JP3547163B2 - 無血清培地を用いた物質生産方法 - Google Patents

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、動物細胞用無血清培地を用いた物質生産方法に関し、さらに詳しくは、ガングリオシドを分化誘導物質として含有する無血清培地を用いた物質生産方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、動物細胞の培養技術が発達するにつれて、動物細胞の生産する生理活性物質を医薬品として応用することが期待されている。また生体から細胞を採取し、この細胞を培養し、細胞の生産する物質を研究することが活発に行われるようになってきた。通常、動物細胞の培養にあたっては、アミノ酸、糖、無機塩、ビタミン類を含有する基礎培地に、ウシ胎児血清を添加した培地が用いられている。この培地を通常は、血清添加培地とよぶ。血清は、成長促進因子、ホルモン、脂質の供給源であり、通常の細胞培養には必須である。しかし、血清中には種々の蛋白質や未知の成分が含まれており、物質の生産にあたっては、これらの成分と目的とする蛋白質や、生理活性物質を分離精製することが困難な場合がしばしば発生する。また細胞培養に供する血清は、家畜のなかでも特に、胎児や幼体から採取したものが望ましいとされているが、動物愛護の面からも問題提起されている。
【0003】
このため、物質生産を目的とした細胞培養においては、血清を添加しない無血清培地を使用することが多かった。血清に代わる物質としては、増殖・成熟因子、トランスフェリンやラクトフェリンなどの蛋白質、脂溶性ビタミン類などの栄養物質、セレンやクロムなどを含む微量金属原子、インシュリンやステロイドホルモンを含むホルモン類、フィブロネクチンやラミニンあるいはレクチン類を含む細胞接着因子などを種々組み合わせて使用される。これらの成分を含有する無血清培地については、これまでに多くの文献が開示されているが、村上浩紀編集による細胞制御工学(学窓社、昭和61年6月20日刊)に詳しく開示されている。また特開平3─22972号公報には、このような知見に基づいた細胞成長因子、ホルモン、脂質、接着因子を配合した細胞培養用培地が開示されている。
【0004】
しかし、正常な組織から分離した細胞(正常細胞)や株化していない細胞などの培養にこうした無血清培地を用いた場合、無血清培地が目的とする本来無限に増殖する細胞ではないために、細胞が産生する生理活性物質を生産できないばかりか、良好な細胞の成育が得られないことが多かった。
また、株化細胞においても無血清培地で培養できるものは限られており、通常の細胞の場合でも、血清濃度のより低い培地で順次継代培養して、血清が少なくても成育できる細胞だけを選択したり、細胞を低濃度血清に馴化させることによって、無血清培養が可能となるようにしている。しかしながら、選択や馴化の過程で本来もつ特性(生理活性物質の産生能など)が消失してしまう場合が多く、こうした無血清培地で増殖または維持できる変異株を得る操作は物質生産上好ましくなかった。また、生体内の生理代謝機能を研究するうえで、正常細胞をin vitro で培養するモデル系が求められているが、従来の無血清培地は株化した増殖細胞のために開発されたものであるために、正常な細胞の生理代謝の研究には適していない。そこで、生体から採取した正常組織由来の正常細胞が用いられているが、こうした細胞は無血清培養がほとんど不可能であった。
【0005】
また、従来の無血清培地は、細胞の増殖を第一の目的として、しかも細胞培養液中の成分が明瞭に同定されていて、物質生産にあたって、目的成分の分離精製や同定が容易なように調製されたものであり、細胞の分化誘導は念頭においていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これまでの細胞培養では、上述したように、株化していない正常細胞や株化細胞を無血清培地で培養し、安定的に生理活性成分を生産するための培養方法や技術は完成していない。また従来の物質生産を目的とした技術は細胞の分化誘導については考慮されておらず、いかに均一のポピュレーションの細胞を増殖させるかにのみ注意が払われてきた。
本発明者らは、細胞の増殖と分化および物質生産について研究を進めた結果、細胞が物質生産を行うためには、培養による成育と同時に一定の分化誘導を細胞に起こさせて、この細胞を維持させることによって、持続的に細胞に物質生産を行わせることが可能なことを見出した。このための因子としてガングリオシドが、細胞の分化と物質生産に係わる特に重要な因子であることを見出した。また、ガングリオシドは従来の無血清細胞培養では死滅してしまうような細胞も維持できることが明らかとなった。特に無血清培地にガングリオシドを含有する培地は、組織から分離した初代培養や、通常の培養では物質生産能を喪失してしまうような細胞の無血清培養による物質生産に適合している。
従って、本発明は、ガングリオシドを含有する無血清培地であって、細胞培養において物質生産を行わせるに適した培地を提供することを課題とする。またこの培地を用いて細胞培養を行い、細胞を維持するとともに、培養中の細胞に分化を誘導し、培養液中に目的物質を生産することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような無血清培地を開発するために鋭意検討を重ねた結果、ガングリオシド類を基本培地あるいは増殖因子を含む無血清培地に添加することによって、血清を添加しなくても動物細胞が効率よく成育し、生理活性成分を生産することが可能となり、生産物の分離精製が容易になることを見いだし、本発明を完成した。ガングリオシドは、スフィンゴシン塩基と脂肪酸が結合したセラミドに、糖が数個結合した糖脂質であり、シアロ糖脂質、シアログリコリピッド、シアル酸含有糖脂質などとも呼ばれるシアル酸を有するスフィンゴ糖脂質である。ガングリオシドの個々のものはしばしば、GM3、GM1、GD1、GT1などと略記されるが、Gはガングリオシドを、M、D、Tはそれぞれモノシアロ、ジシアロ、トリシアロを意味し、本発明においてもこの表記に従う。ガングリオシドは、腫瘍細胞の表面抗原としても知られており、またある種の癌細胞の分化誘導を行うことが知られている。またガングリオシドの誘導体も合成されており、特開昭61─12697号公報にはガラクトース誘導体、特開昭61─243095号公報にはアシアロガングリオシド関連化合物、特開昭63─14793号公報には合成された腫瘍マーカーまたは細胞分化マーカーが開示されており、本発明においては、天然に得られるガングリオシドに加え、これらの合成物誘導体も包含するものである。
【0008】
本発明においては、ガングリオシド類ならばどのようなものであっても使用可能であるが、細胞の分化誘導を持つガングリオシドを使用することが好ましく、特に好ましくは、GM3と略記されるガングリオシドを使用することが推奨される。GM3はセラミドにグルコース、ガラクトースおよびシアル酸が一分子ずつ結合したモノシアロガングリオシドである。
このGM3を従来の無血清培地に、0.01〜100μg/ml の濃度、好ましくは1〜10μg/ml の濃度で添加することによって、本発明の目的とする細胞の培養と分化をもたらし、物質生産を無血清状態で行うことが可能となる。
【0009】
ガングリオシドは細胞膜の構成成分であり、特に神経系の細胞に多いことから、従来は家畜の脳から分離精製されていたが、最近では牛乳にも含まれていることが明らかとなり効率的な濃縮調製方法が開発されている(特開昭60−72819、特開昭63−269992)。さらに、GM3の調製方法については、牛乳から多く分離できるGD3から酵素処理(特開平5−304955)や加熱処理(特開平5−279379)によって調製する方法が確立されており、現在では比較的容易にGM3を入手できるようになった。また動物の脳内に大量に含有されていることが判明しており、畜肉事業のために屠殺した畜獣の脳から回収することも可能である。さらに精製純度の高い試薬が市販されており、実験規模の培養にはこのような市販の試薬を購入することも可能である。試薬としては、国内においては和光純薬工業株式会社製が、また輸入試薬としてはシグマ(Sigma )社などから市販されている。
【0010】
ガングリオシド以外の成分としては、必須アミノ酸などを含む基礎培地成分に、さらに通常の株化細胞の培養に必要と考えられる有効成分を添加してもよい。たとえば、栄養成分としてピルビン酸ナトリウム、L−グルタミン酸ナトリウム、エタノールアミン、各種ビタミン類(例:x100 Vitamins 、Flow Laboratory 社)、亜セレン酸、グルコース、フラクトースなどが添加できる。また、ホルモンとしてインシュリンやトランスフェリンを添加してもよい。
【0011】
本発明で使用する基礎培地は、一般に市販されているもの、たとえばイーグルMEM培地、ハムF12培地、ダルベッコ変法イーグル培地、RPMI−1640培地、あるいはイスコフ培地などを用いることができ、これらの基礎培地は単独あるいは2種以上を任意の割合で組み合わせて使用することもできる。これらの基礎培地の組成は細胞培養技術においては公知技術であり、例えば中井準之助他編集、組織培養(1976年、朝倉書店刊行)などの代表的な細胞培養技術を紹介した書籍およびその他の細胞培養に関する一般文献に文献に開示されており、容易に調製が可能である。
このような無血清培地にガングリオシドを、0.01〜100μg/ml濃度になるように添加して調製する。無血清培地は通常濾過除菌を行うが、この場合には、ガングリオシドは比較的水に溶けにくいためフィルターの目詰まりを生起させないためには、1〜100mg/mlの濃度で、好ましくは10〜100mg/mlの濃度のエタノールまたはメタノール溶液を調製し、この溶液をあらかじめフィルター除菌した後添加することが望ましい。また加熱滅菌可能な基礎培地の場合には、粉末のガングリオシドを、培地中の最終濃度になるように添加し、攪拌分散させた後、滅菌処理を行えば良い。ガングリオシドは微小なミセルを形成し、分散後培地中の蛋白質に吸着結合し、均等に分散されて、必要な機能を発揮する。
【0012】
本発明によるガングリオシドを配合した無血清培地を用いた細胞培養は、通常の培養条件で行うことができるし、細胞の特性に応じて高酸素濃度の条件や、低酸素条件などの条件設定をおこなっても良い。また、本発明による培地は、浮遊性細胞および接着性細胞いずれにも用いることができる。浮遊性細胞としては、血液から分離した末梢血リンパ球や単球、乳から分離したリンパ球やマクロファージ、リンパ節やパイエル板などから分離したリンパ球、接着性細胞としては肝臓、腎臓、消化管、心臓、脳、筋肉および皮膚などの正常組織から分離した初代細胞、あるいは市販されているこれらの組織由来の細胞や癌細胞および株化細胞などがあげられる。
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
【0013】
【実施例1】
本実施例には代表的な基礎培地であるRPMI−1640にガングリオシドGM3を加えた培地を用いて細胞培養を行った結果を示した。
RPMI−1640は以下の組成を有している。
【0014】
Figure 0003547163
Figure 0003547163
【0015】
通常、このRPMI−1640培養液は、特定の細胞株の培養に用いる以外には血清を10〜20%混合して用いるが、本発明によれば、血清を必要とする細胞であっても血清の添加が必要なくなる。
このRPMI−1640培養液を用いてヒト結腸腺癌細胞株(Caco−2)の培養を行った。Caco−2細胞はATCCにHTB37の登録番号で寄託されており、容易に入手可能な細胞株である。この細胞株は培養に当たって血清の添加が必須であるとされていた。さらにこの細胞株は、培養によって分化するとそれまで発現しなかった糖質分解酵素であるスクラーゼを細胞膜上に発現するようになる。このヒト結腸腺癌細胞株Caco−2をインシュリン(10μg/ml)およびトランスフェリン(5μg/ml)を含む上記RPMI−1640培地で培養した。この際、シャーレを4群にわけ、それぞれ(各A;B;C;Dと呼ぶ)に培養液を分注したが、シャーレAにはウシ胎児血清(FCS )を10% 添加し、シャーレBはさらにB1、B2、B3、B4に分け、ガングリオシドGM3をそれぞれ0.01、0.1 、1 、10μg/mlを添加し、シャーレCはさらにC1、C2、C3、C4にわけ、ガングリオシドGD3 0.01 、0.1、1、10μg/mlを添加し、シャーレDには何も添加しなかった。ガングリオシドは10mg/mlの濃度になるようにエタノールに溶解し、この溶液を0.45μmのフィルターを用いて濾過除菌を行ったものを、所要の濃度になるように添加した。7日後に細胞を回収し細胞膜のスクラーゼ活性をCoklinらの方法(J.Biol. Chem., Vol.250,5735,1975)によって測定したところ、表1に示すようにシャーレA群とB群ではスクラーゼ活性が検出されたが、シャーレCとDでは検出されなかった。尚、細胞の蛋白質量は、ラバーポリスマンで細胞をはがしてLowry 法で測定した。この特の細胞の生育状態を観察したところD群では細胞が死滅していた。一方ガングリオシド添加群では細胞が生育しており、特にGM3添加群では血清の添加群と同様の細胞生育状態が観察された。
【0016】
【表1】
Figure 0003547163
【0017】
【実施例2】
本実施例においては、市販の培養液にガングリオシドを添加した培養液で細胞を培養した例を示す。
培地中濃度がGM32μg/mlとなるように、市販されている代表的な培地で増殖因子としてインシュリンとトランスフェリンを添加した無血清培地であるCosmedium 001(コスモバイオ)に添加した。24穴マイクロタイタープレートにMillicell−CM(ミリポア;pore size 0.4μm ;0.6cm)を設置し、膜表面をコラーゲン( 高研) 処理した後、ヒト結腸腺癌細胞株Caco−2 を培養し、10%FCS添加培地および何も添加しないCosmedium 001で培養した場合と以下の点について比較した。すなわち、電気抵抗測定器 Millicell−ERS (ミリポア)を用いて、Millicell−CM内外の電気抵抗(R)値を測定した。R値の変化は細胞の分化の指標として有用であることが確認されている(平成5年1月29日、文部省科学研究重点領域研究第一回公開シンポジウム「機能性食品の解析と分子設計」講演要旨集p.2〜3)。特にR値が上昇するということは細胞間のタイトジャンクションが形成されたことを意味しており、これは上皮細胞が分化しないと形成されないのでR値の上昇は分化の指標として重要である。ガングリオシド添加培地、10%FCS添加培地およびFCS無添加培地でCaco−2を培養した際のR値を測定し、1日目、4日目および7日目の値を図1に示した。GM3添加培地では、10%FCS添加培地と同様にR値が上昇したことから、Caco−2のタイトジャンクションが進み、細胞が分化したと考えられた。これに対して、FCSを添加しない培地の場合は、R値が上昇しなかった。しかし、Caco−2の培養が可能な無血清培地で培養した場合には、このような分化の指標であるR値は変化しなことが確認されている。これは市販の培地では生体の組織内環境を再現できないことによると考えられる。しかし、本発明培養液を用いた場合には、分化誘導を引き出すことができることから、本発明による培地は生体内の環境を反映しているものと考えられた。
また本発明培地は、生体中で起こる細胞分化をin vitroで再現することを可能とすることが判明した。
【0018】
【実施例3】
本実施例においては、ヒトから分離したリンパ球の初代培養例と物質生産に及ぼす効果を示す。
無菌的に採取したヒト母乳5mlを150mM NaClを含む10mMりん酸緩衝液(PBS ;Phosphate buffered saline )で2倍に希釈した後、分離液(33.4%Conray 400 (第一製薬)と9%Ficoll (Pharmacia 社)を5:12で混合した溶液)5mlの入った試験管に重層した。400 ×gで30分間遠心分離した後、リンパ球の集まっている中間層をパスツールピペットで回収した。。リンパ球を10mlのPBSに分散して洗浄した後、150 ×gで10分間遠心分離した。この洗浄操作を3回繰り返した後、上に記載したインシュリン(10μg/ml)およびトランスフェリン(5μg/ml)を含むRPMI−1640培地9mlを添加し、3mlずつシャーレ3枚(A;B;C)に分注した。シャーレAにはウシ胎児血清(FCS)を0.3ml添加し、シャーレBにはGM33μg を添加した。7日後に培養液中のIgA含量を測定したところ、シャーレAとBではIgAが検出されたが、シャーレCではIgAが検出されないどころか、リンパ球が死滅していた。リンパ球の培養においては、本発明は、血清含有培地の代替が可能であることが確認できた。
【0019】
【表 2】
Figure 0003547163
【0020】
【実施例 4】
本実施例においては、ACTHとサイクリックAMP の作用で副腎皮質ホルモン(Δ4−3−ケトステロイド)を分泌することが知られているマウス副腎皮質腫瘍由来細胞株Y1細胞の培養例を示す。Y1細胞はATCCにCCL79として寄託されており、培養にあたっては血清の添加が必須であることが知られている。
このY1細胞を、インシュリン(10μg/ml)およびトランスフェリン(5μg/ml )を含むRPMI−1640培地でシャーレ3枚を使い培養した。シャーレAにはFCS(10% )+ACTH(10 mU )+サイクリックAMP(1mM)、シャーレBにはGM3(10μg/ml)+ACTH(10 mU )+サイクリックAMP(1mM)、シャーレCにはACTH(10 mU )+サイクリックAMP(1mM)だけを添加した。一晩37℃で培養した後、培養上清10mlを試験管に回収し、塩化メチレン8mlずつ加えて十分混合し、1,200 ×gで5分間遠心分離した。下層の塩化メチレン層を回収し、ドラフト内で50℃で加温し、塩化メチレンを蒸発させた。蒸発残留物を3mlの無水アルコールに溶かし、242nm での吸光度を測定し、この値からステロイド量を求めた。一方、残った細胞をラバーポリスマンではがし、培養上清と同様に試験管に回収し、細胞の蛋白質量をLowry 法で測定した。吸光度と蛋白質量から単位蛋白質重量あたりのステロイド量を計算したところ、血清添加培地とGM3添加培地で培養したY1のみ、ステロイドを産生していた。細胞の生育状態を観察したところA及びBのシャーレでは順調に生育していることが確認されたが、Cのシャーレでは生細胞数が減少していることが観察された。
【0021】
【表 3】
Figure 0003547163
【0022】
【実施例 5】
本実施例においては、上記実施例3で用いた培養液組成に基づいて、IgA 産生リンパ球を培養して、培養液中に産生されたIgA を回収した例を示す。
上記実施例3に従って、IgA産生リンパ球を、10%FCS添加培地とGM310μg/ml添加培地で培養した後、それぞれの培養液からIgAを分離精製した。すなわち、培養上清200mlとpH7に調整した飽和硫酸アンモニウム溶液200mlを混合し、4℃で2時間放置した後、10,000×gで20分間遠心分離して蛋白質の沈殿画分を回収した。沈殿を脱イオン水に溶解し、0.1%NaCl溶液に対して4℃で1晩透析した後、凍結乾燥した。さらにこの乾燥物をCapcellpak C4カラム(資生堂製)を用いた逆相HPLC法で分画した。移動相は0.1%TFAを含むアセトニトリルと水を用いた。その結果、血清添加培地では非常に多くのピークが検出され、IgAのピークと培地成分のピークが重なってしまった(図2)。これに対して、GM3添加培地で培養した場合、目的物であるIgAを含めて数本のピークしか検出されず、IgAの分離精製が容易であることが明らかとなった(図3)。この方法を用いてGM3添加培地200mlから、純度98%のIgA300μgが回収できた。
【0023】
【発明の効果】
本発明の実施により提供される無血清培地を用いて、以下に要約する効果を得ることができる。
(1)従来血清培地でしか培養できなかった細胞を無血清培地で培養することが可能となり、さらに細胞に生理活性成分を効率的に産生させることが可能となる。
(2)血清成分などの不特定成分を含まない培地の供給が可能となり、培養液中に生産された生理活性成分を容易に分離精製することが可能となる。
(3)in vitro で細胞の生体内の正常な反応を誘導することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】単相培養したCaco─2細胞に生じた電気抵抗値の変化を示す。
【図2】血清添加培地の培養上清から回収した蛋白質画分の逆相クロマトグラフィーの結果を示す。
【図3】GM3添加培地の培養上清から回収した蛋白質画分の逆相クロマトグラフィーの結果を示す。

Claims (3)

  1. 細胞培養において、ガングリオシドG M3 を含有し細胞分化を誘導する無血清培地を用いて、細胞を増殖または生存させると同時に、細胞を分化誘導させ、培養液中に特定の物質を生産させることからなり、前記細胞が、ヒト結腸腺癌細胞株 Caco −2、ヒトリンパ球またはマウス副腎皮質腫瘍由来細胞株 Y 1細胞であることを特徴とする物質の生産方法。
  2. 特定の物質が蛋白質である請求項記載の方法。
  3. 特定の物質がホルモンである請求項記載の方法。
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