JPH07262909A - 光電子放射陰極、光電変換電子管およびスペクトル測定装置 - Google Patents

光電子放射陰極、光電変換電子管およびスペクトル測定装置

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JPH07262909A
JPH07262909A JP4948094A JP4948094A JPH07262909A JP H07262909 A JPH07262909 A JP H07262909A JP 4948094 A JP4948094 A JP 4948094A JP 4948094 A JP4948094 A JP 4948094A JP H07262909 A JPH07262909 A JP H07262909A
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photoelectron
emission cathode
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宜彦 水島
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徹 廣畑
Hisanobu Takamoto
尚宜 高本
Koji Tsuchiya
広司 土屋
Minoru Aragaki
実 新垣
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、限界波長の制御を精度良く行うこ
とができる光電子放射陰極を提供することを目的とす
る。 【構成】 オーミック電極(25)とショットキー電極
(24)間の印加バイアスを調整して、電子放射層(2
3)内の電界を充分に高くし、電子放射層(23)内に
注入された光電子に対しての電子放射効率を1になるよ
うにすることにより、さらに印加バイアスを高くした結
果広がる空乏層厚に対応して、波長の短い方の光(光子
エネルギーの高い方の光)から順次光電子放射させるこ
とができ、限界波長を所望の値に制御することができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、限界波長を制御できる
光電子放射陰極と、この光電子放射陰極を備えた光電変
換電子管と、この光電変換電子管を備えたスペクトル測
定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、このような分野の技術としては、
特公昭52−18550公報のものが知られている。こ
の文献には、図27に示すようにバンドギャップエネル
ギーの異なる複数の半導体層211〜213で光吸収層
210を構成し、バイアスの印加で光吸収層間に形成さ
れる障壁を変化させて限界波長を制御する光電子放出陰
極200について記載されている。
【0003】また、イギリス特許出願公開明細書第GB
2167227A号のものが知られている。この文献に
は、図28に示すようなバンド構造の光吸収層310を
形成し、伝導体の電子を光励起し、光励起された電子が
越えなければならない障壁の高さをバイアスの印加によ
り制御することにより限界波長を制御する光電子放出陰
極300について記載されている。
【0004】さらに、分野を光電子放射陰極だけでな
く、フォトダイオードにまで広げてみると、特開平2−
96383公報のものが知られている。この文献には、
図29に示すようにエネルギーバンドが半導体層410
の厚み方向に異なる構造の光吸収層420を形成し、光
吸収層420に印加するバイアスにより限界波長を制御
するフォトダイオード400が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように従来の光電
子放射陰極200,300は、いずれも光吸収層21
0,310にバイアスを印加して限界波長を制御してい
た。今、バイアス電圧がV1 のときの限界波長をλ1
バイアス電圧がV2 のときの限界波長をλ2 とし、バイ
アス電圧のV1 からV2 への変化に対応して光電子放射
電流がI1 からI2に変化するものとする。ここで、バ
イアス電圧のV1 からV2 への変化に合わせて限界波長
だけが変化し、もともと光感度があったλ1 よりも短波
長側の光感度が全く変らない場合には、光電流の変化分
(I2 −I1 )は全て波長(λ2 −λ1 )領域の光に対
しての光電子放射電流とみることができる。このため、
所望の分解能で制御電圧を変化させて、電流変化分を求
めれば光の分光検出が可能になる。
【0006】ところが、従来の光電子放射陰極200,
300は、限界波長を制御するために印加バイアスを変
化させた場合、限界波長は変化するものの、同時に、も
ともと光感度が有った短波長側の光感度まで変化してし
まう。このため、光電流の変化分から波長(λ2
λ1 )領域の光強度を算出することは困難であった。し
たがって、光電流の変化分を単純に波長(λ2 −λ1
領域の光に対応させて算出すると、算出結果に多くの誤
差を含むこととなる。このような問題はフォトダイオー
ド400についても同様に存在する。
【0007】本発明は、このような問題を解決して、限
界波長の制御を精度良く行うことができる光電子放射陰
極を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、第1の発明の光電子放射陰極は、半導体基板と、半
導体基板上に形成され半導体基板から離れるにしたがっ
てバンドギャップ幅が大きいp型光吸収層と、p型光吸
収層上に形成されp型光吸収層との接合面の伝導帯の最
小点と充満帯の最大点がほぼ同一で層内のバンドギャッ
プ幅がほぼ均一な遷移放射層と、半導体基板のp型光吸
収層が形成された面の裏面に形成されたオーミック電極
と、遷移放射層上に形成されたショットキー電極とを備
える。
【0009】ここで、p型光吸収層にはGax In
(1-x) y As(1-y) または(Alx Ga(1-x) y
(1-y) Asで表すことができる化合物半導体が用いら
れていてもよい。また、遷移放射層にはIII −V族化合
物半導体とその混晶半導体、またはII−VI族化合物半導
体とその混晶半導体が用いられていてもよく、遷移放射
層の厚さは、0.3μm以上1.5μm以下であっても
よい。さらに、ショットキー電極が形成されていない遷
移放射層の表面にアルカリ金属、アルカリ金属の酸化
物、またはアルカリ金属のフッ化化合物が塗布されてい
てもよい。
【0010】また、第2の発明の光電変換電子管は、上
述した第1の発明の光電子放射陰極と、光電子放射陰極
から放出された光電子を収集する電子収集陽極と、光電
子放射陰極および電子収集陽極を収納する真空容器と、
光電子放射陰極のオーミック電極とショットキー電極間
の印加バイアスを制御する電圧制御手段とを備える。こ
こで、光電変換電子管には、光電管、光電子増倍管など
がある。
【0011】さらに、第3の発明のスペクトル測定装置
は、上述した第2の発明の光電変換電子管と、電圧制御
手段により変化する印加バイアスの変化量とこの変化量
に応じた光電子放射電流の変化量とから入射光のスペク
トルを解析する解析手段とを備える。
【0012】
【作用】第1の発明の光電子放射陰極によれば、光電子
のエネルギーを真空エネルギー以上に加速励起する領域
として遷移放射層が設けられている。この遷移放射層は
バンドギャップ幅がほぼ一定なので、ショットキー電極
へのバイアス印加により広がる空乏層がこの遷移放射層
内にある間は、印加バイアスを高くしても光電子放射限
界波長は変わらない。しかし、印加バイアスが高くなる
ことによって遷移放射層内の電界は強くなり、電子放射
効率が良くなる。
【0013】さらに、ショットキー電極への印加バイア
スが高くなると空乏層内の加速電界からエネルギーを得
て、サテライトバンド(L或いはX伝導帯)への電子の
励起が可能となる。サテライトバンドから見れば真空準
位は低エネルギー側にあり、これ以上に印加バイアスを
高くしても電子の真空脱出確率は変化しない。したがっ
て、これ以上に印加バイアスを高くした結果広がる空乏
層厚に対応して、p型光吸収層で発生した光電子の内、
波長の短い方(光子エネルギーの高い方)から順次光電
子放射させることができる。このため限界波長を所望の
値に制御することができる。
【0014】ここで、遷移放射層の厚さは、あまり薄い
と遷移層最深部から表面まで走行した光電子ですら充分
にサテライトバンドへ励起することができない。また厚
すぎると、吸収層へ空乏層を広げるために必要な印加バ
イアスが高くなり、ショットキー耐圧や暗電流放射を考
えた場合不利になる。したがって、遷移放射層の厚さ
は、0.3μm以上1.5μm以下がよい。
【0015】さらに、傾斜型バンド構造を持つ光吸収層
と半導体基板、並びに遷移放射層との間で結晶格子整合
が取れていることが重要である。さもないと、格子歪に
よる欠陥準位が発生し、少数キャリアの寿命を著しく短
くし、サテライトバンドへの電子の遷移を不可能とす
る。したがって、III −V族化合物半導体であるInP
を遷移放射層にした場合には、光吸収層としてはGax
In(1-x) y As(1-y) 或いは(Alx Ga(1-x)
y In(1-y) Asなどを用いることがよい。もちろんこ
の組合せに限定されるものではなく、GaAsと(Al
x Ga(1-x) yIn(1-y) Pの組合せなどでもよい。
また、III −V族化合物半導体だけでなく、ZnSなど
のII−VI族化合物半導体でもこのような組合せが存在
し、これを用いてもよい。
【0016】また、第2の発明の光電変換電子管によれ
ば、電圧制御手段によって光電子放射陰極のオーミック
電極とショットキー電極間に印加されるバイアスを変化
させることにより、光電子放射陰極に形成される空乏層
厚を変えることができる。空乏層厚の変化に伴って限界
波長が変化し、電子収集陽極に収集される光電子量(光
電子放射電流)は限界波長の変化により変動する。よっ
て、この光電子放射電流の変動分を測定することによ
り、容易に波長領域の光強度を算出することができる。
【0017】さらに、第3の発明のスペクトル測定装置
によれば、電圧制御手段によって光電子放射陰極のオー
ミック電極とショットキー電極間の印加バイアスを変化
させれば、電子収集陽極を流れる光電子放射電流も変化
する。印加バイアスの変化量および光電子放射電流の変
化量は解析手段に与えられ、事前に解明された印加バイ
アス量と限界波長の関係から入射光のスペクトルが解析
される。
【0018】
【実施例】以下、第1〜第3の発明の実施例について添
付図面を参照して説明する。
【0019】図1は、第1の実施例に係る光電子放射陰
極を備えた光電管の構造を示す斜視図である。同図より
この光電管は、金属の支持板10上に第1の実施例に係
る光電子放射陰極20が取り付けられ、その前方に棒状
の電子収集陽極30が配置されている。支持板10、電
子放射陰極20および電子収集陽極30はガラスバルブ
40で真空封入されている。
【0020】光電子放射陰極20は、p型InPの半導
体基板21の上面に、傾斜型バンド構造を持つp型のG
x In(1-x) y As(1-y) の光吸収層22と、III
−V族化合物半導体であるp型InPの遷移放射層23
と、Ni電極24とを順次形成したもので、Ni電極2
4はショットキー接合をなしている。また、半導体基板
21の裏面には、Au−Ge合金からなる電極25が形
成されており、電極25はオーミック接合をなしてい
る。電極25は金属板10に電気的に接触しており、金
属板10には端子導線50が取り付けられている。さら
に、Ni電極24には端子導線51が取り付けられてい
る。端子導線50,51と電子収集陽極30はガラスバ
ルブ40の外部に引き出され、端子導線50と端子導線
51の間にバイアス電源60が接続されている。また、
電子収集陽極30と端子導線51の間に、高圧電源70
と電流計71が挿入されている。
【0021】光吸収層22は、全領域で格子定数がIn
Pの5.87Åと一致し、バンドギャップエネルギーが
0.72eVから遷移放射層23との接合面に近づくに
つれて大きくなるように形成されている。さらに遷移放
射層23との接合面ではInPと同じ1.35eVにな
るようにGax In(1-x) y As(1-y) のx,yの値
が調整されている。ここで、xはガリウムとインジウム
の組成比を示す1以下の数であり、yは燐とヒ素の組成
比を示す1以下の数である。x,yの具体的な値は図2
の組成図に示されている。同図より、格子定数5.87
Åを示す短破線上のx,yの組合せは、最表面側でx=
0,y=1、また再深部でx=0.47,y=0であ
る。
【0022】次に、Ni電極24の具体的な構造を図3
に示す。同図より、Ni電極24は遷移放射層23の上
にメッシュ状に形成され、窓部から光電子が放出可能と
なっている。Ni電極24の厚さは300Åである。
【0023】半導体基板21の不純物濃度は、オーミッ
ク接合が形成し易いように高濃度がよいが、あまり濃度
が高いと光吸収層22を形成する際に、光吸収層22に
不純物拡散が起こり易くなる。このため1018cm-3
度の不純物濃度が最適である。また光吸収層22の不純
物濃度は、光吸収層22に遷移放射層23側から容易に
空乏層が広がるように5×1015cm-3程度の低濃度が
最適である。遷移放射層23の不純物濃度は、ショット
キー接合が形成し易いように1×1016cm-3程度が最
適である。また、半導体基板21の厚さは350μm、
光吸収層22の厚さは5μm、遷移放射層23の厚さは
1μmである。遷移放射層23は、層厚があまりに薄い
と電子が電界加速により充分エネルギーを得る前に表面
に達してしまうため、電子放射が不可能になってしま
う。また、層厚があまりに厚すぎると、空乏化させるた
めに必要なバイアス電圧が高くなり過ぎる。従って、遷
移放射層23の不純物濃度にも依存するが、概ね0.3
〜1.5μm程度の層厚が最適である。さらに図には示
していないが、Ni電極24の表面および電極の窓より
露出した遷移放射層23の表面には、数原子層程度のC
s金属の酸化物が塗布されている。
【0024】図4(a)(b)は、光電子放射陰極20
にバイアスを印加した状態のバンド図である。ここで、
図4(a)のバンド図における印加バイアスは2V、図
4(b)のバンド図における印加バイアスは10Vであ
る。図4(a)に示す2Vバイアス時には、λ1 〜λ3
を持つ光hν1 〜hν3 の光照射によって光吸収層22
で光電子e1 〜e3 が発生する。しかし、発生した光電
子e1 〜e3 のいずれにもドリフト電界が印加されない
ので、遷移放射層23から光電子が放射されることはな
い。図4(b)に示す10Vバイアス時には、光吸収層
22で発生した光電子e3 に対してドリフト電界が印加
され、遷移放射層23との接合面方向に加速される。そ
して、遷移放射層23内でサテライトバンドEsat へ励
起され、光電子e3 はサテライトバンドEsat から光電
子放射される。
【0025】次に、光電子放射陰極20への印加バイア
スとNi電極24から広がる空乏層厚みの関係を図5
(a)に示す。また、光電子放射限界光子エネルギーと
空乏層厚みとの関係を図5(b)に示す。ここに示され
た両者の特性によって、印加バイアスと限界光子エネル
ギーとの関係が一義的に決定される。図5(a)より、
空乏層厚みが1μmより厚くなるとバイアスが印加され
始め、4μmを越えたあたりから印加バイアスが増大す
ることが判る。また、図5(b)より、空乏層がない状
態の限界光子エネルギーは1.6eVであるが、空乏層
が形成され厚くなるに従って、限界光子エネルギーが低
くなることが判る。
【0026】光電子放射陰極20に、図5(c)に示さ
れるようなスペクトルを持つ光を照射し、高圧電源70
から供給されるバイアス電圧を0Vより順次増加させて
いった場合、光電子放射電流の変化は、図5(d)に示
すものになる。同図に示すようにステップ状に電流が変
化しているのは、λ1 、λ2 、λ3 という離散的なスペ
クトルを持つ光の照射によって、特定のバイアスのとこ
ろで、λ3 、次にλ2、そしてλ1 と順次光電子放射が
発生しているからである。
【0027】次に、図6および図7を用いて、本実施例
の動作原理を説明する。図6,7は、光電子放射陰極2
0のバンド図である。電極に印加するバイアスが高くな
るに従って、ショットキー空乏層の厚みは広くなり、且
つショットキー空乏層内の電界は増加する。例えば3つ
の波長からなる光が光電子放射陰極20に照射された場
合、光吸収層22で照射光が吸収され光電子e1 〜e3
が発生する。光吸収層22は、遷移放射層23との接合
面から半導体基板21との接合面に向けてバンドギャッ
プエネルギーが小さくなっているため、長波長の光(光
子エネルギーの小さな光)ほど遷移放射層23との接合
面から深いところで吸収されて、光電子が発生する。
【0028】バイアスがわずかに印加された状態A(図
6(a)参照)では、空乏層は遷移放射層23内のNi
電極24との接合面にしか広がっていない。このため、
光吸収層22で発生した光電子e1 〜e3 のいずれも遷
移放射層23方向には運ばれずに、光吸収層22内で再
結合され消滅する。よって、状態Aでは遷移放射層23
から光電子が放射されることはない。
【0029】印加バイアスが高くなった状態B(図6
(b)参照)では、空乏層が遷移放射層23全体に広が
り、遷移放射層23内の電界が充分に高くなっている。
しかし、光吸収層22までは空乏層は広がっていないの
で、光吸収層22内にドリフト電界が印加されることは
ない。このため、光吸収層22で発生した光電子e1
3 のいずれも遷移放射層23方向には運ばれず、遷移
放射層23への電子注入がないため真空放射は生じな
い。
【0030】さらに電界が高くなった状態C(図7
(c)参照)では、光電子e3 には遷移放射層23方向
にドリフト電界が印加されている。このため、光電子e
3 は遷移放射層23方向に移動して、遷移放射層23に
注入される。注入された光電子e3 は、電界加速により
運動エネルギーを得て通常電子が走行するΓ帯よりも更
に高エネルギー側にあるサテライトバンド(L或いはX
帯)に励起される。サテライトバンドから見れば真空準
位は低エネルギー側にあり、電子放射効率がほぼ1で真
空放射される。
【0031】さらに電界を上げた状態D(図7(d)参
照)では、空乏層は更に広がり、光電子e2 に対しても
ドリフト電界が印加され、光電子e2 も光電子放射され
る。
【0032】遷移放射層23内の電界は、状態Dでさら
に高くなっているが、状態Cで既に電子の放射効率が1
に達しているので、光電子e3 の放射効率は状態Cと変
らない。また光電子e2 に対しても放射効率1で真空放
射される。従って、状態Cから状態Dへのバイアス電圧
の変化に対応して観測される光電子放射電流の変化は、
まさに光電子e2 の寄与に基づくものであり、つまりは
λ2 の波長の光量に対応している。状態Dでは未だ光電
子e1 にはドリフト電界が印加されず、光電子放射され
ない。
【0033】このように、遷移放射層23内の電界を充
分高くし、遷移放射層23内に注入された電子に対して
電子放射効率が1になるようにしておけば、さらにバイ
アスを印加した結果広がる空乏層厚は、対応して波長の
短い方の光(格子エネルギーの高い方の光)から順次光
電子放射させることができ、限界波長を所望の値に制御
することができる。また、印加バイアス量と限界波長と
の関係をあらかじめ明らかにしておけば、印加バイアス
の変化に応じた光電子放射電流の変化から、照射光のス
ペクトルを算出することも可能となる。
【0034】次に、図8(a)(b)を用いて、本実施
例で光吸収層22と独立に遷移放射層23を設けている
理由について説明する。図8(a)(b)は、共に光電
子放射陰極20のバンド図を示しており、それぞれ図7
(c)(d)の状態C,Dに対応している。図8(a)
(b)は、遷移放射層23を設けずに、遷移放射層23
の部分(以下、遷移放射領域22aという)まで光吸収
層22が形成されている場合の例である。このような場
合には、光吸収層22の遷移放射領域22a内で光吸収
が生じ光電子e4 が発生することがある。状態C(図8
(a)参照)のように光電子e4 に充分なドリフト電界
が印加されていない間は、光電子e4 は充分に電界から
エネルギーを得ることができず電子放射されることはな
い。
【0035】ところが、状態D(図8(b)参照)のよ
うに、光電子e4 に充分なドリフト電界が印加される
と、光電子e4 は電界から充分なエネルギーを得て光電
子放射されるようになる。このとき観測される電流の変
化は、光電子e3 と光電子e4との両方の電子の寄与に
基づいており、分離することはできない。
【0036】したがって、遷移放射層23を設けない本
例では、長波長側限界波長の制御は可能になるが、光電
子放射電流の変化から照射光のスペクトルを算出するこ
とは不可能になる。このように、遷移放射層23は、電
子の放射のみを行うための層として独立に形成する必要
があり、決して、光吸収層22と兼用できるものではな
い。
【0037】次に、第2の実施例に係る光電子放射陰極
について、図9を用いて説明する。図9は第2の実施例
に係る光電子放射陰極100の構造を示す斜視図であ
る。同図より、第2の実施例の光電子放射陰極100
は、p型のInPの半導体基板101の上面に、階段型
バンド構造を持つ光吸収層102と、p型InPの遷移
放射層103と、Au電極104とを順次形成したもの
で、Au電極104はショットキー接合をなしている。
光吸収層102は、p型のGa0.45In0.55Asの薄層
102aと、Ga0.33In0.670.27As0.73の薄層1
02bと、Ga0.2In0.8 0.57As0.43の薄層10
2cと、Ga0.12In0.880.73As0.27の薄層102
dの4層構造である。また、半導体基板101の裏面に
は、Au−Zn合金電極105が形成されており、電極
105はオーミック接合をなしている。
【0038】次に、Au電極104の具体的な構造を図
10に示す。同図より、Au電極104は遷移放射層1
03の上にストライプ状に形成され、窓部から光電子が
放出可能になっている。Au電極104の厚さは300
Åである。
【0039】半導体基板101の不純物濃度は、1018
cm-3程度が最適である。また、光吸収層102の濃度
は5×1015cm-3程度が、遷移放射層103の不純物
濃度は1×1016cm-3程度がそれぞれ最適である。半
導体基板101の厚さは350μmであり、光吸収層1
02の厚さは5μmで、各薄層102a〜102dはそ
れぞれ1.25μmの厚さである。さらに、遷移放射層
103の厚さは1μmである。図には示していないが、
Au電極104の表面および電極の窓より露出した遷移
放射層103の表面には、数原子層程度のCs金属の酸
化物が塗布されている。
【0040】図11(a)(b)は、光電子放射陰極1
00にバイアスを印加した状態のバンド図である。ここ
で、図11(a)のバンド図における印加バイアスは2
V、図11(b)のバンド図における印加バイアスは1
0Vである。図11(a)に示す2Vバイアス時には、
λ1 〜λ3 を持つ光hν1 〜hν4 の光照射によって光
吸収層102で光電子e1 〜e4 が発生する。階段状バ
ンド構造のため光電子e3 と光電子e4 はほぼ同じ深さ
のところで発生している。しかし、発生した光電子e1
〜e4 のいずれにもドリフト電界は印加されていないの
で、遷移放射層103から光電子が放射されることはな
い。また、図11(b)に示す10Vバイアス時には、
光吸収層102で発生した光電子e3 、e4 に対してド
リフト電界が印加され、遷移放射層103との接合面方
向に加速される。そして、遷移放射層103内でサテラ
イトバンドEsat へ励起され、光電子e3 、e4 はサテ
ライトバンドEsat から光電子放射される。
【0041】次に、光電子放射陰極100への印加バイ
アスとAu電極104から広がる空乏層厚みの関係を図
12(a)に示す。また、光電子放射限界光子エネルギ
ーと空乏層厚みとの関係を図12(b)に示す。図12
(a)より、図12(a)より、空乏層厚みが1μmよ
り厚くなるとバイアスが印加され始め、4μmを越えた
あたりから印加バイアスが増大することが判る。また、
図12(b)より、空乏層がない状態の限界光子エネル
ギーは1.6eVであるが、空乏層が形成され厚くなる
に従って、限界光子エネルギーが低くなることが判る。
限界光子エネルギーは階段状に変化しているが、これは
光吸収層102が階段状のバンドギャップエネルギーを
持っていることに対応している。
【0042】光電子放射陰極100に、図12(c)に
示されるようなスペクトルを持つ光を照射し、電源70
から供給されるバイアス電圧を0Vより順次増加させて
いった場合、光電子放射電流の変化は、図12(d)に
示すものになる。同図に示すように光電子放射電流はス
テップ状に変化しているが、4つの波長λ1 〜λ4 を持
つ光を照射しているにも拘らず、光電子の変化は3段階
になっている。これは、波長λ3 、λ4 の光の照射によ
り発生した光電子は、印加バイアスを上昇していったと
き、ある特定のバイアスで同時に光電子放射されるよう
になるからである。このような光電子放射陰極100の
特性は、あまり高い波長分解能を必要とせず、数段階で
の波長分離ができればよい場合に適する。
【0043】次に、第3の実施例に係る光電子放射陰極
について、図13(a)(b)を用いて説明する。図1
3(a)は第3の実施例に係る光電子放射陰極110の
構造を示す斜視図である。また、図13(b)は光電子
放射陰極110に2Vのバイアスを印加した状態のバン
ド図である。図13(a)より、第3の実施例の光電子
放射陰極110は、p型のInPの半導体基板111の
上面に、傾斜型バンド構造を持つ光吸収層112と、p
型InPの遷移放射層113と、Ni薄膜電極114と
を順次形成したものである。また、半導体基板111の
裏面には、Au−Cr合金の電極115が形成されてお
り、電極115はオーミック接合をなしている。
【0044】光吸収層112には、p型の(Alx Ga
(1-x) 0.47In0.53Asが用いられている。xの値
は、全領域で格子定数がInPの5.87Åと一致し、
バンドギャップエネルギーが0.75eVから表面に近
づくにつれて大きくなり、光吸収層112の最上部では
InPと同じ1.35eVになるように調整されてい
る。xの具体的な値は図14の組成図に示されている。
同図より、格子定数5.87Åを示す短破線上のxの組
合せは、最表面側でx=0、また再深部でx=0.7で
ある。
【0045】次に、Ni薄膜電極114の具体的な構造
を図15に示す。Ni薄膜電極114は遷移放射層11
3の上に100Åの厚さで形成されている。Ni薄膜電
極114は薄膜であるため島状膜を成しており、島の隙
間(窓)から電子放射が可能になっている。
【0046】半導体基板111の不純物濃度は、1018
cm-3程度が最適である。また、光吸収層112の濃度
は1×1015cm-3程度が、遷移放射層113の不純物
濃度は1×1016cm-3程度がそれぞれ最適である。半
導体基板111の厚さは300μm、光吸収層112の
厚さは5μm、遷移放射層113の厚さは1μmであ
る。図には示していないが、Ni薄膜電極114の表面
および電極の窓より露出した遷移放射層113の表面に
は、数原子層程度のCs金属の酸化物が塗布されてい
る。
【0047】次に、第4の実施例に係る光電子放射陰極
について、図16(a)(b)を用いて説明する。図1
6(a)は第4の実施例に係る光電子放射陰極120の
構造を示す斜視図である。また、図16(b)は光電子
放射陰極120に2Vのバイアスを印加した状態のバン
ド図である。図16(a)より、第4の実施例の光電子
放射陰極120は、p型のGaAsの半導体基板121
の上面に、傾斜型バンド構造を持つ光吸収層122と、
p型Ga0.7 Al0.3 Asの遷移放射層123と、Ni
電極124とを順次形成したもので、Ni電極124は
ショットキー接合をなしている。また、半導体基板12
1の裏面には、Au−Zn合金の電極125が形成され
ており、電極125はオーミック接合をなしている。N
i電極124は図3に示したNi電極24と同様のメッ
シュ形状を有している。Ni電極124の厚さは500
Åである。
【0048】光吸収層122には、p型のGa(1-x)
x Asが用いられている。xの値は、最深部でGaA
sの5.65Åと一致しバンドギャップエネルギーが
1.43eVであるx=0の値に設定されている。表面
に近づくにつれてxの値は大きくなり、光吸収層122
の最上部ではバンドギャップエネルギーが1.8eVで
あるx=0.3になるように調整されている。xの値と
バンドギャップエネルギーの関係を図17のグラフに示
す。同図より、xの値が大きくなるに従ってバンドギャ
ップエネルギーが増加することが判る。
【0049】半導体基板121の不純物濃度は1018
-3程度が最適である。また光吸収層122の濃度は1
×1015cm-3程度が、遷移放射層123の不純物濃度
は1×1016cm-3程度がそれぞれ最適である。半導体
基板121の厚さは300μm、光吸収層122の厚さ
は5μm、遷移放射層123の厚さは0.3μmであ
る。図には示していないが、Ni電極124の表面およ
び電極の窓より露出した遷移放射層123の表面には、
数原子層程度のCs及びNa金属の酸化物が塗布されて
いる。
【0050】次に、第5の実施例に係る光電子放射陰極
について、図18(a)(b)を用いて説明する。図1
8(a)は第5の実施例に係る光電子放射陰極130の
構造を示す斜視図である。また、図18(b)は光電子
放射陰極130に2Vのバイアスを印加した状態のバン
ド図である。図18(a)より、第5の実施例の光電子
放射陰極130は、p型のGaAsの半導体基板131
の上面に、傾斜型バンド構造を持つ光吸収層132と、
II−VI族化合物半導体であるp型ZnSの遷移放射層1
33と、Ni電極134とを順次形成したもので、Ni
電極134はショットキー接合をなしている。また、半
導体基板131の裏面には、Au−Zn合金の電極13
5が形成されており、電極135はオーミック接合をな
している。Ni電極134は図3に示したNi電極24
と同様のメッシュ形状を有している。Ni電極134の
厚さは500Åである。
【0051】光吸収層132には、II−VI族化合物半導
体であるp型のZn(1-x) Cdx y Se(1-y) が用い
られている。x、yの値は、再深部でGaAsの5.6
5Åと一致しバンドギャップエネルギーが2.78eV
であるx=0.46、y=0.82の値に設定されてい
る。表面に近づくにつれてxの値は小さく、逆にyの値
は大きくなる。光吸収層132の最上部ではバンドギャ
ップエネルギーが3.66eVであるx=0、y=1に
なるように調整されている。x、yの値とバンドギャッ
プエネルギーの関係を図19のグラフに示す。同図よ
り、光吸収層132のx,yの値は一点鎖線140上を
推移していることが判る。
【0052】半導体基板131の不純物濃度は1018
-3程度が最適である。また光吸収層132の濃度は1
×1015cm-3程度が、遷移放射層133の不純物濃度
は1×1016cm-3程度がそれぞれ最適である。半導体
基板131の厚さは300μm、光吸収層132の厚さ
は5μm、遷移放射層133の厚さは0.5μmであ
る。図には示していないが、Ni電極134の表面およ
び電極の窓より露出した遷移放射層133の表面には、
数原子層程度のNa金属の酸化物が塗布されている。
【0053】図20は、第1の実施例に係る光電子放射
陰極20を、サイドオン型の光電子増倍管に応用した例
を示す断面概略図である。同図より、光電子増倍管15
0は、ガラスバルブ151の内部に、光電子放射陰極2
0と2次電子増倍面152と電子収集陽極153とを収
めた構造を有している。ガラスバルブ151内は真空に
保たれている。ガラスバルブ151の側面部からの被測
定光が光電子放射陰極20に入射すると、光電子放射陰
極20から光電子が放出される。この光電子は2次電子
増倍面152で増倍され、出力信号として電子収集陽極
153に収集される。
【0054】図21は、第3の実施例で示した光電子放
射陰極110を、ヘッドオン型の光電子増倍管160に
応用した例を示す断面概略図である。同図より、光電子
増倍管160は、ガラスバルブ161の内部に、光電子
放射陰極110と2次電子増倍面162と電子収集陽極
163とを収めた構造を有している。ガラスバルブ16
1内は真空に保たれている。ガラスバルブ161の頭部
からの被測定光が光電子放射陰極110に入射すると、
光電子放射陰極110から光電子が放出される。光電子
放射陰極110は管軸に対して15度傾けて配置されて
いるので、光電子放射陰極110から放出された光電子
は2次電子増倍面162に向かう。2次電子増倍面16
2で光電子は増倍され、出力信号として電子収集陽極1
63に収集される。
【0055】図22は、図21に示した光電子増倍管1
60を用いたスペクトル測定装置170の構成を示す図
である。光電子放射陰極110の光吸収層112と遷移
放射層113のキャリア濃度と厚さ、及びこの光電子放
射陰極110の分光感度特性は、バイアス電圧の大きさ
に応じて図23のように変えられるように設定してあ
る。図22より、光電子増倍管160の電子収集陽極1
63には、増幅器171と信号処理装置172が接続さ
れている。また光電子放射陰極110のNi薄膜電極1
14と電極115には、それぞれ安定化可変電源173
と高圧電源174が接続されている。さらに光電子増倍
管160のバルブ頭部には短波長カットフィルター17
5が備えられている。このように短波長カットフィルタ
ー175が備えられているのは、遷移放射層113を構
成するInPのバンドギャップエネルギーよりも高い光
子エネルギーを持つ光(短波長光)は誤差の原因となる
ので、このような短波長光をカットする必要があるから
である。
【0056】発光体176から放射された光は光電子増
倍管160で増倍され、電子収集陽極163から電流信
号として出力される。この電流出力は増幅器171で増
幅され、信号処理装置172に与えられる。信号処理装
置172では、増幅器171からの増幅信号に基づいた
制御信号を安定化可変電源173に与え、光電子放射陰
極110に印加するバイアスを変化させている。
【0057】このように安定化可変電源173を用いて
光電子放射陰極110に印加するバイアスを変化させた
場合、図24に示すような電流出力が光電子増倍管16
0から得られたとする。図23に示す入射光の波長と分
光感度の関係を元に出力を演算すれば、図25に示すよ
うな発光体176のスペクトルを得ることができる。こ
の場合の演算方法は、各印加電圧での出力の差分を取
り、限界波長の増分と対応させる手法である。分解能を
高めるには、微分を取ればよい。ここでは微分は信号処
理装置172内で数値演算によって行うことを想定して
いるが、微分回路を用いてもよい。
【0058】また、光電子放射陰極110の光吸収層1
12の厚さが薄い場合には、光の進入長が限界波長に与
える誤差が大きくなり、図26に示すようなブロードな
カットオフ特性を持つ分光感度特性になる。この場合に
は、微分操作ではスペクトルの誤差が大きくなるため、
別の信号処理が必要になる。この信号処理は、まず予め
各電圧での分光感度特性Rs(λ、V)を求める。そし
て、各電圧で得た信号をP(V)とすると、測定したい
光のスペクトル分布I(λ)とこれらの関係は次の式で
表すことができる。
【0059】
【数1】
【0060】この演算関係からI(λ)を算出すること
が可能である。また、有限な分解能においては、(1)
式は行列P(V)、Re(λ,V)、I(λ)を用いて P=Rs・I (2) となり、Rsの逆行列Re-1を求めれば、 I=Re-1P (3) となる。このような演算により光のスペクトルI(λ)
を求めることができる。
【0061】なお、本発明の各実施例では、ショットキ
ー電極(Ni電極24,124,134、Au電極10
4、Ni薄膜電極114)の窓から露出した遷移放射層
23,103,113,123,133の表面には、ア
ルカリ金属(Cs金属、Na金属)の酸化膜が形成され
ているが、アルカリ金属の酸化膜に限定されることな
く、アルカリ金属またはアルカリ金属のフッ化化合物で
あってもよい。
【0062】また、III −V族化合物半導体の遷移放射
層の例としてInPを、II−VI族化合物半導体の遷移放
射層の例としてZnSをそれぞれ挙げて説明したが、こ
れらの化合物半導体に限定されることなく、他の化合物
半導体であってもよい。
【0063】
【発明の効果】第1の発明の光電子放射陰極であれば、
オーミック電極とショットキー電極間の印加バイアスを
調整して、電子放射層内の電界を充分に高くし、電子放
射層内に注入された光電子に対しての電子放射効率を1
になるようにすることにより、さらに印加バイアスを高
くした結果広がる空乏層厚に対応して、波長の短い方の
光(光子エネルギーの高い方の光)から順次光電子放射
させることができ、限界波長を所望の値に制御すること
ができる。
【0064】微弱光検出において最大限に注意を払わな
ければならないことは、いかに暗電流放射を押さえるか
である。暗電流放射の第一原因は熱電子放射である。光
電子放射の限界波長が長くなると、その分だけより低温
での熱電子放射が可能になり、暗電流量は増加してく
る。したがって、微弱光検出においては、検出器の限界
波長は、可能な限り短くすべきである。この光電子放射
陰極では限界波長を自由に設定できるため、常に最適な
状態での微弱光検出が可能になる。
【0065】また、第2の発明の光電変換電子管であれ
ば、電圧制御手段によって光電子放射陰極のオーミック
電極とショットキー電極間に印加されるバイアスを変化
させることにより、光電子放射陰極に形成される空乏層
厚を変えることができる。空乏層厚の変化に伴って限界
波長が変化し、電子収集陽極に収集される光電子量(光
電子放射電流)は限界波長の変化により変動する。よっ
て、この光電子放射電流の変動分を測定することによ
り、容易に波長領域の光強度を算出することができる。
【0066】さらに、第3の発明のスペクトル測定装置
であれば、電圧制御手段によって光電子放射陰極のオー
ミック電極とショットキー電極間の印加バイアスを変化
させれば、電子収集陽極を流れる光電子放射電流も変化
する。印加バイアスの変化量および光電子放射電流の変
化量は解析手段に与えられ、事前に解明された印加バイ
アス量と限界波長の関係から入射光のスペクトルが解析
される。
【0067】このように光電子放射陰極への印加バイア
スを変化させ、得られた光電子放射電流の変化から、入
射光のスペクトルを得る手法は、極めて微弱な領域での
分光検出が可能となる。なぜなら、分光のために分光器
などの装置を被分光光源と測定装置との間に挿入するこ
とは、測定装置から見た光源の立体角を大幅に制限する
ことになり、微弱光領域の測定では極めて不利な手法に
なる。このスペクトル測定装置の手法によれば、被分光
光源に可能な限り測定装置を近づけることが可能となる
ため、立体角は大幅に増加し、微弱光領域での分光検出
が可能になるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例に係る光電子放射陰極を備えた光
電管の構造を示す斜視図である。
【図2】Gax In(1-x) y As(1-y) の組成図であ
る。
【図3】Ni電極の具体的な構造を示す斜視図である。
【図4】光電子放射陰極にバイアスを印加した状態のバ
ンド図である。
【図5】光電子放射陰極への印加バイアスとNi電極か
ら広がる空乏層厚みの関係等を示す図である。
【図6】本実施例の動作原理を説明する光電子放射陰極
のバンド図である。
【図7】本実施例の動作原理を説明する光電子放射陰極
のバンド図である。
【図8】光電子放射陰極のバンド図である。
【図9】第2の実施例に係る光電子放射陰極の構造を示
す斜視図である。
【図10】Au電極の具体的な構造を示す斜視図であ
る。
【図11】光電子放射陰極にバイアスを印加した状態の
バンド図である。
【図12】光電子放射陰極への印加バイアスとAu電極
から広がる空乏層厚みの関係等を示す図である。
【図13】第3の実施例に係る光電子放射陰極の構造を
示す斜視図である。
【図14】(Alx Ga(1-x) y In(1-y) Asの組
成図である。
【図15】Ni薄膜電極の具体的な構造を示す斜視図で
ある。
【図16】第4の実施例に係る光電子放射陰極の構造を
示す斜視図である。
【図17】GaAlAsのバンドギャップエネルギーの
関係を示す図である。
【図18】第5の実施例に係る光電子放射陰極の構造を
示す斜視図である。
【図19】Zn(1-x) Cdx y Se(1-y) のバンドギ
ャップエネルギーの関係を示す図である。
【図20】サイドオン型の光電子増倍管を示す断面概略
図である。
【図21】ヘッドオン型の光電子増倍管を示す断面概略
図である。
【図22】スペクトル測定装置の構成を示す図である。
【図23】実施により得られた光電子放射陰極の分光感
度曲線を示す図である。
【図24】バイアスを変化させた場合に得られる光電子
増倍管からの出力電流の変化特性を示す図である。
【図25】差分演算により得られた照射光の光スペクト
ル図である。
【図26】実施により得られた光電子放射陰極の分光感
度曲線を示す図である。
【図27】従来の光電子放出陰極の構造を示す斜視図お
よびバンド図である。
【図28】従来の光電子放出陰極の構造を示す断面図お
よびバンド図である。
【図29】従来のフォトダイオードの構造を示す断面図
である。
【符号の説明】
10…支持板、20,100,110,120,130
…光電子放射陰極、21,101,111,121,1
31…半導体基板、22,102,112,122,1
32…光吸収層、23,103,113,123,13
3…遷移放射層、24,124,134…Ni電極、2
5,105,115,125,135…電極、30…電
子収集陽極、40…ガラスバルブ、50,51…端子導
線、60…バイアス電源、70…高圧電源、71…電流
計、104…Au電極、114…Ni薄膜電極、140
…一点鎖線、150,160…光電子増倍管、151,
161…ガラスバルブ、152,162…2次電子増倍
面、153,163…電子収集陽極、170…スペクト
ル測定装置、171…増幅器、172…信号処理装置、
173…安定化可変電源、174…高圧電源、175…
短波長カットフィルター、176…発光体。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 土屋 広司 静岡県浜松市市野町1126番地の1 浜松ホ トニクス株式会社内 (72)発明者 新垣 実 静岡県浜松市市野町1126番地の1 浜松ホ トニクス株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半導体基板と、 前記半導体基板上に形成され、前記半導体基板から離れ
    るにしたがってバンドギャップ幅が大きいp型光吸収層
    と、 前記p型光吸収層上に形成され、前記p型光吸収層との
    接合面の伝導帯の最小点と充満帯の最大点がほぼ同一で
    層内のバンドギャップ幅がほぼ均一な遷移放射層と、 前記半導体基板の前記p型光吸収層が形成された面の裏
    面に形成されたオーミック電極と、 前記遷移放射層上に形成されたショットキー電極とを備
    えることを特徴とする光電子放射陰極。
  2. 【請求項2】 前記p型光吸収層には、Gax In
    (1-x) y As(1-y) または(Alx Ga(1-x) y
    (1-y) Asで表すことができる化合物半導体が用いら
    れていることを特徴とする請求項1記載の光電子放射陰
    極。
  3. 【請求項3】 前記遷移放射層には、III −V族化合物
    半導体とその混晶半導体、またはII−VI族化合物半導体
    とその混晶半導体が用いられ、前記遷移放射層の厚さ
    は、0.3μm以上1.5μm以下であることを特徴と
    する請求項1または請求項2記載の光電子放射陰極。
  4. 【請求項4】 前記ショットキー電極が形成されていな
    い前記遷移放射層の表面にアルカリ金属、アルカリ金属
    の酸化物、またはアルカリ金属のフッ化化合物が塗布さ
    れていることを特徴とする請求項1から請求項3のいず
    れかに記載の光電子放射陰極。
  5. 【請求項5】 請求項1から請求項4のいずれかに記載
    の光電子放射陰極と、 前記光電子放射陰極から放出された光電子を収集する電
    子収集陽極と、 前記光電子放射陰極および前記電子収集陽極を収納する
    真空容器と、 前記光電子放射陰極のオーミック電極とショットキー電
    極間の印加バイアスを制御する電圧制御手段とを備える
    ことを特徴とする光電変換電子管。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の光電変換電子管と、 前記電圧制御手段により変化する印加バイアスの変化量
    とこの変化量に応じた光電子放射電流の変化量とから入
    射光のスペクトルを解析する解析手段とを備えることを
    特徴とするスペクトル測定装置。
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