JPH07333397A - 透過型x線フィルタ - Google Patents

透過型x線フィルタ

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JPH07333397A
JPH07333397A JP6154301A JP15430194A JPH07333397A JP H07333397 A JPH07333397 A JP H07333397A JP 6154301 A JP6154301 A JP 6154301A JP 15430194 A JP15430194 A JP 15430194A JP H07333397 A JPH07333397 A JP H07333397A
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JP
Japan
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ray
filter
transmission
light
rays
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Application number
JP6154301A
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Inventor
Hiroshi Nakamura
浩 中村
Katsumi Sugizaki
克己 杉崎
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Nikon Corp
Original Assignee
Nikon Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 透過型X線フィルタのX線選択特性を改善
し、X線発生装置に用いてそのX線出力特性を向上す
る。 【構成】 2枚の薄膜フィルタを近接配置する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば、X線顕微鏡、
X線縮小露光装置、X線分析もしくは分光装置、X線検
出器及びレーザープラズマX線源等のX線光学機器に使
用されるX線用の透過型フィルタ並びにこれを利用した
X線発生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、X線顕微鏡やX線露光装置等のよ
うに、X線の特性を利用するX線光学機器が種々開発さ
れている。これらX線光学機器の殆どが特定の波長域
(若しくは波長)のX線を選択して用いる構成となって
いる。これらのX線光学機器に用いられる一般的なX線
発生源としては、例えばレーザープラズマX線源や、電
子励起型X線源、又はシンクロトロン放射光等が応用さ
れている。
【0003】これらのX線発生源では、希望する特定の
波長域(若しくは波長)のX線だけでなく、この特定の
波長域以外のX線や紫外線、可視光及び赤外線などの光
もまた発生させている。しかし、特定の波長域(若しく
は波長)以外の光は、X線光学機器の解像力や感度の低
下等の問題を引き起こす原因になり、X線光学機器の性
能に悪影響を及ぼす。このため、従来より、特定X線を
選択するフィルタ手段や分光器等を用いてこのような不
必要な光を取り除く構成としていた。
【0004】このようなフィルタ手段の内、いわゆる特
定波長のX線のみを透過させる性質をもつ透過型フィル
タは、分光器に比べると波長分解能(波長選択性)は劣
るが、透過率が高い利点がある。このため、選択される
X線の強度が高い利点を考慮して、紫外、可視及び赤外
の光(以下、可視光と総称する。)のカット用、あるい
は高い波長分解能が必要でない場合のフィルタ手段とし
て、例えばX線源の直後、若しくはX線検出器の直前等
に透過型フィルタを配置して使用している。
【0005】従来使用されていた一般的な透過型フィル
タは、厚さ数μm程度の薄膜部材で構成されており、元
素の吸収端、例えばCでは4.4nm前後での透過率の
差を利用してX線の分光を行っている。このようなフィ
ルタとして用いられる物質には、例えば、Be、C、S
i、Ti、Ni、Cu、Ag、Ta等の元素、若しくは
その化合物等がある。
【0006】フィルタの厚さは、目的の波長域のX線の
透過率と可視光に代表される不必要な光の透過率の比率
で決められるが、フィルタが金属薄膜で構成されている
場合には、一般的に数μmの厚さがあれば、ここでの吸
収や反射によって可視光等の不要光をカットすることが
できる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このような薄膜フィル
タには、最初から数十μmのピンホールが面積比で1%
程度存在し、このようなピンホールは、X線を含めて不
必要な光をも透過させてしまう。このため、このような
従来の薄膜フィルタでは、完全な不要光の除去は行なえ
ない問題があるが、このようなピンホールの存在自体
は、薄膜フィルタ製造工程上の問題から避けられないも
のである。
【0008】また、このようなピンホールの数自体は、
フィルタの厚さを数百μm以上の厚さにすることによっ
て極端に減少させることができるが、フィルタを厚くす
ると必要な波長域のX線の透過率も減少してしまうため
に、X線を有効に活用できないものとなる。
【0009】このため、従来の透過型フィルタは、ここ
を透過する(利用する)X線の強度を重視して、フィル
タ自体は数μm以上に厚くすることはせず、ピンホール
から不必要な光が混入する問題はノイズ光等として処理
しているのが実状であり、このようなノイズ光が混入す
るX線を使用する装置の精度が向上できない問題となっ
ていた。また、ピンホール部分とそうでない部分を透過
したX線の透過強度に差が生ずるので、X線の口径内で
X線自体に強度分布が生じてしまう(ピンホール通過部
分の強度が強くなる)問題も生じていた。
【0010】一方、この種の透過型フィルタをX線発生
装置並びにX線光学機器に応用する場合、以下のような
制限があった。まず、この種の透過型フィルタは、作製
できる大きさ(透過領域の口径サイズ)に制限がある
(一般には、30×30mm程度)ため、X線の口径が
小さい段階でフィルタを通過させる必要がある。また、
X線以外の不必要な光をX線光学機器に入射させると、
熱等の影響で光学系が劣化してしまう問題がある。
【0011】このため、通常はフィルタ手段をX線発生
装置におけるX線源の直後に配置して不要な光をカット
しており、口径が小さい段階で処理すると共に、X線を
利用する光学系に不要な光を入射させないで、これらの
光学系を保護する役目も持たせることが多い。また、検
出系へのノイズ光の混入を防止するために、検出手段の
直前にフィルタを配してノイズ光を除去する場合もあ
る。
【0012】ここで、通常用いられるX線発生装置にお
いて、特に良く知られたX線源のひとつであるレーザプ
ラズマX線源は、以下のようにX線を発生させる。ま
ず、通常は1ショット10nsec程度のパルスレーザ
光を、ターゲット物質上にΦ100μm程度に集光させ
て照射し、高密度プラズマを形成する。この高密度プラ
ズマからは、プラズマ光としてX線を含めて赤外領域の
光までが発生するので、この中から特定の波長域のX線
だけを取り出すために、不必要な光をカットする透過型
フィルタをX線源の直後(プラズマからX線を取り出す
光路上)に配置する場合が多い。
【0013】このようなレーザプラズマX線源からは、
プラズマ光以外にも、いわゆるデブリスと呼ばれるター
ゲットからの飛散物が発生(飛散)し、このデブリスが
フィルタに衝突するとフィルタは部分的に破壊され(デ
ブリスが貫通する)、孔が生じてしまう。このようなデ
ブリス貫通孔は、製造時のピンホールと同様な孔である
ので、X線発生装置の使用時間の経過と共に、デブリス
貫通孔からなるピンホールの数が増加することとなる。
【0014】このため、最初から存在するピンホールと
合わせて、フィルタによる波長選択効果(可視光等の排
除効果)が経時的に減少してしまうので、この種のX線
発生装置並びにこれを利用したX線光学機器の性能を劣
化させる要因となり、これが大きな問題となっていた。
【0015】これに対して、従来はフィルタ手段の交換
によりこの問題に対処していたが、安定した性能が得ら
れない事、連続使用時間に制限がある事、フィルタの交
換作業に伴う装置の停止時間が、X線光学機器の作業性
やスループットの低下を招く事、等の問題が生じてい
た。
【0016】本発明は、かかる問題に鑑みてなされたも
ので、X線選択特性に優れた透過型X線フィルタを提供
することを主目的とするものである。さらに、この透過
型X線フィルタを利用して、X線発生特性に優れたX線
発生装置を提供する事を目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的達成のため、本
願請求項1に記載した発明では、予め定めた波長域のX
線を選択的に透過させるX線透過面を複数備え、前記複
数のX線透過面がX線の透過方向に対し互いに近接させ
て配置されてなることを特徴とする透過型X線フィルタ
を提供する。
【0018】請求項2に記載した発明は、請求項1に記
載の透過型X線フィルタであって、前記複数のX線透過
面のうち、少なくとも一つのX線透過面を予め定めた方
向に移動させる移動手段が設けられていることを特徴と
するものである。
【0019】請求項3に記載した発明は、請求項2に記
載の透過型X線フィルタであって、前記移動手段が、前
記X線透過面を含む面内で前記X線透過面を平行移動さ
せるものであることを特徴とするものである。
【0020】請求項4に記載した発明は、請求項2に記
載の透過型X線フィルタであって、前記移動手段が、前
記X線透過面を含む面内で前記X線透過面を回転移動さ
せるものであることを特徴とするものである。
【0021】請求項5に記載した発明は、請求項2に記
載の透過型X線フィルタであって、前記移動手段が、前
記X線透過面を往復振動させるものであることを特徴と
するものである。
【0022】一方、請求項6に記載した発明は、上記の
発明に係る透過型X線フィルタを利用したX線発生装置
に関するものである。即ち、標的部材に励起エネルギー
ビームを照射してプラズマ領域を形成させ、このプラズ
マ領域から生成されたX線を取り出すX線発生装置にお
いて、前記プラズマ領域から生成されたX線の光路上
に、X線の透過方向に対して複数のX線透過面を互いに
近接配置されてなる透過型X線フィルタが配置されてい
ることを特徴とするX線発生装置を提供するものであ
る。
【0023】また、請求項7に記載した発明は、請求項
6に記載のX線発生装置であって、前記透過型X線フィ
ルタが、少なくとも一つのX線透過面を予め定めた方向
に移動させる移動手段が設けられてなるものであること
を特徴とするものである。
【0024】
【作用】本発明は、上記のように構成されているため以
下の作用を奏する。まず、請求項1に記載した発明で
は、予め定めた波長域のX線を選択的に透過させるX線
透過面を複数備えているので、X線はX線透過面を複数
回透過する事となる。
【0025】本発明のX線用透過型フィルタに用いるX
線透過面は、従来の薄膜フィルタとほぼ同様の構成のも
のが用いられる。即ち、この薄膜フィルタからなるX線
透過面には、前述したように数10μm程度の大きさの
ピンホールが、ランダムに面積比で約1%(1mm2
たり数十個)存在する。個々のピンホールの大きさは、
X線透過面(薄膜フィルタ)の面積に比べて極めて小さ
い。
【0026】このため、このようなX線透過面をX線の
透過方向に対して複数設けると、それぞれのX線透過面
の(X線の透過方向に対して)同じ位置にピンホールが
存在する確率は極めて小さいものとなる。この確率は、
X線透過面の枚数が増えるに従って少なくなるものであ
り、3枚以上設ければほぼ完全にゼロとなる。
【0027】従って、従来同様にピンホールが存在する
X線透過面(薄膜フィルタ)を使用しても、これらを2
枚以上重ねて設けることにより、1つのX線透過面にお
けるピンホールを透過した不要光が二枚目以降のX線透
過面により確実にカットされることとなる。
【0028】言い換えると、これらを組合わせている本
発明に係る透過型フィルタでは、透過型フィルタ全体と
しては、製造時のピンホール(全体を一方向に透過する
孔)が存在しないものとなる。従って、不必要な光をほ
ぼ完全にカットすることができるため、可視光等のノイ
ズ光が含まれないX線のみを選択的に透過させる事がで
きるものとなる。これにより、従来の単体フィルタ手段
に比較して、X線以外の不要光の除去性能が格段に向上
したX線透過型フィルタが構築できる。
【0029】ここで、本発明の複数のX線透過面は、夫
々がX線の透過方向に対し互いに近接させて配置されて
いるので、例えば一つ目のX線透過面のピンホールを透
過した不要光が、ここでの回折作用により拡散して進行
しても、次のX線透過面のいずれかのピンホールに到達
しないか、到達しても極めて微小な強度である程度に抑
えられている。
【0030】即ち、単に複数のX線透過面を設けただけ
でも、夫々のX線透過面のピンホールが光束の進行方向
に対して同じ位置に位置する確率は極めて低いが、一つ
目のX線透過面のピンホールを透過した光束が、ここで
の回折作用により次のX線透過面へ拡散して進行した場
合には、次のX線透過面のピンホールへも到達してしま
う場合がある。この場合には、不要光が二つ目のX線透
過面のピンホールから更に透過して進行してしまうの
で、X線以外の不要光が完全に除去できず、取り出すX
線に混入してしまう恐れがある。
【0031】本発明によれば、何れかのX線透過面のピ
ンホールからの拡散光が、次のX線透過面上で大きく広
がらない程度の適当な間隔を予め定めて夫々のX線透過
面を設けているので、これらの回折拡散光が二つ目以降
のX線透過面を透過する確率が極めて低くなり、仮に透
過してもその強度は極めて弱いものとなる。
【0032】なお、これらの相対間隔は、取り出すX線
源の種類、選択するX線の波長域、カットする可視光等
の不要光の波長等に応じて適宜定めれば良い。
【0033】また、本発明の透過型X線フィルタにより
選択されたX線(透過X線)の強度は、X線透過面(薄
膜フィルタ)の透過厚に応じた減衰量に影響される。こ
のため、従来同様の透過X線強度を得るには、複数のX
線透過面の総厚み(個々のX線透過面の厚みの和)が、
従来の単体薄膜フィルタの厚みと同程度である事が好ま
しい。
【0034】なお、総厚みが従来の単体フィルタより薄
くても、不要光の除去特性は余り変わらないので、透過
するX線の強度を増加させるためには、総厚みを従来の
単体フィルタより薄くすることも考えられる。
【0035】次に、請求項2に記載した発明では、請求
項1に記載の透過型X線フィルタであって、前記複数の
X線透過面のうち、少なくとも一つのX線透過面を予め
定めた方向に移動させる移動手段が設けられているた
め、複数のX線透過面に存在するピンホールの相対位置
関係が変動するものとなっている。
【0036】このため、仮に複数のX線透過面に存在す
る夫々のピンホールがX線の透過方向に対して同じ位置
に一致していた場合であっても、移動手段により何れか
のX線透過面を移動させることにより、そのX線透過面
のピンホールの位置を変更することができるので、不要
光は何れかのX線透過面で除去されることとなる。
【0037】また、この透過型X線フィルタをX線発生
装置に応用する場合、特に、前述したようなレーザプラ
ズマX線源に応用する場合には、ターゲットからの飛散
物であるデブリスがX線透過面(フィルタ面)を貫通し
て生じるデブリス貫通孔は、デブリスの飛散方向に沿っ
て複数のX線透過面にそれぞれ生じてしまう。
【0038】このデブリスによる夫々の貫通孔は、X線
等の進行方向と同様に(進行方向に対して同じ位置に)
一致してしまうので、光源からの不要光がそのまま透過
してしまうこととなる。そして、このようなデブリス貫
通孔は、使用時間に伴い増加してしまうので、不要光の
除去作用が低下することとなる。
【0039】このような場合にも、本発明では何れかの
X線透過面を(透過軸方向以外に)相対移動させること
で、個々のX線透過面に存在するデブリス貫通孔(ピン
ホールと同じ)同士の相対位置関係を、X線の進行方向
に対して一致しないように変更できることとなる。
【0040】このような移動手段は、透過型X線フィル
タの使用中に定期的に、或いは定常的に作動させるか、
もしくは不要光の増加(または除去)状態等を監視し
て、それに応じて適宜作動させればよい。
【0041】次に、請求項3に記載した発明は、前記移
動手段が、X線透過面を含む面内でX線透過面を平行移
動させるものであるため、X線透過面(及びそこに存在
するピンホールやデブリス貫通孔等)は、X線の透過方
向やデブリスの飛散方向に対して交差する方向に移動す
る。
【0042】即ち、X線透過面は通常X線の透過方向に
対して交差する方向(一般には直交する方向)に配設さ
れるので、少なくともX線の透過方向に対して交差する
方向(必ずしもX線透過面と平行な方向で無くてもよ
い。)に移動すれば、ピンホールやデブリス貫通孔の位
置はX線透過方向に対して交差する方向に変位する。
【0043】このため、X線の透過方向に対して複数の
X線透過面のピンホールやデブリス貫通孔等が一致して
いる場合であっても、少なくとも1つのX線透過面を交
差方向等に移動させることにより、個々のピンホール等
を微小な移動距離で相対変位させることができるものと
なるので、X線以外の不要光の除去性能が簡単に回復す
ると共に、微小移動を繰り返すことで、所定の性能を維
持して長時間の使用が可能となる。
【0044】尚、本発明でX線透過面を含む面内でX線
透過面を平行移動させるものとしたのは、個々のX線透
過面同士の相対間隔を変動させないためであり、更に、
この相対間隔の変動によりピンホール等からの不要光に
よる回折光の影響等が変化することを防止するためであ
る。
【0045】請求項4に記載した発明は、前記移動手段
が、X線透過面を含む面内でX線透過面を回転移動させ
るものであるので、X線透過面の回転中心以外の部分
は、X線の透過方向に対して交差する方向に変位する。
本発明も、上記同様に、X線透過面同士の相対間隔を変
動させずにX線透過面(のピンホール等)を移動させる
ものであり、この回転移動により、X線透過方向に対し
て一致していた個々のX線透過面のピンホール等を変位
させることができる。
【0046】ここで、透過するX線の口径に対してX線
透過面の径がほぼ等しい場合には、中央部分における相
対変位量は少ないものの、相互の変位は確実に行うこと
ができる。また、透過するX線の口径がX線透過面より
かなり小さい場合(好ましくは、半分以下の場合)に
は、X線透過面の中央部とX線の中央部を相対的に偏心
させることで、X線透過面の全面を効果的に使用できる
ものとなる。
【0047】次に、請求項5に記載した発明は、前記移
動手段が、X線透過面を往復振動させるものであるの
で、個々のX線透過面に存在するピンホール等も振動移
動する。このため、仮にピンホール等を透過してしまっ
たX線以外の不要光、あるいは少なくとも1つのピンホ
ール等を透過してしまったX線(ノイズX線)が存在し
ても、その発生位置がX線透過面内で常に変動すること
となる。
【0048】これにより、フィルタ手段を透過した不要
光あるいはノイズX線は、透過するX線の口径内に分散
して混入することとなり、透過したX線の強度の時間平
均を見ると、X線の口径内の位置によらず均一化された
ものとなる。
【0049】従って、従来はX線の口径内においてピン
ホール等が存在する位置のみ局部的に強度の強い透過X
線となっていたが、本発明によれば、口径内の位置によ
らず大旨均一化された強度のX線が得られる利点があ
る。
【0050】次に、請求項6に記載した発明では、上記
の発明に係る透過型X線フィルタを利用したX線発生装
置に関するものであり、所謂レーザプラズマX線源に応
用している。本発明のX線源は公知のレーザプラズマX
線源と同様な構成であり、標的部材に励起エネルギービ
ームを照射してプラズマ領域を形成させ、このプラズマ
領域から生成された光からX線を取り出す構成のもので
あればよい。
【0051】このX線発生装置には、前記プラズマ領域
から生成されるX線の光路上に、X線の透過方向に対し
て複数のX線透過面を互いに近接配置されてなる透過型
X線フィルタが配置されているので、プラズマ領域から
生じた光のうちX線以外の不要光(可視光等)がここで
除去されて、必要なX線のみがここを透過して取り出さ
れる。
【0052】前述したように、本発明に係るX線発生装
置に用いる透過型X線フィルタは、複数のX線透過面を
備えているため、ピンホール等を透過した不要光が取り
出すX線に混入しにくいものとなる。これにより、不要
光が少ないX線のみが得られるX線発生装置が得られ
る。
【0053】また、請求項7に記載した発明は、請求項
6に記載のX線発生装置であって、前記透過型X線フィ
ルタが、少なくとも一つのX線透過面を予め定めた方向
に移動させる移動手段が設けられているので、X線以外
の不要光が更に除去され、不要光の混入が極めて少ない
純粋なX線のみが取り出せると共に、連続可動時間が飛
躍的に向上したX線発生装置が得られる。
【0054】
【実施例】以下に、実施例を通じ本発明を更に詳しく説
明する。まず図1に、本発明に係るX線透過型フィルタ
の第1の実施例を利用したX線露光装置の概略を示して
いる。このX線露光装置は、主に、X線を発生させる光
源手段(図示せず)からの照射光102aを反射型マス
ク(レチクル)106に照射するための照明光学系10
5と、マスク106を介した光をSiウェハ109上に
結像させるための結像光学系108とで構成されてお
り、マスク106上のパターンを1/4程度に縮小して
Siウェハ109上に露光する装置である。
【0055】マスク106はマスクステージ107に、
Siウェハ109はウェハステージ110にそれぞれ保
持されており、アライメント機構(図示せず)を含め
て、装置全体は真空チャンバー(図示せず)内に配設さ
れている。なお、これらの部材等は模式的に記載してい
るので、実際の配置関係とは異なる部分がある。
【0056】光源手段は、図示していない放射(SR)
光源と、SR光源の直後(照明光学系105の上流)に
配置されたX線透過型フィルタ101とで構成されてお
り、このX線透過型フィルタ101は、SR光源からの
放射光のうち露光に必要な所望の波長域の光を選択的に
透過するものである。つまり、SR光源の放射光に含ま
れる様々の波長の不要光(使用波長以外のX線、可視光
及び紫外光等)がカットされるため、選択的に透過され
た予め定めた波長域のX線が照射光102aとして露光
装置に導かれる。
【0057】本実施例では、フィルタ部材としてBeの
薄膜部材で構成されたX線透過型フィルタ101を用い
ており、このBe薄膜フィルタによりSR光源の放射光
の中から波長13nm近傍のX線のみが選択されて透過
し、照射X線102aとして露光に用いられる。
【0058】ここで、本実施例に用いたBe薄膜フィル
タには、薄膜を製造する段階に生じるピンホールが存在
しており、その分布密度をゼロにすることは困難であ
る。光学式顕微鏡による観察から、ピンホールの大きさ
は10〜50μm、分布はランダム、且つ分布密度は面
積比でおよそ1%であることがわかっている(薄膜の厚
さおよそ1μm)。
【0059】従って、従来のように1枚の薄膜フィルタ
のみでX線透過型フィルタ101を構成すると、ピンホ
ールを通過した可視光等の不要な光が、照明X線102
aに混入することを防ぐことはできない。
【0060】このような不要光が投影露光装置に入射す
れば、投影露光装置における解像力の低下をもたらすと
共に、光学素子として使用している多層膜反射鏡、もし
くは斜入射反射鏡等に吸収され、そこで熱に変換されれ
ば、この熱によって光学素子の形状の変形、及び多層膜
の破壊等が起こり、装置の性能が劣化する等のような装
置への悪影響が生ずる。
【0061】従って、不要光が照明X線102aに混入
することを防止するために、本実施例では、X線透過型
フィルタ101は、2枚の厚さ1μmのBe薄膜フィル
タ(101a、101b)を近接させて配置する構成と
している。ここで、両フィルタの間隔を1mm程度にす
ることによって充分な不要光除去作用が得られた。
【0062】このような薄膜フィルタを2枚重ねた構成
の透過型フィルタによる、不要光の除去作用を図2を用
いて説明する。図2(a)は、二枚の薄膜フィルタ30
1a、301bから成る透過型フィルタ301の側面
図、図2(b)は正面から見た図を表している。
【0063】それぞれの薄膜フィルタ301a、301
bには、ピンホール303a、303bが存在するが
(図ではピンホールの大きさを誇張して示してある)、
それらの位置はランダムなため、2枚の薄膜フィルタを
重ねたときに1枚目の薄膜フィルタ301aのピンホー
ル303aと2枚目の薄膜フィルタ301bのピンホー
ル303bの位置が重なる確率は極めて小さい。
【0064】このため、仮に一枚目の薄膜フィルタ30
1aのピンホール303aを不要光が透過しても、二枚
目の薄膜フィルタ301bのピンホール303bには到
達しないので、ここで一枚目のフィルタ301aで除去
できなかった不要光が、二枚目の薄膜フィルタ301b
により完全に除去されることとなる。
【0065】言い換えると、透過型フィルタ301とし
ては、照明X線302aの透過方向に貫通するピンホー
ルはほとんど存在しないことになる。つまり、薄膜製造
段階で生じてしまうピンホールは、その分布がランダム
であるため、2枚の薄膜を重ねることによって、照射X
線302aにとってのピンホール分布密度を実質的にほ
とんどゼロにすることができる。
【0066】また、本実施例では、2枚の薄膜フィルタ
301a及び301bの膜厚をそれぞれta 及びtb
表すとき、これらの合計膜厚(ta +tb )が、従来の
透過型フィルタ(単体薄膜フィルタ)の膜厚tと等しく
なる(ta +tb =tが成り立つ)ように、それぞれの
膜厚を定めている。
【0067】従って、X線の透過率は、2枚の薄膜フィ
ルタ301a及び301bを用いた場合でも、従来の単
体薄膜フィルタの場合と等しくすることができる。この
ため、不要光が除去された照明X線302aとしての強
度は従来と同様である。
【0068】このように、本実施例によれば、従来と比
べてX線透過率(強度)の損失がほとんどない構成で、
従来の単体薄膜フィルタではカットしきれなかった不要
光の混入を極めて低レベルに抑えることができた。これ
により、このX線透過フィルタを利用した投影露光装置
では、解像力が向上すると共に、装置に用いられている
光学素子(多層膜反射鏡、斜入射反射鏡等)の性能劣化
を防止することができる。
【0069】尚、本実施例では、2枚の薄膜フィルタの
相対位置が固定された構成について述べたが、これらは
必ずしも固定されている必要は無い。例えば、少なくと
も一方のフィルタ部材を移動させることにより、透過し
たX線の口径内における強度分布の不均一性を解消する
ことができる。
【0070】これについて図3を用いて説明する。ま
ず、図3(a)に示すように、2枚の薄膜フィルタ52
1a及び521bを重ねたとき、これらのフィルタ部材
を透過して得られる照明X線522aにとって実質的に
はピンホールは存在してないが、それぞれのフィルタ部
材にはピンホールが分布している。
【0071】従って、2枚の薄膜フィルタからなるフィ
ルタ部材521を透過した照明X線522aのなかに
は、2枚とも膜部を透過したX線(L2 )と、1枚は膜
部を透過するが1枚はピンホール部を通過したX線(L
1 )とが混じっていることになる。
【0072】ここで、単体の薄膜フィルタ(521a及
び521b)の透過率をT(仮に二枚とも同じとする)
と表すと、X線L2 の透過率はT2 に減少するが、X線
1の透過率はT程度の減少であり、X線L2 と比較し
てX線L1 (いずれかのピンホールを1つ透過したX
線)の方が透過光強度の減少率が小さい。
【0073】従って、図3(b)に示すように、放射光
512のうちX線透過型フィルタ511を透過した照明
X線512aの強度は、光束口径Φ内において空間的不
均一さを持つこととなる。
【0074】このような場合、図3(c)に示すよう
に、少なくとも一方の薄膜フィルタを振動移動させる
と、それに伴ってピンホールの位置も振動移動するため
に、透過した照明X線502aの光束口径Φ内における
時間平均強度をほぼ均一化させることができる。即ち、
ピンホール位置が変化することにより、ピンホールを透
過するX線の発生位置が透過するX線の光束口径Φ内で
変動するので、時間的平均を考慮するとほぼ均一化され
るものとなる。
【0075】これらの移動手段は、少なくともX線透過
方向に対して、ピンホールの位置が変化するように移動
させるものであれば良く、例えばフィルタを含む面内で
往復振動させるもの、薄膜フィルタをX線の透過方向を
軸にして回転させるもの等の手段が考えられるが、いず
れの場合にも同様の効果を得ることができる。
【0076】更に、光源として(放射光の代わりに)レ
ーザープラズマX線源を用いた場合には、前述したよう
に、光源からの飛散物体(デブリス等)が薄膜フィルタ
に衝突することによって新たなピンホール(デブリス貫
通孔)が生じることがある。このとき、2枚の薄膜フィ
ルタ101a,101bの同じ位置にピンホールが生じ
てしまうこととなる。
【0077】このような場合にも、少なくとも一方の薄
膜フィルタを移動させることで、X線透過方向に対する
それぞれのピンホールの位置を相対的にずらせることが
できるので、効果的な不要光の除去並びにX線の強度分
布補償が可能となる。これについては、後述する第2の
実施例において詳しく記述する。
【0078】また、本実施例では、X線透過型フィルタ
を2枚の薄膜フィルタで構成したものを挙げているが、
もちろん、3枚以上で構成しても構わない。枚数が増え
るに従って、それぞれの薄膜フィルタ上に分布している
ピンホールの位置が全ての薄膜フィルタにおいて同じに
なる確率は少なくなり、3枚以上ではほぼゼロと見なせ
ることがわかっている。
【0079】しかし、構成枚数を増やせば、それだけフ
ィルタの合計膜厚が厚くなるため、X線の透過率は減少
することになる。X線の透過率についても考慮すると、
合計膜厚が影響してくることから、3枚以上設けるとき
は、本実施例より薄い薄膜フィルタ部材を用いてX線透
過型フィルタを構成するのが適当である。
【0080】次に、本発明に係るX線透過型フィルタの
第2の実施例を説明する。図4は、第2実施例に係るX
線透過型フィルタを用いたX線顕微鏡の概略構成を示す
概念図である。このX線顕微鏡は、X線光源手段からの
X線202aを、試料216に集光するための照明光学
系206と、試料216を介したX線を検出器217の
受光面上に結像させるための結像光学系209と、シス
テム制御系218と、真空チャンバー(図示せず)等を
備えており、照明された試料216の拡大像を検出器2
17上に結像させて観察する装置である。
【0081】X線光源手段は、レーザープラズマX線源
(LPX)204と、X線透過型フィルタ201と、ス
リット212等から構成されている。X線透過型フィル
タ201は、LPX204からの光202のうち必要な
所望の波長域の光を選択的に透過させるものである。L
PX204とX線透過型フィルタ201の間には、照明
X線202aの中に迷光が混入するのを防ぐための開口
制限板212が設けられている。
【0082】すなわち、X線光源手段から射出される照
明X線202aは、LPX204からの光202に含ま
れている広範囲に渡る波長の光のうち、開口制限板21
2並びにX線透過型フィルタ201により選択された必
要な波長域のX線で構成されている。
【0083】LPX204は、YAGレーザー204a
からの光を集光光学系204bによってターゲット20
4c上に集光させて照射し、高密度プラズマ状態を形成
させると共に、高密度プラズマ中の多価イオンと電子が
再結合するときに放射する光(プラズマ光202)を利
用したX線源である。ターゲット204cは、テープ状
にしたW、Ta、Y等の物質を使用する。このプラズマ
光202には、X線以外の紫外光及び可視光等が含まれ
ており、更に、図6に示すように、必要な波長域(2.
7〜4. 5nm)以外のX線も広範囲に亙って含まれて
いる。
【0084】X線透過型フィルタ201は、二枚のTi
薄膜部材で構成されており、プラズマ光202に含まれ
ているX線以外の紫外光、可視光、及び必要な波長域以
外のX線等(合わせて不要光と呼ぶ)をカットし、必要
な所望の波長域(2. 7〜4. 5nm)の光だけを選択
的に透過させるためのフィルタ機能を持つ。
【0085】前述と同様に、一枚のTi薄膜フィルタ
(厚さ1μm)を光学顕微鏡で観察したところ、数10
μm程度の大きさのピンホールが面積比で約1%存在し
ていたが、同じTi薄膜フィルタを2枚重ねた場合、ピ
ンホールが重なった箇所はほとんど存在しなかった。
【0086】即ち、本実施例の透過型フィルタ201
は、薄膜を製造する段階で生じるピンホールを通過する
不要光が照明X線202aに混入することを際めて低レ
ベルに抑える目的で、Ti薄膜フィルタを2枚(201
a及び201b)重ねたものとなっている。
【0087】それぞれのフィルタ部材の寸法は、Φ(直
径)30mm、t(厚さ)1μmであり、それぞれの薄
膜の厚さは、2枚重ねた合計膜厚が従来の単体フィルタ
とほぼ等しくなるように決められている。このとき合計
膜厚は2μmであり、X線以外の紫外光及び可視光等は
十分カットされることが実験的に分かっている。
【0088】2枚のTi薄膜フィルタ201a及び20
1bには、それぞれを移動させる手段としての駆動機構
213及び214が接続されている。これらの駆動系2
13及び214は、共に真空用モーター等から構成され
ており、図示されていない真空チャンバーの外に配置さ
れたコントローラー215で制御される。
【0089】駆動機構213は、薄膜フィルタ201a
をフィルタを含む面(X−Y面)内で回転させ、もう一
方の駆動機構214は、薄膜フィルタ201bをX−Y
面内でX方向並びにY方向にそれぞれ平行移動させる。
なお、ここではX線の透過方向(取り出し方向)をZ方
向としている。
【0090】開口制限板212は、LPX204の直
後、かつX線透過型フィルタ201aの直前に配設され
ている。これは、照明X線202aの立体角(視野)を
制限すると共に、迷光の混入を防ぐための開口制限絞り
であり、更に、透過型フィルタ201におけるプラズマ
光202が照射されていない部分をX線やデブリス等か
ら保護する役目も持っている。
【0091】開口制限板212の大きさは、光学系の
N.A.に応じて決定されるものであり、本実施例で
は、Φ5mmとした。これによって、X線透過型フィル
タ201の使用面積を小さく、かつ使用回数を大きくす
ることができた。
【0092】開口制限板212を透過したプラズマ光2
02は、光束径5mm程度の大きさとなってX線透過フ
ィルタ201のそれぞれの薄膜フィルタに入射する。こ
のとき、回転移動する薄膜フィルタ201a(Φ30m
m)への入射位置は、回転中心を通らず、そこから偏心
している。このため、薄膜フィルタ201aが回転する
と、プラズマ光202の薄膜フィルタ201aへの入射
位置は相対的に変位することとなる。
【0093】ここで、図6は、LPX204から発生す
るプラズマ光202について、透過型回折格子を用いて
分光スペクトルを測定したデータであり、必要な波長域
(2.7〜4.5nm)以外にもかなり広い波長範囲の
光が含まれている。波長2nm以下の領域(図中A部)
は、直接反射光(0次光)であるため、本当のプラズマ
光スペクトルではない。
【0094】また、図7の実線は、プラズマ光202が
X線透過型フィルタ201を透過した後の照明X線20
2aのスペクトルを示している。図7の横軸はX線の波
長を表しており、縦軸は、最大強度の波長2.7nmに
おけるX線の強度を基準の1.0とした場合の相対強度
を表す。
【0095】照明X線202aは、図6に示したように
広範囲に広がったスペクトルを持つプラズマ光202の
中から、本実施例の透過型フィルタ201によって波長
域を選択され、必要なX線波長域2.7〜4.5nmだ
けに強度を持ち、それ以外の波長域では強度がほぼ0で
あることがわかる。
【0096】一方、図7の破線には、プラズマ光が従来
の単体Ti薄膜フィルタ(厚さ2μm)を透過した後の
X線スペクトルが示されている。この場合にも、縦軸
は、波長2.7nmにおけるX線の強度を基準の1.0
とした場合の相対強度を表している。単体薄膜フィルタ
にはピンホールが存在しており、これに起因する不必要
な波長域のX線の割合が、本実施例のスペクトル(実
線)と比較して大きいことがわかる。不必要なスペクト
ルの裾部のうち、図7の矢印Bに現れているスペクトル
は、図6の矢印Bに起因する強い不必要なスペクトルに
起因するものである。このことから、本実施例のように
2枚構成にする方がフィルタ効果(波長選択特性)が大
きいことがわかる。
【0097】上記のような二枚のフィルタ部材からなる
X線透過型フィルタ201を用いたX線顕微鏡(図4参
照)では、X線透過フィルタ201により選択された照
明X線202aが、波長域2.7〜4.5nmだけに強
度を持ち、照明光学系206に導かれる。そして、照明
光学系206で集光され試料216に照射された後、結
像光学系209で検出器217上に拡大した像として結
像される。なお、照明光学系206及び結像光学系20
9は、斜入射鏡、多層膜反射鏡、ゾーンプレート等の光
学部材から構成されている。
【0098】ところで、レーザープラズマX線源(LP
X)からは、通常、光の他に数μm程度の大きさをもつ
飛散物(デブリス)が発生する。この場合について図5
を用いて説明する。デブリス405が透過型フィルタ4
01の方向に飛散すれば、2枚の薄膜フィルタ401a
及び401bを部分的に破壊して貫通する。
【0099】デブリス405は、X線透過方向と同様な
方向に直進するので、2枚のフィルタ部材に形成された
新たなピンホール(デブリス貫通孔)は、図5(a)に
示す様に、X線透過方向に対して2枚とも同じ位置40
3に生じることが知られている。
【0100】ここで、2枚の薄膜フィルタ401a及び
401bを重ねた透過型フィルタ401を、それぞれ固
定した状態で使用し続けたところ、レーザー404aの
出力パルス数がおよそ10000ショット(10Hzで
レーザーを運転した場合には約17分間)になったと
き、フィルタの面積比で1%弱のデブリス貫通孔が新た
に発生することがわかった。
【0101】従って、本実施例では、デブリス貫通孔4
03の密度が、フィルタの面積比にして0. 5%程度に
なることが予想される状態(パルス数およそ5000シ
ョット毎に)で、少なくとも一方の薄膜フィルタを、フ
ィルタを含む面(X−Y面)内で変位させることとし
た。
【0102】例えば、5000ショット目に、まずLP
X404から見て後方に配置された薄膜フィルタ401
bを、X方向もしくはY方向(いずれかもしくは双方)
に5mm程度平行移動させる。このようにすることによ
って、図5(b)に示すように、変位以前では2枚のフ
ィルタの同じ位置に貫通していたデブリス貫通孔403
の位置は相対的にずれる(413a、413b)ことに
なる。
【0103】これとは別に、もう一方の薄膜フィルタ4
01aを回転移動させることによっても、同じ位置に形
成されたデブリス貫通孔403の相対位置を変位させる
ことができる。例えば、図5(c)に示すように、薄膜
フィルタ401aをおよそ30°回転させると、デブリ
ス貫通孔423aと423bとは相対的に変位すること
となり、フィルタ部材全体としては同じ位置にデブリス
貫通孔からなるピンホールがないものとなる。
【0104】尚、前述した様に、薄膜フィルタ401a
の大きさ(Φ30mm)に比べて入射する照明X線40
2aの口径(Φ5mm)の方が小さく、また入射位置が
偏心していることから、薄膜フィルタ401aを回転さ
せると、まったく新たなフィルタ部材(薄膜フィルタ4
01aの異なる位置)が入射位置に配置されることとな
る。
【0105】従って、仮にデブリス405による破損状
態が激しい場合(例えば、貫通孔が大きくフィルタ効果
が著しく低下する場合)であっても、フィルタ部材の交
換を伴わずに、フィルタ部材の回転移動のみにより初期
の性能を容易に回復できる。
【0106】このような方法で、X線用透過型フィルタ
401を構成している少なくとも1枚の薄膜フィルタを
定期的に変位させて使用する場合、薄膜フィルタを交換
することなしにレーザープラズマX線源404を運転す
ることができる。この実施例では、X線用透過型フィル
タ401の寿命は、およそ110000ショット(10
Hzで3時間以上)まで延ばすことができた。
【0107】従って、上記の様ないずれかの方法、もし
くはこれらを組み合わせることにより、X線フィルタ手
段の初期の性能が逐次回復されるので、同じ2枚の薄膜
フィルタからなる透過型フィルタ401は、初期のX線
透過特性を維持した状態で使用することができる。即
ち、デブリスによる新たな貫通孔がない状態、言い換え
ると使用前の状態で長時間の連続的な使用が可能とな
る。
【0108】尚、フィルタ部材を変位させる方向、変位
距離(角度)、変位サイクル、及び順序等は、上記に限
るものではない。フィルタの変位は、少なくとも1枚の
フィルタに対してフィルタを含む面内で行われることが
好ましい。少なくとも、異なるフィルタ上のデブリス貫
通孔の相対位置がずれ、実質的なピンホールが存在しな
くなるならば、どのような変位をさせても良い。
【0109】従って、変位方向は、上記記載とは反対
に、薄膜フィルタ401aを平行移動、フィルタ401
bを回転させても良く、共に回転あるいは平行移動させ
ても良く、更にそれらの組合わせ等でも良い。変位距離
(角度)は、上記では5mm(30°)としたが、変位
時点でのデブリス貫通孔の密度及び大きさ等に応じて適
当に設定すれば良い。変位サイクルについては、上記で
はデブリス貫通孔の密度がフィルタの面積比にして0.
5%程度になったときと設定したが、デブリス発生状況
等に応じて適当に設定すれば良い。
【0110】第1実施例と同様に、X線透過型フィルタ
201を構成するフィルタの枚数は2枚に限らず、3枚
以上でも構わない。この場合にも、フィルタ部材の合計
膜厚は従来の単体フィルタ部材と同程度かそれ以下であ
ることが好ましい。さらに、いずれかのフィルタ部材を
固定し、それ以外のフィルタ手段を移動させるものとし
ても良い。
【0111】上記第2の実施例と同様の構成をもつX線
顕微鏡において、波長2.2〜4.4nmのX線を使用
する場合のX線透過型フィルタを、第3の実施例として
以下に記述する。
【0112】図8に示すように、第3実施例におけるX
線透過型フィルタ901は、互いに異なる物質からなる
二枚の薄膜フィルタ部材901a,901bの組み合わ
せで構成されている。つまり、プラズマ光902に含ま
れている、X線以外の紫外光、可視光、及び必要な波長
域以外のX線等(不要光)をカットすると共に、必要な
所望の波長域(2. 2〜4. 4nm)のX線(902
a)だけを選択的に透過させるため、フィルタ部材の材
質を適当に選択したものである。
【0113】この実施例では、それぞれのフィルタ部材
が、BN(窒化ボロン)薄膜フィルタ(厚さ0.1μ
m)901aと、Cr薄膜フィルタ(厚さ0.5μm)
901bとの2枚で構成されている。ここで、BN薄膜
901aはCr薄膜901bに比べて硬質膜であるた
め、BN薄膜901aをX線光源(図示していない)に
近い側の薄膜フィルタとして配設することが好ましい。
これは、X線光源(図示していない)から遠い側に配設
されるもう一方のCr薄膜フィルタ901bを保護する
役目を持たせるためである。
【0114】図8は、第3実施例のX線透過型フィルタ
901を前述した第2実施例と同様の配置でX線顕微鏡
に組み入れて使用した場合における、透過型フィルタ9
01によって波長域を選択された照明X線902aの分
光スペクトルを示している。この図からも明らかなよう
に、照明X線902aは、図6に示したように広範囲に
広がったスペクトルを持つプラズマ光902の中から、
不必要な波長域の光を取り除かれ、更に希望する波長域
2.2〜4.4nmのX線のみに選択されて構成されて
いることがわかる。
【0115】この実施例においても、第2実施例と同様
に各薄膜フィルタ901a、901bのいずれかもしく
は双方を変位させる移動手段を設けることにより、X線
透過型フィルタの長寿命化、並びにX線顕微鏡の連続使
用可能時間の延長も図ることができる。
【0116】なお、上記の各実施例とは異なる波長域の
X線を選択する場合には、X線透過特性を考慮して、そ
れぞれのフィルタ部材の材質を決定すれば良い。また、
このように、複数のフィルタ部材の材質を異ならしめる
ことにより、希望する波長域のX線の選択が容易になる
利点もある。
【0117】即ち、例えば比較的波長の短いX線に対す
る透過効率(又は波長選択性)が高いものと、逆に長い
波長のX線に対する透過効率(又は波長選択性)が高い
ものとの組み合わせにより、希望する波長域のX線のみ
の選択性が向上し、それ以外の波長域のX線等が完全に
除去される場合がある。
【0118】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明の透過型X線
フィルタによれば、透過したX線への不要光の混入が極
めて微細であるので、X線選択性に優れたフィルタ手段
が得られる利点がある。更に、X線透過率の損失がほと
んど無いので、充分な強度でノイズ光の少ないX線が得
られることとなる。
【0119】このため、本発明に係るフィルタを用いた
X線光学機器では、光学特性の向上、例えば、分解能等
の結像精度の向上や、光学素子の破損等に伴う装置の機
能低下の防止等が期待できる。
【0120】更に、X線透過型フィルタに少なくとも一
つのフィルタ部材を移動させる移動手段が備えられたも
のにあっては、フィルタの寿命(連続使用時間)を延ば
すことができる。また、その結果、これを利用したX線
光学装置の作業性及びスループットを向上させることが
できる。
【0121】加えて、このような、移動手段が備えられ
たことにより、フィルタ手段を透過したX線の光束口径
内の強度が均一化される利点があり、このような強度が
均一化されたX線を用いることによりX線光学装置の精
度等を向上させることができる。
【0122】次に、本発明に係るX線透過フィルタを用
いたX線発生装置によれば、X線以外の不要光の混入割
合が、従来に比較して格段に少ないX線が得られる利点
がある。さらに、このような波長選択性の良好なX線の
強度も、従来と同様かそれ以上のものが得られる利点が
ある。
【0123】また、少なくとも一方のフィルタ部材が移
動可能に構成されているものにあっては、充分な、かつ
一定な強度で、波長選択特性が優れた(不要光の混入が
少ない)X線が長時間連続して得られる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例に係るX線透過型フィル
タを用いたX線縮小露光装置の概略構成を示す説明図で
ある。
【図2】本発明の第一実施例に係るX線透過型フィルタ
の概略構成並びに作用を説明するための説明図であり、
(a)は側面からみた状態、(b)は正面から見た状態
を示すものである。
【図3】本発明の実施例において、薄膜フィルタの移動
により、フィルタを透過したX線強度を空間的に均一化
させる状態を説明するための概念図であり、(a)、
(b)はフィルタ固定時におけるX線強度の不均一な状
態、(c)はフィルタの振動移動により均一化されたX
線の強度状態を示すものである。
【図4】本発明の第二の実施例に係るX線透過型フィル
タを用いたX線顕微鏡の概略構成を示す説明図である。
【図5】本発明の第二又は第三実施例において、デブリ
スに伴う貫通孔(ピンホール)を補完するための薄膜フ
ィルタの変位を説明するための概念図であり、(a)は
変位前、(b)は平行移動後、(c)は回転移動後のピ
ンホール位置を表すものであり、(d)はX線光源から
のデブリス等の飛散状態を示すものである。
【図6】本発明の第二又は第三実施例におけるレーザー
プラズマX線源(ターゲット:W)から発生するプラズ
マ光の分光スペクトルの観測結果を示す線図であり、横
軸は波長(nm)、縦軸は強度を示している。
【図7】本発明の第二実施例におけるX線透過フィルタ
を透過したX線のX線スペクトルを示す線図であり、実
線は本発明の第2実施例に係るX線透過型フィルタを透
過したもの、点線は従来例のX線透過型フィルタを透過
したしたものを示している。なお、横軸は波長(n
m)、縦軸は透過強度を示しているが、波長2.7nm
のX線の強度を基準の1.0とした場合の相対強度(単
位×100%)で表している。
【図8】本発明の第三の実施例に係るX線透過型フィル
タの概略構成を示す説明図である。
【図9】本発明の第三実施例におけるX線透過型フィル
タを透過したX線スペクトルを示す線図であり、横軸は
波長(nm)、縦軸は透過率(×100%)を示してい
る。
【符号の説明】
101、201、301、401、501、511、5
21、901:透過型X線フィルタ 101a、101b、201a、201b、301a、
301b、401a、401b、501a、501b、
511a、511b、521a、521b、901a、
901b:薄膜フィルタ 102、202、302、402、502、512、5
22、902:プラズマ光 102a、202a、302a、402a、502a、
512a、522a、902a:照明X線 303a、303b、403、413a、413b、4
23a、423b:ピンホール 204、404:レーザープラズマX線源 204a、404a:YAGレーザー 204b、404b:集光光学系 204c、404c:ターゲット 405:デブリス 105、206:照明光学系 106:反射型マスク(レチクル) 107:マスクステージ 108、209:結像光学系 109:Siウエハ 110:ウエハステージ 212:開口制限板 213、214:駆動機構 215:駆動系制御コントローラー 216:試料 217:検出器 218:システム制御系

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 予め定めた波長域のX線を選択的に透過
    させるX線透過面を複数備え、前記複数のX線透過面が
    X線の透過方向に対し互いに近接させて配置されてなる
    ことを特徴とする透過型X線フィルタ。
  2. 【請求項2】 前記複数のX線透過面のうち、少なくと
    も一つのX線透過面を予め定めた方向に移動させる移動
    手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載
    の透過型X線フィルタ。
  3. 【請求項3】 前記移動手段は、前記X線透過面を含む
    面内で前記X線透過面を平行移動させるものであること
    を特徴とする請求項2に記載の透過型X線フィルタ。
  4. 【請求項4】 前記移動手段は、前記X線透過面を含む
    面内で前記X線透過面を回転移動させるものであること
    を特徴とする請求項2に記載の透過型X線フィルタ。
  5. 【請求項5】 前記移動手段は、前記X線透過面を往復
    振動させるものであることを特徴とする請求項2に記載
    の透過型X線フィルタ。
  6. 【請求項6】 標的部材に励起エネルギービームを照射
    してプラズマ領域を形成させ、このプラズマ領域から生
    成されたX線を取り出すX線発生装置において、 前記プラズマ領域から生成されたX線の光路上に、X線
    の透過方向に対して複数のX線透過面を互いに近接配置
    されてなる透過型X線フィルタが配置されていることを
    特徴とするX線発生装置。
  7. 【請求項7】 前記透過型X線フィルタは、少なくとも
    一つのX線透過面を予め定めた方向に移動させる移動手
    段が設けられてなるものであることを特徴とする請求項
    6に記載のX線発生装置。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004027842A1 (ja) * 2002-09-09 2004-04-01 Nikon Corporation X線発生装置、x線露光装置及びx線フィルター

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