JPH0724051A - 軟組織用接着剤キット - Google Patents

軟組織用接着剤キット

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JPH0724051A
JPH0724051A JP6052923A JP5292394A JPH0724051A JP H0724051 A JPH0724051 A JP H0724051A JP 6052923 A JP6052923 A JP 6052923A JP 5292394 A JP5292394 A JP 5292394A JP H0724051 A JPH0724051 A JP H0724051A
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meth
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Teruichi Miyakoshi
越 照 一 宮
Takashi Inoue
上 孝 井
Masaki Shimono
野 正 基 下
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Mitsui Petrochemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エステル
および酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エステル誘導
体から選択される少なくとも1種、(メタ)アクリレー
ト類、ポリ(メタ)アクリレートおよび重合開始剤の各
成分を、各々容器に収容してなる軟組織用接着剤キッ
ト。 【効果】 本発明に係る軟組織用接着剤キットによれ
ば、各々容器に収容された上記酸無水物基含有(メタ)
アクリル酸エステルおよび/またはその誘導体、(メ
タ)アクリレート類、ポリ(メタ)アクリレートおよび
重合開始剤を混合して接着剤を調製でき、この接着剤
は、軟組織創傷部に塗布すると、血液あるいは体液存在
下であっても固化して創傷部からの出血を迅速に止める
ばかりでなく、創傷形成部位に付着して創傷を治癒まで
保護することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、生体の外皮、筋肉、臓器
および血管等の軟組織を接着する軟組織用接着剤キット
に関し、さらに詳しくは、生体の軟組織を血液、体液等
の水分存在下でも強固に接着し、止血をおこなうことが
可能で、また創傷治癒するまで創傷部を保護することが
可能な軟組織用接着剤キットに関する。特に本発明は、
皮膚などの外皮に生じた創傷部に適用するのに好適な軟
組織用接着剤に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】手術あるいは事故等において、皮
膚、筋肉および臓器等の生体の組織に創傷が形成された
場合、この創傷からの出血を迅速に止めることは、手術
の的確さ、生体の治癒力の維持等からみて最も重要な課
題の1つである。
【0003】このような創傷部の止血には、縫合法以外
に、電気、赤外線およびレーザー光凝固法等の物理的方
法が知られている。ところが、このような方法では、止
血に熟練を要する、特殊な器具あるいは装置を必要とす
る等の問題があり、特に、軽度の皮膚創傷等の応急処置
に適用することはできなかった。
【0004】また、物理学的方法以外では、従来から、
局所止血剤を出血部位に塗布する止血方法が知られてお
り、このような局所止血剤としては、ゼラチン製剤、セ
ルロース製剤、トロンビン製剤、フィブリン糊および微
繊維性コラーゲン等が知られている。
【0005】しかしながら、これら局所止血剤は、生体
組織から抽出精製した生体産生物を材料として製造され
るので、吸水、腐敗する恐れがあるため保存が面倒であ
る他、出血部位からの感染を防止するために、滅菌作
業、例えば各種ウイルス等の不活化処理が必要であると
いう問題があった。
【0006】一方、皮膚、粘膜などの外皮に形成された
創傷部を保護するための創傷絆創膏あるいは付着絆創膏
などが広く用いられているが、このような絆創膏には感
圧性の皮膚接着剤が使用されてきた。
【0007】この皮膚接着剤に使用される粘着剤(貼付
剤)としては、たとえばアクリル酸アルキルエステルと
アクリル酸との重合体(特公昭52−31405号公
報)、メタクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸およ
び酢酸ビニルからなる共重合体(特開昭57−7716
7号公報)、分子内エーテル結合を有する(メタ)アク
リル酸エステル、アクリル酸および(メタ)アクリル酸
エステルの共重合体(特開昭56−45412号公報)
などのアクリル系粘着剤が使用されている。これらのア
クリル系粘着剤は、皮膚への粘着性が良好で、長時間良
好な貼付性を維持し、しかも含有する薬剤を変質させ
ず、皮膚を刺激しない等の性質を有しており粘着剤とし
て有効である。
【0008】また、粘着性基剤を設けた粘着性膏剤は、
以前から多くの種類が提案され、また実用化されてき
た。粘着剤が用いられた粘着性基剤としては、従来、粘
着性あるいは貼付性を有する温度範囲が広く、低い温度
領域でも粘着性が低下しない粘着性基剤が使用されてき
た。
【0009】たとえば、貼着性基剤を皮膚に貼り付ける
場合、30℃程度で良好な粘着性を有していれば充分と
考えられるが、実際には5〜10℃、またはそれ以下の
温度においても強い粘着性を有する粘着性基剤が提案さ
れ、実際に使用されている。
【0010】従来から、このような粘着性基剤が用いら
れている理由としては、次のことが考えられる。 (i)粘着剤は使用温度範囲が広い程、特に低温領域に
おいて広い程、実用価値が高いという一般的な考え方が
あった。 (ii)低温において皮膚に良く付着する粘着剤ほど人体
の皮膚への貼付性が優れており、かつ皮膚の屈伸等によ
っても剥がれることが少なかった。
【0011】しかしながら、上記のアクリル系粘着剤
は、親水性(水分吸収能)および通気性に乏しく、これ
に起因して以下のような問題点があった。 (1)従来のアクリル系粘着剤層が設けられた医療用粘
着シートを、長時間患部に貼付すると、蒸れが生じ、患
部の皮膚が薬剤などによるわずかな刺激に対しても感作
し易い状態になり、かぶれの原因になる。また、蒸れの
生じた貼付部分に、細菌類、真菌類などの雑菌が異常繁
殖し、2次感作によるかぶれも生じ易い。
【0012】このような皮膚の蒸れ、かぶれなどを抑制
するために、たとえば特公昭39−4728号公報に
は、多孔性繊維質基材上に貼付剤であるアクリル酸アル
キルエステル、アクリル酸などを含む共重合体を、連続
気泡層を介して設けた医療用粘着シートが開示されてい
る。このようなシートは通気性に富むので、蒸れを生じ
ない。
【0013】しかし、上記シートは基材および粘着剤層
が水などの液体を透過させるため、患部を充分に保護で
きないという問題点があった。なお、特公昭55−14
108号公報には、水蒸気透過性に優れるフィルム、た
とえばポリウレタンフィルム上に、分子内に親水性基を
有するポリビニルエチルエーテルまたはアクリレート共
重合体からなる粘着剤層を設けた医療用粘着シートが開
示されている。このシートは通気性が比較的良好であ
り、かつ基材が水などの液体を透過させにくいため、患
部を比較的良好に保護できる。
【0014】しかし、上記シートは粘着剤の親水性が不
足しているため、皮膚の蒸れ、かぶれなどの発生を有効
に防止できない。 (2)アクリル系粘着剤は、濡れた状態、または湿った
状態にある被貼付面、たとえば発汗している皮膚表面に
対しては付着性が悪く、付着後も発汗量が多いと剥離し
易いという問題点があった。 (3)皮膚表面に付着したアクリル系粘着剤は、水では
洗い落とし難いという問題点があった。 (4)アクリル系粘着剤には、水溶性薬剤たとえばナト
リウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩または塩酸塩な
どの形態を有する薬剤を溶解させ難いため、このような
水溶性薬剤を含むアクリル系粘着剤医療用粘着シートの
調製が困難であるという問題点があった。
【0015】上記したような(1)〜(4)のアクリル
系粘着剤の問題点を解消するものとして、特開昭64−
228868号公報には、第4級アンモニウム塩含有飽
和炭化水素基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体お
よび/または(メタ)アクリル酸エステル誘導体と、ポ
リビニルピロリドンおよび/またはジアセトンアクリル
アミドとを含む共重合体が開示されている。
【0016】しかしながら、上記共重合体は、第4級ア
ンモニウム塩を多量に含んでいるため、耐水性に劣り、
発汗などにより柔らかくなり過ぎたり、あるいはシート
として剥離される際に皮膚に残留したりすることがあっ
た。
【0017】また、親水性を高める観点から、特開平3
−193057号公報には、グリコシルエチル(メタ)
アクリレートおよびグリコシルプロピル(メタ)アクリ
レートの少なくとも1種を必須の重合成分とする親水性
重合体、ならびに親水性重合体に可塑剤を含む医療用接
着剤が開示されている。さらに、特開平3−14657
9号公報には、炭素原子数が16以上の直鎖状アルキル
基をエステル残基とするアクリル酸エステルおよび/ま
たはメタクリル酸エステルを20〜80重量%と、平均
炭素原子数が2〜8であるアルキル基をエステル残基と
するアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エ
ステルを80〜20重量%とを含んでなる粘着剤は、貼
り付け使用温度以上では充分な接着性を有しながら、そ
れ以下の温度では従来の粘着剤に比較して接着性が低下
し、皮膚から剥離する際の苦痛を減少できることが開示
されている。
【0018】しかしながら、上記の接着剤あるいは粘着
剤は、いずれも創傷患部の密封性、湿潤状態での接着
性、および創傷部が治癒するまでの接着性が未だ不充分
であった。
【0019】すなわち、上記の接着剤あるいは粘着剤が
用いられた絆創膏を創傷患部に使用した場合には、粘着
貼付層と皮膚との間で水蒸気が一定量で平衡状態となる
ため、皮膚が蒸れを生じることとなったり、また、粘着
貼付層と皮膚とは単に接着しているだけなので、創傷患
部が治癒するまで患部を保護できない問題があった。
【0020】したがって、創傷部の治癒に際して、従来
の接着剤、粘着剤(貼付剤)では、2次感染を防ぐため
の創傷部位の密封状態が充分とは言い難い。また、創傷
部からの出血、体液の滲出による湿潤状態あるいは水と
の接触状態での粘着性、接着性が充分ではなかった。さ
らに、創傷部位の治癒時あるいは治癒後には、接着剤ま
たは粘着剤(貼付剤)が自然に剥離することが望ましい
が、この点においても従来の接着剤、粘着剤(貼付剤)
の性能は、不充分と言わざるを得なかった。そしてま
た、目視による透明性の観点からも、従来の接着剤、粘
着剤(貼付剤)では透明性が低く、患部の目視は不可能
であった。
【0021】
【発明の目的】本発明は、このような従来技術に鑑みて
なされたものであり、容易かつ迅速に軟組織創傷部の出
血を止めることができ、使用前に滅菌作業を必要とせ
ず、保存が容易であり、さらには創傷治癒まで創傷部を
保護することが可能で、しかも治療後には軟組織から自
然に剥離するような軟組織用接着剤を調製するための軟
組織用接着剤キットを提供することを目的としている。
【0022】
【発明の概要】本発明に係る軟組織用接着剤キットは、
下記式〔I〕で表わされる酸無水物基含有(メタ)アク
リル酸エステルおよび下記式〔Ia〕で表わされる酸無
水物基含有(メタ)アクリル酸エステル誘導体から選択
される少なくとも1種、(メタ)アクリレート類、ポリ
(メタ)アクリレートおよび重合開始剤の各成分を、各
々容器に収容してなることを特徴としている。
【0023】
【化2】
【0024】(上記式〔I〕または〔Ia〕中、nは2
〜6の整数であり、R1 は水素または炭素数1〜4のア
ルキル基であり、R2 は水素、炭素数1〜4のアルキル
基またはカルボキシル基であり、R3 は、各々独立に、
水素または炭素数1〜4のアルキル基であって、かつ一
方がアルキル基である場合には他方は水素である。)こ
の本発明に係る軟組織用接着剤キットでは、上記式
〔I〕で表わされる酸無水物基含有(メタ)アクリル酸
エステルおよび上記式〔Ia〕で表される酸無水物基含
有(メタ)アクリル酸エステル誘導体から選択される少
なくとも1種が、上記式〔I〕で表わされる酸無水物基
含有(メタ)アクリル酸エステルまたは上記式〔I〕で
表わされる酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エステル
と上記式〔Ia〕で表される酸無水物基含有(メタ)ア
クリル酸エステル誘導体との混合物であることが好まし
い。
【0025】また、本発明に係る軟組織用接着剤キット
では、上記式〔I〕で表わされる酸無水物基含有(メ
タ)アクリル酸エステルおよび上記式〔Ia〕で表され
る酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エステルの誘導体
が、式中、n=2であることが望ましい。
【0026】特に、本発明に係る軟組織用接着剤キット
では、上記式〔I〕で表わされる酸無水物基含有(メ
タ)アクリル酸エステルが無水トリメリット酸-4-メタ
クリロイルオキシエチルであり、(メタ)アクリレート
類がメチルメタアクリレートであり、ポリ(メタ)アク
リレートがポリメチルメタアクリレートであり、重合開
始剤がトリ-n-ブチルホウ素であることが好ましい。
【0027】さらに、本発明に係る軟組織用接着剤キッ
トでは、上記式〔I〕で表わされる酸無水物基含有(メ
タ)アクリル酸エステルおよび/または上記式〔Ia〕
で表される酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エステル
誘導体1重量部に対して、(メタ)アクリレート類が1
〜100重量部、ポリ(メタ)アクリレートが0.1〜
100重量部、および、重合開始剤が0.01〜10重
量部であることが好ましい。
【0028】本発明に係る軟組織用接着剤キットによれ
ば、各々容器に収容された上記酸無水物基含有(メタ)
アクリル酸エステル〔I〕およびその誘導体〔Ia〕か
ら選択される少なくとも1種、(メタ)アクリレート
類、ポリ(メタ)アクリレートおよび重合開始剤を混合
して接着剤を調製できる。この接着剤は、出血する創傷
部に塗布すると、混合物中の酸無水物基含有(メタ)ア
クリル酸エステル〔I〕および/またはその誘導体〔I
a〕、および(メタ)アクリレート類が血液あるいは体
液存在下であっても、軟組織内に浅く浸透して重合する
ことにより、接着剤と軟組織とが単に接着しているだけ
ではなく、接着剤と軟組織とが強固に接着(接合)し、
かつ創傷縁を強固に接着することができる。したがっ
て、上記調製された接着剤によれば、創傷部からの出血
を迅速に止めることができるばかりでなく、創傷形成部
位に付着して創傷を治癒まで保護することができる。
【0029】このような本発明に係る軟組織用接着剤キ
ットは、特に皮膚、粘膜などの外皮創傷用接着剤キット
として有用であり、外皮創傷を接着するために本発明に
係る軟組織用接着剤キットから調製された接着剤を用い
ると、創傷部が接合された後、該接着剤は外皮から自然
に剥離してくる。
【0030】
【発明の具体的説明】以下、本発明に係る軟組織用接着
剤キットをさらに具体的に説明する。本発明に係る軟組
織用接着剤キットは、下記式〔I〕で表わされる酸無水
物基含有(メタ)アクリル酸エステルおよび下記式〔I
a〕で表わされる酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エ
ステル誘導体から選択される少なくとも1種を収容する
容器を備えている。
【0031】
【化3】
【0032】但し、上記式〔I〕中、nは2〜6、好ま
しくは2〜4の整数であって、更に好ましくは2であ
る。R1 は水素または炭素数1〜4のアルキル基、好ま
しくは炭素数が1〜2のアルキル基である。またR2
水素、炭素数1〜4のアルキル基またはカルボキシル基
であり、好ましくは水素である。
【0033】本発明で用いられる酸無水物基含有(メ
タ)アクリル酸エステル〔I〕としては、具体的には、
4−(2−メタクリロイルオキシエチル)トリメリット
酸無水物および4−(2−メタクリロイルオキシエチ
ル)ピロメリット酸無水物などを例示でき、この内、特
に4−(2−メタクリロイルオキシエチル)トリメリッ
ト酸無水物が好ましい。
【0034】また、上記式〔Ia〕中、n、R1 および
2 は、式〔I〕と同様であり、R3 は、各々独立に、
水素または炭素数1〜4のアルキル基であって、かつ一
方がアルキル基である場合には他方は水素である。
【0035】したがって、式〔Ia〕で示される誘導体
は、酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エステル〔I〕
の環状をなす酸無水物基が、水と反応することによって
1対のカルボキシル基に開環させて得られる加水分解
物、あるいはこの加水分解物の1対のカルボキシル基の
一方がエステル化されて生じる半エステル化物である。
【0036】本発明では、このような酸無水物基含有
(メタ)アクリル酸エステル〔I〕およびその誘導体
〔Ia〕から選択される化合物を、重合性単量体として
用いる。また、これら酸無水物基含有(メタ)アクリル
酸エステル〔I〕は、単独で用いても、その誘導体〔I
a〕と組み合わせて用いてもよい。
【0037】酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エステ
ル〔I〕および/またはその誘導体〔Ia〕は、本発明
では、ガラス製容器、あるいはポリエチレン、ポリプロ
ピレン等の合成樹脂製容器等の適当な容器に収容して保
存・提供される。保存に際して、酸無水物基含有(メ
タ)アクリル酸エステル〔I〕およびその誘導体〔I
a〕は、単独で上記容器に収容してもよく、あるいは後
述するように、(メタ)アクリレート類と混合されて、
混合液として容器に収容されていてもよい。
【0038】本発明は、このような酸無水物基含有(メ
タ)アクリル酸エステル〔I〕およびその誘導体〔I
a〕を収容する容器に加えて、(メタ)アクリレート
類、ポリ(メタ)アクリレートおよび重合開始剤の各成
分を収容する容器を備えている。
【0039】また、本発明で用いられる(メタ)アクリ
レート類は、下記に示すアクリレートまたはメタアクリ
レートなどである。CH2=CHCOOR[Rは、炭素
原子数1〜4のアルキル基]で表されるアルキルモノア
クリレートであり、具体的には、メチルアクリレート、
エチルアクリレートおよびプロピルアクリレート等のア
クリレート;CH2=CHCOO-R-OOCCH=CH2
[Rは、メチレン基または炭素原子数2〜4のアルキレ
ン基]で表されるアルキレンジアクリレートであり、具
体的には、エチレンジアクリレートおよびプロピレンジ
アクリレート等のアクリレート;CH2=C(CH3)CO
OR[Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基]で表され
るアルキルモノメタアクリレートであり、具体的には、
メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、プ
ロピルメタアクリレートおよびブチルメタアクリレート
等のメタアクリレート;
【0040】
【化4】
【0041】[Rは、メチレン基または炭素原子数2〜
4のアルキレン基]で表されるアルキレンジメタアクリ
レートであり、具体的には、エチレンジメタアクリレー
トおよびプロピレンジメタアクリレート等のメタアクリ
レート;などを挙げることができ、これらは単独で用い
ても、組み合わせて用いてもよく、好ましくはメチルメ
タアクリレート、またはメチルメタアクリレートを主成
分として他の(メタ)アクリレートが混合された混合物
が用いられる。これらは通常、液体の状態で用いられ
る。
【0042】本発明では、(メタ)アクリレート類は、
上記酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エステルおよび
/またはその誘導体〔Ia〕と同様に、他の成分と混合
して接着剤とした場合に重合する重合性単量体であり、
接着剤調製時に、酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エ
ステル〔I〕および/またはその誘導体〔Ia〕1重量
部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは10〜
50重量部の量で用いられる。
【0043】(メタ)アクリレート類は、液体であり、
本発明では、容器に収容されて保存・提供される。ま
た、(メタ)アクリレート類は、前述したように、酸無
水物基含有(メタ)アクリル酸エステル〔I〕およびそ
の誘導体〔Ia〕と混合されて、混合液として容器に収
容されていてもよい。
【0044】このような(メタ)アクリレート類および
その混合液を収容する容器としては、遮光可能なガラス
製容器あるいはガスバリアー性があり、かつ(メタ)ア
クリレート類等の成分に浸食されない合成樹脂製容器を
挙げることができる。このような樹脂性容器としては、
ポリプロピレン、ポリアミドおよびポリエステルの単層
壁からなる容器に加えて、ポリエチレン/ポリビニルア
ルコール/ポリエチレン三層構造壁およびポリエチレン
/エチレン・ビニルアルコール重合体/ポリエチレン三
層構造壁からなる容器等を挙げることができる。
【0045】また、このような容器は、液を一滴づつ滴
下できるような滴下手段を有していてもよく、例えば、
容器を柔軟な上記合成樹脂容器とし、この容器の開口部
に先を絞ったノズルを配設してもよい。
【0046】本発明で用いられるポリ(メタ)アクリレ
ートは、(メタ)アクリレート類から誘導されるポリ
(メタ)アクリレートである。ポリ(メタ)アクリレー
トの調製に用いられる(メタ)アクリレート類として
は、具体的には、上記(メタ)アクリレート類の具体例
として挙げられた化合物を例示でき、これら化合物は単
独で用いても、組み合せて用いてもよい。
【0047】このようなポリ(メタ)アクリレートとし
ては、具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリエ
チルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポ
リブチルメタクリレート等を挙げることができる。これ
らポリ(メタ)アクリレートは、単独で用いても、組み
合わせて用いてもよい。
【0048】本発明で用いられるポリ(メタ)アクリレ
ートの分子量は特に限定されないが、例えば、300,
000〜600,000、好ましくは400,000〜
500,000である。
【0049】また、このようなポリ(メタ)アクリレー
トは、酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エステルおよ
び/またはその誘導体〔Ia〕、および(メタ)アクリ
レート類と混合した場合に、これらに良好に溶解あるい
は分散できるよう微粒子状であることが好ましく、この
ような微粒子状ポリ(メタ)アクリレートは、通常嵩密
度が0.3〜0.5g/cm3 、好ましくは0.35〜
0.40g/cm3 である。
【0050】本発明では、ポリ(メタ)アクリレート
は、接着剤調製時に、上記酸無水物基含有(メタ)アク
リル酸エステル〔I〕および/またはその誘導体〔I
a〕1重量部に対して、通常0.1〜100重量部、好
ましくは1〜50重量部、特に好ましくは5〜20重量
部の量で用いられる。
【0051】本発明では、ポリ(メタ)アクリレート
は、調製された接着剤の粘度および固化後の強度を調節
するために用いられる。具体的には、接着剤中のポリ
(メタ)アクリレート/酸無水物基含有(メタ)アクリ
ル酸エステル〔I〕およびその誘導体〔Ia〕(または
(メタ)アクリレート類)比を小さくすれば、調製時の
接着剤の粘性を下げることができる。
【0052】このような微粒子状(粉末状)のポリ(メ
タ)アクリレートは、ガラス製あるいはポリオレフィン
等の合成樹脂製等の容器に収容して保存・提供される。
また、この容器は、ポリ(メタ)アクリレートの計量手
段、例えば、粉末を摺り切りにより定量・採取できる計
量スプーンを取りつけられていてもよい。
【0053】本発明で用いられる重合開始剤は、アクリ
ル系重合体を常温付近で製造する際に一般的に用いられ
る重合開始剤であれば特に限定されず、具体的には、ベ
ンゾイルペルオキシドとアミンとの組合せ等によるレド
ックス系重合開始剤、トリ−n−ブチルホウ素等のアル
キルボロン、およびアルキルボロンの部分酸化物等を例
示できる。特に、トリ−n−ブチルホウ素、あるいはト
リ−n−ブチルホウ素と、少量の水添加によって得られ
るその部分酸化物または空気中の水分、適用部の水分等
により反応生成するその部分酸化物との混合物が好まし
い。
【0054】このような重合開始剤は、接着剤調製時
に、上記酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エステル
〔I〕および/またはその誘導体〔Ia〕1重量部に対
して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜
2.0重量部の量で用いられる。
【0055】本発明では、このような重合開始剤は、容
器に収容して保存・提供される。このような容器として
は、空気中の酸素との接触を防止でき、かつ一滴づつ滴
下できる容器が好ましく、例えば、ガラス製、ポリエス
テル製、ポリアミド製、フッ素系ゴム製あるいはシリコ
ン系ゴム製のシリンジを例示することができる。
【0056】本発明に係る軟組織用接着剤キットは、上
記成分を収容する各容器に加えて、創傷治療に要求され
る物理的、化学的あるいは臨床学的特性に応じて、添加
剤あるいは充填剤を含んでいてもよい。このような添加
剤および充填剤としては、具体的には、ペニシリン系、
セフェム系、マクロライド系、クロラムフェニコール
系、テトラサイクリン系、リンコマイシン系、アミノグ
リコシド系、ポリペプチド系等の抗生物質、ヨウ素化合
物製剤、ほう酸類製剤等の殺菌剤、ゼラチン製剤、セル
ロース製剤等の他の接着剤および減菌凍結乾燥豚皮等の
創傷保護剤などを例示することができる。これら添加剤
および充填剤は、上記成分のいずれかに混合されていて
も、別途容器等に収容、保存されていてもよい。
【0057】本発明に係る軟組織用接着剤キットは、以
上説明した容器中の各成分を、止血部位、即ち止血しよ
うとする創傷に塗布する直前に混合して容易に接着剤を
調製することができる。この接着剤の調製では、上記酸
無水物基含有(メタ)アクリル酸エステル〔I〕および
/またはその誘導体〔Ia〕、(メタ)アクリレート
類、ポリ(メタ)アクリレートおよび重合開始剤の混合
順序は特に限定されず、これら成分を任意の順序で混合
してもよい。
【0058】しかしながら、各成分、特に重合性単量体
同士の均一な混合状態を得ると言う観点から、酸無水物
基含有(メタ)アクリル酸エステル〔I〕および/また
はその誘導体〔Ia〕を(メタ)アクリレート類に溶解
し、次いでポリ(メタ)アクリレートおよび重合開始剤
を加えて接着剤を調製することが好ましい。このような
接着剤の調製は、室温を含む広い温度範囲で行なうこと
ができ、通常0〜50℃、好ましくは5〜15℃の温度
下で行なわれる。
【0059】このようにして接着剤を調製し得る本発明
の軟組織用接着剤キットは、適当な容器に収容された上
記の成分に加えて、これら成分を混合および/または塗
布するための器具を有していてもよい。このような器具
としては、各成分を混合するためのパレット、スパーテ
ルおよび攪拌棒等の攪拌手段、調製した接着剤を塗布す
るための刷毛等の塗布手段、これら手段を洗浄する洗浄
溶媒等を挙げることができる。 攪拌手段としてのパレ
ットの材料としては、上薬を塗布して焼く等することに
より、表面を孔のない平滑面とした陶器、あるいはポリ
エチレン、ポリプロピレンおよびポリオレフィン等の成
分に対して耐薬品性のある合成樹脂を例示できる。ま
た、攪拌手段としてのスパーテルおよび攪拌棒として
は、上記合成樹脂を例示できる。
【0060】塗布手段としての刷毛としては、成分に対
して耐薬品性のある合成樹脂の毛あるいは獣毛等を用い
た刷毛を例示でき、洗浄用溶媒としては、例えばアセト
ン等の有機溶媒を例示できる。
【0061】ここで、本発明の軟組織用接着剤キットの
好ましい一態様を、図1、図2および図3を参照して具
体的に説明する。図1は、本発明に係る軟組織用接着剤
キットの好ましい一態様を示す平面図、図2はポリ(メ
タ)アクリレート容器の斜視図であり、図3は、ポリ
(メタ)アクリレート容器に収容される計量スプーンの
斜視図である。
【0062】図示されるように、本態様の軟組織用接着
剤キット1では、酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エ
ステル〔I〕および/またはその誘導体〔Ia〕と、
(メタ)アクリレートとの混合液を収容するモノマー混
合液容器2と、ポリ(メタ)アクリレート容器3と、反
応開始剤容器4と、混合用スパーテル5と、混合用パレ
ット6とを1つのケース7に収容している。このケース
7は、不図示の蓋体によって、閉塞できるようにしてあ
る。
【0063】モノマー混合液容器2は、合成樹脂製の本
体11と、本体11の開口部に配設されるノズル12
と、蓋13とを有している。この混合液容器2は、蓋1
3を脱着し、柔軟性のある本体11を圧することによ
り、モノマー混合液を一滴ずつ分取できるようになって
いる。これら、本体11、ノズル12および蓋13の材
料としては、(メタ)アクリレート類およびその混合液
を収容する容器の材料として、前述した樹脂を用いるこ
とができる。
【0064】ポリ(メタ)アクリレート容器3は、図2
にも示されるように、円筒状の本体15と、中蓋16
と、蓋17とを有している。中蓋16は、上面に仕切り
16aを有しており、この仕切り16aを挟んで一方が
収容されるポリ(メタ)アクリレートの取出し口20、
他方が計量スプーン19の収容凹部21となっている。
この計量スプーン19は、図3に示すように、所定容積
の計量部19aと柄19bとからなり、この計量部19
a摺り切り一杯で一定量のポリ(メタ)アクリレート粉
末を分取できる。
【0065】さらに、反応開始剤容器4は、ピストン部
23と該筒部22とからなるシリンジであり、ピストン
部23を筒部22内で先端方向に移動させて、先端の針
24から反応開始剤を滴下できる。なお、図中25は、
針24を保護するとともに密閉する蓋である。
【0066】混合用パレット6は、平板状の基板26
と、該基板26表面に形成された容積の異なる凹所2
7,28とからなる。このような軟組織用接着剤キット
1によれば、重合性モノマーを予め混合して1つの容器
2に収容されているため、均一に混合された接着剤を調
製し易くなっている。そして、各容器2〜4から、接着
剤成分を、混合用パレット6の小容積の凹所27または
大容積の凹所28のいずれかに分取し、スパーテル5に
よって攪拌混合すれば、上述した方法による接着剤の調
製を、このキット1に含まれる器具だけで完了させるこ
とができる。
【0067】このような本発明のキットを用いて調製さ
れた接着剤は、出血する創傷部分に塗布すると、体温で
はもちろん、体温以下の室温近傍の温度であっても、血
液あるいは体液中の成分を含んで固化し、迅速に止血を
行なえる他、創傷部分に強固に接着(接合)して、創傷
部を治癒するまで保護することができる。さらに、この
接着剤を人体の皮膚、粘膜などの外皮の創傷に適用した
ところ、接着剤は血液の存在下でも速やかに固化した
他、傷による痛みもなくなり、鎮痛作用を有することも
判明した。
【0068】また上記接着剤を、皮膚などの外皮の創傷
部に適用すると、皮膚が接合後、この接着剤は重合固化
して皮膚の外部に「かさぶた」のように存在し、その治
癒後自然に剥離する。
【0069】このように、本発明に係る軟組織用接着剤
キットは、止血直前に各成分を容器から分取し、混合し
て接着剤を調製し、この接着剤を生体の皮膚、粘膜など
の外皮に形成される創傷に直接塗布することによって、
創傷部からの出血を容易かつ迅速に止めることができ、
さらに固化した接着剤は、創傷部に付着して治癒するま
で該創傷を保護することができる。
【0070】さらに、本発明に係る軟組織用接着剤キッ
トを用いて調製した接着剤は、細胞毒性が低く、筋肉組
織、腹膜、筋膜などの膜状組織、食道、腸管、胆道、血
管、気管および気管支等の管状器官、および胃、肝臓、
腎臓、膵臓、肺、脳などの実質臓器に、事故および手術
等で形成される創傷の止血に好適に用いることができ
る。
【0071】このような本発明に用いられる酸無水物基
含有(メタ)アクリル酸エステル物質〔I〕のマウス腹
腔内投与時のLD50は600〜700mg/kg、マウ
ス経口投与時のLD50は2g/kg以上であり、またメ
チルアクリレートのマウス経口投与時のLD50は8.4
g/kg[W.Deichmann, J.Ind.Hyg.Toxicol. 23巻,343
頁,1941年]であり、さらに該酸無水物基含有(メタ)
アクリル酸エステル物質〔I〕を5%含むメチルメタク
リレートの共重合体の腹腔内投与時、皮下投与時、経口
投与時のLD50は、ともに2000mg/kgであり、
毒性が低いことがわかる。なお、エチル−シアノアクリ
レートのマウス腹腔内投与時のLD50は500mg/k
g、メチルシアノアクリレートのラット経口投与時のL
50は180mg/kg[米国国立労働安全衛生所編;
化学物質毒性データ総覧]である。
【0072】また、創傷部に対する塗布量はわずかな量
で足り、通常は1回の塗布で終了することからも、使用
時に生体に与える悪影響は極めて少ないと考えられる。
【0073】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る軟組
織用接着剤キットによれば、酸無水物基含有(メタ)ア
クリル酸エステル〔I〕および/またはその誘導体〔I
a〕、(メタ)アクリレート類、ポリ(メタ)アクリレ
ートおよび重合開始剤の各成分を容器に収容しており、
容器に収容された各成分を適量づつ分取・混合して容易
に接着剤を調製できる。この接着剤は、出血する創傷部
に塗布すると、混合物中の酸無水物基含有(メタ)アク
リル酸エステル〔I〕および/またはその誘導体〔I
a〕、およびメチル(メタ)アクリレートが血液あるい
は体液存在下であっても、軟組織内に浅く浸透して重合
することにより、接着剤と軟組織とが単に接着している
だけではなく、接着剤と軟組織とが強固に接着(接合)
し、かつ創傷縁を強固に接着することができるため、創
傷部からの出血を迅速に止めるばかりでなく、細胞毒性
が低く、したがって、各種体内組織および臓器、器官で
形成された創傷の止血に好適に用いることができる。ま
た外皮創傷に用いると、創傷形成部位に適切な強さで付
着して創傷を治癒まで保護することができ、皮膚創傷の
応急処置に好適に用いることができる。
【0074】すなわち、本発明によれば、以下に示すよ
うに優れた効果を有する軟組織用接着剤キットを提供で
きる。 (1)本発明に係る軟組織用接着剤キットを用いれば、
調製される接着剤の創傷部への接着性、特に外皮である
皮膚、粘膜などへの接着性が良好であり、長時間良好な
接着性を維持し、外皮を刺激しないために、容易に創傷
部を治癒できる。 (2)本発明に係る軟組織用接着剤キットを用いて調製
した接着剤を患部に、直接、長時間貼付しても、蒸れや
かぶれが生じない。また、濡れた外皮表面、あるいは湿
った外皮表面にも容易に貼付可能であり、発汗しても剥
離し難いだけでなく、該接着剤を貼付したままで水を使
用した作業も行える。 (3)本発明に係る軟組織用接着剤キットを用いて調製
した接着剤は、外皮に付着しても創傷部の治癒に合わせ
て自然に剥離するため、特殊な剥離操作は一切必要な
く、剥離時の外皮への損傷を防止することができる。 (4)本発明に係る軟組織用接着剤は、特殊な原料を用
いることなく製造でき、軟組織用接着剤、特に外皮用接
着剤として広く用いることができる。
【0075】以下、本発明に係る軟組織用接着剤キット
を、実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は
これら実施例に限定されるものではない。
【0076】
【実施例1】図1〜図3に示すような軟組織用接着剤キ
ット1を作成した。本キット1では、容器2に無水トリ
メリット酸4−メタクリロイルオキシエチルおよびメチ
ルメタアクリレートの混合溶液(混合重量比5:95)
を10ml収容した。この容器では、1滴で約30mg
の混合溶液を分取できる。また、容器3には、ポリメチ
ルメタアクリレート粉末(分子量:430,000、嵩
密度0.37g/cm3 )を収容した。また、計量スプ
ーン19は、摺り切りで140mgのポリメチルメタア
クリレート粉末を分取できる。また、容器4には、トリ
−n−ブチルホウ素を収容しており、この容器4から
は、1滴が約3mgのトリ−n−ブチルホウ素を滴下で
きる。
【0077】このような軟組織用接着剤キット1を用
い、先ず、パレット6の凹所27に、容器2から混合溶
液を8滴(約240重量部)滴下し、ついで容器3か
ら、摺り切り1杯(約140重量部)のポリメチルメタ
アクリレート粉末を加え、スパーテル5で均一に攪拌・
混合し、次いで容器4から、2滴(約6.5重量部)を
滴下し、さらに攪拌・混合して接着剤を調製した。
【0078】寒天上にヒト血液を展開し、調製された接
着剤を重層し、固化層を形成した。この固化層を分取
し、脱イオン水で洗浄した後、室温にて減圧下乾燥し
た。得られた乾燥固化層の表面を走査電子顕微鏡で観察
し、図4に示すような走査電子顕微鏡写真が得られた。
【0079】図4に示されるように、表面が固化層で覆
われた偏平球形の赤血球の像が見られ、接着剤が、赤血
球を含む血液を取り込んで重合・固化していることが示
唆された。
【0080】
【実施例2】人体の皮膚表面に、実施例1と同様に調製
した接着剤を塗布し、固化させた。その結果、皮膚表面
に接着した固化層が形成され、この際に特に刺激はなか
った。また、この固化層は2日で自然に剥離し、かつ接
着跡もできなかった。
【0081】
【実施例3】人体の指に針で創傷を形成し、微量の出血
状態を現出させ、その部分に実施例1と同様にして調製
した接着剤を塗布し、室温で放置した。
【0082】その結果、皮膚表面に血液を含む固化層が
形成され、この際、創傷による痛みが消失した。この固
化層は2日で自然に剥離した。その間に創傷は治癒し、
かつ接着跡もできなかった。
【0083】
【実施例4】ラットの背中を剃毛し、この部位の皮膚
下、筋肉上にメスで形成された長さ約1cmの切創部を縫
合糸により結節した。その部分を含む周辺を囲むように
範囲を設定し、この範囲に実施例1と同様にして調製さ
れた接着剤を塗布し、室温で放置した。
【0084】その結果、皮膚表面に血液を含む固化層が
形成された。この固化層は、特に絆創膏などで保護する
ことがなくても剥離することがなかった。この固化層
は、約4日後に自然に剥離した。この間に創傷は治癒
し、かつ接着跡もできなかった。
【0085】また、このような創傷上に盛り上がった
「かさぶた」状の固化層表面の走査電子顕微鏡写真を図
5に示す。さらに、この剥離した固化層を1日濃塩酸に
浸し、残存する皮膚組織を溶解したところ、非溶解部分
が残存した。この非溶解部分を分取して脱イオン水で洗
浄し、次いで室温にて減圧下乾燥した。得られた乾燥非
溶解部分の表面の走査電子顕微鏡写真を図6に示す。図
6から明らかに観察されるように、非溶解部分では毛根
と思われる像が認められた。
【0086】このことから、皮膚組織内に浸透した接着
剤成分が、毛根部と組織−接着剤重合体の複合体を形成
していることが示唆される。
【0087】
【参考例1】実施例4において使用する接着剤を、リン
酸エステル系接着剤(商品名:パナビア21、クラレ
(株)製)に代えた以外は、実施例4と同様にして室温
で放置した。
【0088】その結果、皮膚表面に血液を含む固化層は
形成されず、その際、創傷部に縫合糸により形成した結
節のみと接着する現象が認められた。なお、この重合層
は約1日〜2日後に自然に剥がれた。その後、創傷は治
癒するものの、治癒に要する時間が長くなる傾向が認め
られた。
【0089】
【実施例5】人体の指に生じた長さ約1cmの挫創部を含
む周辺を囲むようにして、実施例1と同様にして調製し
た軟組織用接着剤を塗布し、室温で放置した。
【0090】その結果、皮膚表面に血液を含む固化層が
形成され、その際、創傷による痛みが消失した。この固
化層は、絆創膏などで保護せずに水仕事をしても剥離す
ることがなかった。この固化層は、4日後に自然に剥離
した。その間に創傷は治癒し、かつ接着跡もできなかっ
た。
【0091】
【実施例6】実施例1と同様にして得られた接着剤を、
厚さ約5mmの豚肝臓切片上に塗布し、さらに別の肝臓
切片を重ね合わせた後、18℃の温度で1時間放置し
た。
【0092】その結果、重ね合わされた2枚の肝臓切片
は、組織を破壊せずに接着部分を剥がすことができなか
った。また、走査電子顕微鏡で観察した結果も、図5に
示す像と同様であることから、肝臓組織内に浸透した接
着成分が重合して固化し、組織−接着剤重合物の複合体
が形成されていることが示唆される。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明に係る軟組織用接着剤キットの好ま
しい一態様を示す平面図であり、
【図2】は、ポリ(メタ)アクリレート容器の斜視図で
あり、
【図3】は、ポリ(メタ)アクリレート容器に収容され
る計量スプーンの斜視図であり、
【図4】は、実施例1において、本発明に係る軟組織用
接着剤キットで調製した接着剤が血液とともに固化した
固化層の走査電子顕微鏡写真である。
【図5】は、実施例4において、本発明に係る接着剤に
よって形成された固化層表面の走査電子顕微鏡写真であ
り、
【図6】は、実施例4において、非溶解部分を分取し
て、得られた乾燥非溶解部分表面の走査電子顕微鏡写真
である。
【符合の説明】
1・・・軟組織用接着剤キット 3・・・ポリ(メタ)アクリレート容器 2・・・モノマー混合液容器 4・・・反応開始剤容器

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式〔I〕で表わされる酸無水物基含
    有(メタ)アクリル酸エステルおよび下記式〔Ia〕で
    表わされる酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エステル
    誘導体から選択される少なくとも1種、(メタ)アクリ
    レート類、ポリ(メタ)アクリレートおよび重合開始剤
    の各成分を、各々容器に収容してなる軟組織用接着剤キ
    ット。 【化1】 (上記式〔I〕または〔Ia〕中、nは2〜6の整数で
    あり、R1 は水素または炭素数1〜4のアルキル基であ
    り、R2 は水素、炭素数1〜4のアルキル基またはカル
    ボキシル基であり、R3 は、各々独立に、水素または炭
    素数1〜4のアルキル基であって、かつ一方がアルキル
    基である場合には他方は水素である。)
  2. 【請求項2】 上記式〔I〕で表わされる酸無水物基含
    有(メタ)アクリル酸エステルおよび上記式〔Ia〕で
    表わされる酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エステル
    誘導体から選択される少なくとも1種と、上記(メタ)
    アクリレート類とは混合されて、同一容器に収容されて
    いることを特徴とする請求項1記載の軟組織用接着剤キ
    ット。
  3. 【請求項3】 上記式〔I〕で表わされる酸無水物基含
    有(メタ)アクリル酸エステルおよび上記式〔Ia〕で
    表される酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エステル誘
    導体から選択される少なくとも1種が、 上記式〔I〕で表わされる酸無水物基含有(メタ)アク
    リル酸エステルまたは上記式〔I〕で表わされる酸無水
    物基含有(メタ)アクリル酸エステルと上記式〔Ia〕
    で表される酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エステル
    誘導体との混合物である請求項1に記載の軟組織用接着
    剤キット。
  4. 【請求項4】 上記式〔I〕で表わされる酸無水物基含
    有(メタ)アクリル酸エステルおよび上記式〔Ia〕で
    表される酸無水物基含有(メタ)アクリル酸エステル誘
    導体が、式中、n=2であることを特徴とする請求項1
    に記載の軟組織用接着剤キット。
  5. 【請求項5】 上記式〔I〕で表わされる酸無水物基含
    有(メタ)アクリル酸エステルが無水トリメリット酸-4
    -メタクリロイルオキシエチルであり、 (メタ)アクリレート類がメチルメタアクリレートであ
    り、 ポリ(メタ)アクリレートがポリメチルメタアクリレー
    トであり、 重合開始剤がトリ-n-ブチルホウ素であることを特徴と
    する請求項1に記載の軟組織用接着剤キット。
  6. 【請求項6】 上記式〔I〕で表わされる酸無水物基含
    有(メタ)アクリル酸エステルおよび/または上記式
    〔Ia〕で表される酸無水物基含有(メタ)アクリル酸
    エステル誘導体1重量部に対して、 (メタ)アクリレート類が1〜100重量部、 ポリ(メタ)アクリレートが0.1〜100重量部、お
    よび、 重合開始剤が0.01〜10重量部であることを特徴と
    する請求項1に記載の軟組織用接着剤キット。
  7. 【請求項7】 軟組織用接着剤キットが、外皮創傷用接
    着剤キットであることを特徴とする請求項1に記載の軟
    組織用接着剤キット。
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