JPH0727553Y2 - Ｅｄｓ検出器冷却用液化ガス蒸発防止装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、電子顕微鏡に元素分析
機能を持たせるためのエネルギー分散型Ｘ線検出器(Ｅ
ＤＳ検出器)を液化ガスで冷却するために使用される低
温発生装置での液化ガスの蒸発防止装置に関する。

【０００２】

【従来技術】一般に、ＥＤＳ検出器ではその測定精度を
高めるために、ＥＤＳ検出器を液体窒素等の液化ガスで
冷却するようにしているが、従来では液化ガスを貯蔵し
ている貯蔵容器の底壁からコールドフィンガーを連出
し、このコールドフィンガーにＥＤＳ検出器を装着し、
液化ガスを利用してＥＤＳ検出器を超低温状態に維持す
るようにしている。そしてこの場合ＥＤＳ検出器は、一
度冷却するとその冷却温度を維持しておかなければなら
ないという制約がある。一方、電子顕微鏡本体は床面に
スプリング等の振動吸収体を介して支持されており、液
化ガス貯蔵容器は検出作業時にＥＤＳ検出器をリトラク
ト移動できる状態で電子顕微鏡本体に固定されている。

【０００３】ＥＤＳ検出器を冷却するために使用する液
化ガスは蒸発により容器外に飛散することになるから、
長時間にわたって冷却温度を一定範囲内に維持するに
は、この飛散したガス分を補わなければならず、そのた
めにオペレータは頻繁に液化ガスを液化ガス貯蔵容器に
補給しなければならなかった。ところが、ＥＤＳ検出器
を使用する電子顕微鏡では、ＥＤＳ検出器冷却用の液化
ガス貯蔵容器を配設する床面からの高さがその照射軸と
の関係で規制されることになる。そして、従来では、こ
の液化ガス貯蔵容器の上部に開口している液化ガス補給
口は床面から例えば１.５ｍという高い位置に開口して
いたことから、このデュワー瓶等の補給容器を用いて液
化ガス貯蔵容器に液化ガスを補給する作業が面倒になる
という問題があった。

【０００４】このため、本出願人は先に、液化ガス貯蔵
容器の上端開口部に極低温冷凍機のコールドヘッドを装
着して、液化ガス貯蔵容器内で気化したガスを極低温冷
凍機で凝縮させることにより、液化ガスの消費を減少さ
せるようにしたものを提案した(特開平２−２７９９７
７号)。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】ところが、この極低温
冷凍機のコールドヘッドを液化ガス貯蔵容器の上端開口
部に装着した従来のものでは、液化ガスを貯蔵している
液化ガス貯蔵容器にコールドヘッドが加わると７Kg以上
の重量増加になる。このため、電子顕微鏡のリトラクト
レールに液化ガス貯蔵容器を支持させていた従来のもの
では、リトラクトレールが液化ガス貯蔵容器の重量を十
分に支持しきれない。このため、電子顕微鏡のリトラク
トレールの支持を補強することも考えられるが、精密・
高価な電子顕微鏡本体の改造・施工は困難を極める。

【０００６】さらに、電子顕微鏡はスプリング等でフロ
ーティング支持されることが普通であることから、電子
顕微鏡本体に取り付けられているリトラクトレールの構
造を変更することは、重量バランスを崩すことになり、
設置条件の調整を必要とするという問題があった。ま
た、リトラクトレールを傾斜状に配置した場合には、上
昇移動時と下降移動時とで移動荷重が異なることにな
り、重量が増加することは移動用ネジの耐久性が短くな
るという問題があった。本考案は、このような点に着目
してなされたもので、コールドヘッドを配置した液化ガ
ス貯蔵容器の重量がリトラクトレールに作用しない状態
に支持することにより、液化ガス貯蔵容器が電子顕微鏡
のあらゆる動きに追随移動できる液化ガス蒸発防止装置
を提供することを目的とするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本考案は、電子顕微鏡の本体近傍に高さ調節可能に
形成した支柱を立設し、この支柱の上端に水平２軸リニ
アガイド機構を介して走行支持台を配置し、この走行支
持台に渦巻きバネ式バランサ装置を支持し、このバラン
サ装置から導出した渦巻きバランサの先端に極低温冷凍
機のコールドヘッドに連結するようにしたことを特徴と
している。

【０００８】

【作用】本考案では、電子顕微鏡の本体近傍に高さ調節
可能に形成した支柱を立設し、この支柱の上端に水平２
軸リニアガイド機構を介して走行支持台を配置し、この
走行支持台に渦巻きバネ式バランサ装置を支持させ、バ
ランサ装置から導出した渦巻きバネの先端部を液化ガス
貯蔵容器に装着されている極低温冷凍機のコールドヘッ
ドに連結するように構成しているので、コールドヘッド
を装備した液化ガス貯蔵容器の重量はバランサ装置によ
って受け持たれることになるから、リトラクトレールに
作用する液化ガス貯蔵容器の重量を軽減でき、移動時の
負荷を一定にすることができる。これにより、電子顕微
鏡本体に取り付けるリトラクトレールの構造を簡素化す
ることができる。

【０００９】

【実施例】図面は本考案の実施例を示し、図１は電子顕
微鏡への液化ガス貯蔵容器の取付け状態を示す概略構成
図、図２は液化ガス容器支持装置の要部取出図である。
図において符号(１)は本体部分(２)を床面にスプリング
等の振動吸収体を介して支持させた電子顕微鏡であり、
(３)は底壁からコールドフィンガーを導出したＥＤＳ冷
却用液化ガス貯蔵容器であり、この液化ガス貯蔵容器
(３)は電子顕微鏡(１)の本体部分(２)に相対移動可能な
状態で支持されている。

【００１０】すなわち、電子顕微鏡(１)の本体部分(２)
から突設したリトラクトレール補強サポート(４)にリト
ラクトレール(５)を固定し、このリトラクトレール(５)
に走行台(６)をネジ式移動装置等の移動機構でリトラク
トレール(５)に沿って走行移動可能な状態で配置し、こ
の走行台(６)に液化ガス貯蔵容器(３)を載置固定するこ
とにより、液化ガス貯蔵容器(３)を電子顕微鏡(１)の本
体部分(２)に対してリトラクト移動可能に構成してあ
る。

【００１１】符号(７)は液化ガス貯蔵容器(３)の上端開
口部(８)に極低温冷凍機のコールドヘッド(９)を配置す
るための支持板であり、この支持板(７)には極低温冷凍
機のコールドヘッド(９)がそのコールドエンド部分を下
側に突出させた状態で固定してある。そして、このコー
ルドエンド部分を液化ガス貯蔵容器(３)の容器内部に突
入させる状態で支持板(７)を液化ガス貯蔵容器(３)の上
端開口部(８)に装着し、支持板(７)と液化ガス貯蔵容器
(３)との間を容器連結固定具(11)で固定している。連結
固定具(11)は、液化ガス貯蔵容器(３)の胴部に巻き付い
ている帯板リング(12)と、この帯板リング(12)と支持板
(７)とを連結する複数の連結杆(13)と、ターンバックル
(14)とで構成してある。帯板リング(12)は液化ガス貯蔵
容器(３)の胴部で周方向に形成されている溶接ビードの
下側部分に嵌着しており、連結杆(13)はターンバックル
(14)の締め込みによって支持板(７)を液化ガス貯蔵容器
(３)側に牽引するように作用している。

【００１２】したがって、ターンバックル(14)の締め込
み力で帯板リング(12)が溶接ビードの下周縁に受け止め
られ、支持板(７)が液化ガス貯蔵容器(３)に押し付けら
れることになるから、支持板(７)は液化ガス貯蔵容器
(３)の開口部(８)に圧着固定されることになる。なお、
この連結杆(13)は極低温冷凍機を運転停止することによ
り、液化ガス貯蔵容器(３)内の内圧が上昇した際でも支
持板(７)を液化ガス貯蔵容器(３)に所定の接当力以上の
力で押し付けることのできるようにしてある。

【００１３】この液化ガス貯蔵容器(３)は電子顕微鏡
(１)の近傍部分で電子顕微鏡(１)とは別に立設した支柱
(15)に吊持されている。この液化ガス貯蔵容器(３)の支
持構造は、支柱(15)の上端部に水平２軸リニアガイド機
構(16)を介して走行支持台(17)を配置し、この走行支持
台(17)の下面に渦巻きバネ式のバランサ装置(18)を支持
し、このバランサ装置(18)から導出している渦巻きバネ
(19)の一端部を液化ガイド貯蔵容器(３)に装着されてい
る極低温冷凍機のコールドヘッド(９)に連結してある。

【００１４】そして、このバランサ装置(18)はコールド
ヘッド重量、液化ガス貯蔵容器(３)の重量及び貯蔵され
ている液化ガス重量の総和とバランスさせるようにして
ある。また、バネ式バランサ装置(18)は支柱(15)を介し
て液化ガス貯蔵容器(３)に伝達される床振動を吸収し、
電子顕微鏡(１)の揺動に対して吸収平衡する機能を備え
ている。なお、バランサ装置(18)の渦巻きバネ(19)の先
端部をコールドヘッド(19)にワイヤ線等を介して連結す
るように構成してもよい。

【００１５】水平２軸リニアガイド機構(16)は支柱(15)
の上端面に前後調整機構(20)を介して前後移動ガイドレ
ール(21)を固定し、この前後移動ガイドレール(21)で案
内される走行板(22)の上面に左右移動ガイドレール(23)
を固定し、この左右移動ガイドレール(23)に案内される
状態で前記走行支持台(17)が載置してある。そして、走
行板(22)と前後移動ガイドレール(21)との間及び左右移
動ガイドレール(23)と走行支持台(17)との間にはベアリ
ング等が介装してあり、走行支持台(17)は円滑にＸ−Ｙ
方向に軽く移動出来るようにしてある。また、支柱(15)
はその上端部に配置した水平２軸リニアガイド機構(16)
の配設高さを調整できるように伸縮可能に構成してあ
る。図中符号(24)は液化ガス貯蔵容器(３)内での液化ガ
ス量を表示する液面計、(25)は液化ガス貯蔵容器(３)内
の圧力を表示する圧力計、(26)は支柱(15)の基部に配置
した極低温冷凍機の制御ボックス、(27)は極低温冷凍機
の圧縮機ユニット(図示略)からコールドヘッド(９)に冷
媒ガスを供給するフレキシブルホースである。

【００１６】なお、上記実施例の極低温冷凍機は、電子
顕微鏡(１)の操作時には極低温冷凍機運転に伴う振動が
ＥＤＳ検出器や電子顕微鏡(１)に伝達されることがない
ように運転を停止し、電子顕微鏡(１)の非操作時に極低
温冷凍機を運転して、気化ガスを凝縮及び液温を降下で
きるようにその運転モードを制御している。

【００１７】

【考案の効果】本考案では、電子顕微鏡の本体近傍に高
さ調節可能に形成した支柱を立設し、この支柱の上端に
水平２軸リニアガイド機構を介して走行支持台を配置
し、この走行支持台に支持されている渦巻きバネ式バラ
ンサ装置の渦巻きバネの一端を液化ガス貯蔵容器に装着
されている極低温冷凍機のコールドヘッドに連結するよ
うに構成しているので、コールドヘッドを装備した液化
ガス貯蔵容器はバランサ装置での釣り合い力によって吊
持たれることになるから、リトラクトレールに作用する
液化ガス貯蔵容器の重量を軽減でき、移動時の負荷を一
定にすることができる。これにより、電子顕微鏡本体に
取り付けるリトラクトレールの構造を簡素化することが
できる。

【００１８】しかも、バランサ装置は、２軸リニアガイ
ド機構により水平面内を自由に移動することができるか
ら、電子顕微鏡本体の首振り揺動に伴いリトラクトレー
ルに支持されている液化ガス容器が移動することがあっ
ても、液化ガス容器の移動に追従して走行支持台が水平
移動するから、リトラクトレールに無理な力が作用する
ことがなく、リトラクトレールと電子顕微鏡本体部分と
の取り合い部分も無理な力が作用することがなくなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】電子顕微鏡への取り付け状態を示す概略構成図
である。

【図２】液化ガス容器支持装置の要部取出図である。

【図３】液化ガス容器支持装置の要部取出分解斜視図で
ある。

【符号の説明】

１…電子顕微鏡、 ２…電子顕微鏡
の本体部分、３…液化ガス貯蔵容器、 ５
…リトラクトレール、８…液化ガス貯蔵容器の上端開口
部、 ９…極低温冷凍機のコールドヘッド、15…支柱、
16…水平２軸リニアガイド機構、17…走行支
持台、 18…バランサ装置、19…渦巻きバ
ネ。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 近藤 文五 滋賀県守山市勝部町1095番地 イワタニプ ランテック株式会社滋賀工場内 (72)考案者 川口 悦治 滋賀県守山市勝部町1095番地 イワタニプ ランテック株式会社滋賀工場内

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 電子顕微鏡(１)の本体部分(２)にリトラ
   クトレール(５)を介してＥＤＳ検出器冷却用液化ガス貯
   蔵容器(３)を支持させ、この液化ガス貯蔵容器(３)の上
   端開口部(８)に極低温冷凍機のコールドヘッド(９)を装
   着したＥＤＳ検出器冷却用液化ガス蒸発防止装置におい
   て、 電子顕微鏡(１)の本体近傍に高さ調節可能に形成した支
   柱(15)を立設し、この支柱(15)の上端に水平２軸リニア
   ガイド機構(16)を介して走行支持台(17)を配置し、この
   走行支持台(17)に渦巻きバネ式バランサ装置(18)を支持
   し、バランサ装置(18)から導出した渦巻きバネ(19)の先
   端部を液化ガス貯蔵容器(３)に装着されている極低温冷
   凍機のコールドヘッド(９)に接続したことを特徴とする
   ＥＤＳ検出器冷却用液化ガス蒸発防止装置。
2. 【請求項２】 水平２軸リニアガイド機構(16)を前後位
   置調節可能に形成した請求項１に記載のＥＤＳ検出器冷
   却用液化ガス蒸発防止装置。