JPH07264978A - 加糖練乳様組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 カロリーを低減し、風味、粘度特性を損なう
ことなく、乳糖結晶の起こらない保存性の良好な加糖練
乳様組成物を得る。 【構成】 乳類に還元澱粉糖化物および／または糖アル
コールを添加し、必要に応じて濃縮を行うことにより加
糖練乳様組成物を得る。さらに水分活性を０．９以下に
調整すれば、保存性の良好な加糖練乳様組成物を得るこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、加糖練乳と同様な官能
特性および流動性を有する加糖練乳様組成物、特にカロ
リーが低減され、保存性が良好な加糖練乳様組成物に関
する。

【０００２】

【従来の技術】従来、加糖練乳は、牛乳に砂糖を多量に
添加し、加熱濃縮し、固形分を高めることにより、特有
の風味と糸を曳き重量感のある独自の粘性および保存性
を得ている。加糖練乳は砂糖を４０重量％以上と非常に
多量に含有しているため、カロリーが概略３２４ｋｃａ
ｌと高く、肥満防止や糖類摂取の制限の観点から敬遠さ
れることが多くなってきている。また砂糖は虫歯の原因
になり易いため、虫歯予防の観点からも問題視され、練
乳の消費量は年々少なくなっている。加糖練乳組成物と
しては、脂肪を乳化することによりクリームの様な粘性
を付与した製品が市販されているが、脂肪は１ｇあたり
９ｋｃａｌと高カロリーなので肥満防止の観点からは好
ましくない。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の練乳
と同様な豊かな甘味と糸を曳く独特な粘性を有し、かつ
保存性が優れ、カロリーが２４０ｋｃａｌ以下、好まし
くは１６２ｋｃａｌ（従来の練乳の１／２) に低減され
た加糖練乳様組成物を得ることを課題とする。

【０００４】

【課題を解決しようとする手段】本発明者らは、長年の
練乳製造の経験を生かし、カロリーを低減させるために
低カロリー糖質および甘味剤を多数検討した結果、還元
澱粉糖化物と糖アルコールをそれぞれ単独かまたはこれ
らを組み合わせることにより、練乳独自の粘性と好まし
い甘味を併せ持ち、かつカロリーが大幅に低減され、保
存性の優れた加糖練乳様組成物が得られることを見い出
し本発明を完成させるに至った。したがって、本発明で
は、高分子粘質物や蔗糖や砂糖などの糖を全く加える必
要がない。すなわち、乳類に還元澱粉糖化物および／ま
たは糖アルコールを添加してなる加糖練乳様組成物であ
る。本発明は、また乳類に還元澱粉糖化物および／また
は糖アルコールを添加し、水分活性値を０．６〜０．９
にしてなる保存性の良好な加糖練乳様組成物である。さ
らに本発明は、還元澱粉糖化物が、還元水飴または還元
麦芽糖水飴であり、糖アルコールが、エリスリトール、
ソルビトール、マンニトール、ラクチトールまたはマル
チトールであって、これらの中から１種もしくは２種以
上選択される前記加糖練乳様組成物、また水分活性値が
０．６〜０．９の前記保存性の良好な加糖練乳様組物で
ある。

【０００５】本発明では、乳に還元澱粉糖化物と糖アル
コールをそれぞれ単独に加えるかまたはこれら両者を混
合し、保存性を要求する場合は、水分活性が０．９以
下、好ましくは０．８５以下になるまで濃縮することに
よりカロリーの低減された加糖練乳様組成物を得る。本
発明の由来する乳は牛、山羊、羊、水牛、鯨などの動物
から搾乳されるものが使用される。乳類としては、前記
の乳から得られる生乳、脱脂乳、濃縮乳、還元乳などを
単独で用いるか、２種以上を組み合せて用いればよい。
そして、乳を加工して得られた全粉乳、脱脂粉乳、クリ
ーム、バター、バターオイル、カゼインやホエー蛋白な
どの乳蛋白質、乳糖などを用いて乳を再構成して濃縮し
てもよく、濃縮処理しないですむように、目的の濃度に
なるように構成してもよい。

【０００６】還元澱粉糖化物としては、澱粉類を単糖か
ら１０糖程度に加水分解し、いわゆる水飴とした後、還
元末端を還元し、糖アルコールとしたものを用いる。こ
れは、還元水飴、還元澱粉糖化物、還元麦芽糖水飴とし
て多種市販されているのでこれらを用いればよい。これ
らは粉状、液状を問わない。

【０００７】澱粉の加水分解物を還元すると小腸で吸収
されにくくなり、低カロリー糖質となる。澱粉類を２糖
に加水分解したもの、すなわち麦芽糖（マルトース）を
例にとれば、還元によりマルチトールとなり小腸では吸
収されなくなる。ただし、大腸において腸内細菌の醗酵
を受け短鎖脂肪酸が生成されるため多少人体のエネルギ
ー源となり、マルチトール１ｇあたり１．８ｋｃａｌと
なるが、これは砂糖の４５％でありカロリーの低減化に
寄与する。澱粉類を３糖以上に加水分解したものでは還
元してもマルチトールよりカロリーは多少高くなる。カ
ロリー低減の意味ではマルチトールの純品を用いること
が望ましいが、多少３糖や、４〜１０糖の混在したもの
の方が価格が安く、経済的である。

【０００８】糖アルコールとしてはマルチトール、エリ
スリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトー
ルなどが使用できる。これらは、砂糖に比べて低カロリ
ーであるのでカロリーを低減できるが、カロリーのほと
んどないエリスリトールがもっとも好適に使用できる。
本発明では、このように還元澱粉糖化物と糖アルコール
をそれぞれ単独であるいは組み合せて用いるが、いずれ
の場合も水分活性を０．６〜０．９、好ましくは０．７
〜０．８５に低下させるのに充分な量を用いる。

【０００９】一例をあげれば、生乳に還元水飴（固形分
７０重量％）６８重量％およびエリスリトール８重量％
を添加すれば水分活性を０．８５以下に低下させること
ができる。水分活性が０．９を超えると、微生物の繁殖
が容易となり常温で流通させることはできなくなる。水
分活性０．８５以下では、殆どの微生物が増殖するのに
充分ではなく、常温での流通が可能となる。水分活性
０．６未満にすると、結晶化が起こったり流動性が損な
われたりすることがある。

【００１０】本発明に用いる乳類として、濃縮乳や高濃
度に還元した還元乳を用いる場合は、還元澱粉糖化物お
よび／または糖アルコールを添加した時点で水分活性が
０．９以下になるので、この場合は濃縮を行う必要はな
い。通常の練乳製造のように、生乳や脱脂乳など固形分
の低い乳を用いる場合は濃縮を行う必要がある。濃縮に
は、練乳の製造に良く使われる、ビーガント濃縮機やシ
ングルパンを用いることができるが、特に限定はされな
い。濃縮の程度は、通常ブリックス測定により制御する
が、所望とする配合において水分活性が充分低くなるブ
リックスをあらかじめ求めておき、これにより濃縮の程
度を制御すると便利である。

【００１１】通常の加糖練乳製造においては、乳糖結晶
が析出するのを防ぐため、シーディングを行なってい
る。しかし、本発明においては還元澱粉糖化物あるいは
糖アルコールが乳糖などの糖類の結晶化を防ぐためシー
ディングは必要がなく作業上都合がよい。したがって、
本発明は乳糖結晶が起こらないという利点も有する。

【００１２】

【実施例】次に実施例を示し、本発明を具体的に説明す
る。

【００１３】（実施例１）生乳（乳脂肪３．３重量％、
乳固形１２．０重量％）１００ｋｇに、還元澱粉糖化物
（固形分70重量％、カロリー１．５ｋｃａｌ／ｇ）６８
ｋｇ、エリスリトール８ｋｇを添加し、９０℃の温度で
２分間保持し殺菌を行い、ビーガント濃縮機によりブリ
ックスが６７％になるまで濃縮を行い、加糖練乳様組成
物１００ｋｇを得た。得られた加糖練乳様組成物は水分
活性が０．８４５と低く、常温で６カ月保存しても風味
の劣化や物性の変化は見られなかった。また、カロリー
は、還元澱粉糖化物のカロリーを１．５ｋｃａｌ／ｇ、
エリスリトールのカロリーを０ｋｃａｌ／ｇとして計算
すると、１６１ｋｃａｌ／１００ｇと通常品の半分程度
になっていた。

【００１４】（実施例２）全脂粉乳６ｋｇ、バターミル
クパウダー６ｋｇを水３０．４ｋｇに溶解し、還元乳４
２．４ｋｇを得た。これに、粉末マルチトール４７．６
ｋｇ、エリスリトール１０ｋｇを溶解し９０℃の温度で
２分間保持し殺菌を行い加糖練乳様組成物を得た。得ら
れた加糖練乳様組成物は水分活性０．８０１と充分低く
常温で６ヶ月保存しても微生物の増殖は勿論、風味の劣
化も生じなかった。また、カロリーは粉末マルチトール
のカロリーを１．８ｋｃａｌ／ｇ、エリスリトールのカ
ロリーを０ｋｃａｌ／ｇとして計算すると１４５ｋｃａ
ｌ／１００ｇと通常品の４５％以下になっていた。

【００１５】（実施例３）全脂粉乳１０．９ｋｇを水１
８．３ｋｇに溶解し還元乳 (固形分３７．３％)を得
た。これに、脱脂乳（固形分８．６％) １３．２ｋｇを
混合し、還元乳と脱脂乳の混合物 (固形分２８．４％)
４２．４ｋｇを得た。これに粉末マルチトール５７．６
ｋｇを溶解し１１０℃の温度で２分間保持し殺菌を行い
加糖練乳様組成物を得た。得られた加糖練乳様組成物は
水分活性０．８１２と充分低く常温で６ヶ月保存しても
微生物の増殖は勿論、風味の劣化も生じなかった。ま
た、カロリーは粉末マルチトールのカロリーを１．８ｋ
ｃａｌ／ｇとして計算すると１６３ｋｃａｌ／１００ｇ
と通常品の半分程度になっていた。

【００１６】（実施例４）生乳 (乳脂肪３．７９％、無
脂乳固形８．６６％）８９．６ｋｇ、脱脂乳 (乳脂肪
０．０６％、無脂乳固形８．９１％）９．４ｋｇを混合
し、調整乳 (固形分１２．１％) ９９kgを得た。これに
還元澱粉糖化物 (固形分７０％) ８５．７ｋｇを溶解
し、１００℃の温度で２分間保持し殺菌を行いビーガン
ト濃縮機によりブリックスが７２になるまで濃縮を行っ
た。得られた加糖練乳様組成物は水分活性０．８２３と
充分低く常温で６ヶ月保存しても微生物の増殖は勿論、
風味の劣化も生じなかった。また、カロリーは還元澱粉
糖化物のカロリーを１．５ｋｃａｌ／ｇとして計算する
と１８８ｋｃａｌ／１００ｇと通常品の５８％となって
いた。

【００１７】（比較例）生乳 (乳脂肪３．７９％、無脂
乳固形８．６６％）８９．６ｋｇ、脱脂乳 (乳脂肪０．
０６％、無脂乳固形８．９１％）９．４ｋｇを混合し、
調整乳 (固形分１２．１％) ９９ｋｇを得た。これに還
元澱粉糖化物 (固形分７０％) ５７ｇを溶解し、１００
℃の温度で２分間保持し殺菌を行いビーガント濃縮機に
よりブリックスが５０になるまで濃縮を行った。得られ
た加糖練乳様組成物は、カロリーが通常品の４５％とな
っていたものの、水分活性０．９２５と高く常温で１週
間保存しただけで、微生物の増殖がみられ腐敗臭を発し
た。

【００１８】

【発明の効果】本発明によれば、還元澱粉糖化物と糖ア
ルコールをそれぞれ単独または組み合わせて用いること
により、練乳独自の粘性と好ましい甘味を併せ持ち、保
存性に優れ、かつカロリーが大幅に低減された加糖練乳
様組成物が得られる。

【００１９】また、還元澱粉糖化物あるいは糖アルコー
ルが乳糖などの糖類の結晶化を抑制する効果をも有し、
通常練乳の様にシーディングを行うなど煩雑な作業を必
要としないので、製造上も極めて簡便かつ実用的であ
る。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 乳類に還元澱粉糖化物および／または糖
   アルコールを添加してなる加糖練乳様組成物。
2. 【請求項２】 乳類に還元澱粉糖化物および／または糖
   アルコールを添加し、水分活性値を０．６〜０．９にし
   てなる保存性の良好な加糖練乳様組成物。
3. 【請求項３】 還元澱粉糖化物が、還元水飴または還元
   麦芽糖水飴であり、糖アルコールが、エリスリトール、
   ソルビトール、マンニトール、ラクチトールまたはマル
   チトールであって、これらの中から１種もしくは２種以
   上選択される請求項１または２に記載の加糖練乳様組成
   物。