JPH0740017B2 - セメント混合物中のセメント量の測定方法 - Google Patents

セメント混合物中のセメント量の測定方法

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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、セメント混合物中のセメント量を瞬時に、し
かも連続的かつ精度良く検出する方法に関するものであ
る。
「従来の技術」 セメント混合物は、建築、土木等さまざまな分野で使用
されており、強度の確認などのために混合物中のセメン
ト量を測定する必要が生じる。従来、セメント混合物中
のセメント量を測定するには、セメント混合物を絶乾状
態にして水分量を測定した後、粉砕して塩酸で溶解し、
酸化カルシウム、シリカ、ないしは不溶残分を化学分析
により定量し、その値からセメント量を推定するといっ
た方法が取られていた。
「発明が解決しようとする課題」 しかし、この方法では試験に長時間を要する他、化学分
析室に試料を持ち込む必要があり、現場施工時の施工管
理には適していない。また、骨材ないし土中に塩酸で溶
解する成分を含む場合には、精度の面でも問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、前記問題点を解消
し、セメント混合物中のセメント量の測定により施工管
理を容易にするため、短時間で簡便にセメント量を測定
できるようにし、かつ測定精度を向上することにある。
「課題を解決するための手段」 本発明のセメント混合物中のセメント量の測定方法で
は、セメント混合物に使用するセメント中にあらかじめ
セメントに対して1重量%以上の割合で強磁性体である
フェライトを混合しておき、得られたセメント混合物の
透磁率を測定し、この透磁率に基づいてセメント混合物
中のセメント量を検出することを前記課題の解決手段と
した。
「作用」 本発明の測定方法は、第4図に示すように、ガラス管10
1にフォルマル線102aでコイル102を巻いたものにおい
て、コイル102のインダクタンスが前記ガラス管101内に
磁性体を入れたときに変化することを利用したもので、
フェライトを含むセメントをコイル内に挿入した時の空
心時からのインダクタンスの変化量からフェライト量を
算出し、これによりセメント混合物中のセメント濃度を
知る方法である。
本発明の原理を以下にさらに詳しく説明する。
前記第4図の装置において、 S:コイル2内の断面積 ΔS:ガラス管1内の試料の断面積 I:電流 n:コイル2の単位長さ当たりの巻数 l:コイルの長さ H:発生する交流磁界 Z0:空心時のインピーダンス L0:空心時のインダクタンス μ0:真空の透磁率 Z1:試料をガラス管1内に入れた時のインピーダンス L1:試料をガラス管1内に入れた時のインダクタンス μS:試料の比透磁率 R0:コイル2つの抵抗 とすると、 空心時のインピーダンスZ0は、 Z0=R0+jωL0=R0+jω(nlH/I)μ0Sとなる。
ただし、j:純虚数 ω:角周波数=2πf(f;周波数) L0=(nlH/I)μ0S また、試料をガラス管1内に入れた時のインピーダンス
Z1は、試料を入れると、ΔSの部分は、透磁率μμ
となり、残りの(S−ΔS)の部分はμのままである
とすると、 Z1=R0+jωL1 L1=(nlH/I){μ(S−ΔS)+μμΔS} したがって、 Z1=R0+jω(nlH/I){μ(S−ΔS)+μμ
ΔS} 一般にμは複素数であり、μ=μ′−jμ″で与え
られるから、 Z1=R0+jω(nlH/I){μ(S−ΔS) +μ(μ′+jμ″)ΔS} =R0+ω(nlH/I)μμ″ΔS +jω(nlH/I){(S−ΔS)μμ′ΔS} ここで、L1=(nlH/I)μ0S したがって、 Z1=R0+jωL0(ΔS/S)μ″ +jωL0(1/S){(S−ΔS)+μ′ΔS} よって、 R1=R0+ωL0(ΔS/S)μ″ ∴μ″=(S/ΔS){(R1−R0)/ωL0} L1=L0(1/S){(S−ΔS)+μ′ΔS} ∴μ′={(L1/L0)S−(S−ΔS)}(1/ΔS) =(S/ΔS){(L1/L0)−1}+1 また、R1=ωL1/Q1、R0=ωL0/Q0 Q1、Q2:Quality factor 故に、試料の透磁率は、 μ′=(S/ΔS){(L1/L0)−1}+1 μ″=(S/ΔS)(1/Q1){(L1/L0)−(Q1/Q0)} で与えられる。
よって、コイルのインダクタンスおよびQ値の変化を空
心と試料をコイルに入れた場合とで測定することにより
試料を比透磁率を求めることができる。
このとき、強磁性体として高周波まで磁気損失の無いも
のを用いれば、測定周波数では、μ′が0でμ″のみと
なり、コイルのインダクタンス変化のみの測定により透
磁率を測定できる。さらに、非磁性体中に強磁性粒子を
分散させた混合物の透磁率は、分散した強磁性体の量に
比例する。そこで、セメントに対してそれと同一挙動を
なす強磁性体を配合し、これら2つの配合比を一定にし
ておき、区別した他の非磁性体との混合状態で混合物の
透磁率のコイルをインダクタンス変化から測定すること
により、セメント混合物中のセメント量を測定すること
ができる。それゆえ、あらかじめセメントに対して一定
の割合でフェライト等の強磁性体を混合しておけば、強
磁性体濃度よりセメント量を算出することが可能とな
る。
ここで、強磁性体としてフェライトを用い、セメントに
対するフェライト濃度を、土中に含まれる天然の強磁性
体の影響をなくすため、1wt%以上とする。
「実施例」 以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
(実施例1) フェライトとタフロック3型(住友セメント株式会社製
特殊セメント)を表1に示した比率で混合してセメント
ミルク(濃度W/C=100%)を作製し、比透磁率の実部に
比例するインダクタンス変化((L−L0)/L0;以下これ
を量磁気変化量と呼ぶ)とフェライト含有量との関係を
測定した。
(実施例2) タフロック3型に5重量%のフェライトを混入したもの
からセメントミルク(濃度W/C=100%)を作製し、この
セメントミルクに試料土を表2に示すように添加してい
き、磁気変化量とフェライト含有量との関係を測定し
た。なお、試料土としては、シルト質砂(w=40%)に
重量比で50%の水を加えたもの(w′=110%)を使用
した。
前記各実施例における「磁気変化量とフェライト含有量
との関係の測定」は、次のような測定方法によった。
[測定方法] 第4図に示すように、長さ約30cmのガラス管101にフォ
ルマル線102aで600ターンのコイル102を巻き、このコイ
ル102のインダクタンスおよびQ値を各周波数でインピ
ーダンスアナライザ103を用いて測定する。
前記実施例1,2の測定結果を第1,2,3図に示した。
第1図には測定したインダクタンスの変化量(L−L0
/L0の周波数依存を示した。この量はμ′に対応してい
る。タフロック3型と水との混合物だけからなる(セメ
ント+水)では、インダクタンスは前記ガラス管1内に
物がない空心状態とほぼ同じで、(L−L0)/L0は低周
波では0であり、10kHz付近から差が出てくる。ここ
で、数10kHz以上で値が大きくなるのはコイル102の共振
によるもので、この領域ではインダクタンス変化が透磁
率に対応しなくなるため、透磁率の評価には使用できな
い。それゆえ、セメントと水との混合物では、比透磁率
μ′は1と考えてよい。
しかし、土と水との混合物のみの試料では、(L−L0
/L0は測定誤差範囲内で、〜2×10-3であり、土の中の
何か強磁性体が含まれている可能性がある。
これらに対し、他のフェライトを混入した試料は、濃度
により(L−L0)/L0に差が見られ、20kHz付近までは周
波数に対してフラットな特性が得られている。
第2図は、(セメント+フェライト+水)の試料の(L
−L0)/L0の値を各周波数で、濃度に対してプロットし
たものである。濃度に対して(L−L0)/L0の変化は直
線的に変化しており、この値から濃度を推定することが
可能であることが分かる。
第3図は、(セメント+フェライト+土+水)の試料の
濃度が(L−L0)/L0に依存していることを示したもの
である。土のみの試料でも(L−L0)/L0は有限の値を
持つため、この場合はフェライト濃度推定のために土の
値を補正することが必要となる。
(実施例3) 第5図は本発明の測定方法を実施するのに用いられる装
置の一例の概略構成を示す図である。
この装置はコイル1を取り付けたパイプ2とセメント混
合物3を入れた容器4とを具備してなるもので、コイル
1にインピーダンスアナライザ5を電気的に接続し、こ
のインピーダンスアナライザ5に演算部6を、また演算
部6に表示部7をそれぞれ電気的に接続したバッチ処理
による測定装置である。
このような測定装置を用いてセメント混合物3中のセメ
ント量を測定するには、まず容器4にセメント混合物3
を採取し、この容器4をパイプ2内に収納する。次い
で、インピーダンスアナライザ5でコイル1のインダク
タンスを測定し、中空のインダクタンスを用いて演算部
6でインダクタンスの変化量を求め、セメント量を計算
して表示部7で表示する。
第6図は、フェライト濃度を一定にして各種セメントミ
ルクを作製し、第5図に示した装置を用いてインダクタ
ンス変化量の測定を行った結果を示したものである。こ
れを用いれば、インダクタンス変化量からセメント混合
物のセメント量を測定することができるのが分かる。
第7図はフェライトを配合したセメントと、土砂及び水
を混合したセメント混合物を流動させ、リアルタイムで
混合物中のセメント量を測定する装置の構成図である。
第7図に示した装置を用いてセメント量を測定するに
は、タンク8内でセメント混合物3を攪拌しつつ、ポン
プ9と流動調節弁10とで調節してタンク8内のセメント
混合物3の所定量をセンサ部11に送給する。ここでセン
サ部11は、パイプ2にコイル1を取り付けたもので、コ
イル1には第5図に示した装置と同様にインピーダンス
アナライザ5、演算部6、表示部7が順次接続されてい
る。センサ部11に送給された所定量のセメント混合物3
は、コイル1のインダクタンスをインピーダンスアナラ
イザ4で測定し、先にバッチ処理で求めた検量線をもと
に演算部6でセメント量を算出し、表示部7にて表示す
る。
第8図は、セメント混合物3に、さらにセメントを添加
し、あるいは水で希釈して混合物中のセメント量を変化
させて測定を行った結果の一例を示したものである。第
7図に示した装置により、セメント混合物中セメント量
を誤差10%以下で測定することができた。
(実施例4) 表3は、セメント混合物中でのフェライトの分散性を評
価するために行った実験に使用したフェライト、および
セメントの比重、磁化、粒径を示したものである。
これらのフェライト粒子をセメントに2.9重量%で配合
し、得られたセメント材料と水とを重量比で1:1に混合
してセメントミルクを作製した。このセメントミルクを
攪拌し、第9図に示した試験管20に採取して放置し、セ
メントを固化せしめた。この固化体を3分割し、第9図
中A,B,Cの各領域より一定量をサンプリングして磁化測
定を行った。その結果、第10図に示すように、フェライ
ト1〜3ではA,B,Cの各領域で単位質量当たりの磁化は
ほぼ等しく、セメントミルク中でフェライト粒子が均一
に分散していることが確かめられた。しかし、フェライ
ト4では、フェライトの沈降により磁化の分布が見ら
れ、フェライトとセメントとが均一に分散していないこ
とが判明した。これは、表3に示した粒径の値より、使
用したフェライトの粒径が大きいためであると考えられ
る。
次に、フェライト2を用いて、セメント中に5wt%フェ
ライトを配合し、水と重量比で1:1の割合で混合した
後、これを水と土砂の混合物で希釈して単位体積あたり
のセメント量が異なるセメント混合物を作製した。
作製したセメント混合物中のセメント量を第5図に示し
た装置により測定し、その結果を表4に示す。
表4より分かるように、セメント混合物中のセメント量
を誤差10%以下で測定することが可能であった。
(実施例5) 表5は本発明の適用性を現場レベルで確認するため、深
層混合処理工法による改良コラムから打設直後に採取し
た試料を用いて、本発明により測定したセメント量と従
来方法である化学分析により測定したセメント量を比較
したものである。
両測定方法の測定値がほぼ等しい値であること、及び計
画したセメント量を考えると、現場レベルでも本発明の
測定方法が十分適用可能であることが確認された。な
お、この実施例における施工方法ならびに測定方法は以
下に示す通りである。
[施工方法] 第11図に示す地盤に対して径600mm、長さ3500mmの改良
コラム21を深層混合処理工法により打設した。
施工手順を次に示す。まず、タフロック3型95重量%と
フェライト5重量%とを均一に混合したもの(以下、フ
ェライトセメントと称す。)を用意し、これを用いて濃
度w/c=100%のセメントミルクをミキサーにて作製し、
作製したセメントミルクをアジテータに貯える。次に、
グラウトポンプ及び圧送ホースにより改良機本体にセメ
ントミルクを圧送し、攪拌ロッドのパイプ内を通して先
端より低圧で噴射しながら地盤中に注入攪拌を行う。所
定深度(G.L.−3.5m)に到達した後、再び注入攪拌しな
がら引き上げて打設を完了する。
フェライトセメントの添加量は対象土1m3当たり外割り
で250kgとした。
[測定方法] ここでのセメント量の測定には、第5図に示したバッチ
処理による測定装置を用いた。
深度1,2,3mの試料を打設直後に採取し、現場内に持ち込
んだ測定装置により地盤中の磁性体濃度を補正し、その
場でセメント量を測定してこの測定値を対象土1m3当た
りの添加量に換算した。
化学分析によるセメント量の測定は、前記測定と同一試
料を試験室に持ち込み、従来方法により化学分析を行
い、前記測定の場合と同様に測定値を対象土1m3当たり
の添加量に換算した。
(実施例6) フェライト混入セメントを使用した場合の強度への影響
を確認するため、JIS R 5201−1981に準じてモルタル試
験を行い、その結果を表6に示す。なお、この試験で用
いた試料としては、タフロック3型中の2,5,7重量%を
フェライトで置き換えたものとした。
表6に示すように、フェライトを用いたものと標準砂を
用いたものとほぼ等しい値となり、フェライトは細骨材
の役割を果たしているだけで強度に悪影響を与えるもの
ではないことが確認された。
「発明の効果」 以上説明したように、本発明のセメント混合物中のセメ
ント量の測定方法は、セメント混合物に使用するセメン
ト中にあらかじめセメントに対して一定の割合で強磁性
体を混合しておき、得られたセメント混合物の透磁率を
測定し、この透磁率に基づいてセメント混合物中のセメ
ント量を検出するものである。すなわち本発明は、例え
ばフェライトなどの強磁性体を非磁性の材料中に混入す
ることにより、強磁性体の濃度によって材料の透磁率が
変化することを利用したものであり、セメント混合物の
透磁率を各濃度で測定することにより逆にこの測定透磁
率の値からセメント濃度を容易に算出し得るものであ
る。また特に、本発明は、あらかじめセメントに対して
1重量%以上の割合で強磁性体であるフェライトを混合
しておくので、土中に含まれる天然の強磁性体の影響を
なくすことができるものである。
したがって、本発明によれば、セメント混合物中のセメ
ント量を短時間で簡便かつ高精度に測定することがで
き、セメント混合物中のセメント量の測定値を施工管理
に生かすことができる。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第3図は本発明の一実施例を説明するため
のもので、第1図は測定したインダクタンスの変化量
(L−L0)/L0の周波数依存関係を示したグラフ、第2
図は(セメント+フェライト+水)の試料のインダクタ
ンスの変化量(L−L0)/L0の値を各周波数で濃度に対
してプロットしたグラフ、第3図は(セメント+フェラ
イト+水)の試料の濃度がインダクタンスの変化量(L
−L0)/L0に依存していることを示したグラフ、第4図
は本発明の測定方法に適用される透磁率の測定装置の一
例を示す構成図、第5図は本発明の測定方法を実施する
のに用いられるセメント量測定装置の一例を示す構成
図、第6図はセメント混合物中のセメント量とインダク
タンス変化量との関係を示すグラフ、第7図は本発明の
測定方法を実施するのに用いられるセメント量測定装置
の他の例を示す構成図、第8図はセメント量の時間変化
を示すグラフ、第9図は実施例4における試料のサンプ
リングの説明図、第10図はセメントミルク中でのフェラ
イトの分散性を示すグラフ、第11図は実施例5において
打設した改良コラムをの説明図である。 1……コイル、2……パイプ、 3セメント混合物、4……容器、 5……インピーダンスアナライザ、 6……演算部、7……表示部、 101……ガラス管、102a……フォルマル線、 102……コイル、 103……インピーダンスアナライザ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山内 文雄 東京都港区芝5丁目33番1号 日本電気株 式会社内 (72)発明者 蔦岡 孝則 東京都港区芝5丁目33番1号 日本電気株 式会社内 (56)参考文献 特開 平1−98957(JP,A) 特開 平2−206755(JP,A) 特開 平2−173559(JP,A)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】セメント混合物に使用するセメント中にあ
    らかじめセメントに対して1重量%以上の割合で強磁性
    体であるフェライトを混合しておき、得られたセメント
    混合物の透磁率を測定し、この透磁率に基づいてセメン
    ト混合物中のセメント量を検出することを特徴とするセ
    メント混合物中のセメント量の測定方法。
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