JPH07284533A - 酸素富化ガス吸入装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 酸素富化ガス発生手段１０から供給される酸
素富化ガスを、流量調節手段１２や流路開閉手段１４を
経て吐出口２０へ導き、そのガスを鼻カニューラ２２等
を用いて鼻腔へ供給する酸素富化ガス吸入装置におい
て、制御部１６にガスの吐出時間と停止時間とを予め設
定したタイマー手段によって、流路開閉手段である電磁
弁を規則的に開閉して、酸素富化ガスを間歇流として吐
出し、その間歇流の吐出の開始時期を、音や光で表示す
るように構成した。 【効果】 酸素富化ガスが間歇流として吐出されるの
で、表示装置の合図に合わせて意識的に吸気を開始すれ
ばよく、呼吸不全患者の正しい自発呼吸の訓練ができ、
乱れた呼吸を規則正しい呼吸に戻すリハビリテーション
にも役立ち、また、患者の呼吸相を検出するセンサが不
要となるので、装置が簡単で安価にでき故障も少なくな
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、低酸素血症等の呼吸不
全患者の酸素吸入療法に利用する酸素富化ガス吸入装置
に関するもので、さらに詳しくは、その酸素富化ガス
（純酸素ガスを含む、以下同じ。）の吐出する流れを自
動的に断続して間歇流とすること、さらにこの周期をあ
る程度の幅で調節可能とすることを特徴とするものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】従来から、呼吸不全患者の治療法の一つ
の手段として、酸素吸入療法が行われていた。この酸素
吸入療法を行うためには、以前は患者が病院等の医療施
設に入院して治療を受けるか、あるいはそれらの施設へ
通院して治療を受けていた。しかしながら、最近では一
般家庭においてこの酸素吸入療法が受けられるように法
制面でも改正が進み、またそれに適した酸素富化ガス吸
入装置や、比較的小型の酸素ガスボンベや液体酸素容器
等が供給されるようになった。

【０００３】前記の酸素富化ガス吸入装置や酸素ガスボ
ンベ等から供給される酸素ガスの流れは、常時一定値の
流量である恒常流であった。その流量の幅は調節性があ
るにせよ、一定流量にセットした酸素ガスを使用中は、
絶えず吐出して吸込む方式であった。

【０００４】また、このガスの流れを人（以下、患者と
もいう）の呼吸に同調して、吸気相の期間、あるいはさ
らに吸気相の一部の期間にのみ流れるように制御する手
段を付設して、呼気相を含むその他の期間はガスの流れ
を停止して、平均流量を低減して酸素ガスの消費量を節
約することができる、いわゆる呼吸同調式酸素供給装
置、あるいは酸素富化ガス供給装置と呼吸同調式酸素供
給装置とを組合わせたものが提案されていた。（例え
ば、特公昭６２−３７９９６号公報，特開平５−８４３
０１号公報参照）

【０００５】しかしながら、これらの呼吸同調式酸素供
給装置は、いずれも酸素富化ガスの流れを患者の呼吸に
同調した間歇流とするための手段として、酸素ガスの供
給手段の一つである鼻カニューラに呼吸に伴う相変化を
検出するためのセンサを有していた。例えば、吸気相の
温度は周囲の気温であるが、呼気相の温度はほぼ体温と
同等であるので、この温度変化を検出するサーミスタや
熱電対をセンサとして使用する。この方法は、夏期に外
気温が体温に近くなったりすると誤動作が多くなり、そ
して周囲温度が体温以上になると使えなくなるという不
具合が生じる。

【０００６】あるいは別の方法として、吸気相と呼気相
では鼻腔内の圧力が微かに異なるのを利用して、この圧
力の変化を酸素ガスの供給管である鼻カニューラのチュ
ーブを通じて、圧力センサで検出する等の方法がある。
この方法は鼻カニューラの圧が大気に開放されているた
めに、使用しながら歩いたり移動すると、呼気時の陽圧
はもちろん、吸気時の陰圧も正確には伝わりにくく、圧
力センサの感度を上げるほどよけいに誤動作を生じるこ
とがあった。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】前述のように、従来か
ら提案されている酸素富化ガスの流れを断続して間歇流
にする手段は、呼吸に伴う相変化を検出するためのセン
サを、その構成要素に加えることが必須要件となってい
た。また、そのための検出回路やセンサの構造も、複
雑、かつ高度なものを必要としていた。さらに、それぞ
れのセンサが持つ特有の誤動作の要因が問題となり、故
障も多くその使用範囲をせばめていた。

【０００８】本発明は、前記の呼吸に伴う相の変化を検
出するためのセンサを不要とし、かつ、酸素富化ガスの
流れを調節可能な一定周期の間歇流として、人の呼吸の
周期をそれに合わすように訓練して、吸気相での酸素吸
入量を増加させ、ないしは低減させることなしに、実質
的な平均流量を低減することが可能で、ひいては装置の
高効率化や省エネルギー化ができる酸素富化ガス吸入装
置を提供しようとするものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するた
めに、本発明では、酸素富化ガス発生手段等から供給さ
れるガスを、流量調節手段や流路開閉手段を経て吐出口
へ導き、そのガスを鼻腔へ供給する手段として鼻カニュ
ーラや開放性マスク，吹送カテーテル等を使用する構成
とするものである。この流路開閉手段の一つとして好適
なものに電磁弁（バルブ）があげられ、制御の容易な点
などから本実施例でもこの電磁弁を使用した。そして、
電磁弁の開閉、すなわち酸素富化ガスの流れの有無によ
る間歇流を起こさせる制御部は、所望の時間を設定する
ことが可能なタイマー手段によって、規則的な一定時間
で電磁弁を開閉できるよう構成した。センサを用いない
のでセンサから生ずる誤動作は生じない。

【００１０】また、その呼吸のサイクルは、およそ通常
の呼吸のサイクル、すなわち毎分１０〜４０回位の間で
調節可能であり、しかもガスの流路が開の時間は短く、
閉の時間は長くなるようにし、その開閉の期間の比も
１：２０から１：２位の間で必要により調節可能であ
る。

【００１１】このように構成したことによ、り装置の吐
出口から供給される酸素富化ガスは、呼吸の有無にかか
わらず断続的な間歇流となる。むろん、この間歇流の酸
素富化ガスは患者が吸入用に使用する訳であるから、前
記のタイマー手段の所望の時間は、その患者の呼気相の
時間あるいは吸気相の時間とほぼ等しいことが望まし
く、また、人の呼吸回数は各々個人差があるので、実際
に使用する患者の呼吸回数（１分間当り１０〜４０回）
とほぼ等しくすることのできる、制御回数設定手段があ
った方がより好ましいので、本発明の実施例でもそのよ
うに構成した。

【００１２】前記のタイマー手段として、例えば、コン
デンサと抵抗（ＣＲ）の時定数によって所望の時間を決
定する電気的タイマー手段や、交流電源や発振電源によ
って駆動される同期モータと減速機構とを組合わせた機
械的タイマー手段等があるが、本実施例では、所望の時
間の設定の容易性から、電気的タイマー手段を使用し
た。

【００１３】具体的には、時間設定が可能な半導体集積
回路のＴＣ４５３８Ｐ（商品名）にコンデンサと抵抗を
組合わせて接続し、制御回数設定手段１７として、この
抵抗値を任意の値に設定できる可変抵抗器を使用し、か
つ、そのツマミの位置で呼吸回数を選択できるような表
示を付した。この半導体集積回路は、１個の素子内に２
組のタイマー手段が構成できる回路を有するので、その
１個を前記の制御回数設定手段とし、別の１個をガスの
流路開閉手段を開閉する期間の比を調節するためのトリ
ガー発生手段として用いて、このトリガーの周期を、ト
リガー周期変更手段でその周期を所望の時間とすること
によって、前記の制御回数設定手段の時間と、このトリ
ガー発生手段の時間との比を変え、吸気相と呼気相の時
間比（以下、ＩＥ比ともいう）を同じく可変抵抗器で調
節するように構成し、そのツマミの位置でＩＥ比を選択
できるような表示を付した。

【００１４】また、前記の電磁弁の構造は、その電磁弁
のガスの流路を開閉する構造によっても異なり、おおむ
ね次のようなものがある。 常時閉（ノーマルクローズ） 常時開（ノーマルオープン） ラチェット式（開又は閉の瞬時にのみ通電するもの） さらに、ラチェット式にあっては、非通電期間の保持を
機械的ロック機構によるものや、永久磁石の保持力を利
用するものなどがあるが、本発明の実施例ではラチェッ
ト式で、かつ、永久磁石方式のものを使用した。

【００１５】以上の構成により、本発明にかかる酸素富
化ガス吸入装置を、実際に使用する患者の呼吸回数やＩ
Ｅ比とほぼ同じにして間歇流とした、酸素富化ガスを供
給することができるので、患者はこの間歇流の開始に合
わせて意識的に吸気をすればよいことになる。この間歇
流に合わせて意識的に吸気を開始するためには、当然の
ことながらこの間歇流の開始時が容易に認識できること
が必要であり、前記の流路開閉手段としての電磁弁の開
閉のタイミング、または間歇流の始まりを音及び／又は
光（本実施例ではＬＥＤと圧電電子ブザー）により表示
することにより酸素富化ガスの流れが有る吐出期の開始
に合わせて、患者の吸気相を開始できるように構成し
た。

【００１６】

【実施例】以下、実施例について図面を参照して説明す
る。図１は本発明の一実施例の構成を示す系統図である
が、この実施例は説明用のものであって、本発明はこの
実施例に限定されるものではない。

【００１７】この図において、酸素富化ガス発生手段１
０は公知のものでよく、特に限定されるものではない
が、本実施例では圧力変動吸着法（以下、ＰＳＡ法とも
いう）によって酸素富化ガスを発生させた。酸素富化ガ
スは、流量調節手段１２，流路開閉手段１４，吐出口２
０を経て鼻カニューラ２２を介して患者に供給される。

【００１８】この流路開閉手段１４はガス流路の開閉の
制御を行うものであるが、この制御はタイマー手段であ
る制御部１６からの信号によって行なわれ、かつ、制御
部１６の制御信号の間隔を制御回数設定手段１７によっ
て設定できるようにし、トリガー周期変換手段１９でＩ
Ｅ比を設定できるように構成した。この回数設定は、１
分間当り１０〜４０回程度の任意の点に設定できること
がのぞましい。さらに、この回数設定は前記のように個
人差が多く、その回数やＩＥ比も患者によって自由に変
更できる構成であることが必要である。また、このＩＥ
比において、通常、吸気期間中ずっと吐出期である必要
はなく、吸気の始めのみに高流量吐出を集中し、あとは
非吐出期にして、この非吐出期が長い方が酸素ガスの節
約効果が高く効率がよい。

【００１９】本実施例では、タイマー手段である制御部
１６の制御信号と、酸素富化ガスの発生手段１０のＰＳ
Ａ法の切替操作時間とは相互に関与していないが、これ
にかかわらず次のような制御方法であってもよく、その
作用効果をいっそう高めることもできる。

【００２０】前記のタイマー手段と、同じく前記のＰＳ
Ａ法による酸素富化ガス吸入装置の操作サイクルの制御
機構とを連動させるように構成し、その操作サイクルの
制御時間が、タイマー手段の制御時間によって制御され
る前記の酸素富化ガスの流路の開閉のサイクル期間の１
倍か、あるいは整数倍となるように構成することによ
り、酸素富化ガスの吐出期と非吐出期の制御と、ＰＳＡ
法の操作サイクルとを一致させ、圧縮空気が吸着筒へ入
りを始めて吸着過程が進む時に、酸素富化ガスの吐出期
を合わせて、高流量の酸素ガスを吸う吸気の始めを合わ
せて酸素吸入の用に供し、また、酸素富化ガスの非吐出
期のほぼ全期間で、吸着筒を脱着浄化するためのパージ
ガスとして、その酸素富化ガスを使用することができる
ので、より完全にパージすることができる。

【００２１】本実施例では、酸素富化ガスの発生手段と
してＰＳＡ法による酸素濃縮装置を用いたが、この例に
限らず酸素ガスの発生手段には他にも種々のものがあ
り、同様に本発明を実施することができる。その例とし
て、酸素ガスボンベ、液体酸素容器と気化器、選択性酸
素透過膜式酸素富化ガス発生器、病院等の施設の医療ガ
ス配管等によって供給される酸素ガス等があって、その
いずれでも、あるいはこれらの組合わせたものであって
もよく、本発明の作用効果に変わりはない。

【００２２】また、本実施例では前記の酸素富化ガスの
発生装置と、間歇ガス流の発生部とは同一の筐体内に収
納したが、この例に限らず両者は別々の筐体であっても
よく、また、各装置や制御部を駆動する電源入力２８は
交流であっても、あるいは直流であってもよく、各々の
電源に適合した部品を選択することで、実用上全く支障
なく本発明を実施することができる。

【００２３】

【発明の効果】本発明を実施することにより、次のよう
な優れた効果が得られる。即ち、ＰＳＡ法等による酸
素富化ガス吸入装置において、その吸入するガス流が患
者の呼吸パターンの吸気にあった間歇流となるので、患
者は同装置から発生する ＬＥＤや電子ブザー音等の給
気の開始を表示する合図に合わせて、意識的に吸気を開
始すればよく、カニューラ等の吸入手段や装置側に患者
の呼吸相を検出するセンサが全く不要となる。従って、
装置が簡単で、安価にできるうえに故障が少なくなる。

【００２４】また、健常者は、安静時には自然に行な
う自発呼吸のみでも、通常の生理現象に必要かつ十分な
酸素の量を大気中より摂取することができるが、酸素吸
入を必要とす自発呼吸ができる患者のなかには、自然の
自発呼吸パターンだけでは必要かつ十分な量の酸素を摂
取することができない場合があり、意識的により正しい
吸気，呼気の動作をする必要がある者が多々あり、本発
明を実施した酸素富化ガス吸入装置は、それらの患者が
同装置が発する給気開始の表示にもとづいて、それに合
わせて意識的に正しい自発呼吸をするという呼吸訓練を
することもできる。そして、乱れた呼吸を素早く安静な
規則正しい呼吸に取りもどすと言う呼吸回復訓練、すな
わち、呼吸不全患者のリハビリテーションに有用であ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例となる酸素富化ガス吸入装置
の構成を示す系統図である。

【符号の説明】

１０ 酸素富化ガス発生手段 １２ 流量調節手段 １４ 流路開閉手段 １６ 制御部 １７ 制御回数設定手段 １８ 電源部 １９ トリガー周期変更手段 ２０ 吐出口 ２２ 鼻カニューラ ２４ 配管 ２６ 空気 ２８ 電源入力

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 土屋 浩一 東京都千代田区内幸町１丁目２番２号 住 友ベークライト株式会社内 (72)発明者 佐藤 暢 鳥取県米子市旗ケ崎７−17−８

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 酸素富化ガス供給源、該酸素富化ガス供
   給源から流れ出すガス量の多少を調節する流量調節手
   段、及び該酸素富化ガスの流れの有無を制御する流路開
   閉手段からなり、呼吸不全患者の酸素吸入療法に使用す
   るための医療用酸素富化ガス吸入装置において、酸素富
   化ガスの吐出時間と停止時間とを予め設定するタイマー
   手段、該タイマー手段に設定されたサイクル期間によっ
   て前記流路開閉手段を規則的に開閉し、酸素富化ガスを
   間歇流として吐出する制御手段、及び、該間歇流の吐出
   の開始時期もしくは前記流路開閉手段の開閉のタイミン
   グを、音及び／または光で表示する表示装置を備えたこ
   とを特徴とする酸素富化ガス吸入装置。
2. 【請求項２】 酸素富化ガス供給源が、大気中の水分及
   び窒素ガスを選択的に吸着する吸着剤を充填した吸着
   床、該吸着床に圧縮空気を供給するための空気圧縮手
   段、及び吸着床を通過し生成した酸素富化ガスを貯える
   バッファータンクより基本的に構成された、圧力変動吸
   着法によって酸素富化ガスを発生させる酸素濃縮器であ
   ることを特徴とする、請求項１記載の酸素富化ガス吸入
   装置。
3. 【請求項３】 前記タイマー手段を圧力変動吸着法によ
   る酸素濃縮器のサイクル制御機構と連動させ、該酸素濃
   縮器のサイクル期間を、酸素富化ガスの吐出期と非吐出
   期よりなるサイクル期間の１倍もしくは整数倍と一致さ
   せたことを特徴とする、請求項２記載の酸素富化ガス吸
   入装置。
4. 【請求項４】 酸素富化ガスの吐出されない非吐出期間
   を、吐出期間と同じかより長く設定し、該非吐出期間に
   発生した酸素富化ガスはバッファータンクに貯えて、貯
   溜された酸素富化ガスを吸着された水分及び窒素ガスの
   脱着パージに利用することにより、エネルギーの節約を
   可能にしたことを特徴とする、請求項２もしくは請求項
   ３記載の酸素富化ガス吸入装置。
5. 【請求項５】 酸素富化ガス供給源が、選択性酸素透過
   膜式酸素富化ガス発生器、酸素ガスボンベ、液体酸素容
   器と気化器、病院等の施設の医療ガス配管によって供給
   される酸素ガスまたは酸素富化ガスのうちのいずれかで
   あることを特徴とする、請求項１記載の酸素富化ガス吸
   入装置。