JP3618785B2 - 微生物破砕物を用いた汚染土壌の浄化方法 - Google Patents

微生物破砕物を用いた汚染土壌の浄化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、土壌汚染物質の分解能を有する微生物の破砕物を用いた土壌浄化法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種の有害難分解性化学物質が土壌、河川、海、空気中等において検出されており、これらの物質による汚染の進行が問題となっている。なかでも有機塩素系化合物による土壌汚染は深刻な問題となってきており、汚染の拡大を防止していくとともに、汚染された環境を再生していく技術の確立が強く望まれている。例えばガス製造プラントサイト、製油所における汚染土壌、石油精製所跡地、燃料基地跡地、パルプ工場跡地などにおいて土壌修復のニーズが高い。また土壌汚染は土地の再利用を妨げているばかりでなく、汚染物質が地下水に流れ込んで拡散することによる汚染地域の拡大を引き起こす危険性が極めて大きい。
【0003】
汚染された土壌から汚染物質を取り除いて土壌を元の状態に復帰させる土壌修復法としては種々の方法が知られ、また試みられている。
【0004】
例えば、土壌中より汚染物質を吸引する真空抽出法等があるが、高いコスト、低い操作性、低濃度で存在する汚染物質の処理の困難性など、数多くの問題がある。
【0005】
こうした中、微生物を利用した土壌の浄化方法、いわゆるバイオレメディエーションに対する期待が高まっている。その方法として、例えば土壌中に自然に存在する微生物の機能を高めて汚染物質を分解して無害化するといった、生態系の自浄能力を強化するものから、更にこの技術を一歩進めて汚染物質の分解能を有する菌を外部から積極的に導入し、汚染土壌の修復を促進する方法が試みられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
バイオレメディエーションでは真空抽出等の物理化学的な方法では処理できなかった低濃度かつ広範囲の汚染地でも対象になるが、実際にこうした土壌を浄化するためにはその前提条件として汚染物分解能を有する微生物(以下分解微生物と云う)を汚染土壌中に拡散させることが必要である。しかしながら微生物の土壌中での移動は容易ではなく、土壌中に存在する有害物質の近傍に微生物を到達させる方法が大きな課題となっている。
【0007】
例えば地中に井戸を掘り、そこから微生物を含む液を注入し、水や空気で圧力を加えて土壌中を浸透させる方法や、大量の微生物を土壌中に投与する方法等が、分解微生物の土壌中での拡散方法として現在採られている。
【0008】
しかしながら、微生物の拡散性は土壌の種類によって大きく左右され、例えば透水係数の高い細砂では微生物は容易にその中を移動するが、表層土やロームやシルトでは微生物の移動は非常に困難になる。そのためこうした土壌中で微生物を拡散させるためには、汚染地に何本もの注入口を設け、さらに高圧で微生物懸濁液を注入する方法が採られることもあるが、こうした方法を用いても微生物を拡散させることが困難な場合も多く、現状ではロームやシルトなどの土壌層では浄化を断念することも少なくない。
【0009】
また、土壌を微視的に見た場合も、微生物の移動に関する問題が障壁となる。表層土やロームのように団粒構造の発達した土壌の孔隙内部や、シルトの微細な亀裂の内部など、微生物の侵入困難な空間に汚染物質が存在する場合、汚染物質が溶出してこない限り浄化はできなかった。こうした空隙中に存在する汚染物質の場合は現在土壌浄化方法として最も頻繁に行われている真空抽出処理にとっても浄化困難なサイトであり、in−situで浄化を達成する場合の大きな障壁になっている。
【0010】
ところで、バイオレメディエーションでは土壌中での分解微生物の生育や活性を高い水準に維持するためには、栄養素や酸素の供給、誘導物質の存在が分解酵素の発現に不可欠であり、微生物、例えばトリクロロエチレン(以下TCEと云う)分解菌におけるフェノール、メタンなどの物質の付与、pHなどの土壌環境の調節、土着微生物との共生を行うための場の提供など、かなり複雑で厳密な制御技術が必要であり、まだまだ技術的障壁も多い。なお、このためのコストがバイオレメディエーションに要するコストの大半を占めている状態にある。
【0011】
さらに、上記の微生物の制御が達成され、分解微生物の増殖や生残性が維持された場合でも、今度は大量に発生した外来微生物による生態系の攪乱という新たな環境破壊が生じはしないかと云う懸念がある。
【0012】
また、上記の問題とも関連してバイオレメディエーションはそれ自体が現在、微生物を土壌という環境中に大量に放出する点で社会的な認知(パブリック・アクセプタンス)が十分得られているかという問題を抱えている。汚染サイトに生育する土着微生物を活性化する方法を採れば、人体や動植物に対する影響はそれほど問題にはならないであろう。しかし、浄化の困難な汚染物質、汚染サイトの増加にともない、より浄化能力の高い外来微生物、とりわけ遺伝子組み換えや変異を行った微生物をバイオレメディエーションに用いる必要性が高まってきており、こうした人工的な改変を施した微生物を開放系に放出することに対し、依然として社会的認知はまだ得られていないと云うべきである。国内では根拠となる法規制もいまだ整えられていない状況であり、国内におけるバイオレメディエーションの普及と技術開発を遅延させる原因となっている。こうした現状から、パブリック・アクセプタンスの問題を回避し、かつ高度な浄化能力のある手法が切に求められている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上のような微生物を用いた土壌修復における問題に鑑みなされた。すなわち微生物を破砕し、微生物の持つ汚染物質分解酵素を菌体外に解放し、微生物の侵入の困難な微小な空隙部位を有する土壌、及び土壌粒子間の間隙が密であるために微生物の移動・拡散が困難な土壌に上記微生物菌体破砕物を注入・拡散させることにより、微生物では困難であった土壌汚染サイトの浄化を達成するものである。
【0014】
機械的に見るならば一般に遊離した酵素の大きさは分子量にして1万〜100万であり、微生物の大きさがおおよそ0.1μm以上、多くの場合1〜10μmであることを考えると、微生物菌体の通り抜けられる径よりもはるかに微小な間隙・孔隙径を通過できるはずである。ところが実際には土壌表面への物理的な吸着が作用するため、土壌中での酵素の透過性は低下するが、一方、微生物菌体も土壌表面への物理的あるいは生物的(微生物の生産する付着性粘着物質など)吸着が働くために土壌中での移動は大きく妨げられている。そこでこの点について研究したところ、微生物菌体よりも酵素の方が土壌中での透過性に優れていることが明らかにされた(実施例1、比較例1)。この事実から、微生物菌体そのものの代わりに分解酵素を含んでいる微生物菌体破砕処理物を土壌中に投与することにより、これまで微生物の移動が不可能で、有害物質の残留を解消できなかった土壌領域においても、分解作用を及ぼすことが可能となった。また、微生物の移動が可能な汚染土壌においても、移動のための圧入力を低減化することが可能なため、井戸などの注入口の設置密度を低くしたり、注入のためのポンプの圧力が低出力のもので足りるなど、設備の軽減を計ることができる。
【0015】
また、微生物菌体を直接投与した場合には、汚染物質と微生物とが接触する機会が少ないために土壌中において微生物は長期間活性を維持している必要があり、そのため栄養素や誘導物質、酸素の供給、pHなどの土壌環境の調節、住みかの提供などの土壌中での制御が必要であった。本発明では、任意に生育の制御ができる培養槽などにおいて好適かつ容易に微生物を培養することが可能であるから、土壌中に大量に栄養素を投与するために生じるリンなどによる地下水汚染の心配もない。また、TCE分解菌などのように、分解酵素の発現に特定の誘導物質が不可欠であり、特にその誘導物質を環境に散布することができない有害な物質の場合には、培養槽でこうした有害な誘導物質と接触させ、分解酵素を発現させた後に微生物と培養液を分離することで解決が図られる。
【0016】
さらに前述のように土着微生物、外来微生物を問わず土壌に投与した微生物を増殖させる必要がある場合には、特定微生物が環境中に大量に増殖することによる生態系の攪乱、微生物による二次汚染の懸念があったが、微生物菌体破砕物のみを用いればその心配もない。
【0017】
また、国内に輸入することが禁じられている微生物、遺伝子組み換えや変異を施した微生物、病原性を有する微生物などは、たとえその微生物の有する分解活性が優れていても、またその微生物が特定の有害物質を分解できる唯一の微生物であったとしても、社会的認知の問題から、そのまま野外に放出することはほとんど不可能であっても、増殖せず生命活動を事実上停止している微生物の菌体破砕物であれば、こうした微生物の有する分解活性を利用することが可能となる。更に微生物に元来含まれていた酵素の作用を助長したり高めたりする成分も利用できることになる。
【0018】
本発明に用いる破砕処理物に用いる微生物としては、汚染物に対して高度の分解能力をもつ微生物であれば特に制限はない。汚染サイトに生息する土着微生物で分解能力を持つもの、国内で単離・同定され性質のわかっている微生物はもちろん、未同定の微生物、単離のされていない混合微生物をはじめ、前述したように国外でスクリーニングされた微生物、遺伝子組み換えや変異を施した微生物、病原性を有する微生物など、従来は野外に放出することが社会的認知の問題から困難、或は不可能であった微生物であっても本発明では有効に用いることができる。
【0019】
また、これらの微生物は複数種用いて複数の微生物の菌体破砕物が混合した混合物を用いても良い。たとえば、菌体破砕物中の酵素の活性は低いが失活はしにくいものと酵素の活性は高いものの短時間で失活してしまうものを混合して用いることで、浄化効率を上げることができる場合もある。混合の仕方としては一種類ずつ破砕してから混合する方法、複数の微生物が混合して存在している微生物懸濁液に破砕処理を施し、複数の微生物を同時に破砕しても構わない。
【0020】
さらに、汚染の時期、汚染の程度、土壌環境の違い、用いる微生物の種類などによっては菌体の破砕処理物にはさらに複数種の有効な微生物を適当な混合比で混合して用いても良い。すなわち、微生物の移動が容易な部位においては土壌の固相部分に対して液相部分の占める割合が多く、微生物の移動が困難な部位においては土壌の固相部分に対して液相部分の占める割合が少ないため、汚染の初期あるいは高濃度の汚染の場合には微生物の移動が容易な部位における汚染物質の存在量が多い。このため、こうした場合には微生物菌体と微生物粉砕物を混合して投与することによって、微生物菌体がその到達可能な部位において多量に存在する汚染物質の浄化を大幅に進め、微生物破砕物が微生物の到達困難な部位における少量の汚染物質の浄化を担当するという方法が有効である。
【0021】
微生物菌体そのものでの分解活性、微生物破砕物での分解活性の程度及び微生物菌体の移動可能な部位の汚染物質の量、微生物菌体破砕物の移動可能な部位の汚染物質の量を考慮することにより微生物菌体と微生物菌体破砕物の混合比を定めれば、コストの面で有利であろう。
【0022】
破砕処理せずに混合する微生物と破砕処理物に用いる微生物とは必ずしも同じ種類のものを用いる必要はなく、汚染の程度、土壌環境などの条件に応じて適当なものを選択すれば良い。また、どちらの微生物も必ずしも一種類である必要はなく、二種以上の混合菌であっても良い。
【0023】
次に微生物菌体の破砕処理方法であるが、目的とする汚染物質の分解酵素を常に保持あるいは産生している微生物を用いる場合であれば、十分な微生物菌体量に達するまで培養した後に、必要があれば遠心処理やろ過等によって菌体濃度を調整して、培地の混入を嫌う場合には菌体を緩衝液、塩類溶液、ショ糖溶液等の溶媒で洗浄して破砕処理に供する。この際の溶媒にはプロテアーゼに対する各種阻害剤を存在させてもよい。また、分解酵素を常備していない微生物、例えば特定の誘導物質が分解酵素の生産や活性を促進する性質を有する微生物では、誘導物質による酵素の誘導を培養時に行い、最も酵素活性の高い状態に微生物を適応させて用いるようにする。破砕方法としては、フレンチプレス、ボールミル、音波処理、酵素処理、自己融解などの処理のうち、微生物の性質、量によって適当な方法を用いる(参考文献『生物化学実験のてびき1 生物試料調製法』化学同人編)。
【0024】
また、破砕処理後の菌体破砕液中の未破砕の微生物を除去する必要があるときは、10000G程度の遠心によって微生物を集菌・除去する。
【0025】
できあがった菌体破砕液を精製し、分解酵素の純度を高めた溶液を用いることも場合によっては可能であるが、精製にコストがかかること、精製によってかえって活性が落ちる場合があることなどを考慮すれば、格別精製せずに未精製のまま用いることを選択しても実用に支障はない。
【0026】
以上の微生物の破砕処理物を土壌に施すことによって、土壌の浄化処理を行うことが可能となる。
【0027】
従来土壌汚染の浄化に微生物の酵素を用いた例はあるが(特開平5−185052)、汚染された土壌を掘り起こし、反応槽などのon−siteで処理を行うもので、これは本来のバイオレメディエーションの実施形態、すなわち土壌深層部における汚染の浄化や、建築構造物で被覆された地面の地下での浄化には適さない。ところが本発明は上記のようなバイオレメディエーションの抱える問題も解決するもので、地中、すなわちin−situにおいて浄化を達成する方法を提供するものであり、前記の技術とは明確に区別される。
【0028】
本発明における微生物の破砕処理物を土壌へ投与する方法としては、従来の微生物注入方法と同様で良く、散布処理、土壌との混合処理等、常法によって行うことができる。さらに土壌の比較的深部への投与には、掘削孔を設けてそこから土壌浄化剤を投与・分散させる方法が応用できる。
【0029】
以下に実施例を示すが、これらは本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0030】
実施例1 Pseudomonas cepacia菌体破砕物を用いたフェノール汚染土壌の浄化
フェノール分解菌Pseudomonas cepacia KK01(寄託番号FERM:BP−4235)を20lの培地(0.2%グルタミン酸ナトリウム、M9培地(Na HPO 6.2g、KH PO 3.0g、NaCl 0.5g、NH Cl 1.0g/l))に接種し、30℃で15時間培養を行なった。培養後、遠心によって菌を集菌し、ペレットに20mMのトリス緩衝液2lを加えて懸濁し、この懸濁液は10000rpmの遠心を経て集菌し、菌体を洗浄した。このペレットに1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリドを含有した20mMのトリス緩衝液1lを加えて懸濁し、懸濁液を数回に分けてフレンチ・プレス(1500kg/cm )にかけてこの液中の菌体を破砕した。この菌体破砕液を遠心し、未破砕の菌を除去して所望の菌体破砕液とした。
【0031】
次に浄化の検討を行うフェノール汚染土壌は、以下のように前処理して調製した。すなわち地下1.5mから採取した関東ローム(含水比70%)を121℃で30分間オートクレーブ滅菌した後若干風乾し、減少した水分量だけフェノール溶液を噴霧器によって土壌にまんべんなく加え、土壌水分中のフェノール濃度として約100ppmになるよう調製した。次にこれを内径30mm、長さ800mmのガラスカラムに少しずつ圧密しながら詰め、長さ500mmまで汚染土壌を充填した。この時のカラム内の土壌の圧密度(重量/体積)は採取場所のものと同様に設定した。
【0032】
この土壌カラムの上端から先の菌体破砕液100mlを注ぎ、同様に作製したカラム3本を17℃(深度1.5mの土壌の温度)の人工気象器中に静置した。ここでカラムの両端は5mmの穴の開いたゴム栓で封をしてあり、カラム内の重力による水の移動を妨げられないようにしてある。静置後0、24、48時間後に各カラムの上端から30、90、150、210、270、330、390、450mmの各ポイントでカラムをガラス切りを用いて切断し、そのポイントの土壌中のフェノール濃度及び含水比を測定した。フェノールの測定方法は土壌サンプル10gに蒸留水10mlを加えて懸濁し、懸濁液を0.22μmのフィルターでろ過したろ液を試料とし、4−アミノアンチピリンを用いた呈色反応後、510nmの吸光度を分光光度計により測定することにより求めた。含水比は乾土1gあたりの水分重量を百分率で求め、カラム中の水の移動を把握した。これらの結果を図1、2に示す。
【0033】
比較例1
実施例1と同様に作製した土壌カラムにcepacia KK01洗浄菌液(生菌で破砕処理していない)100mlを注入し、同様に作製したカラム3本を人工気象器中に静置して0、24、48時間後に各カラムの上端から30、90、150、210、270、330、390、450mmの各ポイントでカラムを切断し、そのポイントの土壌中のフェノール濃度及びcepacia菌数を測定した。cepacia菌数はフェノール選択培地(フェノール100ppm、グルタミン酸ナトリウム0.2%、M9、寒天0.2%)を用いた希釈平板法によった。その結果は図3に示す。
【0034】
実施例1、比較例1から、まず注入液はカラム中を330mmのポイントまで移動し、注入上部から下部にかけて含水比の勾配を形成し、0〜48時間でその変化はさほどなかった。この状態で、KK01の菌体そのものは150mmのポイントまで移動したに過ぎなかったが、一方、菌体破砕物は注入液と同様に330mmのポイントまで移動したことが同ポイントでのフェノールの分解から推定された。菌体破砕物は微生物菌体に比べ、ローム土壌中で広範囲に分解性を発揮できることがわかる。
【0035】
実施例2 Pseudomonas cepacia菌体破砕物を用いたTCE汚染土壌の浄化
フェノールをTCE分解の誘導物質とするTCE分解菌Pseudomonas cepacia KK01(寄託番号FERM:BP−4235号)を100ppmのフェノールを含有する20lの培地(0.2%グルタミン酸ナトリウム、M9培地(Na HPO 6.2g、KH PO 3.0g、NaCl0.5g、NH Cl 1.0g/l))に接種し、30℃で培養を行なった。フェノールによりTCE分解酵素が十分発現される培養13時間後、遠心によって菌を集菌し、ペレットに20mMのトリス緩衝液2lを加えて懸濁し、遠心によって集菌し、菌体を洗浄した。このペレットに1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリドを含有した20mMのトリス緩衝液1lを加えて懸濁し、この液中の菌体を数回に分けてフレンチ・プレス(1500kg/cm )によって破砕した。この菌体破砕液を遠心し、未破砕の菌を除去して所望の菌体破砕液とした。
【0036】
浄化検討を行うTCE汚染土壌は、以下のように調製した。すなわち地下4mから採取したシルトを含むローム(含水比78%)を121℃でオートクレーブで30分間滅菌し、滅菌水を若干加えてもとの含水比に調整した後、内径30mm、長さ800mmのガラスカラムに少しずつ圧密しながら詰め、長さ500mmまで充填した。この時のカラム内の土壌の圧密度(重量/体積)は採取場所のものと同様に設定した。次にTCE飽和水溶液をガスポンプによってバブリングし、これによって得たTCE含有ガスを作製した土壌カラムに10分間圧送して流し、土壌をTCEで汚染させた。さらにTCEガスを流し続けながら先の菌体破砕液100mlを注ぎ、菌体破砕液をカラム内に圧送した後、カラムの両端をテフロン栓で密封した。この圧送によって菌体破砕液は土壌の上端から約300mmの部分まで到達し、密封後は重力によって非常にゆっくりと降下して行った。
【0037】
同様に作製したカラム2本を15℃(深度4mの土壌の温度)の人工気象器中に静置した。培養開始後0、48時間後に各カラムの上端から30、90、150、210、270、330、390、450mmの各ポイントでカラムを切断し、そのポイントの土壌中のTCE濃度を測定した。TCEの測定はn−ヘキサン抽出−ガスクロマトグラフィー法によった。すなわち、迅速に採取した土壌サンプル10gをn−ヘキサン30mlの入ったバイアル瓶に加えてテフロンキャップをし、バイブロシェーカーで3分間攪拌した後、ヘキサン層をECD検出器によりガスクロマトグラフィーで分析した。その結果を図4に示す。
【0038】
比較例2
実施例2と同様に作製した土壌カラムにcepacia KK01洗浄菌液(生菌)100mlを注入し、同様に作製したカラム2本を人工気象器中に静置して培養後0、48時間後に各カラムの上端から30、90、150、210、270、330、390、450mmの各ポイントでカラムを切断し、そのポイントの土壌中のTCE濃度を測定した。その結果を図4に示す。
【0039】
実施例2、比較例2の比較から、TCE分解においても菌体破砕物の方がKK01菌体そのものよりも広範囲に土壌を浄化できることがわかる。
【0040】
実施例3 Pseudomonas cepacia菌体破砕物及び菌体混合液を用いたTCE汚染土壌の浄化
フェノールをTCE分解の誘導物質とするTCE分解菌Pseudomonas cepacia KK01(寄託番号FERM:BP−4235号)を100ppmのフェノールを含有する20lの培地(0.2%グルタミン酸ナトリウム、M9培地(Na HPO 6.2g、KH PO 3.0g、NaCl0.5g、NH Cl 1.0g/l))に接種し、30℃で培養を行なった。フェノールによりTCE分解酵素が十分発現される培養13時間後、遠心によって菌を集菌し、ペレットに20mMのトリス緩衝液2lを加えて懸濁し、遠心によって集菌し、菌体を洗浄した。このペレットに1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリドを含有した20mMのトリス緩衝液1lを加えて懸濁し、この液中の菌体を数回に分けてフレンチ・プレス(1500kg/cm )によって破砕した。この菌体破砕液を遠心し、未破砕の菌を除去して所望の菌体破砕液とした。
【0041】
浄化検討を行うTCE汚染土壌は、以下のように調製した。すなわち地下1.5mから採取したローム(含水比70%)を内径30mm、長さ800mmのガラスカラムに少しずつ圧密しながら詰め、長さ250mmまで充填した。さらにこの上に地下7mから採取した細砂(含水比9.2%)を重層し、長さ500mmまで充填した。この時のカラム内の土壌の圧密度(重量/体積)は採取場所のものと同様に設定した。次にTCE飽和溶液をガスポンプによってバブリングし、これによって得たTCEガスを10分間作製した土壌カラムに圧送して流し、土壌をTCEで汚染させた。さらにTCEガスを流し続けながら先の菌体破砕液100mlを注ぎ、菌体破砕液をカラム内に圧送した後、カラムの両端をテフロン栓で密封した。この圧送によって菌体破砕液は土壌の上端から約420mmの部分まで到達し、密封後は重力によって非常にゆっくりと降下して行った。同様に作製したカラム2本を15℃(深度7mの土壌の温度)の人工気象器中に静置した。培養開始後0、48時間後に各カラムの上端から30、90、150、210、270、330、390、450mmの各ポイントでカラムを切断し、そのポイントの土壌中のTCE濃度を測定した。TCEの測定はn−ヘキサン抽出−ガスクロマトグラフィー法によった。すなわち、迅速に採取した土壌サンプル10gをn−ヘキサン30mlの入ったバイアル瓶に加えてテフロンキャップをし、バイブロシェーカーで3分間攪拌した後、ヘキサン層をECD検出器によりガスクロマトグラフィーで分析した。その結果を図5に示す。
【0042】
比較例3
実施例3と同様に作製した土壌カラムにcepacia KK01洗浄菌液(生菌)100mlを注入し、同様に作製したカラム2本を15℃の人工気象器中に静置して培養後0、48時間後に各カラムの上端から30、90、150、210、270、330、390、450mmの各ポイントでカラムを切断し、そのポイントの土壌中のTCE濃度を測定した。その結果も図5に示す。
【0043】
実施例4
実施例3と同様に調製したcepacia KK01の菌体破砕液に比較例3と同濃度となるようにcepacia KK01洗浄菌液(生菌)を混合した溶液100mlを実施例3と同様に作製した土壌カラムに注入し、同様に作製したカラム2本を人工気象器中に静置して15℃で培養後0、48時間後に各カラムの上端から30、90、150、210、270、330、390、450mmの各ポイントでカラムを切断し、そのポイントの土壌中のTCE濃度を測定した。その結果も図5に示す。
【0044】
実施例3、4、比較例3から、菌体破砕物と菌体そのものを混合した混合液を注入した場合、微生物の移動の容易な細砂では菌体破砕物よりも浄化が進み、微生物の移動が困難なロームでは菌体そのものよりも浄化効率が高く、土壌の種類に応じて浄化能を付与できることがわかる。
【0045】
実施例5 Pseudomonas putida菌体破砕物を用いたTCE汚染土壌の浄化
フェノールを誘導物質としてTCE分解酵素フェノールハイドロキシラーゼを生産するPseudomonas putidaに属し BH株と名付けられている菌株(下水道協会誌Vol.24,NO.273,1987/2)を用いて実施例2と同様の検討を行なった。
【0046】
BH株を実施例2と同様の培地に接種し、30℃で培養を行なった。フェノールによりTCE分解酵素が十分発現される培養16時間後、遠心によって菌を集菌し、実施例2と同様に菌体を破砕し、菌体破砕液を調製した。
【0047】
浄化検討を行うTCE汚染土壌も実施例2と同様に調製・滅菌したシルトを含むローム土壌を用い、同様にカラムに充填し、TCEで汚染させ、この土壌カラムに菌体破砕液を圧送し、テフロン栓で密封した。この圧送によって菌体破砕液は土壌の上端から約300mmの部分まで到達し、密封後は重力によって非常にゆっくりと降下して行った。同様に作製したカラム2本を15℃(深度4mの土壌の温度)の人工気象器中に静置した。培養開始後0、48時間後に各カラムの上端から30、90、150、210、270、330、390、450mmの各ポイントでカラムを切断し、そのポイントの土壌中のTCE濃度を同様に測定した。その結果を図6に示す。
【0048】
比較例4
実施例5と同様に作製した土壌カラムにputida BH株洗浄菌液(生菌)100mlを注入し、同様に作製したカラム2本を人工気象器中に静置して培養後0、48時間後に各カラムの上端から30、90、150、210、270、330、390、450mmの各ポイントでカラムを切断し、そのポイントの土壌中のTCE濃度を測定した。その結果も図6に示す。
【0049】
実施例5、比較例4から、putidaを用いたTCE分解においても菌体破砕物の方がputida菌体そのものよりも広範囲に土壌を浄化できることがわかる。
【0050】
【発明の効果】
本発明の微生物破砕物による土壌修復方法は、従来の外来微生物投与による土壌修復方法では浄化できなかった汚染サイトの浄化を可能とし、微生物による修復方法では必須であった微生物の生理活性の制御が不要となるなどコストの軽減が図れ、微生物による2次汚染の心配もなく社会的認知も得られやすいため、いかなる場所でもバイオレメディエーションの長所を生かした土壌修復を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、比較例1におけるフェノール残存濃度を示す図
【図2】実施例1、比較例1における含水比を示す図
【図3】実施例1、比較例1における菌数を示す図
【図4】実施例2、比較例2におけるTCE残存量を示す図
【図5】実施例3、4、比較例3におけるTCE残存量を示す図
【図6】実施例5、比較例4におけるTCE残存量を示す図

Claims (7)

  1. 汚染された土壌をin−situにおいて浄化する方法であって、
    前記汚染土壌中の汚染物質の分解能を有する微生物由来の前記汚染物質分解酵素を、前記微生物の破砕物として前記汚染土壌中に注入する工程を有し、
    前記汚染土壌中において、前記破砕物より菌体外に解放される前記汚染物質分解酵素と前記汚染物質との接触によって、前記汚染物質を分解する
    ことを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
  2. 前記汚染物質の分解能を有する微生物は、細菌であることを特徴とする請求項に記載の方法。
  3. 前記汚染物質の分解能を有する微生物は、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌であることを特徴とする請求項に記載の方法。
  4. 前記汚染物質の分解能を有する微生物は、シュードモナス=セパシア(Pseudomonas cepacia)であることを特徴とする請求項に記載の方法。
  5. 前記汚染物質の分解能を有する微生物は、シュードモナス=セパシア(Pseudomonas cepacia)KK01株(寄託番号 FERM:BP−4235)であることを特徴とする請求項に記載の方法。
  6. 前記汚染物質は、揮発性有機塩素化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記揮発性有機塩素化合物は、トリクロロエチレンであることを特徴とする請求項に記載の方法。
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