JPH0740801A - エアバッグ用蓄圧式ガス発生器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】安全・無害な蓄圧式ガス発生器を提供するこ
と。 【構成】本発明の蓄圧式ガス発生器は、ガスボンベ内に
封入される蓄圧ガスと、前記ガスボンベ内に配設され点
火により発熱し前記蓄圧ガスとの反応により固体物のみ
を生成する発熱体と、衝撃感知手段の出力信号により作
動し前記発熱体に点火する点火手段とを含む。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、エアバッグ用のガス発
生器に関し、特に蓄圧式のガス発生器に関し、例えば自
動車のステアリングホイールにエアバッグと共に装着さ
れ、衝突の際にエアバッグにガスを供給してエアバッグ
を展開させ、これにより衝撃から乗員を保護する。

【０００２】

【従来の技術】蓄圧式のガス発生器は、蓄えた圧力によ
りエアバッグ内にガスを放出する方式のガス発生器であ
る。

【０００３】従来、この種のガス発生器の構造は、主と
して、高圧ボンベ内に封入されたアルゴンガスと、この
アルゴンガスと共に高圧ボンベ内に配設され、固体ガス
発生剤を充填するガス発生手段とからなっている。固体
ガス発生剤として、例えば米国特許第４，９８１，５３
４号に開示されるものは、アルカリ金属の硝酸塩あるい
は過塩素酸塩などの無機酸化剤と、ポリ塩化ビニール、
ポリブタジエン等の有機燃料成分より構成されている。

【０００４】そして、衝撃を感知すると、高圧ボンベを
開封すると共に、固体ガス発生剤を点火・燃焼させ、そ
れにより発生した高温の燃焼ガスとアルゴンガスとを混
合し、急速にエアバッグ内に噴出させてエアバッグを展
開していた。また、アスピレータ機構を備えるガス発生
器においては、アスピレータ（吸気）作用により、燃焼
ガスとアルゴンガスとの混合ガスに車室内空気を加えて
エアバッグを展開していた。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】固体ガス発生剤を備え
る従来の蓄圧式ガス発生器は、その固体ガス発生剤が燃
焼するときガスを生成する。その生成ガス成分は、通
常、窒素、二酸化炭素、水素、水等の人体に無害なガス
以外に、一酸化炭素、窒素酸化物、ハロゲン化物、青酸
等のガス状有害物並びにアルカリ金属のハロゲン化物、
シアン化物等の固体有害物質を含んでいる。

【０００６】従って、これらの有害物質を充分に除去す
るために、従来のガス発生器は、濾過機構を備えなけれ
ばならない。また、排出ガスを人体に無害な程度にまで
希釈するために、アスピレータ機構を付加することも行
なわれていた。

【０００７】そのために、従来の蓄圧式ガス発生器は、
その重量が増大し、構造が複雑となり、製造・組立が容
易ではなく、価格も高価となっていた。また、蓄圧ガス
として、高価なアルゴンガスを使用するため、コスト的
に不利であった。

【０００８】よって、本発明は、上記従来技術の有する
問題点を解消する新規なエアバッグ用ガス発生器を提供
することを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明の蓄圧式ガス発生
器は、ガスボンベ内に封入される蓄圧ガスと、前記ガス
ボンベ内に配設され点火により発熱し前記蓄圧ガスとの
反応により固体物のみを生成する発熱体と、衝撃感知手
段の出力信号により作動し前記発熱体に点火する点火手
段とを含む。

【００１０】そして、前記発熱体は、蓄圧ガスと発熱反
応を行なう金属発熱剤であることが好ましい。

【００１１】また、蓄圧ガスが窒素ガス、又は窒素ガス
と、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスの中から選ばれ
た少なくとも１種類のガスとの混合ガスであることも好
ましいことである。

【００１２】更に、金属発熱剤を窒化物を生成する単体
金属、又は２種類以上の金属からなる合金又は混合物と
することができる。

【００１３】また、単体金属がカルシウム、マグネシウ
ム、硼素、チタン、ジルコニウム、アルミニウムの群の
中から選ばれた１種類の金属であり、合金又は混合物が
前記群の中から選ばれた２種類以上の金属からなるよう
にすることもできる。

【００１４】本発明の蓄圧式ガス発生器に備わる発熱体
は、金属発熱剤から構成することができる。また、蓄圧
ガスとしては、窒素ガス、又は窒素ガスと不活性ガスと
の混合ガスから構成することが好ましい。金属発熱剤に
用いる金属としては、高温で窒素と容易に化学反応して
安定な窒化物を生成すると同時に、高い反応熱の得られ
るものが好ましい。このような金属として、例えばカル
シウム、マグネシウム、硼素、チタン、ジルコニウム、
及びアルミニウムのいずれかの単体、又はこれらの中か
ら２種類以上選ばれた、合金又は混合物が挙げられる。

【００１５】ガス発生器に組込む発熱剤は、自動車の衝
突後、約３０ミリ秒から６０ミリ秒の短時間の内に、蓄
圧ガスの排出に合せてその燃焼の完結と蓄圧ガスとの熱
交換を完了しなければならない。そのために、発熱剤の
性状は、多孔質若しくは繊維状又は薄膜状に構成するこ
とが好ましい。

【００１６】また、発熱剤の形状は、ボンベの形状に応
じ排出される蓄圧ガスとの熱交換が良好に行なわれるよ
う、円筒状、円盤状、又は塊状とすることができる。特
に、ボンベ及び排出管が円筒形の場合、この排出管に巻
付け可能であるため、繊維状の発熱剤を用いて円筒状に
形成すると有利である。

【００１７】（作用）発熱体は点火により発熱し、蓄圧
ガスと熱交換を行ない、また蓄圧ガスと反応して固体物
を生成する。蓄圧ガスはこの熱を得て膨張し、排出管を
通りガスボンベの外に出てエアバッグを展開する。本発
熱体は、蓄圧ガスとの反応によりガスは生成しない。従
って、本蓄圧式ガス発生器は、蓄圧ガスのみをエアバッ
グに供給する。

【００１８】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づき説明
する。

【００１９】図１は、本蓄圧式ガス発生器の断面図であ
る。本ガス発生器は、ガスボンベ６と、排出管４と、封
板７と、蓄圧ガス１２と、発熱体、すなわち金属発熱剤
１と、整流管９と、点火手段、すなわち点火器５と、封
鎖解除手段１３とを含んでいる。

【００２０】ガスボンベ６は、中空の容器でその一側に
開口１４を備えている。このガスボンベ６内に排出管４
が配設されている。排出管４は、ガスボンベ内にある側
が開放した円筒形の管で、その周壁部４ａに複数の貫通
孔３が穿たれている。この排出管４は、前記開口１４の
内径に等しい外径を有し、その周壁部４ａの一部がこの
開口１４を通ってガスボンベの外へ突出している。ガス
ボンベの側壁部６ａと排出管の周壁部４ａが交差する部
分に周方向に溶接１５がされている。この排出管４の開
口１４に嵌合する部分内に封板７が配設されている。こ
の封板７は、破壊可能な薄板部材からなり、気密を保っ
て排出管４の内周壁に固定され、前記開口１４領域を塞
いでガスボンベの内部を外部に対し遮断している。排出
管４のガスボンベの外へ突出している部分に排気口２０
が穿設され、この排気口２０を含む突出部分の内側にフ
ィルタ２１が配設されている。このフィルタ２１は、金
網より構成することができ、蓄圧ガスが排気口２０を通
過する際に雷管１０や封板７の破片を捕集する。

【００２１】ガスボンベ６内には蓄圧ガス、すなわち窒
素ガスが所定圧で封入されている。蓄圧ガスは、これに
限らず、例えばヘリウム、アルゴン等の不活性ガスと窒
素ガスとの混合ガスでもよい。

【００２２】排出管４のガスボンベ内にある部分の周囲
に発熱体、すなわち金属発熱剤１が配設されている。こ
の金属発熱剤１は、線径２０ミクロン以下のアルミニウ
ム繊維からなり、これを排出管の周壁部４ａに巻付け、
各層毎に巻方向をかえて各層間で繊維が交差するように
巻いて形成されている。このように構成された金属発熱
剤１は、通気性を有している。金属発熱剤１と周壁部４
ａの間にはフィルタ効果を有する金網層２が配設されて
いる。この金属発熱剤１は、点火により燃焼し、窒素ガ
スと反応して反応熱を発生すると共に、固体物、すなわ
ち窒化物を生成する。また、反応熱により高温となった
金属発熱剤１は、窒素ガスとの間で熱交換を行なうよう
になっている。

【００２３】この金属発熱剤１を取巻いて整流管９が配
設されている。この整流管９は、一端がガスボンベの側
壁部６ａに固定され、他端が開放された円筒部材からな
り、この円筒部材は、金属発熱剤１の外径よりも大きな
内径を有し、所定の間隔をあけて金属発熱剤１の外側に
環状通路１６を形成している。この環状通路１６は、窒
素ガスと金属発熱剤との接触を良好にするためのもので
あり、この環状通路１６を通り金属発熱剤１の外周より
金属発熱剤の内部に窒素ガス１２が導入されるようにな
っている。

【００２４】前記金属発熱剤の一方の側に点火手段、す
なわち点火器５が配設されている。この点火器５は、衝
撃感知手段（図示せず）の出力信号により作動して発火
するようになっている。この点火器５に接触して、環状
の容器１８が配設され、その中には硼素・硝石系の点火
薬１７が充填されている。また、容器１８は金属発熱剤
１にも接触している。点火器５が作動して発火すると点
火薬１７が燃焼し、これにより金属発熱剤１に点火する
ようになっている。

【００２５】封鎖解除手段１３は、管体１９内に火薬を
装填し電気信号によりこの火薬が発火する雷管１０と、
この火薬のエネルギにより放出され封板７に穿孔する穿
孔錐１１とからなっている。

【００２６】衝撃を感知手段が感知すると、その信号が
雷管１０に送られ、雷管１０の管体１９内にある火薬が
発火して穿孔錐１１を封板７に向け放出する。これによ
り封板７は穿孔されてガスボンベの封鎖が解除される。
このとき蓄圧ガス、すなわち窒素ガス１２の放出が開始
される。衝撃感知手段からの信号は、また同時に点火器
５に送られ、点火器５を作動させる。点火器５の作動に
より点火薬１７が着火し、高温の火炎を生成する。この
火炎は、通気性を有する金属発熱剤１を通り軸方向に金
属発熱剤に点火する。これにより金属発熱剤１は燃焼
し、高温状態となる。

【００２７】窒素ガス１２の放出が開始されると、窒素
ガス１２の一部は、符号Ｂで示すように、環状通路１６
を通って金属発熱剤１の外周部より金属発熱剤１内部に
入り金属発熱剤１を通過し、金網層２、貫通孔３を経て
排出管４内部に出る。また、符号Ａで示すように、窒素
ガス１２の残りの部分は、排出管４の開放端より、直接
排出管内部に入る。高温状態となった金属発熱剤１を窒
素ガスが通過する際に、化学反応が起こり、この反応に
より高い反応熱が生じると同時に、安定な窒化物を生成
する。この反応熱により窒素ガス１２は加熱され、窒素
ガス１２の２つの流れＡ及びＢは、排出管４内で合流
し、熱的に均質化されてから、排気口２０よりエアバッ
グ（図示せず）内に流入し、エアバッグは衝撃から乗員
を保護するべく急激に膨張する。

【００２８】

【発明の効果】本発明の蓄圧式ガス発生器に備わる発熱
体は、ガスを発生することがなく、従って人体に安全な
蓄圧ガスがエアバッグ内に導入され、そのため乗員を保
護するエアバッグに好適の安全な蓄圧式ガス発生器を提
供することができるものである。

【００２９】また、本発明の蓄圧式ガス発生器は、有害
物質を除去するための濾過機構、アスピレータ機構等を
不要とすることができるから、ガス発生器の重量を軽減
することができると共に、構造が簡素化され、その結果
ガス発生器の軽量化が達成され、また製造・組立が容易
となり、更に安価に製造できるものである。

【００３０】更に、本発明の蓄圧式ガス発生器は、蓄圧
ガスとして、高価なアルゴンガスの代りに安価な窒素ガ
スを使用することができるから、コスト的に有利とな
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の蓄圧式ガス発生器の断面図である。

【符号の説明】

１ 金属発熱剤 ３ 貫通孔 ４ 排出管 ５ 点火器 ６ ガスボンベ ７ 封板 ９ 整流管 １２ 窒素ガス（蓄圧ガス） １３ 封鎖解除手段 １４ 開口

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ガスボンベ内に封入される蓄圧ガスと、前
   記ガスボンベ内に配設され点火により発熱し前記蓄圧ガ
   スとの反応により固体物のみを生成する発熱体と、衝撃
   感知手段の出力信号により作動し前記発熱体に点火する
   点火手段とを含む蓄圧式ガス発生器。
2. 【請求項２】前記発熱体は、蓄圧ガスと発熱反応を行な
   う金属発熱剤である請求項１に記載の蓄圧式ガス発生
   器。
3. 【請求項３】蓄圧ガスが窒素ガス、又は窒素ガスと、ヘ
   リウム、アルゴン等の不活性ガスの中から選ばれた少な
   くとも１種類のガスとの混合ガスである請求項２に記載
   の蓄圧式ガス発生器。
4. 【請求項４】金属発熱剤が窒化物を生成する単体金属、
   又は２種類以上の金属からなる合金又は混合物である請
   求項３に記載の蓄圧式ガス発生器。
5. 【請求項５】単体金属がカルシウム、マグネシウム、硼
   素、チタン、ジルコニウム、アルミニウムの群の中から
   選ばれた１種類の金属であり、合金又は混合物が前記群
   の中から選ばれた２種類以上の金属からなる請求項４に
   記載の蓄圧式ガス発生器。