JPH0747391A - ミネラル沈着阻害剤及びその製造方法並びに防汚塗料 - Google Patents
ミネラル沈着阻害剤及びその製造方法並びに防汚塗料Info
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- JPH0747391A JPH0747391A JP14132993A JP14132993A JPH0747391A JP H0747391 A JPH0747391 A JP H0747391A JP 14132993 A JP14132993 A JP 14132993A JP 14132993 A JP14132993 A JP 14132993A JP H0747391 A JPH0747391 A JP H0747391A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 海洋汚染を始めとする環境汚染を引き起こす
恐れが全く無く、実用性に富む防スケール剤、防錆剤、
防汚剤として有用なミネラル沈着阻害剤を提供する。 【構成】 貝殻を酸で処理した際に非抽出成分として分
離されるコンキオリンを有効成分として含有させる。
恐れが全く無く、実用性に富む防スケール剤、防錆剤、
防汚剤として有用なミネラル沈着阻害剤を提供する。 【構成】 貝殻を酸で処理した際に非抽出成分として分
離されるコンキオリンを有効成分として含有させる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、金属等の表面にカル
シウム等のミネラル(無機物質)が沈着するのを阻害す
る目的で使用されるミネラル沈着阻害剤、特に金属表面
にスケールや錆が生じたり各種構築物表面上に無機的、
生物学的原因により汚染が生じたりするのを防止するた
めに使用される防スケール剤、防錆剤及び防汚剤、及び
その製造方法、並びに前記ミネラル沈着阻害剤を一成分
として含有する防汚塗料に関する。
シウム等のミネラル(無機物質)が沈着するのを阻害す
る目的で使用されるミネラル沈着阻害剤、特に金属表面
にスケールや錆が生じたり各種構築物表面上に無機的、
生物学的原因により汚染が生じたりするのを防止するた
めに使用される防スケール剤、防錆剤及び防汚剤、及び
その製造方法、並びに前記ミネラル沈着阻害剤を一成分
として含有する防汚塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】産業界において使用されている各種の機
械、装置、構築物などがスケールや錆などの発生によっ
て被る経済的損失の総額は、1991年度において、米
国では約1,000億ドル、日本では4〜5兆円である
と見積られている。これらに対する対策の中で最も重要
な役割を果たすのが防スケール剤や防錆剤などであり、
それらを合わせると、前記損失総額の約1%の市場規模
を有すると言われている。また、船底や海中構造物の表
面に生じる貝殻や海草類などの汚染による経済的損失
も、正確には算出されていないが、極めて莫大な額にな
ると考えられている。
械、装置、構築物などがスケールや錆などの発生によっ
て被る経済的損失の総額は、1991年度において、米
国では約1,000億ドル、日本では4〜5兆円である
と見積られている。これらに対する対策の中で最も重要
な役割を果たすのが防スケール剤や防錆剤などであり、
それらを合わせると、前記損失総額の約1%の市場規模
を有すると言われている。また、船底や海中構造物の表
面に生じる貝殻や海草類などの汚染による経済的損失
も、正確には算出されていないが、極めて莫大な額にな
ると考えられている。
【0003】ところで、従来使用されている防スケール
剤、防錆剤又は防汚剤に含有された代表的な有効成分と
しては、無機系のものでは、重クロム酸ソーダ、亜硝酸
塩、ホスホン酸塩、ポリ燐酸塩、亜酸化銅などが挙げら
れ、また、有機系のものでは、2−エチルヘキシルオキ
シプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−
メトキシプロピルアミン等のアミン系化合物、トリフェ
ニルスズ、トリブチルスズ等の有機スズ化合物などが挙
げられる。
剤、防錆剤又は防汚剤に含有された代表的な有効成分と
しては、無機系のものでは、重クロム酸ソーダ、亜硝酸
塩、ホスホン酸塩、ポリ燐酸塩、亜酸化銅などが挙げら
れ、また、有機系のものでは、2−エチルヘキシルオキ
シプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−
メトキシプロピルアミン等のアミン系化合物、トリフェ
ニルスズ、トリブチルスズ等の有機スズ化合物などが挙
げられる。
【0004】また、1980年代前半に米国の南アラバ
マ大学の研究グループにより、カキ殻から抽出された特
定のアミノ酸重合物、より正確にはアスパラギン酸系化
合物の重合物が防スケール効果(無機的、生物学的炭酸
カルシウムの生成阻害効果)を示すことが見出され、そ
の知見に基づいた発明がU.S.Patent No.
4534881に開示されている。
マ大学の研究グループにより、カキ殻から抽出された特
定のアミノ酸重合物、より正確にはアスパラギン酸系化
合物の重合物が防スケール効果(無機的、生物学的炭酸
カルシウムの生成阻害効果)を示すことが見出され、そ
の知見に基づいた発明がU.S.Patent No.
4534881に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来使用されている防
汚剤としては、上記した有効成分のうち亜酸化銅や有機
スズ化合物を含有したものが主であり、これらの防汚剤
は、船底や埠頭構築物、その他一般の海洋人工敷設物な
どに付着するフジツボ、セルプラ、イガイ、ホヤ及び海
草類などの防除に高い活性を示している。しかしなが
ら、それらの化合物が効力を発揮するには、常に塗膜面
から海水中へ成分が溶出していることが必要とされる。
この結果、深刻な海洋汚染問題を引き起こすことにな
り、一部では既に使用禁止の法的措置も採られている。
また、防錆剤や防スケール剤にしても、その使用量によ
っては環境汚染を誘起する恐れがあり、必ずしも安全で
あるとは言えない。
汚剤としては、上記した有効成分のうち亜酸化銅や有機
スズ化合物を含有したものが主であり、これらの防汚剤
は、船底や埠頭構築物、その他一般の海洋人工敷設物な
どに付着するフジツボ、セルプラ、イガイ、ホヤ及び海
草類などの防除に高い活性を示している。しかしなが
ら、それらの化合物が効力を発揮するには、常に塗膜面
から海水中へ成分が溶出していることが必要とされる。
この結果、深刻な海洋汚染問題を引き起こすことにな
り、一部では既に使用禁止の法的措置も採られている。
また、防錆剤や防スケール剤にしても、その使用量によ
っては環境汚染を誘起する恐れがあり、必ずしも安全で
あるとは言えない。
【0006】また、U.S.Patent No.45
34881に開示されている発明は、カキ殻から抽出さ
れたアスパラギン酸系化合物の重合物が防スケール効果
を示す、といった知見に基づいただけのものであり、極
めて限定された内容であって、工業的に利用するには、
それほど実用性があるとは言えない。
34881に開示されている発明は、カキ殻から抽出さ
れたアスパラギン酸系化合物の重合物が防スケール効果
を示す、といった知見に基づいただけのものであり、極
めて限定された内容であって、工業的に利用するには、
それほど実用性があるとは言えない。
【0007】この発明は、以上のような事情に鑑みてな
されたものであり、海洋汚染を始めとする環境汚染を引
き起こす恐れが全く無く、実用性にも富んだ防スケール
剤、防錆剤、防汚剤等のミネラル沈着阻害剤を提供する
こと、及び、その新たな製造方法を提供すること、並び
に、そのミネラル沈着阻害剤を一成分として含有する新
規な防汚塗料を提供することを目的とする。
されたものであり、海洋汚染を始めとする環境汚染を引
き起こす恐れが全く無く、実用性にも富んだ防スケール
剤、防錆剤、防汚剤等のミネラル沈着阻害剤を提供する
こと、及び、その新たな製造方法を提供すること、並び
に、そのミネラル沈着阻害剤を一成分として含有する新
規な防汚塗料を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、各種の貝殻
から酸を用いて不溶化抽出することにより、すなわち溶
解成分である貝殻の主成分の炭酸カルシウムを除くこと
により得られた通称コンキオリンが、防スケール剤、防
錆剤又は防汚剤として有用であると見出したことによっ
てなされた。コンキオリンは、酸不溶性蛋白質(硬蛋白
質)、より詳しくは分子量が約2,000〜100,0
00の範囲にあると考えられるアミノ酸重合物すなわち
ペプチドを主成分とし、これにキシロース、マンノー
ス、フコースなどを構成成分とする多糖類、及び、ガラ
クトサミンやグルコサミンのアミノ糖、さらには若干の
リン脂質を含むゲル状物質である。
から酸を用いて不溶化抽出することにより、すなわち溶
解成分である貝殻の主成分の炭酸カルシウムを除くこと
により得られた通称コンキオリンが、防スケール剤、防
錆剤又は防汚剤として有用であると見出したことによっ
てなされた。コンキオリンは、酸不溶性蛋白質(硬蛋白
質)、より詳しくは分子量が約2,000〜100,0
00の範囲にあると考えられるアミノ酸重合物すなわち
ペプチドを主成分とし、これにキシロース、マンノー
ス、フコースなどを構成成分とする多糖類、及び、ガラ
クトサミンやグルコサミンのアミノ糖、さらには若干の
リン脂質を含むゲル状物質である。
【0009】第1の発明に係るミネラル沈着阻害剤は、
貝殻の酸非抽出成分である上記コンキオリンを有効成分
として含有してなる。そして、第2の発明は、そのミネ
ラル沈着阻害剤の製造方法に係り、貝殻を粉末にし、そ
の貝殻粉末を有機酸又は無機酸の水溶液に溶解させた
後、その溶解液を放置して、ゲル状物質を凝集沈殿さ
せ、そのゲル状物質を溶解液から分離してコンキオリン
を得るようにすることを要旨とする。
貝殻の酸非抽出成分である上記コンキオリンを有効成分
として含有してなる。そして、第2の発明は、そのミネ
ラル沈着阻害剤の製造方法に係り、貝殻を粉末にし、そ
の貝殻粉末を有機酸又は無機酸の水溶液に溶解させた
後、その溶解液を放置して、ゲル状物質を凝集沈殿さ
せ、そのゲル状物質を溶解液から分離してコンキオリン
を得るようにすることを要旨とする。
【0010】また、第3の発明は、貝殻から単離され
た、コンキオリンの主成分である硬蛋白質を有効成分と
して含有したミネラル沈着阻害剤に係り、第4の発明
は、そのミネラル沈着阻害剤を製造するのに、貝殻の微
粉末を、蛋白質の水溶解度を高める尿素又はカオトロピ
ックイオンを含んだ塩類の水溶液に添加し、その水溶液
を撹拌しながら加熱した後、固形分を瀘別し、瀘液中に
抽出された硬蛋白質を単離するようにすることを要旨と
する。
た、コンキオリンの主成分である硬蛋白質を有効成分と
して含有したミネラル沈着阻害剤に係り、第4の発明
は、そのミネラル沈着阻害剤を製造するのに、貝殻の微
粉末を、蛋白質の水溶解度を高める尿素又はカオトロピ
ックイオンを含んだ塩類の水溶液に添加し、その水溶液
を撹拌しながら加熱した後、固形分を瀘別し、瀘液中に
抽出された硬蛋白質を単離するようにすることを要旨と
する。
【0011】さらに、第5の発明及び第6の発明は、貝
殻の酸非抽出成分であるコンキオリン、及び貝殻から単
離された硬蛋白質を添加してそれぞれ防汚塗料を構成す
ることを要旨とする。
殻の酸非抽出成分であるコンキオリン、及び貝殻から単
離された硬蛋白質を添加してそれぞれ防汚塗料を構成す
ることを要旨とする。
【0012】
【作用】コンキオリン或いはその主成分である硬蛋白質
を含有したミネラル沈着阻害剤は、そのままで或いは塗
料などの一成分として、対象となる物体表面に塗布する
などの形で用いることにより、物体表面でのスケールや
錆、無機的、生物学的原因による汚染などの発生を防止
する機能を発揮する。この場合、貝殻から単離された硬
蛋白質を純粋な形で単独で使用するより、多糖類、アミ
ノ糖類及びリン脂質を含む形、すなわちコンキオリンの
形態で使用する方が、防スケール、防錆及び防汚機能、
特に防錆機能が一段と高くなる。そして、コンキオリン
や硬蛋白質により、海洋汚染を始めとする環境汚染が引
き起こされる恐れは全く無い。
を含有したミネラル沈着阻害剤は、そのままで或いは塗
料などの一成分として、対象となる物体表面に塗布する
などの形で用いることにより、物体表面でのスケールや
錆、無機的、生物学的原因による汚染などの発生を防止
する機能を発揮する。この場合、貝殻から単離された硬
蛋白質を純粋な形で単独で使用するより、多糖類、アミ
ノ糖類及びリン脂質を含む形、すなわちコンキオリンの
形態で使用する方が、防スケール、防錆及び防汚機能、
特に防錆機能が一段と高くなる。そして、コンキオリン
や硬蛋白質により、海洋汚染を始めとする環境汚染が引
き起こされる恐れは全く無い。
【0013】また、上記したミネラル沈着阻害剤の製造
方法により、コンキオリンは極めて単純な化学的処理に
よって簡単に得られる。
方法により、コンキオリンは極めて単純な化学的処理に
よって簡単に得られる。
【0014】また、硬蛋白質を得るための上記製造方法
によれば、貝殻を酸で処理してコンキオリンを一旦得た
後そのコンキオリンから硬蛋白質を抽出する、といった
工程を経ることなく貝殻の微粉末から直接抽出によって
硬蛋白質が得られる。
によれば、貝殻を酸で処理してコンキオリンを一旦得た
後そのコンキオリンから硬蛋白質を抽出する、といった
工程を経ることなく貝殻の微粉末から直接抽出によって
硬蛋白質が得られる。
【0015】
【実施例】以下、この発明の好適な実施例について説明
する。
する。
【0016】この発明に係るミネラル沈着阻害剤は、貝
殻の酸非抽出成分であるコンキオリン又は貝殻から単離
された硬蛋白質を有効成分として含有する。そして、コ
ンキオリンは、貝殻の粉末から有機酸又は無機酸による
不溶化抽出により得られ、硬蛋白質は、そのコンキオリ
ンからの抽出により、或いは貝殻の微粉末から、蛋白質
の水溶解度を高める尿素又はカオトロピックイオンを含
む塩類を用いて直接抽出することにより得られる。
殻の酸非抽出成分であるコンキオリン又は貝殻から単離
された硬蛋白質を有効成分として含有する。そして、コ
ンキオリンは、貝殻の粉末から有機酸又は無機酸による
不溶化抽出により得られ、硬蛋白質は、そのコンキオリ
ンからの抽出により、或いは貝殻の微粉末から、蛋白質
の水溶解度を高める尿素又はカオトロピックイオンを含
む塩類を用いて直接抽出することにより得られる。
【0017】ここで、防スケール、防錆及び防汚効果を
示すコンキオリンやその主成分である硬蛋白質は、カキ
貝殻だけでなく、広く一般の貝類の貝殻からも得られ
る。これらの貝殻から得られるコンキオリンや硬蛋白質
の含量及び組成は、貝の種類によって多少異なるが、何
れの貝殻から得られるものも、略同じ活性を示す。但
し、貝殻の種類によっては、コンキオリンの含量や不溶
化抽出の難易に多少の差がある。
示すコンキオリンやその主成分である硬蛋白質は、カキ
貝殻だけでなく、広く一般の貝類の貝殻からも得られ
る。これらの貝殻から得られるコンキオリンや硬蛋白質
の含量及び組成は、貝の種類によって多少異なるが、何
れの貝殻から得られるものも、略同じ活性を示す。但
し、貝殻の種類によっては、コンキオリンの含量や不溶
化抽出の難易に多少の差がある。
【0018】尚、ゲル状物質として得られたコンキオリ
ンは、低コストの適宜方法により固化させ又は粉末化し
て、商品化に適した剤形に調製すればよい。また、コン
キオリン又は硬蛋白質を防スケール剤、防錆剤又は防汚
剤として実際に用いるときに、そのコンキオリン又は硬
蛋白質に、従来周知の重クロム酸ソーダ、有機アミン系
化合物、有機スズ化合物やその他の添加剤を適宜添加す
るようにしてもよい。
ンは、低コストの適宜方法により固化させ又は粉末化し
て、商品化に適した剤形に調製すればよい。また、コン
キオリン又は硬蛋白質を防スケール剤、防錆剤又は防汚
剤として実際に用いるときに、そのコンキオリン又は硬
蛋白質に、従来周知の重クロム酸ソーダ、有機アミン系
化合物、有機スズ化合物やその他の添加剤を適宜添加す
るようにしてもよい。
【0019】次に、この発明に関連して行なった実験例
について説明する。
について説明する。
【0020】〔コンキオリンの製法例〕十分に乾燥させ
たカキ貝殻、ホタテ貝殻、ムラサキガイ貝殻、アワビ貝
殻、アカガイ貝殻、ハマグリ貝殻及びサザエ貝殻の各貝
殻を個々に微粉砕し、0.18mm以下の粒径に整えた
後、それぞれ貝殻粉末を10gずつ分取し、個々に30
0mlのビーカーに入れる。
たカキ貝殻、ホタテ貝殻、ムラサキガイ貝殻、アワビ貝
殻、アカガイ貝殻、ハマグリ貝殻及びサザエ貝殻の各貝
殻を個々に微粉砕し、0.18mm以下の粒径に整えた
後、それぞれ貝殻粉末を10gずつ分取し、個々に30
0mlのビーカーに入れる。
【0021】まず、貝殻粉末を少量の水で湿潤、懸濁さ
せた後、ビーカー中に1NのHCl水溶液を注ぎ、電磁
撹拌機で水溶液を撹拌しながら貝殻粉末を溶解させる。
この際、HCl水溶液の急激な添加は、激しい発泡と発
熱を招くため、適度な添加速度で、かつ大き目の容器を
用いてこの操作を行なうことが望ましい。通常、酸の水
溶液に対する貝殻粉末の溶解は、常温付近で行なうよう
にするが、必要に応じ、溶解速度を上げるために昇温す
ることもあり、この場合には、目的抽出物が組成変化を
生じない程度の温度以下に止めることが望ましい。
せた後、ビーカー中に1NのHCl水溶液を注ぎ、電磁
撹拌機で水溶液を撹拌しながら貝殻粉末を溶解させる。
この際、HCl水溶液の急激な添加は、激しい発泡と発
熱を招くため、適度な添加速度で、かつ大き目の容器を
用いてこの操作を行なうことが望ましい。通常、酸の水
溶液に対する貝殻粉末の溶解は、常温付近で行なうよう
にするが、必要に応じ、溶解速度を上げるために昇温す
ることもあり、この場合には、目的抽出物が組成変化を
生じない程度の温度以下に止めることが望ましい。
【0022】そして、1N−HCl水溶液の量が200
mlになった時点で、その添加を止め、そのまま撹拌を続
ける。この間、炭酸カルシウムの溶解に伴う炭酸ガス発
生による激しい発泡がみられる。この時点でのpHは、
0〜1の範囲にある。尚、塩酸のような無機酸の代わり
に酢酸のような有機酸を用いた場合は、pHはやや高
く、3.5〜4.5の範囲となる。常温の場合には、約
2時間の撹拌で、液がほぼ透明となるが、この溶解速度
は、温度の他、貝殻粉末の粒度にも依存するので、必ず
しも液が透明となるのに要する時間が2時間とは限らな
い。この後、撹拌を止め、2〜3時間放置する。する
と、やや黒色を帯びた灰色のゲル状物質が不溶分として
凝集沈殿し始め、数時間でビーカーの底部に薄い層状を
なしたゲル状物質が得られる。このゲル状物質がコンキ
オリンである。沈殿を完結させるために、さらに通常一
夜放置した後、上澄液を除いてから、遠心分離器を用い
てゲル状のコンキオリンのみを分離し捕集する。表1
に、上記各貝殻粉末からそれぞれ捕集されたゲル状コン
キオリンの収率(貝殻当り)を示す。
mlになった時点で、その添加を止め、そのまま撹拌を続
ける。この間、炭酸カルシウムの溶解に伴う炭酸ガス発
生による激しい発泡がみられる。この時点でのpHは、
0〜1の範囲にある。尚、塩酸のような無機酸の代わり
に酢酸のような有機酸を用いた場合は、pHはやや高
く、3.5〜4.5の範囲となる。常温の場合には、約
2時間の撹拌で、液がほぼ透明となるが、この溶解速度
は、温度の他、貝殻粉末の粒度にも依存するので、必ず
しも液が透明となるのに要する時間が2時間とは限らな
い。この後、撹拌を止め、2〜3時間放置する。する
と、やや黒色を帯びた灰色のゲル状物質が不溶分として
凝集沈殿し始め、数時間でビーカーの底部に薄い層状を
なしたゲル状物質が得られる。このゲル状物質がコンキ
オリンである。沈殿を完結させるために、さらに通常一
夜放置した後、上澄液を除いてから、遠心分離器を用い
てゲル状のコンキオリンのみを分離し捕集する。表1
に、上記各貝殻粉末からそれぞれ捕集されたゲル状コン
キオリンの収率(貝殻当り)を示す。
【0023】
【表1】
【0024】得られたコンキオリン中に含まれる硬蛋白
質の分子量を電気泳動法により測定を行なった結果、何
れの貝殻から得られたものも2,000〜100,00
0の範囲内にあった。また、コンキオリン中の硬蛋白質
の含有率は、ホタテ貝殻、ムラサキガイ貝殻、カキ貝殻
の順で少なくなり、巻貝類及びカサガイ類は、それら二
枚貝類に比べて硬蛋白質の含有率が低かった。
質の分子量を電気泳動法により測定を行なった結果、何
れの貝殻から得られたものも2,000〜100,00
0の範囲内にあった。また、コンキオリン中の硬蛋白質
の含有率は、ホタテ貝殻、ムラサキガイ貝殻、カキ貝殻
の順で少なくなり、巻貝類及びカサガイ類は、それら二
枚貝類に比べて硬蛋白質の含有率が低かった。
【0025】〔コンキオリン及び硬蛋白質のスケール抑
止能試験〕上記製法例で得られたコンキオリンを水可溶
化処理した水溶液(A液)と、そのコンキオリンから塩
処理の方法で抽出した硬蛋白質の水溶液(B液)とを用
い、これらがそれぞれ、人工海水中に溶存する炭酸カル
シウムの析出をどの程度抑制する機能を有するかを、下
記の方法で測定し比較した。
止能試験〕上記製法例で得られたコンキオリンを水可溶
化処理した水溶液(A液)と、そのコンキオリンから塩
処理の方法で抽出した硬蛋白質の水溶液(B液)とを用
い、これらがそれぞれ、人工海水中に溶存する炭酸カル
シウムの析出をどの程度抑制する機能を有するかを、下
記の方法で測定し比較した。
【0026】NaCl濃度510mM、KCl濃度1
0.2mMに調製された水溶液24.5mlに0.5Mの
NaHCO3水溶液500μlを加えて全無機系炭素濃
度が10mMになるようにした後、2MのCaCl2水
溶液125μlを加えてpHが8.4〜8.5になるよ
うに調整した人工海水液を調製する。この人工海水液
は、通常室温で2分程度放置すると、炭酸カルシウムの
析出が始まるが、これに析出抑制剤を加えると析出開始
時間が延びてくる。この時間の長短によってCaCO3
系スケールの防止能をみる方法が簡便なスケール抑止能
測定法として用いられている。そこで、この方法に準じ
て、カキ貝殻及びホタテ貝殻からそれぞれ不溶化抽出し
たコンキオリンと、そのコンキオリンから塩処理の方法
で抽出した硬蛋白質とについて、スケール生成抑止能を
それぞれ測定し比較した。この結果を表2に示す。尚、
表中の添加量の数値は乾燥重量%換算値であり、テスト
は、それぞれにつき5回行なった。
0.2mMに調製された水溶液24.5mlに0.5Mの
NaHCO3水溶液500μlを加えて全無機系炭素濃
度が10mMになるようにした後、2MのCaCl2水
溶液125μlを加えてpHが8.4〜8.5になるよ
うに調整した人工海水液を調製する。この人工海水液
は、通常室温で2分程度放置すると、炭酸カルシウムの
析出が始まるが、これに析出抑制剤を加えると析出開始
時間が延びてくる。この時間の長短によってCaCO3
系スケールの防止能をみる方法が簡便なスケール抑止能
測定法として用いられている。そこで、この方法に準じ
て、カキ貝殻及びホタテ貝殻からそれぞれ不溶化抽出し
たコンキオリンと、そのコンキオリンから塩処理の方法
で抽出した硬蛋白質とについて、スケール生成抑止能を
それぞれ測定し比較した。この結果を表2に示す。尚、
表中の添加量の数値は乾燥重量%換算値であり、テスト
は、それぞれにつき5回行なった。
【0027】
【表2】
【0028】〔硬蛋白質の製法例〕十分に乾燥させた貝
殻を粒径がサブミクロン程度になるように超微粉化し、
その貝殻微粉末10gを36重量%の尿素水溶液(6M
水溶液)20mlに加え、電磁撹拌機で強く撹拌しながら
100℃で20分間保持した後、、固形分(貝殻粉)を
瀘別し、その瀘液をHPLC(C−4逆相クロマトグラ
フィー)分析及びポリアクリルアミドゲル電気泳動分析
によって硬蛋白質を同定した。これにより、硬蛋白質が
明瞭に尿素水溶液中に抽出されていることが確認され
た。抽出量は、貝殻微粉末に対し、重量ベースで0.1
〜0.3%であった。この硬蛋白質は、尿素を透析、そ
の他の方法で抽出液から除くことにより単離することが
できる。
殻を粒径がサブミクロン程度になるように超微粉化し、
その貝殻微粉末10gを36重量%の尿素水溶液(6M
水溶液)20mlに加え、電磁撹拌機で強く撹拌しながら
100℃で20分間保持した後、、固形分(貝殻粉)を
瀘別し、その瀘液をHPLC(C−4逆相クロマトグラ
フィー)分析及びポリアクリルアミドゲル電気泳動分析
によって硬蛋白質を同定した。これにより、硬蛋白質が
明瞭に尿素水溶液中に抽出されていることが確認され
た。抽出量は、貝殻微粉末に対し、重量ベースで0.1
〜0.3%であった。この硬蛋白質は、尿素を透析、そ
の他の方法で抽出液から除くことにより単離することが
できる。
【0029】尿素以外の他の塩、特にカオトロピックイ
オンを含む塩、例えば陰イオンとしてはSCN-、Cl
O4 -、NO3 -、Br-、Cl-、CH3COO-、F-な
ど、陽イオンとしてはBa2+、Ca2+、Mg2+、Na
+、K+、NH4+などを含む塩の濃厚水溶液についても同
様の試験を行なった。この結果、何れの場合にも、硬蛋
白質が抽出されることを確認した。
オンを含む塩、例えば陰イオンとしてはSCN-、Cl
O4 -、NO3 -、Br-、Cl-、CH3COO-、F-な
ど、陽イオンとしてはBa2+、Ca2+、Mg2+、Na
+、K+、NH4+などを含む塩の濃厚水溶液についても同
様の試験を行なった。この結果、何れの場合にも、硬蛋
白質が抽出されることを確認した。
【0030】この直接法は、酸を用いることなく、従っ
て、コンキオリンを経ずに、貝殻に含有されている硬蛋
白質を直接貝殻微粉末から抽出し得る方法として、工業
的にも極めて有用性に富む手法である。
て、コンキオリンを経ずに、貝殻に含有されている硬蛋
白質を直接貝殻微粉末から抽出し得る方法として、工業
的にも極めて有用性に富む手法である。
【0031】〔防錆効果試験1〕幅0.75cm、長さ
1.0cmの軟鋼板(S45C)又はステンレス鋼板(3
04)をリード線に接続し、500番の研磨紙で研磨
し、アセトンとエタノールを用いて研磨面の脱脂を行な
った後、デシケータ中で乾燥させた。
1.0cmの軟鋼板(S45C)又はステンレス鋼板(3
04)をリード線に接続し、500番の研磨紙で研磨
し、アセトンとエタノールを用いて研磨面の脱脂を行な
った後、デシケータ中で乾燥させた。
【0032】一方、〔コンキオリン及び硬蛋白質のスケ
ール抑止能試験〕においてカキ貝殻及びホタテ貝殻から
それぞれ調製した上記各A液に、それぞれの有効成分が
0.01重量%になるようにメタノールを添加して試験
液を調製した。また、標準防錆剤としてポリアスパラギ
ン酸を使用し、その0.01重量%メタノール溶液を調
製した。そして、それぞれの試験液及びポリアスパラギ
ン酸メタノール溶液を、上記方法で調製した鋼板試験片
にそれぞれ個々に浸漬法で均一に塗布した後、放置して
乾燥させ、試験電極とした。
ール抑止能試験〕においてカキ貝殻及びホタテ貝殻から
それぞれ調製した上記各A液に、それぞれの有効成分が
0.01重量%になるようにメタノールを添加して試験
液を調製した。また、標準防錆剤としてポリアスパラギ
ン酸を使用し、その0.01重量%メタノール溶液を調
製した。そして、それぞれの試験液及びポリアスパラギ
ン酸メタノール溶液を、上記方法で調製した鋼板試験片
にそれぞれ個々に浸漬法で均一に塗布した後、放置して
乾燥させ、試験電極とした。
【0033】また、使用電解液としてpHが3.0であ
る硫酸溶液(0.5mM)を用意し、この電解液中に白
金電極及び前記試験電極を浸漬させ、銀−塩化銀電極を
参照電極とした3電極方式の測定セルを構築した。試験
電極への印加電位を直線的に変化させ、この電位に対す
る電流をポテンショ/ガルバノスタットにより検出し
た。カソード分極(電位の低い方向への掃引)は、軟鋼
板試験片を使用し、またアノード分極(電位の高い方向
への掃引)は、ステンレス鋼板試験片を使用して、腐食
電流及び腐食電位の変化を測定した。試験電極の電位・
電流特性の測定(防錆効果の測定)は、24.8℃の室
内温度下で5,300秒間連続して行なった。
る硫酸溶液(0.5mM)を用意し、この電解液中に白
金電極及び前記試験電極を浸漬させ、銀−塩化銀電極を
参照電極とした3電極方式の測定セルを構築した。試験
電極への印加電位を直線的に変化させ、この電位に対す
る電流をポテンショ/ガルバノスタットにより検出し
た。カソード分極(電位の低い方向への掃引)は、軟鋼
板試験片を使用し、またアノード分極(電位の高い方向
への掃引)は、ステンレス鋼板試験片を使用して、腐食
電流及び腐食電位の変化を測定した。試験電極の電位・
電流特性の測定(防錆効果の測定)は、24.8℃の室
内温度下で5,300秒間連続して行なった。
【0034】防錆効果の有無の判定は、ビー.ジェイ.
リトル(B.J.Little)等の論文(アメリカン ケミカル
ソサイアティ(American Chemical Society),C.
21,263−279,1991)に従って、アノード
抑制効果については腐食電位の変化がみられたもの、ま
たカソード抑制効果については腐食電流の抑制がみられ
たものをそれぞれ効果があるものとすることにより行な
った。この結果を表3に示すが、カキ貝殻及びホタテ貝
殻から抽出された各コンキオリン共に防錆効果があるこ
とが確認された。
リトル(B.J.Little)等の論文(アメリカン ケミカル
ソサイアティ(American Chemical Society),C.
21,263−279,1991)に従って、アノード
抑制効果については腐食電位の変化がみられたもの、ま
たカソード抑制効果については腐食電流の抑制がみられ
たものをそれぞれ効果があるものとすることにより行な
った。この結果を表3に示すが、カキ貝殻及びホタテ貝
殻から抽出された各コンキオリン共に防錆効果があるこ
とが確認された。
【0035】
【表3】
【0036】〔防錆効果試験2〕厚さ5mm、幅5cm、長
さ10cmの軟鉄板を10%のHCl水溶液に浸し、室温
で10分間放置した後、2%のNaOH水溶液中に約1
分間浸漬させ、その後に水洗し、乾燥させてから、10
0番のエメリークロスで表裏両面を研磨した。次に、ア
セトンとヘキサンを用いて研磨面の脱脂を行なった後、
デシケータ中で乾燥させた。
さ10cmの軟鉄板を10%のHCl水溶液に浸し、室温
で10分間放置した後、2%のNaOH水溶液中に約1
分間浸漬させ、その後に水洗し、乾燥させてから、10
0番のエメリークロスで表裏両面を研磨した。次に、ア
セトンとヘキサンを用いて研磨面の脱脂を行なった後、
デシケータ中で乾燥させた。
【0037】一方、〔コンキオリン及び硬蛋白質のスケ
ール抑止能試験〕においてカキ貝殻及びホタテ貝殻から
それぞれ調製したA液及びB液に、それぞれの有効成分
が0.01重量%になるように人工海水液((500m
MNaCl+10mMKCl)/25ml)を添加して試
験液を調製した。そして、それぞれの試験液及び何も含
まない人工海水液中に、上記方法で調製した軟鉄板試験
片7片をそれぞれ個々に、各試験片の半分(5cm)が前
記各液中に浸漬するようにセットし、腐食速度を早める
目的で各液の温度を60〜70℃に保った。また、これ
ら各液を一括して収めた試験柾上部には還流装置を付設
し、上部の湿度が常に100%となるようにした。各液
は、対流による緩やかな内部移動以外には機械的な撹拌
を行なわず、ほぼ静置の状態に保った。このような状態
で試験片を3昼夜(72時間)放置した後、試験片を取
り出し、その表面を水及びメタノールを用いて洗浄した
後、デシケータに入れて乾燥させた。
ール抑止能試験〕においてカキ貝殻及びホタテ貝殻から
それぞれ調製したA液及びB液に、それぞれの有効成分
が0.01重量%になるように人工海水液((500m
MNaCl+10mMKCl)/25ml)を添加して試
験液を調製した。そして、それぞれの試験液及び何も含
まない人工海水液中に、上記方法で調製した軟鉄板試験
片7片をそれぞれ個々に、各試験片の半分(5cm)が前
記各液中に浸漬するようにセットし、腐食速度を早める
目的で各液の温度を60〜70℃に保った。また、これ
ら各液を一括して収めた試験柾上部には還流装置を付設
し、上部の湿度が常に100%となるようにした。各液
は、対流による緩やかな内部移動以外には機械的な撹拌
を行なわず、ほぼ静置の状態に保った。このような状態
で試験片を3昼夜(72時間)放置した後、試験片を取
り出し、その表面を水及びメタノールを用いて洗浄した
後、デシケータに入れて乾燥させた。
【0038】そして、各試験片の両面をそれぞれ写真撮
影し、試験片の両面に発生した錆の面積を写真上で計測
し、試験片の表面積に対する錆の面積の百分率を求め、
これを錆発生率とした。この結果を表4に示すが、カキ
貝殻及びホタテ貝殻から抽出された各コンキオリン共に
防錆効果があることがこの試験によっても確認された。
影し、試験片の両面に発生した錆の面積を写真上で計測
し、試験片の表面積に対する錆の面積の百分率を求め、
これを錆発生率とした。この結果を表4に示すが、カキ
貝殻及びホタテ貝殻から抽出された各コンキオリン共に
防錆効果があることがこの試験によっても確認された。
【0039】
【表4】
【0040】〔コンキオリン含有塗料の防汚効果試験〕
上記した〔コンキオリン製法例〕と同じ操作によりカキ
貝殻及びホタテ貝殻からそれぞれ得られたゲル状のコン
キオリンを低級アルコールで洗浄した後乾燥させ、固化
させた後、微粉化した。この微粉化物20部を、適当な
分散剤を用いてメタクリル酸メチル10部とキシレン4
0部中に分散させ、重合開始剤として過酸化ベンゾイル
0.3gを加え90〜110時間重合反応させる。
上記した〔コンキオリン製法例〕と同じ操作によりカキ
貝殻及びホタテ貝殻からそれぞれ得られたゲル状のコン
キオリンを低級アルコールで洗浄した後乾燥させ、固化
させた後、微粉化した。この微粉化物20部を、適当な
分散剤を用いてメタクリル酸メチル10部とキシレン4
0部中に分散させ、重合開始剤として過酸化ベンゾイル
0.3gを加え90〜110時間重合反応させる。
【0041】上記したようにして得られた各重合体を含
むキシレン溶液50重量%に亜酸化銅15重量%、ベン
ガラ5重量%、タルク5重量%、キシレン24.5重量
%、安定化剤として2,6−ジ−t−ブチルフェノール
0.5重量%を加えてそれぞれ調製したものをB塗料及
びC塗料とし、コンキオリンに代えてトリブチルスズメ
タクリル酸塩を用いて前記と同様に調製したものをD塗
料とし、また、コンキオリン及びトリブチルスズメタク
リル酸塩の何れも含まないで上記と同様に調製したもの
をA塗料とし、試験片(厚さ5mm、幅15cm、長さ60
cmの並鋼板)の両面にタール系エポキシ塗料で下塗り
(500μm厚み)し、その上に耐塩性のエポキシ系塗
料で中塗り(500μm厚み)し、さらにその上にA塗
料、B塗料、C塗料又はD塗料をそれぞれ500μmの
厚みに塗装した。そして、塗膜が乾燥した後、それぞれ
の試験片の2/3(約40cm)を海水中に浸漬させ、自
然条件下で約3ヵ月放置した。この際の主な自然条件の
概要は、気温が最低3℃で最高18℃、海水温が最低4
℃で最高11℃、潮流が5〜30cm/分であった。
むキシレン溶液50重量%に亜酸化銅15重量%、ベン
ガラ5重量%、タルク5重量%、キシレン24.5重量
%、安定化剤として2,6−ジ−t−ブチルフェノール
0.5重量%を加えてそれぞれ調製したものをB塗料及
びC塗料とし、コンキオリンに代えてトリブチルスズメ
タクリル酸塩を用いて前記と同様に調製したものをD塗
料とし、また、コンキオリン及びトリブチルスズメタク
リル酸塩の何れも含まないで上記と同様に調製したもの
をA塗料とし、試験片(厚さ5mm、幅15cm、長さ60
cmの並鋼板)の両面にタール系エポキシ塗料で下塗り
(500μm厚み)し、その上に耐塩性のエポキシ系塗
料で中塗り(500μm厚み)し、さらにその上にA塗
料、B塗料、C塗料又はD塗料をそれぞれ500μmの
厚みに塗装した。そして、塗膜が乾燥した後、それぞれ
の試験片の2/3(約40cm)を海水中に浸漬させ、自
然条件下で約3ヵ月放置した。この際の主な自然条件の
概要は、気温が最低3℃で最高18℃、海水温が最低4
℃で最高11℃、潮流が5〜30cm/分であった。
【0042】3ヵ月後、各試験片を取り出し、付着物に
よる重量増加をそれぞれ測定するとともに、各試験片の
外観を観察した。この結果を表5に示す。外観変化は、
A塗料を用いたものが最も大きく、フジツボ、カキ、イ
ガイ等の貝類の他、若干の海草類の付着もみられた。こ
れに対し、B、C及びDの各塗料を用いたものは、それ
らの付着が殆んどみられず、外観上からも明らかな防汚
効果が確認された。
よる重量増加をそれぞれ測定するとともに、各試験片の
外観を観察した。この結果を表5に示す。外観変化は、
A塗料を用いたものが最も大きく、フジツボ、カキ、イ
ガイ等の貝類の他、若干の海草類の付着もみられた。こ
れに対し、B、C及びDの各塗料を用いたものは、それ
らの付着が殆んどみられず、外観上からも明らかな防汚
効果が確認された。
【0043】
【表5】
【0044】以上の実験例により、コンキオリンが優れ
たミネラル沈着阻害効果、例えば防スケール、防錆、防
汚機能を有し、工業的に利用可能であることが確認され
た。
たミネラル沈着阻害効果、例えば防スケール、防錆、防
汚機能を有し、工業的に利用可能であることが確認され
た。
【0045】
【発明の効果】請求項1及び請求項3に記載の各発明に
よれば、海洋汚染を始めとする環境汚染を引き起こす恐
れが全く無く、防スケール剤、防錆剤、防汚剤などとし
て有用で実用性にも富むミネラル沈着阻害剤が提供さ
れ、また、請求項5及び請求項6に記載の各発明によれ
ば、そのようなミネラル沈着阻害剤を一成分として含有
した有用な防汚塗料が提供される。
よれば、海洋汚染を始めとする環境汚染を引き起こす恐
れが全く無く、防スケール剤、防錆剤、防汚剤などとし
て有用で実用性にも富むミネラル沈着阻害剤が提供さ
れ、また、請求項5及び請求項6に記載の各発明によれ
ば、そのようなミネラル沈着阻害剤を一成分として含有
した有用な防汚塗料が提供される。
【0046】また、請求項2に記載された発明によれ
ば、コンキオリンを有効成分として含有したミネラル沈
着阻害剤を極めて単純な化学的処理によって簡単に製造
することができ、製造コストを低く抑えることができ
る。さらに、請求項5に記載の発明によれば、硬蛋白質
を貝殻の微粉末から直接抽出によって得ることができ、
工業的に極めて有用な製造方法が提供される。
ば、コンキオリンを有効成分として含有したミネラル沈
着阻害剤を極めて単純な化学的処理によって簡単に製造
することができ、製造コストを低く抑えることができ
る。さらに、請求項5に記載の発明によれば、硬蛋白質
を貝殻の微粉末から直接抽出によって得ることができ、
工業的に極めて有用な製造方法が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 片岡 千和 京都市上京区御前通下立売上ル3丁目西上 之町246番地 (72)発明者 三浦 一伸 京都府長岡京市神足2−20−12
Claims (6)
- 【請求項1】 貝殻の酸非抽出成分であるコンキオリン
を有効成分として含有してなるミネラル沈着阻害剤。 - 【請求項2】 貝殻を粉砕して粉末にし、その貝殻粉末
を有機酸又は無機酸の水溶液に溶解させた後、その溶解
液を放置して、ゲル状物質を凝集沈殿させ、そのゲル状
物質を溶解液から分離してコンキオリンを得るようにす
る、ミネラル沈着阻害剤の製造方法。 - 【請求項3】 貝殻から単離された硬蛋白質を有効成分
として含有してなるミネラル沈着阻害剤。 - 【請求項4】 貝殻の微粉末を、蛋白質の水溶解度を高
める尿素又はカオトロピックイオンを含んだ塩類の水溶
液に添加し、その水溶液を撹拌しながら加熱した後、固
形分を瀘別し、瀘液中に抽出された硬蛋白質を単離する
ようにする、ミネラル沈着剤の製造方法。 - 【請求項5】 貝殻の酸非抽出成分であるコンキオリン
を添加してなる防汚塗料。 - 【請求項6】 貝殻から単離された硬蛋白質を添加して
なる防汚塗料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14132993A JPH0747391A (ja) | 1993-03-23 | 1993-05-19 | ミネラル沈着阻害剤及びその製造方法並びに防汚塗料 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5-86870 | 1993-03-23 | ||
JP8687093 | 1993-03-23 | ||
JP14132993A JPH0747391A (ja) | 1993-03-23 | 1993-05-19 | ミネラル沈着阻害剤及びその製造方法並びに防汚塗料 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0747391A true JPH0747391A (ja) | 1995-02-21 |
Family
ID=26427942
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP14132993A Pending JPH0747391A (ja) | 1993-03-23 | 1993-05-19 | ミネラル沈着阻害剤及びその製造方法並びに防汚塗料 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0747391A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100334654B1 (ko) * | 1999-12-06 | 2002-04-27 | 박정수 | 굴 패각을 이용한 건축소재용 혼화제의 제조 방법 |
KR100394604B1 (ko) * | 2000-11-21 | 2003-08-27 | (주) 금영 | 굴 패각을 이용한 시멘트용 충전제의 제조 방법 및 이를통해 만들어진 시멘트용 충전제 |
WO2010005243A3 (ko) * | 2008-07-08 | 2010-03-25 | 주식회사 서진바이오텍 | 패각류 유래의 수용성 콘키올린 함유 추출물의 제조방법 |
JP5492335B1 (ja) * | 2013-08-08 | 2014-05-14 | 株式会社ケイ・アール・ジー | 凝集剤の製造方法及び凝集剤 |
-
1993
- 1993-05-19 JP JP14132993A patent/JPH0747391A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100334654B1 (ko) * | 1999-12-06 | 2002-04-27 | 박정수 | 굴 패각을 이용한 건축소재용 혼화제의 제조 방법 |
KR100394604B1 (ko) * | 2000-11-21 | 2003-08-27 | (주) 금영 | 굴 패각을 이용한 시멘트용 충전제의 제조 방법 및 이를통해 만들어진 시멘트용 충전제 |
WO2010005243A3 (ko) * | 2008-07-08 | 2010-03-25 | 주식회사 서진바이오텍 | 패각류 유래의 수용성 콘키올린 함유 추출물의 제조방법 |
JP5492335B1 (ja) * | 2013-08-08 | 2014-05-14 | 株式会社ケイ・アール・ジー | 凝集剤の製造方法及び凝集剤 |
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