JPH07255470A - 無血清培地およびこれを用いた物質生産方法 - Google Patents

無血清培地およびこれを用いた物質生産方法

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JPH07255470A
JPH07255470A JP6072585A JP7258594A JPH07255470A JP H07255470 A JPH07255470 A JP H07255470A JP 6072585 A JP6072585 A JP 6072585A JP 7258594 A JP7258594 A JP 7258594A JP H07255470 A JPH07255470 A JP H07255470A
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浩 川上
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 血清を含有せずに細胞の成育、分化誘導を可
能にする培地の提供およびこの培地を用いた、動物細胞
の培養による物質生産方法の提供。 【構成】 血清を含有しない、動物細胞用基礎培地にガ
ングリオシドを0.01〜100μg/ml含有させた
培地。この培地は、細胞の分化を誘導し、物質生産能力
を増強する。この培培地を無血清培地に代えて使用し、
細胞に物質生産を行わせ、培養液から目的物質を回収す
る。 【効果】 血清を使用しないため、物質生産後の精製が
容易であり、また分化誘導することによって物質の生産
が促進される。生体内での環境を反映した実験が可能と
なる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、動物細胞用無血清培
地、およびこの培地を用いた物質生産方法に関し、さら
に詳しくは、ガングリオシドを分化誘導物質として含有
する無血清培地、及びこれを用いた物質生産方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、動物細胞の培養技術が発達するに
つれて、動物細胞の生産する生理活性物質を医薬品とし
て応用することが期待されている。また生体から細胞を
採取し、この細胞を培養し、細胞の生産する物質を研究
することが活発に行われるようになってきた。通常、動
物細胞の培養にあたっては、アミノ酸、糖、無機塩、ビ
タミン類を含有する基礎培地に、ウシ胎児血清を添加し
た培地が用いられている。この培地を通常は、血清添加
培地とよぶ。血清は、成長促進因子、ホルモン、脂質の
供給源であり、通常の細胞培養には必須である。しか
し、血清中には種々の蛋白質や未知の成分が含まれてお
り、物質の生産にあたっては、これらの成分と目的とす
る蛋白質や、生理活性物質を分離精製することが困難な
場合がしばしば発生する。また細胞培養に供する血清
は、家畜のなかでも特に、胎児や幼体から採取したもの
が望ましいとされているが、動物愛護の面からも問題提
起されている。
【0003】このため、物質生産を目的とした細胞培養
においては、血清を添加しない無血清培地を使用するこ
とが多かった。血清に代わる物質としては、増殖・成熟
因子、トランスフェリンやラクトフェリンなどの蛋白
質、脂溶性ビタミン類などの栄養物質、セレンやクロム
などを含む微量金属原子、インシュリンやステロイドホ
ルモンを含むホルモン類、フィブロネクチンやラミニン
あるいはレクチン類を含む細胞接着因子などを種々組み
合わせて使用される。これらの成分を含有する無血清培
地については、これまでに多くの文献が開示されている
が、村上浩紀編集による細胞制御工学(学窓社、昭和6
1年6月20日刊)に詳しく開示されている。また特開
平3─22972号公報には、このような知見に基づい
た細胞成長因子、ホルモン、脂質、接着因子を配合した
細胞培養用培地が開示されている。
【0004】しかし、正常な組織から分離した細胞(正
常細胞)や株化していない細胞などの培養にこうした無
血清培地を用いた場合、無血清培地が目的とする本来無
限に増殖する細胞ではないために、細胞が産生する生理
活性物質を生産できないばかりか、良好な細胞の成育が
得られないことが多かった。また、株化細胞においても
無血清培地で培養できるものは限られており、通常の細
胞の場合でも、血清濃度のより低い培地で順次継代培養
して、血清が少なくても成育できる細胞だけを選択した
り、細胞を低濃度血清に馴化させることによって、無血
清培養が可能となるようにしている。しかしながら、選
択や馴化の過程で本来もつ特性(生理活性物質の産生能
など)が消失してしまう場合が多く、こうした無血清培
地で増殖または維持できる変異株を得る操作は物質生産
上好ましくなかった。また、生体内の生理代謝機能を研
究するうえで、正常細胞をin vitro で培養するモデル
系が求められているが、従来の無血清培地は株化した増
殖細胞のために開発されたものであるために、正常な細
胞の生理代謝の研究には適していない。そこで、生体か
ら採取した正常組織由来の正常細胞が用いられている
が、こうした細胞は無血清培養がほとんど不可能であっ
た。
【0005】また、従来の無血清培地は、細胞の増殖を
第一の目的として、しかも細胞培養液中の成分が明瞭に
同定されていて、物質生産にあたって、目的成分の分離
精製や同定が容易なように調製されたものであり、細胞
の分化誘導は念頭においていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】これまでの細胞培養で
は、上述したように、株化していない正常細胞や株化細
胞を無血清培地で培養し、安定的に生理活性成分を生産
するための培養方法や技術は完成していない。また従来
の物質生産を目的とした技術は細胞の分化誘導について
は考慮されておらず、いかに均一のポピュレーションの
細胞を増殖させるかにのみ注意が払われてきた。本発明
者らは、細胞の増殖と分化および物質生産について研究
を進めた結果、細胞が物質生産を行うためには、培養に
よる成育と同時に一定の分化誘導を細胞に起こさせて、
この細胞を維持させることによって、持続的に細胞に物
質生産を行わせることが可能なことを見出した。このた
めの因子としてガングリオシドが、細胞の分化と物質生
産に係わる特に重要な因子であることを見出した。ま
た、ガングリオシドは従来の無血清細胞培養では死滅し
てしまうような細胞も維持できることが明らかとなっ
た。特に無血清培地にガングリオシドを含有する培地
は、組織から分離した初代培養や、通常の培養では物質
生産能を喪失してしまうような細胞の無血清培養による
物質生産に適合している。従って、本発明は、ガングリ
オシドを含有する無血清培地であって、細胞培養におい
て物質生産を行わせるに適した培地を提供することを課
題とする。またこの培地を用いて細胞培養を行い、細胞
を維持するとともに、培養中の細胞に分化を誘導し、培
養液中に目的物質を生産することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このよう
な無血清培地を開発するために鋭意検討を重ねた結果、
ガングリオシド類を基本培地あるいは増殖因子を含む無
血清培地に添加することによって、血清を添加しなくて
も動物細胞が効率よく成育し、生理活性成分を生産する
ことが可能となり、生産物の分離精製が容易になること
を見いだし、本発明を完成した。ガングリオシドは、ス
フィンゴシン塩基と脂肪酸が結合したセラミドに、糖が
数個結合した糖脂質であり、シアロ糖脂質、シアログリ
コリピッド、シアル酸含有糖脂質などとも呼ばれるシア
ル酸を有するスフィンゴ糖脂質である。ガングリオシド
の個々のものはしばしば、GM3、GM1、GD1、GT1など
と略記されるが、Gはガングリオシドを、M、D、Tは
それぞれモノシアロ、ジシアロ、トリシアロを意味し、
本発明においてもこの表記に従う。ガングリオシドは、
腫瘍細胞の表面抗原としても知られており、またある種
の癌細胞の分化誘導を行うことが知られている。またガ
ングリオシドの誘導体も合成されており、特開昭61─
12697号公報にはガラクトース誘導体、特開昭61
─243095号公報にはアシアロガングリオシド関連
化合物、特開昭63─14793号公報には合成された
腫瘍マーカーまたは細胞分化マーカーが開示されてお
り、本発明においては、天然に得られるガングリオシド
に加え、これらの合成物誘導体も包含するものである。
【0008】本発明においては、ガングリオシド類なら
ばどのようなものであっても使用可能であるが、細胞の
分化誘導を持つガングリオシドを使用することが好まし
く、特に好ましくは、GM3と略記されるガングリオシド
を使用することが推奨される。GM3はセラミドにグルコ
ース、ガラクトースおよびシアル酸が一分子ずつ結合し
たモノシアロガングリオシドである。このGM3を従来の
無血清培地に、0.01〜100μg/ml の濃度、好ま
しくは1〜10μg/ml の濃度で添加することによって、
本発明の目的とする細胞の培養と分化をもたらし、物質
生産を無血清状態で行うことが可能となる。
【0009】ガングリオシドは細胞膜の構成成分であ
り、特に神経系の細胞に多いことから、従来は家畜の脳
から分離精製されていたが、最近では牛乳にも含まれて
いることが明らかとなり効率的な濃縮調製方法が開発さ
れている(特開昭60−72819、特開昭63−26
9992)。さらに、GM3の調製方法については、牛乳
から多く分離できるGD3から酵素処理(特開平5−30
4955)や加熱処理(特開平5−279379)によ
って調製する方法が確立されており、現在では比較的容
易にGM3を入手できるようになった。また動物の脳内に
大量に含有されていることが判明しており、畜肉事業の
ために屠殺した畜獣の脳から回収することも可能であ
る。さらに精製純度の高い試薬が市販されており、実験
規模の培養にはこのような市販の試薬を購入することも
可能である。試薬としては、国内においては和光純薬工
業株式会社製が、また輸入試薬としてはシグマ(Sigma
)社などから市販されている。
【0010】ガングリオシド以外の成分としては、必須
アミノ酸などを含む基礎培地成分に、さらに通常の株化
細胞の培養に必要と考えられる有効成分を添加してもよ
い。たとえば、栄養成分としてピルビン酸ナトリウム、
L-グルタミン酸ナトリウム、エタノールアミン、各種ビ
タミン類(例:x100 Vitamins 、Flow Laboratory
社)、亜セレン酸、グルコース、フラクトースなどが添
加できる。また、ホルモンとしてインシュリンやトラン
スフェリンを添加してもよい。
【0011】本発明で使用する基礎培地は、一般に市販
されているもの、たとえばイーグルMEM培地、ハムF
12培地、ダルベッコ変法イーグル培地、RPMI−1
640培地、あるいはイスコフ培地などを用いることが
でき、これらの基礎培地は単独あるいは2種以上を任意
の割合で組み合わせて使用することもできる。これらの
基礎培地の組成は細胞培養技術においては公知技術であ
り、例えば中井準之助他編集、組織培養(1976年、
朝倉書店刊行)などの代表的な細胞培養技術を紹介した
書籍およびその他の細胞培養に関する一般文献に文献に
開示されており、容易に調製が可能である。このような
無血清培地にガングリオシドを、0.01〜100μg
/ml濃度になるように添加して調製する。無血清培地
は通常濾過除菌を行うが、この場合には、ガングリオシ
ドは比較的水に溶けにくいためフィルターの目詰まりを
生起させないためには、1〜100mg/mlの濃度
で、好ましくは10〜100mg/mlの濃度のエタノ
ールまたはメタノール溶液を調製し、この溶液をあらか
じめフィルター除菌した後添加することが望ましい。ま
た加熱滅菌可能な基礎培地の場合には、粉末のガングリ
オシドを、培地中の最終濃度になるように添加し、攪拌
分散させた後、滅菌処理を行えば良い。ガングリオシド
は微小なミセルを形成し、分散後培地中の蛋白質に吸着
結合し、均等に分散されて、必要な機能を発揮する。
【0012】本発明によるガングリオシドを配合した無
血清培地を用いた細胞培養は、通常の培養条件で行うこ
とができるし、細胞の特性に応じて高酸素濃度の条件
や、低酸素条件などの条件設定をおこなっても良い。ま
た、本発明による培地は、浮遊性細胞および接着性細胞
いずれにも用いることができる。浮遊性細胞としては、
血液から分離した末梢血リンパ球や単球、乳から分離し
たリンパ球やマクロファージ、リンパ節やパイエル板な
どから分離したリンパ球、接着性細胞としては肝臓、腎
臓、消化管、心臓、脳、筋肉および皮膚などの正常組織
から分離した初代細胞、あるいは市販されているこれら
の組織由来の細胞や癌細胞および株化細胞などがあげら
れる。以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明す
る。
【0013】
【実施例1】本実施例には代表的な基礎培地であるRP
MI−1640にガングリオシドGM3を加えた培地を用
いて細胞培養を行った結果を示した。RPMI−164
0は以下の組成を有している。
【0014】L-Arginine・HCl 200 mg/l L-Asparagine 50 L-Aspartic acid 20 L-Cystine 50 L-Glutamic acid 20 L-Glutamine 300 Glycine 10 L-Histidine ・HCl 15 Hydroxy-Proline 20 L-Isoleucine 50 L-Leucine 50 L-Lysine ・HCl 40 L-Methionine 15 L-Phenylalanine 15 L-Proline 20 L-Serine 30 L-Threonine 5 L-Tryptophan 20 L-Tyrosine 20 L-Valine 20 P-Aminobenzoic acid 1 Biotin 0.2 Calcium panthothenate 0.25 Choline chloride 3.0 Folic acid 0.1 Inositol 35.0 Niacinamide 1 Pyridoxine ・HCl 1. Riboflavin 0.2 Thiamine ・HCl 1 Vitamine B12 0.005 Glucose 2,000 Glutathione 10 Phenol red 5 NaCl 6,000 KCl 400 Ca(NO3)2-4H2O 100 MgSO4・7H2O 100 NaHPO4 1,512 NaHCO3 2,000
【0015】通常、このRPMI−1640培養液は、
特定の細胞株の培養に用いる以外には血清を10〜20
%混合して用いるが、本発明によれば、血清を必要とす
る細胞であっても血清の添加が必要なくなる。このRP
MI−1640培養液を用いてヒト結腸腺癌細胞株(Cac
o-2)の培養を行った。Caco-2細胞はATCCにHTB3
7の登録番号で寄託されており、容易に入手可能な細胞
株である。この細胞株は培養に当たって血清の添加が必
須であるとされていた。さらにこの細胞株は、培養によ
って分化するとそれまで発現しなかった糖質分解酵素で
あるスクラーゼを細胞膜上に発現するようになる。この
ヒト結腸腺癌細胞株Caco-2をインシュリン(10μg/ml)
およびトランスフェリン(5μg/ml)を含む上記RPM
I−1640培地で培養した。この際、シャーレを4群
にわけ、それぞれ(各A;B;C;Dと呼ぶ)に培養液
を分注したが、シャーレAにはウシ胎児血清(FCS )を
10% 添加し、シャーレBはさらにB1、B2、B3、B4に分
け、ガングリオシドGM3をそれぞれ0.01、0.1 、1 、10
μg/mlを添加し、シャーレCはさらにC1、C2、C3、C4に
わけ、ガングリオシドGD3 0.01 、0.1、1、10μg/
mlを添加し、シャーレDには何も添加しなかった。ガ
ングリオシドは10mg/mlの濃度になるようにエタ
ノールに溶解し、この溶液を0.45μmのフィルター
を用いて濾過除菌を行ったものを、所要の濃度になるよ
うに添加した。7日後に細胞を回収し細胞膜のスクラー
ゼ活性をCoklinらの方法(J.Biol. Chem., Vol.250,573
5,1975)によって測定したところ、表1に示すようにシ
ャーレA群とB群ではスクラーゼ活性が検出されたが、
シャーレCとDでは検出されなかった。尚、細胞の蛋白
質量は、ラバーポリスマンで細胞をはがしてLowry 法で
測定した。この特の細胞の生育状態を観察したところD
群では細胞が死滅していた。一方ガングリオシド添加群
では細胞が生育しており、特にGM3添加群では血清の添
加群と同様の細胞生育状態が観察された。
【0016】
【表1】 ガングリオシドを添加した培養液で培養した細胞のスク
ラーゼ活性 ───────────────────────── シャーレ スクラーゼ活性 ───────────────────────── A 8.4 nU/mg protein B1 1.2 nU/mg protein B2 1.1 nU/mg protein B3 4.9 nU/mg protein B4 6.3 nU/mg pretein C1 <0.1 nU/mg protein C2 <0.1 nU/mg protein C3 <0.1 nU/mg protein C4 <0.1 nU/mg protein D <0.1 nU/mg pretein ─────────────────────────
【0017】
【実施例2】本実施例においては、市販の培養液にガン
グリオシドを添加した培養液で細胞を培養した例を示
す。培地中濃度がGM32μg/mlとなるように、市販され
ている代表的な培地で増殖因子としてインシュリンとト
ランスフェリンを添加した無血清培地であるCosmedium
001(コスモバイオ)に添加した。24穴マイクロタイ
タープレートにMillicell-CM(ミリポア;pore size
0.4μm ;0.6cm2 )を設置し、膜表面をコラー
ゲン( 高研) 処理した後、ヒト結腸腺癌細胞株Caco-2
を培養し、10%FCS添加培地および何も添加しないCosmed
ium 001で培養した場合と以下の点について比較し
た。すなわち、電気抵抗測定器 Millicell-ERS (ミリ
ポア)を用いて、Millicell-CM内外の電気抵抗(R)値
を測定した。R値の変化は細胞の分化の指標として有用
であることが確認されている(平成5年1月29日、文
部省科学研究重点領域研究第一回公開シンポジウム「機
能性食品の解析と分子設計」講演要旨集p.2〜3)。
特にR値が上昇するということは細胞間のタイトジャン
クションが形成されたことを意味しており、これは上皮
細胞が分化しないと形成されないのでR値の上昇は分化
の指標として重要である。ガングリオシド添加培地、1
0%FCS添加培地およびFCS無添加培地でCaco-2を
培養した際のR値を測定し、1日目、4日目および7日
目の値を図1に示した。GM3添加培地では、10%FC
S添加培地と同様にR値が上昇したことから、Caco-2の
タイトジャンクションが進み、細胞が分化したと考えら
れた。これに対して、FCSを添加しない培地の場合
は、R値が上昇しなかった。しかし、Caco-2の培養が可
能な無血清培地で培養した場合には、このような分化の
指標であるR値は変化しなことが確認されている。これ
は市販の培地では生体の組織内環境を再現できないこと
によると考えられる。しかし、本発明培養液を用いた場
合には、分化誘導を引き出すことができることから、本
発明による培地は生体内の環境を反映しているものと考
えられた。また本発明培地は、生体中で起こる細胞分化
をin vitroで再現することを可能とすることが判明し
た。
【0018】
【実施例3】本実施例においては、ヒトから分離したリ
ンパ球の初代培養例と物質生産に及ぼす効果を示す。無
菌的に採取したヒト母乳5mlを150mM NaClを含む1
0mMりん酸緩衝液(PBS ;Phosphate buffered saline
)で2倍に希釈した後、分離液(33.4%Conray 400
(第一製薬)と9%Ficoll (Pharmacia 社)を5:12
で混合した溶液)5mlの入った試験管に重層した。400
×gで30分間遠心分離した後、リンパ球の集まっている
中間層をパスツールピペットで回収した。。リンパ球を
10mlのPBSに分散して洗浄した後、150 ×gで10分
間遠心分離した。この洗浄操作を3回繰り返した後、上
に記載したインシュリン(10μg/ml)およびトランスフ
ェリン(5μg/ml)を含むRPMI−1640培地9ml
を添加し、3mlずつシャーレ3枚(A;B;C)に分注
した。シャーレAにはウシ胎児血清(FCS)を0.3
ml添加し、シャーレBにはGM33μg を添加した。7日
後に培養液中のIgA含量を測定したところ、シャーレ
AとBではIgAが検出されたが、シャーレCではIg
Aが検出されないどころか、リンパ球が死滅していた。
リンパ球の培養においては、本発明は、血清含有培地の
代替が可能であることが確認できた。
【0019】
【表 2】 培養液のIgA濃度 ──────────────────────── シャーレ IgA 濃度 ──────────────────────── A(FCS ) 3.56μg/ml B(GM3) 2.87μg/ml C(無添加) - ────────────────────────
【0020】
【実施例 4】本実施例においては、ACTHとサイクリッ
クAMP の作用で副腎皮質ホルモン(Δ4-3-ケトステロイ
ド)を分泌することが知られているマウス副腎皮質腫瘍
由来細胞株Y1細胞の培養例を示す。Y1細胞はATC
CにCCL79として寄託されており、培養にあたって
は血清の添加が必須であることが知られている。このY
1細胞を、インシュリン(10μg/ml)およびトランスフ
ェリン(5μg/ml )を含むRPMI−1640培地で
シャーレ3枚を使い培養した。シャーレAにはFCS
(10% )+ACTH(10 mU )+サイクリックAMP
(1mM)、シャーレBにはGM3(10μg/ml)+ACTH
(10 mU )+サイクリックAMP(1mM)、シャーレC
にはACTH(10 mU )+サイクリックAMP(1mM)
だけを添加した。一晩37℃で培養した後、培養上清10
mlを試験管に回収し、塩化メチレン8mlずつ加えて十分
混合し、1,200 ×gで5分間遠心分離した。下層の塩化
メチレン層を回収し、ドラフト内で50℃で加温し、塩化
メチレンを蒸発させた。蒸発残留物を3mlの無水アルコ
ールに溶かし、242nm での吸光度を測定し、この値から
ステロイド量を求めた。一方、残った細胞をラバーポリ
スマンではがし、培養上清と同様に試験管に回収し、細
胞の蛋白質量をLowry 法で測定した。吸光度と蛋白質量
から単位蛋白質重量あたりのステロイド量を計算したと
ころ、血清添加培地とGM3添加培地で培養したY1の
み、ステロイドを産生していた。細胞の生育状態を観察
したところA及びBのシャーレでは順調に生育している
ことが確認されたが、Cのシャーレでは生細胞数が減少
していることが観察された。
【0021】
【表 3】 ステロイド産生量 ────────────────────────────── シャーレ Δ4-3-ケトステロイド生産量 ────────────────────────────── A (FCS) 3.07 μg/mg protein/hr B ( GM3) 2.1 μg/mg protein/hr C ( 無添加 ) 0 μg/mg protein/hr ──────────────────────────────
【0022】
【実施例 5】本実施例においては、上記実施例3で用
いた培養液組成に基づいて、IgA 産生リンパ球を培養し
て、培養液中に産生されたIgA を回収した例を示す。上
記実施例3に従って、IgA産生リンパ球を、10%F
CS添加培地とGM310μg/ml添加培地で培養した
後、それぞれの培養液からIgAを分離精製した。すな
わち、培養上清200mlとpH7に調整した飽和硫酸
アンモニウム溶液200mlを混合し、4℃で2時間放
置した後、10,000×gで20分間遠心分離して蛋
白質の沈殿画分を回収した。沈殿を脱イオン水に溶解
し、0.1%NaCl溶液に対して4℃で1晩透析した
後、凍結乾燥した。さらにこの乾燥物をCapcell
pak C4カラム(資生堂製)を用いた逆相HPLC
法で分画した。移動相は0.1%TFAを含むアセトニ
トリルと水を用いた。その結果、血清添加培地では非常
に多くのピークが検出され、IgAのピークと培地成分
のピークが重なってしまった(図2)。これに対して、
M3添加培地で培養した場合、目的物であるIgAを含
めて数本のピークしか検出されず、IgAの分離精製が
容易であることが明らかとなった(図3)。この方法を
用いてGM3添加培地200mlから、純度98%のIg
A300μgが回収できた。
【0023】
【発明の効果】本発明の実施により提供される無血清培
地を用いて、以下に要約する効果を得ることができる。 (1)従来血清培地でしか培養できなかった細胞を無血
清培地で培養することが可能となり、さらに細胞に生理
活性成分を効率的に産生させることが可能となる。 (2)血清成分などの不特定成分を含まない培地の供給
が可能となり、培養液中に生産された生理活性成分を容
易に分離精製することが可能となる。 (3)in vitro で細胞の生体内の正常な反応を誘導す
ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】単相培養したCaco─2細胞に生じた電気抵
抗値の変化を示す。
【図2】血清添加培地の培養上清から回収した蛋白質画
分の逆相クロマトグラフィーの結果を示す。
【図3】GM3添加培地の培養上清から回収した蛋白質画
分の逆相クロマトグラフィーの結果を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 //(C12N 5/06 C12R 1:91) (C12P 21/00 C12R 1:91) (C12P 33/00 C12R 1:91) C12R 1:91)

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガングリオシドを含有し、細胞分化を誘導
    することを特徴とする無血清培地。
  2. 【請求項2】無血清培地が、細胞の増殖因子を含有する
    ものである請求項1記載の無血清培地。
  3. 【請求項3】ガングリオシドがGM3である請求項1また
    は2記載の無血清培地。
  4. 【請求項4】細胞培養において、細胞を増殖または生存
    させるための培養液中で、細胞を増殖または生存させる
    と同時に、細胞を分化誘導させ、培養液中に特定の物質
    を生産させることを特徴とする物質の生産方法。
  5. 【請求項5】特定の物質が蛋白質である請求項4記載の
    方法。
  6. 【請求項6】特定の物質がホルモンである請求項4記載
    の方法。
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