JPH0733670A - リン酸カルシウム処理剤 - Google Patents

リン酸カルシウム処理剤

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JPH0733670A
JPH0733670A JP5135293A JP13529393A JPH0733670A JP H0733670 A JPH0733670 A JP H0733670A JP 5135293 A JP5135293 A JP 5135293A JP 13529393 A JP13529393 A JP 13529393A JP H0733670 A JPH0733670 A JP H0733670A
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calcium
phosphate
treatment
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concentration
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JP5135293A
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Shigeyuki Ebisu
繁之 恵比須
Kunio Ishikawa
邦夫 石川
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Abstract

(57)【要約】 【目的】生体親和性に優れるリン酸カルシウムを細管
部、凹凸面等を含む所望の部位に処理できうるリン酸カ
ルシウム処理剤を提供することを目的とする。 【構成】カルシウムイオンおよびリン酸イオンを含む処
と塩基性の後処理からなるリン酸カルシウム処理
剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規なリン酸カルシウム
析出材、詳しくは医療用リン酸カルシウム析出材に関す
る。より詳しくは生理的、病的あるいは外的原因等によ
り生じた骨や歯などの生体硬組織の欠損部や空隙部に適
応し、当該個所にリン酸カルシウムを形成させ、欠損空
隙部に起因する機能異常を回復させたり、生体硬組織表
面、あるいは生体硬組織表層にリン酸カルシウムを形成
させ、生体硬組織表面あるいは生体硬組織表層を改質す
るリン酸カルシウム析出材に関する。
【0002】具体的な利用法としては開管した象牙細管
内をリン酸カルシウムの析出により封鎖し、象牙質知覚
過敏症を治療する象牙質知覚過敏治療材や、う蝕などに
起因する脱灰歯質表層にリン酸カルシウムを供給した
り、歯質表面などにリン酸カルシウムを析出させ、他の
材料との接着を増大させること等を目的とした生体硬組
織表面表層改質材などが例示される。
【0003】
【従来の技術】歯質や骨などの生体硬組織はハイドロキ
シアパタイトCa10(PO46(OH)2に代表される
リン酸カルシウムである。当然、合成ハイドロキシアパ
タイト、合成リン酸三カルシウムCa3(PO42など
に代表される合成リン酸カルシウムにおいては優れた生
体親和性が報告されている。従って生体硬組織欠損ある
いは空隙部への補綴治療、生体硬組織表面表層改質にお
いてはリン酸カルシウム材をもって行うことが生体親和
性の観点からも望ましい。しかしながら、現在医療用リ
ン酸カルシウム材は焼結体として、あるいは顆粒状、紛
体として供給されているのみであり、現在用いられてい
るこれらのリン酸カルシウムが全て固体であることから
流動性はなく、適用部位に制限があった。
【0004】例えば象牙質知覚過敏治療材として要求さ
れる細管封鎖性、生体硬組織表面表層改質材として要求
される塗布性等を現在のリン酸カルシウム材は有してい
ない。そのため現在、象牙質知覚過敏症治療材としては
リン酸カルシウム材ではなくアメリカ合衆国特許4,5
38,990やアメリカ合衆国特許4,057,621
に見られるようなシュウ酸カリウムの塗布による方法、
1991年8月の歯科ジャーナル第34巻、第2号に記
載されているレジン、塩化ストロンチウム、フッ化ジア
ミン銀、HY材、フッ化ナトリウム溶液、フッ化ナトリ
ウムパスタ、フッ化ナトリウム配合パスタ、水酸化カル
シウム剤、イオン導入法などにより象牙細管を封鎖する
治療法、セメント、パラホルム配合包帯剤などによる露
出象牙質被覆による治療法、グラスアイオノマーセメン
ト、接着性レジンによる欠損部の修復、消炎沈痛剤の服
用、ソフトレーザーの照射などによる歯髄神経の鎮静に
よる治療あるいは歯髄抜去療法などが行われている。
【0005】しかしながら、これらの治療法は1)恒久
的な鎮痛効果が得られること、2)審美性に優れるこ
と、3)簡単な操作で治療できること、4)患者に痛み
を与えないこと、などの象牙質知覚過敏症治療材として
の要求項目を満たしていない。
【0006】また生体硬組織表面表層改質材としては硬
化してポリマーとなるデンティンプライマーを塗布する
方法なども行われているが、デンティンプライマーは有
機材料であり生体硬組織の主成分であるリン酸カルシウ
ムとは全く異質の材料であり、生体親和性、恒久性など
に関して大きな問題のあるものであった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来のリン酸カルシウ
ム材は生体親和性に優れるものの固体であり、流動性は
ない。現在、用いられている象牙質知覚過敏治療材であ
るシュウ酸カリウム、フッ化ジアミン銀、レジンなどは
生体硬組織の主成分であるリン酸カルシウムではない。
また現在用いられている生体硬組織表面表層改質材につ
いてもリン酸カルシウムではない。本発明は生体親和性
に優れるリン酸カルシウムを液体で提供することによ
り、従来のリン酸カルシウム材による治療が困難であっ
た細管部、凹凸面など所望の部位にリン酸カルシウムを
析出させることが可能であるリン酸カルシウム材を提供
するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前項に記載したリン酸カ
ルシウムの析出法に関する問題点を解決するために本発
明者は新たなリン酸カルシウム材を種々検討した結果、
カルシウムイオンおよびリン酸イオンを含む処理液と塩
基性の後処理液からなるリン酸カルシウム析出材が優れ
た流動性とリン酸カルシウム析出能を示し、実用可能な
リン酸カルシウム析出材であることを見いだし本発明を
完成した。
【0009】即ち、本発明のリン酸カルシウム析出材と
はカルシウムイオンおよびリン酸イオンを含む処理液と
塩基性の後処理液からなるリン酸カルシウム析出材であ
る。
【0010】本発明でいうリン酸カルシウムとは化学式
中にリン酸基PO4とカルシウムCaを含むものであり
リン酸水素カルシウムCaHPO4、CaHPO4・2H
2O、リン酸三カルシウムCa3(PO42、リン酸八カ
ルシウム、Ca82(PO46・5H20、リン酸二水
素カルシウムCa(H2PO42、Ca(H2PO42
2H20、リン酸四カルシウムCa4(PO42O、ハイ
ドロキシアパタイトCa10(PO46(OH)2などを
いう。また一部がフッ素、マグネシウム、炭酸などと置
換されたリン酸カルシウム、例えばフルオロアパタイト
Ca10(PO462等もこれに含まれる。
【0011】本発明でいうリン酸イオンとはH2
4 -、HPO4 2-、PO4 3-などのリン酸イオン成分をい
う。
【0012】本発明でいう全リン酸濃度とはリン酸イオ
ンおよびイオン解離していないリン酸成分の合計、すな
わちPO4基を有する化合物およびイオン全ての濃度の
合計である。
【0013】本発明でいうカルシウムイオンとはCa2+
をいう。
【0014】全カルシウム濃度とはカルシウムイオンお
よびイオン解離していないカルシウム成分の合計、すな
わちCaを有する化合物およびイオン全ての濃度の合計
である。
【0015】本発明でいう生体硬組織とは歯質や骨など
リン酸カルシウムを含有することを特徴とする生体組織
をいう。
【0016】本発明は下に記述する原理で構成される。
【0017】生体における通常のpHにおいてハイドロ
キシアパタイト、リン酸三カルシウム、リン酸水素カル
シウムなどのリン酸カルシウムは、唾液や体液などに対
して難溶性あるいは不溶性である。しかしながらそれら
のリン酸カルシウムは低いpHの溶液に対しては溶解
し、カルシウムイオンおよびリン酸イオンを含む溶液と
なる。この溶解析出反応は可逆的であり、溶液のpHを
上げると再びリン酸カルシウムが析出する。従って、低
いpHでリン酸カルシウムが溶解している処理液を調製
し、所望の部位をこの処理液で塗布等の方法により処理
する。その後、当該部位を塩基性の後処理液で塗布等の
方法により処理すると、処理液のpHが上がり処理液の
リン酸カルシウムは過飽和となり析出する。従って所望
の部位にリン酸カルシウムを析出させることが可能とな
る。
【0018】例えばハイドロキシアパタイトの場合、ハ
イドロキシアパタイトと溶解平衡であるpHが7.0の
処理液1リットル中にはハイドロキシアパタイトが約
0.009g溶解している。一方、pH5.0の溶液の
場合、その溶液がハイドロキシアパタイトと溶解平衡で
あれば1リットル中に約0.6gのハイドロキシアパタ
イトが溶解しており、pH3.0の溶液の場合、その溶
液がハイドロキシアパタイトと溶解平衡であれば約12
6gのハイドロキシアパタイトが溶解していることにな
る。このpHが3の溶液を所望の部位に塗布し、当該部
位を塩基性の後処理液で処理し、処理液のpHが7.0
になったと仮定すれば1リットルの処理液につき126
gと0.009gの差である125.991gが当該部
位に析出することになる。
【0019】ただし、この計算例は本発明の概念を説明
するために行ったもので、後処理により処理液濃度が2
分の1に薄まったとすれば125.982gが析出する
ことになる。またハイドロキシアパタイトを溶解した処
理液で塗布した部位を後処理液で処理しても、生成する
リン酸カルシウムはハイドロキシアパタイトとは限ら
ず、他のリン酸カルシウムとなる場合があり、その場合
は析出量も異なるものとなる。
【0020】本発明のリン酸カルシウム析出材は以下に
記載する方法で製造される。
【0021】処理液はカルシウム成分とリン酸成分を
水、生理的食塩水などの水溶液に溶解して調整する。カ
ルシウム成分は酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酢
酸カルシウム、安息香酸カルシウム、炭酸カルシウム、
塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、フッ化カルシウ
ム、リン酸ギ酸カルシウム、乳酸カルシウム、レブリン
酸カルシウム、ナフテン酸カルシウム、硝酸カルシウ
ム、蓚酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、フッ化カ
ルシウム、ケイ酸カルシウム、セテアリン酸カルシウ
ム、硫酸カルシウムなどの一般的なカルシウム塩あるい
は金属カルシウムを溶解することにより、リン酸成分は
リン酸、リン酸グアニジン、リン酸コバルト、リン酸三
アンモニウム、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウ
ム、リン酸三マグネシウム、リン酸三ジアセチル、リン
酸ジフェニル、リン酸ジメチル、リン酸水素アンモニウ
ムナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素
二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素マグ
ネシウム、リン酸セルロース、リン酸第一鉄、リン酸第
二鉄、リン酸テトラブチルアンモニウム、リン酸銅、リ
ン酸トリエチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリスト
リメチルシリル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチ
ル、リン酸トリメチル、リン酸ナトリウムアンモニウ
ム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウ
ム、リン酸二水素ナトリウムなどの一般的なリン酸塩を
溶解することにより得られる。またリン酸水素カルシウ
ム無水和物、リン酸カルシウム二水和物、リン酸三カル
シウム、ハイドロキシアパタイト、リン酸八カルシウ
ム、リン酸二水素カルシウム、リン酸四カルシウムなど
を溶解するとカルシウム成分とリン酸成分の両方が一度
に得られて便利である。また2種類以上のリン酸成分あ
るいはカルシウム成分あるいはその両方を混合して処理
液を調整することも可能である。
【0022】リン酸カルシウム析出材の処理液中の全カ
ルシウム濃度および全リン酸濃度に制限はない。しかし
処理液中の全カルシウム濃度および全リン酸濃度が小さ
い場合は、リン酸カルシウム析出材としては析出能力は
有するものの、析出能力の小さなものとなる。従って効
率的なリン酸カルシウム析出材としては処理液の全カル
シウム濃度および全リン酸濃度がそれぞれ0.05モル
濃度以上であることが好ましく、処理液の全カルシウム
濃度および全リン酸濃度が0.1モル濃度であることが
より好ましい。
【0023】リン酸成分あるいはカルシウム成分あるい
はその両方の溶解度が十分でない場合には溶液のpHを
下げてリン酸成分あるいはカルシウム成分あるいはその
両方の溶解が行われる。溶液のpHは酸を添加すること
によって容易に下げられる。逆にリン酸成分、カルシウ
ム成分、あるいはその両方を酸溶液に加えて溶解するの
は本質的に同一である。リン酸カルシウム析出材の調製
にあたり酸の役割は処理液中にリン酸成分およびカルシ
ウム成分を溶解するために処理液のpHを下げることで
あり、一般的にpHが低いほどリン酸成分およびカルシ
ウム成分は多量に溶解する。従って使用される酸に制限
はなく、一般的な酸が用いられる。すなわち、塩酸、硫
酸、リン酸、硝酸、過塩素酸、酢酸、シュウ酸、クエン
酸などが例示される。酸の濃度にも制限はない。
【0024】また2種類以上の酸を混合して用いること
も可能である。本発明における本質的な問題は処理液中
にカルシウムイオンおよびリン酸イオンが含まれている
ことであり、処理液中の全リン酸濃度および全カルシウ
ム濃度がリン酸カルシウムの析出能の観点から重要であ
る。
【0025】本処理液は種々の方法で所望の部位に処理
される。塗布、噴霧などの一般的な処理方法が行われ
る。処理液で所望の部位を処理した後、後処理液による
処理の前に乾燥、水洗、処理液の多重塗布などの処理を
行うことは本発明を妨げない。その後、当該部位を後処
理液にて塗布などの方法で処理する。
【0026】後処理液は塩基性の溶液であればどのよう
なものでもよく、処理液のpHを上昇せしめ、処理液中
のリン酸成分およびカルシウム成分をリン酸カルシウム
として析出させることを目的としている。従って一般的
な塩基性水溶液が用いられる。後処理液としては水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アン
モニア、リン酸三アンモニウム、リン酸三カリウム、リ
ン酸三ナトリウムなどの水溶液が例示される。本発明に
おける後処理液に濃度制限はない。
【0027】また、2種類以上の塩基を混合して後処理
液とすることも可能である。
【0028】しかしながら、本発明における後処理液は
処理液のpHを上げ、リン酸カルシウムのpHによる溶
解度の差を利用して処理液中のリン酸カルシウムを析出
させることを目的としている。従って、リン酸カルシウ
ム析出能の観点からは高いpHが好まれるので、後処理
液のpHは9以上が好ましく、pH10以上がより好ま
しい。
【0029】処理液及び後処理液には流動性調製、析出
能調整、析出するリン酸カルシウムの種類調整、pH調
整などの目的で他の成分を加えることができる。例えば
メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール
類、界面活性剤、二酸化炭素などの水溶性ガス、グリセ
リン、水溶性シリコーンオイル、ポリビニルアルコー
ル、ポリエチレングリコール、フッ素化合物、マグネシ
ウム化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど添
加も可能である。
【0030】また所望の部位を塩基性の後処理液でまず
処理して、その後、カルシウムイオンおよびリン酸イオ
ンを含む処理液で処理しても当該部位にリン酸カルシウ
ムを析出させることが可能である。これは本発明がリン
酸カルシウムのpHによる溶解度の差を原理としたもの
であることに起因する。従って、本発明は処理液、後処
理液の処理順位を規定するものではないが、一般的に処
理液、後処理液の順に処理する方が良好な結果が得られ
る。
【0031】本発明を実施例で更に詳しく説明する。な
お実施例では本リン酸カルシウム析出材における代表的
利用分野としての象牙質知覚過敏治療材としての効果を
例示する目的で象牙細管の封鎖効果を、また生体硬組織
表面表層改質材としての効果を例示するためにエナメル
質表面へのリン酸カルシウム析出効果を示した。
【0032】象牙質知覚過敏治療材としての実施例にお
ける実験方法は下記の条件で行った。すなわち、エナメ
ル質を除去したヒト長期保存抜去大臼歯より、厚さ1.
5mmの象牙質プレートを硬組織薄切機を用いて調製
し、知覚過敏を想定して象牙細管を開管させるため、
0.6モル濃度の塩酸で1分間処理した。以下、この象
牙質プレートを疑似知覚過敏象牙質と呼ぶ。
【0033】この疑似知覚過敏象牙質に各実施例記載の
リン酸カルシウム析出材における処理液を綿球にて1分
間塗布後、綿球にて拭き取り乾燥、後処理液を綿球にて
1分間塗布した。本試料の処理表面および割断面を走査
型電子顕微鏡にて観察した。また析出物を同定する目的
でX線マイクロアナライザーにより析出物のカルシウム
とリン酸のモル比(Ca/PO4)を測定した。さらに
析出したリン酸カルシウムの成分を詳しく同定する目的
で疑似実験を行い、析出物を粉末X線回折法およびフー
リエ変換赤外分光光度法により同定した。疑似実験は象
牙細管内に析出した析出物は極小量であり、またそれを
取り出すことは非常に困難であったので内系1mmのガ
ラス管を象牙細管に見立て同様の処理を行い、ガラス管
内に析出した析出物を集めて行った。以下、このガラス
管を用いた実験を疑似ガラス管実験と呼ぶ。
【0034】硬組織表面表層改質材としての実施例にお
ける実験方法は下記の条件で行った。すなわち、ヒト長
期保存抜去前歯に実施例記載のリン酸カルシウム析出材
における処理液を綿球にて1分間塗布後、後処理液を綿
球にて1分間塗布した。本試料表面を走査型電子顕微鏡
にて観察した。
【0035】
【実施例1】水酸化カルシウム、リン酸、水酸化ナトリ
ウムを蒸留水1リットルに溶解し、全カルシウム濃度が
1モル濃度、全リン酸濃度が4モル濃度、ナトリウム濃
度が1.1モル濃度のリン酸カルシウム材の処理液を調
製した。溶液は透明であった。本溶液を0.22μmの
ろ紙でろ過後、pHを測定すると1.06であった。
【0036】本処理液で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
1モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を後処理液として
後処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察すると
象牙細管が全面的に封鎖されていた。割断面を観察する
と析出物が表面表層から平均20μmの深さまで象牙細
管を封鎖していた。析出物は緻密体であり、析出物のリ
ン酸とカルシウムのモル比はX線マイクロアナライザー
の測定によると1.0であり析出物がリン酸水素カルシ
ウムであることが示唆された。疑似ガラス管実験におい
て得られた析出物の粉末X線回折パターンおよび赤外ス
ペクトルはリン酸水素カルシウム二水和物と一致した。
【0037】
【実施例2】水酸化カルシウム、リン酸、水酸化ナトリ
ウムを蒸留水1リットルに溶解し、全カルシウム濃度が
0.6モル濃度、全リン酸濃度が2.4モル濃度、ナト
リウム濃度が0.66モル濃度のリン酸カルシウム材の
処理液を調製した。溶液は透明であった。本溶液を0.
22μmのろ紙でろ過後、pHを測定すると1.41で
あった。
【0038】本処理液で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
1モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を後処理液として
後処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察すると
象牙細管が全面的に封鎖されていた。割断面を観察する
と析出物が表面から平均10μmの深さまで象牙細管を
封鎖していた。析出物は緻密体であり、析出物のリン酸
とカルシウムのモル比はX線マイクロアナライザーの測
定によると1.0であり析出物がリン酸水素カルシウム
であることが示唆された。疑似ガラス管実験において得
られた析出物の粉末X線回折パターンおよび赤外スペク
トルはリン酸水素カルシウム二水和物と一致した。
【0039】
【実施例3】水酸化カルシウム、リン酸、水酸化ナトリ
ウムを蒸留水1リットルに溶解し、全カルシウム濃度が
0.1モル濃度、全リン酸濃度が0.4モル濃度、ナト
リウム濃度が0.1モル濃度のリン酸カルシウム材の処
理液を調製した。溶液は透明であった。本溶液を0.2
2μmのろ紙でろ過後、pHを測定すると2.03であ
った。
【0040】本処理液で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
1モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を後処理液として
後処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察すると
象牙細管が全面的に封鎖されていた。割断面を観察する
と析出物が表面から平均3μmの深さまで象牙細管を封
鎖していた。析出物は緻密体であり、析出物のリン酸と
カルシウムのモル比はX線マイクロアナライザーの測定
によると1.0であり析出物がリン酸水素カルシウムで
あることが示唆された。疑似ガラス管実験において得ら
れた析出物の粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換
赤外分光光度計で得られた赤外スペクトルはリン酸水素
カルシウム二水和物と一致した。
【0041】
【実施例4】リン酸水素カルシウム、リン酸を蒸留水1
リットルに溶解し、全カルシウム濃度が1モル濃度、全
リン酸濃度が3モル濃度のリン酸カルシウム材の処理液
を調製した。溶液は透明であった。本溶液を0.22μ
mのろ紙でろ過後、pHを測定すると1.52であっ
た。
【0042】本処理液で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
1モル濃度の水酸化カリウム水溶液を後処理液として後
処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察すると象
牙細管が全面的に封鎖されていた。割断面を観察すると
析出物が表面から平均22μmの深さまで象牙細管を封
鎖していた。析出物は緻密体であり、析出物のリン酸と
カルシウムのモル比はX線マイクロアナライザーの測定
によると1.0であり析出物がリン酸水素カルシウムで
あることが示唆された。疑似ガラス管実験において得ら
れた析出物の粉末X線回折パターンおよび赤外スペクト
ルはリン酸水素カルシウム二水和物と一致した。
【0043】
【実施例5】リン酸水素カルシウム、リン酸を蒸留水1
リットルに溶解し、全カルシウム濃度が1モル濃度、全
リン酸濃度が3モル濃度のリン酸カルシウム材の処理液
を調製した。溶液は透明であった。本溶液を0.22μ
mのろ紙でろ過後、pHを測定すると1.52であっ
た。
【0044】本処理液で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
0.01モル濃度のフッ化ナトリウムを含む1モル濃度
の水酸化カリウム水溶液を後処理液として後処理した。
処理表面を走査型電子顕微鏡で観察すると象牙細管が全
面的に封鎖されていた。割断面を観察すると析出物が表
面から平均18μmの深さまで象牙細管を封鎖してい
た。析出物は緻密体であり、析出物のリン酸とカルシウ
ムのモル比はX線マイクロアナライザーの測定によると
1.5であり析出物がリン酸三カルシウムあるいはハイ
ドロキシアパタイトであることが示唆された。疑似ガラ
ス管実験において得られた析出物の粉末X線回折パター
ンおよびフーリエ変換赤外分光光度計で得られた赤外ス
ペクトルはハイドロキシアパタイトと一致した。
【0045】
【実施例6】リン酸水素カルシウム、リン酸を蒸留水1
リットルに溶解し、全カルシウム濃度が0.1モル濃
度、全リン酸濃度が0.3モル濃度のリン酸カルシウム
材の処理液を調製した。溶液は透明であった。本溶液を
0.22μmのろ紙でろ過後、pHを測定すると2.5
2であった。
【0046】本処理液で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
0.5モル濃度の水酸化カリウム水溶液を後処理液とし
て後処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察する
と象牙細管が全面的に封鎖されていた。割断面を観察す
ると析出物が表面から平均7μmの深さまで象牙細管を
封鎖していた。析出物は緻密体であり、析出物のリン酸
とカルシウムのモル比はX線マイクロアナライザーの測
定によると1.0であり析出物がリン酸水素カルシウム
二水和物であることが示唆された。疑似ガラス管実験に
おいて得られた析出物の粉末X線回折パターンおよび赤
外スペクトルはリン酸水素カルシウム二水和物と一致し
た。
【0047】
【実施例7】リン酸水素カルシウム、塩酸を蒸留水1リ
ットルに溶解し、全カルシウム濃度が1モル濃度、全リ
ン酸濃度が1モル濃度、塩素1.4モル濃度のリン酸カ
ルシウム材の処理液を調製した。溶液は透明であった。
本溶液を0.22μmのろ紙でろ過後、pHを測定する
と1.42であった。
【0048】本処理液で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
1.5モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を後処理液と
して後処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察す
ると象牙細管が全面的に封鎖されていた。割断面を観察
すると析出物が表面から平均16μmの深さまで象牙細
管を封鎖していた。析出物は緻密体であり、析出物のリ
ン酸とカルシウムのモル比はX線マイクロアナライザー
の測定によると1.0であり析出物がリン酸水素カルシ
ウムであることが示唆された。疑似ガラス管実験におい
て得られた析出物の粉末X線回折パターンおよび赤外ス
ペクトルはリン酸水素カルシウム二水和物と一致した。
【0049】
【実施例8】リン酸水素カルシウム、塩酸を蒸留水1リ
ットルに溶解し、全カルシウム濃度が0.04モル濃
度、全リン酸濃度が0.04モル濃度、塩素0.1モル
濃度のリン酸カルシウム材の処理液を調製した。溶液は
透明であった。本溶液を0.22μmのろ紙でろ過後、
pHを測定すると2.65であった。
【0050】本処理液で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
1.5モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を後処理液と
して後処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察す
ると象牙細管が一部に封鎖されていた。封鎖されている
象牙細管の割断面観察では析出物が表面から平均3μm
の深さまで象牙細管を封鎖していた。析出物は緻密体で
あり、析出物のリン酸とカルシウムのモル比はX線マイ
クロアナライザーの測定によると1.0であり析出物が
リン酸水素カルシウムであることが示唆された。疑似ガ
ラス管実験において得られた析出物の粉末X線回折パタ
ーンおよび赤外スペクトルはリン酸水素カルシウム二水
和物と一致した。
【0051】
【実施例9】リン酸水素ナトリウム、リン酸を蒸留水1
リットルに溶解し、全カルシウム濃度が0.1モル濃
度、全リン酸濃度が0.3モル濃度のリン酸カルシウム
材の処理液を調製した。溶液は透明であった。本溶液を
0.22μmのろ紙でろ過後、pHを測定すると2.5
2であった。
【0052】本処理液で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
0.5モル濃度の水酸化カリウム水溶液を後処理液とし
て後処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察する
と象牙細管が全面的に封鎖されていた。割断面を観察す
ると析出物が表面から平均7μmの深さまで象牙細管を
封鎖していた。析出物は緻密体であり、析出物のリン酸
とカルシウムのモル比はX線マイクロアナライザーの測
定によると1.0であり析出物がリン酸水素カルシウム
二水和物であることが示唆された。疑似ガラス管実験に
おいて得られた析出物の粉末X線回折パターンおよび赤
外スペクトルはリン酸水素カルシウム二水和物と一致し
た。
【0053】
【実施例10】実施例1記載の処理液を、ヒト長期保存
抜去前歯エナメル質に塗布後、実施例1記載の後処理液
で処理を行った。本試料を走査型電子顕微鏡にて処理表
面を観察したすると一面に析出物が認められた。
【0054】
【実施例11】実施例2記載の処理液を、ヒト長期保存
抜去前歯エナメル質に塗布後、実施例2記載の後処理液
で処理を行った。本試料を走査型電子顕微鏡にて処理表
面を観察したすると一面に析出物が認められた。
【0055】
【実施例12】実施例5記載の処理液を、ヒト長期保存
抜去前歯エナメル質に塗布後、実施例5記載の後処理液
で処理を行った。本試料を走査型電子顕微鏡にて処理表
面を観察したすると一面に析出物が認められた。
【0056】
【実施例13】実施例8記載の処理液を、ヒト長期保存
抜去前歯エナメル質に塗布後、実施例8記載の後処理液
で処理を行った。本試料を走査型電子顕微鏡にて処理表
面を観察したすると一面に析出物が認められた。
【手続補正書】
【提出日】平成6年7月15日
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 リン酸カルシウム処理剤
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規なリン酸カルシウム
処理剤、詳しくは医療用リン酸カルシウム処理剤に関す
る。より詳しくはイ.生理的、病的あるいは外的原因等
により生じた骨や歯などの生体硬組織の欠損部や空隙部
に適応し、当該個所にリン酸カルシウムを形成させ、欠
損空隙部に起因する機能異常を回復させたり、ロ.生
硬組織表面、あるいは生体硬組織表層にリン酸カルシウ
ムを形成させたり、フッ素を含有するリン酸カルシウム
を形成させたりして、生体硬組織表面あるいは生体硬組
織表層における接着性、耐酸性などの特徴を向上させ
る、リン酸カルシウム処理剤に関する。
【0002】具体的な利用法としてはイ.開管した象牙
細管内をリン酸カルシウムの析出により封鎖し、象牙質
知覚過敏症を治療する象牙質知覚過敏治療や、ロ.
蝕などに起因する脱灰歯質表層にリン酸カルシウムを供
給したり、歯質表面表層などにリン酸カルシウムを析出
させ、他の材料との接着を増大させたり、あるいは生体
硬組織表面表層にフッ素を含有することを特徴とするリ
ン酸カルシウムを析出あるいは形成させて生体硬組織表
面、あるいは生体硬組織表層の耐酸性などの特徴を向上
させる生体硬組織表面表層改質剤、などが例示される。
【0003】
【従来の技術】歯質や骨などの生体硬組織はアパタイト
Ca 10−x(HPO (PO−x (OH)
−x に代表されるリン酸カルシウムである。当然、合
成アパタイト、合成リン酸三カルシウムCa(P
などに代表される合成リン酸カルシウムにおい
ては優れた生体親和性が報告されている。従って生体硬
組織欠損あるいは空隙部への補綴治療、生体硬組織表面
表層改質においてはリン酸カルシウムをもって行うこと
が生体親和性の観点からも望ましい。しかしながら、現
の医療用リン酸カルシウムは焼結体として、あるいは
顆粒状、紛体として供給されているのみであり、これら
のリン酸カルシウムが全て固体であることから流動性は
なく、適用部位に制限があった。
【0004】例えば象牙質知覚過敏治療として要求さ
れる細管封鎖性、生体硬組織表面表層改質材として要求
される塗布性等を現在のリン酸カルシウムは有していな
い。そのため現在、象牙質知覚過敏症治療としては
体親和性に優れるリン酸カルシウムではなくアメリカ合
衆国特許4,538,990やアメリカ合衆国特許4,
057,621に見られるようなシュウ酸カリウムの塗
布による方法、1991年8月の歯科ジャーナル第34
巻、第2号に記載されているレジン、塩化ストロンチウ
ム、フッ化ジアミン銀、HY材、フッ化ナトリウム溶
液、フッ化ナトリウムパスタ、フッ化ナトリウム配合パ
スタ、水酸化カルシウム剤、イオン導入法などにより象
牙細管を封鎖する治療法、セメント、パラホルム配合包
帯剤などによる露出象牙質被覆による治療法、グラスア
イオノマーセメント、接着性レジンによる欠損部の修
復、消炎沈痛剤の服用、ソフトレーザーの照射などによ
る歯髄神経の鎮静による治療あるいは歯髄抜去療法など
が行われている。
【0005】しかしながら、これらの治療法は1)恒久
的な鎮痛効果が得られること、2)審美性に優れるこ
と、3)簡単な操作で治療できること、4)患者に痛み
を与えないこと、などの象牙質知覚過敏症治療として
の要求項目を満たしていない。
【0006】また生体硬組織表面表層改質としては硬
化してポリマーとなるデンティンプライマーを塗布する
方法なども行われているが、デンティンプライマーは有
機材料であり生体硬組織の主成分であるリン酸カルシウ
ムとは全く異質の材料であり、生体親和性、恒久性など
に関して大きな問題のあるものであった。また歯質の主
成分であるリン酸カルシウムに関してはフルオロアパタ
イトCa10(POが耐酸性に優れるリン酸
カルシウムとして知られているがフルオロアパタイトは
固体であり、塗布などの簡便な方法で歯質表面表層を改
質することは不可能であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来のリン酸カルシウ
は生体親和性に優れるものの固体であり、流動性は
ない。現在、用いられている象牙質知覚過敏治療であ
るシュウ酸カリウム、フッ化ジアミン銀、レジンなどは
生体硬組織の主成分であるリン酸カルシウムではない。
また現在用いられている生体硬組織表面表層改質につ
いてもリン酸カルシウムではない。本発明は生体親和性
に優れるリン酸カルシウムを流動性のある液体、懸濁
液、ペーストなどで提供することにより、従米のリン酸
カルシウムによる治療が困難であった細管部、凹凸面な
を含む部位においてもリン酸カルシウムを析出させる
ことが可能であるリン酸カルシウム処理剤を提供するも
のである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前項に記載したリン酸カ
ルシウムの処理法に関する問題点を解決するために本発
明者は新たなリン酸カルシウム処理剤を種々検討した結
果、カルシウムイオンおよびリン酸イオンを含む処理
と塩基性の後処理からなるリン酸カルシウム処理剤
優れた流動性とリン酸カルシウム処理能を示し、実用可
能なリン酸カルシウム処理剤であることを見いだし本発
明を完成した。
【0009】即ち、本発明のリン酸カルシウム処理剤
はカルシウムイオンおよびリン酸イオンを含む処理
塩基性の後処理からなるリン酸カルシウム処理剤であ
る。
【0010】本発明でいうリン酸カルシウムとは化学式
中にリン酸基POとカルシウムCaを含むものであり
リン酸水素カルシウムCaHPO、CaHPO・2
O、リン酸三カルシウムCa(PO、リン
酸八カルシウム、Ca(PO・5H0、
リン酸二水素カルシウムCa(HPO、Ca
(HPO・2H0、リン酸四カルシウムCa
(POO、アパタイトCa 10−x(HP
(PO−x (OH)−x などをいう。
また一部がフッ素、マグネシウム、炭酸などと置換され
たリン酸カルシウム、例えばフルオロアパタイトCa
10(PO等もこれに含まれる。なお、アパ
タイトの構造式中のxは一般に0から2までの任意の値
をとることが知られている。またフルオロアパタイト等
の構造式は代表的なものを例示しているだけであり、こ
の構造式に制限されない。
【0011】本発明でいうリン酸イオンとはHPO
、HPO 2.、PO 3.などのリン酸イオン成分
をいう。
【0012】本発明でいう全リン酸濃度とはリン酸イオ
ンおよびイオン解離していないリン酸成分の合計、すな
わちPO基を有する化合物およびイオン全ての濃度の
合計である
【0013】本発明でいうカルシウムイオンとはCa
2+をいう。また本発明でいうフッ素イオンとはF
いう。
【0014】全カルシウム濃度とはカルシウムイオンお
よびイオン解離していないカルシウム成分の合計、すな
わちCaを有する化合物およびイオン全ての濃度の合計
である。
【0015】本発明でいう生体硬組織とは歯質や骨など
リン酸カルシウムを含有することを特徴とする生体組織
をいう。
【0016】本発明は下に記述する原理で構成される。
【0017】生体における通常のpHにおいてアパタイ
ト、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウムなどの
リン酸カルシウムは、唾液や体液などに対して難溶性あ
るいは不溶性である。しかしながらそれらのリン酸カル
シウムは低いpHの溶液に対しては溶解し、カルシウム
イオンおよびリン酸イオンを含む溶液となる。この溶解
析出反応は可逆的であり、溶液のpHを上げると再びリ
ン酸カルシウムが析出する。従って、低いpHでリン酸
カルシウムが溶解している処理を調製し、所望の部位
をこの処理で塗布等の方法により処理する。その後、
当該部位を塩基性の後処理剤で塗布等の方法により処理
すると、処理のpHが上がり処理のリン酸カルシウ
ムは過飽和となり析出する。従って所望の部位にリン酸
カルシウムを析出させることが可能となる。
【0018】例えばアパタイトの場合、アパタイトと溶
解平衡であるpHが7.0の処理1リットル中にはア
パタイトが約0.009g溶解している。一方、pH
5.0の溶液の場合、その溶液がアパタイトと溶解平衡
であれば1リットル中に約0.6gのアパタイトが溶解
しており、pH3.0の溶液の場合、その溶液がアパタ
イトと溶解平衡であれば約126gのアパタイトが溶解
していることになる。このpHが3の溶液を所望の部位
に塗布し、当該部位を塩基性の後処理で処理し、処理
のpHが7.0になったと仮定すれば1リットルの処
につき126gと0.009gの差である125.
991gが当該部位に析出することになる。
【0019】ただし、この計算例は本発明の概念を説明
するために行ったもので、後処理により処理濃度が2
分の1に薄まったとすれば125.982gが析出する
ことになる。またアパタイトを溶解した処理で塗布し
た部位を後処理で処理しても、生成するリン酸カルシ
ウムはアパタイトとは限らず、他のリン酸カルシウムと
なる場合があり、その場合は析出量も異なるものとな
る。
【0020】本発明のリン酸カルシウム処理剤は以下に
記載する方法で製造される。
【0021】処理はカルシウム成分とリン酸成分を
水、生理的食塩水などの溶液に溶解、懸濁して調整す
る。カルシウム成分は酸化カルシウム、水酸化カルシウ
ム、酢酸カルシウム、安息香酸カルシウム、炭酸カルシ
ウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、フッ化カ
ルシウム、リン酸ギ酸カルシウム、乳酸カルシウム、レ
ブリン酸カルシウム、ナフテン酸カルシウム、硝酸カル
シウム、蓚酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、フッ
化カルシウム、ケイ酸カルシウム、セテアリン酸カルシ
ウム、硫酸カルシウムなどの一般的なカルシウム塩ある
いは金属カルシウムを溶解することにより、リン酸成分
はリン酸、リン酸グアニジン、リン酸コバルト、リン酸
三アンモニウム、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウ
ム、リン酸三マグネシウム、リン酸三ジアセチル、リン
酸ジフェニル、リン酸ジメチル、リン酸水素アンモニウ
ムナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素
二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素マグ
ネシウム、リン酸セルロース、リン酸第一鉄、リン酸第
二鉄、リン酸テトラブチルアンモニウム、リン酸銅、リ
ン酸トリエチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリスト
リメチルシリル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチ
ル、リン酸トリメチル、リン酸ナトリウムアンモニウ
ム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウ
ム、リン酸二水素ナトリウムなどの一般的なリン酸塩を
溶解することにより得られる。またリン酸水素カルシウ
ム無水和物、リン酸カルシウム二水和物、リン酸三カル
シウム、アパタイト、リン酸八カルシウム、リン酸二水
素カルシウム、リン酸四カルシウムなどを溶解するとカ
ルシウム成分とリン酸成分の両方が一度に得られて便利
である。また2種類以上のリン酸成分あるいはカルシウ
ム成分あるいはその両方を混合して処理を調整するこ
とも可能である。
【0022】リン酸カルシウム処理剤において処理
の全カルシウム濃度および全リン酸濃度に制限はない。
しかし処理中の全カルシウム濃度および全リン酸濃度
が小さい場合は、リン酸カルシウム処理剤としては処理
能力は有するものの、処理能力の小さなものとなる。従
って効率的なリン酸カルシウム処理剤としては処理
全カルシウム濃度および全リン酸濃度がそれぞれ0.0
5モル濃度以上であることが好ましく、処理の全カル
シウム濃度および全リン酸濃度が0.1モル濃度である
ことがより好ましい。
【0023】リン酸成分あるいはカルシウム成分あるい
はその両方の溶解度が十分でない場合には処理剤のpH
を下げてリン酸成分あるいはカルシウム成分あるいはそ
の両方の溶解が行われる。処理剤のpHは酸を添加する
ことによって容易に下げられる。逆にリン酸成分、カル
シウム成分、あるいはその両方を酸溶液に加えて溶解す
るのは本質的に同一である。リン酸カルシウム処理剤
調製にあたり酸の役割は処理中にリン酸成分およびカ
ルシウム成分を溶解するために処理のpHを下げるこ
とであり、一般的にpHが低いほどリン酸成分およびカ
ルシウム成分は多量に溶解する。従って使用される酸に
制限はなく、一般的な酸が用いられる。すなわち、塩
酸、硫酸、リン酸、硝酸、過塩素酸、酢酸、シュウ酸、
クエン酸、フッ化水素酸、ケイフッ素酸などが例示され
る。酸の濃度にも制限はない。リン成分あるいはカルシ
ウム成分あるいはその両方の溶解度が十分でない場合に
はカルシウムイオンおよびリン酸イオンを含む処理剤の
一部が懸濁液、あるいはペーストとなるが、これらの形
状においても懸濁液、あるいはペーストの溶液部分はカ
ルシウムイオンおよびリン酸イオンを含有しており、本
発明に含まれる。
【0024】また2種類以上の酸を混合して用いること
も可能である。本発明における本質的な問題は処理
にカルシウムイオンおよびリン酸イオンが含まれている
ことであり、処理中の全リン酸濃度および全カルシウ
ム濃度がリン酸カルシウムの処理能の観点から重要であ
る。
【0025】本処理は種々の方法で所望の部位に処理
される。塗布、噴霧などの一般的な処理方法が行われ
る。処理で所望の部位を処理した後、後処理による
処理の前に乾燥、水洗、処理の多重塗布などの処理を
行うことは本発明を妨げない。その後、当該部位を後処
にて塗布などの方法で処理する。
【0026】後処理は塩基性の溶液、懸濁液、ペース
トなどであればどのようなものでもよく、処理のpH
を上昇せしめ、処理中のリン酸成分およびカルシウム
成分をリン酸カルシウムとして析出させることを目的と
している。従って一般的な塩基性水溶液、懸濁液、ペー
ストなどが用いられる。後処理としては水酸化ナトリ
ウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニ
ア、リン酸三アンモニウム、リン酸三カリウム、リン酸
三ナトリウムなどの水溶液、懸濁液、ペーストなどが例
示される。本発明における後処理に濃度制限はない。
【0027】また、2種類以上の塩基を混合して後処理
とすることも可能である。
【0028】しかしながら、本発明における後処理
処理のpHを上げ、リン酸カルシウムのpHによる溶
解度の差を利用して処理中のリン酸カルシウムを析出
させることを目的としている。従って、リン酸カルシウ
ム析出能の観点からは高いpHが好まれるので、後処理
のpHは9以上が好ましく、pH10以上がより好ま
しい。
【0029】処理及び後処理には流動性調製、析出
能調整、析出するリン酸カルシウムの種類調整、pH調
整などの目的で他の成分を加えることができる。例えば
メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール
類、界面活性剤、二酸化炭素などの水溶性ガス、グリセ
リン、水溶性シリコーンオイル、ポリビニルアルコー
ル、ポリエチレングリコール、フッ素化合物、マグネシ
ウム化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど
添加も可能である。フッ素化合物は特に析出するリン酸
カルシウムをアパタイトに調整するのに有用である。ま
た硬組織表面表層改質剤として使用する際に耐酸性向上
において効果が顕著である。
【0030】また所望の部位を塩基性の後処理でまず
処理して、その後、カルシウムイオンおよびリン酸イオ
ンを含む処理で処理しても当該部位にリン酸カルシウ
ムを析出させることが可能である。これは本発明がリン
酸カルシウムのpHによる溶解度の差を原理としたもの
であることに起因する。従って、本発明は処理、後処
の処理順位を規定するものではないが、一般的に処
、後処理の順に処理する方が良好な結果が得られ
る。
【0031】本発明を実施例で更に詳しく説明する。な
お実施例では本リン酸カルシウム処理剤における代表的
利用分野として象牙質知覚過敏治療としての効果を例
示する目的で象牙細管の封鎖効果を、また生体硬組織表
面表層改質としての効果を例示するためにエナメル質
表面へのリン酸カルシウム析出効果およびエナメル質の
耐酸性向上効果を示した。
【0032】象牙質知覚過敏治療としての実施例にお
ける実験方法は下記の条件で行った。すなわち、エナメ
ル質を除去したヒト長期保存抜去大臼歯より、厚さ1.
5mmの象牙質プレートを硬組織薄切機を用いて調製
し、知覚過敏を想定して象牙細管を開管させるため、
0.6モル濃度の塩酸で1分間処理した。以下、この象
牙質プレートを疑似知覚過敏象牙質と呼ぶ。
【0033】この疑似知覚過敏象牙質に各実施例記載の
リン酸カルシウム処理剤における処理を綿球にて1分
間塗布後、綿球にて拭き取り乾燥、後処理を綿球にて
1分間塗布した。本試料の処理表面および割断面を走査
型電子顕微鏡にて観察した。また析出物を同定する目的
でX線マイクロアナライザーにより析出物のカルシウム
とリン酸のモル比(Ca/PO)を測定した。さらに
析出したリン酸カルシウムの成分を詳しく同定する目的
で疑似実験を行い、析出物を粉末X線回折法およびフー
リエ変換赤外分光光度法により同定した。疑似実験は象
牙細管内に析出した析出物は極小量であり、またそれを
取り出すことは非常に困難であったので内系1mmのガ
ラス管を象牙細管に見立て同様の処理を行い、ガラス管
内に析出した析出物を集めて行った。以下、このガラス
管を用いた実験を疑似ガラス管実験と呼ぶ。
【0034】硬組織表面表層改質材としての実施例にお
ける実験方法は下記の条件で行った。すなわち、ヒト長
期保存抜去前歯に実施例記載のリン酸カルシウム処理剤
における処理を綿球にて1分間塗布後、後処理を綿
球にて1分間塗布した。本試料表面を走査型電子顕微鏡
にて観察した。エナメル質耐酸性の向上については、ヒ
ト長期保存抜去前歯のエナメル質部分が平滑になる様に
研磨し、実施例記載のリン酸カルシウム処理剤における
処理剤を綿球にて1分間塗布後、後処理剤を綿球にて1
分間塗布した。その後、本試料表面をX線回折装置によ
り分析した。なおX線回折装置により得られるX線回折
パターンがシャープである程、エナメル質の主成分であ
るアパタイトの結晶性が良好であることを示している。
また結晶性が良好であるエナメル質は耐酸性に優れるこ
とが一般的に知られている。従って、X線回析パターン
がシャープであることは一般的に耐酸性に優れる指標と
なる。さらに耐酸性をより詳しく検計するためにエナメ
ル質表面を1規定の塩酸にて1分間酸処理した。リン酸
カルシウム処理剤で処理した部位および未処理部位にお
けるエナメル質の溶解深さを差動変圧器式表面粗さ形状
測定装置により検討することによりエナメル質の耐酸性
を検討した。
【0035】
【実施例1】水酸化カルシウム、リン酸、水酸化ナトリ
ウムを蒸留水1リットルに溶解し、全カルシウム濃度が
1モル濃度、全リン酸濃度が4モル濃度、ナトリウム濃
度が1.1モル濃度のリン酸カルシウムの処理を調
製した。溶液は透明であった。本溶液を0.22μmの
ろ紙でろ過後、pHを測定すると1.であった。
【0036】本処理で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
1モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を後処理として
後処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察すると
象牙細管が全面的に封鎖されていた。割断面を観察する
と析出物が表面表層から平均20μmの深さまで象牙細
管を封鎖していた。析出物は緻密体であり、析出物のリ
ン酸とカルシウムのモル比はX線マイクロアナライザー
の測定によると1.0であり析出物がリン酸水素カルシ
ウムであることが示唆された。疑似ガラス管実験におい
て得られた析出物の粉末X線回折パターンおよび赤外ス
ペクトルはリン酸水素カルシウム二水和物と一致した。
【0037】
【実施例2】水酸化カルシウム、リン酸、水酸化ナトリ
ウムを蒸留水1リットルに溶解し、全カルシウム濃度が
0.6モル濃度、全リン酸濃度が2.4モル濃度、ナト
リウム濃度が0.66モル濃度のリン酸カルシウム処理
を調製した。溶液は透明であった。本溶液を0.22
μmのろ紙でろ過後、pHを測定すると1.4であっ
た。
【0038】本処理で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
1モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を後処理として
後処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察すると
象牙細管が全面的に封鎖されていた。割断面を観察する
と析出物が表面から平均10μmの深さまで象牙細管を
封鎖していた。析出物は緻密体であり、析出物のリン酸
とカルシウムのモル比はX線マイクロアナライザーの測
定によると1.0であり析出物がリン酸水素カルシウム
であることが示唆された。疑似ガラス管実験において得
られた析出物の粉末X線回折パターンおよび赤外スペク
トルはリン酸水素カルシウム二水和物と一致した。
【0039】
【実施例3】水酸化カルシウム、リン酸、水酸化ナトリ
ウムを蒸留水1リットルに溶解し、全カルシウム濃度が
0.1モル濃度、全リン酸濃度が0.4モル濃度、ナト
リウム濃度が0.1モル濃度のリン酸カルシウム処理
を調製した。溶液は透明であった。本溶液を0.22μ
mのろ紙でろ過後、pHを測定すると2.0であった。
【0040】本処理で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
1モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を後処理として
後処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察すると
象牙細管が全面的に封鎖されていた。割断面を観察する
と析出物が表面から平均3μmの深さまで象牙細管を封
鎖していた。析出物は緻密体であり、析出物のリン酸と
カルシウムのモル比はX線マイクロアナライザーの測定
によると1.0であり析出物がリン酸水素カルシウムで
あることが示唆された。疑似ガラス管実験において得ら
れた析出物の粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換
赤外分光光度計で得られた赤外スペクトルはリン酸水素
カルシウム二水和物と一致した。
【0041】
【実施例4】リン酸水素カルシウム、リン酸を蒸留水1
リットルに溶解し、全カルシウム濃度が1モル濃度、全
リン酸濃度が3モル濃度のリン酸カルシウム処理を調
製した。溶液は透明であった。本溶液を0.22μmの
ろ紙でろ過後、pHを測定すると1.5であった。
【0042】本処理で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
1モル濃度の水酸化カリウム水溶液を後処理として後
処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察すると象
牙細管が全面的に封鎖されていた。割断面を観察すると
析出物が表面から平均22μmの深さまで象牙細管を封
鎖していた。析出物は緻密体であり、析出物のリン酸と
カルシウムのモル比はX線マイクロアナライザーの測定
によると1.0であり析出物がリン酸水素カルシウムで
あることが示唆された。疑似ガラス管実験において得ら
れた析出物の粉末X線回折パターンおよび赤外スペクト
ルはリン酸水素カルシウム二水和物と一致した。
【0043】
【実施例5】リン酸水素カルシウム、リン酸を蒸留水1
リットルに溶解し、全カルシウム濃度が1モル濃度、全
リン酸濃度が3モル濃度のリン酸カルシウム材の処理
を調製した。溶液は透明であった。本溶液を0.22μ
mのろ紙でろ過後、pHを測定すると1.5であった。
【0044】本処理で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
0.01モル濃度のフッ化ナトリウムを含む1モル濃度
の水酸化カリウム水溶液を後処理として後処理した。
処理表面を走査型電子顕微鏡で観察すると象牙細管が全
面的に封鎖されていた。割断面を観察すると析出物が表
面から平均18μmの深さまで象牙細管を封鎖してい
た。析出物は緻密体であり、析出物のリン酸とカルシウ
ムのモル比はX線マイクロアナライザーの測定によると
1.5であり析出物がリン酸三カルシウムあるいはアパ
タイトであることが示唆された。疑似ガラス管実験にお
いて得られた析出物の粉末X線回折パターンおよびフー
リエ変換赤外分光光度計で得られた赤外スペクトルはア
パタイトと一致した。
【0045】
【実施例6】リン酸水素カルシウム、リン酸を蒸留水1
リットルに溶解し、全カルシウム濃度が0.1モル濃
度、全リン酸濃度が0.3モル濃度のリン酸カルシウム
材の処理を調製した。溶液は透明であった。本溶液を
0.22μmのろ紙でろ過後、pHを測定すると2.5
であった。
【0046】本処理で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
0.5モル濃度の水酸化カリウム水溶液を後処理とし
て後処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察する
と象牙細管が全面的に封鎖されていた。割断面を観察す
ると析出物が表面から平均7μmの深さまで象牙細管を
封鎖していた。析出物は緻密体であり、析出物のリン酸
とカルシウムのモル比はX線マイクロアナライザーの測
定によると1.0であり析出物がリン酸水素カルシウム
二水和物であることが示唆された。疑似ガラス管実験に
おいて得られた析出物の粉末X線回折パターンおよび赤
外スペクトルはリン酸水素カルシウム二水和物と一致し
た。
【0047】
【実施例7】リン酸水素カルシウム、塩酸を蒸留水1リ
ットルに溶解し、全カルシウム濃度が1モル濃度、全リ
ン酸濃度が1モル濃度、塩素1.4モル濃度のリン酸カ
ルシウム材の処理を調製した。溶液は透明であった。
本溶液を0.22μmのろ紙でろ過後、pHを測定する
と1.4であった。
【0048】本処理で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
1.5モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を後処理
して後処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察す
ると象牙細管が全面的に封鎖されていた。割断面を観察
すると析出物が表面から平均16μmの深さまで象牙細
管を封鎖していた。析出物は緻密体であり、析出物のリ
ン酸とカルシウムのモル比はX線マイクロアナライザー
の測定によると1.0であり析出物がリン酸水素カルシ
ウムであることが示唆された。疑似ガラス管実験におい
て得られた析出物の粉末X線回折パターンおよび赤外ス
ペクトルはリン酸水素カルシウム二水和物と一致した。
【0049】
【実施例8】リン酸水素カルシウム、塩酸を蒸留水1リ
ットルに溶解し、全カルシウム濃度が0.04モル濃
度、全リン酸濃度が0.04モル濃度、塩素0.1モル
濃度のリン酸カルシウム材の処理を調製した。溶液は
透明であった。本溶液を0.22μmのろ紙でろ過後、
pHを測定すると2.であった。
【0050】本処理で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
1.5モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を後処理
して後処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察す
ると象牙細管が一部に封鎖されていた。封鎖されている
象牙細管の割断面観察では析出物が表面から平均3μm
の深さまで象牙細管を封鎖していた。析出物は緻密体で
あり、析出物のリン酸とカルシウムのモル比はX線マイ
クロアナライザーの測定によると1.0であり析出物が
リン酸水素カルシウムであることが示唆された。疑似ガ
ラス管実験において得られた析出物の粉末X線回折パタ
ーンおよび赤外スペクトルはリン酸水素カルシウム二水
和物と一致した。
【0051】
【実施例9】リン酸水素ナトリウム、リン酸を蒸留水1
リットルに溶解し、全カルシウム濃度が0.1モル濃
度、全リン酸濃度が0.3モル濃度のリン酸カルシウム
材の処理を調製した。溶液は透明であった。本溶液を
0.22μmのろ紙でろ過後、pHを測定すると2.5
であった。
【0052】本処理で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
0.5モル濃度の水酸化カリウム水溶液を後処理とし
て後処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察する
と象牙細管が全面的に封鎖されていた。割断面を観察す
ると析出物が表面から平均7μmの深さまで象牙細管を
封鎖していた。析出物は緻密体であり、析出物のリン酸
とカルシウムのモル比はX線マイクロアナライザーの測
定によると1.0であり析出物がリン酸水素カルシウム
二水和物であることが示唆された。疑似ガラス管実験に
おいて得られた析出物の粉末X線回折パターンおよび赤
外スペクトルはリン酸水素カルシウム二水和物と一致し
た。
【0053】
【実施例10】実施例1記載の処理を、ヒト長期保存
抜去前歯エナメル質に塗布後、実施例1記載の後処理
で処理を行った。本試料を走査型電子顕微鏡にて処理表
面を観察したすると一面に析出物が認められた。
【0054】
【実施例11】実施例2記載の処理を、ヒト長期保存
抜去前歯エナメル質に塗布後、実施例2記載の後処理
で処理を行った。本試料を走査型電子顕微鏡にて処理表
面を観察したすると一面に析出物が認められた。
【0055】
【実施例12】実施例5記載の処理を、ヒト長期保存
抜去前歯エナメル質に塗布後、実施例5記載の後処理
で処理を行った。本試料を走査型電子顕微鏡にて処理表
面を観察したすると一面に析出物が認められた。
【0056】
【実施例13】実施例8記載の処理を、ヒト長期保存
抜去前歯エナメル質に塗布後、実施例8記載の後処理
で処理を行った。本試料を走査型電子顕微鏡にて処理表
面を観察したすると一面に析出物が認められた。
【0057】
【実施例14】リン酸水素カルシウム、リン酸、ケイフ
ッ酸カルシウムを蒸留水1リットルに溶解し、全カルシ
ウム濃度が1モル濃度、全リン酸濃度が3モル濃度、ケ
イフッ酸カルシウムが0.05モル濃度のリン酸カルシ
ウム処理剤の処理を調製した。溶液は透明であった。
【0058】本処理で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
1モル濃度の水酸化カリウム水溶液を後処理として後
処理した。処理表面を走査型電子顕微鏡で観察すると象
牙細管が全面的に封鎖されていた。割断面を観察すると
析出物が表面から平均17μmの深さまで象牙細管を封
鎖していた。析出物は緻密体であり、析出物のリン酸と
カルシウムのモル比はX線マイクロアナライザーの測定
によると1.5であり析出物がリン酸三カルシウムある
いはアパタイトであることが示唆された。疑似ガラス管
実験において得られた析出物の粉末X線回折パターンお
よびフーリエ変換赤外分光光度計で得られた赤外スペク
トルはアパタイトと一致した。
【0059】
【実施例15】リン酸水素カルシウム、リン酸、ケイフ
ッ酸カルシウムを蒸留水1リットルに溶解し、全カルシ
ウム濃度が1モル濃度、全リン酸濃度が3モル濃度、ケ
イフッ酸カルシウムが0.05モル濃度のリン酸カルシ
ウム処理剤の処理剤を調製した。溶液は透明であった。
【0060】本処理剤で疑似知覚過敏象牙質を処理し、
1gの水酸化カルシウムと1ccの蒸留水を混合したペ
ーストを後処理剤として後処理した。処理表面を走査型
電子顕微鏡で観察すると象牙細管が全面的に封鎖されて
いた。割断面を観察すると析出物が表面から平均16μ
mの深さまで象牙細管を封鎖していた。析出物は緻密体
であり、析出物のリン酸とカルシウムのモル比はX線マ
イクロアナライザーの測定によると1.5であり析出物
がリン酸三カルシウムあるいはアパタイトであることが
示唆された。疑似ガラス管実験において得られた析出物
の粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光光
度計で得られた赤外スペクトルはアパタイトと一致し
た。
【0061】
【実施例16】実施例15記載の処理剤を、ヒト長期保
存抜去前歯エナメル質に塗布後、実施例15記載の後処
理剤で処理を行った。本試料のX線回折パターンは未処
理の回折パターンに比較してシャープであり結晶性の向
上が認められた。また酸溶液に対する溶解性は未処理の
試料と比較して小さいものであった。
【0062】
【実施例17】実施例5記載の処理剤を、ヒト長期保存
抜去前歯エナメル質に塗布後、実施例5記載の後処理剤
で処理を行った。本試料のX線回折パターンは未処理の
回折パターンに比較してシャープであり結晶性の向上が
認められた。また酸溶液に対する溶解性は未処理の試料
と比較して小さいものであった。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルシウムイオンおよびリン酸イオンを
    含む処理液と塩基性の後処理液からなるリン酸カルシウ
    ム析出材。
  2. 【請求項2】 処理液の全カルシウム濃度および全リン
    酸濃度がそれぞれ0.05モル濃度以上であることを特
    徴とする請求項1のリン酸カルシウム析出材。
  3. 【請求項3】 象牙質知覚過敏治療材としての請求項1
    のリン酸カルシウム析出材。
  4. 【請求項4】 生体硬組織表面表層改質材としての請求
    項1のリン酸カルシウム析出材。
  5. 【請求項5】 象牙質知覚過敏治療材としての請求項2
    のリン酸カルシウム析出材。
  6. 【請求項6】 生体硬組織表面表層改質材としての請求
    項2のリン酸カルシウム析出材。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005094766A1 (en) * 2004-03-29 2005-10-13 Colgate-Palmolive Company Oral care method using an absorbent fabric
EP3604217A4 (en) * 2017-03-30 2020-12-23 Tomita Pharmaceutical Co., Ltd. ANHYDROUS DIBASIC CALCIUM PHOSPHATE AND PROCESS FOR ITS PRODUCTION

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