JPH0742461B2 - 水酸化マグネシウム系難燃剤及びその製法 - Google Patents

水酸化マグネシウム系難燃剤及びその製法

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JPH0742461B2 JP12392388A JP12392388A JPH0742461B2 JP H0742461 B2 JPH0742461 B2 JP H0742461B2 JP 12392388 A JP12392388 A JP 12392388A JP 12392388 A JP12392388 A JP 12392388A JP H0742461 B2 JPH0742461 B2 JP H0742461B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、耐白華性に優れた水酸化マグネシウム系難燃
剤及びその製法に関する。本発明は更にこの難燃剤を配
合した難燃性オレフィン系樹脂組成物に関する。
(従来の技術) 水酸化マグネシウムがオレフィン系樹脂等に対する優れ
た難燃剤であることは古くから知られており、水酸化マ
グネシウムを比較的多い量で、必要により金属石鹸と共
にオレフィン系樹脂に配合することも広く行われてい
る。
この難燃剤等に使用する水酸化マグネシウムは、海水又
は苦汁中に苛性アルカリ又は消石灰乳を加えて反応さ
せ、生成物を洗浄、乾燥する方法や、水酸化マグネシウ
ムに少量の水酸化ナトリウムを添加し、オートクレーブ
中等で加圧加熱処理する方法(特公昭50−23680号公
報)、塩基性マグネシウム塩を、水性媒体中で加圧加熱
処理する方法(特開昭52−115799号公報)、水可溶性マ
グネシウム塩とアンモニアとを反応させて水酸化マグネ
シウム塩を製造する方法(例えば特開昭61−168522号及
び62−123014号公報)等が知られている。
(発明が解決しようとする問題点) 従来難燃剤に使用されている上記の水酸化マグネシウム
は、例えば六角板状等の比較的整った粒子形状と比較的
均斉で微細な粒径とを有し、オレフィン系樹脂等に対し
て比較的多量に充填させ得るという利点を有している
が、これらの配合樹脂組成物は未だ解決すべき幾つかの
問題点を有している。
その一つは、水酸化マグネシウム系難燃剤を多量に配合
した樹脂成形品を大気中に長期間置くと、成形品表面に
白い粉ふきが生ずる、所謂白華現象と呼ばれる現象を生
ずることである。この白華現象は、その粉を分析すると
炭酸マグネシウムであるることから、成形品中に配合さ
れている水酸化マグネシウムが大気中の炭酸ガスと反応
することによるものと認められる。
その二つは、公知の水酸化マグネシウム系難燃剤を配合
したオレフィン系樹脂組成物、特に弾性率の比較的大き
い樹脂に配合したものでは、破断伸びのような機械的性
質がかなり低下することである。
従って、本発明の目的は、従来の水酸化マグネシウム系
難燃剤のにおける上記問題点が解消され、耐白華性と伸
び等の機械的性質とに優れた水酸化マグネシウム難燃剤
及びその製法を提供するにある。
本発明の他の目的は、比較的低コストであり且つ製造も
容易な水酸化マグネシウム系難燃剤及びその製法を提供
するにある。
(問題点を解決するための手段) 本発明によれば、天然産ブルーサイトを、コールターカ
ウンター法によるメジアン径が2乃至6μmとなるよう
に湿式粉砕し、この粉砕物を脂肪酸のアンモニウム塩又
はアミン塩で表面処理し、次いで乾燥することを特徴と
する水酸化マグネシウム系難燃剤の製法が提供される。
本発明によればまた、発達したブルーサイト型結晶構造
を有し且つ2乃至6μmのメジアン径と1×10-3以下の
格子歪係数を有する水酸化マグネシウム粒子と、該粒子
の表面を被覆し且つ少なくとも一部がマグネシウム塩を
形成している脂肪酸層とから成り且つ式 式中、I001は試料の面指数[001]のX線回折ピーク強
度であり、I101は試料の面指数[101]のX線回折ピー
ク強度である、 で定義される配向度(D0)が2以上であることを特徴と
する耐白華性に優れた水酸化マグネシウム系難燃剤が提
供される。
本発明によれば更に、上記特定の水酸化マグネシウム系
難燃剤をオレフィン系樹脂に配合して成る難燃性樹脂組
成物が提供される。
(作用) 本発明では天然産のブルーサイトを水酸化マグネシウム
の原料として用いることが一つの特徴である。天然産の
ブルーサイトでは、ブルーサイト型の結晶構造がよく発
達しており、しかも格子歪係数も1×10-3以下、特に8
×10-4以下であるという合成水酸化マグネシウムには認
められない特徴を有する。
本発明者等は、本発明に至る研究過程において次の如き
興味のある事実を見出した。即ち、種々の格子歪係数を
有する水酸化マグネシウムの試料を用意し、この水酸化
マグネシウムを炭酸水中に浸漬し、格子歪係数と炭酸マ
グネシウム生成量との関係を調べ、第1図の線図に示す
結果を得た。第1図の結果から、水酸化マグネシウム粒
子表面での炭酸マグネシウムの生成量は、水酸化マグネ
シウムの格子歪係数と密接な関係があり、格子歪係数が
大きくなればなる程、炭酸マグネシウムの生成量が増大
するという事実が明らかである。
本発明ではかかる知見に基づき、結晶が良く発達してお
りしかも格子歪の比較的小さいものとして天然産のブル
ーサイトを原料として用いるものである。ところで、天
然産のブルーサイトは粒子が粗大であり、そのままでは
樹脂中に配合することができない。本発明では、このブ
ルーサイトを湿式粉砕し、しかもコールターカウンター
法によるメジアン径が2乃至6μm、特に2乃至4μm
となるように粒度調整することが第二の特徴である。
ブルーサイトを空気中で摩砕すると、ずり応力によりブ
ルーサイトの層間が容易に分断されて[001]面の剥離
と再結晶によりX線的に無定形物質となることが知られ
ている(“粘度ハンドブック”第二版、日本粘度学会
編、技報堂出版、(1967年))。かかる公知事実からす
ると、天然産ブルーサイトは発達した結晶構造を有する
としても、これを粒度調整のため粉砕すると、折角の結
晶構造が破壊されることが予測される。しかるに、本発
明に従い、天然産ブルーサイトを湿式粉砕すると、この
ブルーサイトの結晶化度や格子歪係数を事実上変化させ
ることなしに、前述した粒度に粒度調整することが可能
なるものである。本発明においては、粒度が上記範囲に
あることも重要であり、粒径が上記範囲を越えて大きく
なると、樹脂に配合した組成物の機械的強度が低下する
傾向が顕著となり、一方粒径が上記範囲よりも小さくな
ると、配合組成物の溶融流動特性や成形性が低下する傾
向があり、何れも好ましくない。
次いで得られた粉砕物を脂肪酸のアンモニウム塩又はア
ミン塩で表面処理し、乾燥することが第三の特徴であ
る。即ち、ブルーサイト粉砕物には、未だ水酸化マグネ
シウムの活性な面が存在している。この粉砕物を脂肪酸
のアンモニウム塩又はアミン塩で表面処理し、このもの
を乾燥すると、この塩が分解してアンモニアやアミンが
揮散し、表面に活性な脂肪酸が残留する。この脂肪酸の
少なくとも一部は活性な水酸化マグネシウム・サイトと
反応し、活性面のブロッキングが行われる。かくして、
本発明によれば、炭酸ガスとの反応性が顕著に抑制され
た水酸化マグネシウム系難燃剤が提供されることが了解
されよう。しかも、水酸化マグネシウム粒子表面に存在
する脂肪酸マグネシウムや脂肪酸は、水酸化マグネシウ
ム粒子を被覆する分散剤として、樹脂中への分散性を助
長する作用を示す。
ブルーサイト型水酸化マグネシウム粒子においては、C
軸方向[001]に平行な面では活性が少なく、これに対
する横断方向の面では活性が大きい。本発明の水酸化マ
グネシウム系難燃剤では、粒径が微細化された状態にお
いても、C軸方向への結晶が発達しており、その活性が
小さくなっていることも了解されよう。
第2図は、本発明の水酸化マグネシウム系難燃剤のX線
回折像を示す。一方、下記第A表は、ASTMカードによる
水酸化マグネシウム(ブルーサイト)のX線回折像を示
す。
第2図と第A表との対比から、本発明の水酸化マグネシ
ウム系難燃剤は[001]面の結晶が発達していることが
わかる。この特徴は、前記式(1)の配向度(D0)で規
定することができる。従来の合成水酸化マグネシウム系
難燃剤は、この配向度(D0)が1.7以下であるのに対し
て、本発明のものでは配向度(D0)が2以上、特に3以
上である。この特徴により、本発明の難燃剤は耐白華性
に優れていると共に、樹脂に配合したとき、伸びの保持
率が大きいという特徴を有する。
(発明の好適態様) 本発明に用いる天然産ブルーサイト(brucite)は、発
達したブルーサイト型結晶構造を有するものであり、一
般に80乃至96%、特に85乃至95%の純度と、1×10-3
下、特に8×10-4以下の格子歪係数とを有するものが好
ましい。その組成の代表例は次の通りである。
このブルーサイトは、我が国でも京都府大江山江山鉱
山、福岡県毘舎門岳等で産出するが、朝鮮民主主義人民
共和国、中華人民共和国旧満州領等で多量産出する。
天然産ブルーサイトの湿式粉砕は、ブルーサイトの水性
スラリーを調製し、このスラリーを、ボールミル、タワ
ーミル、円形振動ミル、らせん施動振動ミル、遊星形粉
砕機、サンドグラインダー、アトマイザー、パルペライ
ザー、スーパーミクロンミル、コロイドミロ、等に供給
して粉砕する。スラリーの濃度は一般に5乃至30重量
%、特に10乃至25重量%の範囲が適当である。粉砕物の
粒度は、前述した範囲にあるのが適当であり、一般に必
要でないが、所望により、粉砕スラリーを液体サイクロ
ンに通して分級操作を行ない、所望の粒度のものを取出
すこともできる。
この粉砕スラリーに、脂肪酸のアンモニウム塩又はアミ
ン塩を、乳化液の形で添加し、この系を撹拌して表面処
理を行う。脂肪酸としては、炭酸数8乃至20の飽和乃至
不飽和脂肪酸、例えばラウリン酸、パルミチン酸、ステ
アリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、トリ
デシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、ヘプタデシ
ル酸、ノナデカン酸、ベヘン酸、リノレン酸、アラキド
ン酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、大豆油脂肪酸、パー
ム油脂肪酸、硬化油脂肪酸等の混合脂肪酸等を挙げるこ
とができる。これらの内でもオレイン酸が好適である。
これらの脂肪酸をアンモニウム塩の形で用いることが好
適であるが、アミン塩を用いることもでき、この場合ア
ミンとしては、モノ−、ジ−、又はトリ−エタノールア
ミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン等を用いる
ことができる。これらのアンモニウム塩又はアミン塩
は、ブルーサイト当り、脂肪酸として1.5乃至6.0重量
%、特に2.0乃至5.0重量%の量で用いるのがよい。両者
の混合撹拌は、特に制限されないが、一般に20乃至90
℃、特に40乃至80℃の温度で行うのがよく、添加混合
後、或る時間ゆるやかな撹拌下に熟成させるのがよい。
得られる表面処理スラリーは、濾過、遠心分離、沈降等
の手段で水性媒体から固液分離し、乾燥し、解砕して製
品とする。
本発明の水酸化マグネシウム系難燃剤は、種々の熱可塑
性樹脂、特にオレフィン系樹脂の難燃剤として有用であ
る。オレフィン系樹脂としては、低−、中−又は高−密
度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレ
ン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン
−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共
重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイアノマ
ー)等を挙げることができ、本発明の水酸化マグネシウ
ム系難燃剤は樹脂当り90乃至230重量%、特に100乃至20
0重量%の量で配合することができる。
(発明の効果) 本発明によれば、結晶構造が発達し且つ格子歪係数の小
さい天然産ブルーサイトを原料として選び、これを湿式
粉砕し且つこれを脂肪酸のアンモニウム塩又はアミン塩
で表面処理することにより、粒子構造の点でも、また表
面活性の点でも、炭酸ガスとの反応性が抑制され、耐白
華性に優れた水酸化マグネシウム系難燃剤が提供され
た。かくして、この難燃剤を配合した樹脂成形品は、経
時による外観特性に優れているという利点を有する。ま
た、この難燃剤は、その粒子構造及び表面構造に関連し
て樹脂中への分散性に優れており、配合成形品は、破断
時伸びが大きく、機械的強度にも優れているという利点
がある。
(実施例) 実施例1 本実施例で、天然ブルーサイト(Brucite)を原料とし
て、耐白華性に優れた水酸化マグネシウム系難燃剤を製
造し、オレフィン系樹脂に配合した組成物について説明
する。
天然ブルーサイトとしては、朝鮮半島産、米国テキサス
州ランカスターのロウス鉱山産とカナダケベック州のア
ステストス産の3種類(A−1,B−1,C−1)を選んだ。
その組成(分析値)、ブルーサイイト純度、メジアン径
を測定し、下記第1表に示した。
なお、比較のために、海水マグネシウムより合成された
合成品水酸化マグネシウム(A社製)についても同様に
測定し、第1表に併せ表示した。
以下に本発明で物性特定や同定のために使用した測定方
法について記載する。
粉末X線回折の測定法:− 常法の粉末X線回折法の手順にしたがい、理学電気
(株)製X線回折装置(ゴニオメーターPMG−S2,レート
メーターECP−D2)を用いて下記に示す測定条件で測定
した。
(測定条件) 面指数(101)の格子係数の測定法:− 上記の項にて記載の粉末X線回折法の条件下で測定し
た回折図を基礎に、ジョンズ(Jorns)等が提案してい
る方法手順(“X線工業分析法”オーム社書店(1965
年)参照)に従い、面指数(101)と(202)角度を高純
度シリコン(純度99.99%)を用いて補正後、β(真の
半価幅)を求め、下記Hollの式(1)を用い、η(格子
歪係数)を求めた。
λ:Cu−Kα1線 1.5405Å θ:ブラック角 β:真の半価幅(ラジアン) ε:結晶子径(Å) η:格子歪係数 配向度(D0)の測定法:− 上記記載の粉末X線回折法で下記に示す測定条件下で測
定した回折図を基礎に、面指数(001)と(101)の回折
ピークの強度を下記配合度(D0)式(2)に代入し、配
向度(D0)を求めた。
配向度(D0)=I(001)/I(101) …(2) I(001):ブルーサイド面指数(001)のピーク強度
(cps) I(101):ブルーサイド面指数(101)のピーク強度
(cps) (測定条件) ターゲット Cu フィルター Ni ディテクター SC 電 圧 30kV 電 流 15mA カウントフルスケール 8000c/s 時定数 1sec スキャンスピード 2゜/min チャートスピード 1cm/min ダイバージェンススリット 1゜ レシービングスリット 0.15mm スキャッタリングスリット 1゜ グランシング角 6゜ ブルーサイト純度(%)の測定法:− 試料を上記記載の粉末X線回折法で、下記に示す測定条
件下で測定しした回折図を基礎に、面指数(101)の回
折ピークを用い、内部標準法により定量測定した。
内部標準法としては常法(“X線工業分析法”オーム社
書店(1965年)参照)により試料を予じめシリカゲル粉
末(水澤化学工業(株)製、シルトンLP−105)50重量
%に、フッ化カルシウム(CaF2、和光純薬(株)製、試
薬特級)を外割で10重量%添加し、充分均質に混合後、
下記測定条件下で測定した粉末X線回折図の、ブルーサ
イトの場合は面指数(101)、フッ化カルシウムの場合
は面指数(111)の回折ピークの面積比より計算し、ブ
ルーサイドの含有量をパーセントで求めた。
(測定条件) ターゲット Cu フィルター Ni ディテクター SC 電 圧 40kV 電 流 20mA カウントフルスケール 8000c/s 時定数 2sec スキャンスピード 1/4゜/min チャートスピード 1cm/min ダイバージェンススリット 1゜ レシービングスリット 0.3mm スキャッタリングスリット 1゜ グランシング角 6゜ CO2との反応性テストの測定法:− 25℃におけるCO2ガス飽和水溶液600ml中に試料粉末20g
を加え均質分散せしめた後、25℃で3日間放置し、次い
で、液部を濾別後、固体部を110℃で乾燥し、CO2との反
応性測定試料とした。
反応性の測定は、上記方法でCO2と接触せしめた試料を
上記項記載の粉末X線回折法と測定条件により測定し
た回折図を基礎に、面指数(101)の回折ピークを用
い、標準添加法により定量測定した。
標準添加法としては、常法により、試料にまずシリカゲ
ル(上記と同様の水澤化学工業(株)製)を50重量%添
加後、外割にて、ブルーサイト標準品を5重量%、10重
量%と各々添加し、面指数(101)の回折ピークの面積
増加比より計算し、CO2と反応した水酸化マグネシウム
の量を求め、この値より、CO2との反応により、生成し
た炭酸マグネシウムの生成量(%)とした。その数値が
小さい程、反応性が低いと評価した。
平均粒子径(メジアン径)の測定法:− 200mlビーカーに試料1gをはかり採り、これに脱イオン
水150mlを加えて撹拌下、超音波で2分間分散させる。
次いでこの分散液をコールターカウンタ社製コールター
カウンターTA II型を使用し、アパーチャーチューブ100
μmを用いて測定する。この時得られた累積分布図より
平均粒子径(メジアン径(μm))を求めた。
この原料となる天然ブルーサイト(試料番号A−1およ
びB−1)150gと水750g(スラリー濃度20%)を容量7
の磁製ポットミルにそれぞれ採り、フリントボールを
粉砕媒体として、8時間回転させ、湿式粉砕を行った。
粉砕後粉砕スラリー2種類(試料番号A−2,B−2)を
容器に採り出し、約80℃の温度に加熱し、このスラリー
液に、予め調製されたオレイン酸アンモニウムのエマル
ジョン水溶液を撹拌下に注加し、ブルーサイト固形分に
対して、オレイン酸アンモニウムの量が2.5重量%に相
当する量を加え、さらに約80℃に保持しながら2時間撹
拌し、各ブルーサイト粒子表面にオレイン酸アンモニウ
ムを一部反応させながら表面処理した。この表面処理
後、濾過、水洗し、110℃で乾燥して、オレイン酸アン
モニウムで表面処理されたブルーサイト型水酸化マグネ
シウム系難燃剤粉末2種類(試料番号A−4とB−4)
を製造した。
ここに製造した2種類のブルーサイト試料のうち、オレ
イン酸アンモニウムによるブルーサイト表面処理する前
のブルーサイトスラリーより濾過、乾燥して調製した未
処理のブルーサイト粒子粉末2種類(試料A−3,B−
3)について、下記に示す物性測定を行い、その結果を
下記第2表に示した。
なお、前記した合成品を比較例として同様の物性測定を
行い、その結果を第2表に併せ表示した。
次いで、該2種類の試料を用いて、オレフィン系樹脂に
配合し、樹脂製品としての評価を引張り伸び残率テスト
と耐炭酸ガス性(耐白華性)テストで行い、さらに難燃
効果を限界酸素指数のテストで評価した。
なお、比較例として、前記合成品についても同様にして
評価した。
本実施例で選んだ樹脂は工業用に市販されている東ソ社
製EVA(Ethylene Vinyl Acetate:ウルトラセン630)と
日本ユニカー社製EEA(Ethylene Ethyl Acrylate:DPDJ
6169)の2種類を選んだ。
樹脂に対する配合量は、樹脂100重量部に対し、試料粉
末130重量部を加え3.5インチの混練ロールを用い、100
℃で10分間ロール混練し、表面がテフロン加工されたス
テンレス製プレス板に挟み、130℃で7分間プレスし、
各試験用シート片(伸び残率テスト用は厚さ1mmでダン
ベル型(JIS K−7113)、耐炭酸ガス性テスト用は60mm
×120mm×1mm、限界酸素指数測定テスト用は6mm×80mm
×1mm)を調製した。
以上の試験用シート片を用いて、それぞれの物性テスト
を行い、その結果を第3表に表示した。
以下に難燃剤の配合された樹脂製品の物性評価を行った
テスト測定法について記載する。
引張り伸び残率テストの測定法:− 上記方法で調製した試験用シートを、関係湿度90%でCO
2ガスで飽和されたデシケータ中に吊し、30℃の恒温室
に2週間静置し、この2週間CO2ガス中に曝された試験
用シートをダンベラ型に切断跡、JIS−K−7113記載の
プラスチックの引張試験方法に準拠して、測定した。伸
び残率が大きい程、シートの引張りに対する耐性が強い
ことを示している。
耐炭酸ガス性(耐白華性)テストの測定法: 上記方法で調製した試験用シートを、関係湿度90%でCO
2ガスで飽和されたデシケータ中に吊し、30℃の恒温室
に2週間静置し、この2週間での試験用シートの重量増
加量を求め、重量増加率(%)で表示し、増加率が小さ
い程、耐炭酸ガス性(耐白華性)に優れていると評価し
た。
限界酸素指数(%)テストの測定法:− (株)東洋精機製作所製キャンドル法燃焼試験機を使用
し、JIS−K−7201記載のA法に準拠して、試験を行
い、限界酸素指数(%)を求め、この指数が大きい程、
難燃効果が大きいと評価した。
電気絶縁性(VR,Ω・cm)テストの測定法:− JIS−K−1723に記載の方法に準拠して、所定量の試料
が配合された樹脂シート片(厚さ1mm)を、60%関係湿
度に保たれたデシケーター中に24時間(20℃)保持した
後、該試験シート片にスズ箔を純ワセリンを用いて貼り
付け、直偏法により、シートの電気抵抗値を測定し、こ
の測定値から下記式により体積固有抵抗値ρ(Ω・cm)
を求めた。
ρ:体積固有抵抗値(Ω・cm) A:スズ箔(小さい方)の面積(cm2) D:シートの厚さ(cm) 以上の結果、本発明の方法で製造された2種類のブルー
サイトはいずれも好適な粒子径に調製されており、しか
も格子歪係数は小さく、結晶が良く発達しており、また
配向度が高く、樹脂への配合時における配向性分散に効
果的である。さらに本実施例におけるオレイン酸塩で表
面処理されたブルーサイトは、CO2飽和水中での反応性
が低く押えられ、炭酸化しにくい水酸化マグネシウムで
あり、しかも樹脂に配合されたシートは炭酸ガスとの反
応性が抑制されていることもあって白華性がなく、しか
も難燃性に優れていることが合成品の場合と比較すると
き良く理解される。
実施例2 本実施例では、脂肪酸のアンモニウム塩またはアミン塩
で表面処理された水酸化マグネシウム系難燃剤について
説明する。
天然ブルーサイトの湿式粉砕スラリーとしては実施例1
にて記載の方法で調製した試料番号A−2のスラリーを
用いて、実施例1に記載と同様の方法により、市販1級
試薬より2種類の脂肪酸塩を選び、下記第4表に示す量
割合で表面処理し、濾過、水洗、乾燥し、それぞれ表面
処理されたブルーサイト型水酸化マグネシウム系難燃剤
2種類(試薬番号2−1及び2−2)を製造した。
なお、表面処理剤として、オレイン酸ソーダを用いて、
同様に表面処理し、濾過後、イオン交換水で充分洗浄し
て調製した。比較例試料も調製した。
ここに調製したオレイン酸塩で表面処理されたブルーサ
イト系の白華性が防止された難燃剤試料について、実施
例1の場合と同様にしてオレフィン系樹脂2種類(EVA,
EEA)にそれぞれ樹脂100部に試料130部を配合し、その
各々の物性測定を行い、その結果を第4表に併せ表示す
る。
以上の結果、脂肪酸のアンモニウム塩およびアミン塩を
表面処理する時は、オレイン酸ソーダで表面処理した時
に較べて、CO2の反応性が低く、耐白華性に優れてお
り、しかも電気絶縁性にも優れているオレフィン系樹脂
への配合難燃剤であることが理解される。
【図面の簡単な説明】 第1図は、本発明の水酸化マグネシウム系難燃剤が持つ
格子歪係数と、炭酸マグネシウムの生成量(%)との関
係図を示す。 第2図は本発明の水酸化マグネシウムと合成の水酸化マ
グネシウム(比較例)のX線回折図を示す。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】天然産ブルーサイトを、コールターカウン
    ター法によるメジアン径が2乃至6μmとなるように湿
    式粉砕し、この粉砕物を脂肪酸のアンモニウム塩又はア
    ミン塩で表面処理し、次いで乾燥することを特徴とする
    水酸化マグネシウム系難燃剤の製法。
  2. 【請求項2】天然産ブルーサイトが80乃至96%の純度と
    1×10-3以下の格子歪係数とを有するものである請求項
    1記載の製法。
  3. 【請求項3】脂肪酸のアンモニウム塩又はアミン塩を、
    ブルーサイト当り脂肪酸としては1.5乃至6.0重量%の量
    で用いる請求項1記載の製法。
  4. 【請求項4】発達したブルーサイト型結晶構造を有し且
    つ2乃至6μmのメジアン径と1×10-3以下の格子歪係
    数を有する水酸化マグネシウム粒子と、該粒子の表面を
    被覆し且つ少なくとも一部がマグネシウム塩を形成して
    いる脂肪酸層とから成り且つ式 式中、I001は試料の面指数[001]のX線回折ピーク強
    度であり、I101は試料の面指数[101]のX線回折ピー
    ク強度である、 で定義される配向度(D0)が2以上であることを特徴と
    する耐白華性に優れた水酸化マグネシウム系難燃剤。
  5. 【請求項5】オレフィン系樹脂に請求項4記載の水酸化
    マグネシウム系難燃剤を配合して成る難燃性樹脂組成
    物。
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