JPH07299483A - 地下汚染物質の拡散抑制及びその浄化方法 - Google Patents

地下汚染物質の拡散抑制及びその浄化方法

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JPH07299483A
JPH07299483A JP6097538A JP9753894A JPH07299483A JP H07299483 A JPH07299483 A JP H07299483A JP 6097538 A JP6097538 A JP 6097538A JP 9753894 A JP9753894 A JP 9753894A JP H07299483 A JPH07299483 A JP H07299483A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 有害化学物質汚染地下水の拡散抑制と汚染物
質の微生物的分解。 【構成】 汚染地層またはその下層で地下水の移動する
地層に、乾燥状態の高分子吸水性樹脂と生物学的分解材
料を配置する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は乾燥状態の高分子吸水性
樹脂と分解性の微生物及び生残・増殖・活性材料を汚染
地域の地層に注入し、高分子吸水性樹脂の膨張による土
壌粒子間隙の閉塞により汚染物質の拡散を抑制し、さら
に分解性の微生物によって汚染物質の分解を行う土壌処
理方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】近年、芳香族炭化水素、パラフィン、ナフ
テン等の炭化水素、あるいはトリクロロエチレン、テト
ラクロロエチレン、テトラクロロエタン等の有機塩素系
化合物等による環境汚染が問題となっている。これらの
多くは土質層中に浸透し、分解されずに、徐々に地下水
に溶け地下水を通じて汚染領域が拡大する。
【0003】これらの深刻な環境汚染の再発を防止する
と共に、すでに汚染されてしまった環境を浄化もしく
は、汚染領域の拡散を防止する技術の確立が強く望まれ
ている。
【0004】従来、環境修復技術の例としては、汚染さ
れた地下水を汲み上げて揮発性の有機物を分離し、活性
炭に吸着させる曝気処理、汚染土質層を太陽や熱源にさ
らし、揮発性有機物を熱により蒸発させる加熱処理、汚
染土質層にボーリング穴を設け、真空で汚染物質を吸引
する真空抽出、また汚染土質層を真空釜に入れて加熱し
吸引して抽出する真空釜処理等が行われている。
【0005】また汚染の拡散を防止するためには、鋼矢
板や、土壌凝固材、コンクリート壁等による遮蔽、地下
水流の下流域に設けた汲み上げ井戸(バリヤー井戸)の
設置等で汚染地下水の移動を阻止する方法等が知られて
いる。
【0006】高濃度かつ局部的な汚染の場合はこれら物
理化学的処理が有効となることもあるが、汚染が低濃度
で広範囲である時の処理速度やコストの問題、回収した
汚染物質を更に無害化するための処理が必要となるなど
の問題を有していた。これら物理化学的処理の問題を解
決する方法として、近年微生物による生物学的分解能力
を用いた土壌修復法、いわゆるバイオレメディエーショ
ンが検討されている。
【0007】この微生物による浄化方法であれば、投入
エネルギーも小さく、また分解も水、炭酸ガス、酸素、
窒素ガス等まで完全に進められる。
【0008】さて、土質層汚染を引き起こしている難分
解性化合物、例えば、芳香族炭化水素や有機塩素系化合
物を分解する微生物は数多く知られている。しかしなが
ら、実際の汚染土質層に、これらの分解微生物をそのま
ま散布した場合、通常、微生物の増殖や分解活性は十分
得られない。
【0009】この理由のひとつに菌の分布と汚染物の分
布状態のくい違い、また菌の生残と活性条件が不十分な
ことが挙げられる。
【0010】これらを克服するため、従来、微生物の散
布と同時に栄養素や酸素を供給する薬品を一緒に散布す
る方法や、微生物を地中に圧送する等の方法が用いられ
てきた。しかし、散布した微生物が、既に汚染された有
害物質の分布と同じ分布をすることは期待できない。理
由は、汚染物質との比重の違いや土質層に対する化学的
親和性の差、汚染物と微生物の拡散する時間のズレ等が
あるからである。また微生物を直接汚染土質層に散布し
ても多くの場合、微生物はその土質層に適応できないで
死滅する。これは微生物が必要とする栄養素の不足、水
や酸素の有無、従来から棲息する他の微生物との競合や
捕食、その他pHや温度等物理的条件の不適合があると
考えられる。
【0011】一方、汚染物質の拡散を防止するため、鋼
矢板や、土壌凝固剤等による物理的遮蔽を行うもので
は、一時的に汚染物質の拡散を防止できるが、これらは
時間が経つと、必ず一部から汚染地下水のリークが生ず
る。完全にリークを防止するには膨大な工事を要し、コ
スト、時間、場所等に問題を生ずる。また完全な遮水が
行われると、地下水下流域での地下水利用ができなくな
ったり、地盤沈下を引き起こす等の副次的問題を生ず
る。
【0012】従来短期的な遮水工事として、高分子吸水
ゲルを用いたものが知られている。高分子吸水ゲルによ
る遮水壁は一時的に水の移動を遅くするのに有効であ
り、河川工事や、トンネル、地下道等の漏水を一時的に
緩和するのに極めて有効である。しかしこの遮水能力に
は持続性はなく、したがって汚染物質の拡散を恒久的に
防止する目的で使用することはできなかった。
【0013】
【発明が解決しようとしている課題】地下汚染が実質的
に環境へ影響を与える経路は、汚染物質の性質や汚染状
態により多様である。しかしながら、近年特に問題とさ
れている有機塩素化合物による地下汚染の場合、地下に
漏洩した有機溶剤等が、比重の重さから地中深くに速や
かに浸透し、地下水に溶解し、この地下水の移動と共に
汚染領域の拡大を生じるという深刻な問題を引き起こし
ている。
【0014】これに対して、前述のような遮水壁は多く
の場合、地層に対して垂直に構築され、横方向の汚染物
質の移動の防止に関しては有効であるが、汚染物質が土
壌下層へ浸透することを抑制するには効果的ではない。
これに対処するには地層に対して水平に遮水壁を構築す
る必要があるが、地中においてこのような遮水壁を構築
することは施工上非常に困難なことであり、また汚染水
が貯留されるにつれて、遮水壁周囲から汚染物質が漏洩
してしまうなどの問題もある。
【0015】また、既に汚染された土壌の下層に注入し
た分解微生物によって、上層から浸透してきた汚染物質
を浄化する方法も、一般にバイオレメディエーションに
おいて行われているが、物質の浸透が容易な細砂、粗
砂、礫などの地層においては、汚染物質の下層への浸透
速度が速く、分解微生物による分解作用を受ける前に下
層へ拡散してしまうことも多い。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の問題
に対し、水膨張性をもつ高分子吸水性樹脂を有害物分解
性の微生物と組合わせて同時に汚染された地層、または
汚染された地層の下層に水平方向に注入することによ
り、汚染物質の拡散の抑制、更に汚染物質の浄化を効果
的に行うことを着想し、本発明に至った。すなわち、乾
燥状態にある微粒子状の高分子吸水性樹脂を地層に注入
すると、高分子吸水性樹脂は注入箇所で土壌中の水分を
吸収して膨張し、土壌粒子の間隙をせばめるからこれに
よって下層への汚染物質の移動速度を抑制する。更に同
時に注入された分解性の微生物と長時間接触できるよう
になり、浸透水は浄化されて徐々に下層へ流去していく
というものである。以下本発明について詳述する。
【0017】本発明に使用する高分子吸水性樹脂(高分
子吸水性ゲル)としては、土壌に投入して用いるからゲ
ル強度が高く耐塩性に優れたものが好ましい。農園芸分
野で用いられているものは使用できる。具体的にはデン
プンアクリロニトリルグラフト重合体加水分解物、デン
プンアクリル酸グラフト重合体、デンプンスチレンスル
ホン酸グラフト重合体、デンプンビニルスルホン酸グラ
フト重合体、デンプンアクリルアミドグラフト重合体、
セルロースアクリロニトリルグラフト重合体、セルロー
ススチレンスルホン酸グラフト重合体、カルボキシメチ
ルセルロース架橋体、ヒアルロン酸、アガロース、ポリ
ビニルアルコール架橋重合体、ポリアクリル酸ナトリウ
ム架橋体、アクリル酸ナトリウムビニルアルコール共重
合体、ポリアクリロニトリル系重合体ケン化物などであ
る。
【0018】これらの高分子吸水性樹脂は、土壌中で速
やかに移動し拡散させるため粒径ができるだけ細かいも
のが良い。特に乾燥時で20μm以下の粒状で、吸水時
では400〜500倍に膨潤し1〜4mmのゲル状の粒
体になるものが好ましい。しかし乾燥時500μm以下
であれば実用になる。乾燥状態で粒径の大きなものなら
ば、粉砕して粒径を細かくすることも勿論有効である。
【0019】この高分子吸水性樹脂は乾燥時には微小で
あるため土壌中での移動は容易であるが、膨潤すると著
しく移動は困難となる。そのため水に接してから膨潤ま
でに比較的長時間を要する高分子吸水性樹脂であれば、
土壌に注入してもしばらくの間は膨潤が抑えられ、目的
とする場所に運ばれた後に徐々に膨潤し、土壌粒子間隙
を埋めることができる。またできるだけ注入時間を短く
することにも留意することが重要である。膨張速度の遅
い高分子吸水性樹脂であれば注入時間を1〜2分に抑え
られれば問題はない。また土壌粒子間隙が大きい地層へ
注入する場合は、注入時間に比較的長い時間がかかって
も大きな支障にはならない。
【0020】膨張速度の速い高分子吸水性樹脂を用いる
ときや、地層への注入に時間がかかる場合、土壌粒子間
隙が小さい場合には、目的の場所まで樹脂が到達しなか
ったり、注入口で目詰まりを生じるおそれがある。そこ
で樹脂表面にオゾン処理やホルムアルデヒド処理等を軽
度に施し、水に接してから膨張するまでの時間を延長さ
せる手段が有効である。
【0021】また注入時の樹脂の水への接触時間をでき
るだけ短縮するために図1に示したように、高分子吸水
性樹脂等1を水不浸透性の膜や袋2に乾燥状態で充填
し、掘削坑3の注入孔4付近に設置して(錘5をつけて
掘削孔に落とすなど)し、注入時の注入液6への加圧に
よって破裂させて瞬間的に樹脂等を地層中に送り込むと
いう方式も考案している(図1)。
【0022】さて、膨潤後の高分子吸水性樹脂には柔軟
性があり、土壌中で土壌粒子間の空隙を埋めるよう変形
する。空隙容積に関して注入する高分子吸水性樹脂の量
を調整することで、膨張した樹脂の層を透過する汚染水
の浸透速度が制御できる。この浸透速度の調整は汚染物
質の濃度、汚染水の浸透速度、分解微生物の汚染物質分
解能力などに応じて任意に決めれば良い。
【0023】次に分解性微生物による汚染物質の分解に
ついて述べる。本発明で問題とする土壌汚染を引き起こ
している有害化学物質は、難分解性化合物で、例えば、
芳香族炭化水素系化合物や有機塩素系炭化水素化合物で
ある。これらを分解する微生物はいくつか知られている
が、現実の汚染地層にこれらの微生物をそのまま散布し
ても、土壌中の有害化学物質に対して十分な効果は期待
できない。その理由のひとつとして、土壌中ではこれら
分解微生物と汚染物質の接触が効率よく行われにくいこ
と、初期微生物濃度に対して、地層に注入後の微生物濃
度が時間と共に急速に減少することが挙げられる。その
ため、微生物材料を頻繁に、大量に蒔く等の対策を必要
とし、処理時間やコスト等で不都合である。従って、汚
染物質との接触を長く保つこと、微生物の生残・増殖・
活性を維持する方法を構じることが必要である。
【0024】本発明では地中で、分解性の微生物を微生
物の生息に好適な担体に保持させ、これを高分子吸水性
樹脂と混合し(以下、この高分子吸水性樹脂と微生物保
持担体の混合物を浄化剤と呼ぶ)、同時に地層中に配置
する方法によってこれらの課題を解決した。すなわち、
目的とする地層中において膨張した高分子吸水性樹脂の
間に微生物保持担体が混在している形態を作り出す。こ
れによって、高分子吸水性樹脂によって滞留させられる
ようになった汚染物質は分解性の微生物と長時間接触す
るようになり、浄化能が促進される。また微生物を担体
に保持させることにより、微生物の生残・増殖性が向上
し、新たな微生物の供給は不要となり、更に土壌環境に
馴養された微生物が維持されるなどの効果がある。もち
ろん担体に保持させることなく土壌中での生残・増殖が
維持されるような微生物であれば、浄化剤注入時に使用
する媒体(例えば溶液)中に遊離の微生物を懸濁させて
土壌中に注入しても良い。さらに微生物の増殖・活性維
持材料をこの担体に保持させたり、あるいは浄化剤注入
時の溶液中に添加することによって、増殖・分解活性を
維持できる。
【0025】微生物保持担体だけを用いた土壌浄化方法
に関して、本発明者らはすでにマイクロハビタットを利
用した技術を開発している(特願平5−26086
6)。
【0026】マイクロハビタットとは数μm程度の孔隙
中の微生物の微小な棲みかのことをいい、微生物を過酷
な外部環境から守る働きを持つ。例えば孔隙外が微生物
生存に影響を及ぼすような乾燥状態になっても、マイク
ロハビタット中には毛管水が保持されているため微生物
への水分供給は保たれる。またマイクロハビタット中の
微生物は土壌中の原生動物による捕食を回避することが
できる。そこで投与する微生物のマイクロハビタットを
担体中に人工的に形成させ、この担体を土壌中に投与す
ることにより、微生物の生残性を向上させるというもの
である。本発明における担体への微生物保持は、このマ
イクロハビタットによる生残性向上効果で一層の効果を
もたらす。
【0027】担体の種類としては、特に限定はないが、
土壌中での移動を容易にするためには、数μm〜数百μ
m程度のものが望ましい。300μm前後が最も扱い易
い。大きなものなら粉砕処理を施す。また、孔隙構造を
持つ担体や、イオン交換基を表面に持つイオン吸着性に
優れた担体は微生物の吸着や生育にとって好適である。
このような担体の例として、多孔質セラミックス、多孔
質ガラス、ケイ酸カルシウム、シリカのような無機材
料、活性炭、アニオン交換樹脂、セルロース、リグニ
ン、キチン、キトサンなどの有機材料がある。土壌中に
大量に投与することを考慮すると安価なものが好まし
い。
【0028】増殖材料は微生物の培地に相当するもので
ある。微生物は栄養素により増殖し、汚染物質の分解に
寄与する。増殖に直接必要とする栄養物質に加え、好気
性菌では酸素を必要とし、その他多くの微生物は微量な
無機塩類も必要とし、これらを含め栄養素と記す。活性
維持材料は汚染物質の分解を実質的に推進するためのも
ので、栄養素と区別できない場合もある。微生物は特定
の物質に直接作用できない時、この特定の物質を分解す
るため誘導物質(インデューサー)により分解酵素を生
産し分解を進めることが広く知られている。汚染物質の
分解は微生物がこうして生産する酵素により可能となる
場合が多い。この発明ではこの汚染物質分解酵素を生産
するのに必要な材料を活性維持材料とする。
【0029】微生物の種類としては分解活性が認められ
ているものであれば特に限定はないが、細菌、酵母等が
増殖、分解等の観点から実用的である。また微生物は一
種類のものだけを用いても良いし、2種以上の微生物を
混合して用いても良い。また単離や同定のされていない
土着の微生物をそのまま用いることもできる。
【0030】増殖材料としては、微生物培養の培地で使
用されているものを使用することができる。例えばブイ
ヨン培地、M9培地、L培地、Malt extrac
t、MY培地、硝化菌選択培地等が有効である。
【0031】活性維持材料としては、分解菌が特定され
ているものでは、誘導物質として知られているものがあ
る。特定できる誘導物質としてはメタン資化菌ではメタ
ンが、芳香属資化菌では、トルエン、フェノール、o、
m、pクレゾール等、硝化菌ではアンモニウム塩などが
ある。
【0032】いまトリクロロエチレン(TCE)を分解
できる菌として知られているものを例に挙げると、これ
までに、十数種が発見、単離されている。このうち代表
的なものはその基質の種類によって大きく2つに分ける
ことができる。
【0033】即ちメタン資化菌とフェノール等の芳香属
化合物資化菌である。前者の代表的なものは、メタンモ
ノオキシゲナーゼを有するMethylocystis sp.strain M
(Agri. Biosci.Biotech.Biochem.,56,486(1992)、同56,
736(1992)) 、Methylosinus trichosporium OB3b(Am.Ch
em.Soc.Natl.Meet.Div.Environ.Chem.,29,365(1989)、A
ppl.biochem.Biotechnol.,28,877(1991))であり、後者
は、トルエンモノオキシゲナーゼあるいはトルエンジオ
キシゲナーゼを有するAcinetobactor sp.strainG4(App
l.Environ.Microbiol.,52,383(1986) 、同53、949(198
7)、同54,951(1989)、同56,279(1990)、同57,1935(199
1))、Pseudomonas putida F1(Appl.Environ.Microbio
l.,54,1703(1988) 、同54,2578(1988))がその代表格で
ある。これらのうち、芳香属化合物資化性TCE分解菌
に関しては、TCEを分解する酵素は、フェノール、ト
ルエン等の芳香属化合物によって誘導される誘導酵素で
あり、そのため、これらの微生物でTCEを分解させる
ためには、芳香属化合物を含んだ、もしくは芳香属化合
物に分解される材料が使用される。
【0034】担体への微生物の保持方法は通常の方法で
良く、例えば担体と培地を混合して微生物を培養する、
減圧下で孔隙内に微生物を封入する、等の方法で保持さ
せれば良い。
【0035】浄化剤の配置は一般的には媒体による注入
であり汚染された地層あるいは汚染された地層の下層領
域に地層に対して水平に浄化剤の層が形成されるように
行う。この故に本発明を適用する地層を構成する土壌の
種類としては地下水の横方向への浸透が容易な細砂、粗
砂、礫などにおいて特に有効である。浄化剤を注入する
ことに関しても、これらは本発明が適用しやすい土壌で
ある。浄化剤を注入する方法としては、従来の微生物を
土壌中に注入する方法と同様で良い。例えば掘削孔を設
け、そこから給水ポンプで水と共に浄化剤を圧送する方
法などがある。浄化剤は微生物菌体よりは粒径が大きい
ものを含むから、注入ポンプの圧力を強力にしたり、汚
染箇所の近傍まで注入口を導く必要がある。それ以外は
特に制限はない。
【0036】また、浄化剤は汚染物質の下層方向への拡
散にも対処するものであるが、地層に対して垂直に浄化
剤の層を形成されても汚染物質が地下水に到達し、水平
方向の移動が行われるようになっても無駄ではない。
【0037】さらに汚染物質の移動方向に汚染源を囲い
込むように注入・設置すれば、汚染源との距離を考慮す
る必要もなくなる。
【0038】図2に本発明の構成を模式的に説明する。
図2の地層は表土やローム層11の下に砂質層或は粗砂
層、砂礫層12があり、難透水層もしくは不透水層13
がある。そしてその上層に地下水層14が形成されてい
る。本発明にかかわる浄化剤は砂層、粗砂層、砂礫層1
2の地層の内、汚染物質の到達している地層部分、ある
いは汚染物質の下層部分に掘削坑3の注入孔4から注入
し、高分子吸水性樹脂1の膨潤後、微生物材料16と1
7のような層を形成している。汚染源18から拡散した
汚染物質の層19は地下に浸透し、A方向に流れてい
る。汚染物質は層17により、流速を低下させつつ17
の層内を通過し、この過程で16に含有される微生物に
より汚染物質が分解され、浄化された水がBへ放出され
る。
【0039】土壌浄化の実際においては浄化剤を土壌に
注入するのに先立って、浄化剤配置の具体的計画の為に
汚染地域の調査を実施する。多くの場合、汚染源は地上
施設や汚染物質の埋設地が過去の資料から特定でき、汚
染源を中心に碁盤の目状にボーリングを行い、地下水下
流側に向かって広がる汚染状態をマップ化する。これが
無い時は汚染の発見された場所からボーリング調査によ
って、順次地下水流の上流側へ碁盤の目状に調査を進め
る必要がある。このボーリング調査時に、地層・地質・
地下水流の方向等のデータも蓄積される。
【0040】汚染の領域や汚染物質の拡散方向が解析さ
れたら、一般的には、そこで可能な物理的浄化対策が実
施される。しかしこの発明では、物理的な浄化対策が実
施できないような時、または可能な対策が施された後
に、残留する汚染物を除去するのにも有効に用いられ
る。
【0041】以下に本発明の実施を例で示すが、これら
は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0042】
【実施例】 参考例1 浄化剤の土壌中における移動性の調査 ここで、高分子吸水性樹脂および微生物材料からなる浄
化剤の土壌中における注入の可否を検討した。
【0043】まず、細砂(粒径0.2〜0.12m
m)、粗砂(粒径1.8〜0.9mm)、礫(粒径2.
5mm以上)を内径30mm、長さ800mmのガラス
カラムに少しずつ圧密しながらつめ、長さ500mmま
で充填した。この土壌カラムの上端から浄化剤に擬制し
た懸濁液100mlを注入した。擬制した浄化剤は10
0〜200μmの粒径で選別したポリアクリル酸架橋体
高分子吸水性樹脂(三洋化成社製サンウエットIM−5
000S)1g、粒径180〜210μmのセルロース
担体(旭化成社製マイクロキャリア)0.5gからな
る。また注入方法は垂直に立てたカラムの上端から浄化
剤擬制懸濁液をビーカーで注ぎ、ガラス管を取りつけた
ゴム栓をした後、そのガラス管から圧搾空気を送り込む
ことによって行った。
【0044】注入から24時間経過後、カラムの上端か
ら50、150、250、350、450mmの各ポイ
ントでカラムを切断し、そのポイントの土壌10gをサ
ンプリングした。この土壌サンプル10gに蒸留水50
mlを加えて穏やかに懸濁し、10秒静置後の上ずみ液
をとり、径250μmの篩いで篩別された高分子吸水性
樹脂の容積を測定した。
【0045】その結果を図3に示す。
【0046】この結果、細砂よりも粒径の荒い土壌にお
いて、浄化剤の注入は可能であり、特に礫、粗砂、細砂
という粒径の荒い土壌の順に浄化剤の移動性が良いこと
がわかった。 実施例1 汚染土壌の浄化実験 ライシメーターを用いて実際に浄化剤による汚染物質の
浄化実験を行った。
【0047】図4(a)は実験モデルの側面図で、底部
に5つのドレイン35(径20mm)と側面に1つの注
入孔31(10mm×50mm)及びこの注入孔31に
接続した浄化剤注入のための500ml容シリンジ32
を設けた1m四方、深さ1.2mの土壌槽33に細砂
(粒径0.2〜0.12mm)、粗砂(粒径1.8〜
0.9mm)、礫(粒径2.5mm以上)を2:2:1
に混合した土壌34を深さ1mまで充填した。この試験
土壌槽33に注入孔からフェノール100ppmを含ん
だ浄化剤懸濁液10lを圧送した。浄化剤懸濁液はポリ
アクリル酸架橋体高分子吸水性樹脂100g、TCE分
解菌を保持させたセルロース担体50gからなる。ポリ
アクリル酸架橋体高分子吸水性樹脂は100〜200μ
mの粒径を選別した三洋化成社製サンウエットIM−5
000Sを用い、これにTCE分解菌としてはフェノー
ルをTCE分解の誘導物質とするPseudomonas cepacia
KK01(寄託番号FERM BP−4235)を用い
た。浄化剤懸濁液に添加したフェノールはこのP.cepaci
a の誘導に用いた。セルロース担体への保持方法は、ま
P.cepacia を500mlの培地(0.2%グルタミン
酸ナトリウム、M9培地(Na2 HPO4 6.2g、K
2 PO4 3.0g、NaCl 0.5g、NH 4 Cl
1.0g/l))に接種し、30℃で培養を行った。
培養液のO.D.が約0.7に達した後、この溶液にセ
ルロース担体(旭化成社製マイクロキャリア)5gを加
え、耐圧瓶中で減圧復圧操作を行なって微小孔隙中に菌
を導入した。これをろ紙(ワットマンNO.44)を用
いて担体だけを回収し、これを浄化剤として用いた。
【0048】浄化剤の土壌34への注入方法は、浄化剤
をシリンジに充填し、ピストンを用いて約150ml/
秒の速度になるように注入孔から圧送した。
【0049】浄化剤注入から24時間後、10ppmの
TCE溶液をドレイン35の真上の土壌表面5点に10
0ml/時間の速度で滴下し、滴下開始から2時間ごと
に下部のドレインから漏出する液のTCE濃度を測定し
た。TCE濃度は漏出液5mlを20ml容バイアル瓶
に入れ、ゴム栓、アルミキャップで密封後、20℃に1
0分間保温し、気相0.1mlをFID検出器でガスク
ロマトグラフィー分析することにより求めた。
【0050】その結果を図5に示す。 比較例1 汚染物質の浸透制御実験 実施例1と同様に作製した試験土壌槽に浄化剤に擬制し
た高分子吸水性樹脂(サンウエットIM−5000S)
のみを注入し、TCE溶液の滴下はNO.3のドレイン
の真上の土壌表面のみにした。後は実施例1と同様に、
ドレインNO.3からの漏出液の容量及びTCE濃度を
測定した。その結果を図6、7に示す。 比較例2 微生物材料のみによる浄化実験 実施例1と同様に作製した試験土壌槽に浄化剤としてP.
cepacia KK01を保持させたセルロース担体(旭化成
社製マイクロキャリア)のみを注入し、TCE滴下はN
O.3のドレインの真上の土壌表面のみに滴下した。後
は実施例1と同様に、ドレインNO.3からの漏出液の
容量及びTCE濃度を測定した。その結果を図6、7に
示す。 比較例3 対象 実施例1と同様に作製した試験土壌槽に注入孔からは何
も注入せず、後は実施例1と同様にTCE及び蒸留水を
滴下し、ドレインからの漏出液の容量及びTCE濃度を
測定した。その結果を図6、7に示す。
【0051】以上の結果から、まずTCEの分解に関し
ては、実施例1、比較例1、2、3より、分解微生物の
導入による効果が見られ、高分子吸水性樹脂による分解
活性の向上効果が明らかにされている。これは比較例
1、2、3からわかるように高分子吸水性樹脂によって
TCEの浸透速度が抑制されたことによるものと考えら
れる。なお比較例3のブランクにおけるTCEの減少は
TCEの揮散等の影響による。
【0052】
【発明の効果】本発明によって、土壌汚染の拡散、特に
有害化学物質の下層方向への拡散を抑制し、さらに分解
微生物の作用を促進することによって、有害化学物質の
分解・無害化の効率を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における浄化剤の配置を行なう一例を示
す模式図。
【図2】本発明の実施状況の模式図。
【図3】参考例1における浄化剤の移動性を測定したグ
ラフ。
【図4】浄化実験のモデルを示し、(a)は側面概観
図、(b)は底面図。
【図5】漏出液のTCE濃度の経時変化を示すグラフ。
【図6】漏出液のTCE濃度の経時変化を示すグラフ。
【図7】漏出液量の経時変化を示すグラフ。
【符号の説明】
1 高分子吸水性樹脂 2 膜又は袋 3 掘削孔 4 注入孔 5 錘 6 注入液 11 表土又はローム層 12 砂質層、粗砂層又は砂礫層 13 難(不)透水層 14 地下水層 16 微生物材料 17 層 18 汚染源 19 汚染物質の層 A 地下水の流れ方向 B 浄化された水 31 注入孔 32 シリンジ 33 土壌槽 34 土壌 35 ドレイン

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有害化学物質により汚染されかつ地下水
    の移動がありうる地層、もしくは有害化学物質の流入に
    より汚染の生じる恐れのある地層を有する領域に乾燥状
    態の高分子吸水性樹脂と生物学的分解材料を配置するこ
    とを特徴とする土壌処理方法。
  2. 【請求項2】 有害化学物質に汚染された地層の下層で
    地下水の移動が認められる地層に乾燥状態の高分子吸水
    性樹脂と生物学的分解材料を配置することを特徴とする
    汚染土壌処理方法。
  3. 【請求項3】 地下水の移動が垂直方向である場合にお
    ける請求項2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 配置の行なわれる地層が砂質、粗砂ある
    いは礫から構成されている場合における請求項2または
    3に記載の方法。
  5. 【請求項5】 該高分子吸水性樹脂を地層に注入後、土
    壌中の水分を吸収して膨張し、該高分子吸水性樹脂によ
    る層を形成させることを特徴とする請求項第1ないし4
    のいずれかに記載の方法。
  6. 【請求項6】 乾燥状態の高分子吸水性樹脂は、その粒
    径が500μm以下である請求項1ないし5のいずれか
    に記載の方法。
  7. 【請求項7】 生物学的分解材料は、有害化学物質分解
    性の微生物と微生物保持担体、微生物増殖材料および微
    生物活性材料からなる群から選ばれた少くともいずれか
    一種以上との組み合わせである請求項1ないし6のいず
    れかに記載の方法。
  8. 【請求項8】 微生物が細菌である請求項7に記載の方
    法。
  9. 【請求項9】 該微生物がシュードモナス属に属するこ
    とを特徴とする請求項8記載の方法。
  10. 【請求項10】 該微生物がシードモナス・セパシアで
    あることを特徴とする請求項9記載の方法。
  11. 【請求項11】 シュードモナス・セパシアはシュード
    モナス・セパシアKK01株である請求項10に記載の
    方法。
  12. 【請求項12】 該有害化学物質が有機塩素化合物であ
    ることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記
    載の方法。
  13. 【請求項13】 該有害化学物質がトリクロロエチレン
    であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
  14. 【請求項14】 高分子吸水性樹脂と生物学的分解材料
    の配置は、乾燥状態で水不浸透性包装材に充填し、予め
    所定位置に設けて後注入媒体への加圧によって包装材を
    破裂せしめ充填物を地層中に送り込む先行する請求項の
    いずれかに記載の方法。
  15. 【請求項15】 担体は1μmないし300μmの粒径
    である請求項7に記載の方法。
  16. 【請求項16】 担体は孔隙構造である請求項7に記載
    の方法。
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