していない場合には、シール
部をシールするビードが突出する方向とは大部分のビー
ドが突出する方向を意味するものである。また、本考案
においては、シール部を囲繞しシールするビードを形成
した弾性金属板に前記したダミービードを設けることが
できる場所（シール部のシールに影響しない箇所）を見
出し得る場合には、本考案の特徴をなす点状の小突起と
共に、シール部をシールするビードの突出方向と逆方向
に突出するダミービードを設けることを排除するもので
はない。

【０００８】

【実施例】本考案の詳細を実施例により、また図面に基
づき以下に説明する。各図面において同一の符号は同一
の部分を示している。図１は本考案の実施例の金属板ガ
スケットを構成する基板の平面図の一部であり、図２は
図１のＡ−Ａ線断面図である。図において１はステンレ
ス鋼板等の弾性金属板より成り幅方向よりも長手方向に
長い基板であり、該基板は単独で単板金属ガスケットと
して用いることもできるが、図示のようなシリンダヘッ
ド用のガスケットの場合には通常は後記の図５および図
６の例におけるように、副板等と積層した積層金属ガス
ケットとして用いることが多い。

【０００９】２は上記基板１に設けられたシリンダボア
である。基板１には、油孔３、水孔４、ボルト孔５も設
けられている。６はシリンダボア２、油孔３および水孔
４等のシール部を囲繞しシールするビードである。図に
おいてはビード６は各シリンダボア２、各油孔３、各水
孔４をそれぞれ個別に囲繞しシールしているが、複数個
のシリンダボアを一括して囲繞しシールするビード或い
は複数個の水孔を一括して囲繞しシールするビードを設
けるようにしてもよい。また、図１には示していないが
シリンダボア２、油孔３および水孔４をそれぞれ囲繞し
シールするビードに加えて、これらの孔および孔を囲繞
するビード全体を囲むように基板の周縁を廻るビードを
設けることもある。これらのビード６は、その全てが同
一面側に突出するか、少なくともビードの大部分が同一
面側に突出するように設けるのが通常であり、この場合
に前記したように基板１はビードが突出する方向と逆向
きの反り、すなわち基板１の長手方向の面端側がビード
が突出する方向と逆向きに彎曲する反りを生じる。そし
てこの反りはブリセットによって方向が反転する。

【００１０】 ７は小突起で、基板１のほぼ全面にわた
り設けられており、図２に示されているようにシール部
をシールするビード６の突出方向と逆方向に突出するよ
うに設けられている。突出方向がビード６の突出方向と
逆方向であるから、前記したダミービードの場合と同様
に、小突起７の形成（ビードと同じく絞り加工もしくは
張り出し加工によって形成する）によってビード６によ
る反りと反対方向の反り傾向を生じ、小突起７がビード
６による反りを打ち消すように機能する。ビード６によ
る反りを解消もしくは軽減するためには多数個の小突起
を基板のほぼ全面にわたり設ける必要があるが、小突起
７はビードやダミービードのように線状に連続するもの
ではなく、小面積の点状で散在するものであり、シール
部のシールに対する影響が少ないものであるから、小突
起７を設ける場所についてあまり制限を受けず、ガスケ
ットが極めてコンパクトに設計されている場合でも、ビ
ード６による反りを解消もしくは軽減するのに充分な数
の小突起７を設けることが比較的容易である。上記した
ビード６の突出方向と逆方向という意味は、ビード６の
突出方向が全て同一方向でない場合においては、ビード
６の大部分の突出方向と逆方向という意味であることは
既に述べた通りである。

【００１１】点状に散在する小突起７を上面から見た形
状の例を図４の（イ）、（ロ）および（ハ）に示してい
る。図４の（イ）は細長い矩形状、（ロ）はほぼ正方形
状、（ハ）は円形の形状である。小突起の大きさは、例
えば円形の場合で直径が１〜５ｍｍ程度とするのが好ま
しい。図１では複数の点状の小突起７が線状に並んで設
けられているが、小突起７をこのように整列させずに自
由に散在させるように設けても勿論差し支えはない。小
突起の断面形状も図２に示すような放物線状の形状のほ
か円弧形、台形等の適宜な断面形状とすることができ、
更に図３の断面図に示すように小突起７は頂部に孔があ
いた孔あき突起であってもよい。

【００１２】図５は本考案の他の実施例の金属板ガスケ
ットの一部破断平面図の一部を示し、図６は該金属板ガ
スケットをエンジンのシリンダブロックとシリンダヘッ
ドとの間に装着した状態（但しボルト締結前）を図５の
Ｂ−Ｂ線による断面で示した断面図である。図において
１１はエンジンのシリンダブロックであり、１２はその
冷却水通路の開口部である。１３はシリンダヘッドであ
り、１４はその冷却水通路の開口部である。シリンダブ
ロック１１とシリンダヘッド１３との間に装着される金
属板ガスケットは、図６に示されているように、ステン
レス鋼板等の弾性金属板より成る基板１の両側にステン
レス鋼板、鉄板等の金属板より成る副板８および９を積
層して形成されている。

【００１３】基板１および副板８、９はそれぞれシリン
ダボア２、油孔３、水孔４およびボルト孔５を備え、基
板１にはシリンダボア２、油孔３もしくは水孔４をそれ
ぞれ囲繞しシールするビード６が形成されている。図５
では基板１が副板８により覆われている部分においては
基板１に形成されているビードを一重の点線で示してい
る。基板１の水孔４は流量調節のためにシリンダブロッ
ク１１およびシリンダヘッド１３の冷却水通路の開口部
１２および１４よりもかなり小さく形成されている。基
板１には、水孔４を囲繞しシールするビード６の内側
（水孔寄り側）であって、シリンダブロックとシリンダ
ヘッドとの間にガスケットが装着されたときに冷却水通
路の開口部１２および１４内に位置する箇所に、水孔４
を囲むダミービード１０をビード６が突出する方向と逆
向きの方向に突出するように形成している。

【００１４】ダミービード１０は上記した箇所に設けら
れているので、シリンダボア、油孔、水孔等のシール部
のシールには全く影響を与えない。一方、ダミービード
の突出方向はシール部をシールするビード６の突出方向
と逆方向であるから、ビード６による反りと反対方向の
反り傾向を生じさせ、ビード６による反りを打ち消す機
能を有するが、図５に示す金属板ガスケットの場合、ダ
ミービード１０を設け得る場所が少ないので、ダミービ
ード１０だけではビード６による解消もしくは軽減する
には不充分である。本実施例においては、ダミービード
１０に加えて点状に散在する多数の小突起７をダミービ
ード１０と同じくビード６の突出方向と逆方向に突出す
るように形成し、ビード６による反りを解消もしくは軽
減している。

【００１５】なお、本実施例においてはダミービード１
０を水孔４を囲むように設けているが、ダミービードは
シール機能をもつものではないから必ずしも水孔４を囲
む必要はなく、直線状のダミービードを設けるようにし
てもよい。またダミービードを設ける箇所は上記した箇
所に限られるものではなく、前記したシリンダブロック
およびシリンダヘッドの盲開口部に対応する箇所或いは
面圧調整用の透孔に対応する箇所等のシール部のシール
に影響のない箇所に設けることができる。更に上記にお
いては専らシリンダヘッドガスケットについて本考案を
説明したが、本考案の適用はシリンダヘッドガスケット
に限られるものではない。

【００１６】

【作用および考案の効果】本考案においては、シリンダ
ボア、油孔、水孔等のシール部を囲繞しシールするビー
ドを形成した弾性金属板にシール部をシールするビード
の突出方向と反対方向に突出する小突起を設けているの
で、該小突起によりシール部をシールするビードによる
反りと反対方向の反り傾向が弾性金属板に与えられ、小
突起がビードによる反りを打ち消すように機能する。し
かも点状かつ小面積の小突起はシール部のシールに対す
る影響が少なく、小突起を設ける場所についてあまり制
限を受けないから、ガスケットが極めてコンパクトに設
計されている場合でも、ビードによる反りを解消もしく
は軽減するに充分な数の小突起を設けることが比較的容
易である。従って本考案の金属ガスケットにおいては、
シール部をシールするビードを設けた弾性金属板の反り
が効果的に解消もしくは軽減され、ガスケットの組立、
取扱い或いは組付け等に当たり反りによる不利、不便を
被ることがない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例の金属板ガスケットの基板の平
面図の一部。

【図２】図１のＡ−Ａ線断面図。

【図３】本考案の他の例の図２に相当する断面図。

【図４】（イ）、（ロ）および（ハ）ともに、小突起の
形状を説明する上面図。

【図５】本考案の他の実施例の金属板ガスケットの一部
破断平面図の一部。

【図６】図５のＢ−Ｂ線断面図。

【符号の説明】

２ シリンダボア ３ 油孔 ４ 水孔 ６ ビード ７ 小突起 １０ ダミービード １２および１４ 冷却水通路の開口部

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シリンダボア、油孔、水孔等のシール部を囲繞しシール
   するビードを設けた弾性金属板を備えた金属板ガスケッ
   トにおいて、上記のシール部をシールするビードを設け
   た弾性金属板に該ビードの突出方向と逆方向に突出する
   小突起を該弾性金属板のほぼ全面にわたり設けたことを
   特徴とする金属板ガスケット。