JPH0739480Y2 - アルミニウム用ホットチャンバダイカストマシンの射出ポンプ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、アルミ溶湯を溶湯保
温炉からダイカストマシンの金型装置に射出するホット
チャンバ形ダイカストマシンの溶湯射出ポンプに係り、
特に、アルミ溶湯による流路の侵食を防止し、ポンプ本
体の耐久性を向上させたものである。

【０００２】

【従来の技術】以下、図面を参照して従来のホットチャ
ンバ形ダイカストマシンの射出ポンプの一例を説明す
る。図３〜図５は、特公昭５５−４９９４５号における
ホットチャンバ形ダイカストマシンの射出ポンプの構成
を示す断面図，ポンプ本体の一部である多孔質のセラミ
ックスインサートの断面図および図３のＢ−Ｂ線に沿っ
た断面図である。即ち、ホットチャンバ形ダイカストマ
シンの金型１を取り付けた固定台２の近くに溶湯保温炉
３を設置し、この溶湯保温炉３の保温鍋４中には溶湯５
が貯えられている。固定台２の側面中央より伸びる２本
（図においては後側の１本のみを示す。）のタイバー６
にはナット７等の締付機構によってフレーム８が挿着さ
れ、このフレーム８に取付けたポンプ本体９がその大部
分が溶湯保温炉３の保温鍋４中の溶湯５に浸漬して吊り
下げられている。

【０００３】ポンプ本体９には上下に摺動するプランジ
ャ１０を嵌合するシリンダ１１が押台１２を介して固定
されており、また、プランジャ１０は軸１３とカップリ
ング１４を介して油圧シリンダ１５のピストン１６に連
結されている。従って、ピストン１６の下降に伴いプラ
ンジャ１０はシリンダ１１およびポンプ本体９のグース
ネック状の溶湯路１７を通してアルミ溶湯５をノズル機
構１９を介して金型１内に圧送するようになっている。
次いで、ピストン１６を上昇して図３の位置へ復帰して
射出動作は終了する。

【０００４】このとき、ポンプ本体９はアルミ溶湯の流
れ速度が早く最も激しい侵食を受けるグースネック状の
溶湯路１７部分を図４に示すように空孔部分に予め成形
した多孔質のセラミックスのインサート２０を設け、侵
食を受けないように形成している。図５における２１は
ポンプ本体９を構成する鋳鉄の内壁であり、２２は多孔
質のセラミックスのインサート２０をアルミ溶湯が通し
て形成された反応層である。

【０００５】次に、図６および図７を参照して特公昭５
６−２６５０３号の従来例を説明する。この例のホット
チャンバ形ダイカストマシンの射出ポンプのポンプ本体
２９は、金型１を取付けた固定台２の近くの溶湯保温炉
３内の保温鍋４中の溶湯５に浸漬され、上記図３に示す
ものと同様にフレーム８に吊り下げた状態で支持されて
いる。ポンプ本体２９にはグースネック状の溶湯路２７
が設けられ、この溶湯路２７の内面を図７に示すように
セラミックス製の管状部材３０，３１，３２および３３
の接続部を各々の嵌合面に水ガラスまたはリン酸アルミ
ニウム等の水溶液で作られた無機の液状結合剤を塗布
し、セラミックスの円筒３４，３５および３６を被せ、
それぞれの端面間を間隔ｔを設けた部分に固化させて固
定するか、もしくは予め管状部材３０，３１，３２およ
び３３の各々の端面間に間隔ｔを設けておき、セラミッ
クスの円筒３４ないし３６の代りにＺｒＯ₂ ・Ｙ₂ Ｏ₃
またはＡｌ₂ Ｏ₃ ・ＳｉＯ₂ などのセラミックス繊維で
織った布または抄いたペーパーなどからなるシートで管
状部材３０ないし３３の端部同志を囲繞して、上記液状
結合剤をシートに塗布して固化させることにより互いに
連結してインサートを形成している。

【０００６】次に、図８を参照して実願平２−２５７８
７号における先行技術を説明する。この例のホットチャ
ンバ形ダイカストマシンの射出ポンプのポンプ本体３９
にはグースネック状の溶湯路３７がそれぞれ直線状に穴
が穿設されて形成されている。この溶湯路３７は、それ
ぞれの曲がり部に吐出側ブロック４１，連結ブロック４
３および４５を設置し、これらの間をセラミックスまた
は黒鉛製の二重管で構成される管材４２Ａ，４２Ｂおよ
び４４Ａ，４４Ｂを嵌合して開口部には蓋材４７が嵌合
され液密状態に閉鎖している。そして、ノズル機構１９
に至る部分の溶湯路にもセラミックスまたは黒鉛の管材
４６で被覆して構成されている。従って、溶湯路２７の
流路は管材により耐食性を確保するとともに、管材を嵌
め込み式とすることで容易に製作できるようになってい
る。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】ところで、前記のよう
なホットチャンバ形ダイカストマシンの射出ポンプで
は、運転時においてポンプ本体のアルミ溶湯通路が侵食
されるのを防ぐ対策としてセラミックスまたは黒鉛等か
らなる被覆が形成されているが、これでも数万ショット
で溶湯路が侵食され、運転不能になることがあった。こ
の原因としては、耐アルミ溶湯材を用いた中子の破損
と、ポンプ本体の中子バックアップ部の鋳巣とが挙げ
られる。の主原因としては、イ．鋳ぐるみ時の熱収
縮，耐衝撃に起因する中子の未発見クラックの存在、
ロ．中子とポンプ本体の熱膨張係数の差により半径方向
に空隙ができ、ショット毎の内外圧力がストロークエン
ドで０から１００〜２００ｋｇ／ｃｍ² に亘り昇圧し、
細孔による圧力損失および溶湯内介在物等による細孔の
目詰まりのためバランスせずにポンプ本体がショット毎
に変形を繰り返し疲労破壊してしまう。

【０００８】上記の場合の現象としては、多孔質中子
の細孔に侵入したアルミ溶湯が中子外周の空隙が狭い場
合はそこに反応層が形成され、鉄分を大量に含有した飽
和状態となり、アルミ溶湯による鋳鉄の侵食を防止する
ことになるが、バックアップ部に鋳巣がある場合は、中
子外周部の空隙が大となり、アルミ溶湯への鉄分の拡散
が行われて通路の侵食が進むことになる。

【０００９】また、このようなことは、前記図８に示さ
れる例においてものロ．の問題は未解決であり、二重
管の構造でも問題解決には不十分であった。また、ポン
プ本体の全数非破壊検査が必要で、鋳造品の歩留りや検
査コスト上において問題があった。

【００１０】この考案は、このような点に鑑みてなされ
たもので、ポンプ本体の耐久性を向上させ、かつ、製造
コストを低減し、耐アルミ溶湯材の中子とバックアップ
材の熱膨張差を小にし、ポンプ本体に鋳巣があっても影
響を受けない溶湯流路の構成にし、ポンプ本体の製造，
検査コストを低減させることを目的とする。

【００１１】

【課題を解決するための手段】アルミ溶湯流路の内壁
材は、バックアップ部材と熱膨張差の小さい材料を使用
するか、もしくはバックアップ部材を焼ばめするかし
て、外周の空隙を狭くする。内壁材とバックアップ部
材はポンプ本体に嵌め込む構造とし、バックアップ部材
は液密の組立構造としてポンプ本体へのアルミ溶湯の流
出を防止する。バックアップ部材はアルミ溶湯の圧力
に耐え、かつ、ポンプ本体に鋳巣等の空隙があっても影
響を受けない高強度材とする。

【００１２】

【実施例】以下、図面に基づいてこの考案の実施例を説
明する。図１はホットチャンバ形ダイカストマシンの射
出ポンプ部分の構成を示す断面図、図２は図１のＡ−Ａ
線に沿った溶湯路部分の断面図である。即ち、射出ポン
プ５０は右側の図示しない溶湯保温炉に接続する連結管
５１からアルミ溶湯５２が供給され、上部に設けた射出
シリンダとカップリング５３を介して連結したプランジ
ャチップ５４（図では上昇限位置にある状態を示してい
る。）を昇降させることにより、ポンプ本体５０内に設
けられたプランジャスリーブ５７にのアルミ溶湯５２を
グースネック状の溶湯通路５５を通して左側のノズル機
構５６を介して図示しないダイカストマシンの固定台に
取付けられた金型に高圧をもって供給するように構成さ
れている。

【００１３】上記ポンプ本体５０は鋳鉄製で、右側寄り
に連結管５１と通じた垂直な穴５０ａが形成されてい
て、セラミックス製の円筒状のプランジャスリーブ５７
が底部の段部５０ｂにガスケット６１を介して挿入さ
れ、この外周を内側テーパースリーブ５８および外側テ
ーパースリーブ５９を嵌合して固定される。この内側テ
ーパースリーブ５８および外側テーパースリーブ５９の
上端は内周側を耐アルミ溶湯材の被覆を施したホールド
ダウンスリーブ６２が設けられ、断熱材６３を介し押付
部材６４により上部から押圧固定され、このホールドダ
ウンスリーブ６２のの内周側は溶湯溜りとなっている。

【００１４】また、ポンプ本体５０に形成された穴５０
ａの底部には、同穴５０ａより小径の穴５０ｃが垂直に
設けられ、さらに水平に延びた穴５０ｄ，左側において
垂直に立上がる穴５０ｅが形成されている。これらの穴
５０ｃ〜５０ｅには、その隅部に耐アルミ溶湯材で内部
にＬ字状の通湯路を有する内壁材６６，６７および６８
がアルミ溶湯の圧力に耐え、かつポンプ本体に鋳巣等の
空隙があっても影響を受けない高強度材からなるバック
アップ部材７３，７４および７５を介して設置される。
内壁材６７および６８には直線状の管部分が形成されて
いて、これらの先端を内壁材６６および６７にガスケッ
ト６９および７１を介して嵌合するとともにバックアッ
プ部材７３，７４および７５との間もガスケット７０，
７２を介して連結して挿入される。そして、内壁材６
７，６８の左側および上側をねじを有する蓋７６，７７
をガスケット７８，７９を介してねじ込んで蓋をする液
密の組立式構造となっている。

【００１５】上記アルミ溶湯流路５５を形成する内壁材
６６，６７および６８は、バックアップ部材７３，７
４，および７５と熱膨張差の小さい材料を使用するか、
もしくはバックアップ部材７３，７４および７５を焼ば
めするかして、外周のポンプ本体５０との間の空隙δを
狭くするように形成する。この時の一例を図２に示す。

【００１６】次に、このように形成されたグースネック
状の溶湯通路５５における内壁材とバックアップ部材と
の半径方向空隙δに関する温度６５０℃における運転試
験を行い、ショット数１５万回後の内壁材の破壊につい
ての実験結果を表１に示す。

【００１７】

【表１】

【００１８】上記表より、内壁材とバックアップ部材間
との半径方向の空隙率δを溶湯通路の直径Ｄの０．２５
％以下にすれば、内壁材のクラックや欠落によりバック
アップ部材やポンプ本体がアルミ溶湯により侵食される
ことがなくなることになる。バックアップ部材７３，７
４および７５を図１に示すように組立構造とし、それら
の当接面には高温用ガスケットを使用してねじ込式蓋７
６，７７で締付けることにより液密構造とし、ポンプ本
体５０へのアルミ溶湯の流出を確実に防止するようにし
ている。従って、ポンプ本体に鋳巣等の空隙があっても
アルミ溶湯によりポンプ本体が侵食されることがない。

【００１９】

【考案の効果】以上説明したとおり、この考案のホット
チャンバダイカストマシンの射出ポンプは、ポンプ本体
のグースネック状の溶湯通路を耐アルミ溶湯性を有する
内壁材をバックアップ部材で被覆する構成とし、その空
隙率を溶湯通路の直径の０．２５％以下とすることによ
り、ポンプ本体に鋳巣があっても影響を受けない耐アル
ミ溶湯の溶湯通路を形成することができる。また、内壁
材およびバックアップ部材は組立式であるので、容易に
製造することが可能となる。さらに、耐久性が向上し検
査コストを低減する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例のホットチャンバ形ダイカスト
マシンの射出ポンプの構成を示す断面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ線に沿った断面図である。

【図３】従来例のホットチャンバ形ダイカストマシンの
射出ポンプの一例を示す断面図である。

【図４】図３の溶湯通路部の側断面図である。

【図５】図３のＢ−Ｂ線に沿った断面図である。

【図６】従来例のホットチャンバ形ダイカストマシンの
他の例を示す断面図である。

【図７】図６の溶湯通路の側断面図である。

【図８】従来のホットチャンバ形ダイカストマシンの他
の例を示す断面図である。

【符号の説明】

９，２９，３９，５０ ポンプ本体 １０，５４ プランジャチップ １１，２１，５７ プランジャスリーブ １７，２７，５５ 溶湯通路 ５８ 内側テーパースリーブ ５９ 外側テーパースリーブ ６６，６７，６８ 内壁材 ６９，７０，７１，７２ ガスケット ７３，７４，７５ バックアップ部材 ７６，７７ 蓋

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 アルミニウム用ホットチャンバ形ダイカ
   ストにおいて、ポンプ本体の溶湯通路に用いた耐アルミ
   溶湯性を有する内壁材とその外壁に設けるバックアップ
   部材とのポンプ運転時における空隙率を、当該直径の
   ０．２５％以下としたことを特徴とするアルミニウム用
   ホットチャンバダイカストマシンの射出ポンプ。
2. 【請求項２】 上記バックアップ部材は液密の組立構造
   としたことを特徴とする「請求項１」記載のアルミニウ
   ム用ホットチャンバダイカストマシンの射出ポンプ。
3. 【請求項３】 上記内壁材をセラミックス，黒鉛，サー
   ミット，超硬合金およびこれらの複合材を用いたことを
   特徴とする「請求項１」記載のアルミニウム用ホットチ
   ャンバダイカストマシンの射出ポンプ。