JPH073353A - Al−Zn−Mg系合金の製造方法 - Google Patents

Al−Zn−Mg系合金の製造方法

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JPH073353A
JPH073353A JP14930793A JP14930793A JPH073353A JP H073353 A JPH073353 A JP H073353A JP 14930793 A JP14930793 A JP 14930793A JP 14930793 A JP14930793 A JP 14930793A JP H073353 A JPH073353 A JP H073353A
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Kenzo Iizuka
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 初晶巨大化合物の発生を防止する製造方法を
提供する。 【構成】 Zn:4〜5 %、Mg:1〜2 %、Mn:0.2〜0.7 %、
Cr:0.3%以下、Ti:0.2%以下、Zr:0.25 %以下を含み、
Cu、Si、Fe等のその他の元素量が各々0.2 %以下である
Al-Zn-Mg系合金において、前記合金の溶製時に、Mn、Cr
量が%Mn+3.25%Cr<0.905 、Ti、Zr量が%Zr+0.909
%Ti<0.127 なる組成に制御して初晶巨大化合物の発生
を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、航空機、車両等に使用
される展伸用Al-Zn-Mg系合金の製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】展伸用Al合金のなかで、Al-Zn-Mg系合金
は強度、溶接性等の諸特性に優れるため、鉄道車両等の
溶接構造材料として汎用されている。このようなAl-Zn-
Mg系合金においては、強度、耐応力腐食割れ性、溶接性
等の改善のため、主要合金元素であるZn、Mg以外にMn、
Cr、Ti、Zr等の合金元素が添加されるのが普通であり、
現在、これら元素を含有した合金として実用化されてい
る。
【0003】このように、Al-Zn-Mg系合金においては、
Mn、Cr、Ti、Zr等の合金元素が添加されるが、これらの
元素は、強度、耐応力腐食割れ性、溶接性等の諸性質が
最も良好となるように適正量が添加されている。例え
ば、代表的Al-Zn-Mg系合金であるJIS 7N01合金の場合、
Mn、Cr、Zr、Tiの規格値は、Mnは 0.2〜0.7 %、Crは0.
3 %以下、Zrは0.25%以下、Tiは0.2 %以下である。
【0004】しかしながら、このような規格範囲におい
て、これら元素を添加した場合、次のような問題点があ
った。これら元素の添加量が多い合金溶湯を溶製し、半
連続鋳造等の通常の方法で鋳造し、鋳塊を製造した場
合、鋳塊内には凝固時、巨大な金属間化合物(以下、巨
大化合物という)が生成してしまうという問題があっ
た。
【0005】このような巨大化合物は通常数10ミクロン
〜数100 ミクロン、極端な場合には数ミリメートルにも
達するものであり、これらが鋳塊内に生成した場合、こ
れら巨大化合物は、その後の圧延、押出、鍛造等の加工
工程中に消失することはなく、最終製品の板材あるいは
押出材等の加工材中に残存することになる。最終製品中
に残存したこれら巨大化合物は、鉄鋼等の金属材料中に
おける介在物と同様、最終製品の強度、延性、靱性、疲
労強度等の諸性質を劣化させたり信頼性を低下させたり
することは既によく知られるところである。
【0006】例えば、巨大化合物の発生が多く、鋳塊全
体に発生した場合、その鋳塊から押出等の加工工程を経
て製造された製品あるいは部品は巨大化合物を含むの
で、これら巨大化合物が疲労破壊の起点となったり、亀
裂の進展を助長するため、疲労強度の低下を引き起こす
ことになる。また、巨大化合物の発生が比較的少なく、
鋳塊内に局部的に散在して巨大化合物が存在する場合、
巨大化合物を含んだ部分の鋳塊から製造された製品ある
いは部品は、含まない物に比べて疲労強度特性が低くな
る。
【0007】このように、巨大化合物が発生する場合、
その発生の程度により、健全な特性を示す製品および部
品の歩留りが変化し、安定して信頼性の高い製品および
部品を供給することが困難となる。また、巨大化合物は
圧延、押出、鍛造等の加工時に割れ等の原因となり、加
工を阻害する原因になる場合もある。
【0008】以上のような有害な巨大化合物に関して
は、これまでいくつかの合金系について比較的詳細に調
査されており、以下のように報告されている。まず、高
力系Al-Zn-Mg-Cu 系合金であるJIS 7075合金ならびにAl
-Mg 系合金であるJIS 5083合金においては、巨大化合物
は凝固時α-Al が晶出する以前に初晶として晶出し、ま
た、その組成はMn、Fe等を含有したCrAl7 金属間化合物
であるとされている。(参考文献、(1)M.K.B.Day:J.I.M
85(1956-57),263 、(2)L.E.Steele,et al:J.I.M 88
(1959-60),260、(3)Donald J.Beerntsen:Metallurgical
Transactions B 8B(1977)687、(4) 吉川 他: 軽金属
29(1979)4、144 )。その防止方法としては、CrAl7
の初晶線以下にMn、Cr濃度を低減、制御することが必要
とされ、種々の初晶線に関する式が提案されている。
【0009】また、Al-Mn 系合金であるJIS 3004合金で
は、巨大化合物は7075、5083合金と同様、初晶化合物で
あり、その組成は(Fe,Mn)Al6と報告されている。(参考
文献、吉川 他: 軽金属 33(1983)10 、602 )。さら
に、Al-Zn-Mg系合金では、上述の合金と同様、巨大化合
物はTiを含有したZrAl3 系の初晶化合物であり、その初
晶領域が報告されている。また、Ti、Zr量の抑制、制御
がその防止に効果があるとされてきた。(参考文献、軽
金属学会第19回シンポジウム「アルミニウムの連続鋳造
技術と鋳塊組織」1981年10月、P.65)。
【0010】しかしながら、その制御の目標値について
は、Zrに関しては定量的な値が提案されているものの、
Tiに関しては明確な定量値はこれまでのところ明らかに
されていない。
【0011】以上のように、これまでの研究によれば、
巨大化合物は初晶として晶出する金属間化合物であり、
その組成は合金系により種々異なるものの、各合金系に
ついていずれも1種類の巨大化合物が生成し、その防止
のための初晶線が提案されてきた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、各合金
系について巨大化合物を防止するための初晶線が提案さ
れ、Al-Zn-Mg系合金についても、Al-Zr 系巨大化合物を
対象としてその初晶線が提案されてきた。
【0013】しかしながら、本発明者らがAl-Zn-Mg系合
金の巨大化合物について鋭意研究した結果、本合金系で
は、一種類の巨大化合物のみを対象とした初晶線を基に
してZr量を低減する従来の方法では、巨大化合物の発生
を完全には防止できないことが明らかとなった。その原
因は、本合金系では従来のZrAl3 系巨大化合物以外に新
たにCrAl7 系の巨大化合物が発生するためであり、従っ
て、この両者を同時に防止する新たな方法を確立しなけ
ればならないという新たな問題に直面した。
【0014】本発明は上記の問題点を解決するためにな
されたもので、本合金系の溶製時にMn、Cr、Ti、Zrの量
を制御することによって、初晶巨大化合物の発生を防止
するAl-Zn-Mg系合金の製造方法を提供することを目的と
する。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、Zn:4〜
5 %、Mg:1〜2 %、Mn:0.2〜0.7 %、Cr:0.3%以下、T
i:0.2%以下、Zr:0.25 %以下を含み、Cu、Si、Fe等の
その他の元素量が各々0.2 %以下であるAl-Zn-Mg系合金
において、前記合金の溶製時に、Mn、Cr量が%Mn+3.25
%Cr<0.905 、Ti、Zr量が%Zr+0.909 %Ti<0.127 な
る組成に制御して初晶巨大化合物の発生を防止するAl-Z
n-Mg系合金の製造方法である。
【0016】
【作用】本発明者らは、ZrAl3 系およびCrAl7 系の両巨
大化合物の生成挙動について、さらに研究を重ねた結
果、表1および図1に示す結果が得られた。表1はMn、
Cr、Ti、Zr量が種々に異なるJIS 7N01合金をるつぼ中で
溶解し、α−Alの晶出する温度(本合金の液相線温度、
通常 648.8℃)直上の温度 654℃で等温保持を行い、る
つぼ底部に沈殿する巨大化合物の生成状況を調査した平
衡実験の結果である。
【0017】
【表1】
【0018】図1に示す顕微鏡観察による巨大化合物の
説明図は、表1のNo.1の試料で認められた巨大化合物で
あり、図中A、Bで示す化合物は、顕微鏡下では明らか
に色調が異なり、二種類の巨大化合物が生成しているこ
とが明らかである。これらの化合物について、さらに調
査、研究した結果、化合物Aは前述のAl-Zn-Mg系合金で
報告されているものと同様のTiを含有した初晶のZrAl3
化合物(以下、(Ti,Zr)Al3という)である。一方、化合
物Bは前述の報告では認められていない化合物であり、
調査の結果、Mnを含有した初晶のCrAl7 化合物(以下、
(Mn,Cr)Al7という)であることが判明した。
【0019】表1、No.1〜7 の結果から分かるように、
Mn、Cr、Ti、Zrが高い場合には、(Mn,Cr)Al7、(Ti,Zr)A
l3の巨大化合物が同時に生成している。一方、Mn、Cr濃
度を低減したNo.8〜20の組成では、(Mn,Cr)Al7の巨大化
合物の生成は認められないが、もう一方の(Ti,Zr)Al3
巨大化合物の生成が認められる。さらに、Mn、Cr、Ti、
Zrの濃度を抑制したNo.21 〜27の試料では、両巨大化合
物の生成は全く認められなかった。すなわち、本合金で
はこれまで報告されてきた(Ti,Zr)Al3初晶化合物の他
に、新たに(Mn,Cr)Al7初晶化合物が生成することが明ら
かとなった。
【0020】以上の表1の結果ならびに初晶線の温度依
存性等を考慮して、JIS 7N01合金の(Mn,Cr)Al7の初晶線
を 648.8℃の平衡状態において求めると、図2に示す%
Mn+3.25%Cr=0.905 となることが明らかとなった。従
って、Mn、Cr濃度を %Mn+3.25%Cr<0.905 に制御すれば(Mn,Cr)Al7巨大化合物は完全に防止するこ
とが可能となった。
【0021】さらに、%Mn+3.25%Cr<0.905 なるMn、
Cr濃度範囲において、(Ti,Zr)Al3の初晶線を表1、No.8
〜27の結果から求めると、初晶線は図3に示す%Zr+0.
909%Ti=0.127 となることが明らかとなった。従っ
て、Ti、Zr濃度を %Zr+0.909 %Ti<0.127 に制御すれば、(Ti,Zr)Al3巨大化合物も同時に防止可能
となった。
【0022】以上のように、本合金系においては二種類
の巨大化合物が発生するため、従来一種類の巨大化合物
を対象とした防止方法ではその発生を防止することは困
難であったが、本発明によれば、Mn、Cr濃度を%Mn+3.
25%Cr<0.905 に、Ti、Zr濃度を%Zr+0.909 %Ti<0.
127 に制御しているため、二種類の巨大化合物を同時に
防止可能である。
【0023】
【実施例】以下に、本発明の実施例について説明する。
Mn、Cr、Ti、Zr濃度を種々に変化させ、これら元素以外
のMg、Zn等の元素濃度はJIS 7N01合金相当とした種々の
溶湯を溶製し、通常行われている連続鋳造法で鋳塊を造
塊した後、鋳塊内部を顕微鏡観察し、巨大化合物の発生
の有無を調査した。調査結果を溶湯組成とともに表2に
示す。なお、造塊した鋳塊寸法は厚さ500mm 、幅1500m
m、長さ5000mmである。また、巨大化合物の調査は、鋳
塊の長さ方向中央部において、500 ×1500×20mmの試料
を切り出し、この試料の幅方向中央部を鋳塊の表面から
中心部にわたって顕微鏡観察することにより行った。
【0024】表2から明らかなように、比較例No.1〜3
はMn、Cr、Ti、Zrの濃度が、本発明の初晶線を越えてい
るため、(Mn,Cr)Al7、(Ti,Zr)Al3の巨大化合物が同時に
発生している。
【0025】比較例No.4〜6 は、Mn、Crの濃度が本発明
の初晶線以下で、Ti、Zrの濃度が本発明の初晶線を越え
ているため、(Mn,Cr)Al7の巨大化合物の発生は認められ
ないが、もう一方の(Ti,Zr)Al3の巨大化合物の発生が認
められる。
【0026】本発明法No.7〜10は、Mn、Cr、Ti、Zrの全
てを本発明の初晶線以下の濃度に抑制しているため、両
巨大化合物の発生は全く認められない。
【0027】
【表2】
【0028】以上述べたように、本発明により本合金系
で発生する両巨大化合物を同時に防止可能となった。
【0029】
【発明の効果】本発明は、Zn:4〜5 %、Mg:1〜2 %、M
n:0.2〜0.7 %、Cr:0.3%以下、Ti:0.2%以下、Zr:0.25
%以下を含み、Cu、Si、Fe等のその他の元素量が各々
0.2 %以下であるAl-Zn-Mg系合金において、前記合金の
溶製時に、Mn、Cr量が%Mn+3.25%Cr<0.905 、Ti、Zr
量が%Zr+0.909 %Ti<0.127 なる組成に制御して初晶
巨大化合物の発生を防止するもので、本発明によれば、
本合金で発生する(Mn,Cr)Al7、(Ti,Zr)Al3の二種類の初
晶巨大化合物の発生を同時に防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】巨大化合物の説明図である。
【図2】JIS 7N01合金の(Mn,Cr)Al7の初晶線を示す図で
ある。
【図3】JIS 7N01合金の(Ti,Zr)Al3の初晶線を示す図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飯塚 健三 栃木県真岡市鬼怒ケ丘15番地 株式会社神 戸製鋼所真岡製造所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Zn:4〜5 %、Mg:1〜2 %、Mn:0.2〜0.7
    %、Cr:0.3%以下、Ti:0.2%以下、Zr:0.25 %以下を含
    み、Cu、Si、Fe等のその他の元素量が各々0.2 %以下で
    あるAl-Zn-Mg系合金において、前記合金の溶製時に、M
    n、Cr量が%Mn+3.25%Cr<0.905 、Ti、Zr量が%Zr+
    0.909 %Ti<0.127 なる組成に制御して初晶巨大化合物
    の発生を防止することを特徴とするAl-Zn-Mg系合金の製
    造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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